JP5207945B2 - 液体吐出ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
インクジェット記録方式に適用される液体吐出ヘッドは、一般に微細な液体吐出口、液体流路および該液体流路の一部に設けられるエネルギー発生素子を複数備えている。これらの液体流路や液体吐出口は微小な構造物であり、高精度で作製する技術が求められている。そのような技術として、精度、工程の簡便さの観点から、フォトリソグラフィー法が用いられている。
近年、インクジェット記録方式においては、吐出液滴の被記録媒体への到達精度を向上させるため、記録ヘッドと被記録媒体との距離が非常に小さいものとなってきている。そのため、被記録媒体におけるシワなどの表面凹凸や被記録媒体の詰まりなどにより、記録ヘッドの表面に被記録媒体が接触することがある。前述のフォトリソグラフィー法で形成した液体吐出口を有するノズルでは、該液体吐出口周囲のノズル表面が樹脂材料からなるために、被記録媒体の接触により、ノズル表面にダメージが生じる場合があった。このようなダメージが液体吐出口近傍(ノズル部)で起こった場合、吐出液滴の吐出方向が乱れ、印字品位の低下を招くこととなる。
そこで、液体吐出口を含むノズル表面の強度を向上させる方法として、一般に、非晶性シリカなどの無機酸化物や樹脂からなるフィラーを樹脂材料に添加することにより樹脂材料の物性を調整することが知られている。例えば、特許文献1には、無機フィラーの添加により線膨張係数を低減させたエポキシ樹脂を用いてトランスファーモールド成形法によりインクジェット記録ヘッドを製造する方法が開示されている。
特開平6−008439号公報
上述のように無機微粒子を樹脂材料に添加することにより、樹脂材料の弾性率を向上させ、機械的強度を向上させることができる。しかし、ノズル表面の強度を上げるために無機微粒子を樹脂材料に添加した場合、無機微粒子の影響により樹脂材料の弾性率が上昇し、それにともない応力が上昇する場合があった。応力が上昇すると、吐出口部材の歪み、割れ、剥がれなどの問題が生じる場合がある。
また、とくに光硬化性樹脂の場合、無機微粒子の添加はその硬化特性に影響を与えるため、添加量によっては、例えば解像性、コントラストなどのパターニング特性の低下、基材に対する密着性の低下を招く場合があった。
また、上述のように、特に吐出口の形状は印字品位に影響を及ぼすものであり、吐出口周囲の機械的強度が高い方が望ましい。
そこで、本発明の目的は、パターニング特性、密着性等のノズル材としての好ましい機能を有しつつ、ノズル表面、特に吐出口周囲の機械的強度が向上したインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することにある。
発明者らは鋭意検討の結果、カチオン重合可能な樹脂、光カチオン重合開始剤及び無機微粒子を含む光硬化性樹脂において、露光部と未露光部との境界領域に無機微粒子が押し出されることを発見した。そして、その無機微粒子が押し出された境界領域を再度露光することにより、その境界領域のパターン端部の強度を向上することができることを見出した。また、このようにして得られた樹脂組成物パターンを液体吐出ヘッドのノズル部材に適用した場合、該ノズル部材は被記録媒体との接触に強く、耐久性の高いことを見出し、特に吐出口周囲の機械的強度を高くすることができることを見出した。
すなわち、本発明の一実施態様によれば、液体吐出ヘッドの製造方法であって、(1)液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられた基板の上に、少なくともカチオン重合可能な樹脂、光カチオン重合開始剤及び無機微粒子を含む光硬化性樹脂組成物を設け、ノズル部材となる層を形成する工程と、(2)該ノズル部材となる層に、第1の吐出口パターンを露光する工程と、(3)該ノズル部材となる層に、第2の吐出口パターンを露光する工程と、(4)現像によりノズル部材及び吐出口を形成する工程と、をこの順で有し、前記第1の吐出口パターンと第2の吐出口パターンにおける吐出口形状は同一の中心点を持つ相似形であり、さらに前記第1の吐出口パターンよりも第2の吐出口パターンの吐出口面積のほうが小さいことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法が提供される。
また、本発明の別の実施態様では、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、液体を吐出するための吐出口と、該吐出口へ液体を供給するためのインク流路と、を備える液体吐出ヘッドであって、前記吐出口を形成する部材は、カチオン重合可能な樹脂と、光カチオン重合開始剤と、無機微粒子と、を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、さらに前記吐出口の周囲領域の前記無機微粒子の濃度が前記周囲領域の外側領域に比較して高いことを特徴とする液体吐出ヘッドが提供される。
本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法により、吐出口周囲の無機微粒子濃度を吐出口周囲の外側領域と比較して高くすることができる。したがって、パターニング特性、密着性などの樹脂特性を損なうことなく吐出口周囲の機械的強度を向上させることができ、耐久性に優れたノズル部材を形成することができる。そのため、長期にわたって高品位の画像記録が可能な信頼性の高い液体吐出ヘッドを製造することができる。
上述のように、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、液体吐出ヘッドの製造方法であって、(1)液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられた基板の上に、少なくともカチオン重合可能な樹脂、光カチオン重合開始剤及び無機微粒子を含む光硬化性樹脂組成物を設け、ノズル部材となる層を形成する工程と、(2)該ノズル部材となる層に、第1の吐出口パターンを露光する工程と、(3)該ノズル部材となる層に、第2の吐出口パターンを露光する工程と、(4)現像によりノズル部材及び吐出口を形成する工程と、をこの順で有し、前記第1の吐出口パターンと第2の吐出口パターンにおける吐出口形状は同一の中心点を持つ相似形であり、さらに前記第1の吐出口パターンよりも第2の吐出口パターンの吐出口面積のほうが小さいことを特徴とする。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。また、本説明では、本発明の適用例として、インクジェット記録ヘッドを例に挙げて説明を行うが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、バイオッチップ作製や電子回路印刷用途の液体吐出ヘッド等にも適用できる。
まず、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法では、光のような何らかの外部刺激により化学反応が進行し、反応部位と未反応部位との間に化学ポテンシャルの差が発生し、それにより反応部位/未反応部位で化学組成の濃度勾配が生じることを利用するものである。そのため、感光性樹脂のパターニング(光硬化反応)によって吐出口パターンのような微細な構造物を形成するタイプのインクジェット記録ヘッドに対して特に有用である。近年、そのようなインクジェット記録ヘッド及びその製造方法としては多数報告されている。例えば、特許第03524258号、特開2007−76368号公報のようなカチオン重合性の光硬化性樹脂を用いた系では好適に用いることができる。
次に、本発明のノズル形成部材として用いられる光重合性樹脂組成物について説明する。本発明における光重合性樹脂組成物は、少なくとも以下の成分(a)〜(c)を含有するものである。
(a)カチオン重合可能な樹脂
(b)光カチオン重合開始剤
(c)無機微粒子
(a)カチオン重合可能な樹脂
ここでカチオン重合可能な樹脂(a)としては、特に制限されるものではなく、一般に公知のカチオン重合可能な樹脂を用いることができ、例えば、カチオン重合性基である、ビニル基、環状エーテル基などを有する樹脂を意味する。なかでもエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基を有する樹脂が好適に用いられる。
エポキシ樹脂の具体例としては、以下のようなものを挙げることができる。ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル若しくはビスフェノール−F−ジグリシジルエーテル等のビスフェノール骨格を有するモノマーまたはオリゴマーからなるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシ構造を有する樹脂。または、下記の式(1)で表されるような脂環型の骨格の側鎖にエポキシ基を有する部位を持つ多官能エポキシ樹脂も好適に用いられる。
Figure 0005207945
(式中、nは整数を表す。)
また、式(2)で表されるようなビスフェノール型エポキシ樹脂も好適に用いられる。
Figure 0005207945
(式中、mは整数を表す。)
良好なパターニング特性を得るためには、これらカチオン重合可能な樹脂は重合前の段階で、室温で固体状、あるいは融点が40℃以上であるものが好ましい。また、エポキシ当量(又はオキセタン当量)が2000以下、さらに好ましくは、1000以下の化合物が好適に用いられる。エポキシ当量が2000以下のエポキシ樹脂を用いることで、硬化反応の際の架橋密度や、硬化物のTgもしくは熱変形温度、基板に対する密着性、耐インク性等を向上させ易い。
一方、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法では、化学ポテンシャルの差により、無機微粒子が硬化部から未硬化部へ移動する現象を利用する。そのためには、上記のようなカチオン重合可能な樹脂に併せて、重合反応時の温度(ベーク温度)での流動性を付与するために、低分子のカチオン重合性化合物を添加することも好ましい。このような低分子のカチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ希釈剤として用いられる、単官能あるいは2官能のエポキシ化合物、ビニル化合物、オキセタン化合物が挙げられる。
低分子のカチオン重合性化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド2021 P」)、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2:8,9ジエポキシリモネンやその類縁体等が挙げられる。
また、オキセタン基を含有するカチオン重合可能な樹脂として、フェノールノボラック型オキセタン化合物、クレゾールノボラック型オキセタン化合物からなる樹脂が挙げられる。またトリスフェノールメタン型オキセタン化合物、ビスフェノール型オキセタン化合物、ビフェノール型オキセタン化合物等からなる樹脂も同様に挙げられる。エポキシ樹脂にこれらオキセタン基を有する樹脂を併用する場合、硬化反応が促進され好適な場合もある。
(b)光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤(b)としては、特に制限されるものではなく、一般に公知の光カチオン重合開始剤を用いることができる。光カチオン重合開始剤(b)としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、オニウム塩、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物又は過酸化物から選択される構造を有するものが挙げられる。市販されている光カチオン重合開始剤としては、ADEKA社製商品名「SP−150」、「SP−170」、「SP−172」やRhodia社製商品名「Rhodorsil2074」などがある。上記のなかでも、感度、安定性、反応性の面から、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩が好ましい。また、感度向上や感光波長の調整のために各種光増感剤を使用することも有用である。光カチオン重合開始剤の添加量は特に限定されるものではなく、公知の光硬化性樹脂組成物の調製方法によって適宜最適な量を添加すればよいが、例えば、カチオン重合可能な樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましい。
(c)無機微粒子
無機微粒子(c)としては、例えば金属単体、無機酸化物、無機炭酸塩、無機硫酸塩、リン酸塩、カーボン、顔料などが挙げられる。金属単体としては、例えば金、銀、白金、アルミニウムなどが例示できる。また、無機酸化物としては、例えばシリカ(コロイダルシリカ、アエロジル、粉砕ガラスなど)、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム、チタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、酸化銅、酸化鉛、酸化イットリウム、酸化スズ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。また、無機炭酸塩としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができ、無機硫酸塩としては、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどが例示できる。リン酸塩としては、例えばリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどを挙げることができる。
上記無機微粒子の形状は、球状に限らず、楕円形状、偏平状、ロッド状又は繊維状であってもよい。微粒子の平均一次粒径は、露光波長よりも小さく、露光波長に対して吸収がすくなくなるように選択するのがよい。また、平均粒子径は50nm以下が好適である。これらを満足するような具体的なものとして、市販されているのもでは、例えば以下のようなものが挙げられる。
日産化学工業社製シリカゾル「メタノールシリカゾル」(商品名)、「IPA−ST」(商品名)、「IPA−ST−UP」(商品名)、「EG−ST」(商品名)、「NPC−ST−30」(商品名)、「DMAC−ST」(商品名)、「MEK−ST」(商品名)、「MIBK−ST」(商品名)、「XBA−ST」(商品名)、「PMA−ST」(商品名)、扶桑化学工業社製シリカゾル「PL−1」(商品名)、「PL−2」(商品名)、「PL−3」(商品名)、触媒化学工業社製シリカゾル「OSCALシリーズ」(商品名)、川研ファインケミカル社製アルミナゾル「アルミゾル−10」(商品名)、「アルミゾル−10D」(商品名)。
これらの無機微粒子は単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
感光性樹脂組成物中の無機微粒子の含有量は、上記した(a)〜(c)の成分の総和に対して、固形分換算で5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。これは、無機微粒子の含有量を5質量%以上とすることで所望の性能を有効に発揮させることができ、無機微粒子の含有量を60質量%以下とすることで樹脂組成物のパターニング特性を良好にすることができるからである。より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中における分散安定性の改良や、カチオン重合可能な樹脂(a)や溶媒との親和性向上を目的として、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理を行っても良い。また、同様の目的で各種の界面活性剤や加水分解性シラン化合物等による化学的表面処理を行ってもよい。特に化学的表面処理を行うための表面処理剤として、加水分解性シラン化合物及び/又はその加水分解部分縮合物を併用することが好ましい。加水分解性シラン化合物としては、例えば下記式(3)で示される化合物が上げられる。
(R4r−Si−(OR2s ・・・式(3)
ここで、r+s=4、(r=0、1、2又は3 s=1、2、3又は4)、R2は、飽和または不飽和の炭化水素残基、R4は置換または未置換のアルキル基又はアリール基である。具体的には以下のような化合物が挙げられるが、本発明は下記化合物に限定されるものではない。
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン。
これらの加水分解性シラン化合物は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これら加水分解性シラン化合物の光硬化性樹脂組成物中への添加量は、無機微粒子(c)の添加量にもよるが、・・・であることが好ましく、・・・であることがより好ましい。
また、加水分解性シラン化合物を使用する場合、無機微粒子(c)と加水分解性シラン化合物とを溶媒中で混合し、無機微粒子を均一に分散させたのちに、カチオン重合可能な樹脂(a)及び光カチオン重合開始剤(b)と混合させることが好ましい。
なお、無機微粒子(c)と加水分解性シラン化合物とを混合する場合には、シラン化合物を加水分解/縮合させた後に無機微粒子と混合しても良く、あるいはシラン化合物と無機微粒子とを混合してから加水分解/縮合を行っても良い。加水分解/縮合反応は、通常、水と溶媒の存在下で行うが、必要に応じて、酸またはアルカリ、金属錯体などの触媒を併用する場合もある。
上述の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加剤などを添加することができる。例えば、基板との密着力向上を目的としたシランカップリング剤、硬化促進剤、現像(パターニング性)の調整剤などが挙げられる。
次いで、本発明の液体吐出口を有するノズル部材の形成方法について説明する。
まず、液体吐出エネルギー発生素子、液体流路、配線、等の様々な必要なパターンを有する基板の上に、前記光硬化性樹脂組成物からなる層を設ける。さらに、その光硬化性樹脂組成物の層に、吐出口を含む所望のパターン露光を行う。なお、露光に用いる波長は光カチオン重合開始剤(b)の吸収波長に合わせて選択する。この後、必要に応じて加熱などの処理を施し、ノズル材料の硬化反応を促進する。この硬化反応の際、露光領域における硬化反応の進行、モノマー成分の消費に伴い、露光/未露光部間の化学ポテンシャルに差が生じ、未露光領域から露光領域へのモノマーの移動、露光領域から未露光領域への無機微粒子の移動が起こる。その結果、硬化したパターンの端部、すなわち、吐出口の周囲領域では、無機微粒子の濃度が上昇することとなる。本発明の特徴は、ここで、無機微粒子の濃度が上昇した領域をさらに露光することにより、無機微粒子濃度が上昇した端部の領域を安定的に硬化させ、端部、特に吐出口まわりを補強することにある。なお、上述の無機微粒子濃度が増加する説明は推測であり、特に本発明を限定するものではない。また、本発明において露光の回数は特に限定されるものではなく、複数回の露光により吐出口周囲の無機微粒子の濃度を向上させても良い。
以下、上述の工程について図を用いて説明する。
図1および図2は本発明の液体吐出ヘッドの吐出口付近を上から見た上面図である。
まず、図1に示すように、ネガ型感光性を有する光硬化性樹脂組成物の層に対して、第1の吐出口パターンを露光する(第1の露光)。このとき、所望の吐出口サイズよりも第1の吐出口パターンのマスクを大きめにしておく。この後、所望により熱により硬化反応を促進させ、第1の吐出口パターンの端部に無機微粒子の濃度勾配を生じさせる。なお、図1において、1は第1の露光における露光領域を示し、2は第1の露光における未露光領域を示す。
次に、所望の吐出口サイズに適合したマスクを用いて、第2の吐出口パターンの露光を行う(第2の露光)。さらに必要に応じて硬化促進処理を行った後、現像処理により、吐出口を形成する。なお、図2において、3は第2の露光における露光領域を示し、4は第2の露光における未露光領域を示す。
ここで、第1の吐出口パターンと第2の吐出口パターンにおける吐出口形状は、相似形の関係にあり、その中心点は同一の位置とする。また、第2の吐出口パターンにおける吐出口の各点から第1の吐出口パターンの吐出口への最短距離は一定となることが好ましい。すなわち、吐出口パターンの吐出口形状が例えば円である場合には、同心円の関係となる。この第1の吐出口パターンと第2の吐出口パターンとの差異の幅、すなわち、第2の露光においてのみ露光される領域の幅は、大きすぎるとパターン端部の濃度勾配の効果がみられなくなるため、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。ただし、露光の位置合わせ精度を考慮して設定するべきである。
なお、図1および図2では、吐出口付近以外の露光部分には、光が2回照射される方式が図示されている。しかし、吐出口付近以外の露光部については、1回目、2回目のいずれかで必要な照射量の露光が行われればよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(調製例1)
無機微粒子溶液1の調製
以下の手順に従って、加水分解性シラン化合物を含む無機微粒子溶液1を調製した。塩酸を触媒として用いて、ヘキシルトリエトキシシラン19.87g(0.08mol)、フェニルトリエトキシシラン24.04g(0.1mol)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン5.57g(0.02mol)、コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製PL−1、固形分13質量%)34.2g、水10.8gを室温で攪拌した後24時間加熱還流を行い、無機微粒子溶液1(加水分解性シラン縮合物溶液)を得た。
(調製例2)
無機微粒子溶液2の調製
以下の手順に従って、加水分解性シラン化合物を含む無機微粒子溶液2を調製した。塩酸を触媒として用いて、ヘキシルトリエトキシシラン19.87g(0.08mol)、フェニルトリエトキシシラン24.04g(0.1mol)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン5.57g(0.02mol)、コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製PL−1、固形分13質量%)131.9g、水10.8gを室温で攪拌した後24時間加熱還流を行い、無機微粒子溶液2(加水分解性シラン縮合物溶液)を得た。
(調製例3)
合成例1において無機微粒子(コロイダルシリカ)を除いた組成で、加水分解性シラン縮合物溶液を調製した。
(参考例1〜3)
表1に示したように調製した樹脂組成物を、適当な固形分濃度になるように適宜溶剤を除去した後、シリコン基板上にスピンコートにてネガ型感光性を有する光硬化性樹脂組成物の層を形成し、90℃にて4分プリベークを行った。なお、プリベーク後の膜厚は20μmであった。
次いで、キヤノン製マスクアライナー「MPA600 super」(商品名)を用いて、光硬化性樹脂組成物層全面に露光を行った。最後に、光硬化性樹脂組成物層を完全に硬化させるため、200℃にて1時間加熱処理を施した。
(比較参考例1)
表1に記載の樹脂組成物を調製し、参考例1と同様に硬化塗膜を作製した。
Figure 0005207945
注)表中の数値は質量部を示す。また、カチオン重合可能な樹脂(a)及び光カチオン重合開始剤(b)は以下の通りである。
エポキシ化合物1:ダイセル化学工業社製、商品名「EHPE−3150」
エポキシ化合物2:ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド2021P」
光カチオン重合開始剤1:ADEKA社製、商品名「SP−172」
カチオン重合促進剤:トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)
本発明におけるパターン端部にみられるような微小領域の硬度/弾性率を測定することは非常に困難である。そこで、参考例1〜3および比較参考例1の上記硬化膜の弾性率を測定した。フィッシャーインストゥルメンツ製フィッシャースコープH−100を用いて弾性率を測定したところ、結果は表2のとおりとなった。
Figure 0005207945
表2における無機微粒子添加量は、固形分(塗膜中)の比率を意味する。)
この結果から、無機微粒子の濃度勾配が生じた場合、その濃度に応じて弾性率が上昇し、機械的強度が向上すると推測される。
(実施例1)
参考例1で使用した光硬化性樹脂組成物を用いてインクジェット記録ヘッドを作製した。図3にインクジェット記録ヘッドの製造方法の工程図を示す。
まず、インク吐出エネルギー発生素子11としての電気熱変換素子を形成したシリコン基板10上に溶解可能な樹脂としてポリメチルイソプロペニルケトンをスピンコートで塗布、成膜した。次いで、120℃にて6分間プリベークした後、ウシオ電機製マスクアライナー「UX3000」(商品名)にてインク流路のパターン露光を行った。露光は3分間、現像はメチルイソブチルケトン/キシレン=2/1、リンスはキシレンを用いた。前記ポリメチルイソプロペニルケトンは、UV照射により、有機溶剤に対して可溶となる所謂ポジ型レジストであるため、該樹脂で形成されたパターンが未露光部分に形成され、インク流路パターン(液体流路パターン)12となる(図3(a))。なお、現像後の該インク流路パターン12の膜厚は20μmであった。
次いで、参考例1の光硬化性樹脂組成物をスピンコートにて前記溶解可能な樹脂で形成されたインク流路パターン12上に塗布し、90℃にて4分プリベークを行った。塗布およびプリベークは3回行い、被覆樹脂層13をインク流路パターン12上における膜厚55μmに形成した(図3(b))。
次いで、キヤノン製マスクアライナー「MPA600 super」(商品名)により、マスク15を用いて第1の吐出口パターンの露光を行い、90℃で4分間加熱した(図3(c))。次に、所望の吐出口サイズに適したマスク19を用いて第2の吐出口パターンの露光を行い、90℃で4分間加熱を繰り返した(図3(d))。図3(d)において、16は第1の露光により照射された部分であり、17は無機微粒子の濃度が増加した部分の領域を示す。図3(e)は、第2の露光後の状態を示す概略図であって、20は第1及び第2の露光により照射された部分であり、21は無機微粒子の濃度が増加した領域であって第2の露光で照射された部分である。
その後、メチルイソブチルケトンで現像、イソプロピルアルコールでリンスを行い、吐出口22を形成した(図3(f))。
ここで、第1の露光に用いたマスク15における吐出口サイズは、第2の露光に用いたマスク19よりも吐出口径で1μm大きいものを用いた。このようにして、吐出口周囲の機械的強度が高く、シャープなパターンエッジ形状を持つ吐出口パターンが得られた。
次いで、基板裏面にインク供給口を形成するためのマスクを適宜配置し、シリコン基板の異方性エッチングにてインク供給口を形成する(図3(g))。シリコンの異方性エッチング中は、ノズル形成した基板表面は、ゴム系の保護膜(不図示)で保護される。
異方性エッチングが終了後、ゴム系保護膜を除去し、更に、前記「UX3000」にて再び全面にUV照射を行い、インク流路パターン12を形成している溶解可能な樹脂層を分解させた。次いで、前記基板に超音波を付与しつつ、乳酸メチル中に1時間浸漬し、インク流路パターン12を溶解除去し、インク流路24を形成した。その後、被覆樹脂層、撥液層を完全に硬化させるため、200℃にて1時間過熱処理を施した。(図3(h))。
最後に、インク供給口にインク供給部材を接着してインクジェット記録ヘッドが完成する。
(比較例1)
比較参考例1で用いた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にインクジェット記録ヘッドを作製した。
(評価)
実施例1、比較例1により得られたインクジェット記録ヘッドについて、信頼性に関する諸特性を評価するために下記の評価を行った。
<印字品位評価>
実施例1、比較例1で得られたインクジェット記録ヘッドに、キヤノン製黒色インク「BCI−9Bk」(商品名)を充填し、印字を行ったところ、得られた画像はいずれのヘッドでも、高品位なものであった。
<密着性評価>
実施例1、比較例1で得られたインクジェット記録ヘッドを、キヤノン製インク「BCI‐6C」(商品名)(pH=約9)中に浸漬し、プレッシャークッカー試験(PCT)(121℃/100時間)を行った。ノズル構成部材の密着状況を観察したところ、変化は見られなかった。
<耐久性評価(紙ジャム試験)>
短冊状に折りたたんでシワを作った紙に対して評価パターンを印字し、印字途中でプリンタを停止した後に印字途中の用紙を引き抜くという動作を10回行った。
その後、印字品位の評価パターンを印字したところ、比較例1のヘッドでは、スジムラが発生したのに対して、実施例1のヘッドでは、良好な画像が得られた。
以上の結果より、本発明によるインクジェット記録ヘッドでは、吐出口付近の強度が上がり、耐久性が向上していると言える。
第1の吐出口パターンを表す概略上面図である。 第2の吐出口パターンを表す概略上面図である。 本実施例におけるインクジェット記録ヘッドの製造工程を説明するための概略断面図である。
符号の説明
1、第1の露光における露光領域
2、第1の露光における未露光領域
3、第2の露光における露光領域
4、第2の露光における未露光領域
10、基板
11、エネルギー発生素子
12、インク流路パターン
13、被覆樹脂層
14、第1の露光
15、第1の露光に用いるマスク
16、第1の露光により照射された部分
17、第1の露光後、無機微粒子の濃度が増加した部分
18、第2の露光
19、第2の露光に用いるマスク
20、第2の露光により照射された部分
21、第2の露光により照射された部分であって、無機微粒子の濃度が増加した部分
22、吐出口
23、インク供給口
24、インク流路

Claims (11)

  1. 液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    (1)液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられた基板の上に、少なくともカチオン重合可能な樹脂、光カチオン重合開始剤及び無機微粒子を含む光硬化性樹脂組成物を設け、ノズル部材となる層を形成する工程と、
    (2)該ノズル部材となる層に、第1の吐出口パターンを露光する工程と、
    (3)該ノズル部材となる層に、第2の吐出口パターンを露光する工程と、
    (4)現像によりノズル部材及び吐出口を形成する工程と、
    をこの順で有し、
    前記第1の吐出口パターンと第2の吐出口パターンにおける吐出口形状は同一の中心点を持つ相似形であり、さらに前記第1の吐出口パターンよりも第2の吐出口パターンの吐出口面積のほうが小さいことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記無機微粒子の平均粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記光硬化性樹脂組成物は、さらに加水分解性シラン化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記加水分解性シラン化合物は、前記無機微粒子の表面処理剤として加水分解部分縮合物の形態で含まれていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記カチオン重合可能な樹脂はエポキシ化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記工程(1)において、前記基板の上に溶解可能な樹脂を用いて液体流路パターンが形成されており、該液体流路パターン及び前記基板の上に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、
    前記工程(4)の後に、前記液体流路パターンを溶解除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、液体を吐出するための吐出口と、該吐出口へ液体を供給するための流路と、を備える液体吐出ヘッドであって、
    前記吐出口を形成する部材は、カチオン重合可能な樹脂と、光カチオン重合開始剤と、無機微粒子と、を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、さらに前記吐出口の周囲領域の前記無機微粒子の濃度が前記周囲領域の外側領域に比較して高いことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  8. 前記無機微粒子の平均粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
  9. 前記光硬化性樹脂組成物は、さらに加水分解性シラン化合物を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出ヘッド。
  10. 前記加水分解性シラン化合物は、前記無機微粒子の表面処理剤として加水分解部分縮合物の形態で含まれていることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
  11. 前記カチオン重合可能な樹脂はエポキシ化合物を含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
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