本発明の定着装置、及び画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。
プリンタ10において、プリンタ10の本体を構成する筐体12に光走査装置54が固定されており、光走査装置54に隣接する位置に、光走査装置54及びプリンタ10の各部の動作を制御する制御ユニット50が設けられている。
光走査装置54は、図示しない光源から出射された光ビームを回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査し、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビーム60Y、60M、60C、60Kを出射するようになっている。
光ビーム60Y、60M、60C、60Kは、それぞれ対応する各感光体20Y、20M、20C、20Kに導かれる。
プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ14が設けられている。用紙トレイ14の上方には、記録用紙Pの先端部位置を調整する一対の位置合せローラ16が設けられている。
プリンタ10の中央部には、画像形成ユニット18が設けられている。画像形成ユニット18は、前述の4つの感光体20Y、20M、20C、20Kを備えており、これらが上下一列に並んでいる。
感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向上流側には、感光体20Y、20M、20C、20Kの表面を帯電する帯電ローラ22Y、22M、22C、22Kが設けられている。
また、感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体20Y、20M、20C、20K上に現像する現像器24Y、24M、24C、24Kが設けられている。
一方、感光体20Y、20Mには第1中間転写体26が接触し、感光体20C、20Kには第2中間転写体28が接触している。そして、第1中間転写体26、第2中間転写体28には第3中間転写体30が接触している。
第3中間転写体30と対向する位置には、転写ロール32が設けられている。転写ロール32と第3中間転写体30との間を記録用紙Pが搬送され、第3中間転写体30上のトナー画像を記録用紙Pに転写させる。
記録用紙Pが搬送される用紙搬送路34の下流には、定着装置100が設けられている。定着装置100は、定着ベルト102と加圧ロール104を有しており、記録用紙Pを加熱・加圧してトナー画像を記録用紙P上に定着させる。
トナー画像が定着された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36でプリンタ10の上部に設けられたトレイ38に排出される。
ここで、プリンタ10の画像形成について説明する。
画像形成が開始されると、各感光体20Y〜20Kの表面が帯電ローラ22Y〜22Kによって一様に帯電される。
光走査装置54から出力画像に対応した光ビーム60Y〜60Kが、帯電後の感光体20Y〜20Kの表面に照射され、感光体20Y〜20K上に各色分解画像に応じた静電潜像が形成される。
この静電潜像に対して、現像装置24Y〜24Kが選択的に各色、すなわちY〜Kのトナーを付与し、感光体20Y〜20K上にY〜K色のトナー画像が形成される。
その後、マゼンタ用の感光体20Mから第1中間転写体26にマゼンタのトナー画像が一次転写される。また、イエロー用の感光体20Yから第1中間転写体26にイエローのトナー画像が一次転写され、第1中間転写体26上で前記マゼンタのトナー画像に重ね合わされる。
一方、同様にブラック用の感光体20Kから第2中間転写体28にブラックのトナー画像が一次転写される。また、シアン用の感光体20Cから第2中間転写体28にシアンのトナー画像が一次転写され、第2中間転写体28上で前記ブラックのトナー画像に重ね合わされる。
第1中間転写体26へ一次転写されたマゼンタとイエローのトナー画像は、第3中間転写体30へ二次転写される。一方、第2中間転写体28へ一次転写されたブラックとシアンのトナー画像も、第3中間転写体30へ二次転写される。
ここで先に二次転写されているマゼンタ 、イエローのトナー画像と、シアンおよびブラックのトナー画像とが重ね合わされ、カラー(3色)とブラックのフルカラートナー画像が第3中間転写体30上に形成される。
二次転写されたフルカラートナー画像は、第3中間転写体30と転写ロール32との間のニップ部に達する。そのタイミングに同期して、位置合せロール16から記録用紙Pが当該ニップ部分に搬送され、記録用紙P上にフルカラートナー画像が三次転写(最終転写)される。
この記録用紙Pは、その後、定着装置100に送られ、定着ベルト102と加圧ロール104とのニップ部を通過する。その際、定着ベルト102と加圧ロール104とから与えられる熱と圧力との作用により、フルカラートナー画像が記録用紙Pに定着する。定着後、記録用紙Pは用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出され、記録用紙Pへのフルカラー画像形成が終了する。
次に、本実施形態に係る定着装置100について説明する。
図2aに示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体101を備えている。
筐体101の内部には、矢印C方向へ回転する無端状の定着ベルト102が設けられている。定着ベルト102の両端部は、図示しないキャップ状のギヤが嵌入されており、図示しないモータ等の駆動手段によって定着ベルト102が回転可能となっている。
図2bに示すように、定着ベルト102は、内側から外側に向けて基層130、弾性層132、及び離型層134で構成されており、これらが積層され一体となっている。
基層130は、定着ベルト102の機械強度を保持でき、また、それ自体が電磁誘導により発熱しにくい非磁性体(比透磁率が概ね1の常磁性体)で構成されることが好ましい。本実施形態ではポリイミドを用いているが、非磁性SUS(非磁性ステンレス鋼)を用いてもよい。基層130の厚さは50μmとしている。
弾性層132は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが好ましく、本実施形態ではシリコンゴムを用いている。本実施形態では、弾性層132の厚さを200μmとしている。
離型層134は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2a参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層134として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂を用いることが好ましく、本実施形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。離型層134の厚さは10μmとしている。
図2aに示すように、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った円弧状に形成されており、凸部108Aが突設されている。
ボビン108には、励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2aの紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。励磁コイル110は、後述の通電回路146(図4a参照)によって通電され、磁界Hを発生するようになっている。
励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って円弧状に形成された磁性体コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
一方、定着ベルト102の内側には、定着ベルト102の内周面と面接触し、発熱して定着ベルト102を定着設定温度まで昇温する発熱体120と、発熱体120によって加熱された定着ベルト102の温度分布を調整するための温度調整部材122が設けられている。
発熱体120と温度調整部材122は湾曲形状を形成しており、図示しないモータ等の駆動手段によって、定着ベルト102の内周に沿って矢印E方向又は矢印F方向に移動可能となっている。
また、定着ベルト102の内側には、発熱体120と非接触で支持部材114が設けられている。支持部材114は、非磁性体であるアルミニウムからなり、両端が定着装置100の図示しない筐体に固定されている。
支持部材114の端面には、定着ベルト102を所定の圧力で外側に向けて押圧するための押圧パッド116が固定されている。これにより、押圧パッド116を支持する部材を別途設ける必要がなく、定着装置100の小型化が可能となっている。
押圧パッド116は、ウレタンゴム又はスポンジ等の弾性を有する部材で構成され、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルト102を外側へ押圧している。
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を押圧パッド116に向けて加圧するとともに、図示しないモータ及びギアからなる駆動機構により矢印D方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
加圧ロール104は、アルミニウム等の金属からなる芯金106の周囲に、シリコンゴム及びPFAが被覆された構成となっている。また、加圧ロール104は、図示しないソレノイド等の電磁スイッチ、又はカム機構を用いて矢印A、B方向に移動可能となっており、矢印A方向に移動したときは定着ベルト102の外周面と接触して加圧し、矢印B方向に移動したときは定着ベルト102の外周面から離間するようになっている。
ここで、加圧ロール104が定着ベルト102を押圧パッド116側に加圧すると、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102に凹部103が形成され、凹部103の両側に凸部105が形成される。
このニップ部の形状は、トナーTが載った記録用紙Pが通過するときに、定着ベルト102から記録用紙Pを剥離させる方向に湾曲した形状となっている。このため、矢印IN方向から搬送されてきた記録用紙Pは、それ自体の腰の強さでニップ部の形状に倣って矢印OUT方向に排出される。
また、押圧パッド116は、定着ベルト102を加圧ロール104側に押圧するとともに定着ベルト102の内周面に倣って湾曲し、ニップ部の面積を広げている。
定着ベルト102の表面で、励磁コイル110と対向しない領域で且つ記録用紙Pの排出側の領域には、定着ベルト102表面の温度を測定するサーミスタ124が接触して設けられている。サーミスタ124の接触位置は、記録用紙Pのサイズの大小によって測定値が変わらないように、定着ベルト102の幅方向(図2の紙面奥行き方向)の中央部となっている。
サーミスタ124は、定着ベルト102表面から与えられる熱量に応じて抵抗値が変化することで、定着ベルト102表面の温度を計測する。
図4aに示すように、サーミスタ124は、配線140を介して、前述の制御ユニット50(図1参照)の内部に設けられた制御回路142に接続されている。また、制御回路142は、配線144を介して通電回路146に接続されており、通電回路146は、配線148、150を介して前述の励磁コイル110に接続されている。
ここで、制御回路142は、サーミスタ124から送られた電気量に基づいて定着ベルト102表面の温度を測定し、この測定温度と予め記憶させてある定着設定温度(本実施形態では170℃)と比較する。そして、測定温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路146を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2a参照)を発生させる。一方、測定温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路146を停止するようになっている。
通電回路146は、制御回路142から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線148、150を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給(矢印方向)又は供給停止するようになっている。
次に、発熱体120及び温度調整部材122について説明する。なお、以後、定着ベルト102の幅方向の幅をW1〜W5で表し、周方向の長さをL1〜L5で表す。
図3a及び図3bに示すように、発熱体120は、記録用紙Pのサイズ(P1、P2、P3)に合わせて、3つの幅サイズの発熱領域135、136、137を有しており、両側が段差を有する形状となっている。
3つの発熱領域135、136、137は隣接しており、発熱体120の移動(図2aの矢印E、F方向の移動)距離を最小限に抑えて、各発熱領域が離れて設けられる場合と比較して、発熱体120が移動する時間が短縮されている。
発熱領域135は、小サイズの記録用紙Pの幅と等しい幅W3で、長さがL1の矩形状となっている。発熱領域136は、中サイズの記録用紙Pの幅と等しい幅W2+W3+W4で、長さがL2の矩形状となっている。発熱領域137は、大サイズの記録用紙Pの幅と等しい幅W1+W2+W3+W4+W5で、長さがL3の矩形状となっている。
発熱領域135、136、137は、発熱体120の表面又は内部に形成される溝部M1、M2で区切られており、1つの発熱領域が電磁誘導で発熱するときに、他の発熱領域に渦電流が流れるのを防いでいる。
また、発熱体120は、磁界H(図2a参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、SUS、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施形態では、発熱体120として鉄−ニッケル合金を用いている。
一方、温度調整部材122は、L字形状の2つの温度調整部材138、139で構成されている。温度調整部材138は、長さL4+L5で幅がW1の領域と、長さがL4で幅がW2の領域が合わさった形状となっている。温度調整部材139は、長さL4+L5で幅がW5の領域と、長さがL4で幅がW4の領域が合わさった形状となっている。
温度調整部材138、139は、発熱領域137の端部M3、M4にそれぞれ接着固定され、発熱体120と一体化されている。
温度調整部材122は、発熱体120と同じ鉄−ニッケル合金で構成されている。なお、温度調整部材122は、定着部材の周方向の発熱体120との合計の熱容量が等しくなることが必要であり、定着ベルト102の温度分布が幅方向で小さく抑えられることができる材料であれば発熱体120と同じ材料でなくてもよく、例えば、アルミニウム等の非磁性金属を用いてもよい。
本実施形態では、発熱体120と温度調整部材122で同じ材料を用いているため、L1=L2=L3=L4=L5としている。また、W1=W5、W2=W4としている。
ここで、例えば、P1サイズの記録用紙Pが定着装置100に通紙されるとき、P1サイズの記録用紙の幅と対応する発熱領域137を除く発熱していない発熱領域135、136の長さと温度調整部材122の長さの合計長さが定着ベルト102の幅方向で等しくなっている。
P1サイズの記録用紙Pを定着する場合には、発熱していない発熱領域135、136と温度調整部材122の合計長さは、L1=L2=L3=L4=L5=dとして、幅W1、W5の領域ではL4+L5=2d、幅W2、W4の領域ではL2+L4=2d、幅W3の領域ではL1+L2=2dとなり、定着ベルト102の幅方向で等しい長さ2dとなっている。
次に、P2サイズの記録用紙Pを定着する場合には、幅W2、W4の領域で合計長さがL2+L4=2dとなり、幅W3の領域で合計長さがL1+L2=2dとなって、幅方向で等しい長さ2dとなっている。
次に、P3サイズの記録用紙Pを定着する場合には、幅W3の領域で合計長さがL1+L2=2dとなって、幅方向で等しい長さ2dとなっている。
このように、発熱している発熱領域を除く発熱体120及び温度調整部材122の合計長さ(定着ベルト102の周方向の長さ)は、定着ベルト102の幅方向で等しい長さ2dとなっている。
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
図1、図2に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーTが転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。
定着装置100では、発熱体120の発熱領域137のみが励磁コイル110と対向するように、発熱体120が図示しない駆動手段によって矢印E又は矢印F方向に移動される。
続いて、前述の制御回路142からの電気信号に基づいて通電回路146が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界H(図2a参照)が生成消滅を繰り返す。
そして、図4bに示すように、磁界Hが発熱体120に侵入すると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱体120に渦電流(図示せず)が発生する。
発熱体120は、発熱体120の表皮抵抗、及び発熱体120を流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト102が加熱される。発熱体120では、発熱領域137が発熱しており、定着ベルト102の全面が加熱されている。一方、発熱領域135、136は磁界Hの影響をほとんど受けないため、発熱していない。
続いて、定着ベルト102は、図示しない駆動手段によって駆動され回転を開始する。
定着ベルト102の立ち上げ時、すなわち、定着ベルト102が回転を開始してから定着設定温度に到達するまでの時間において定着ベルト102は加熱される。
定着ベルト102表面の温度は、図4aに示すようにサーミスタ124で検知され、定着設定温度170℃に到達していない場合は、制御回路142が通電回路146を駆動制御して励磁コイル110に所定の周波数(20kHz〜100kHz)の交流電流を通電する。また、定着設定温度に到達している場合は、制御回路142が通電回路146の制御を停止する。
ここで、温度調整部材122の有無による定着ベルト102の立ち上げ時の温度分布の違いについて説明する。
まず、本実施形態との比較例として、温度調整部材122が無い場合について説明する。
図3a、bにおいて、幅W1及び幅W5の領域では、発熱領域137以外に定着ベルト102と接触する領域が無いので、定着ベルト102の温度は低下せずに定着設定温度に到達する。
幅W2及び幅W4の領域では、発熱領域137以外に発熱領域136が定着ベルト102と接触しているが、発熱領域136は発熱していないため、定着ベルト102は発熱領域136で熱を奪われ、定着設定温度よりも低い温度となる。
幅W3の領域では、発熱領域137以外に発熱領域135、136が定着ベルト102と接触しているが、発熱領域135、136は発熱していないため、定着ベルト102は発熱領域135、136で熱を奪われ、幅W2及び幅W4の領域よりもさらに低い温度となる。
このため、温度調整部材122が無い場合において、立ち上げ時の定着ベルト102の温度分布は、図5aのT1のグラフに示すような段差を有する不均一な分布となる。
定着ベルト102の温度分布が不均一の状態で、前述のサーミスタ124(図4a参照)によって幅W3の領域の定着ベルト102の温度検知が行われると、幅W3の領域は定着設定温度に到達していないので、前述の制御回路142が通電回路146を駆動制御して、発熱領域137が発熱することになる。
しかし、発熱領域137が発熱して幅W3の領域の温度を矢印UP方向に上昇させると、幅W1、W2、W4、及びW5の各領域は、過剰な熱量が与えられるために定着設定温度よりも高い温度となってしまう。
この温度分布状態は、加圧ロール104が定着ベルト102と接触しても変わらないため、トナーT(図2a参照)を記録用紙Pに定着するときに定着むらが発生することになる。
次に、本実施形態の温度調整部材122を有する場合について説明する。
図3a、bにおいて、幅W1及び幅W5の領域では、発熱領域137以外に温度調整部材122の長さL4、L5の領域が定着ベルト102と接触しており、長さL4+L5=2dに相当する領域で定着ベルト102が冷却される。
幅W2及び幅W4の領域では、発熱領域137以外に、発熱していない発熱領域136及び温度調整部材122の長さL4の領域が、定着ベルト102と接触しており、長さL2+L4=2dに相当する領域で定着ベルト102が冷却される。
幅W3の領域では、発熱領域137以外に、発熱していない発熱領域135、136が、定着ベルト102と接触しており、長さL1+L2=2dに相当する領域で定着ベルト102が冷却される。
このように、温度調整部材122を設けることで、W1〜W5の領域は、いずれも長さ2dの冷却領域を有することになる。また、発熱体120と温度調整部材122は、いずれも鉄−ニッケル合金で構成されているので、W1〜W5の領域における温度低減効果は同様となる。
このため、立ち上げ時の定着ベルト102の温度分布は、図5aのT2のグラフに示すように、定着ベルトの幅方向(W1〜W5)で均等になる。
定着ベルト102の温度分布が均等となった状態で、前述のサーミスタ124(図4a参照)によって幅W3の領域の定着ベルト102の温度検知が行われる。ここで、定着ベルト102が定着設定温度に到達していないと、発熱領域137が発熱することになる。
発熱領域137が発熱して幅W3の領域の温度を矢印UP方向に上昇させるとき、定着ベルト102のW1〜W5の領域の温度分布が均等になっているため、幅W1、W2、W4、及びW5の各領域も、W3の領域と同様にして定着設定温度まで上昇する。
ここで、定着ベルト102の温度が定着設定温度に到達すると、図2aに示すように、加圧ロール104が矢印A方向に移動して定着ベルト102と接触するとともに、矢印D方向への回転駆動を開始する。
定着ベルト102は、加圧ロール104との接触により一時的に温度低下するが、次第に定着設定温度まで温度上昇する。
続いて、定着装置100に送り込まれた記録用紙Pは、発熱体120が発熱して所定の定着設定温度(170℃)となっている定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像が記録用紙P表面に定着される。
記録用紙Pは、定着ベルト102と加圧ロール104との間のニップ部から送り出されるとき、それ自体の剛性によってニップ部に沿った方向に直進しようとするため、定着ベルト102から剥離される。
定着装置100から排出された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出される。
次に、定着装置100において、P3サイズの記録用紙Pを連続して通紙して定着を行う場合について説明する。
前述のように、P3サイズの記録用紙Pの通紙幅はW3であり、定着開始前に、発熱領域135のみが励磁コイル110と対向するように発熱体120及び温度調整部材122が配置され、定着ベルト102が加熱されている。
図5bに示すように、P3サイズの記録用紙Pが連続して通紙され定着が行われると、定着ベルト102におけるP3サイズの記録用紙Pの通過領域では、記録用紙Pに熱量が奪われて定着ベルト102の温度が定着設定温度(170℃)よりも低下する。
制御回路142(図4a参照)は、サーミスタ124で検知された温度と定着設定温度の差に基づいて、定着ベルト102の温度を定着設定温度に近づけるように通電回路146(図4a参照)を制御し、発熱体120の発熱領域135(図3b参照)が発熱する。これにより、定着ベルト102の温度が定着設定温度まで上昇する。
定着ベルト102における通紙領域を除く領域(非通紙領域)では、発熱体120が存在しないので定着ベルト102が加熱されず、通紙領域よりも温度が下がる。このため、定着ベルト102の温度分布は、T4のグラフのようになる。
一方、従来の定着装置のように、定着ベルト全体を加熱するタイプでは、通紙領域の温度が下がったときに定着ベルトを加熱すると、非通紙領域に熱量が蓄積されて通紙領域よりも高温となるため、T3のグラフのようになる。
非通紙領域の温度が上昇し続けると、定着ベルト内部の層の剥離等が発生するため、非通紙領域の温度は定着設定温度よりも低く抑える必要があるが、本実施形態の定着装置100では、T4のグラフのように、非通紙領域の温度が定着設定温度よりも低くなるため、定着ベルト102内部の各層の剥離等が抑えられる。
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。
なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
第2実施形態では、第1実施形態の発熱体120及び温度調整部材122を、発熱体154及び温度調整部材160に置き換えたものであり、プリンタ10及び定着装置100の基本構成は第1実施形態と同様となっている。
図6a及び図6bに示すように、発熱体154は、記録用紙PのP1サイズの幅(W6+W7+W8)に合わせた発熱領域156と、発熱領域156に隣接して記録用紙PのP1サイズの幅からP3サイズの幅(W7)まで連続的に変形する形状(台形状)の発熱領域155を有しており、段差は無い。
発熱領域156は、P1サイズの記録用紙Pの幅と等しい幅(W6+W7+W8)で、長さがL7の矩形状となっている。発熱領域155は、長さがL6となっている。
発熱領域155、156は、発熱体154の表面又は内部に形成される溝部M5で区切られており、1つの発熱領域が電磁誘導で発熱するときに、他の発熱領域に渦電流が流れて前述の磁界Hが変化するのを防いでいる。
また、発熱体154は、磁界H(図2a参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、SUS、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施形態では、発熱体120として鉄−ニッケル合金を用いている。
一方、温度調整部材160は、三角形状の2つの温度調整部材157、158で構成されている。温度調整部材157は、長さがL8で幅がW6となっており、温度調整部材158は、長さL8で幅がW8となっている。
温度調整部材157、158は、発熱領域156の端部M6、M7にそれぞれ接着固定され、発熱体154と一体化されている。なお、発熱体154及び温度調整部材160は、図示しない支持手段によって支持されており、支持部材は1つとなっている。
温度調整部材160は、発熱体154と同じ鉄−ニッケル合金で構成されている。なお、温度調整部材160は、定着部材の周方向の発熱体154との合計の熱容量が等しくなることが必要であり、定着ベルト102の温度分布が幅方向で小さく抑えられることができる材料であれば発熱体154と同じ材料でなくてもよく、例えば、アルミニウム等の非磁性金属を用いてもよい。
本実施形態では、発熱体154と温度調整部材160で同じ材料を用いているため、L6=L8としている。また、W6=W8であり、発熱領域155の台形の斜辺の角度と、温度調整部材157、158の三角形の斜辺の角度は等しくなっている。
このため、各サイズの記録用紙Pが定着装置100に通紙されるとき、各サイズの記録用紙Pの幅と対応する発熱体154及び温度調整部材160の領域では、発熱体154の発熱する領域を除く部分の長さと、温度調整部材160の長さの合計長さが等しくなる。
つまり、発熱する領域を除く領域で定着ベルト102と接触する発熱体154及び温度調整部材160の長さが、定着ベルト102の幅方向において等しくなっている。
ここで、前述の記録用紙PのP3サイズ(幅W7)、P1サイズ(幅W6+W7+W8)以外に、例えば、P3サイズより大きくP1サイズより小さい幅W9、W10の2種類のP4、P5サイズの記録用紙Pがあった場合、図7a、bに示すように、励磁コイル110と発熱体154の相対位置をずらすことにより、幅W9、W10のいずれのサイズの記録用紙Pにも定着対応できるようになっている。
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
図1、図2、及び図6に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーTが転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。
定着装置100では、発熱体154における発熱領域156のみが励磁コイル110と対向するように、発熱体154及び温度調整部材160が、図示しない駆動手段によって移動される。
続いて、前述の制御回路142からの電気信号に基づいて通電回路146が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。これにより発生した磁界Hの電磁誘導作用で、発熱領域156のみが発熱する。
続いて、定着ベルト102は、図示しない駆動手段によって駆動され回転を開始する。
定着ベルト102の立ち上げ時、すなわち、定着ベルト102が回転を開始してから定着設定温度に到達するまでの時間において定着ベルト102は加熱される。
定着ベルト102表面の温度は、図4aに示すようにサーミスタ124で検知され、定着設定温度170℃に到達していない場合は、制御回路142が通電回路146を駆動制御して励磁コイル110に所定の周波数(20kHz〜100kHz)の交流電流を通電する。また、定着設定温度に到達している場合は、制御回路142が通電回路146の制御を停止する。
ここで、温度調整部材160が無い場合について説明する。
図6bに示すように、幅W6及び幅W8の領域では、発熱する発熱領域156以外に、発熱領域155の一部である三角形状の領域A1、A2が定着ベルト102と接触している。しかし、発熱領域155は発熱していないため、定着ベルト102は領域A1、A2で熱を奪われ、定着設定温度よりも低い温度となる。
幅W7の領域では、発熱領域156以外に、発熱領域155の一部の矩形状の領域A3が定着ベルト102と接触しているが、発熱領域155は発熱していないため、定着ベルト102は領域A3で熱を奪われる。
ここで、領域A1、A2よりも領域A3の方が面積が大きいので、定着ベルト102は領域A3でより多くの熱を奪われ、幅W7の領域の温度が、幅W6及び幅W8の領域の温度よりも低い温度となる。
このため、温度調整部材160が無い場合において、立ち上げ時の定着ベルト102の温度分布は、図8のT3のグラフに示すような不均一な分布となる。
定着ベルト102の温度分布が不均一の状態で、前述のサーミスタ124(図4a参照)によって幅W7の領域の定着ベルト102の温度検知が行われると、幅W7の領域は定着設定温度に到達していないので、前述の制御回路142が通電回路146を駆動制御して、発熱領域156が発熱することになる。
しかし、発熱領域156が発熱して幅W7の領域の温度を矢印UP方向に上昇させると、幅W6及び幅W8の各領域は、過剰な熱量が与えられるために定着設定温度よりも高い温度となってしまう。
この温度分布状態は、加圧ロール104が定着ベルト102と接触しても変わらないため、トナーT(図2a参照)を記録用紙Pに定着するときに定着むらが発生することになる。
次に、本実施形態の温度調整部材160を有する場合について説明する。
図6bに示すように、温度調整部材160を有する場合、幅W6及び幅W8の領域では、発熱する発熱領域156以外に、発熱領域155の一部である三角形状の領域A1、A2と、温度調整部材157、158が定着ベルト102と接触している。しかし、発熱領域155は発熱していないため、定着ベルト102は、領域A1、A2、温度調整部材157、158で熱を奪われ、定着設定温度よりも低い温度となる。
一方、幅W7の領域では、発熱領域156以外に、発熱領域155の一部の矩形状の領域A3が定着ベルト102と接触している。しかし、領域A3は発熱していないため、定着ベルト102は領域A3で熱を奪われ、定着設定温度よりも低い温度となる。
ここで、前述のように、発熱領域156を除く領域で定着ベルト102と接触する発熱体154及び温度調整部材160の長さが、定着ベルト102の幅方向において等しくなっており、また、発熱体120と温度調整部材122は、いずれも鉄−ニッケル合金で構成されているので、W6〜W8の領域における温度低減効果は同様となる。
このため、立ち上げ時の定着ベルト102の温度分布は、図8のT4のグラフに示すように、定着ベルトの幅方向(W6〜W8)で均等になる。
定着ベルト102の温度分布が均等となった状態で、前述のサーミスタ124(図4a参照)によって幅W7の領域の定着ベルト102の温度検知が行われる。ここで、定着ベルト102が定着設定温度に到達していないと、発熱領域156が発熱することになる。
発熱領域156が発熱して幅W7の領域の温度を矢印UP方向に上昇させるとき、定着ベルト102のW6〜W8の領域の温度分布が均等になっているため、幅W6及び幅W8の領域も、幅W7の領域と同様にして定着設定温度まで上昇する。
このようにして、定着ベルト102全体が、均等な温度分布で定着設定温度まで温度上昇する。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
プリンタ10は、固体の現像剤を用いる乾式の電子写真方式だけでなく、液体現像剤を用いるものであってもよい。
定着ベルト102の温度の検知手段として、サーミスタ124の代わりに熱電対を用いてもよい。
サーミスタ124の取付け位置は、定着ベルト102の表面に限定されず、定着ベルト102の内周面に取付けてもよい。この場合、定着ベルト102の表面が摩耗しにくくなる。また、サーミスタ124は、加圧ロール104の表面に取付けてもよい。
発熱体154及び温度調整部材160の斜辺は、直線状のものだけでなく、円弧状のものであってもよい。