JP5214856B2 - 架橋ポリカーボネート樹脂組成物及びフィルム - Google Patents
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Description
このフィルムとしては、エレクトロニクス用フィルムが好ましい。このエレクトロニクス用フィルムは、例えば、デジタルカメラ、ゲーム機、HDD、光ピックアップ、プラズマディスプレイ、携帯電話等に用いられている半田実装可能なフレキシブルプリント配線板やディスプレイ基板に好適に用いられる。
一般にポリカーボネート樹脂の主鎖に嵩高い芳香環、いわゆる「カルド構造」として、フルオレン骨格を導入し、高分子の剛直性を増し耐熱性を向上させる方法が行なわれている。しかし、他の特性、例えばフィルムの屈曲性は極端に低下し、本用途で使用するのは難しい。
ポリカーボネート樹脂は放射線で分子鎖が切断される典型的な崩壊型高分子である。数キログレイ(KGy)の放射線で力学特性が低下してしまい、耐放射線性の低い高分子の一つである。
下記一般式(2)で表される繰り返し単位(A2)
よりなり、繰り返し単位における単位(A3)と単位(A2)の割合がモル比で(A3):(A2)=6:94〜60:40の範囲の芳香族ポリカーボネート共重合体をを加熱して120℃以上260℃以下の範囲の温度にし、電子線照射により架橋した塩化メチレン不溶分率が60重量%以上である架橋ポリカーボネート樹脂の製造方法である。
[芳香族ポリカーボネート共重合体]
Xが表す炭素数2〜12のα,ω−アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基が挙げられる。
Xが表すメンタンジイル基としては、例えば、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基が挙げられる。
Xが表すピラジリデン基としては、例えば、2,3−ピラジリデン基、2,5−ピラジリデン基、2,6−ピラジリデン基が挙げられる。
Xが表す炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基が挙げられる。
R6及びR7が表す炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
R6及びR7が表す炭素数6〜24のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、スチリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基が挙げられる。
R6及びR7が表す炭素数1〜10のアルキルオキシ基としては、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられる。
R6及びR7が表す炭素数6〜24のアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基がが挙げられる。
X,R6〜R9については、上記のような官能基を挙げられるが、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、これらの官能基に更に置換基の付加した官能基を用いることができる。付加が可能な置換基としては、例えば、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基のような炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソブトキシ基のような炭素数1〜4のアルキルオキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基のようなスルフィド基などが挙げられ、これらのうち1個、または複数個の置換基が、各々独立に、結合可能な位置に結合することができる。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
0.18 ≦ ηsp ≦ 1.50
であることが好ましい。より好ましくは、
0.20 ≦ ηsp ≦ 1.10
である。
ηspが0.18よりも小さい場合、樹脂が脆く、フィルムが非常に割れやすくなるため好ましくない。ηspが1.50よりも大きい場合、樹脂の溶融流動性が非常に低くなり好ましくない。
本発明においてその効果を発現する範囲内で架橋剤を添加してもよい。本発明に用いられる架橋剤は温度25℃、気圧1atm=101325Paにおいて、粘度が140mPa・s(25℃)以上の液体である多官能モノマー及び、温度25℃、気圧1atm=101325Paにおいて固体(半固体状、ワックス状を含む。)である多官能モノマーからなる群から選ばれる一種以上のモノマーが適用できる。
本発明の架橋ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート共重合体の側鎖中に存在する不飽和結合を架橋して得られるものである。本発明の架橋ポリカーボネート樹脂組成物は、従来のものに比べ効率よく架橋し、架橋度が非常に高いため250℃以上の耐熱性や屈曲特性に優れ、透明性を有する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート共重合体を加熱して120℃以上260℃以下の範囲の温度にして、架橋反応させることにより得られる。
加熱温度は、120℃以上260℃以下がよく、特に好ましくは、120〜220℃、さらに好ましくは150〜180℃が良い。120℃以下では、架橋度の向上による引張貯蔵弾性率の向上が小さい。また、260℃以上では、架橋反応と競争的に起こる分解反応の方が優先し、好ましくない。
例えば、芳香族ポリカーボネート共重合体のフィルムをキャスト法で作成後、幅約1m、厚み100〜20μm、引取速度10m/minのロールtoロールで赤外線ヒーターや熱風により、該フィルムに熱を加える。該フィルムが目的の温度に達した後、直ちに電子線照射等することによって、架橋ポリカーボネート樹脂からなるフィルムを得ることが出来る。また、加熱時のフィルム温度測定方法は、サーモテープ等を利用し、直接、フィルムの温度上昇をチェックするのが望ましい。
電子線照射による架橋は、“照射時間が1sec以下”、“瞬時にオン/オフが可能”、“光重合開始剤などが不要”などの利点がある。ちなみに、電子線照射をコントロールする因子は2つある。一つは線量であり、1KGyは照射される物質1Kgあたり1ジュールのエネルギー吸収があることを意味する。もう一つは、照射電圧である。照射電圧は浸透深さと関連があり、電圧を上昇させると浸透深さは深くなることを意味する。例えば、25〜200μm程度の厚みのフィルムであれば、照射電圧50〜500KV、照射線量100〜400KGy程度が必要である。
本発明の架橋ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を添加することができる。
添加剤としては、例えば、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、シリコンオイルなどの離型剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料を挙げることができる。
これらの中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
量%、好ましくは0.005〜0.3重量%程度の範囲であってもよい。
紫外線吸収剤は、単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。これらの紫外線吸収剤の含有量(又は添加量)は、ポリカーボネート樹脂と紫外線吸収剤との合計量を100重量%として、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.02〜3重量%程度であり、特に好ましくは0.05〜2重量%程度であってもよい。0.01重量%未満では紫外線吸収性能が不十分の場合があり、5重量%を超えると樹脂の色相が悪化することがあるので好ましくない。
架橋ポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルムは、例えば、キャスト法によって作成したフィルム(幅約1m、厚み100〜20μm)を引取速度10m/minのロールtoロールで加熱して電子線照射し得ることが出来る。そしてフィルムは、基板表面に貼り付けられ、電気回路等の電子部品が半田付され配線板となる。この配線板は、電気機器内においてフレキシブルプリント配線板等として使用される。
このエレクトロニクス用フィルムは、デジタルカメラ、ゲーム機、HDD、光ピックアップ、プラズマディスプレイ、携帯電話等に用いられている半田実装可能なフレキシブルプリント配線板やディスプレイ基板に好適に用いられる。
架橋ポリカーボネート樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチックとして透明性、耐熱性(250℃以上での使用)、屈曲性等の機械的特性に優れるため、電気・電子部品、機械部品、自動車用部品等の工業材料として広範な分野に活用することができる。
各種原料は以下のものを使用した。
・芳香族ポリカーボネート共重合体(ポリマー(1))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水107740部、48%水酸化ナトリウム水溶液21598部を入れ、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)−スルフォン(以下“DAL−S”と略称することがある)7407部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)11942部およびハイドロサルファイト30部を溶解した後、塩化メチレン95398部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン10000部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール168部および48%水酸化ナトリウム水溶液3085部を加え、乳化後、トリエチルアミン26部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、DAL−SとBPAの比がモル比で25:75のMvが50900、Tgが130℃である白色のポリマー(収率70%)を得た。以下、ここで得られた共重合体を表中「ポリマー(1)」と称する。
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水107740部、48%水酸化ナトリウム水溶液21598部を入れ、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)−スルフォン(以下“DAL−S”と略称することがある)12346部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)8530部およびハイドロサルファイト40部を溶解した後、塩化メチレン63599部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン10000部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール168部および48%水酸化ナトリウム水溶液3085部を加え、乳化後、トリエチルアミン26部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、DAL−SとBPAの比がモル比で43:57のMvが40000、Tgが117℃である白色のポリマー(収率70%)を得た。以下、ここで得られた共重合体を表中「ポリマー(2)」と称する。
帝人化成(株)製 L1225WP Tg:150℃
各実施例及び比較例でキャスティングすることにより得たフィルムに、下記装置にて表1に示す条件で加熱しながら電子線を照射した。
電子線照射装置:NHVコーポレーション(株)EPS−800
ちなみに、電子線照射をコントロールする要因として2つある一つは線量であり、1KGyは照射される物質1Kgあたり1ジュールのエネルギー吸収があることを意味する。もう一つは、照射電圧である。照射電圧は浸透深さと関連があり、電圧を上昇させると浸透深さは深くなることを意味する。
また、フィルム変形により熱が伝わりにくいと判断した場合は、アルミハク(厚み12μm)のものでフィルム全体を包み電子線を照射した。この場合、照射線量を通常の2倍程度にすると良い。
電子線照射後のフィルム50mgを塩化メチレン100mlに入れ12時間攪拌した。その後、桐山ロートで吸引ろ過し、塩化メチレンを減圧除去した後、塩化メチレン可溶物の量(Xmg)を測定し、その後、下記計算にて塩化メチレン不溶分率を算出した。
不溶分率(%)=(50−X)÷50×100
下記試験機を用い、電子線照射後のフィルムを3mm×30mm厚み約50μmに切取り、粘弾性評価を実施した。
粘弾性評価装置:レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製RSAII
測定条件:モード:AutoStrain Adjustment
Strain:0.15%
Max Allowed Force:30g
Min Allowed Force:0.7g
Strain Adjustment:15%
下記試験機を用い、電子線照射後のフィルムが破断までの回数を求めた。
試験機:東洋精機製作所製MIT耐揉疲労試験機DA型
試験条件:曲率半径0.38mm、角度135℃、速度175cpm、荷重500g
サンプル:1.5cm×10cm×厚み50μm
ガラス転移温度(Tg)の測定方法は、JIS K7121に規定されている示差走査熱量測定(熱流速DSC)に従い、DSC−2910(TAインストルメント製、商品名:DSC2910)を用いて実施した。測定条件は、加熱速度 20℃/min、窒素流量 40ml/min、測定温度 20℃〜250℃である。
ヘイズの測定は、JIS K7136に準拠した。電子線照射後のフィルムから5cm×5cm、厚み50μmの試験片を切り出し、日本電色工業(株)製 HazeMeterNDH2000を用いてヘイズを測定した。光源はハロゲンランプ(定格5V9W)、測定開口部は20mmΦである。
表1に記載した組成に基づいて調整したPCサンプルを塩化メチレンに溶かした(ドープ濃度17wt%)。このドープを平坦なガラス板上にキャスティングすることによりフィルム(30cm×25cm、厚み50μm)を作った。このフィルムを半分の大きさに切断し、ホットプレート上に置き、四隅を耐熱テープで固定し、表1に記載の温度に加熱した。約2〜5分間放置して該フィルムが加熱温度に達したことを確認後、該フィルムの上部から電子線を照射して、架橋ポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルムを製造した。
このフィルムの塩化メチレン不溶分率、屈曲試験、粘弾性評価、Tg(ガラス転移温度)及びヘイズの測定を行った。評価結果は表1他に示す。
Claims (4)
- 下記一般式(3)で表される繰り返し単位(A3)と
下記一般式(2)で表される繰り返し単位(A2)
よりなり、繰り返し単位における単位(A3)と単位(A2)の割合がモル比で(A3):(A2)=6:94〜60:40の範囲の芳香族ポリカーボネート共重合体をを加熱して120℃以上260℃以下の範囲の温度にし、電子線照射により架橋した塩化メチレン不溶分率が60重量%以上である架橋ポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 繰り返し単位(A2)が、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)およびα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)からなる群より選ばれる一種以上の化合物から誘導された繰り返し単位である請求項1に記載の架橋ポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 繰り返し単位(A2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された繰り返し単位である請求項1に記載の架橋ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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