JP5202852B2 - 防振浮き床構造 - Google Patents
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Description
ところで、近年の技術進歩により、高速移動体の高速化や軽量化が進み、車体に発生するビビリ振動(例えば、10Hz〜50Hz)が顕在化して乗心地が悪化し問題となっている。また、低周波騒音の増大も顕在化してきている。
従来の床構造で、梁と床パネルとの間にゴム板、もしくは防振ゴムを挟むものもあるが、これらは防音効果(例えば、1kHz程度の可聴帯域の振動伝達低減)を目的としたもので、乗心地問題を解決するものではなかった(例えば、特許文献1,2)。
従来型の防振ゴムで考えると、上記固有振動数は低い周波数であり、下記のような問題を発生する虞がある。
(1) 静荷重によるたわみ、ヘタリが大きくなる。
(2) 十分な水平方向(前後、左右)剛性が得られない。
(3) 十分な減衰性が得られない(振動が静まらない、共振域での振動が大きくなる)。
車体に発生するビビリ振動による乗心地の悪化は、発明者による調査の結果、梁から床板に伝達される振動を弾性体で防振すると共に、床板の振動をダンパーで制振させることで大幅に改善できることが判明した。
(1)金属スプリングで荷重を受けるため、経時変化(ヘタリ)がほとんどなく、また、大ストロークに対応できる。
(2)軸部材の外径部と収容部材の穴の内周面との間に摺動部材が配置されているので、軸部材と収容部材との径方向、即ち、水平方向の相対変位が制限され、水平方向の必要な剛性が確保できる。そして、他の手段を用いることなく防振装置のみで十分な水平方向の剛性が得られる。
(3)摺動部材の嵌め合い寸法を適正に設定することで、防振装置の支持バネ(振動系で言うところのバネ)特性への影響を抑制しつつ、適度な減衰性を得ることができる。
請求項2に記載の防振浮き床構造では、摺動部材と軸部材の外径部との間に形成される間隙、及び摺動部材と収容部材の穴の内周面との間に形成される間隙の少なくとも一方を介して空気が主流体室と外部との間を行き来して減衰力を発生する。
請求項3に記載の防振浮き床構造では、床板が振動により上下動して軸部材と収容部材とが軸方向に相対変位した時に、外側流体室及び内側流体室の両方で容積変化が生じる。
外側流体室で容積変化が生じると、摺動部材と軸部材の外径部との間に形成される間隙、及び摺動部材と収容部材の穴の内周面との間に形成される間隙の少なくとも一方を介して流体が外側流体室と外側流体室の外部との間を行き来して減衰力を発生する。
このように、請求項3の防振浮き床構造では、液体による減衰力が更に加わるので、制振作用を更に高めることができる。
床板同士を互いに離間させることで、床板の振動が他の床板へ影響することを排除できる。例えば、座席を搭載した床板と、座席の無い通路用の床板とを分離することで、通路を歩行する際の振動が、座席の乗員に伝達しないように出来る。さらに、車両の中でも振動の発生しやすい部位、し難い部位、重量のあるものが搭載される場所等、条件が種々異なる場合があるので、それらの条件に応じて床を複数の床板で構成することで、最適な防振浮き床構造を実現することが出来る。
先ず、2つの梁を連結するようにブラケットを配置し、このブラケットに防振装置を取り付ける構成とすると、車体の所望の位置に防振装置を配置でき、床板のサイズ、配置位置の自由度が増し、防振効果を最大限に発揮することができる。また、2つの梁をブラケットで連結することで、梁剛性を向上することも出来る。
これに対し、梁の上に防振装置を取り付け、その防振装置の上に床板を取り付ける構成とすると、ブラケットを用いない分軽量化できる。
車体の床部分を、複数の床板で構成する場合、床板の振動を他の隣接する床板に伝達しないようにするため床板と床板との間に隙間を設ける。このような隙間を設けた場合、床下に配置したモータ等の駆動装置からの騒音が隙間を介して車室内に進入する。
また、シール部材は、弾性体から構成され、かつ取付初期状態で適切なつぶし代を与えられているので、床板同士が多少相対変位しても追従可能である。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の防振浮き床構造において、前記収容部材の内周面に設けられ径方向内側へ突出する弾性体と、前記軸部材の穴内部側に配置される端部に径方向外側に延びるように形成され、外径寸法が前記弾性体の内径寸法よりも大きく設定された外フランジと、を有する。
以下、図面を参照して本発明の防振浮き床構造の一実施形態を詳細に説明する。この実施形態は、本発明の防振浮き床構造を鉄道の車両に適用した例である。
図2に示すように、車体10の内側下部には、車体幅方向に延びる梁18が車両前後方向(図2の紙面裏表方向)に間隔をあけて複数設けられている。
シール部材54の断面形状の具体例としては、例えば、図4に示すような3山、図5に示すような一山、また、図6に示すような櫛歯状を挙げることができるが、他の形状であっても良い。
軸部材32は、上部に底板32Aが一体的に設けられてカップ状を呈している。
外フランジ30Bの下面には、下取付板34が密着して固着されている。
なお、下取付板34は、梁18の上面に搭載されてボルト36、及びナット37で梁18に固定されている。
摺動部材保持部材38の内周面には環状の溝40が形成されており、この溝40に環状の摺動部材42が嵌めこまれている。摺動部材42は、軸部材32と外筒30とが軸方向に相対変位したときに、軸部材32の外周面に摺動するようになっている。なお、摺動部材42の内径は、軸部材32と摺動部材42との間に空気の出入りを許容する隙間を生じるように、軸部材32の外径よりも若干大きく形成されている。また、このはめ合いにより減衰力の調整が可能である。
軸部材32の上側には上取付板48が配置されており、上取付板48は軸部材32の底板32Aに皿ボルト50、及びナット52によって取り付けられている。
金属スプリング46は、床板荷重を支持しつつ、梁18から床側への振動伝達を阻止するようにバネ定数が設定されている。
また、軸部材32が上下方向に動くように、軸部材32の下端は下取付板34から離間している。
次に、本実施形態の防振浮き床構造の作用を説明する。
例えば、車両が高速で走行することで、車体自体に振動が生じ、この振動が梁18にも伝達される。この振動は、梁18から座席用床板24または通路用床板22へ伝達しようとするが、梁18と座席用床板24または通路用床板22との間に防振装置26が介在しており、防振装置26の金属スプリング46が床板側への振動伝達を阻止するように作用するので、座席用床板24または通路用床板22は振動し難くなる。
即ち、この防振装置26では、上記振動伝達を阻止しつつ、必要な水平方向の剛性を確保するために、水平方向の剛性が上下方向の剛性に比較して相対的に高く設定されている。
(1)金属スプリング46で制振するため、経時変化(ヘタリ)がほとんどなく、また、大ストロークに対応できる。
(2)軸部材32の外径部と外筒30の内周面との間に、摺動部材保持部材38で保持さされた摺動部材42が配置されているので、軸部材32と外筒30との径方向、即ち、水平方向の相対変位が制限され、防振装置26のみで十分な水平方向の必要な剛性が確保できる。
(3)摺動部材42の嵌め合い寸法を適正に設定することで、防振装置26の支持バネ(振動系で言うところのバネ)特性への影響を抑制しつつ、適度な減衰性を得ることができる。
また、本発明の防振浮き床構造は鉄道車両に限らず、バス、航空機等の高速移動体にも適用可能である。
次に、図9にしたがって、本発明の防振浮き床構造の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態の防振装置26では、軸部材32の下端に、径方向外側に延びる外フランジ32Bが一体的に形成されている。
さらに、第1の実施形態では、下方に想定外の荷重が作用した場合等に、軸部材32の下端が下取付板34に当接して異音(金属同士がぶつかる音)を発生する虞があるが、本実施形態では、金属の外フランジ32Bが弾性体からなる第2の弾性体シート64に当接し、しかも弾性体からなる第1の弾性体シート60、及び第2の弾性体シート64が衝撃を吸収するので、異音の発生を抑えることができる。なお、上方に想定外の荷重が作用した場合も、外フランジ32Bと摺動部材保持部材38で変位制限するだけでなく緩衝が可能である。
次に、図10にしたがって、本発明の防振浮き床構造の第3の実施形態を説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態の防振装置26では、下取付板34の中央が上側へ凸となるようにプレス成形されており、凸部分66の中央に形成された浅い凹部66Aに金属スプリング46の下端が支持されている。
隔壁部材68は、主流体室44を径方向に2分割し、2分割した内側を内側流体室44A、外側を外側流体室44Bとしている。
下取付板34の凹部66Aの中央にはオリフィス(小孔)74が形成されている。
なお、梁18には、ダイヤフラム70が当接しないように逃げ穴82が形成されている。
なお、オリフィス74の径、液体76の粘度、ダイヤフラム70の液圧に対する硬さ等を調整することで、防振装置26の制振効果を調整可能である。
上記実施形態では、軸部材32を床板側に取り付け、外筒30を梁側に取り付けていたが、防振装置26を上下逆向きに取り付けても良い。
また、上記実施形態では、主流体室44の空気を軸部材32と摺動部材42との間の隙間を介して大気と出入りさせることで減衰力を発生させているが、例えば、軸部材32、外筒30、下取付板34及び梁18等に孔(オリフィス)を形成し、この孔を介して主流体室44の空気を大気と出入りさせて減衰力を発生させても良い。
12 床
18 梁
20 ブラケット
22 通路用床板
24 座席用床板
26 防振装置
30 外筒
32 軸部材
38 摺動部材保持部材
42 摺動部材
44 主流体室
44A 内側流体室
44B 外側流体室
46 金属スプリング
54 シール部材
68 隔壁部材
70 ダイヤフラム
72 副流体室
74 オリフィス
76 液体
Claims (7)
- 車体に設けられた梁の上に配置される床板と、前記梁と前記床板との間に配置される防振装置とを備える防振浮き床構造であって、
前記防振装置は、前記床板及び前記梁の何れか一方に連結され、軸線が鉛直方向とされた軸部材と、前記床板及び前記梁の何れか他方に連結され、前記軸部材を内部に収容する穴を備える収容部材と、一方が前記床板側、他方が前記梁側に連結されて前記床板の荷重を支持する金属スプリングと、前記軸部材の外径部と前記収容部材の穴の内周面との間に配置されて径方向の相対変位を制限すると共に、前記軸部材と収容部材とが軸方向に相対変位した際に前記軸部材の外径部及び前記収容部材の穴の内周面の一方に固定され、他方に摺動して減衰力を生じさせる環状の摺動部材と、を有し、
前記収容部材の穴の開口を前記軸部材及び前記摺動部材で閉塞することで前記収容部材の内部に主流体室を構成し、
前記主流体室を、前記摺動部材と前記軸部材の外径部との間の間隙、及び前記摺動部材と前記収容部材の穴の内周面との間の間隙の少なくとも一方を介して外部と連通させ、前記軸部材と前記収容部材との相対変位によって前記主流体室の容積変化が生じた際に、前記間隙を介して前記主流体室と前記外部との間で流体を行き来させて減衰力を発生させる、ことを特徴とする防振浮き床構造。 - 前記流体は空気である、ことを特徴とする請求項1に記載の防振浮き床構造。
- 前記主流体室を前記軸部材の径方向内側の内側流体室と、前記内側流体室の径方向外側に配置され前記間隙を介して大気と連通する外側流体室とに2分割する弾性材料からなる隔壁部材と、
前記主流体室とは独立した副流体室と、
前記内側流体室と前記副流体室との間に封入される液体と、
前記副流体室を拡縮可能とするように前記副流体室の隔壁の一部を構成するダイヤフラムと、
前記内側流体室と前記副流体室とを連通し、前記収容部材と前記軸部材との相対変位によって前記内側流体室の容積変化が生じた際に、前記内側流体室と前記副流体室との間で前記液体を行き来させて減衰力を発生させるオリフィスと、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防振浮き床構造。 - 前記梁の上には、複数の前記床板が配置され、各床板同士は互いに離間している、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 前記防振装置は、2つの前記梁を連結するように配置されるブラケットを介して前記梁に支持されている、若しくは梁上に直付けされている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 前記床板の端部には、隣接する他の前記床板または車体の側壁との間の隙間を塞ぐ弾性体からなるシール部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 前記収容部材の内周面に設けられ径方向内側へ突出する弾性体と、
前記軸部材の穴内部側に配置される端部に径方向外側に延びるように形成され、外径寸法が前記弾性体の内径寸法よりも大きく設定された外フランジと、
を有する請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
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