JP4916147B2 - 防振浮き床構造 - Google Patents
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ところで、近年の技術進歩により、高速移動体の高速化や軽量化が進み、車体に発生するビビリ振動(例えば、10Hz〜50Hz)が顕在化して乗心地が悪化し問題となっている。また、低周波騒音の増大も顕在化してきている。
車体に発生するビビリ振動による乗心地の悪化は、発明者による調査の結果、梁から床板に伝達される振動を防振すると共に、床板の振動を制振させることで大幅に改善できることが判明した。
なお、床板は、一例として、車体幅方向の両側を第1の防振装置を介して梁に支持し、車体幅方向の中央側を第2の防振装置を介して前記梁に支持することができる。
また、例えば、乗客が歩行する時などで床板の上下動が大きい場合には、床板の上下方向の変位量を制限するストッパを設けているので、床板の上下方向の変位量を抑制することができる。なお、ストッパの効果として、歩行時の上下変位違和感排除、及び歩行安全性向上を上げることができる。
床板は、弾性体である第1の防振装置、及び第2の防振装置で支持されているため、車体前後方向の長さが短いとピッチングし易くなり、このピッチング運動により乗心地が悪化する。したがって、乗心地を確保するために、床板は、座席を車体前後方向に2座席以上配置できる長さに設定することが好ましい。但し、床板を車体前後方向に長くし過ぎると、車内への搬入、及び取付作業が悪化したり、積車条件の成立が低くなる虞がある。なお、床板上の座席に全ての乗員が着座した状態を積車条件とし、この条件が同浮き床構成で低周波数領域まで防振可能となる。逆に空車状態では防振領域が高周波側へシフトする(質量が減少して固有振動数が上昇するため。)。また、まばらに乗員が着座している場合は、空車状態と積車条件の間の防振領域となる。このため、床板1枚当たりの車体前後方向の長さの上限は、車体前後方向に座席を4座席設ける程度の長さに設定することが好ましい。
床板同士を互いに離間させることで、床板の振動が他の床板へ影響することを排除できる。例えば、座席を搭載した床板と、座席の無い通路用の床板とを分離することで、通路を歩行する際の振動が、座席の乗員に伝達しないように出来る。さらに、車両の中でも振動の発生しやすい部位、し難い部位、重量のあるものが搭載される場所等、条件が種々異なる場合があるので、それらの条件に応じて床を複数の床板で構成することで、最適な防振浮き床構造を実現することが出来る。
なお、床下からの音が車室内に進入し難いように、床板間の隙間は、小さい方が好ましい。但し、隙間が小さすぎると床板同士の相対変位によって後述の床板間シール部材の摺動抵抗が大きくなり、当該シール部材を通じて振動影響を受けやすくなると共に、上下の柔らかい支持剛性を損ねる可能性があるため、床板脱着作業性を考慮して車体状況に合った隙間量を設定する必要がある。
先ず、2つの梁を連結するようにブラケットを配置し、このブラケットに第1の防振装置、及び第2の防振装置の少なくとも一方を取り付ける構成とすると、車体の所望の位置に第1の防振装置、及び第2の防振装置を配置でき、床板のサイズ、配置位置の自由度が増し、防振効果を最大限に発揮することができる。また、2つの梁をブラケットで連結することで、梁剛性を向上することも出来る。
これに対し、梁の上に第1の防振装置、及び前記第2の防振装置を取り付け、その第1の防振装置、及び第2の防振装置の上に床板を取り付ける構成とすると、ブラケットを用いない分軽量化できる。
鉛直方向に向けた外筒の内側に弾性体を介して内筒を配置した第1の防振装置は、水平方向の変位に対しては弾性体が圧縮及び伸び変形し、上下方向の変位に対しては弾性体が剪断変形する。これにより、水平方向の剛性を高く、上下方向の剛性を低く設定することが容易に実現できる。
車体の床部分を、複数の床板で構成する場合、床板の振動を他の床板に伝達しないようにするため床板と床板との間に隙間を設ける。このような隙間を設けた場合、床下に配置したモータ等の駆動装置からの騒音が隙間を介して車室内に進入する。
また、シール部材は、弾性体から構成され、かつ取付初期状態で適切なつぶし代を与えられているので、床板同士が多少相対変位しても追従可能である。
請求項7に記載の防振浮き床構造では、床板を、上下方向よりも水平方向の剛性が高く設定された第1の防振部材と、第1の防振部材よりも上下方向のバネ定数が低く設定された金属製の第2の防振部材と、床板の振動を減衰させるダンパーとで支持することで、水平方向の必要な剛性を確保しつつ、梁からの振動を防振すると共に、上下方向の振動減衰力を高める構成にでき、大幅に乗心地を改善することが出来る。
図1、及び図2に示すように、車両の車体10の床12の上には、中央の通路14を挟んで車両左右両側に2人掛けの座席16が車両前後方向に複数設けられている。
図3に示すように、これらの梁18には、車両前後方向に隣接する梁18と梁18とを連結するように、板金製のブラケット20が設けられている。
図6に示すように、本実施形態の座席用床板24は、座席16が車両前後方向に4列取り付けられる長さに形成されている。
なお、ブラケット20には、ブッシュ型防振装置26、またはハイブリッド型防振装置28の取り付けられる部分の中央に、逃げ孔21が形成されている。これは、後述のハイブリッド型防振装置28のオリフィス52の減衰機能を損ねないようにする役目を有している。
図7に示すように、ブッシュ型防振装置26は、軸方向を鉛直方向に向けた外筒30と、外筒30の内側に同軸的に配置される軸32と、外筒30と軸32とを連結するゴム状弾性部材34とを備えている。これにより、本実施形態のブッシュ型防振装置26は、上下方向(軸32の軸方向)の剛性よりも、水平方向(軸32の軸方向と直交する方向)の剛性が高く設定されている。
軸32の上端には、取付板38が螺子40にて水平に固定されており、この取付板38に座席用床板24が取り付けられる。
図8に示すように、ハイブリッド型防振装置28は、ブラケット20に取り付く第1プレート42と座席用床板24に取り付く第2プレート44との間に中空筒状のゴム状弾性部材46を設け、このゴム状弾性部材46の中空内部46Aで前記第1,第2プレート42,44間に支持バネ48を設けてある。そして、ゴム状弾性部材46の筒状外表面側の軸方向中間個所に当該個所の外径寸法が拡大しないように中間拘束部材50を設けてある。
図6に示すように、本実施形態の座席用床板24は、車両幅方向(矢印W方向)両側部分で、かつ座席16の近傍が複数のブッシュ型防振装置26にて支持されており、車両幅方向中央部分が複数のハイブリッド型防振装置28で支持されている。なお、車両幅方向中央部分のハイブリッド型防振装置28は1列に限定される必要はなく、ハイブリッド型防振装置28は車体10の振動状況等に応じて配置が決定される。
図示はしないが、通路用床板22は、座席用床板24と同様に車両幅方向両側部分を複数のブッシュ型防振装置26にて支持し、車両幅方向中央部分を複数のハイブリッド型防振装置28で支持しても良く、複数のハイブリッド型防振装置28または複数のブッシュ型防振装置26のみで支持しても良い。
次に、本実施形態の防振浮き床構造の作用を説明する。
例えば、車両が高速で走行することで、車体自体に振動が生じ、この振動が梁18にも伝達される。この振動は、梁18から座席用床板24へ伝達しようとするが、梁18と座席用床板24との間にブッシュ型防振装置26、及びハイブリッド型防振装置28が介在して床板側への振動伝達を阻止するように作用するので、水平方向の必要な剛性は確保しつつ座席用床板24は振動し難くなる。
また、床板端部にシール部材54を介在させているので、床板同士が多少相対変位しても隙間が生じることはなく、床下からの音が客室内に進入することを防止でき、また、塵や物品が床下に落下するのを防止できる。
なお、本発明の防振浮き床構造は鉄道車両に限らず、バス、航空機等の高速移動体にも適用可能である。
なお、通路用床板22、及び座席用床板24は弾性体(防振装置)で支持しているため、荷重の変動(例えば、乗客の歩行等)等により上下動する場合がある。そこで、このような上下動の変位量を制限したい場合には、図4に示すように、梁18と通路用床板22との間(または、梁18と座席用床板24との間)に、上下動の変位量を制限するブロック状のストッパ56を配置しても良い。このストッパ56は、エラストマー等の弾性体で形成することが好ましい。なお、ブッシュ型防振装置26、またはハイブリッド型防振装置28に、上下動の変位量を制限するストッパを設けても良い。
また、上記実施形態では、ハイブリッド型防振装置28、及び複数のブッシュ型防振装置26を、夫々梁18に掛け渡されたブラケット20に取り付けたが、場合によっては、梁18の上に直接取り付けても良い(例えば、図15参照(なお、図15では、ブッシュ型防振装置26の図示省略))。なお、この方法では、ブラケット20を用いない分軽量化、及び低コスト化できるが、床面高さは、防振装置分だけ高くなり、客室空間は狭まる。したがって、ブラケット20を用いるか用いないかは、目的に応じて適宜選択すればよい。
また、上記実施形態では、客室内の床12を、通路部分に設けられる通路用床板22と、その車両幅方向両側に設けられる座席用床板24とで構成したが、例えば、1枚の通路用床板22とその両側の2枚の座席用床板24を図16に示すような幅広の1枚の床板58に換え、複数の床板58で床12を構成しても良い。
12 床
18 梁
20 ブラケット
22 通路用床板
24 座席用床板
26 ブッシュ型防振装置(第1の防振装置)
28 ハイブリッド型防振装置(第2の防振装置)
30 外筒
32 軸
34 ゴム状弾性部材
54 シール部材
58 床板
Claims (7)
- 車体に設けられた梁の上に配置される床板と、前記梁と前記床板との間に配置される防振装置とを備えた防振浮き床構造であって、
上下方向よりも水平方向の剛性が高く設定された第1の防振装置と、
前記第1の防振装置よりも上下方向の振動に対する減衰率が高く設定された第2の防振装置とを備え、
前記梁と前記床板との間に、前記床板の上下方向の変位量を制限するストッパを設けた、ことを特徴とする防振浮き床構造。 - 前記車体には車両前後方向に複数の座席が設けられ、前記座席を備えた前記床板は、前記座席を車体前後方向に2座席以上配置している、ことを特徴とする請求項1に記載の防振浮き床構造。
- 前記梁には、複数の前記床板が配置され、各床板同士は互いに離間している、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防振浮き床構造。
- 前記第1の防振装置、及び前記第2の防振装置の少なくとも一方は、2つの前記梁を連結するように配置されるブラケットを介して前記梁に支持されている、若しくは梁上に直付けされている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 前記第1の防振装置は、前記梁または前記床板の何れか一方側に連結され、軸方向を鉛直方向に向けた外筒と、前記外筒の内側に配置され前記梁または前記床板の何れか他方側に連結される内筒と、前記外筒と前記内筒とを連結する弾性体と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 前記床板の端部には、隣接する他の前記床板または車体の側壁との間の隙間を塞ぐ弾性体からなるシール部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の防振浮き床構造。
- 車体に設けられた梁と、前記梁の上に配置される床板とを備えた防振浮き床構造であって、
前記床板と前記梁との間に配置され、エラストマーからなる防振体を備え、上下方向よりも水平方向の剛性が高く設定された第1の防振部材と、
前記床板と前記梁との間に配置され、前記第1の防振部材よりも上下方向のバネ定数が低く設定された金属製の第2の防振部材と、
前記床板と前記梁との間に配置され、前記床板の振動を減衰させるダンパーと、
を有する、ことを特徴とする防振浮き床構造。
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