JP5204254B2 - レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版の製版方法及びレリーフ印刷版 - Google Patents
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Description
従来のレーザー彫刻用樹脂組成物としては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが知られている。
<1> (成分A)イソシアナト基の平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物、及び、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むことを特徴とするレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<2> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分C)分子中にシロキサン結合を含まず、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を更に含有する、<1>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<3> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分D)ラジカル重合性化合物、及び、(成分E)ラジカル重合開始剤を更に含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<4> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分F)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を更に含有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<5> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分G)可塑剤を更に含有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<6> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分H)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を更に含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<7> <1>〜<6>いずれか1つに記載の製造方法により得られたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<8> (成分A)イソシアナト基の平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物、及び、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製版方法、
<9> <8>に記載の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版、
<10> 前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、<9>に記載のレリーフ印刷版、
<11> 前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、<9>又は<10>に記載のレリーフ印刷版。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版(以下、単にレリーフ印刷版原版ともいう。)の製造方法は、(成分A)イソシアナト基の平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物、及び、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むことを特徴とする。
また、成分A及び成分Bを含むレーザー彫刻用樹脂組成物を、「本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物」又は「本発明の樹脂組成物」ともいう。
今回、本発明者が鋭意検討した結果、成分A及び成分Bを予めポリマー化せずにレーザー彫刻用樹脂組成物に含有させ、架橋工程において、成分Aと成分Bとの反応を進めながら、同時に架橋することによって、従来の予めポリマー化した樹脂を使用する場合に比較して、溶剤インキ適性が向上し、更に、得られるレリーフ印刷版の耐水性と良好なリンス性が両立し、更に、彫刻感度に優れたレーザー彫刻用印刷版原版が得られることを見出した。
成分Aのレーザー彫刻用樹脂組成物への添加量の総量を100重量%として、層形成工程の直前の時点において、50重量%以上がそのままの状態(成分Aの状態)で存在していることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましい。
また、成分Bのレーザー彫刻用樹脂組成物への添加量の総量を100重量%として、層形成工程の直前の時点において、50重量%以上がそのままの状態(成分Bの状態)で存在していることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましい。
なお、層形成工程における乾燥工程等、及び、架橋工程において、重合反応が進行することが好ましく、成分Aのレーザー彫刻用樹脂組成物への添加量の総量を100重量%として、架橋工程後において、そのままの状態(成分Aの状態)で存在している成分Aは50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、成分Aが残存していないことが最も好ましい。また、成分Bのレーザー彫刻用樹脂組成物への添加量の総量を100重量%として、架橋工程後において、そのままの状態(成分Bの状態)で存在している成分Bは50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、成分Bが残存していないことが最も好ましい。
成分A及び成分Bが上記の量で存在すると、得られるレリーフ印刷版原版のリンス性に優れ、かつ、溶剤インキ適性及び耐刷性に優れたレリーフ印刷版を得ることができるので好ましい。
以下、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物の構成成分について説明する。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)イソシアナト基平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物を含有する。
前記成分Aのイソシアナト基平均数fnは2より大きければ特に制限されないが、好ましくは2より大きく4以下であり、より好ましくは2.2以上3.8以下、更に好ましくは2.4以上3.6以下である。平均イソシアナト基平均数fnが2以下であると架橋密度が不十分となる。イソシアナト基平均数fnが上記範囲内であれば、単一のイソシアネート化合物であってもよく、また、イソシアネート化合物の製造時に副生する未反応のイソシアネート化合物などを含んでいてもよい。イソシアナト基平均数fnは以下の式により求められる。
イソシアヌレート構造を有する成分Aとしては例えばイソシアヌレート3量体、イソシアヌレート5量体が挙げられ、また、イソシアヌレート7量体、9量体以上の多量体も存在する。
イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、下記式(2)で示される。
成分Aの原料となる芳香脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
成分Aの原料イソシアネートとして、上記に例示したイソシアネート化合物を単独又は組み合わせて使用することができる。
上記原料となるイソシアネート化合物より製造される成分Aとしては例えばヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環含有変性体、ウレトジオン環含有変性体、アロハネート含有変性体、ビウレット含有変性体が挙げられ、これらを単独、又は、組み合わせて使用することができる。耐溶剤性の観点からイソシアヌレート環含有変性体が好ましい。
成分Aの含有量が上記範囲内であると、インキ転移性が良好であるので好ましい。
本発明の樹脂組成物は、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有する。
なお、前記活性水素とは、−OH、−SH、−NH−、−NH2、−COOH等における水素原子を意味し、成分Aのイソシアナト基との反応性を有する水素原子を意味する。これらの中でも、活性水素としては、−OH、−NH−又は−NH2における水素原子であることが好ましい。
成分Bは、1分子中に活性水素を2つ以上有するものであれば、その上限は特に限定されないが、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。成分Bの1分子中の活性水素が2つ未満であると、成分Aと十分に反応することができない。成分Bの1分子中の活性水素が6以下であると、得られる印刷板原版のリンス性に優れるので好ましい。
[シロキサン結合]
シロキサン結合について説明する。シロキサン結合とはケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合した分子構造を意味する。
本発明の樹脂組成物を用いて得られたレリーフ印刷版が優れた溶剤インキ適性を有することに関する機構について詳細は明らかではないが、成分B中に安定的に結合しているシロキサン結合により、添加物として添加するシロキサン結合などよりもインキとの親和性が低いため、溶剤インキ適性が向上するものと発明者は推定している。
前記成分Bは、下記平均組成式(1)で表されるシリコーン化合物から得られたものであることが好ましい。
RpQrXsSiO(4-p-r-s)/2 (1)
シロキサン結合を導入するためのシロキサン結合を有する化合物としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及びシリコーンゴムの環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液、ステアロキシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーンなどが挙げられる。
例としてモノアミン変性シリコーンオイル、ジアミン変性シリコーンオイル、特殊アミノ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、側鎖アミノ・両末端メトキシ変性シリコーンオイル、ジオール変性シリコーンオイルが挙げられる。これら活性水素を有するシリコーンオイルを用いることができる。
また、片末端変性シリコーンオイルや側鎖変性シリコーンオイルも使用することができる。例えば、片末端ジオール変性シリコーンオイル、側鎖モノアミン変性シリコーンオイル、側鎖ジアミン変性シリコーンオイル、側鎖カルビノール変性シリコーンオイル、側鎖カルボキシ変性シリコーンオイル、側鎖アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、側鎖エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、などが挙げられる。
また、成分Bの数平均分子量は、好ましくは500以上30,000以下、より好ましくは500以上20,000以下である。この範囲であれば、シロキサン結合による溶剤インキ適性が十分に発揮され、また流動性、及び、成分Bと成分Aとの相溶性が確保できる傾向にあるため取り扱いが容易であり、好ましい。ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
成分Bとして、両末端変性シリコーンオイルを使用する場合、成分Bの数平均分子量は、500以上1万以下であることが好ましく、500以上5,000以下であることがより好ましく、500以上3,000以下であることが更に好ましい。
成分Bとして、片末端変性シリコーンオイル及び/又は側鎖変性シリコーンオイルを使用する場合、成分Bの数平均分子量は1,000以上30,000以下であることが好ましく、10,000以上20,000以下であることがより好ましい。
なお、反応性の観点から、成分A中のイソシアナト基と、成分B中の活性水素との当量(モル比)が70:30〜30:70であることが好ましく、60:40〜40:60であることがより好ましく、55:45〜45:55であることが更に好ましい。前記範囲となるように、成分A及び成分Bの添加量を適宜調整することが好ましい。
なお、成分C〜成分Hの各化合物は、成分A及び成分Bを除くものであり、文言上、成分A又は成分Bに該当し、かつ、成分C〜成分Hにも該当する化合物は、成分A又は成分Bであるとする。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分C)分子中にシロキサン結合を含まず、活性水素を2つ以上有する化合物を含有することが好ましい。
成分Cは、反応の進行が速く、高強度な膜が得られる点から、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることが好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基及びメルカプト基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることがより好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物であることが更に好ましい。
例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の第一級アルキルアミン類、アニリン、4−アミノアセトフェノン、p−アニシジン、2−アミノアントラセン、1−ナフチルアミン等の第一級アニリン類、モノエタノールアミン、2−エトキシエタノールアミン、2−ヒドロキシプロパノールアミン等の第一級アルカノールアミン類、ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類、1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のポリアニリン類、ポリアミン類とアルデヒド化合物と一価又は多価フェノール類との重縮合物からなるマンニッヒ塩基、ポリアミン類とポリカルボン酸やダイマー酸との反応により得られるポリアミドポリアミン類が挙げられる。
これらの中でも、高度な三次元架橋を形勢するのに適していることから、脂肪族ポリアミン類、脂環式ポリアミン類、ポリアニリン類が好ましく、特にヘキサンジアミン、トリエチレンテトラミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、ピペラジン、ホモピペラジン、2−メチルピペラジン等が挙げられる。
例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物化合物を使用することができる。これらの中でも、特に好ましくは無水メチルヘキサヒドロフタル酸を用いることで、硬化収縮が少なく、透明性を有し、高強度な硬化膜が得られる。
例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジチオール、3−メチル−1,5−ペンタンジチオール、2−メチル−1,8−オクタンジチオール等のアルカンジチオールや、1,4−シクロヘキサンジチオール等のシクロアルカンジチオールや、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール等の炭素鎖中にヘテロ原子を含有するアルカンジチオールや、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジオキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン等の炭素鎖中にヘテロ原子及び脂環構造を含有するアルカンジチオールや、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)エタン、2−エーテル−2−メルカプトメチル−1,3−プロパンジチオール、1,8−メルカプト−4−メルカプトメチル−3,6−チアオクタン等のアルカントリチオールや、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、3,3’−チオビス(プロパン−1,2−ジチオール)、2,2’−チオビス(プロパン−1,3−ジチオール)等のアルカンテトラチオール等が挙げられる。
例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸、水素化ナジック酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;ビスフェノールS等の硫黄原子含有型フェノール樹脂等が挙げられる。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類などが挙げられる。
成分Cの含有量としては、樹脂組成物の全固形分量に対し、0.01〜40重量%であることが好ましく、0.05〜30重量%であることがより好ましく、0.1〜20重量%であることが更に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。ラジカル重合性化合物としては、多官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、前記多官能エチレン性不飽和化合物と共に、単官能エチレン性不飽和化合物を含有していてもよい。
(成分D−1)多官能エチレン性不飽和化合物
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Dとして、(成分D−1)多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
多官能エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和基を2個〜20個有する化合物が好ましい。このような化合物群は当産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に制限無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの共重合体、並びにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
多官能エチレン性不飽和化合物におけるエチレン不飽和基が由来する化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、ビニル化合物、アリル化合物、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R及びR’は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
これらの中でも、成分D−1としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジベンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における(成分D−1)多官能エチレン性不飽和化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、樹脂組成物の全固形分量に対し、0.1〜40重量%が好ましく、1〜20重量%の範囲がより好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分D−2)単官能エチレン性不飽和化合物を含有していてもよいが、(成分D−2)単官能エチレン性不飽和化合物を含有する場合、(成分D−1)多官能エチレン性不飽和化合物と併用することが好ましい。
エチレン性不飽和結合を分子内に1つ有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と一価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と1価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類とイソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び、単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物としては、特に制限はなく、前記例示した化合物の他、公知の種々の化合物を用いることができ、例えば、特開2009−204962号公報に記載の化合物などを使用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における(成分D−2)単官能エチレン性不飽和化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、樹脂組成物の全固形分量に対し、0.1〜40重量%が好ましく、1〜20重量%の範囲がより好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、架橋構造形成を促進するため、(成分E)重合開始剤を含有することが好ましく、(成分D−1)多官能エチレン性不飽和化合物及び(成分E)重合開始剤を含有することがより好ましい。
重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分F)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(以下、単に「光熱変換剤」ともいう。)を更に含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
本発明に用いることができる光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
また、カーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも100m2/gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における(成分F)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、フレキソ版として必要な柔軟性を付与するという観点から、(成分G)可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤としては、高分子の可塑剤として公知のものを用いることができ、限定されないが、例えば、高分子大辞典(初版、1994年、丸善(株)発行)の第211〜220頁に記載のアジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、ベンゾイル酸誘導体、クエン酸誘導体、エポキシ誘導体、グリコール誘導体、炭化水素及び誘導体、オレイン酸誘導体、リン酸誘導体、フタル酸誘導体、ポリエステル系、リシノール酸誘導体、セバシン酸誘導体、ステアリン酸誘導体、スルホン酸誘導体、テルペン及び誘導体、トリメリット酸誘導体が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度を低下させる効果の大きさという観点から、アジピン酸誘導体、クエン酸誘導体及びリン酸誘導体が好ましい。
アジピン酸誘導体としては、アジピン酸ジブチル、アジピン酸2−ブトキシエチルが好ましい。
クエン酸誘導体としては、クエン酸トリブチルが好ましい。
リン酸誘導体としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ2−エチルヘキシル、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリフェニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸t−ブチルフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル等が挙げられる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物における成分Gの含有量は、ガラス転移温度を室温以下に低下させるという観点から、固形分換算で、樹脂組成物の総重量を100重量%として、1〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、20〜30重量%が更に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分H)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有することが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物に用いられる成分Hにおける「加水分解性シリル基」とは、加水分解性基を有するシリル基のことであり、加水分解性基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲノ基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。このような加水分解性シリル基又はシラノール基は下記式(1)で表されるものが好ましい。
R1〜R3が1価の有機基を表す場合の好ましい有機基としては、種々の有機溶剤への溶解性を付与できる観点から、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
前記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基が特に好ましい。
また、ハロゲン原子としては、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、Cl原子及びBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
また、成分Hとしては、分子内にケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。化合物中に含まれるケイ素原子の数は2以上6以下が好ましく、2又は3が最も好ましい。
前記加水分解性基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であることが好ましく、3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが特に好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
前記アリールオキシ基としては、具体的には、例えば、フェノキシ基などを挙げることができる。アリールオキシ基の結合したアリールオキシシリル基としては、例えば、トリフェノキシシリル基などのトリアリールオキシシリル基を挙げることができる。
スルフィド基、イミノ基、又は、ウレイレン基を有する連結基を含む成分Gの代表的な合成方法を以下に示す。
スルフィド基を含む連結基を有する成分H(以下、適宜、スルフィド連結基含有成分Hともいう。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Hと硫化アルカリの反応、メルカプト基を有する成分Hとハロゲン化炭化水素の反応、メルカプト基を有する成分Hとハロゲン化炭化水素基を有する成分Hの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Hとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Hとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Hとメルカプト基を有する成分Hの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とメルカプト基を有する成分Hの反応、ケトン類とメルカプト基を有する成分Hの反応、ジアゾニウム塩とメルカプト基を有する成分Hの反応、メルカプト基を有する成分Hとオキシラン類との反応、メルカプト基を有する成分Hとオキシラン基を有する成分Hの反応、メルカプタン類とオキシラン基を有する成分Hの反応、及び、メルカプト基を有する成分Hとアジリジン類との反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
イミノ基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、イミノ連結基含有成分Hともいう。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Hとハロゲン化炭化水素の反応、アミノ基を有する成分Hとハロゲン化炭化水素基を有する成分Hの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Hとアミン類の反応、アミノ基を有する成分Hとオキシラン類との反応、アミノ基を有する成分Hとオキシラン基を有する成分Hの反応、アミン類とオキシラン基を有する成分Hの反応、アミノ基を有する成分Hとアジリジン類との反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Hとアミン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Hとアミノ基を有する成分Hの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Hの反応、アセチレン性不飽和三重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Hの反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Hと有機アルカリ金属化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Hと有機アルカリ土類金属化合物の反応、及び、カルボニル化合物とアミノ基を有する成分Hの反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
ウレイレン基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、ウレイレン連結基含有成分Hともいう。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Hとイソシアン酸エステル類の反応、アミノ基を有する成分Hとイソシアン酸エステルを有する成分Hの反応、及び、アミン類とイソシアン酸エステルを有する成分Hの反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
以下、本発明における成分Hとして好適なシランカップリング剤について説明する。
本発明においては、Si原子に、アルコキシ基又はハロゲノ基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤ともいう。シランカップリング基は、Si原子にアルコキシ基又はハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
本発明における好ましい態様であるシランカップリング剤においては、Si原子に直接結合している官能基として、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基が直に好ましい。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、Cl原子及びBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、S原子を含む連結基が特に好ましい。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基又はエトキシ基、中でもメトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、かつ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子(特に好ましくはS原子)を含むアルキレン基を介して結合している化合物が好適である。より具体的には、スルフィド基を含む連結基を有するものが好ましい。
また、シランカップリング基同士を連結する連結基の他の好ましい態様として、オキシアルキレン基を有する連結基が挙げられる。連結基がオキシアルキレン基を含むことで、レーザー彫刻後の彫刻カスのリンス性が向上する。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましく、オキシエチレン基が複数連結されたポリオキシエチレン鎖がより好ましい。ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の総数としては、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜15が特に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するため、(成分I)充填剤を含有することが好ましい。
充填剤としては、公知の充填剤を用いることができ、例えば、無機粒子、有機樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子としては、公知のものを用いることができ、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛、シリカ、アルミナ、アルミニウム、炭酸カルシウムなど例示できる。
有機樹脂粒子としては、公知のものを用いることができ、熱膨張性マイクロカプセルが好ましく例示できる。
熱膨張性マイクロカプセルとしては、EXPANCEL(Akzo Noble社製)が例示できる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Iを1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における(成分I)充填剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分J)バインダーポリマー(以下、単に「バインダーポリマー」ともいう。)を含有してもよいが、その含有量は、成分A及び成分Bの合計の含有量より少ないことが好ましく、成分A及び成分Bの合計の含有量の50重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが更に好ましく、(成分J)バインダーポリマーを含有しないことが特に好ましい。
バインダーポリマーは、レーザー彫刻用樹脂組成物に含有される高分子成分であり、一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種を単独使用するか、又は、2種以上を併用することができる。特に、レーザー彫刻用樹脂組成物を印刷版原版に用いる際は、レーザー彫刻性、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが好ましい。
バインダーポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光又は加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報の段落0038に記載されているものが好ましく挙げられる。また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。特開2008−163081号公報の段落0039〜0040に詳述されている。更に、レーザー彫刻用樹脂組成物を、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に適用する場合であれば、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報の段落0041に詳述されているものを使用することができる。
このようなポリマーとして、主鎖にエチレン性不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
側鎖にエチレン性不飽和結合をもつポリマーとしては、後記のバインダーポリマーの骨格に、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のようなエチレン性不飽和基を側鎖に導入することにより得られる。バインダーポリマー側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法は、(1)重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構成単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、(2)水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を高分子反応により導入する方法など、公知方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中へのエチレン性不飽和基の導入量を制御することができる。
また、本発明の樹脂組成物が成分B−1を含有する場合、本発明の樹脂組成物は、バインダーポリマーとして、前記反応性官能基を有するバインダーポリマーを含有することがより好ましく、ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーを含有することが更に好ましい。
成分Jとしては、特に、(成分J−1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーが好ましく用いられる。以下に説明する。
以下、本発明の樹脂組成物におけるバンインダーポリマーとしては、(成分J−1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー(以下、「特定ポリマー」ともいう。)が好ましい。この特定ポリマーは、水不溶であって、かつ、炭素数1〜4のアルコールに可溶であることが好ましい。
成分J−1として、水性インキ適性とUVインキ適性を両立しつつ、かつ彫刻感度が高く皮膜性も良好であるレリーフ形成層を与えるレーザー彫刻用樹脂組成物には、ポリビニルアセタール及びその誘導体、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂、及び、側鎖にヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂等が好ましく挙げられる。
特定ポリマーを用いた場合、特定ポリマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に光熱変換剤が存在すると特定ポリマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度が更に増大したものと推定される。
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる。)を環状アセタール化することにより得られる化合物である。また、ポリビニルアセタール誘導体は、前記ポリビニルアセタールを変性したり、他の共重合成分を加えたものである。
ポリビニルアセタール誘導体中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30〜90%が好ましく、50〜85%がより好ましく、55〜78%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール誘導体中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10〜70モル%が好ましく、15〜50モル%がより好ましく、22〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタールは、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%が更に好ましい。ポリビニルアセタール誘導体は、更に、その他の共重合単位を有していてもよい。
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラールなどが挙げられる。中でも、ポリビニルブチラール誘導体(PVB)が好ましい。
ポリビニルブチラールは、通常、ポリビニルアルコールをブチラール化して得られるポリマーである。また、ポリビニルブチラール誘導体を用いてもよい。
ポリビニルブチラール誘導体の例として、水酸基の少なくとも一部をカルボキシル基等の酸基に変性した酸変性PVB、水酸基の一部を(メタ)アクリロイル基に変性した変性PVB、水酸基の少なくとも一部をアミノ基に変性した変性PVB、水酸基の少なくとも一部にエチレングリコールやプロピレングリコール及びこれらの複量体を導入した変性PVB等が挙げられる。
ポリビニルアセタールの分子量としては、彫刻感度と皮膜性のバランスを保つ観点で、重量平均分子量として5,000〜800,000であることが好ましく、8,000〜500,000であることがより好ましい。更に、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000であることが特に好ましい。
ポリビニルブチラールの構造は、以下に示す通りであり、これらの構成単位を含んで構成される。
彫刻感度と皮膜性とのバランスの観点から、ポリビニルブチラール及びその誘導体の重量平均分子量は、5,000〜800,000が好ましく、8,000〜500,000がより好ましく、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50,000〜300,000が特に好ましい。
PVB誘導体を特定ポリマーとして用いてレリーフ形成層を製膜する際には、溶剤に溶かした溶液をキャストし乾燥させる方法が、膜表面の平滑性の観点で好ましい。
特定ポリマーとして用いることができるアクリル樹脂(ただし、ブロック共重合体を除く。)としては、公知のアクリル単量体を用いて得るアクリル樹脂であって、分子内にヒドロキシル基を有するものであればよい。
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリル」及び「メタアクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語である。
更に、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらの中でも、水性インキ耐性の観点で、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
また、特定ポリマーとして、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂であるノボラック樹脂を用いることができる。
好ましいノボラック樹脂としては、例えばフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
特定ポリマーとして、ヒドロキシル基を側鎖に有するエポキシ樹脂を用いることも可能である。好ましい具体例としては、ビスフェノールAとエピクロヒドリンの付加物を原料モノマーとして重合して得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000であり、かつ、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
本発明における特定ポリマーに含まれるヒドロキシル基の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1〜15mmol/gであることが好ましく、0.5〜7mmol/gであることがより好ましい。
一般ポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレアポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂(ただし、ブロック共重合体を除く。)、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
特定ポリマーに含まれるヒドロキシル基の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1〜15mmol/gであることが好ましく、0.5〜7mmol/gであることがより好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、成分Jを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する際に用いる溶剤は、各成分の溶解性の観点から、主として非プロトン性の有機溶剤を用いることが好ましい。より具体的には、非プロトン性の有機溶剤/プロトン性有機溶剤=100/0〜50/50(重量比)で用いることが好ましく、100/0〜70/30(重量比)で用いることがより好ましく、100/0〜90/10(重量比)で用いることが特に好ましい。
非プロトン性の有機溶剤の好ましい具体例としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶剤の好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、前記成分A〜成分K以外の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、熱重合防止剤、着色剤、香料、アルコール交換反応触媒等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
また、共増感剤を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度を更に向上させることができる。
更に、組成物の製造中又は保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料又は顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、及び、光又は熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記の架橋は、熱及び/又は光により行うことができる。また、前記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分B同士の反応、成分Bと他の成分との反応などによる架橋構造が例示できる。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
レリーフ形成層は、前記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、熱架橋性の層であることが好ましい。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用し得る材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。また、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶剤を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましい。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶剤を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A及び成分B、並びに、任意成分として、成分C〜成分Jを適当な溶剤に溶解又は分散させ、次いで、これらの液を混合することによって製造できる。溶剤成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去することが好ましいので、溶剤としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶剤の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法である。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱架橋工程)。熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層を熱架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
なお、本発明において、前記架橋工程において、成分A及び成分Bの重合反応が生じる。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。光(「活性光線」ともいう。)としては可視光、紫外光、及び電子線が挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱及び/又は光で架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に使用し得るファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶剤として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
なお、実施例におけるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に断らない限りにおいて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定した値を表示している。
(成分A)
デュラネート TPA−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:600、イソシアナト基重量%:23重量%、イソシアナト基平均数fn:3.3)
デュラネート TKA−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:660、イソシアナト基重量%:21.7重量%、イソシアナト基平均数fn:3.4)
デュラネート TLA−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:540、イソシアナト基重量%:23.4重量%、イソシアナト基平均数fn:3.0)
デュラネート TSE−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:860、イソシアナト基重量%:12.2重量%、イソシアナト基平均数fn:2.5)
デュラネート TSA−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:560、イソシアナト基重量%:20.7重量%、イソシアナト基平均数fn:2.8)
デュラネート TSS−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:610、イソシアナト基重量%:17.8重量%、イソシアナト基平均数fn:2.6)
デュラネート TSR−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:520、イソシアナト基重量%:20.4重量%、イソシアナト基平均数fn:2.5)
デュラネート 24A−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変型ポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、数平均分子量:560、イソシアナト基重量%:23.5重量%、イソシアナト基平均数fn:3.1)
KF−6003(両末端カルビノール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
X−22−160AS(両末端カルビノール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
BY16−004(両末端カルビノール変性シリコーンオイル、東レ・ダウコーニング(株)製)
KF−8010(両末端アミノ変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
X−22−161A(両末端アミノ変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
X−22−176DX(片末端ジオール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
X−22−176F(片末端ジオール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
X−22−176D(片末端ジオール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
KF−96−10(ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
PCDL T4672(デュラノール T4672、ポリカーボネートジオール、旭化成(株)製)
ジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)
トリメチロールプロパン(東京化成工業(株)製)
パーブチルZ(t−ブチルパーオキシベンゾエート、日本油脂(株)製)
(成分E)
ジエチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業(株)製)
(成分F)
カーボンブラック#45L(三菱化学(株)製、粒子径:24nm、比表面積:125m2/g、DBP吸油量:45cm3/100g)
(成分G)
RS−540(アデカサイザーRS−540、(株)ADEKA製)
(成分H)
KBE−846(シランカップリング剤、(CH3CH2O)3Si−(CH2)3−SSSS−(CH2)3−Si(OCH2CH3)3、信越化学工業(株)製)
1.レーザー彫刻用樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、表1に記載の成分Aを35重量部、表1に記載の成分Bを50重量部、表1に記載の成分Cを10重量部、表1に記載の成分Eを15重量部、表1に記載の成分Gを10重量部入れ、この混合液を撹拌しながら70℃で30分間加熱した。
その後、混合液を40℃にし、表1に記載の成分Dを1重量部、表1に記載の成分Fを2重量部及び表1に記載の成分Hを5重量部添加して30分間撹拌した。
その後、香料として酢酸イソボルニル(和光純薬工業(株)製)を0.1重量%(樹脂組成物の全固形分量に対し)添加し、40℃で10分間撹拌した。
この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用樹脂組成物)をそれぞれ得た。なお、表1に「なし」と記載されている場合、当該成分は上記において添加しなかった(添加しなかった重量分は、その他素材の添加量比率は同じで、全体の添加量を増やすことで補填した。)。
この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用樹脂組成物)をそれぞれ得た。なお、表1に「なし」と記載されている場合、当該成分は上記において添加しなかった。
−樹脂Aの調製−
温度計、撹拌機、還流器を備えたセパラブルフラスコに、信越化学工業(株)製、両末端カルビノール変性シリコーンオイルであるKF−6003(数平均分子量5,100、OH価22.0)を413.72重量部と、トリレンジイソシアネート11.05重量部を加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート16.24重量部を添加し、更に約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子当たり平均約2.0個)である、数平均分子量約8,000の樹脂Aを調製した。この樹脂は、主鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ、外力を除いても元の形状を回復しなかった。
−樹脂Bの調製−
温度計、撹拌機、還流器を備えたセパラブルフラスコに、信越化学工業(株)製、片末端ジオール変性シリコーンオイルであるX−22−176DF(数平均分子量3,206、OH価35.0)を474.24重量部と、トリレンジイソシアネート22.17重量部を加え、80℃加温下で約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート6.42重量部を添加し、更に約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子当たり平均約2.0個)である、数平均分子量約24,000の樹脂Bを調製した。この樹脂は、側鎖にシロキサン結合を含み、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ、外力を除いても元の形状を回復しなかった。
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた実施例1〜16、及び、比較例1〜4の各レーザー彫刻用樹脂組成物をそれぞれ、スペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、90℃のオーブン中で加熱して、厚さがおよそ1mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版をそれぞれ作製した。この時、90℃のオーブン中で表面のベトツキが完全になくなるまで加熱し、熱架橋を行った。
架橋後のレリーフ形成層に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。レーザー彫刻用印刷版原版1から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長 915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
また、レリーフ層のショアA硬度をそれぞれ、前述の測定方法により測定したところ、75°であった。
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行い、結果を表2に示す。
各レーザー彫刻用樹脂組成物をスペーサーに流延した直後から90℃のオーブン中で表面のベトツキが完全になくなるまでの時間(熱架橋完了の指標となる。)を表2における製造時間と定義した。
レーザー彫刻した版を水に浸漬し、彫刻部を歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ フラット)で10回こすった。その後、光学顕微鏡でレリーフ層の表面におけるカスの有無を確認した。カスがないものを◎、ほとんどないものを○、少し残存しているものを○△、カスが残存しているが、実用上問題のないレベルであるものを△、カスが除去できていないものを×とした。
上記耐刷性の評価において、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のベタ部におけるインキの付着度合いを目視で比較した。
評価基準は、濃度ムラがなく、均一かつ僅かに光沢(光沢があるということは、インキがそれなりの厚み(量)だけしっかり転移されていることの指標になる。)があるものを◎、濃度ムラなく均一なものを○、ムラがあるものを×、○と×との中間の程度を△とした。
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株))を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じたところを刷了とし、刷了時までに印刷した紙の長さ(メートル)を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
レリーフ印刷版原版1〜50、C1〜C5が有するレリーフ形成層をレーザー彫刻して得られたレリーフ層の「彫刻深さ」を、以下のように測定した。ここで、「彫刻深さ」とは、レリーフ層の断面を観察した場合の、彫刻された位置(高さ)と彫刻されていない位置(高さ)との差をいう。本実施例における「彫刻深さ」は、レリーフ層の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察することにより測定した。彫刻深さが大きいことは、彫刻感度が高いことを意味する。結果は、彫刻に用いたレーザーの種類毎に表2に示す。
Claims (11)
- (成分A)イソシアナト基の平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物、及び、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、及び、
前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むことを特徴とする
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。 - 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分C)分子中にシロキサン結合を含まず、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を更に含有する、請求項1に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
- 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分D)ラジカル重合性化合物、及び、(成分E)ラジカル重合開始剤を更に含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
- 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分F)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
- 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分G)可塑剤を更に含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
- 前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分H)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
- 請求項1〜6いずれか1つに記載の製造方法により得られたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
- (成分A)イソシアナト基の平均数fnが2より大きいイソシアネート化合物、及び、(成分B)分子中にシロキサン結合を有し、かつ、活性水素を2つ以上有する化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、
前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、
前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とする
レリーフ印刷版の製版方法。 - 請求項8に記載の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
- 前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、請求項9に記載のレリーフ印刷版。
- 前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項9又は10に記載のレリーフ印刷版。
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