以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である水薬調剤装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、水薬調剤装置の基本的な動作を示すイメージ図であり、図3は、当該水薬調剤装置に搭載される元薬容器100の斜視図および一部断面図である。
この水薬調剤装置は、操作部18を介して入力された処方箋データに基づいて、1種類以上の水薬を、元薬容器100から投薬容器110に吐出し、水薬の調剤を行うものである。水薬調剤装置は、1以上の元薬容器100を保持する回転ユニット12や、投薬容器110を規定の吐出位置に移動させる移動秤ユニット14、元薬容器100に連結された配管29,30や分注ポンプ20、および、これらを制御する制御部10などから構成される。水薬を調剤する場合、回転ユニット12は、保持する元薬容器100を転倒させ、吐出ノズル27から水薬を吐出させる。また、移動秤ユニット14は、予め、この水薬の吐出位置まで投薬容器110を移動させておき、その内部に水薬が投入されるようにする。そして、移動秤ユニット14は、さらに、水薬が投入されるに伴って生じる投薬容器110の重量変化を検出し、制御部10に出力する。制御部10では、この重量変化に基づいて、水薬の吐出量を算出し、水薬の吐出の停止の可否を判断し、必要に応じて各種バルブV1,V2,V3やポンプ20の駆動を制御する。また、本実施形態の水薬調剤装置では、こうした調剤処理に先立って、あるいは、調剤処理中に、リークの有無や、吐出ノズル27の詰まり、元薬容器100に貯留された水薬の不足などを検出するエラー検知機能も有している。そして、これにより、より好適な水薬調剤処理が可能となっている。以下、この水薬調剤装置の具体的構成について詳説する。
元薬容器100は、調剤に用いられる水薬を貯留する容器である。この元薬容器100は、ユーザにより、予め、回転ユニット12にセットされる。このセット時、元薬容器100の口部には、図3に図示するような専用のキャップ25が装着される。このキャップ25は、吐出ノズル27およびエアノズル29が組み込まれた蓋部材である。吐出ノズル27は、水薬を吐出するためのノズルで、元薬容器100を回転ユニット12にセットする際には、当該吐出ノズル27の途中にピンチバルブV1が取り付けられる。ここで、この吐出ノズル27の元薬容器100内部への突出量、すなわち、キャップ25底面から吐出ノズル27の(正立状態における)下端までの長さは、極力小さく抑えられている。これは、水薬吐出時、すなわち、元薬容器100転倒状態において、元薬容器100内の水薬量が少なくなっても、出来る限り、吐出ノズルの下端(転倒状態においては上端)が、水薬中に位置するようにするためである。
また、エアノズル29は、主配管30を介してポンプ20に接続されるノズルである。このエアノズル29の途中には、2方電磁弁である元薬切替バルブV2が設けられており、当該元薬切替バルブV2の開閉によりポンプ20に接続されるエアノズル29、ひいては、元薬容器100が切り替えられる。そして、このエアノズル29を介して、ポンプ20から元薬容器100にエアが送りこまれ、適宜、内圧調整がなされる。このエアノズル29の(正立状態における)下端には、水薬の侵入を禁止しつつエアの送出を許容する逆止弁26が取り付けられている。この逆止弁26の種類は特に限定されないが、本実施形態では、取り扱いが容易なことから、ダックビルと呼ばれる鳥のクチバシ状の逆止弁26を用いている。
ところで、このキャップ25は、螺合により元薬容器100の口部に着脱自在に取り付けられる。キャップ25のうち、口部の上端面との接触位置には、弾性材料からなるシール体25aが配置されており、元薬容器100からの液漏れが防止されている。ただし、キャップ25と元薬容器100とのネジ部が適切に噛み合っていなかったり、キャップ25が十分に締め付けられていなかったりして、キャップ25が元薬容器100に対して緩んでいる場合がある。かかる場合には、元薬容器100を転倒させた際に、水薬が漏れ出し、様々な問題を引き起こす。そこで、本実施形態では、元薬容器100を調剤装置にセットした際には、必ず、このキャップ25の緩みなどのリークが無いかをチェックするようにしている。なお、このリークの有無検査の詳細については、後に詳説する。
キャップ25が取り付けられた元薬容器100は、回転ユニット12により保持される。回転ユニット12は、1以上(図示例では3つ)の元薬容器100を保持しつつ、回転することで当該保持している元薬容器100を正立状態および転倒状態に姿勢変更させるものである。そして、転倒した状態で、元薬容器100に接続された吐出ノズル27に設けられたピンチバルブV1が開放されることで、吐出ノズル27から水薬が吐出される。
なお、本明細書において、正立状態とは、ピンチバルブV1を開放したとしても、元薬容器100に貯留された水薬が吐出ノズル27から吐出されない程度の姿勢を意味している。したがって、図2(a)に図示するように、元薬容器100が、その口部を真上にした状態で直立している状態はもちろんのこと、図2(a)に図示する状態からの回転角度が90度未満の場合も、正立状態に該当する。逆に、転倒状態は、ピンチバルブV1を開放した場合に、重力の作用により元薬容器100に貯留された水薬が吐出ノズル27から吐出される程度の姿勢を意味している。したがって、図2(b)に図示するように、元薬容器100が、その口部を真下にした状態で直立している状態はもちろんのこと、図2(b)に図示する状態からの回転角度が90度以下の場合も、転倒状態に該当する。
ここで、本実施形態では、一つの回転ユニット12で複数(図示例では三つ)の元薬容器100を保持し、また、一つの水薬調剤装置に複数(図示例では三つ)の回転ユニット12を搭載し、水薬調剤装置全体として複数(図示例では合計九つ)の元薬容器100がセットできるようにしている。この水薬調剤装置にセットされる複数の元薬容器100は、全て、異なる種類の水薬を貯留するものであってもよいし、そのうちの幾つかは同種の水薬を貯留するものであってもよい。例えば、水薬の中でもシロップ剤などは、用いられることが多く、消費量が多い。かかる消費量が多い水薬の元薬容器100については、複数、搭載しておくことで、元薬容器100の交換作業回数を低減することができ、ひいては、作業者の負担を軽減することができる。
なお、この回転ユニット12は、セット状態では水薬調剤装置のフレーム内部に収容されており、元薬容器100を取り出せないようになっている。ただし、空になった元薬容器100を新しい元薬容器100との交換を可能にするために、各回転ユニット12は、フレーム外部に引き出し可能となっている。この回転ユニット12の引き出し動作、および、引き出された回転ユニット12の押し戻し動作は、新たな元薬容器をセットするセット動作として、図示しないセンサにより検出され、制御部10に通知される。後述するように、制御部10は、この回転ユニット12の引き出しおよび押し戻し動作が検知された場合には、当該回転ユニット12にセットされた元薬容器100の交換、ひいては、キャップ25の付け替えが行われたと判断し、その都度、リークの有無検査を行う。
ポンプ20は、主配管30およびエアノズル29を介して元薬容器100にエアを供給し、当該元薬容器100および配管29,30の内圧を可変する。より具体的には、このポンプ20は、水薬吐出の際に、対象となる元薬容器100に与圧を付与し、迅速な水薬吐出を促すなどの目的で駆動される。また、本実施形態では、リークの有無検査や吐出不良の原因特定などのためにも、ポンプ20を駆動する。なお、制御部10は、複数の切替バルブV2の開閉を制御することで、当該ポンプ20によりエア供給(加圧)する元薬容器100を切り替えている。
主配管30には、主バルブV3および圧力センサ21が設けられている。主バルブV3は、開閉されることで、ポンプ20と各元薬容器100との接続を許容・禁止するバルブであり、その駆動は制御部10により制御されている。なお、こうしたバルブV3,V2,V1と、ポンプ20は、元薬容器100および当該元薬容器100に連通された配管29,30の少なくとも一部を加圧する加圧手段として機能する。また、本実施形態では、万一、バルブV1,V2,V3が故障した際に水薬の意図しない漏れ等を防ぐために、バルブV1,V2,V3として、通電磁に開放状態、非通電時に閉鎖状態となるノーマルクローズバルブを採用している。
圧力センサ21は、主バルブV3と元薬切替バルブV2の間に設けられ、当該箇所における圧力を検出するものである。ここで、元薬切替バルブV2が開放されている場合、当該圧力センサ21で検出される圧力は、元薬容器100の内圧に相当する。また、元薬切替バルブV2が閉鎖された場合、当該圧力センサ21で検出される圧力は、元薬容器100を除いた配管30の内圧に相当することになる。別の見方をすれば、この圧力センサ21は、加圧手段での加圧対象部分の圧力変化を検出する圧力検出手段として機能することになる。なお、符号32は、異物の通過を阻害するフィルタである。
ここで、本実施形態で用いられる圧力センサ21は、予め記憶された閾値と、検出された圧力値Paと、を比較し、両値の高低を判定する閾値判定機能も備えている。この圧力センサ21に記憶される閾値としては、後述する第一設定値P1、第二設定値P2、第三設定値P3などがある。そして、圧力センサ21は、この設定値P1,P2,P3と、検出された圧力値Paとの比較結果を示す信号を検出結果として制御部10に出力するようになっている。なお、かかる圧力センサ21は、あくまで一例であり、制御部10において、検出値Paと設定値P1,P2,P3との大小関係が判断でき得るパラメータを検出結果として出力できるのであれば、他の態様の圧力センサを用いても良い。例えば、実際に検出された圧力値Paのみを検出結果として制御部10に出力するだけの圧力センサ(換言すれば閾値判定機能を有さない圧力センサ)を用いるとともに、制御部10において各種設定値P1,P2,P3と検出圧力値Paとを比較するようにしてもよい。
投薬容器110は、水薬調剤のために、水薬が吐出される容器である。この投薬容器110は、重量を検知する秤が内蔵された秤台34にセットされる。この秤台34は、XYテーブル36に組み込まれており、制御部10からの指示に応じて、適宜、水平方向に移動可能となっている。水薬調剤を行う場合、制御部10は、このXYテーブル36を駆動して、投薬容器110を、調剤に必要な水薬の吐出位置(通常は、当該水薬を貯留した元薬容器100の真下位置)に移動させる。ただし、当然ながら、投薬容器110を移動させるのではなく、元薬容器100、ひいては、当該元薬容器100を保持する回転ユニット12側を移動させるようにしてもよい。
秤台34は、投薬容器110の重量、ひいては、当該投薬容器110に投入された水薬重量を検知する水薬量検出手段として機能するものである。制御部10は、この検知された重量に基づいて、水薬の吐出量を算出し、水薬の吐出を許容または禁止するピンチバルブV1の開閉を制御する。なお、本実施形態では、重量に基づいて水薬吐出量を検知しているが、水薬吐出量が把握できるのなら、他の機構を用いてもよい。例えば、投薬容器110における液面レベルを検出し、当該液面レベルの変化から水薬吐出量(体積)を取得するようにしてもよい。
記憶部22は、調剤処理に必要な制御プログラムやデータを記憶する部位で、例えば、ハードディスクやメモリなどから構成される。調剤処理に必要なデータとしては、例えば、各水薬の特性を示す特性情報テーブルや、複数の元薬容器100のセット位置を示す位置情報テーブルなどが挙げられる。図4(a)および図4(b)は、それぞれ、特性情報テーブル82および位置情報テーブル84の一例である。特性情報テーブル82には、各水薬の比重や、粘性、攪拌の要否、消費期限、混在が禁止されている水薬種類など、水薬の吐出処理や品質管理に必要な情報が記憶されている。位置情報テーブル84には、各水薬(元薬容器100)種類や、セット位置、水薬の有無(元薬容器100が空か否か)などの情報が互いに対応付けられて記憶されている。この特性情報テーブル82や位置情報テーブル84は、ユーザが操作部18を操作することで作成されるようにしてもよいし、ネットワークなどを介して外部のコンピュータから送信されるようにしてもよい。制御部10は、特性情報テーブル82を参照して、秤台34で検出された水薬重量を水薬体積に変換したりする。また、位置情報テーブル84を参照して、投薬容器110の移動位置(すなわち、調剤に必要な水薬の吐出位置)を特定したり、一つの元薬容器100が空になった場合に同種の水薬を貯留する他の元薬容器100があるかを判断したりする。なお、閾値判定機能を有さない圧力センサ21を用いる場合には、この記憶部22に、後述するリークの有無検査や、吐出不良の有無検査、吐出不良の原因判定の際に用いられる各種設定値P1,P2,P3を記憶するようにしてもよい。
出力部16は、各種情報をユーザに提示するもので、例えば、ディスプレイやスピーカ、LEDランプなどを含むことができる。この出力部16で提示される情報としては、例えば、調剤処理の進行状況や結果を示す鑑査画面や、エラーの有無とその種類などが挙げられる。操作部18は、ユーザからの各種指示を受け付けるもので、例えば、キーボードやタッチパネル、マウス、音声入力装置などを含むことができる。また、操作部18は、他の情報機器との通信インターフェースを含んでもよく、当該他の情報機器を介して各種操作指示が入力されるようにしてもよい。調剤処理の内容、すなわち、調剤すべき水薬種類とその量のリストである処方箋データは、この操作部18を介して入力される。制御部10は、操作部18を介して入力された各種操作指示に基づいて、ポンプ20や、バルブV1,V2,V3、移動秤ユニット14などを駆動する。
次に、この水薬調剤装置で行う調剤処理の全体的な流れについて図5を参照して説明する。調剤処理を行うに先立って、ユーザは、水薬調剤に用いる各種水薬を貯留した元薬容器100を本調剤装置にセットする(S12)。具体的には、回転ユニット12を、装置フレーム外部に引き出し、この回転ユニット12に、キャップ25を取り付けた元薬容器100を正立状態で保持させる。そして、その後、引き出した回転ユニット12を押し戻して、再び、装置フレーム内に収容する。
この、回転ユニット12の引き出し・押し戻し動作を検出した場合、制御部10は、元薬容器100の交換がなされたと判断する。この場合、制御部10は、リークの有無、特に、元薬容器100に装着されたキャップ25に緩みが無いか、の判断を行う(S14)。このリークの有無判断の詳細な流れについては後に詳説する。検査の結果、リークが生じている場合には、その旨を知らせるエラーをユーザに通知し、当該エラーが解消されるまで調剤処理の実行を禁止する(S32)。
一方、リークが無いと判断された場合、制御部10は、回転ユニット12を駆動して、元薬容器100を転倒状態にし、その状態で待機させる(S18)。なお、当然ながら、意図しない水薬吐出を防止するために、この転倒時においてピンチバルブV1は閉鎖状態(通電OFF)にしておく。
その後、ユーザから調剤処理の実行を指示する処方箋データが入力されれば(S20でYes)、制御部10は、当該調剤処理が実行可能か否かを判断する(S22)。具体的には、制御部10は、当該処方箋データで指示された水薬の有無や位置を確認する。そして、指定された水薬が搭載されていない場合には、その旨をユーザに通知し、調剤処理を続行するか否かを問い合わせる。そして、調剤処理の続行がユーザにより否定された場合、制御部10は、調剤処理の実行が不可能と判断する。この場合、制御部10は、エラーを出力し(S32)、処理を終了する。
一方、指定された水薬が全て搭載されている、あるいは、一部水薬が搭載されていなくても調剤処理の続行がユーザから指示された場合、制御部10は、調剤処理の実行可能と判断し、調剤処理を続行する。
具体的には、制御部10は、XYテーブル36を駆動して、投薬容器110がセットされた秤台34を、調剤に必要な水薬の吐出位置へと移動させる(S24)。また、当該調剤に必要な水薬を貯留する元薬容器100を特定し、当該元薬容器100からの水薬吐出を実行する(S26)。なお、この水薬吐出処理の詳細についても後に詳説する。一つの水薬の吐出が完了すれば、続いて、制御部10は、調剤が完了したか否か、換言すれば、必要な水薬全ての吐出が完了したか否かを確認する(S28)。確認の結果、調剤が完了していない場合には、次に必要な水薬を選定し(S30)、再度、ステップS24〜S28を実行する。調剤が完了した場合には、ユーザにその旨を通知して、処理を終了する。
ここで、既述したとおり、本実施形態の水薬調剤装置は、元薬容器100を転倒させた状態で、待機および水薬吐出処理を行う転倒式の水薬調剤装置である。かかる転倒式水薬調剤装置では、キャップ25の緩みがあると、転倒時に水薬が漏れ出してしまい、大きな問題を招く。また、キャップ25の緩みが無くても、配管系(主配管30やエアノズル29)に空気漏れがあると、水薬吐出に際して、元薬容器100に適切な与圧が付与できないばかりでなく、後述する吐出不良の原因判定も行うことができない。そこで、本実施形態では、元薬容器100がセットされた場合には、必ず、リークの有無判断を行うようにしている。
以下、このリークの有無判断の詳細な流れについて図6〜図9を参照して説明する。図6、図7は、リークの有無判断の流れを示すフローチャートである。また、図8はリーク有無判断時における圧力センサ21での検出される圧力値Paの変化の一例を示す図である。さらに、図9は、このリーク有無判断時におけるバルブV1,V2,V3およびポンプ20のタイミングチャートである。なお、この図9において、各バルブV1,V2,V3は、Lowで閉鎖、Highで開放状態となる。
リークの有無判断を開始する際には、予め、元薬容器100を正立状態、全てのバルブV1,V2,V3を閉鎖状態、ポンプ20を停止状態としておく(S40)。続いて、ポンプ20を駆動し、エア供給を開始する(S42)。ただし、この時点では、ポンプ20と元薬容器100との間に介在する元薬切替バルブV2および主バルブV3は閉鎖状態であるため、元薬容器100にエアは供給されない。
ポンプ20を駆動してから一定時間経過してから、主バルブV3および元薬切替バルブV2を開放する。なお、ここで、本実施形態では、このリーク有無判断を各元薬容器100ごとに行う。したがって、このステップS44で開放される元薬切替バルブV2は、複数存在する元薬切替バルブV2のうち、リーク有無判断の対象となる一つの元薬容器100に対応する元薬切替バルブV2である。ただし、場合によっては、複数の元薬容器100に対して同時にリークの有無判断を行うようにしてもよく、その場合には、複数の元薬切替バルブV2を開放するようにする。
バルブV2,V3の開放に伴い、元薬容器100の内部が加圧されることになる。元薬容器100が加圧されれば、当該元薬容器100と連通された配管29,30の内圧も上昇し、その値が圧力センサ21で検出されることになる。圧力センサ21は、この検出された圧力値Paを、元薬容器100の内圧値としてモニタリングし、この検出値Paが、予め規定された第一設定値P1以上か否かを判断する(S46)。
ここで、この第一設定値P1は、実験結果などに基づいて予め設定される値で、リークが存在しない状態で元薬容器100を加圧した場合に、規定の設定時間T1内に十分に到達しうる内圧値に設定されている。
検出値Paが、この第一設定値P1未満であった場合、圧力センサ21は、その旨を示す信号を検出結果として制御部10に出力する。この場合、制御部10は、バルブV3,V2を開放してからの経過時間が、規定の設定時間T1以下か否か、すなわち、タイムアップしているか否かを判断している(S56)。タイムアップ前の場合には、そのまま、圧力センサ21は、検出値Paのモニタリング(S46)を継続する。
一方、タイムアップしたにも関わらず、圧力センサ21から、検出値Paが第一設定値P1に到達したことを示す信号が出力されなかった場合(S46でNo、S56でYes)、すなわち、検出値Paが図8における一点鎖線のような波形をとった場合、制御部10は、ポンプ20から元薬容器100までの間で、リークが発生していると判断する(S58)。この場合は、ステップS40aへ進み、後述するリーク発生箇所の特定を行う。
一方、タイムアップ前に、検出値Paが第一設定値P1に到達した旨を示す信号が圧力センサ21から検出結果として出力された場合(S46でYes)、制御部10は、主バルブV3を閉鎖したうえで、ポンプ20の駆動を停止する(S48)。これにより、主バルブV3から元薬容器100までの間が閉じた系となる。しかしながら、主バルブV3から元薬容器100までの間に、何らかのリークが生じている場合には、元薬容器100および配管30の内圧は、徐々に低下するはずである。
制御部10は、このリークの有無を判断するために、加圧停止後も圧力センサ21での検出結果をモニタリングする。すなわち、タイムアップ前(規定の設定時間T2経過前)に、検出値Paが予め規定された第二設定値P2未満である旨を示す信号が圧力センサ21から出力されるか否かを監視する(S50,S52)。ここで、第二設定値P2は、実験結果などに基づいて予め設定される値で、リークが存在しない状態で元薬容器100を第一設定値P1まで加圧してから放置した場合に、規定の設定時間T2、維持でき得る圧力値に設定されている。
タイムアップ前に検出値Paが第二設定値P2未満となったことを示す信号が圧力センサ21から出力された場合(S50でYes)、すなわち、図8において、破線で示すような圧力変化の場合、制御部10は、リークが発生していると判断する(S58)。この場合は、ステップS40aへ進み、後述するリーク発生箇所の特定を行う。
一方、タイムアップしても検出値Paが第二設定値P2以上であることを示す信号が圧力センサ21から出力されている場合(S50でNo、S52でYes)、すなわち、図8において、実線で示すような圧力変化の場合、制御部10は、リークは無いと判断し(S54)、リーク有無判断を終了する。なお、必要であれば、同様の手順で、他の元薬容器100についてもリーク有無判断を行えばよい。
一方、ステップS58において、リーク有りと判断された場合には、続いて、当該リークの発生箇所を特定する。このリーク発生箇所の特定(S40a〜S58b)は、元薬切替バルブV2を閉鎖した状態、換言すれば、元薬容器100を加圧対象から除外した状態で、配管29,30を加圧し、その圧力変化を監視することで行われる。別の見方をすれば、このリーク発生箇所の特定の流れは、開放・閉鎖するバルブが異なるだけで、リーク有無判断(S40〜S58)とほぼ同じである。
すなわち、リークの存在が確認され、当該リークの発生箇所を特定する場合、制御部10は、ポンプを駆動した状態で、主バルブV3のみを開放(元薬切替バルブV2、ピンチバルブV1は閉鎖)し、ポンプ20から元薬切替バルブV2までの間の配管のみを加圧する(S40a〜S44a)。この加圧により、所定時間内に、圧力センサ21での検出値Paが規定の第一設定値P1に到達しない場合(S46aでNo、S56aでYes)には、ポンプ20から元薬切替バルブV2までの間の配管において、リークが生じていると判断する(S58a)。この場合、制御部10は、配管系リークである旨を示すエラーをユーザに通知し、当該エラーが解消されるまで、調剤処理の実行を停止する(図5におけるS32)。
一方、所定時間内に、圧力センサ21での検出値Paが規定の第一設定値P1に到達した場合(S46aでYes)、制御部10は、主バルブV3を閉鎖するとともにポンプ20の駆動を停止し、加圧を停止する(S48a)。そして、その状態で、制御部10は、圧力センサ21での検出値Pa、すなわち、主バルブV3から元薬切替バルブV2までの配管の内圧値を監視する。監視の結果、所定時間経過する前に、検出値Paが第二設定値を下回った場合(S50aでYes)、制御部10は、この主バルブV3から元薬切替バルブV2までの間でリークが発生していると判断する(S58a)。この場合、制御部10は、配管系リークである旨を示すエラーをユーザに通知し、当該エラーが解消されるまで、調剤処理の実行を停止する(図5におけるS32)。
一方、所定時間に、検出値Paが第二設定値以上を維持できた場合(S50aでNo、S52aでYes)、制御部10は、ステップS58で検出されたリークの原因は、主バルブV3から元薬切替バルブV2までの間にはなく、元薬容器100、特に、元薬容器100に取り付けられたキャップ25の緩みにあると判断する(S58b)。この場合、制御部10は、キャップ25の緩みによるリークであることを示すエラーをユーザに通知し、当該エラーが解消されるまで、調剤処理の実行を停止する(図5におけるS32)。
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、調剤処理、ひいては、元薬容器100の転倒処理に先立って、リークの有無、特にキャップ25の緩みの有無が確認される。そのため、キャップ25が緩んだまま、元薬容器100を転倒させてしまい、水薬が漏れるという問題を確実に防止することができる。また、リークの存在が確認された場合には、当該リークの発生箇所も特定されるため、リークに対して、より迅速に対応することができる。
ところで、この転倒式の水薬調剤装置においては、リークだけでなく、元薬容器100から水薬が吐出されない水薬の吐出不良という問題も当然に発生する。本実施形態では、水薬吐出処理(図5におけるS26)時に、この水薬吐出不良の有無と、その原因特定についても行っている。
この水薬吐出処理の詳細な流れについて図10、図11を参照して説明する。図10は、水薬吐出処理の詳細な流れを示すフローチャートである。また、図11は、水薬吐出不良発生時における圧力センサ21での検出値Paの変化の一例を示す図である。
ここで、水薬を吐出する前の待機状態では、元薬容器100は転倒状態、ピンチバルブV1、元薬切替バルブV2、主バルブV3は閉鎖状態、ポンプ20は駆動停止状態となっている(S60)。この待機状態から、水薬を吐出する場合、制御部10は、まず、ポンプ20を駆動する(S62)。続いて、主バルブV3と、吐出すべき水薬を貯留した元薬容器100に対応する元薬切替バルブV2を開放する(S64)。これにより、元薬容器100にエアが供給され、元薬容器100の内部が加圧される。この加圧により付与される圧力は、水薬を良好に吐出させるための与圧として機能する。
元薬容器100が、適度に加圧されれば、続いて、制御部10は、吐出ノズル27に取り付けられたピンチバルブV1の開放を指示する(S66)。この指示によりピンチバルブV1が開放されると、吐出ノズル27からの水薬の吐出が開始されることになる。
ピンチバルブV1の開放を指示した後、制御部10は、秤台34に搭載された重量センサでの検出値Maをモニタリングする。ここで、この検出値Maは、投薬容器110に水薬が投入されるに伴って増加するものであり、この検出値Maの変化量は、当該投薬容器110に投入された水薬重量とみなすことができる。制御部10は、この検出値Maが、予め、算出された目標重量M1(投薬容器110の重量に、目標吐出水薬重量を付加した値)に到達するか否かを監視する(S68)。
監視の結果、検出値Maが、目標重量M1に到達すれば(S68でYes)、調剤に必要な分量の水薬が投薬容器110に吐出されたと判断し、水薬の吐出を停止する。具体的には、ピンチバルブV1を閉鎖する(S70)。そして、その後は、元薬切替バルブV2、主バルブV3の順で閉鎖し、最後に、ポンプ20を駆動停止し、加圧も停止する。そして、これにより、水薬の吐出処理(図5におけるS26)が終了となる。
一方、監視の結果、検出値Maが目標重量M1未満の場合(S68でNo)、制御部10は、吐出ノズル27の開放を指示してからの経過時間が、規定の待機時間T3経過前か否か、換言すれば、タイムアップしているか否かを判断する(S84)。タイムアップ前の場合は、再びS68に戻り、検出値Maの監視、換言すれば、水薬吐出量の監視を継続する。
一方、検出値Maが目標重量M1に到達する前に、タイムアップした場合(S68でNo、S84でYes)、制御部10は、元薬容器100から水薬が吐出されない、あるいは、吐出されていても、その吐出速度が極めて低い吐出不良が発生していると判断する。ここで、吐出不良の原因としては、元薬容器100が空になった水薬不足と、それ以外の配管系異常と、がある。配管系異常の具体例としては、例えば、吐出ノズル27の詰まりや、故障等によるピンチバルブV2の(制御部10から開放指示されても)開放不能などがある。本実施形態では、この吐出不良の原因に応じて、その後の処理を若干異ならせている。そのため、ステップS84において、吐出不良が検出された場合、制御部10は、当該吐出不良の原因を特定するために、さらに、ステップS86〜S96の処理を実行する。
すなわち、吐出不良が検出された場合、制御部10は、圧力センサ21での検出値Paが、予め、規定された第三設定値P3を上回っていることを示す信号が圧力センサ21から出力されているか否かを確認する(S86)。ここで、この第三設定値P3は、実験結果などに基づいて予め設定される値で、配管系異常が無い状態(すなわち、吐出ノズル27の詰まりが無く、かつ、ピンチバルブV2が適切に開放されている状態)で、元薬容器100が到達しうる圧力値に設定されている。
すなわち、吐出ノズル27の詰まり等が無い場合、ポンプ20により加圧されても、当該加圧を解消するべく、吐出ノズル27から水薬またはエアが流出する。そのため、配管系異常が無い場合、元薬容器100の内圧は、過度に上昇することはなく、通常、図11において破線で示すような変化となる。第三設定値P3は、この配管異常が無い場合において、元薬容器100の内圧値がとり得る上限値を基準として設定されている。
なお、図11に示すように、配管系異常が無い場合、検出値Pa(図11における破線)は、ある程度の値Pr程度まで上昇した後に、一気に低下する。かかる圧力波形となるのは、エアノズル29の先端に設けられた逆止弁26の影響によるものである。既述したとおり、本実施形態では、水薬のエアノズル29内への流入を防止するために、ダックビル式の逆止弁26を用いているが、かかる逆止弁26では、ある基準値(図示例ではPr)まで圧力が上昇しない限り、順方向への流れも禁止される。一方で、ある基準値まで一度、圧力上昇すれば、その後は、当該基準値以下であっても、順方向への流れが許容されるため、図11において破線で示すような圧力変化を示すことになる。
確認の結果、検出値Pa(ひいては元薬容器100の内圧値)が、第三設定値P3を上回っていることを示す信号が圧力センサ21から出力されている場合(S86でYes)、制御部10は、吐出ノズル27から水薬またはエアが流出できない配管系異常が生じていると判断する(S88)。すなわち、配管系異常が生じている場合、エアが外部に流出しないため、圧力センサ21での検出値Paは、図11において実線で示すように徐々に上昇し、第三設定値P3を超過することになる。この場合、制御部10は、ポンプ20の駆動を停止するとともに、全てのバルブV1,V2,V3を閉鎖する。そして、配管系異常が発生している旨のエラーを通知し、調剤処理を停止する(S90)。
一方、検出値Paが、第三設定値P3以下であることを示す信号が圧力センサ21から出力された場合、制御部10は、配管系異常は無いものの、元薬容器100が空となったために水薬が吐出されない水薬不足であると判断する(S92)。この場合も、制御部10は、配管系異常の場合と同様に、ポンプ20の駆動を停止するとともに、全てのバルブV1,V2,V3を閉鎖する。ただし、その後は、即座にエラー通知するのではなく、まず、予備の水薬があるか否かを確認する(S94)。
すなわち、本実施形態の水薬調剤装置は、複数の元薬容器100が搭載可能となっており、場合によっては、同種の水薬の元薬容器100を複数搭載することも可能となっている。そのため、一つの元薬容器100において水薬が空になったとしても、同種の水薬を貯留した他の元薬容器100が搭載されている場合もある。
したがって、水薬不足による吐出不良が検出された場合、制御部10は、記憶部22に記憶されている位置情報テーブル84(図4参照)などを参照し、現在、使用していた元薬容器100と同種の水薬を貯留している他の元薬容器100、すなわち、予備の水薬が無いかを確認する(S94)。確認の結果、同種の水薬を貯留している他の元薬容器100がある場合には、エラーを通知することなく、当該他の元薬容器100を用いての水薬吐出に切り替える(S98)。すなわち、投薬容器110を、当該他の元薬容器100の吐出位置に移動させるとともに、当該他の元薬容器100のバルブ開放などを実行する。そして、このように、一つの元薬容器100が空になった場合に、他の元薬容器100に自動的に切り替えるようにすることにより、元薬容器100交換に伴う調剤処理の効率低下や、ユーザの手間を低減することができ、より効率的に調剤処理を行うことができる。なお、一つの元薬容器100が空になった場合には、その旨が分かるように、位置情報テーブル84などに記憶しておくことが望ましい。
一方、現在、使用していた元薬容器100と同種の水薬を貯留している他の元薬容器100、すなわち、予備の水薬が無い場合、制御部10は、水薬不足を示すエラーを通知するとともに、調剤処理を停止する(S96)。この通知を受けた場合、ユーザは、空になった元薬容器100を、新しい元薬容器100に交換するなどする。なお、この水薬不足を通知する際には、当該空になった水薬の搭載位置なども併せて通知することが望ましい。
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、吐出不良の有無だけでなく、当該吐出不良の原因まで特定している。そして、これにより、吐出不良発生時において、ユーザが取るべき対応が明確となり、より迅速に次の処理に進むことができる。また、水薬不足か否かを判断することにより、場合によっては、吐出不良が発生しても、そのまま、別の元薬容器100を用いての水薬吐出を継続することができ、調剤処理の効率を向上することができる。
また、これまでの説明から明らかなとおり、本実施形態では、元薬容器100が、正立状態ではリークの有無とその発生箇所を、転倒状態では吐出不良の有無とその原因とを判定している。換言すれば、元薬容器100の姿勢に応じて、異なる二種類のエラーに関する検査を行っている。その結果、元薬容器100の姿勢が適宜、変更される転倒式の水薬調剤装置であっても、適切にリークや吐出不良を的確に検出できる。なお、ここで説明した構成は、一例であり、成立状態でリークの有無、転倒状態で吐出不良の有無が検出できるのであれば、適宜、変更されてもよい。例えば、リークの発生箇所や吐出不良の原因特定処理などは省略されてもよい。