JP5204466B2 - マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasmapneumoniae)の検出方法 - Google Patents

マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasmapneumoniae)の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の検出方法に関し、さらに詳しくは遺伝子の、高感度な検出方法を利用したマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の感染症の診断方法に関するものである。
市中肺炎は通常の社会生活を送っている人が発症する肺炎で、その原因としては、肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌などによる細菌性肺炎、マイコプラズマ・クラミジア・ウイルスなどによる原発性異型肺炎、結核性などによるその他の肺炎に分類される。原発性異型肺炎の約30〜40%がマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae、以下M.pneumoniae)により起こるマイコプラズマ肺炎であり、クラミジア肺炎とともに高い割合を占めている。
マイコプラズマ肺炎は、M.pneumoniae感染者の3〜5%で発症し、5〜35歳の年齢層における肺炎の大きな部分を占める。基本的には比較的軽微な症状で収まるが、頑迷な咳が持続し、喘息や慢性閉塞性肺疾患が憎悪したり、呼吸不全などを呈する重症例・劇症例も見られ、遷延化する場合もある。
マイコプラズマ肺炎の原因菌であるM.pneumoniaeは人工培地上で増殖できる最小の微生物であり、一般の細菌にみられるような細胞壁を持たない。このためペニシリン系やセフェム系等の細胞壁合成阻害作用のある抗生剤は効果が無く、マクロライド系などの他の抗生剤を選択する必要がある。治療薬の選択を確定させて、病状を早期に回復させるためにはM.pneumoniaeの存在を迅速に検出し、適切な治療を行う必要がある。
M.pneumoniaeの全ゲノム配列は1996年に解読された。サイズは0.82MbpでGC含量は約40%と他のMycoplasma属と比較し、やや高めであった。(GenBank Accession No.NC000912,Strain:M129)。
Mycoplasmaの病原性については現在でも不明な点が多いが、宿主に吸着後に増殖し、過酸化水素や活性酸素などの代謝物を放出して宿主を刺激、菌体成分が宿主免疫を刺激し、炎症反応や自己免疫的な病態を引き起こすと考えられている。
Mycoplasmaの宿主細胞への吸着の仕組みは種によって異なっているが、M.pneumoniaeの場合は、菌体の一端に存在する細胞吸着器官(attachment organella)で宿主に吸着する。この細胞吸着器官はTip構造とも呼ばれており、M.pneumoniaeの細胞膜の一部が突出して形成されている。細胞吸着器官の表面には、9種類の吸着蛋白が発現しており、これらの中心的な吸着蛋白が、分子量170kDaのP1タンパクである。また分子量が130kDaのP30タンパクも吸着タンパクとして機能している。ただし、これらの吸着タンパクだけでは宿主細胞に吸着できず、HMW1、HMW2、HMW3、B、C、P65といった複数のアクセサリータンパクを必要とすることがわかっている。
宿主細胞吸着性に関わる遺伝子群は、P1遺伝子やorf6などを含む「P1オペロン」、P30遺伝子やhmw1、hmw3などを含む「HMWオペロン」、そしてhmw2などを含む「CRLオペロン」、以上3つのオペロンとして存在している。細胞付着因子の抗原変異に関する知見として、M.pneumoniaeのゲノム上にはP1遺伝子内の配列と類似した繰り返し配列が、P1遺伝子以外のゲノム上の位置に散在している。REPMP1、REPMP2/3、REPMP4、REPMP5と名付けられたこれら繰り返し配列は、全ゲノムの約8%を占めている。
臨床由来のM.pneumoniae株は、そのP1遺伝子配列によりI型、II型と大きく二つに分類され、マイコプラズマ肺炎の流行年ごとに各型の分離頻度が異なり、交互に流行を繰り返している。I型株とII型株では、P1遺伝子内のREP配列のコピー数が異なり、またorf6、P65、rRNA遺伝子などの複数の配列に違いが見られることがわかっている。
このようなM.pneumoniaeにおける抗原変異は、集団における宿主免疫からの回避と関連があると予想され、実際にP1遺伝子内のREP配列とP1遺伝子以外のREP配列との間で遺伝子組み替え(転座)が生じたと推測される株が見つかっている。このように、宿主細胞への吸着能を変化させ、巧妙に生き残りを図る仕組みを獲得しているため、数年の周期で大流行が起こるのではないかと推測されていた。最近の傾向では、周期的流行に乱れが生じ、流行期間が短期化しているが、これは臨床医のプライマリーケアの変化と抗生剤の進歩が要因として挙げられ、早期診断は、感染の拡大を防ぐ有効な手段であると考えられる。
M.pneumoniaeの検査法としては、分離培養法、直接蛍光抗体法、血清学的検査法、DNAプローブ法等があるが、迅速性・簡便性・正確性のいずれかの問題が指摘されている。
PCR法では、5s、16s、23s rRNA遺伝子を標的とした特許が多く、VenorGem Mycoplasma detection Kit(Minerva Biolabs GmbH)やATCCのMycoplasma Detection Kitなど実際にキット化されているものがある。しかし、これらはM.pneumoniae以外のMycoplasma属も増幅するため、泳動後の産物のサイズにより菌種を同定する目的で使用されている。
M.pneumoniaeに特異的な検出キットとしては、P1遺伝子を標的としたVenorMp Mycoplasma pneumoniae detection Kit(Minerva Biolabs GmbH)や、ATPaseオペロン遺伝子領域を標的としたCycleavePCR Mycoplasma pneumoniae Detection Kit(TaKaRa)がある。いずれもReal-Time PCR用のキットであり、10〜106 copiesの範囲で定量が可能である。ただし、LightCyclerやSmartCyclerなど高価な機器が必要とされるため、特定の施設でのみの使用に限られている。
また、前述の通りM.pneumoniaeのゲノムにはP1遺伝子関連の繰り返し配列が多数存在するが、この繰り返し配列を標的とするPCR法が報告されている。繰り返し配列のひとつであるREPMP2/3とP1遺伝子の間に存在する繰り返し配列を標的としたPCRでは、少量の菌量を検出することが可能であった(非特許文献2)。
その他、いくつかのnested PCRが研究レベルで開発されており、国立感染症研究所では中で、16s rRNA遺伝子およびP1遺伝子それぞれを標的としたnested PCRを紹介している。(非特許文献2)
以上のように、マイコプラズマ肺炎診断には検体中におけるM.pneumoniaeの存在を感染初期から高感度に証明する方法が必要不可欠であり、その重要性は高い。本発明者らは、簡易で安価、迅速かつ高感度な検出が可能であるLAMP法の特性を生かした製品を開発し、本発明の目的を達成できた。
Waring AL, et al. J. Clin. Microbiol.,2001 39: 1385-1390 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎検査マニュアル」
本発明は、咽頭ぬぐい液などの臨床由来の検体から、マイコプラズマ肺炎の原因菌であるM.pneumoniaeを迅速、簡便かつ高感度、特異的に検出させることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、M.pneumoniaeの SDC1遺伝子に由来する塩基配列と選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、LAMP法によりM.pneumoniaeに特異的な塩基配列を増幅することで、M.pneumoniaeを高感度に検出できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1) M.pneumoniaeを特異的に増幅、および検出するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーであって、配列番号1で示されるSDC1遺伝子に由来する塩基配列の、235番〜412番の塩基配列から選ばれた任意の塩基配列、又はそれらと相補的な塩基配列から設計されたオリゴヌクレオチドプライマー。
(2) M.pneumoniaeのSDC1遺伝子に由来する塩基配列から選ばれた配列番号2〜9で示される塩基配列又はそれらと相補的な塩基配列から選ばれた、少なくとも連続する17塩基を含む(1)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(3) M.pneumoniaeのSDC1遺伝子の標的核酸上の3'末端側からF3c、F2c、F1cという塩基配列領域を、5'末端側からB3、B2、B1という塩基配列領域を選択し、それぞれの相補的塩基配列をF3、F2、F1、そしてB3c、B2c、B1cとしたときに、以下の(a)〜(d)から選ばれた少なくとも1種の塩基配列からなることを特徴とする(1)または(2)記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)標的核酸のF2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のF1c領域を有する塩基配列。
(b)標的核酸のF3領域を有する塩基配列。
(c)標的核酸のB2領域を3'末端側に有し、5'末端側に標的核酸のB1c領域を有する塩基配列。
(d)標的核酸のB3領域を有する塩基配列。
(4) M.pneumoniaeに特異的なSDC1遺伝子塩基配列を増幅でき、5'末端から3'末端に向かい以下の(a)および/または(b)から選ばれた塩基配列から成ることを特徴とする請求項1または2記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
(a)5'-(配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号3の塩基配列)-3'
(b)5'-(配列番号6の塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号7の塩基配列に相補的な塩基配列)-3'
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、M.pneumoniaeのSDC1遺伝子の標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とするM.pneumoniaeの検出方法。
(6) M.pneumoniaeのSDC1遺伝子の標的核酸領域の増幅反応がLAMP法であることを特徴とする(5)記載のM.pneumoniaeの検出方法。
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてM.pneumoniaeのSDC1遺伝子の標的核酸領域の増幅を検出することにより、M.pneumoniaeの存在の有無を検出することを特徴とするM.pneumoniaeの検出方法。
(8) M.pneumoniaeの検出方法において(1)〜(4)のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーを含むことを特徴とするキット。
本発明により、特異的、高感度かつ迅速にM.pneumoniaeを検出できる。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される試料としては、M.pneumoniaeの感染を疑われる人間あるいは他の動物の生体由来の検体、例えば喀痰、気管支肺胞洗浄液、鼻汁、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、うがい液、耳漏、扁桃、鼓膜切開液、唾液、血液、血清、血漿、髄液、尿、糞便、組織などが挙げられる。また、感染実験などに用いられた細胞やその培養液、あるいは生体由来の検体や培養細胞から分離された検体なども試料となりうる。これらの試料は分離、抽出、濃縮、精製などの前処理を行っても良い。
このような生体由来の核酸を増幅するためには、近年、納富らが開発した、PCR法で不可欠とされる温度制御が不要な新しい核酸増幅法:LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法と呼ばれるループ媒介等温増幅法(特許公報国際公開第00/28082号パンフレット)で達成させられる。この方法は、鋳型となるヌクレオチドに自身の3'末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法である。また、LAMP法では、プライマーの3'末端が常に試料に由来する領域に対してアニールするために、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能するため、その結果として、高感度にかつ特異性の高い核酸増幅反応を可能としている。
そこで、鋳型となるヌクレオチドの6領域を認識する少なくとも4種類のプライマー(2種類のインナープライマー;FIPとBIP、2種類のアウタープライマー;F3とB3)を使用し、さらにこれとは別のプライマーであるループプライマーを用いる事ができる。ループプライマー(Loop Primer)は、ダンベル構造の5'末端側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的な塩基配列を持つプライマーである。このプライマーを用いると、核酸合成の起点が増加し、反応時間の短縮と検出感度の上昇が可能となる(特許文献国際公開第02/24902号パンフレット)。ループプライマーの塩基配列は上述のダンベル構造の5'末端側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的であれば、標的遺伝子の塩基配列あるいはその相補鎖から選ばれても良く、他の塩基配列でも良い。また、ループプライマーは1種類でも2種類でも良い。なお、各プライマーにおけるFとは、標的塩基配列のセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示であり、一方Bとは、標的塩基配列のアンチセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示である。ここで、プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドの長さは、10塩基以上、好ましくは15塩基以上で、化学合成あるいは天然のどちらでも良く、各プライマーは単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。
本発明者らは、M.pneumoniaeのSDC1遺伝子に由来する塩基配列より、配列番号1で示される塩基配列から、特異的な塩基配列を迅速に増幅できるLAMP法のプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、SDC1遺伝子に由来する塩基配列の、235番〜412番の塩基配列からI型・II型すべてのM.pneumoniaeを検出できるように以下のプライマーセットを選定した。
FIP:5'-CACTCACGGGGGTCACATACGGCCCGATTAATGGCTTGTT-3' (配列番号10)
F3 :5'-GGCCTTGGTGGAAAACAC-3' (配列番号4)
BIP:5'-GAAGTGCAAACGACTTACCCGGCATTAATTAAGGAGGCAATTTTGGC-3' (配列番号11)
B3c:5'-AACTGTTGAGTGGGCTGG-3' (配列番号12)
LFc:5'-GCAAAGGTGTCGAGCAGG-3' (配列番号13)
LB :5'-GTCCGACCAAAAGGCCAC-3' (配列番号9)
核酸合成で使用する酵素は、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられ、好ましくはBst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が挙げられる。
LAMP反応による核酸増幅産物の検出には公知の技術が適用できる。例えば、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレーター法(特許文献特開2001-242169号公報)を用いたり、あるいは反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかけても容易に検出できる。アガロースゲル電気泳動では、LAMP増幅産物は、塩基長の異なる多数のバンドがラダー(はしご)状に検出される。また、LAMP法では核酸の合成により基質が大量に消費され、副産物であるピロリン酸が、共存するマグネシウムと反応してピロリン酸マグネシウムとなり、反応液が肉眼で確認できる程度に白濁する。したがって、この白濁を、反応終了後あるいは反応中の濁度上昇を経時的に光学的に観察できる測定機器、例えば400nmの吸光度変化を通常の分光光度計を用いて確認することも可能である(特許文献国際公開第01/83817号パンフレット)。
本発明のプライマーを用いて核酸増幅の検出を行う際に必要な各種の試薬類は、あらかじめパッケージングしてキット化する事ができる。具体的には、本発明のプライマーあるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基質となる4種類のdNTP、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液や塩類、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1:検出感度の確認
LAMP法と、PCR法の検出感度の比較を行った。
1)試料:M.pneumoniae培養菌体および精製genomic DNA
コピー数を決定したM.pneumoniae M129株(I型菌、ATCC 29342)、FH株(II型菌、ATCC 15531)の精製genomic DNAを用いた。また、この2株のLAMP増幅領域を含む塩基配列(310bp)を挿入したplasmid DNAをそれぞれ作製し、感度試験に用いた。genomic DNAおよびplasmid DNAともに、TE緩衝液で段階希釈し、95℃、5分間熱処理し、急冷後、LAMPおよびPCRに鋳型として添加した。
2)PCR法に用いるプライマー
16s rRNA遺伝子およびP1遺伝子を標的とした2種類のnested PCRを、非特許文献2に従って操作した。16s rRNA遺伝子を検出するnested PCRは、MPN/1F(配列番号14)およびMPN/1R (配列番号15)を用いた1st PCRを行い、さらにMPN/2F(配列番号16)およびMPN/2R(配列番号17)を用いた2nd PCRを行う。電気泳動により1st PCRで782bp、2nd PCRで301bpのPCR増幅産物の生成を確認した。また、P1遺伝子を検出するnested PCRは、ADH/2F (配列番号18)およびADH/2R(配列番号19)を用いた1st PCRを行い、さらにADH/3F(配列番号20)およびADH/3R(配列番号21)を用いた2nd PCRを行う。電気泳動により1st PCRで1,451bp、2nd PCRで1,324bpのPCR増幅産物の生成を確認した。
PCR反応液組成および反応条件は、非特許文献2に記載の条件を忠実に再現した。
3)LAMP法に用いるプライマー
プライマーとしてFIP(配列番号10)、F3(配列番号4)、BIP(配列番号11)、B3c(配列番号12)、LFc(配列番号13)、LB(配列番号9)を用いた。LAMP増幅産物の特異性を確認するためにF1及びB1cのほぼ中間に制限酵素Hinflによって切断する塩基配列(-GANTC-)が位置するように設計している。
4)PCR反応溶液組成および反応条件
各PCR反応は、前述の非特許文献2に記載の方法で行った。
100μLあたりの各試薬が下記になるよう調製した。
反応溶液組成(1st、2nd PCR共通)
・1.25mM dNTPs each 16μL
・10pmol/μL プライマーF 2μL
・10pmol/μL プライマーR 2μL
・1U/μL Taq DNA Polymerase 2μL
・25mM MgCl2 8μL
・緩衝液 10μL
・滅菌純水 55μL
反応溶液に各希釈段階の検体5.0μLを加え、最終反応液量100.0μLとして各PCR反応を行った。PCR反応の温度サイクル条件は、94℃1分静置後、熱変性94℃1分、アニーリング55℃1分、ポリメラーゼ伸長反応72℃1分を1サイクルとして、計35サイクル行い、最後に72℃5分間静置後、反応を終了した。所要時間は約2時間であった。反応終了後の反応溶液10μLを2%アガロースゲルで電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色した。PCRでの特異的な増幅産物の分子サイズは、300bpである。
5)LAMP法増幅試薬組成
LAMP法による増幅のため、最終反応溶液25μL中の各試薬濃度が下記になるよう調製した。なお、プライマーはHPLC(高速液体クロマトグラフィ)精製したものを使用した。
反応溶液組成
・20mM Tris-HCl pH8.8
・10mM KCl
・6.4mM MgSO4
・1.1mM dNTPs
・20mM (NH42SO4
・0.2M Betaine
・1.0% Tween20
・1mM DTT
・1.6μM FIP(配列番号10)
・1.6μM BIP(配列番号11)
・0.4μM F3 (配列番号4)
・0.4μM B3c(配列番号12)
・0.8μM LFc(配列番号13)
・0.8μM LB (配列番号9)
・8U Bst DNA polymerase(NEB)
LAMP反応は上記試薬20μLに、各濃度の試料溶液5μLを加え、最終反応溶液25μLとして、0.2mLの専用チューブ内で65℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA-320c(栄研化学)を用いて、リアルタイムに反応を検出した。
6)結果
(図1)に示したように、本法ではM.pneumoniae genomic DNAを反応あたり6コピーを、60分以内に検出することが可能であった。比較として行ったnested PCRは、16s rRNAで反応あたり6コピー(図2)、P1で反応あたり60コピーまで検出可能であった(図3)。対照としたふたつのPCR法と比較して、LAMP法が同等あるいは、より高感度に検出することが可能であった。また、約2時間の増幅反応とさらに電気泳動分析が必要なPCR法と比較して、簡便性及び迅速性においても本願発明が優れていた。
実施例2:LAMP法増幅産物の確認
M.pneumoniaeの培養菌体から精製したgenomic DNAを鋳型として、実施例1で用いたプライマーセットで増幅したLAMP産物について、電気泳動及び制限酵素HinfIでの確認を行った。制限酵素HinfIは鋳型となるM.pneumoniaeのSDC1遺伝子に由来する標的塩基配列の一部を選択的に認識し切断するものであり、上記プライマーセットの各塩基配列を認識するものではない。図4は、電気泳動の結果を表したものである。LAMP反応終了後の反応溶液1μLを2%アガロースゲルで電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色した。図4のレーン2〜7の泳動像から明らかなように、LAMP産物特有のラダーパターンが確認された。また、HinfIで処理したサンプル(レーン8〜13)では、消化が確認された。以上の結果から、標的塩基配列が特異的に増幅されていることが明らかとなった。
実施例3:プライマーの特異性確認
1)試料及び試験方法
検討に用いた菌株を(表1)に示す。試験した菌株は、M.pneumoniae 12株、その他のMycoplasma属菌株 5菌種5株、非Mycoplasma 28菌種28株を選択した。Mycoplasma属菌株は、PPLO液体培地を用いた各培養菌体からキアゲン社のDNeasy Tissue Kitを用いてgenomic DNAを抽出および精製した。M.pneumoniae(GENBANK NC_000912、816,394bp)、M.genitalium(GENBANK NC_000908、580,0764bp)は既知のゲノムサイズをもとにDNAサイズからコピー数をそれぞれ決定した。非Mycoplasma菌株について、菌数測定可能な菌株の場合は、培養菌体を生理食塩水にMcFarland No.1(約2.4×108cfu/mL)となるように懸濁したものをTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA pH8.0)で適宜希釈し、95℃5分間熱処理して急冷後、12,000rpm、5分間遠心し、その上清を加熱DNA抽出液とした。一部の菌株は、上記と同様に菌体からgenomic DNAを抽出および精製し、既知のゲノムサイズを元にDNA濃度からコピー数をそれぞれ決定した。
LAMP反応は実施例1に記載した方法で行い、65℃で60分間、リアルタイム濁度測定装置LA-320c(栄研化学)を用いて、リアルタイムに反応を検出した。
2)特異性確認結果
I型、II型を含む全てのM.pneumoniae保存菌株に対して良好な反応性を示した。(表1及び図5-1〜図5-6) M.pneumoniae以外のMycoplasma属菌4株および非Mycoplasma属菌28株については大過剰量の菌量を添加しても全く反応しなかった。(表1及び図6-1〜図6-4) 特に分離頻度の高いM.hominis(図6-1)、M.salivarium(図6-2)、M.orale(図6-4)と交差性がないことが確認され、十分な特異性を有していると判断できる。
本発明によれば、M.pneumoniaeに特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、LAMP法によりM.pneumoniaeに特異的な塩基配列を増幅することで、M.pneumoniaeを特異的、高感度かつ迅速、簡便に検出することができる。
リアルタイム濁度法によるLAMP法の検出感度を示す。横軸は時間(分)、縦軸は400nmでの吸光度(濁度)である。 16s rRNAのPCR法による検出感度を示す電気泳動図。左からレーン1(M1):マーカー(TaKaRa 100bp Ladder Marker)、レーン2(No1):1st PCR 600,000コピー、レーン3(No2):1st PCR 60,000コピー、レーン4(No3):1st PCR 6,000コピー、レーン5(No4):1st PCR 600コピー、レーン6(No5):1st PCR 60コピー、レーン7(No6):1st PCR 6コピー、レーン8(No7):1st PCR 0.6コピー、レーン9(No8):1st PCR 鋳型なし、レーン10(No1):2nd PCR 600,000コピー、レーン11(No2):2nd PCR 60,000コピー、レーン12(No3):2nd PCR 6,000コピー、レーン13(No4):2nd PCR 600コピー、レーン14(No5):2nd PCR 60コピー、レーン15(No6):2nd PCR 6コピー、レーン16(No7):2nd PCR 0.6コピー、レーン17(No8):2nd PCR 鋳型なし。 P1のPCR法による検出感度を示す電気泳動図。左からレーン1(M2):マーカー(TaKaRa 100bp Ladder Marker)、レーン2(No1):1st PCR 600,000コピー、レーン3(No2):1st PCR 60,000コピー、レーン4(No3):1st PCR 6,000コピー、レーン5(No4):1st PCR 600コピー、レーン6(No5):1st PCR 60コピー、レーン7(No6):1st PCR 6コピー、レーン8(No7):1st PCR 0.6コピー、レーン9(No8):1st PCR 鋳型なし、レーン10(No1):2nd PCR 600,000コピー、レーン11(No2):2nd PCR 60,000コピー、レーン12(No3):2nd PCR 6,000コピー、レーン13(No4):2nd PCR 600コピー、レーン14(No5):2nd PCR 60コピー、レーン15(No6):2nd PCR 6コピー、レーン16(No7):2nd PCR 0.6コピー、レーン17(No8):2nd PCR 鋳型なし。 LAMP増幅産物の制限酵素HinfIによる消化物の電気泳動図。左からレーン1(M):マーカー(TaKaRa 100bp Ladder Marker)、レーン2(No1):NBRC14401(ATCC15531)由来LAMP産物、レーン3(No2):Mac(ATCC15492)由来LAMP産物、レーン4(No3):M129(ATCC29342)由来LAMP産物、レーン5(No4):EKN6590(ATCC15531)由来LAMP産物、レーン6(No5):EKN6595(臨床株)由来LAMP産物、レーン7(No6):EKN6596(臨床株)由来LAMP産物、レーン8(No1):NBRC14401(ATCC15531)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン9(No2):Mac(ATCC15492)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン10(No3):M129(ATCC29342)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン11(No4):EKN6590(ATCC15531)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン12(No5):EKN6595(臨床株)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン13(No6):EKN6596(臨床株)由来LAMP産物HinfI消化物、レーン14(M):マーカー(TaKaRa 100bp Ladder Marker)。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(NBRC14401)の反応性。 横軸は時間(分)、縦軸は400nmでの吸光度(濁度)である。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(Mac、ATCC15492)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(M129、ATCC29342)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(FH、ATCC15531)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(EKN6595#1)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae菌株(EKN6595#2)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae以外の菌株(M.hominis)の反応性。 横軸は時間(分)、縦軸は400nmでの吸光度(濁度)である。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae以外の菌株(M.alibarium)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae以外の菌株(M.fermentans)の反応性。 LAMP法のリアルタイム濁度法によるM.pneuoniae以外の菌株(M.orare)の反応性。

Claims (6)

  1. マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を特異的に増幅、および検出するように設計され、以下の塩基配列(a)から(d)のオリゴヌクレオチドプライマーをすべて含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドプライマーセット。
    (a)5'-(配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号3の塩基配列)-3'。
    (b)5'-(配列番号6の塩基配列)-(塩基数0〜50の任意の塩基配列)-(配列番号7の塩基配列に相補的な塩基配列)-3'。
    (c) 配列番号4の塩基配列。
    (d) 配列番号12の塩基配列。
  2. マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を特異的に増幅、および検出するように設計され、以下の塩基配列(a)から(d)のオリゴヌクレオチドプライマーをすべて含むことを特徴とするオリゴヌクレオチドプライマーセット。
    (a)配列番号10の塩基配列。
    (b)配列番号11の塩基配列。
    (c)配列番号4の塩基配列。
    (d)配列番号12の塩基配列。
  3. さらに以下の(e)及び/又は(f)のオリゴヌクレオチドプライマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のプライマーセット。
    (e)配列番号13の塩基配列。
    (f)配列番号9の塩基配列。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーセットを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)のSDC1遺伝子の標的核酸領域のLAMP法による増幅反応を行うことを特徴とするマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の検出方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーセットを用いてマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)のSDC1遺伝子の標的核酸領域のLAMP法による増幅を検出することにより、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の存在の有無を検出することを特徴とするマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の検出方法。
  6. マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の検出方法において、請求項1〜3のいずれかに記載されたオリゴヌクレオチドプライマーセットを含むことを特徴とするキット。
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