JP5201638B2 - 多孔質体 - Google Patents
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Description
また、特許文献1〜3に記載の溶融賦形されたポリエチレン多孔質膜は、結晶ラメラと非晶とが交互に積層した積層ラメラ構造を有するポリエチレンを延伸することにより結晶ラメラ間が剥離し、剥離したラメラ間にフィブリルが形成されることによって、多孔質構造を形成している(例えば、非特許文献1、2参照)。しかし、この方法で得られた多孔質構造は、開孔率は高いものの、サブミクロンオーダー(0.1μm以上1μm未満)からミクロンオーダー(1μm以上1mm未満)の孔径を有する多孔質構造である。
また、本発明の他の目的は、ナノオーダー孔径を有する多孔質体を提供することにある。
超臨界流体または亜臨界状態の流体で処理し、延伸した結晶性ポリオレフィンで構成された厚さ5〜50nmの薄板が積層した構造を有する多孔質体の開孔率は、10〜80%であることが望ましい。
また、本発明の多孔質体は、ナノオーダーの孔径を有するものである。
<多孔質体>
本発明の多孔質体は、結晶性高分子を含む高分子材料からなるものである。
本発明における「結晶性高分子」とは、分子配列がかなりの秩序を持ち、明瞭な結晶性X線回折が認められる高分子物質のことである。
参考形態例としての第1の多孔質体は、平均分子量が100×104以上の結晶性高分子を含む高分子材料からなり、引張り強度が10MPa以上である多孔質体(以下、多孔質体(I)と記す。)である。
結晶性高分子の平均分子量は、100×104以上であり、上限は実用性によってのみ制限される。ここでいう実用性とは、入手可能であることを意味する。結晶性高分子の平均分子量が、100×104未満では、多孔質体の機械的強度および耐薬品性が不充分になり、結晶性高分子の平均分子量を700×104以下とすることにより、賦形が容易になる。本発明における「平均分子量」は、溶液粘度法(ASTM D4020)にて求められた平均分子量である(以下、粘度平均分子量とも記す)。
多孔質体(I)は、水処理膜、フィルター、吸着材、不織布研磨材等として用いることができる。水処理膜の形態としては、平膜、中空糸膜、等が挙げられる。
本発明の第2の多孔質体は、結晶性高分子を含む厚さ5〜50nmの薄板が積層した構造を有する多孔質体(以下、多孔質体(II)と記す。)である。
薄板の厚さDが5nm未満の場合には、多孔質体の強度が弱くなるおそれがあり、Dが50nmを超えると、開孔率が低下するおそれがある。Dの範囲は、好ましくは10nm以上40nm以下であり、さらに好ましくは15nm以上30nm以下である。本発明における薄板の厚さDは、薄板の短軸の長さである。
得られた多孔質体の外表面を、電子顕微鏡を用いて観察する。用いる電子顕微鏡は走査型電子顕微鏡(SEM)が好ましい。観察倍率は、一概には言えないが、3万倍以上、好ましくは10万倍程度である。観察倍率が3万倍未満であると、薄板の厚さDおよび開孔率の決定が困難になる。したがって、厚さDおよび開孔率を決定するためには、電界放射型SEMを用いることが好ましい。ついで、得られたSEM写真より薄板の厚さDを求める。薄板の厚さDは、SEM写真中の任意の10箇所の薄板の厚さを求め、その平均値とする。また、開孔率は、得られたSEM写真より、多孔質体の面積に対する空孔域の面積の比を百分率で表したものであり、下式(1)で求められる。薄板の厚さDおよび開孔率を求める方法としては、特に限定されないが、画像解析ソフトを用いることが好ましい。画像解析によって得られる薄板の厚さDおよび開孔率は、画像解析のための画質調整や画像解析ソフトによっても若干変動があるが、その差は通常の実験誤差の範囲内である。
開孔率(%)=(空孔域の面積/多孔質体の面積)×100 ・・・(1)
また、多孔質体(II)は、機械的強度に優れるとともに、材料の結晶性高分子の分子構造上、良好な耐薬品性を示す。さらに、官能基、二重結合、および側鎖をほとんど有さないような結晶性高分子または高分子量の結晶性高分子であるほど、極めて良好な耐薬品性を有する。
本発明の多孔質体の製造方法は、結晶性高分子を含む高分子材料を、超臨界流体または亜臨界状態の流体に曝すことによって処理し、延伸する方法である。すなわち、高分子材料の延伸は、(i)超臨界流体または亜臨界状態の流体に曝した後に行ってもよいし、(ii)超臨界流体または亜臨界状態の流体中で行ってもよい。また、超臨界流体または亜臨界状態の流体に曝す前に、予備的に延伸を行ってもよい。
また、本発明の製造方法においては、(i)の方法、(ii)の方法のいずれにおいてもエントレーナー(添加溶媒)を用いてもよい。
本発明の製造方法を用いることにより、平均分子量が100×104以上の結晶性高分子を含む高分子材料からなる多孔質体(I)を得ることができる。得られる多孔質体(I)の機械的強度および耐薬品性を高める観点からは、結晶性高分子の平均分子量は、100×104以上が好ましく、上限は実用性によってのみ制限される。ここで言う実用性とは、入手可能であることを意味する。結晶性高分子の平均分子量を700×104以下とすることにより、賦形が容易になる。
多孔質体(II)の製造方法は、結晶性高分子を含む高分子材料を、超臨界流体または亜臨界状態の流体中で処理し、(Tm−30)℃以上、(Tm+5)℃以下の温度で延伸する方法である。(Tmは、結晶性高分子の融点である。)
多孔質体(II)を製造するためには、超臨界状態あるいは亜臨界状態の流体中にて、(Tm−30)℃以上(Tm+5)℃以下で延伸することが好ましい。超臨界状態あるいは亜臨界状態でなく、延伸温度が(Tm−30)℃以下の場合は、用いる結晶性高分子の分子鎖の可塑化効果が不充分になるおそれがある。好ましくは(Tm−25)℃以上である。また、延伸温度が(Tm+5)℃以上の場合は、延伸した結晶性高分子鎖の融解が優先的になるおそれがある。好ましくはTm以下である。
溶融賦形が可能な結晶性高分子の場合、分子量に変わる尺度としてメルトフローレート(MFR)(JIS K7120)がある。ポリエチレンを用いて多孔質体(II)を得るためには、MFRは0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。上限は、特に制限されないが、通常10以下である。
また、本発明の製造方法においては、(i)の方法、(ii)の方法のいずれにおいてもエントレーナー(添加溶媒)を用いてもよい。
本実施例における評価方法は以下の通りである。
多孔質体表面または多孔質体断面の観察は、日本電子(株)製、電界放射型走査型電子顕微鏡JSM−7400Fを用いて行った(SEM観察)。多孔質体断面は、多孔質体を液体窒素中で割断して形成した。
多孔質体の小角X線散乱測定は、(株)リガク製、ultrax18およびイメージングプレートを用い、サンプルの延伸方向を垂直に固定して、カメラ長1180mm、出力40kV−200mA、露光時間2時間にて行った。ついで、角戸正夫、笠井暢民著、「高分子X線回折」、丸善株式会社、昭和43年発行に記載されているように、長周期の回折に基づき、Braggの式を適用して、多孔質構造の孔径を算出した。
多孔質体の引張り強度測定は、(株)オリエンテック製の引張り試験機UCT−500を用い、チャック間距離20mm、引速20mm/min、あるいはチャック間距離5mm、引速5mm/minで測定した。
薄板の厚さDは、SEM写真を(株)プラネトロン製Image−Pro Plus ver4.5.0.24を用いて画像解析することにより求めた。SEM写真のスケールに対して画像解析装置のスケールが合うように調整した後、SEM写真中から多孔質体中の薄板を任意に10箇所選んでその厚さを求め、その平均値を多孔質体を構成する薄板の厚さDとした。
多孔質体の開孔率は、SEM写真を(株)プラネトロン製Image−Pro Plus ver4.5.0.24を用いて画像解析することにより求めた。画像解析は、SEM写真からスケールバー等の表示がなく、かつ写真の画質が良好な場所を矩形に切り出した後、空間フィルターの中からメディアンを1回実行して写真をわずかにぼかし、ついで明るさ、コントラスト、ガンマ値を操作して、薄板域が白く、空孔域が黒くなるように調整し、写真の全面積(すなわち多孔質体の面積)に対する黒色域(すなわち空孔域の面積)の面積比を求め、これを百分率で表して開孔率を求めた。
結晶性高分子として、三井化学(株)製、高密度ポリエチレン、ハイゼックス2200J(メルトフローレート=5.2、JIS K7120:カタログ値)(融点=134℃、ASTM D2117:カタログ値)を用いた。この高密度ポリエチレンを、180℃にて熱プレスし、厚さ180μmのフィルムを作製した。このフィルムから幅5mm、長さ40mmの短冊状試料を切り取った。
短冊状試料の一端に、1MPaの引張り応力になるように錘を固定し、これを耐圧容器に入れ、容器内部を二酸化炭素で置換した。容器内部の温度を130℃、圧力を10MPaにして1時間処理することにより、超臨界二酸化炭素中で短冊状試料の延伸を行った。処理終了後、容器内を大気圧まで減圧し、5倍に延伸されたフィルムを回収した。得られたフィルムの表面SEM観察写真を図1に示す。この写真から、孔径が少なくともサブミクロン以上である多孔質体が得られていることがわかる。
結晶性高分子として、三井化学(株)製、超高分子量ポリエチレン、ハイゼックスミリオン630M(粘度平均分子量=590×104、ASTM D4020:カタログ値)(融点=136℃、ASTM D2117:カタログ値)を用いた。この超高分子量ポリエチレンを、220℃にて熱プレスし、厚さ180μmのフィルムを作製した。このフィルムから幅5mm、長さ40mmの短冊状試料を切り取った。
短冊状試料の一端に、1MPaの引張り応力になるように錘を固定し、これを耐圧容器に入れ、容器内部を二酸化炭素で置換した。容器内部の温度を140℃、圧力を15MPaにして1時間処理することにより、超臨界二酸化炭素中で短冊状試料の延伸を行った。処理終了後、容器内を大気圧まで減圧し、2倍に延伸されたフィルムを回収した。得られたフィルムの表面SEM観察写真を図2に示す。この写真から、孔径が少なくとも数10nm以上のナノ多孔質体が得られており、図3に示す小角X線散乱測定結果と対応していることがわかる。また、得られたフィルムを試長10mmにて引張り強度測定を行った結果、破断強度は122MPaであり、充分な強度を有する多孔体フィルムであった。
実施例1と同じフィルムを用い、超臨界二酸化炭素による処理温度を155℃とした以外は、実施例1と同様にして延伸を行い、5倍に延伸されたフィルムを回収した。得られたフィルムの表面SEM観察写真を図4に示す。この写真から、孔径が少なくとも数10nm以上のナノ多孔質体が得られており、図5に示す小角X線散乱測定結果と対応していることがわかる。また、得られたフィルムを試長10mmにて引張り強度測定を行った結果、破断強度は130MPaであり、充分な強度を有する多孔体フィルムであった。
実施例1と同じフィルムを用い、このフィルムから幅5mm、長さ40mmの短冊状試料を切り取った。この短冊状試料の一端に、1MPaの引張り応力になるように錘を固定し、大気圧下において、140℃および155℃の空気加熱で延伸を試みた。しかし、フィルムが破断するなどして、延伸することができなかった。
図6に示す装置を用意した。この装置は、上面および下面にサファイアガラス1が取り付けられ、二酸化炭素導入管2および二酸化炭素排出管3が設けられた耐圧容器4と、耐圧容器4の側壁に埋め込まれたヒーター5と、試料6を耐圧容器4内に固定する一対のチャック7と、先端にチャック7の一方が固定され、耐圧容器4外に設けられたモーター(図示略)によって軸方向に摺動可能とされたシャフト8とを具備して概略構成されるものである。
実施例1と同じフィルムを用い、超臨界二酸化炭素中での延伸倍率を2倍とした以外は、実施例3と同様に超臨界二酸化炭素処理および超臨界二酸化炭素中での延伸を行った。得られたフィルムの表面SEM観察写真を図8に示す。この写真から、孔径が少なくともサブミクロン以上である多孔質体が得られていることがわかる。また、得られたフィルムを試長5mmにて引張り強度測定を行った結果、破断強度は28.9MPaであり、充分な強度を有する多孔体フィルムであった。
参考例1と同じフィルムを用い、超臨界二酸化炭素処理の条件を温度:120℃、圧力:10MPa、処理時間:15分とし、超臨界二酸化炭素中での延伸の条件を、延伸速度30m/minとした以外は、実施例3と同様にした。得られたフィルムの表面SEM観察写真を図9に示す。この写真から、孔径がナノメーターオーダーである多孔質体が得られていることがわかる。また、この写真を画像解析した結果、薄板Dの厚さは21nm、開孔率は43%の多孔質体が得られていることがわかった。
2 二酸化炭素導入管
3 二酸化炭素排出管
4 耐圧容器
5 ヒーター
6 試料
7 チャック
8 シャフト
Claims (2)
- 超臨界流体または亜臨界状態の流体で処理し、延伸した、粘度平均分子量が100×10 4 以上の結晶性ポリオレフィンで構成された厚さ5〜50nmの薄板が積層した構造を有する多孔質体。
- 開孔率が10〜80%である、請求項1に記載の多孔質体。
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