以下、本発明の自動変速機を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
実施例1の自動変速機は、図1に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、第3の遊星歯車PG3と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の固定メンバF1と、第1の回転メンバM1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第3クラッチC3(第3の摩擦要素)と、第4クラッチC4(第4の摩擦要素)と、第5クラッチC5(第5の摩擦要素)と、第1ブレーキB1(第6の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、ワンウェイクラッチOWCと、を備えている。
前記第1の遊星歯車PG1は、第1のダブルピニオンP1s,P1rを有するダブルピニオン型遊星歯車であり、第1のサンギヤS1と、該第1のサンギヤS1に噛み合うピニオンP1sと該ピニオンP1sに噛み合うピニオンP1rを支持する第1のキャリヤPC1と、前記ピニオンP1rに噛み合う第1のリングギヤR1とからなる。
前記第2の遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第2のサンギヤS2と、該第2のサンギヤS2に噛み合う第2のピニオンP2(第2のシングルピニオン)を支持する第2のキャリヤPC2と、前記第2のピニオンP2に噛み合う第2のリングギヤR2とからなる。
前記第3の遊星歯車PG3は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第3のサンギヤS3と、該第3のサンギヤS3に噛み合う第3のピニオンP3(第3のシングルピニオン)を支持する第3のキャリヤPC3と、前記第3のピニオンP3に噛み合う第3のリングギヤR3とからなる。
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸で、前記第2のサンギヤS2に常時連結している。
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸で、前記第3のリングギヤR3に常時連結している。
前記第1の固定メンバF1は、前記第1のキャリヤPC1を、トランスミッションケースTCに常時固定するメンバである。
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のリングギヤR1と前記第3のキャリヤPC3を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
前記第1クラッチC1は、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
前記第2クラッチC2は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。
前記第3クラッチC3は、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3の間を選択的に連結する第3の摩擦要素である。
前記第4クラッチC4は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第4の摩擦要素である。
前記第5クラッチC5は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第5の摩擦要素である。
前記第1ブレーキB1は、前記第2のキャリヤPC2の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し係止可能な第6の摩擦要素である。なお、この第1ブレーキB1と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
前記第1の遊星歯車PG1と前記第2の遊星歯車PG2と前記第3の遊星歯車PG3は、図1に示すように、駆動源が接続される前記入力軸INから前記出力軸OUTに向かって順に配列している。
図2は、実施例1の自動変速機において6つの摩擦要素のうち三つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。図3は、実施例1の自動変速機において前進8速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。以下、図2及び図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
実施例1の自動変速機は、6つの摩擦要素C1,C2,C3,C4,C5,B1のうち三つの同時締結の組み合わせにより、下記に述べるように前進8速及び後退1速の各変速段を達成する。
第1速(1st)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第1ブレーキB1(またはワンウェイクラッチOWC)の同時締結により達成する。この第1速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、4回(=0回+2回+2回)となる。
第2速(2nd)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第2速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+0回+2回)となる。
第3速(3rd)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第3速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
第4速(4th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第4速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+0回+2回)となる。
第5速(5th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5の同時締結により達成する。この第5速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
第6速(6th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3の同時締結により達成する。この第6速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3がいずれも噛み合いに関与しないため、合計回数は0回となる。
第7速(7th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。この第7速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第3の遊星歯車PG3のみが噛み合いに関与するため、合計回数は、2回(=0回+0回+2回)となる。
第8速(8th)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。この第8速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、4回(=0回+2回+2回)となる。
後退速(Rev)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。
次に、作用を説明する。
実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「従来技術との対比による有利性」、「締結パターンの選択自由度」に分けて説明する。
[各変速段での変速作用]
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図4のハッチングに示すように、ドライブ時、第2クラッチC2と第4クラッチC4とワンウェイクラッチOWCが同時締結され、コースト時、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第1ブレーキB1の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第4クラッチC4の締結と第1の固定メンバF1と第1の回転メンバM1により、第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1がトランスミッションケースTCに一体に固定されると共に、第2のキャリヤPC2と第3のキャリヤPC3がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、キャリヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、キャリヤ固定の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の入力回転を逆転(正回転)し、第3のリングギヤR3から出力する。この第3のリングギヤR3からの回転数(=入力回転数より低い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第1速の変速段が達成される。
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図5のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転すると共に、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第3のサンギヤS3が直結される。第4クラッチC4の締結により、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第1のサンギヤS1が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、一体回転状態の第2の遊星歯車PG2と第4クラッチC4を経過し、第1のサンギヤS1に入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のサンギヤS1への入力回転を減速し、第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。一方、入力軸INからの入力回転は、一体回転状態の第2の遊星歯車PG2と第1クラッチC1を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のキャリヤPC3の回転数と、第3のサンギヤS3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第1速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第2速の変速段が達成される。
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図6のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転数は、第4クラッチC4を経過し、第2のキャリヤPC2へそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のキャリヤPC2の回転数と、第2のサンギヤS2の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第2のリングギヤR2の回転数が決定される。この第2のリングギヤR2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と、第3のキャリヤPC3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第2速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第3速の変速段が達成される。
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図7のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第4クラッチC4の同時締結により、第1のサンギヤS1と第3のサンギヤS3が第2のキャリヤPC2を介して直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第4クラッチC4→第2のキャリヤPC2→第1クラッチC1を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と、第3のキャリヤPC3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第3速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第4速の変速段が達成される。
(第5速の変速段)
第5速(5th)の変速段では、図8のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5が同時締結される。
この第1クラッチC1の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第5クラッチC5を経過し、第2のリングギヤR2へそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のリングギヤR2の回転数と、第2のサンギヤS2の回転数(=入力回転数)規定されることで、残りの第2のキャリヤPC2の回転数が決定される。この第2のキャリヤPC2の回転は、第1クラッチC1を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と、第3のキャリヤPC3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第4速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第5速の変速段が達成される。
(第6速の変速段)
第6速(6th)の変速段では、図9のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転し、第3の遊星歯車PG3の三つの回転要素S3,PC3,R3が一体に回転する。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が入力回転数により一体に回転するため、出力軸OUTの回転数は、入力軸INからの入力回転数と同じ回転数となり、変速比1の第6速の変速段(直結変速段)が達成される。
(第7速の変速段)
第7速(7th)の変速段では、図10のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第1クラッチC1と第1ブレーキB1の同時締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が、トランスミッションケースTCに固定される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3を経過し、第3のキャリヤPC3が入力回転数により回転する。このため、サンギヤ固定の第3の遊星歯車PG3において、第3のキャリヤPC3への入力回転を増速し、第3のリングギヤR3から出力する。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より高い増速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第7速の変速段が達成される。
(第8速の変速段)
第8速(8th)の変速段では、図11のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のキャリヤPC2が、トランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、キャリヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2からの回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、入力軸INからの入力回転数は、第3クラッチC3を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と、第3のキャリヤPC3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より高く第7速より高い増速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第8速の変速段が達成される。
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図12のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のキャリヤPC2が、トランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、キャリヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2からの回転は、第5クラッチC5を経過し、第1のサンギヤS1にそのまま入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のサンギヤS1への入力回転を逆転し、第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。一方、第2のリングギヤR2からの回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のキャリヤPC3の回転数と、第3のサンギヤS3の回転数が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転方向に対し逆方向回転による回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、後退速の変速段が達成される。
[従来技術との対比による有利性]
図13は、従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。図14は、従来例の自動変速機において6つの摩擦要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退2速を達成する締結作動表を示す図である。以下、図13及び図14を用いて、従来技術との対比による実施例1の自動変速機の有利性を説明する。
まず、実施例1の自動変速機(図1及び図2)と従来例の自動変速機(図13及び図14)を対比すると、下記に列挙する点について、性能は同等であるということができる。
(基本構成と変速性能)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも3遊星・6摩擦要素により前進8速及び後退1速の変速段を達成する。
(変速制御性能)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも隣接する変速段への変速を、1つの摩擦要素の解放と1つの摩擦要素の締結という1重架け替え変速により達成する。
しかし、下記に列挙する点で、実施例1の自動変速機は、従来例の自動変速機に比べて有利性を持つ。
(a) 各変速段でのフリクション損失について
摩擦要素を締結して各変速段を得る場合、空転する摩擦要素(解放要素)で生じる引き摺り等によりフリクション損失を避けることができないが、自動変速機としては、フリクション損失が少ないほど好ましいとされる。
従来例の自動変速機の場合、前進8速の各変速段を達成するために、図14に示すように、各変速段で摩擦要素を二つ同時締結するようにしている。このため、例えば、1速で空転する摩擦要素は、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4と第1ブレーキB1というように、各変速段において、空転する摩擦要素が4個となる。このため、空転する4個の摩擦要素での引き摺り等によるフリクション損失が大きくなり、駆動エネルギの伝達効率の悪化を招く。例えば、エンジン車に従来例の自動変速機を適用する場合、空転する4個の摩擦要素によるフリクション損失が、燃費性能の悪化を招く一因となる。
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、前進8速の各変速段を達成するために、図2に示すように、各変速段で摩擦要素を三つの同時締結するようにしている。このため、例えば、第1速段で空転する摩擦要素は、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5というように、各変速段において、空転する摩擦要素が3個となる。このため、従来例に比べ、空転する摩擦要素でのフリクション損失が小さく抑えられ、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。例えば、エンジン車に実施例1の自動変速機を適用する場合、燃費性能の向上が図られる。
(b) 3遊星歯車について
自動変速機に用いる遊星歯車を選択する場合、選択肢として、シングルピニオン型遊星歯車とダブルピニオン型遊星歯車があるが、ギヤの伝達効率等の観点からダブルピニオン型遊星歯車よりもシングルピニオン型遊星歯車の選択が好ましいとされている。
従来例の自動変速機は、図13に示すように、ダブルピニオン型遊星歯車と、ラビニオタイプ遊星歯車ユニット(ダブルピニオン型遊星歯車1つとシングルピニオン型遊星歯車1つ)を用いている。すなわち、実質的にダブルピニオン型遊星歯車を2つ使っているため、歯車噛み合い回数が多くなるため、ギヤの伝達効率とギヤノイズが悪い、ピニオンのギヤ径が小さくなるため、耐久信頼性が低下する、部品点数が多くなるため、コストアップになるになる、という問題がある。
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、ダブルピニオンによる第1の遊星歯車PG1と、シングルピニオンによる第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3を用いている。このため、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる従来例に比べて、ダブルピニオン型遊星歯車の使用数が減少する。このため、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる従来例に比べて、下記の項目で有利になる。
実施例1の自動変速機の場合、歯車噛み合い回数が従来例に比べて減少し、ギヤの伝達効率が向上するし、ギヤノイズが低下する。
すなわち、1組のダブルピニオンの遊星歯車は、噛み合い回数が3であるのに対し、1組のシングルピニオンの遊星歯車は、ピニオン同士の噛み合いがない分、噛み合い回数が2である。したがって、実施例1の場合には、図3に示すように、平均噛み合い数は4.25となる。これに対し、2組のダブルピニオン型遊星歯車による従来例の場合、図15に示すように、平均噛み合い数が4.8となる。この結果、実施例1の場合、各変速段の平均値をとっても、従来例の平均噛み合い数4.8に比べ、平均噛み合い回数が0.55減少する。
実施例1の自動変速機の場合、ピニオンのギヤ径が大きくなるため、耐久信頼性が向上する。
すなわち、シングルピニオンの場合、サンギヤとリングギヤの間に、両ギヤの間隔をギヤ径とするピニオンが複数個配置される。一方、ダブルピニオンの場合、両ギヤの間隔より小さい径をギヤ径とする必要がある。このように、シングルピニオンの場合、ダブルピニオンに比べピニオンのギヤ径が大きくなるので、ピニオンの剛性や歯面強度を高めることができ、耐久信頼性が向上する。
実施例1の自動変速機の場合、部品点数が少なくなり、コスト的に有利となる。
例えば、ダブルピニオンの遊星歯車の場合、4組のダブルピニオンをサンギヤの周囲に配置する場合、ピニオンの数は8個となる。これに対し、シングルピニオンの遊星歯車の場合、サンギヤの周囲に4個のピニオンを配置すれば良く、部品点数が4個減少する。この結果、コストダウンを達成できる。
(c) ギヤ比幅について
自動変速機のギヤ比の変更幅は、レシオカバレッジ(=最低変速段ギヤ比/最高変速段ギヤ比:以下、「RC」という。)によりあらわされる。このRC値は、大きい値であればあるほどギヤ比の変更幅が広いことをあらわし、ギヤ比の設定自由度が高くなることで好ましいとされる。
従来例の自動変速機の場合、図14に示すように、RC=6.711(=4.597/0.685)の値である。これに対し、実施例1の自動変速機において、図2に示すように、第1の遊星歯車PG1のギヤ比をρ1=-0.480、第2の遊星歯車PG2のギヤ比をρ2=0.540、第3の遊星歯車PG3のギヤ比をρ3=0.330とした場合、隣接する変速段での適正な段間比を保ちながら、RC=8.464(=5.612/0.663)を得ている。
つまり、適正な段間比を保ちながらもRC値を、従来例よりも遙かに大きな値とすることができ、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図ることができる。ここで、「適正な段間比」とは、各変速段での段間比をプロットし、プロットした各点を線により結んだ特性を描いた場合、ローギヤ側からハイギヤ側に向かって滑らかな勾配にて低下した後、横這い状態で推移するような特性線が描けることをいう。
そして、実際に駆動輪へ伝達される回転数は、自動変速機の下流位置に設けた終減速機のファイナルギヤ比で調整される。よって、RC値が大きな値であるほど、ファイナルギヤ比による調整自由度が高くなり、例えば、よりロー側に調整することで、トルクコンバータを持たないハイブリッド車の自動変速機への対応が有利になる。また、最適燃費域や最高トルク域が異なるガソリンエンジンとディーゼルエンジンへの対応も有利になる。つまり、エンジン車の場合、発進駆動力と燃費(エンジン回転数の低回転化)を両立することができる。
(d) 後退動力性能について
1速ギヤ比と後退ギヤ比は、発進加速性と登坂性能を決定付ける値であり、例えば、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1近傍にない場合、前後進の切り替え時に駆動力差が生じる。また、後退ギヤ比が1速ギヤ比より低いと、前進発進時の駆動力よりも後退発進時の駆動力が低くなり、後退発進性が劣ってしまう。
従来例の自動変速機の場合、図14に示すように、Rev1/1st=0.882であり、Rev2/1st=0.473であり、Rev1/1stの場合には後退時の駆動力不足を防止できるレベルは保てるもの、後退1速(Rev1)を選択した場合も後退2速(Rev2)を選択した場合も、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1より低い値であり、前後進の切り替え時に駆動力差が生じるし、後退発進性が劣ってしまう。
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、図2に示すように、Rev/1st=1.070であり、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1近傍にある。このため、前後進の切り替え時に駆動力差が生じないし、後退発進性が劣ってしまうこともない。つまり、発進加速性と登坂性能を損なうことなく動作させることができる。
[締結パターンの選択自由度]
6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより前進8速を達成する締結パターンとして、図2に示す締結パターン(以下、「第1締結パターン」という。)を説明したが、実施例1の場合、前記第1締結パターン以外に、第2締結パターン(図16)と、第3締結パターン(図17)と、第4締結パターン(図18)と、を有する。
前記第2締結パターンは、図16に示すように、第2速を除く締結パターンは、第1締結パターンを用いる。そして、第1締結パターンのうち、第2速を、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第5クラッチC5の同時締結により達成する。
前記第3締結パターンは、図17に示すように、第4速を除く締結パターンは、第1締結パターンを用いる。そして、第1締結パターンのうち、第4速を、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第5クラッチC5の同時締結により達成する。
前記第4締結パターンは、図18に示すように、第2速と第4速を除く締結パターンは、第1締結パターンを用いる。そして、第1締結パターンのうち、第2速を、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第5クラッチC5の同時締結により達成し、第4速を、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第5クラッチC5の同時締結により達成する。以下、第2締結パターンと第4締結パターンの第2速での変速作用と、第3締結パターンと第4締結パターンの第4速での変速作用を説明する。
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図19のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第5クラッチC5が同時締結される。
この第4クラッチC4と第5クラッチC5の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転すると共に、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第1のサンギヤS1が直結される。第2クラッチC2の締結により、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第3のサンギヤS3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、一体回転状態の第2の遊星歯車PG2と第4クラッチC4を経過し、第1のサンギヤS1に入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のサンギヤS1への入力回転を減速し、第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を経過し、第3のキャリヤPC3に入力される。一方、入力軸INからの入力回転数は、一体回転状態の第2の遊星歯車PG2と第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3に入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のキャリヤPC3の回転数と、第3のサンギヤS3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第1速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第2速の変速段が達成される。
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図20のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第5クラッチC5が同時締結される。
この第2クラッチC2と第5クラッチC5の同時締結により、第1のサンギヤS1と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と入力軸INと第1の回転メンバM1により、第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第5クラッチC5→第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3に入力される。一方、第3のキャリヤPC3には、第3クラッチC3を経過し、入力回転数が入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と、第3のキャリヤPC3の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第3のリングギヤR3の回転数が決定される。この第3のリングギヤR3の回転数(入力回転数より低く第3速より高い減速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第4速の変速段が達成される。
このように、実施例1の自動変速機では、ギヤ比を変えることのない締結パターンとして、複数の締結パターン(第1締結パターン〜第4締結パターン)を有するため、締結パターンの選択自由度が高まる。
したがって、摩擦要素の締結油圧制御系等に故障が生じ、解放状態を維持したままの解放フェールとなったり、逆に、締結状態を維持したままの締結フェールとなったりした場合、フェール内容に応じた締結パターンの選択を行うことで、摩擦要素フェール時に走行を確保できるばかりでなく、切り替え可能な変速段の数を増すことができる。
例えば、第1クラッチC1が締結フェールとなったとき、図2に示す第1締結パターンを選択すると、第2速、第4速、第5速、第6速、第7速の5つの変速段の切り替えが可能である。これに対し、第2締結パターンと第3締結パターンは、4つの変速段の切り替えとなり、第4締結パターンは、3つの変速段の切り替えとなる。
例えば、第1クラッチC1が解放フェールとなったとき、図18に示す第4締結パターンを選択すると、第1速、第2速、第3速、第4速、第8速の5つの変速段の切り替えが可能である。これに対し、第1締結パターンは、3つの変速段の切り替えとなり、第2締結パターンと第3締結パターンは、4つの変速段の切り替えとなる。
例えば、第5クラッチC5が締結フェールとなったとき、図18に示す第4締結パターンを選択すると、第2速、第4速、第5速の3つの変速段の切り替えが可能である。これに対し、第1締結パターンは、1つの変速段の切り替えとなり、第2締結パターンと第3締結パターンは、2つの変速段の切り替えとなる。
例えば、第5クラッチC5が解放フェールとなったとき、図2に示す第1締結パターンを選択すると、第1速、第2速、第3速、第4速、第6速、第7速、第8速の7つの変速段の切り替えが可能である。これに対し、第2締結パターンと第3締結パターンは、6つの変速段の切り替えとなり、第4締結パターンは、5つの変速段の切り替えとなる。
以上のように、第1クラッチC1の締結フェールと第5クラッチC5の解放フェールに対しては、複数の締結パターンの中から図2に示す第1締結パターンを選択すると、切り替え可能な変速段数が最大となる。また、第1クラッチC1の解放フェールと第5クラッチC5が締結フェールに対しては、複数の締結パターンの中から図18に示す第4締結パターンを選択すると、切り替え可能な変速段数が最大となる。そして、複数の締結パターンの中から図16に示す第2締結パターン、または、図17に示す第3締結パターンを選択しておくと、第1クラッチC1と第5クラッチC5に締結フェールや解放フェールが発生しても、切り替え可能な変速段の数が最小とならない。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 第1のサンギヤS1と、第1のリングギヤR1と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のリングギヤR1に噛み合う第1のダブルピニオンP1s,P1rを支持する第1のキャリヤPC1とからなる第1の遊星歯車PG1と、第2のサンギヤS2と、第2のリングギヤR2と、前記第2のサンギヤS2と前記第2のリングギヤR2に噛み合う第2のシングルピニオン(第2のピニオンP2)を支持する第2のキャリヤPC2とからなる第2の遊星歯車PG2と、第3のサンギヤS3と、第3のリングギヤR3と、前記第3のサンギヤS3と前記第3のリングギヤR3に噛み合う第3のシングルピニオン(第3のピニオンP3)を支持する第3のキャリヤPC3とからなる第3の遊星歯車PG3と、6つの摩擦要素と、を備え、前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸INからのトルクを出力軸OUTに出力可能な自動変速機において、前記入力軸INは、前記第2のサンギヤS2に常時連結しており、前記出力軸OUTは、前記第3のリングギヤR3に常時連結しており、前記第1のサンギヤS1と前記第1のキャリヤPC1のうち一方の回転要素は、常時固定して第1の固定メンバF1を構成しており、前記第1のリングギヤR1と前記第3のキャリヤPC3は、常時連結して第1の回転メンバM1を構成しており、前記6つの摩擦要素は、前記第2のキャリヤPC2と前記第2のリングギヤR2のうち第2の遊星歯車PG2の速度線図上で中間位置に設定される回転要素と、前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と、前記第2のキャリヤPC2と前記第2のリングギヤR2のうち第2の遊星歯車PG2の速度線図上で端部位置に設定される回転要素と、前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3との間を選択的に連結する第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のキャリヤPC1のうち他方の回転要素と、前記第2のキャリヤPC2と前記第2のリングギヤR2のうち第2の遊星歯車PG2の速度線図上で中間位置に設定される回転要素との間を選択的に連結する第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のキャリヤPC1のうち他方の回転要素と、前記第2のキャリヤPC2と前記第2のリングギヤR2のうち速度線図上で端部位置に設定される回転要素との間を選択的に連結する第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と、前記第2のキャリヤPC2と前記第2のリングギヤR2のうち第2の遊星歯車PG2の速度線図上で中間位置に設定される回転要素の回転を係止可能な第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)と、により構成され、前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成する。
このため、3遊星6摩擦要素で前進8速を達成しながら、フリクション損失を小さく抑えることで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。
(2) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第1速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第2速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第3速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第4速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第5速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)の同時締結により達成する第6速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第7速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第8速と、からなる。
このため、隣接段への変速が、1つの摩擦要素の締結と1つの摩擦要素の解放による1重架け替えにより達成され、変速制御が単純化されて有利であると共に、第1の摩擦要素(第1クラッチC1)の締結フェールに対して、5つの変速段数の切り替えを確保でき、第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の解放フェールに対して、7つの変速段数の切り替えを確保できる。
(3) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第1速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第2速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第3速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第4速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第5速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)の同時締結により達成する第6速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第7速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第8速と、からなる。
このため、隣接段への変速が、1つの摩擦要素の締結と1つの摩擦要素の解放による1重架け替えにより達成され、変速制御が単純化されて有利であると共に、第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と第5の摩擦要素(第5クラッチC5)に締結フェールや解放フェールが発生しても、切り替え可能な複数の変速段を確保することができる。
(4) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第1速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第2速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第3速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第4速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第5速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)の同時締結により達成する第6速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第7速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第8速と、からなる。
このため、隣接段への変速が、1つの摩擦要素の締結と1つの摩擦要素の解放による1重架け替えにより達成され、変速制御が単純化されて有利であると共に、第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と第5の摩擦要素(第5クラッチC5)に締結フェールや解放フェールが発生しても、切り替え可能な複数の変速段を確保することができる。
(5) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第1速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第2速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第3速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第4速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第5速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)の同時締結により達成する第6速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第7速と、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する第8速と、からなる。
このため、隣接段への変速が、1つの摩擦要素の締結と1つの摩擦要素の解放による1重架け替えにより達成され、変速制御が単純化されて有利であると共に、第1の摩擦要素(第1クラッチC1)の解放フェールに対して、5つの変速段数の切り替えを確保でき、第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の締結フェールに対して、3つの変速段数の切り替えを確保できる。
(6) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と前記第6の摩擦要素(第1ブレーキB1)の同時締結により達成する。
このため、適切なRC値及び段間比を達成するようなギヤ比を選択しても、後退ギヤ比評価値(=後退ギヤ比/1速ギヤ比)を1近傍の値とすることができ、この結果、前後進の切り替え時に駆動力差が生じることを防止できるし、後退発進加速性や登坂性能を確保することができる。
(7) 前記第2の遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、前記第1のキャリヤPC1を常時固定して第1の固定メンバF1を構成しており、前記6つの摩擦要素は、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第1クラッチC1と、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第2クラッチC2と、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3との間を選択的に連結する第3クラッチC3と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2との間を選択的に連結する第4クラッチC4と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2との間を選択的に連結する第5クラッチC5と、前記第2のキャリヤPC2をトランスミッションケースTCに係止可能な第1ブレーキB1と、により構成した。
このため、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる場合に比べ、ギヤの伝達効率が向上し、ギヤノイズが低く抑えられるし、耐久信頼性が向上するし、コスト的に有利にすることができる。加えて、適正な段間比を保ちながらもRC値を、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図る要求値に達する設定とすることができる。
実施例2は、第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素のうち、第1のキャリヤを常時固定要素にした実施例1に対し、第1のサンギヤを常時固定要素にした例である。
まず、構成を説明する。
図21は、実施例2の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図21に基づいて、実施例2の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
実施例2の自動変速機は、図21に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、第3の遊星歯車PG3と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の固定メンバF1と、第1の回転メンバM1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第3クラッチC3(第3の摩擦要素)と、第4クラッチC4(第4の摩擦要素)と、第5クラッチC5(第5の摩擦要素)と、第1ブレーキB1(第6の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、ワンウェイクラッチOWCと、を備えている。
前記第1の遊星歯車PG1と、前記第2の遊星歯車PG2と、前記第3の遊星歯車PG3の構成は、図1に示す実施例1と同様であり、第1の遊星歯車PG1のみがダブルピニオン型遊星歯車である。
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸で、前記第2のサンギヤS2に常時連結している。
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸で、前記第3のリングギヤR3に常時連結している。
前記第1の固定メンバF1は、前記第1のサンギヤS1を、トランスミッションケースTCに常時固定するメンバである。
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のリングギヤR1と前記第3のキャリヤPC3を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
前記第1クラッチC1は、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
前記第2クラッチC2は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。
前記第3クラッチC3は、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3の間を選択的に連結する第3の摩擦要素である。
前記第4クラッチC4は、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第4の摩擦要素である。
前記第5クラッチC5は、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第5の摩擦要素である。
前記第1ブレーキB1は、前記第2のキャリヤPC2の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し係止可能な第6の摩擦要素である。なお、この第1ブレーキB1と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
前記第1の遊星歯車PG1と前記第2の遊星歯車PG2と前記第3の遊星歯車PG3は、図21に示すように、駆動源が接続される前記入力軸INから前記出力軸OUTに向かって順に配列している。
図22は、実施例2の自動変速機において6つの摩擦要素のうち三つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。図23は、実施例2の自動変速機において前進8速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。なお、実施例2の自動変速機は、6つの摩擦要素C1,C2,C3,C4,C5,B1のうち、図2に示す実施例1の自動変速機の場合と同様に、三つの同時締結の組み合わせにより、前進8速及び後退1速の各変速段を達成する。また、実施例2の自動変速機での各変速段での歯車噛み合い回数と平均噛み合い数は、図3に示す実施例1の自動変速機の場合と同様である。
次に、作用を説明する。
実施例2の自動変速機における「各変速段での変速作用」を説明する。
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図24のハッチングに示すように、ドライブ時、第2クラッチC2と第4クラッチC4とワンウェイクラッチOWCが同時締結され、コースト時、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第1ブレーキB1の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第4クラッチC4の締結と第1の固定メンバF1と第1の回転メンバM1により、第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1がトランスミッションケースTCに一体に固定されると共に、第2のキャリヤPC2と第3のキャリヤPC3がトランスミッションケースTCに固定される。したがって、実施例1の第1速と同様の作用により、第1速の変速段が達成される。
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図25のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転すると共に、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第3のサンギヤS3が直結される。第4クラッチC4の締結により、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第1のキャリヤPC1が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、一体回転状態の第2の遊星歯車PG2と第4クラッチC4を経過し、第1のキャリヤPC1に入力される。このため、サンギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のキャリヤPC1への入力回転を減速し、第1のリングギヤR1から出力する。そして、実施例1の第2速と同様の作用により、第2速の変速段が達成される。
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図26のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、サンギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のキャリヤPC1から出力する。そして、実施例1の第3速と同様の作用により、第3速の変速段が達成される。
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図27のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第4クラッチC4の同時締結により、第1のキャリヤPC1と第3のサンギヤS3が第2のキャリヤPC2を介して直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、サンギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のキャリヤPC1から出力する。そして、実施例1の第4速と同様の作用により、第4速の変速段が達成される。
(第5速の変速段)
第5速(5th)の変速段では、図28のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5が同時締結される。
この第1クラッチC1の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、サンギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のキャリヤPC1から出力する。そして、実施例1の第5速と同様の作用により、第5速の変速段が達成される。
(第6速の変速段)
第6速(6th)の変速段では、図29のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転し、第3の遊星歯車PG3の三つの回転要素S3,PC3,R3が一体に回転する。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が入力回転数により一体に回転するため、出力軸OUTの回転数は、入力軸INからの入力回転数と同じ回転数となり、変速比1の第6速の変速段(直結変速段)が達成される。
(第7速の変速段)
第7速(7th)の変速段では、図30のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第1クラッチC1と第1ブレーキB1の同時締結と第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が、トランスミッションケースTCに固定される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。したがって、実施例1の第7速と同様の作用により、第7速の変速段が達成される。
(第8速の変速段)
第8速(8th)の変速段では、図31のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が、トランスミッションケースTCに固定される。したがって、実施例1の第8速と同様の作用により、第8速の変速段が達成される。
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図32のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が、トランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、キャリヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のリングギヤR2から出力する。この第2のリングギヤR2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、第2のリングギヤR2の回転は、第5クラッチC5を経過し、第1のキャリヤPC1にそのまま入力される。このため、サンギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のキャリヤPC1への入力回転を減速し、第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。したがって、実施例1の後退速と同様の作用により、後退速の変速段が達成される。
実施例2の場合、図22に示すように、第1の遊星歯車PG1のギヤ比をρ1=-0.524、第2の遊星歯車PG2のギヤ比をρ2=0.602、第3の遊星歯車PG3のギヤ比をρ3=0.310とした場合、実施例1と同様に、隣接する変速段での適正な段間比を保ちながら、RC=8.020(=5.358/0.668)を得ている。そして、実施例2の1速ギヤ比に対する後退ギヤ比の値は、Rev/1st=0.989であり、実施例1と同様に、1近傍の値を得ている。さらに、実施例2の自動変速機での各変速段での歯車噛み合い回数と平均噛み合い数は、図23に示すように、実施例1の自動変速機の各変速段での歯車噛み合い回数と平均噛み合い数と同じ値を得ている。すなわち、実施例2の自動変速機の「従来技術との対比による有利性」については、実施例1と同様である。また、実施例2の自動変速機は、実施例1と同様に、複数の締結パターン(第1締結パターン〜第4締結パターン)を持ち、選択自由度が高いという作用効果を奏する。
次に、効果を説明する。
実施例2の自動変速機にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(8) 前記第2の遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、前記第1のサンギヤS1を常時固定して第1の固定メンバF1を構成しており、前記6つの摩擦要素は、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第1クラッチC1と、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第2クラッチC2と、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3との間を選択的に連結する第3クラッチC3と、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のキャリヤPC2との間を選択的に連結する第4クラッチC4と、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のリングギヤR2との間を選択的に連結する第5クラッチC5と、前記第2のキャリヤPC2をトランスミッションケースTCに係止可能な第1ブレーキB1と、により構成した。
このため、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる場合に比べ、ギヤの伝達効率が向上し、ギヤノイズが低く抑えられるし、耐久信頼性が向上するし、コスト的に有利にすることができる。加えて、適正な段間比を保ちながらもRC値を、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図る要求値に達する設定とすることができる。
実施例3は、第2の遊星歯車PG2をシングルピニオン型遊星歯車とした実施例1,2に対し、第2の遊星歯車PG2をダブルピニオン型遊星歯車とした例である。
まず、構成を説明する。
図33は、実施例3の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図33に基づいて、実施例3の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
実施例3の自動変速機は、図33に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、第3の遊星歯車PG3と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の固定メンバF1と、第1の回転メンバM1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第3クラッチC3(第3の摩擦要素)と、第4クラッチC4(第4の摩擦要素)と、第5クラッチC5(第5の摩擦要素)と、第1ブレーキB1(第6の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、ワンウェイクラッチOWCと、を備えている。
前記第1の遊星歯車PG1は、第1のダブルピニオンP1s,P1rを有するダブルピニオン型遊星歯車であり、第1のサンギヤS1と、該第1のサンギヤS1に噛み合うピニオンP1sと該ピニオンP1sに噛み合うピニオンP1rを支持する第1のキャリヤPC1と、前記ピニオンP1rに噛み合う第1のリングギヤR1とからなる。
前記第2の遊星歯車PG2は、第2のダブルピニオンP2s,P2rを有するダブルピニオン型遊星歯車であり、第2のサンギヤS2と、該第2のサンギヤS2に噛み合うピニオンP2sと該ピニオンP2sに噛み合うピニオンP2rを支持する第2のキャリヤPC2と、前記ピニオンP2rに噛み合う第2のリングギヤR2とからなる。
前記第3の遊星歯車PG3は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第3のサンギヤS3と、該第3のサンギヤS3に噛み合う第3のピニオンP3(第3のシングルピニオン)を支持する第3のキャリヤPC3と、前記第3のピニオンP3に噛み合う第3のリングギヤR3とからなる。
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸で、前記第2のサンギヤS2に常時連結している。
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸で、前記第3のリングギヤR3に常時連結している。
前記第1の固定メンバF1は、前記第1のキャリヤPC1を、トランスミッションケースTCに常時固定するメンバである。
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のリングギヤR1と前記第3のキャリヤPC3を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
前記第1クラッチC1は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
前記第2クラッチC2は、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。
前記第3クラッチC3は、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3の間を選択的に連結する第3の摩擦要素である。
前記第4クラッチC4は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2の間を選択的に連結する第4の摩擦要素である。
前記第5クラッチC5は、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第5の摩擦要素である。
前記第1ブレーキB1は、前記第2のリングギヤR2の回転を、前記トランスミッションケースTCに対し係止可能な第6の摩擦要素である。なお、この第1ブレーキB1と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
前記第1の遊星歯車PG1と前記第2の遊星歯車PG2と前記第3の遊星歯車PG3は、図33に示すように、駆動源が接続される前記入力軸INから前記出力軸OUTに向かって順に配列している。
図34は、実施例3の自動変速機において6つの摩擦要素のうち三つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。図35は、実施例3の自動変速機において前進8速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。以下、図34及び図35に基づいて、実施例3の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
実施例3の自動変速機は、6つの摩擦要素C1,C2,C3,C4,C5,B1のうち三つの同時締結の組み合わせにより、下記に述べるように前進8速及び後退1速の各変速段を達成する。
第1速(1st)の変速段は、図34に示すように、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第1ブレーキB1(またはワンウェイクラッチOWC)の同時締結により達成する。この第1速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=0回+3回+2回)となる。
第2速(2nd)の変速段は、図34に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第2速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第1の遊星歯車PG1と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+0回+2回)となる。
第3速(3rd)の変速段は、図34に示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第3速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、8回(=3回+3回+2回)となる。
第4速(4th)の変速段は、図34に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第4速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第1の遊星歯車PG1と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+0回+2回)となる。
第5速(5th)の変速段は、図34に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5の同時締結により達成する。この第5速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、8回(=3回+3回+2回)となる。
第6速(6th)の変速段は、図34に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3の同時締結により達成する。この第6速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3がいずれも噛み合いに関与しないため、合計回数は0回となる。
第7速(7th)の変速段は、図34に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。この第7速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第3の遊星歯車PG3のみが噛み合いに関与するため、合計回数は、2回(=0回+0回+2回)となる。
第8速(8th)の変速段は、図34に示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。この第8速の変速段での歯車噛み合い回数は、図35に示すように、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=0回+3回+2回)となる。
後退速(Rev)の変速段は、図34に示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1の同時締結により達成する。
次に、作用を説明する。
実施例3の自動変速機における「各変速段での変速作用」を説明する。
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図36のハッチングに示すように、ドライブ時、第2クラッチC2と第4クラッチC4とワンウェイクラッチOWCが同時締結され、コースト時、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第1ブレーキB1の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第4クラッチC4の締結と第1の固定メンバF1と第1の回転メンバM1により、第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1がトランスミッションケースTCに一体に固定されると共に、第2のリングギヤR2と第3のキャリヤPC3がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、リングギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のキャリヤPC2から出力する。この第2のキャリヤPC2の回転数は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、実施例1の第1速と同様に、第1速の変速段が達成される。
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図37のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転すると共に、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第3のサンギヤS3が直結される。第4クラッチC4の締結により、一体回転の第2の遊星歯車PG2と第1のサンギヤS1が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。したがって、実施例1の第2速と同様に、第2速の変速段が達成される。
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図38のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第4クラッチC4を経過し、第2のリングギヤR2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のリングギヤR2の回転数と、第2のサンギヤS2の回転数(=入力回転数)が規定されることで、残りの第2のキャリヤPC2の回転数が決定される。この第2のキャリヤPC2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、第3のキャリヤPC3には、第3クラッチC3介して入力回転数が入力される。このため、実施例1の第3速と同様に、第3速の変速段が達成される。
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図39のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
この第1クラッチC1と第4クラッチC4の同時締結により、第1のサンギヤS1と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。したがって、実施例1の第4速と同様に、第4速の変速段が達成される。
(第5速の変速段)
第5速(5th)の変速段では、図40のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第5クラッチC5が同時締結される。
この第1クラッチC1の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が直結される。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3クラッチC3→第3のキャリヤPC3→第1の回転メンバM1を経過し、第1のリングギヤR1が入力回転数にて回転する。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のリングギヤR1への入力回転を増速し、第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第5クラッチC5を経過し、第2のキャリヤPC2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のキャリヤPC2の回転数と、第2のサンギヤS2の回転数(=入力回転数)が規定されるため、残りの第2のリングギヤR2の回転数が決定される。この第2のリングギヤR2の回転数は、第1クラッチC1を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、第3のキャリヤPC3には、第3クラッチC3を介して入力回転数が入力される。このため、実施例1の第5速と同様に、第5速の変速段が達成される。
(第6速の変速段)
第6速(6th)の変速段では、図41のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3が同時締結される。
この第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3の同時締結により、第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転し、第3の遊星歯車PG3の三つの回転要素S3,PC3,R3が一体に回転する。第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1がトランスミッションケースTCに固定される。
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が入力回転数により一体に回転するため、出力軸OUTの回転数は、入力軸INからの入力回転数と同じ回転数となり、変速比1の第6速の変速段(直結変速段)が達成される。
(第7速の変速段)
第7速(7th)の変速段では、図42のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第1クラッチC1と第1ブレーキB1の同時締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が、トランスミッションケースTCに固定される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。したがって、実施例1の第7速と同様に、第7速の変速段が達成される。
(第8速の変速段)
第8速(8th)の変速段では、図43のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第3クラッチC3の締結と第1の回転メンバM1により、入力軸INと第1のリングギヤR1と第2のサンギヤS2と第3のキャリヤPC3が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2が、トランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、リングギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のキャリヤPC2から出力する。この第2のキャリヤPC2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、入力軸INの入力回転は、第3クラッチC3を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。このため、実施例1の第8速と同様に、第8速の変速段が達成される。
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図44のハッチングに示すように、第2クラッチC2と第5クラッチC5と第1ブレーキB1が同時締結される。
この第2クラッチC2の締結により、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が直結される。第1ブレーキB1の締結と第1の固定メンバF1により、第1のキャリヤPC1と第2のリングギヤR2が、トランスミッションケースTCに固定される。
したがって、第2のサンギヤS2に入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、リングギヤ固定の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2への入力回転を逆転し、第2のキャリヤPC2から出力する。この第2のキャリヤPC2の回転は、第2クラッチC2を経過し、第3のサンギヤS3にそのまま入力される。一方、第2のキャリヤPC2の回転は、第5クラッチC5を経過し、第1のサンギヤS1にそのまま入力される。このため、キャリヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、第1のサンギヤS1への入力回転を逆転し、第1のリングギヤR1から出力する。この第1のリングギヤR1の回転は、第1の回転メンバM1を経過し、第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。このため、実施例1の後退速と同様に、後退速の変速段が達成される。
実施例3の場合、図34に示すように、第1の遊星歯車PG1のギヤ比をρ1=-0.476、第2の遊星歯車PG2のギヤ比をρ2=0.375、第3の遊星歯車PG3のギヤ比をρ3=0.310とした場合、実施例1と同様に、隣接する変速段での適正な段間比を保ちながら、RC=8.043(=5.376/0.668)を得ている。そして、実施例3の1速ギヤ比に対する後退ギヤ比の値は、Rev/1st=0.989であり、実施例1と同様に、1近傍の値を得ている。さらに、実施例3の自動変速機での各変速段での歯車噛み合い回数と平均噛み合い数は、図35に示すように、従来例の平均噛み合い数4.8に対し少し低い平均噛み合い数4.75を得ている。すなわち、実施例3の自動変速機の「従来技術との対比による有利性」については、平均噛み合い数が同等であることを除いて、実施例1と同様である。また、実施例3の自動変速機は、実施例1と同様に、複数の締結パターン(第1締結パターン〜第4締結パターン)を持ち、選択自由度が高いという作用効果を奏する。
次に、効果を説明する。
実施例3の自動変速機にあっては、実施例1の(1)、(2)、(6)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(9) 前記第2の遊星歯車PG2は、ダブルピニオン型遊星歯車であり、前記第1のキャリヤPC1を常時固定して第1の固定メンバF1を構成しており、前記6つの摩擦要素は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第1クラッチC1と、前記第2のキャリヤPC2と前記第3のサンギヤS3との間を選択的に連結する第2クラッチC2と、前記第2のサンギヤS2と前記第3のキャリヤPC3との間を選択的に連結する第3クラッチC3と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のリングギヤR2との間を選択的に連結する第4クラッチC4と、前記第1のサンギヤS1と前記第2のキャリヤPC2との間を選択的に連結する第5クラッチC5と、前記第2のリングギヤR2をトランスミッションケースTCに係止可能な第1ブレーキB1と、により構成した。
このため、適正な段間比を保ちながらもRC値を、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図る要求値に達する設定とすることができる。
以上、本発明の自動変速機を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜3では、第1の遊星歯車PG1のギヤ比ρ1と、第2の遊星歯車PG2のギヤ比ρ2と、第3の遊星歯車PG3のギヤ比ρ3を、それぞれについて好適の値に設定する例を示した。しかし、各遊星歯車PG1,PG2,PG3のギヤ比ρ1,ρ2,ρ3は、ギヤ比設定が可能な範囲内の値であって、RC値の高いギヤ比や適切な段間比を得るように設定したものであれば、具体的な値は、実施例1〜3の値に限られるものではない。
実施例1〜3では、入出力軸を同軸配置とするFRエンジン車に適用される自動変速機の例を示したが、FRエンジン車に限らず、FFエンジン車やハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。