JP5209404B2 - フレーム部材およびそれを用いた燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Description
(a)酸により変性されたオレフィン系熱可塑性樹脂
(b)シランカップリング剤
(c)繊維状フィラー
本発明のフレーム部材によると、樹脂フレーム層を挟持する一対の接着層が、各々、セパレータを構成するプレートと接着される。本発明のフレーム部材における接着層は、第一に(a)酸により変性されたオレフィン系熱可塑性樹脂(以下、適宜「酸変性オレフィン系熱可塑性樹脂」と称す)を含む。熱可塑性樹脂を使用するため、従来の熱硬化性樹脂からなる接着剤のように、接着の際に長時間硬化させる必要はない。よって、接着作業が短時間で済む。これにより、セパレータ、ひいては燃料電池の生産性を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂は、不純物、汚れ等により硬化不良をおこしにくい。加えて、ポットライフを考慮する必要もない。
本発明のフレーム部材が用いられる燃料電池用セパレータは、積層された電極部材間に配置され、対向する二枚のプレートを備える。電極部材は、MEAと、MEAの厚さ方向両面に配置されている一対の多孔質層とを含む。一対の多孔質層は、各々、ガス拡散層のみから構成されていてもよく、ガス拡散層と、該ガス拡散層よりも気孔率が大きいガス流路層と、の積層体から構成されていてもよい。
接着層のマトリックス樹脂成分のうち、主成分となるのは、酸変性オレフィン系熱可塑性樹脂である。ここで、「主成分」とは、接着層のマトリックス樹脂成分を100重量%とした場合の50重量%以上を占める成分をいう。オレフィン系熱可塑性樹脂は、オレフィンのホモ重合体、オレフィンの共重合体、およびオレフィンとオレフィン以外の物との共重合体を含む。具体的には、オレフィンのホモ重合体には、炭素数が2〜20の単一の不飽和オレフィンからなる重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)が含まれる。オレフィンの共重合体には、炭素数が2〜20の不飽和もしくは多重不飽和炭化水素の一種以上からなる重合体が含まれる。例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/オクテン共重合体、エチレン/スチレン共重合体、エチレン/ブテン/オクテン共重合体、エチレン/プロピレン/ノルボルナジエン共重合体、プロピレン/ブテン共重合体等が挙げられる。オレフィン以外の物(オレフィン(原則としてエチレン)と共重合し得る物)には、酢酸ビニル、炭素数が1〜20のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、不飽和酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)が含まれる。オレフィンとオレフィン以外の物との共重合体としては、エチレン/酢酸ビニル、エチレン/アクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸ブチル等が挙げられる。
シランカップリング剤は、官能基としてエポキシ基、アミノ基、ビニル基等を有する化合物の中から、接着性等を考慮して適宜選択すればよい。シランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。例えば、エポキシ基を有する化合物から選ばれる一種以上を用いると、接着力がより向上すると共に、燃料電池の作動環境においても、接着力が低下しにくい。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
繊維状フィラーとしては、本発明のフレーム部材の使用環境を考慮して、チタン等の金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を使用すればよい。特に、炭素繊維、ガラス繊維が好適である。繊維状フィラーの大きさは、特に限定されるものではない。高温下における接着層の弾性率低下を効果的に抑制するためには、例えば、フィラー径を5μm以上とするとよい。10μm以上とするとより好適である。また、フィラー径を30μm以下とするとよい。20μm以下とするとより好適である。なお、フィラー径は、繊維状フィラーの長手方向に対する垂直断面における最大径である。さらに、繊維状フィラーの長手方向長さ(フィラー長さ)は、0.2mm以上とするとよい。0.5mm以上とするとより好適である。また、フィラー長さを25mm以下とするとよい。15mm以下とするとより好適である。
以下に、上記本発明のフレーム部材を備える本発明の燃料電池用セパレータ(以下、適宜「本発明のセパレータ」と称す)の一実施形態を示す。まず、本発明のセパレータを備える固体高分子型燃料電池の構成について説明する。図1に、固体高分子型燃料電池の斜視図を示す。
(a)実施例1〜5
まず、ポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレン(登録商標)」)60gと、無水マレイン酸(関東化学(株)製)0.6gと、を小型密閉式混練機(東洋精機(株)製「ラボプラストミル」、容量100cc)へ投入し、さらに有機過酸化物(日本油脂(株)製「パークミル(登録商標)D」)を添加して、240℃にて加熱溶融した。次に、上記加熱溶融物中に、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製「KBE402」:3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)3g(5重量%)を投入し、220℃で5分間混練した。続いて、繊維状フィラーとして、ガラス繊維あるいは炭素繊維を投入し、220℃で5分間混練した。ガラス繊維には、日東紡(株)製「CSX−3J−451」(フィラー径11μm、フィラー長さ3mm)を使用した。ガラス繊維の投入量は、0.6g(1重量%)、3g(5重量%)、6g(10重量%)、9g(15重量%)の四種類とした。炭素繊維には、東邦テナックス(株)製「HTA−C6−S」(フィラー径7μm、フィラー長さ6mm)を使用した。炭素繊維の投入量は、6g(10重量%)とした。混練後、T−ダイ法により厚さ80μmのフィルム状に成形し、接着層とした。得られた接着層を、後出の表1に示すように、実施例1〜5と番号付けした。
上記(a)の製造過程において、加熱溶融物中に、さらに架橋ポリメタクリル酸メチルからなる樹脂粒子(綜研化学(株)製「ケミスノー(登録商標)MX」)を投入して、接着層を製造した。樹脂粒子の投入量は、3g(5重量%)とした。この場合、ガラス繊維の投入量は、3g(5重量%)、6g(10重量%)の二種類とした。得られた接着層を、後出の表1に示すように、実施例6〜8と番号付けした。
比較のため、従来のエポキシ系樹脂を主成分とする接着剤(二液タイプ、セメダイン(株)製「EP331」)を準備し、比較例1とした。
製造した実施例、比較例の各接着層および比較例1の接着剤(以下、まとめて各接着層と称す)を、(a)〜(e)の項目により評価した。以下、順に説明する。
各接着層について、150℃における接着時間を測定した。すなわち、ステンレス製の基材間に各接着層を介在させて150℃で圧着し、接着が完了するまでに要した時間を測定した。
各接着層の接着力を評価するために、T字剥離試験を行った。まず、T字剥離試験に使用する試験片を作製した。幅1cm、厚さ0.1mmの短冊状のステンレス板を必要枚数準備し、その表面を脱脂した。二枚のステンレス板を対向させて配置し、ステンレス板間の隙間に各接着層を介在させ、温度150℃下、厚さ方向に10〜30μm圧縮させて、ステンレス板同士を接着した。このようにして、各試験片を作製した。
各接着層の弾性率の温度依存性を評価するために、各接着層について、温度と貯蔵縦弾性率との関係を測定した。まず、各接着層から、幅5mm、長さ20mm、厚さ50μmの板状の試験片を作製した。次に、作製した試験片を動的粘弾性測定装置(株式会社ユービーエム製「Rheogel−E4000」)に設置し、温度と貯蔵縦弾性率との関係を測定した。測定条件は、引っ張りモード、周波数:10Hz、初期荷重:自動モード、動歪み:±10μm、温度範囲:−40〜200℃、昇温速度:3℃/分、測定:2℃毎とした。そして、25℃における貯蔵縦弾性率に対する90℃における貯蔵縦弾性率の割合を算出し、弾性率比とした[弾性率比(%)=(90℃における貯蔵縦弾性率)/(25℃における貯蔵縦弾性率)×100]。弾性率比が大きい程、弾性率の温度依存性が小さい、すなわち、高温下において弾性率が低下しにくいといえる。
各接着層の耐クリープ性を評価するために、クリープ試験を行った。まず、各接着層を、縦1cm、横1cmの正方形状に切断し、各接着層ごとに、試験片を五枚ずつ準備した。次いで、縦1cm、横1cm、厚さ100μmのステンレス板を、各接着層ごとに六枚ずつ準備した。そして、各々のステンレス板の間に、上記接着層の試験片を一枚ずつ介装して、積層体試料を作製した。
T−ダイ法により、各接着層をフィルム状に製造する際の押し出し加工性を、次のように評価した。幅250mmの押し出し機を用いて、幅150mmのフィルムを成形した。この場合に、穴、段差、切れ等の不具合が生じない最小厚さを測定した。測定された厚さにより、押し出し加工性を、以下の三段階で評価した(記号は後出表1参照)。(i)100μm以下の場合:良(○印)、(ii)100μmを超え300μm以下の場合:やや不良(△印)、(iii)300μmを超える場合:不良(×印)。
20:MEA 21a:カソード多孔質層 21b:アノード多孔質層 22:電解質膜
23a:カソード触媒層 23b:アノード触媒層 24a、24b:ガス拡散層
25a、25b:ガス流路層
3:セパレータ
30:アノードプレート 31:フレーム部材 32:カソードプレート
310:樹脂フレーム層 311a:アノード接着層 311b:カソード接着層
4:シール部材
40a、40b、41a、41b、42a、42b:連通孔 43:凸部
60:試験片 61a、61b:ステンレス板 62:接着層 63a、63b:把持具
9:固体高分子型燃料電池
90a:空気供給孔 90b:空気排出孔 91a:水素供給孔 91b:水素排出孔
92a:冷却水供給孔 92b:冷却水排出孔 93、94:エンドプレート
M:モジュール
Claims (9)
- 積層された電極部材間に配置され、対向する二枚のプレートを備える燃料電池用セパレータにおいて、該プレート間に介装されるフレーム部材であって、
樹脂フレーム層と、該樹脂フレーム層を介して配置され以下の(a)〜(c)を含む一対の接着層と、からなり、
該プレート間を接着シールすることを特徴とするフレーム部材。
(a)酸により変性されたオレフィン系熱可塑性樹脂
(b)シランカップリング剤
(c)繊維状フィラー - 前記(b)のシランカップリング剤は、エポキシ基を有する化合物から選ばれる一種以上である請求項1に記載のフレーム部材。
- 前記(b)のシランカップリング剤の含有量は、前記接着層の全体を100重量%とした場合の1重量%以上10重量%以下である請求項1または請求項2に記載のフレーム部材。
- 前記(c)の繊維状フィラーは、ガラス繊維および炭素繊維の少なくとも一方を含む請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフレーム部材。
- 前記(c)の繊維状フィラーの含有量は、前記接着層の全体を100重量%とした場合の1重量%以上15重量%以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフレーム部材。
- 前記接着層は、さらに(d)球状の樹脂粒子を含む請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のフレーム部材。
- 前記(d)の樹脂粒子は、架橋アクリル系重合体および架橋スチレン系重合体から選ばれる一種以上からなる請求項6に記載のフレーム部材。
- 前記(d)の樹脂粒子の含有量は、前記接着層の全体を100重量%とした場合の0.5重量%以上50重量%以下である請求項6または請求項7に記載のフレーム部材。
- 第一プレートと、
該第一プレートに対向して配置されている第二プレートと、
該第一プレートおよび該第二プレートとの間に介装され、両プレート間を接着シールする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のフレーム部材と、
を備える燃料電池用セパレータ。
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