JP5214669B2 - 自動変速機 - Google Patents
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すなわち、摩擦要素として多用されている多板クラッチや多板ブレーキの場合、要素解放による空転状態のとき、冷却や潤滑のために吹き付けられるオイルが相対回転するプレート間に介在し、引き摺り抵抗(オイルのせん断抵抗)によるフリクション損失の発生を避けることができない。しかも、このフリクション損失は、プレート枚数が多くてプレート間の相対回転速度が高いほど大きくなってしまう。
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のダブルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
第3のサンギヤと、第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤと前記第3のリングギヤに噛み合う第3のダブルピニオンを支持する第3のキャリヤとからなる第3の遊星歯車と、
6つの摩擦要素と、を備え、
前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸からのトルクを出力軸に出力可能な自動変速機において、
前記出力軸は、前記第2のキャリヤに常時連結しており、
前記第3のサンギヤは、常時固定して第1の固定メンバを構成しており、
前記第1のキャリヤと前記第3のリングギヤは、常時連結して第1の回転メンバを構成しており、
前記第2のサンギヤと前記第3のキャリヤは、常時締結して第2の回転メンバを構成しており、
前記6つの摩擦要素は、
前記第1のサンギヤと前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第1のサンギヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第1の回転メンバの間を選択的に連結する第3の摩擦要素と、
前記第1のリングギヤと前記第2の回転メンバの間を選択的に連結する第4の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第5の摩擦要素と、
前記第1のリングギヤの回転を選択的に係止する第6の摩擦要素と、
により構成され、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成することを特徴とする。
図1は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「従来技術との対比による有利性」に分けて説明する。
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図4のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
第2速(2nd)の変速段では、図5のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
第3速(3rd)の変速段では、図6のハッチングに示すように、第4クラッチC4と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
第4速(4th)の変速段では、図7のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第4クラッチC4と第5クラッチC5が同時締結される。
第5速(5th)の変速段では、図8のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第5クラッチC5が同時締結される。
第6速(6th)の変速段では、図9のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5が同時締結される。
第7速(7th)の変速段では、図10のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3が同時締結される。
第8速(8th)の変速段では、図11のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
第9速(9th)の変速段では、図12のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
後退速(Rev)の変速段では、図13のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
図14は、従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。図15は、従来例の自動変速機において6つの摩擦要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退2速を達成する締結作動表を示す図である。図16は、従来例の自動変速機における各摩擦要素の最大トルク分担比表を示す図である。以下、図15〜図16を用いて、従来技術との対比による実施例1の自動変速機の有利性を説明する。
(基本構成)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも3遊星・6摩擦要素により少なくとも前進8速及び後退1速の変速段を達成する。
(変速制御性能)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも隣接する変速段への変速を、1つの摩擦要素の解放と1つの摩擦要素の締結という1重架け替え変速により達成する。
(歯数比)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3の歯数比ρ1,ρ2,ρ3の絶対値を0.3〜0.65の範囲内に設定している。
摩擦要素を締結して各変速段を得る場合、空転する摩擦要素(解放要素)で生じるオイル引き摺り等によりフリクション損失を避けることができないが、自動変速機としては、フリクション損失が少ないほど好ましいとされる。
従来例の自動変速機の場合、3遊星・6摩擦要素により前進8速の変速段を達成しているのに対し、実施例1の自動変速機の場合、3遊星・6摩擦要素によって前進9速を達成している。
自動変速機のギヤ比の変更幅は、レシオカバレッジ(=最低変速段ギヤ比/最高変速段ギヤ比:以下、「RC」という。)によりあらわされる。このRC値は、大きい値であればあるほどギヤ比の変更幅が広いことをあらわし、ギヤ比の設定自由度が高くなることで好ましいとされる。
1速ギヤ比と後退ギヤ比は、発進加速性と登坂性能を決定付ける値であり、例えば、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1近傍にない場合、前後進の切り替え時に駆動力差が生じる。また、後退ギヤ比が1速ギヤ比より低いと、前進発進時の駆動力よりも後退発進時の駆動力が低くなり、後退発進性が劣ってしまう。
従来例の自動変速機は、図15に示すように、第6速を直結段とし、第1速〜第5速をアンダードライブ変速段として設定している。したがって、アンダードライブ側での変速間隔が小さくなり、例えば、停止と発進走行を繰り返すような市街地走行等において、変速頻度が高いビジーシフトになる。そして、エンジン車の場合、アンダードライブ側でのエンジン回転数の吹き上がりが早いため、ビジーシフトによりフィーリングが悪化する。
クラッチ要素とブレーキ要素による摩擦要素のうち、ブレーキ要素は、回転要素とトランスミッションケースの間に配置されるが、ブレーキ要素の最大トルク分担比が高いと、プレート枚数の増大とトランスミッションケースの径拡大により対応する必要がある。
従来例の自動変速機では、図16に示すように、各摩擦要素(第1クラッチC1〜第2ブレーキB2)の最大トルク分担比のうち、最も大きいものが第2ブレーキB2の4.800となっている。これに対し、実施例1の自動変速機の各摩擦要素(第1クラッチC1〜第1ブレーキB1)の最大トルク分担比は、図3に示すように、最も大きいものであっても第1ブレーキB1の4.816である。このため、摩擦要素における摩擦プレートの数を従来例よりも極端に増加する必要がない。この結果、製造コストの上昇を抑え、各摩擦要素(第1クラッチC1〜第1ブレーキB1)のサイズ拡大を抑制することができ、ユニットレイアウトの拡大抑制を図ることができる。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
このため、3遊星6摩擦要素で前進8速以上を達成しながら、各変速段で生じるフリクション損失を抑制することで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。
このため、ギヤ比の選択肢が広がり、車両の状況に沿った駆動力を出力できて燃費を向上させることができる。また、変速段数が増えることで、段間比の間隔が小さくなり、段間の駆動力段差や変速ショックを抑えることができる。加えて、適正な段間比を保ちながらもRC値を、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図る要求値に達する設定とすることができる。さらに、アンダードライブ側での変速間隔が広くなり、ビジーシフトが抑えられてフィーリング悪化を防止することができる。
このため、適切なRC値及び段間比を達成するような歯数比を選択しても、後退ギヤ比評価値(=後退ギヤ比/1速ギヤ比)を1近傍の値とすることができ、この結果、前後進の切り替え時に駆動力差が生じることを防止でき、発進加速性と登坂性能を損なうことなく動作させることができる。
このため、トランスミッションケースTCの前側部分のみの胴径を太くし、それ以降の部分の胴径を細くする形状設定にすることにより、車体フロアとの干渉を防止しつつ、フロアトンネルの車室内への突出を小さく抑えることができる。
図17は、実施例2の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図17に基づいて実施例2の自動変速機の遊星歯車配列を説明する。
S1 第1のサンギヤ
PC1 第1のキャリヤ
R1 第1のリングギヤ
PG2 第2の遊星歯車
S2 第2のサンギヤ
PC2 第2のキャリヤ
R2 第2のリングギヤ
PG3 第3の遊星歯車
S3 第3のサンギヤ
PC3 第3のキャリヤ
R3 第3のリングギヤ
IN 入力軸
OUT 出力軸
F1 第1の固定メンバ
M1 第1の回転メンバ
M2 第2の回転メンバ
C1 第1クラッチ(第1の摩擦要素)
C2 第2クラッチ(第2の摩擦要素)
C3 第3クラッチ(第3の摩擦要素)
C4 第4クラッチ(第4の摩擦要素)
C5 第5クラッチ(第5の摩擦要素)
B1 第1ブレーキ(第6の摩擦要素)
TC トランスミッションケース
Claims (4)
- 第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のダブルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
第3のサンギヤと、第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤと前記第3のリングギヤに噛み合う第3のダブルピニオンを支持する第3のキャリヤとからなる第3の遊星歯車と、
6つの摩擦要素と、を備え、
前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸からのトルクを出力軸に出力可能な自動変速機において、
前記出力軸は、前記第2のキャリヤに常時連結しており、
前記第3のサンギヤは、常時固定して第1の固定メンバを構成しており、
前記第1のキャリヤと前記第3のリングギヤは、常時連結して第1の回転メンバを構成しており、
前記第2のサンギヤと前記第3のキャリヤは、常時締結して第2の回転メンバを構成しており、
前記6つの摩擦要素は、
前記第1のサンギヤと前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第1のサンギヤと前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第1の回転メンバの間を選択的に連結する第3の摩擦要素と、
前記第1のリングギヤと前記第2の回転メンバの間を選択的に連結する第4の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第2のリングギヤの間を選択的に連結する第5の摩擦要素と、
前記第1のリングギヤの回転を選択的に係止する第6の摩擦要素と、
により構成され、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成することを特徴とする自動変速機。 - 請求項1に記載された自動変速機において、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせによる前進9速は、
前記第2の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第1速と、
前記第1の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第2速と、
前記第4の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第3速と、
前記第1の摩擦要素と前記第4の摩擦要素と前記第5の摩擦要素の同時締結により達成する第4速と、
前記第1の摩擦要素と前記第2の摩擦要素と前記第5の摩擦要素の同時締結により達成する第5速と、
前記第1の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第5の摩擦要素の同時締結により達成する第6速と、
前記第1の摩擦要素と前記第2の摩擦要素と前記第3の摩擦要素の同時締結により達成する第7速と、
前記第2の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第8速と、
前記第1の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第9速と、
からなることを特徴とする自動変速機。 - 請求項1または請求項2に記載された自動変速機において、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成することを特徴とする自動変速機。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された自動変速機において、
前記第1の遊星歯車と前記第2の遊星歯車と前記第3の遊星歯車は、駆動源が接続される前記入力軸から前記出力軸に向かって順に配列し、前記第6の摩擦要素を、前記第1の遊星歯車より駆動源側の上流位置に設定することを特徴とする自動変速機。
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