JP5199892B2 - 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材 - Google Patents
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Description
本発明において「電解酸化処理」とは、金属材に対してそれぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理することを言う。通常の陽極酸化処理が金属材を陽極とする電解酸化反応により金属材の表面に酸化皮膜を形成する方法であるのに対し、本発明では金属材を陽極酸化した後に、引き続いてこれを陰極として電解還元すると言う特別な電解方法を行う。その結果、従来にない性状、機能の皮膜が得られるため、本発明の方法を「電解酸化処理方法」と呼ぶ。このような電解酸化処理方法により金属材に形成された皮膜を「電解酸化皮膜」と呼ぶ。
特に近年、電子機器製品や自動車用内装部品は小型化、軽量化、高機能化の方向であり、製品の単位容積当たりにおける電子部品の発熱量が増大している。又、電磁波による障害問題も注目されている。
これらの点から、特に注目されるのがマグネシウム合金(Mg合金)である。Mg合金は軽量であり、各種の機械的物性の他、熱伝導性、導電性、熱放散性、電磁波シールド性等も優れている。更に資源的にも豊富であり、リサイクル性も良好である。そのため、Mg合金は電子・電気機器製品、自動車部品、航空・宇宙機器部品、輸送用機器、各種の機械・器具・工具製品、事務機器、光学機器、通信機器、スポーツ用品等、広範囲の用途で多用されつつある。
しかし、Mg合金は電気化学的に卑な金属であり、極めて活性な金属でもあるため、種々の腐食環境において防錆性、耐食性、耐変色性に劣ると言う弱点がある。このため従来から、Mg合金に対して、前記の化成処理、電着塗装、陽極酸化処理等が行われ、耐食性の付与が図られている。一方、電磁波シールド性のニーズに応えるためには、表面処理皮膜の導電性が高いことが必要となる。
即ち、Mg合金及びその他の有用性の高い金属について、耐食性と導電性を良好に付与できる簡便な表面処理方法又は皮膜形成方法が求められている。
文献1:特許第3307882号公報
上記の文献1には化成処理方法の一例が開示されている。しかし、化成処理皮膜では導電性を確保し易いが、耐食性が不十分であると言う問題がある。なお、化成処理皮膜はMg合金の表面状態(酸化膜や表面組成など)に敏感に反応するため、パーソナルコンピュータの筐体等の大きな部品では、部位によって導電性や耐食性がバラツクと言う問題が指摘されている。
耐食性を重視する観点では、陽極酸化処理や電着塗装等が行われる。しかし、これらの場合、形成される皮膜は耐食性に優れるが、電磁波シールド性に劣る。従って、陽極酸化皮膜等の表面にイオンプレーティング、無電解メッキ等により金属薄膜をコーティングして導電性を確保する方法等が行われている。
文献2:特許公開2003−272659号公報
金属材に対して導電性皮膜を形成する最も簡便な方法は、例えば上記の文献2に開示されている、導電性塗料を塗布する方法である。しかし、文献2の方法は耐食性確保のために多層皮膜を形成しており、これらの多層皮膜を形成するための表面処理工程が複雑となる煩わしさがある。
Mg合金に関して現在主流となっている導電性皮膜を分類すると、有機樹脂皮膜型と陽極酸化皮膜型に大別できる。有機樹脂皮膜型では、化成処理した後に電着塗装を施して耐食性を確保し、次いで導電性付与のためにCuめっきを施し、更にその上層にNiめっきを施すことが一般的である。このCu/Niめっきの実施にあたっては、無電解めっき法の他に、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的な表面処理方法が適用されている。現状では、スパッタリング法やイオンプレーティング法は設備コストが高い上に量産性に劣ることから、無電解めっき法が多用されている。
一方、陽極酸化処理法では、陽極酸化処理してからその表面に有機樹脂皮膜型と同様にCu/Ni系の金属めっきを施すことにより、導電性を付与している。Cu/Ni系の2層めっきの方法としては、上記したように、無電解めっき法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などがある。
文献3:特許公開2002−235182号公報
上記の文献3にはこのタイプの無電解めっき法の例が開示されている。文献3では、陽極酸化膜により耐食性を確保し、その上層に無電解めっきにより金属系皮膜を付与して導電性を確保する方法を提案している。
以上のように、耐食性と導電性とを付与するための現状品の表面処理皮膜は、いずれも多段工程において処理される3〜5層の多層膜である。このため、生産性、生産コストなどの問題がある。更に、各処理工程において高度の生産技術や表面処理のための工程管理技術が必要とされるため、商品の品質・性能が変動し易いなどの問題もある。
文献4:特許公開2006−016647号公報
本願発明者である中山は、上記した従来技術の問題点を解消できる発明を、特願2004−193742号(上記の文献4が、その公開公報である)として既に特許出願している。その特許出願に係る発明は、中山と他の発明者との共同発明に係るものである。文献4の開示内容の概要は以下の通りである。
即ち、上記の各種従来技術では、多層皮膜の各層に耐食性の機能と導電性の機能とを分担させている点に本質的な問題がある。従って、導電性と耐食性とを両立させ得る単層の表面処理皮膜を単一の処理工程により形成させる新規な手段を開発することが求められている。研究の結果、Mg合金等の一定の金属材に対して、アルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中でそれぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理する、と言う電解酸化処理方法を開発した。この電解酸化処理方法によれば、単一の簡易な処理工程により、金属材の表面に導電性と耐食性を有する表面処理皮膜(電解酸化皮膜)を形成することができる。
(1)特願2004−193742号に係る電解酸化処理方法では、圧延材であるAZ31B(Al:3重量%、Zn:1重量%、Mg:96重量%)に対しては導電性、耐食性共に良好な電解酸化皮膜を形成できる。しかし、ダイキャスト材であるAZ91D(Al:9重量%、Zn:1重量%、Mg:90重量%)のように、マグネシウムの組成比が90重量%又はそれ以下であるマグネシウム合金に対する処理では、電解酸化皮膜の導電性が発現し難い。
(2)陽陰交番電解のプロセス要素である陽電解過程と陰電解過程とについて、金属材表面で起こる電気化学的変化と電流密度との関連を詳細に分析したところ、所定のパターンに従う電流密度の制御により、上記の(1)の問題を解消でき、良好な電解酸化皮膜を形成できることが分かった。
(3)上記の(2)の効果は、電解酸化処理の前処理としての酸洗処理の条件を好適に制御することにより、一層確実かつ顕著なものとなる。
(第1発明)
本願の第1発明は、陽極酸化法により酸化皮膜を形成できる金属からなる金属材に対して、アルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中で、それぞれ一定の時間的継続を以て、前記金属材を陽極とする陽電解過程と、前記金属材を陰極とする陰電解過程とを行う陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性とを有する電解酸化皮膜を形成させる電解酸化処理方法において、
前記陽陰交番電解における1回又は2回以上の陰電解過程のそれぞれを、陰電流密度が異なる2段階以上の継続的ステップで行う電解酸化処理方法である。
上記の第1発明において、「一定の時間的継続」とは数十秒ないし数百秒のオーダーでの時間的継続を言うのであって、通常の周波数の交流電流による交番電解とは全く意味合いが異なる。本願発明者は、通常の周波数の交流電流を印加しても本発明のような効果は得られないことを確認している。
第1発明の電解酸化処理方法によれば、多様な金属材に対して導電性、耐食性共に特に良好な電解酸化皮膜を形成できる。その1例として、前記したように、マグネシウムの組成比が90重量%又はそれ以下であるマグネシウム合金等のダイキャスト材に対しても、導電性と耐食性が良好な電解酸化皮膜を形成できる。
このような効果が得られる理由については、金属材がMg合金である場合を例にとって説明すると、以下のように考えられる。
即ち、陽陰交番電解において、陽電解過程では、酸素発生を伴いながらMg合金の素地を溶解し、溶出したMgイオンと界面のOH−イオンとで、水酸化物を主体とする酸化膜を形成する。一方、陰電解過程では、マグネシウム酸化膜の還元反応即ちMg(OH)2からMgOへの転換と、酸化皮膜内に導電部位を形成するという2つの目的がある。その際、反応界面のpHや各種金属イオン等の陽イオン、陰イオンを有利に確保するためには、MgOへの転換は低い電流密度で行うことが好ましい。逆に、導電部位の形成のためには、高い電流密度が好ましい。即ち、Mg合金の種類や表面状態によっては、陰電解過程での上記2つの目的を達成するための好適な陰電流密度は必ずしも同一ではない。従って陰電解過程を陰電流密度が異なる2段階以上の継続的ステップで行い、達成すべき2つの目的をこれらのステップによって分担させると、AZ91DのようなMg合金に対しても、導電性、耐食性共に一層良好な電解酸化皮膜を形成できるのである。
第1発明の電解酸化処理方法では、その他にも、以下の様々な効果を期待できる。
Mg合金その他の一定の金属材の表面に導電性と耐食性とを有する電解酸化皮膜を形成することができるので、これらの金属材をパーソナルコンピュータや携帯電話等の筐体に適用することで、電磁波シールド性、アース性、耐食性に優れた表面処理部材として使用することができる。
又、従来法の表面処理皮膜に基づく電磁波シールド用金属材とは異なり、単一の処理工程(単一電解浴での処理)で形成された単層皮膜により導電性と耐食性を発現するため、生産効率が高く、高位に安定した品質も確保し易い。
更に、生成した電解酸化皮膜の主要成分は、Mg合金等の金属材に含まれる成分からなる無機系酸化物であり、有機樹脂や、Mgの精錬に不都合なCu、Ni等の金属を含まない。そのため、地球環境に優しく、Mg合金等の回収・再利用が容易であり、リサイクル性にも優れる。
次に、第1発明の電解酸化処理方法は、現在実施されている無電解めっき法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等に比べても比較的に安価な設備で処理でき、処理条件や作業条件も高度の技術や操作を要しない。即ち、第1発明の技術内容は従来から行われている陽極酸化処理法に近いものであるため、実用化・工業化のために有利である。
(第2発明)
本願の第2発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明に係る陽陰交番電解において陽電解過程は0.1〜20A/dm2の範囲内の陽電流密度及び25〜500秒の範囲内の電解時間で行い、陰電解過程は0.5〜20A/dm2の範囲内の陰電流密度及び10〜500秒の範囲内の電解時間で行う。
陽陰交番電解において、陽電解過程は0.1〜20A/dm2の範囲内の陽電流密度、25〜500秒の範囲内の電解時間で行うことが好ましい。陽電流密度が0.1A/dm2未満では電解酸化皮膜の生成が不十分となる恐れがある。陽電流密度が20A/dm2を超えると金属材の溶損が増大し、電解酸化皮膜が粗くなると共に電解液の汚染等による液劣化が促進される懸念がある。陽電解時間が25秒未満では電解酸化皮膜の生成が不十分となる恐れがある。陽電解時間が500秒を超えると、引き続く陰電解過程において導電性の確保に必要な皮膜の還元に要する時間が増加するので好ましくない上、電解酸化皮膜の導電性の低下が懸念される。
陰電解過程は0.5〜20A/dm2の範囲内の陰電流密度、10〜500秒の範囲内の電解時間で行うことが好ましい。陰電流密度が0.5A/dm2未満では、電解酸化皮膜の導電性が不十分となる恐れがある。陰電流密度が20A/dm2を超えると、電解酸化皮膜の性能が飽和すると共に耐食性が不十分となる恐れがある。陰電解時間が10秒未満では、陽電解過程で生成した皮膜の還元が不十分となり易く、導電性が劣ることが懸念される。陰電解時間が500秒を超えると、効果が飽和する上に、耐食性が不十分となる恐れがある。
(第3発明)
本願の第3発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明又は第2発明に係る陰電解過程における2段階以上のステップにおいて、前段階のステップを相対的に高電流密度で行い、後段階のステップを相対的に低電流密度で行う。
前記したように、陰電解過程では、マグネシウム酸化膜の還元反応即ちMg(OH)2からMgOへの転換という目的と、酸化皮膜内に導電部位を形成するという目的とがある。第3発明によれば、陽電解の直後において、前段階のステップでは高電流密度領域でマグネシウム酸化膜の還元反応を行うことによって導電部位の形成を促進できる。又、後段階のステップでは低電流密度領域で電解することにより酸化皮膜中のMgOへの転換効率を高める効果が大きくなる。従って、良好な電解酸化皮膜の形成をより確実に行うことができる。
即ち、陽電解が終了した時点では、酸化膜内および界面にMgや合金成分が最も濃化した状態にあり、かつ界面pHも陽電解により低下している。そのため、各種の金属イオンが界面に比較的安定して存在できる条件にある。この状態で、導電物質(例えばAZ合金系ではAl、Zn、Mnおよび金属化合物等)を酸化膜内に取り込むことが望ましい。従って、高い陰電流密度で電解を行うことによって、より確実に酸化膜内に導電部位を形成できる。一方、水酸化マグネシウムMg(OH)2を酸化マグネシウムMgOに還元するには、界面のpHを高める条件を避ける必要がある。このため、水素発生を抑制した条件で還元効率の高い陰電解を行うことが必要であり、低い電流密度で行うことが望ましい。
(第4発明)
本願の第4発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る陰電解過程における2段階以上のステップにおいて、前段階のステップを相対的に高電流密度でかつ短い継続時間で行い、後段階のステップを相対的に低電流密度でかつ長い継続時間で行う。
酸化膜内での導電性部位の形成は比較的短時間で完了するので、その形成のための高電流密度で行うステップの継続時間を長くすることは、界面のpHを最適範囲に維持する上で不利になる。これに対して、Mg(OH)2からMgOへの転換反応は遅い反応であるため比較的長い時間を要する。そして界面のpHをなるべく変動させない条件で還元するには、低い電流密度で比較的長い時間の電解を行うことが好ましい。この過程で界面のpHを下げ過ぎると、引き続く陽電解過程での金属イオンの溶解と安定性に支障を生じて、Mgの酸化膜や金属イオンの界面濃化が安定せず、電解酸化皮膜の導電性や耐食性が劣化するという懸念がある。
従って、第4発明のように、陰電解過程における2段階以上のステップにおいて、前段階のステップを相対的に高電流密度でかつ短い継続時間で行い、後段階のステップを相対的に低電流密度でかつ長い継続時間で行うことが好ましい。
(第5発明)
本願の第5発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る陰電解過程をそれぞれ陰電流密度が異なる2段階の継続的ステップで行う場合において、第1段階のステップを1〜20A/dm2の範囲内の陰電流密度及び0.5〜10秒の範囲内の継続時間で行い、引き続き第2段階のステップを第1段階のステップよりも低電流密度でかつ長い継続時間で行う。
陰電解過程をそれぞれ陰電流密度が異なる2段階の継続的ステップで行う場合、その第1段階のステップにおける陰電解の最適な電流密度と継続時間は金属の種類や合金の組成によってそれぞれ異なるが、例えばMg合金の電解酸化処理を行う場合等には、一般的に、第5発明の条件とすることで、確実に酸化皮膜内に導電部位を形成できる。
なお、引き続く第2段階のステップは、例えば0.5〜20A/dm2の範囲内で第1段階のステップよりも低電流密度で行い、0.5〜499.5秒の範囲内で第1段階のステップよりも長い継続時間で行うことが望ましい。第1段階のステップと第2段階のステップとの合計継続時間は、第2発明に規定するように、500秒以内であることが望ましい。
第5発明により、第1段階のステップで形成された導電部位を確保したままで、第2段階のステップにおいて電解皮膜中に生成しているMg(OH)2の一部をMgOへ転換する反応を確実に行うことができる。
(第6発明)
本願の第6発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る金属材が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及び亜鉛(Zn)から選ばれるいずれかの金属又はその合金からなる。
電解酸化処理方法の適用対象となる金属材は、陽極酸化法により酸化皮膜を形成できる金属からなる限りにおいて限定されないが、第6発明に列挙する金属材を好ましく例示できる。中でも金属材の有用性や用途上の適合性においてMg又はMg合金が好ましく、とりわけMg合金が好ましい。Mg合金としては、圧延材であるAZ31B(Al:3重量%、Zn:1重量%、Mg:96重量%)のような、マグネシウムの組成比が90重量%を超えるMg合金も対象となるが、とりわけ、ダイキャスト材であるAZ91D(Al:9重量%、Zn:1重量%、Mg:90重量%)のように、マグネシウムの組成比が90重量%又はそれ以下であるマグネシウム合金が好ましい。
(第7発明)
本願の第7発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第6発明のいずれかに係る電解液が、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びリチウム(Li)から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を合計濃度0.5〜6モル/Lの範囲内で含有する。
電解酸化処理方法における電解液に第7発明の成分を含有させると、より望ましい電解酸化皮膜を形成することができる。アルカリ金属の水酸化物の合計濃度が0.5モル/L未満では、電解酸化皮膜の生成が不十分となる場合があり得る。アルカリ金属の水酸化物の合計濃度が高いほど安定した電解酸化皮膜を形成できるが、合計濃度が6モル/Lを超えると効果が飽和気味になり、処理液コストが増加する分だけ経済的に不利となる。
(第8発明)
本願の第8発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第7発明のいずれかに係る電解液が、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有する。
電解酸化処理方法における電解液組成としては、第7発明のようなアルカリ金属の水酸化物に加え、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有させると、より安定した電解酸化皮膜を生成することができる。
アルカリ金属リン酸塩の合計濃度が0.01モル/L未満では効果が不十分となり易く、2モル/Lを超えても効果が飽和するのでコスト的に不利となると共に、場合によっては耐食性が劣化する恐れがある。
(第9発明)
本願の第9発明に係る電解酸化処理方法においては、前記第1発明〜第8発明に係る陽陰交番電解において2回以上の陽電解過程を行い、かつ後の陽電解過程に至るほど高い陽電流密度で行う。
陽陰交番電解においては「陽電解→陰電解」の最小限プロセスを含む。陽陰交番電解(最小限プロセス)の繰り返し回数は限定されないが、繰り返し回数が30回を超えると電解酸化皮膜の耐食性や導電性の上積みがなく、生産性において徒らに不利となる他、場合によって性能の劣化を来たす恐れがある。この最小限プロセス又はその繰り返しに対して更に陰電解を前置しても良く、最小限プロセスの後に更に陽電解を付加しても良い。
2回以上の陽電解過程を行う場合においては、後の陽電解過程に至るほど高い陽電流密度で陽電解を行うことが好ましい。これにより、生成している電解酸化膜と素地界面との反応を促進できるため、析出成長しつつある電解酸化膜内に、導電性に関与する物質をより有効に確保できると言う効果を期待できる。
(第10発明)
本願の第10発明においては、前記第1発明〜第9発明のいずれかに係る電解酸化処理方法の前処理として、陽陰交番電解の処理に供する金属材に対して、酸洗処理及び水洗と、アルカリ溶液による表面調整処理及び水洗とを行う。
導電性と耐食性を良好に確保した電解酸化皮膜を形成するためには、上記の電解酸化処理条件だけでは不十分な場合がある。その理由はMg合金等の金属材の性状や素性により電解反応が異なるためである。従って、より有利な電解酸化反応を行うには、金属材に適切な前処理を行い、電解酸化処理に有利な表面状態を確保することが望ましい。
前処理も含めた全体の電解酸化処理プロセスは、一般に知られているのと同様に、金属材の素材に対する「脱脂→水洗→酸洗→水洗→スマット除去→水洗→電解脱脂→水洗→乾燥」の一連の工程で処理されるが、この中で、前処理である酸洗とスマット除去が、電解酸化処理の前処理として重要な工程である。
導電性と耐食性に優れた電解酸化皮膜を形成するための下地処理用の酸洗処理液としては後述する第11発明の酸洗溶液が好ましい。
又、酸洗後の後工程で実施するスマット除去はアルカリ溶液により処理する。このアルカリ処理の目的は、金属材の表面に生成しているスマットや酸化膜を除去すること以外に、金属材の表面をアルカリ溶液によりエッチングすること、また、金属材の表面に電解酸化反応に有利な不動態化皮膜を形成することである。このように、アルカリ処理により、電解酸化処理に有利な表面性状に改質できる点や、従来から行われている単なるスマット除去とは大きく異なる点から、ここでは、このアルカリ処理を表面調整処理と呼ぶこととする。
即ち、表面調整処理においては、MgやMg合金等の金属材の結晶粒度や結晶方位、及びMg合金等の合金成分に起因する表層組織の違いによる表層の局所的な溶解性の差異を利用して、合金成分の局所的な濃度変化をもたらすことが目的である。特に、例えばAZ合金系では、導電性に関与するAl、Zn、Mn等の金属成分はアルカリ溶液に対する溶解性が素地基板であるMgと大きく異なることから、これらの合金成分は素地表面で局所的な濃度変化を生ずる。このように、表層において合金成分の局所的濃度のゆらぎがあること、及び素地粒界の電解反応に対する感受性が局所的に変化することに起因して、その後に行う電解酸化処理皮膜の導電性が大きく改善される効果がある。
特に、導電性を確保し難い表面性状を有するMg合金素材おいて、電解酸化処理皮膜の導電性を高位に安定して確保するためには、酸洗処理→アルカリ処理の組合せによる表層組織を電解酸化処理に有利な表面状態に事前に処理しておくことは極めて重要である。
このように、前処理条件と電解酸化処理条件とを組み合わせることで、表面性状の異なる各種のMg合金に対して、導電性と耐食性に優れた電解酸化膜を安定して形成することができる。
(第11発明)
本願の第11発明においては、前記第10発明に係る酸洗処理を、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、弗化水素酸及び弗化水素アンモニウムから選ばれる1種類以上の成分からなる酸洗溶液を用いて行う。
導電性と耐食性に優れた電解酸化皮膜を形成するための下地処理用の酸洗処理液としては、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、沸化水素酸、弗化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも1種類以上の成分からなる酸洗溶液で酸洗することが好ましい。
(第12発明)
本願の第12発明においては、前記第10発明又は第11発明に係る酸洗処理において、酸洗による金属材の溶解量を3〜100g/dm2の範囲内とする。
前記した前処理を行うにあたり、酸洗による金属材の溶解量(素地溶解量)を3〜100g/dm2の範囲内とすることが望ましい。素地溶解量がこれより少な過ぎても、多すぎても、電解酸化皮膜の導電性と耐食性は劣化する可能性がある。
即ち、素地溶解量が少な過ぎると、Mg合金の酸化膜や離型剤などの汚れを除去できない上に、良好な導電性を確保できない恐れがある。一方、素地溶解量が多すぎると、部品の寸法精度を確保する上で不利となる上に、アルカリ溶液によるスマット除去が困難となり、導電性が劣化する他、外観品質も劣化する恐れがあり、導電性を確保し難い表面状態となることが懸念される。
(第13発明)
本願の第13発明は、第1発明〜第12発明のいずれかに係る電解酸化処理方法により形成された電解酸化皮膜を有する電解酸化処理金属材である。
第13発明の電解酸化処理金属材は、本願発明の電解酸化処理方法により初めて得られるものであり、単一の処理工程で形成された単層皮膜により導電性と耐食性を付与されているため、生産性が良く、従って安価に提供することができ、かつ高位に安定した品質が確保される。
このような電解酸化処理金属材の原材料たる金属材としては、プレス法、チクソモールド法、ダイキャスト法、切削加工法等の種々の方法で得られた各種用途の金属成形体が例示される。特に電磁波シールド性を考慮した場合には、例えばノートパソコン(ノートブックコンピュータ)の筐体や携帯電話の筐体等の成形体が好ましく例示される。これらの成形体は薄肉化やサイズの小型化と同時に良好なアース性、電磁波シールド性、高い耐食性が要求されることから、これらの用途の成形部品に本発明を適用することが、実用的でメリットも大きい。
(第14発明)
本願の第14発明においては、前記第13発明に係る電解酸化処理金属材の電解酸化皮膜の膜厚が1〜12μmの範囲内である。
電解酸化処理金属材の電解酸化皮膜の膜厚は、第14発明に規定するように、1〜12μmの範囲内であることが好ましい。この膜厚が1μm未満であると、導電性や金属の質感等が向上する反面、耐食性が不十分となる恐れがある。この膜厚が12μmを超えると、高い耐食性が得られるが、光沢等の概観が劣化する恐れがあり、処理費用も徒に増大する。
(第15発明)
本願の第15発明においては、前記第13発明又は第14発明に係る電解酸化処理金属材がマグネシウム合金である。
上記の電解酸化処理金属材としては、Mg合金からなるものが、とりわけ有用性が高い。例えば、Mgを基材として添加する合金成分としては、Al、Zn、Mn、Ca、Si、Zrなどの他に、Ag、Cu、更にはSc,Y,Ceなどの希土類元素をあげることができる。
(第16発明)
本願の第16発明においては、前記第15発明に係るマグネシウム合金が、マグネシウムの組成比が、97重量%又はそれ以下の合金である。なお、マグネシウムの組成比が92重量%又はそれ以下の合金を、より好ましく例示できる。
本発明の特有の効果は、例えばマグネシウムの組成比が97重量%又はそれ以下であるMg合金において有効に発揮される。さらに好ましくは92重量%又はそれ以下の合金において、特に顕著に発揮される。
なお、第1発明において前記したように、特願2004−193742号に係る電解酸化処理方法の発明との対比では、マグネシウムの組成比が90重量%又はそれ以下であるマグネシウム合金等のダイキャスト材に対しても、導電性と耐食性が良好な電解酸化皮膜を形成できる点を指摘することができる。
(第17発明)
本願の第17発明においては、前記第15発明又は第16発明に係るマグネシウム合金において、Mgを基材として添加される合金成分は、アルミニウム15重量%以下、亜鉛10重量%以下、マンガン5重量%以下である。
その他、必要に応じて添加しうる合金成分は、ジルコニウム5重量%以下、イットリウム10重量%以下、希土類元素10重量%以下、カルシウム10重量%以下、銅5重量%以下、銀5重量%以下である。これらの合金成分の1種類または2種類以上を上記範囲で添加することができる。
本発明の電解酸化処理の対象としてとりわけ好適なMg合金として、例えば鋳造材であるAZ91D系(アルミニウム9重量%、亜鉛1重量%、マンガン0.1重量%及び残部が主としてマグネシウムからなる組成の合金)を例示することができる。また、展伸材であるAZ31B系(アルミニウム3重量%、亜鉛1重量%、マンガン0.15重量%および残部が主としてマグネシウムからなる組成比の合金)をあげることができる。
(第18発明)
本願の第18発明においては、前記第15発明〜第17発明のいずれかに係るマグネシウム合金が、鋳造材である場合においてはダイキャスト材、チクソモールド材又は切削加工材であり、前記マグネシウム合金が展伸材である場合においては圧延法、プレス法又は切削加工法により成形された加工材である。ここに「切削加工法により成形された加工材」とは、展伸材をプレス成形してから更にその部品の一部分を切削加工した加工材や、プレス加工の難しい部品を切削加工により成形した加工材等を含む。
本発明の電解酸化処理の好適な対象であるMg合金として、例えば鋳造材の場合には、ダイキャスト材であるMg合金を例示することができる。その他に、例えば、チクソモールド材や切削加工などにより成形された加工材としてのMg合金をあげることができる。また、展伸材である場合には、圧延、プレス、切削加工等により成形された部品を例示することができる。
(金属材)
本発明の電解酸化処理方法の適用対象とする金属材は、陽極酸化法により酸化膜を形成できる金属からなる金属材である。より好ましくは第6発明に規定したMg、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びZnから選ばれるいずれかの金属又はその合金である。とりわけ好ましくは金属Mg又はMg合金である。
Mg合金の種類としては、第15発明〜第18発明に記載したものを例示することができる。例えば、Mg−Al−Zn系合金(AZ31A、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80A等)、Mg−Al−Zr系合金(ZK51A、ZK61A、ZK60等)、Mg−Al−Mn系合金(AM100A等)、Mg−Mn系合金、Mg−Al−Si系合金、Mg−希土類元素系合金(EZ33A、ZE41A、QE22A等)等が挙げられ、特にMg−Al−Zn系合金やMg−Al−Zr系合金が好ましい。
この他に、金属Mg又はMg合金に必要に応じて添加される各種の合金元素及び工業的生産において不可癖的に混入する各種の不純物元素が含まれる場合でも、本発明を有効に適用できる。
(電解酸化処理の前処理)
本発明の電解酸化処理を金属材に適用する場合の全体的な工程は、基本的に、脱脂→水洗→酸洗→水洗→表面調整処理→水洗→電解酸化処理→水洗→乾燥の各工程からなる。
これらの工程において、水洗処理は、前工程で処理材料の表面に付着した薬剤を洗浄除去し、これらの次工程への持込みを抑制することが主な目的である。従って、水洗温度、水洗時間および水洗回数は特に制約はなく、目的を達成できる条件を選定して行うことができる。但し、水洗中に処理材料の表面が酸化膜を形成したり、腐食や錆を発生したりしないように、水洗水の温度、pH、水洗時間、水洗回数は適切に行うことが望ましい。一般的には、酸系処理の後には低い温度で水洗し、アルカリ系処理の後には高めの温度で水洗することがより効果的である。使用する水質としては、水道水、工業用水、イオン交換水、純水、蒸留水、電解処理水など必要に応じて適用することができる。また、水洗方法としては、浸漬、流動、攪拌、スプレー、噴射、高圧噴射など、水洗の目的を達成するために、工業的に採用されている種々の洗浄方式を適用できる。
電解酸化処理方法において、皮膜の導電性と良好な耐食性を確保するには、一連の前処理と電解酸化処理が重要である。中でも、導電性を確保し難い材料系に対して処理する場合には、脱脂処理は一般に市販されている薬剤を適用できるが、その後工程である酸洗処理、表面調整処理および電解酸化処理の各工程は、本発明の処理条件で行うことが、電解酸化皮膜の性能に特に重要である。
酸洗処理は、硫酸、スルファミン酸、硝酸、弗化水素酸および弗化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも1種類以上の成分からなる酸洗溶液で行うことが望ましい。これらの成分は、1種類でも良いが、導電性を確保し難い材料の場合には2種類以上の成分からなる混酸で処理することが好ましい。混酸としては、例えば「硫酸+硝酸」、「硫酸+弗化水素酸」、「硫酸+弗化水素酸+弗化水素アンモニウム」等を挙げることができる。
なお、酸洗溶液中に、上述した薬剤以外にアンモニウム塩などを添加することも有効である。アンモニウム塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を必要に応じて適宜添加することも、導電性の良好な電解酸化膜を形成する上で有用である。
これら酸洗溶液の薬剤濃度、処理温度、処理時間は、酸洗による金属材の溶解量が3〜100g/m2の範囲になるように選択すれば良い。但し、一般的には、酸濃度としては、薬剤濃度の合計で、3g/L〜200g/Lの範囲、処理温度は20〜95°Cの範囲、処理時間は1秒〜90秒の範囲が適当である。又、酸洗処理においては、浸漬、流動、攪拌、スプレー、高圧噴射などの方法を適用することができる。
Mg合金等の金属材の表面状態や組織状態によっては、酸洗速度が大きく異なったり、スマットを発生し易かったりする。従って、上記の酸洗溶解量の範囲を確保するために、酸濃度、処理温度、処理時間を上記範囲内で適切に設定する必要がある場合がある。特に、同一処理工程で各種のMg合金を処理する場合には、酸濃度や処理温度を統一して行える条件に設定しておいて、処理時間のみで溶解量を調節できるようにする等の工夫をすることが得策である。
上記の酸洗処理後に、付着する酸洗溶液を水洗し、次いでアルカリ溶液中で金属材の表面調整処理を行う。表面調整処理の目的は、アルカリ溶液により酸洗処理で生成したスマットを除去するだけでなく、金属材の表面を電解酸化処理に適した表面性状とすることにある。
アルカリ処理によるこのような効果の発現機構は不明であるが、Mg合金を例にとって説明すると、そのアルカリ処理により、表層においてはMgだけでなく合金成分(例えばAZ合金系では、Al、Zn、Mn等)の一部も溶解する。そしてアルカリ溶液に対する溶解性は成分毎に差異があることから、表面においてこれらの合金成分の濃度偏析が生ずる作用がある。更には、Mg合金の表面において局所的な表面組織や結晶粒度、結晶方位の違いに応じて、アルカリ溶液中で生成する不動態化皮膜を不均一化する作用があると考えられる。このように、アルカリ処理による作用が、電解酸化処理において、導電性を発現し易い表面状態に変質させる効果があることから、アルカリ処理を表面調整処理と名付けた。
表面調整処理としては、NaOH、KOH等を少なくとも1種類以上含有する溶液で処理する必要がある。これらのアルカリ成分の含有量は合計濃度で10g/L〜700g/Lの範囲とすることが好ましい。処理温度や処理時間は特に限定する必要がないが、一般的には、処理温度は40〜95°Cの範囲、処理時間は30秒〜10分の範囲で処理することで目的を達成できる。但し、導電性を確保し難い金属材の場合には、より高濃度、高温度、長時間で処理することで改善される。例えば、AZ91D系のチクソモールド材の場合には、NaOH濃度が400g/L、処理温度が85°C、処理時間が3分の表面調整処理が効果的である。
一般的に言えばアルカリ溶液の液濃度、液温度、処理時間の最適範囲は材料毎に異なる。従って、同一工程で各種の金属材を大量に処理する場合には、液濃度と液温度を統一化できる条件とし、材料毎に処理時間を最適範囲に変更して処理することが、効率的生産の点で有利である。
アルカリ溶液による表面調整処理に引き続いて、付着するアルカリ溶液を水洗した後に、電解酸化処理を行う。この場合の水洗処理ではアルカリ溶液を効率的に洗浄除去し、かつ表面調整されたMg合金等の金属材の表面を極力変質させないことが要求される。そのため、アルカリ処理と同一温度付近の温水で速やかに洗浄してから、常温付近の温度で仕上げ水洗を行い、電解処理工程に移行することが好ましい。
(電解酸化処理に用いる電解液)
次に、電解酸化処理工程に用いるおける電解液組成としては、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びリチウム(Li)から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を、合計濃度0.5〜6モル/Lの範囲で含有させることが望ましい。より好ましくは、合計濃度が2〜5モル/Lの濃度範囲である。更に、導電性や耐食性を確保し難い金属材に適用する場合には、アルカリ金属の水酸化物を2種類以上組み合わせて添加することが、より好ましい。又、一般的には、NaOHとKOHを当モル混合とすることが、より好ましい。
更に、電解酸化処理の電解液は、K、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を、合計濃度で0.01〜2モル/Lの範囲で含有することが、より安定した電解酸化皮膜を生成させるために好ましい。とりわけ0.03〜1モル/Lの範囲内の合計濃度が好ましい。アルカリ金属のリン酸塩としては、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩の他に、ポリリン酸、ヘテロリン酸、ウルトラリン酸等のアルカリ金属との化合物が挙げられる。これらの化合物を単独で、又は2種以上を混合して添加することもできる。
(電解酸化処理)
電解酸化処理工程では、それぞれ一定の時間的継続を以て、金属材(例えばMg合金材料)に通電端子により陽陰交番の電解を施す。電解酸化処理条件に関しては、第2発明に関して説明したように、金属材を陽極とする陽電解において、陽電流密度0.1〜20A/dm2の範囲、陽電解時間25〜500秒の範囲、金属材を陰極とする陰電解において、陰電流密度0.5〜20A/dm2の範囲、陰電解時間10〜500秒の範囲内で継続されることが望ましい。更に、前記の第9発明に関して説明したように陽陰交番電解の反復回数は特には限定しないが1回〜30回の範囲で充分である。
多くのMg合金材料は陽陰交番電解の反復回数とともに性能が飽和する傾向にある。又、Al濃度が高いMg合金材料では、陽陰交番電解の反復回数を多くすると耐食性は改善されるが、導電性が劣化する恐れがある。このためMg合金材料に関しては、陽陰交番電解の反復回数は、好ましくは2〜10回程度である。ここで言う「陽陰交番電解の反復回数」とは、陽電解→陰電解の順位が含まれる回数を言う。この順位の直前又は直後に陰電解又は陽電解を単独に付加することも本発明の実施形態として有効であり得るが、陽陰交番電解の反復回数としてはカウントしない。
なお、陽電解または陰電解は、反復回数に関係なく電流密度を一定にして行うこともでき、又、反復回数毎に電流密度を変化させても良い。反復回数の増加につれて、電流密度の絶対値を増加させながら適用することもできる。電解酸化皮膜の性能を確保するためには、一般的には、反復回数に関係なく所定の一定電流密度を負荷するか、もしくは、反復回数の増加につれて電流密度をやや高めに設定しながら処理することが好ましい。陽電解の電流密度に関しては、前記した第2発明がその例である。
又、陽電解および陰電解の各過程をそれぞれを電流密度が異なる2段階以上の継続的ステップに区分し、2種類以上の電流密度で電解することも望ましい。特に、陽陰交番電解におけるそれぞれの陰電解過程を少なくとも2種類の陰電流密度で行うことは、本発明の必須条件である。
なお、陰電解過程を電流密度が異なる2段階以上の継続的ステップに区分するに当たり、前段を高電流密度で、引き続く後段を低電流密度で継続的に処理することが、より好ましい。陰電解の前段を高い電流密度と短い時間で処理し、後段を前段よりも低い電流密度と長い時間で処理することが、更に好ましい。この方法により、処理性が劣る材料においても、良好な電解酸化皮膜を形成することができる。
陰電解過程を2段階のステップに区分する場合、陰電解の前段の陰電流密度を0.5〜20A/dm2の範囲内で、かつその陰電解時間を0.5〜10秒の範囲内とし、引き続く陰電解の後段の陰電流密度を前段よりも低い電流密度かつ前段より長い陰電解時間で行うことが望ましい。陰電解過程を電流密度が異なる3段階以上のステップに区分することも可能である。その場合、改善効果が飽和する可能性もある。
以後、陰電解での電流密度を負符号で表す場合がある。その場合、陰電流密度の高低は絶対値で比較され、例えば「−8A/dm2」は「−3A/dm2」よりも高い電流密度を示す。
ここで、チクソモールド法で製造されたAZ91D材に対する好ましい陽陰電解過程の一例を示す。これは陽電解3分、陰電解60秒の陽陰交番電解を3回反復して処理する場合の例である。陽電解過程では、第1回目は0.3A/dm2×3分、第2回目は0.4A/dm2×3分、第3回目は0.5A/dm2×3分と、回数ごとに陽電流密度を高くする。一方の陰電解は、その各1回ごとの過程を電流密度2区分で行い、前段を高電流密度の−10A/dm2×3秒で、後段を低電流密度の−2.6A/dm2×57秒で行う。この場合には、電解酸化処理の合計の処理時間は12分となる。なお、初回は、定常電流密度まで1分間で昇電する。
陽電解過程も複数の電流密度に区分して適用することができるが、一般的には電解酸化皮膜の改善効果が小さいので得策ではない。しかしながら、材料の製造履歴や表面性状によっては良好な電解酸化膜を得難い材料がある。このような場合には、陽電解の終末段階において、より高い電流密度で短時間処理してから、引き続いて陰電解に移行することで、電解酸化皮膜の性能を安定して良好に確保できることがある。
酸化処理の陽電解に関しては、むしろ反復回数の各回における電流密度を変更することが、より効果的であることが多い。この場合には、例えば、初回を低電流密度で行い、第2回目以降は初回より高い一定の電流密度に設定して行うこともできる。前述の反復3回処理の例示で説明したように、反復回数の増加につれてより高い陽電流密度に増加させながら処理することが、より好ましい。
このように、陽電解過程または陰電解過程を2段階以上のステップに区分して複数の電流密度で処理する場合には、区分した各過程の合計処理時間を、陽電解では25〜500秒以内とし、陰電解では10〜500秒以内とするのが好ましい。
電解酸化処理において、付与する電解波形に関しては、特に限定されない。例えば、矩形波、台形波、正弦波、三角波、又はそれらを組み合わせた変則波形を適用できる。いずれの波形の組合せにおいても、前述の電流密度と電解時間により、極性を反転し交番電解を反復して与えることができる。1波形において、最高電流値と平均電流値を同一にすることができる点では矩形波が最も好ましい。矩形波は、試料の電流密度を時間変化なく一定にできる点、処理時間や通電量を制御し易い点で有利である。
ところで、初回の電流密度を設定する場合には、電解液中での不動態化現象により過剰の電圧や過大な電流が流れることがあるため、電源装置の負荷を軽減する目的から、例えば上記の例示で示したように、3〜60秒程度の時間をかけて、ゆっくりと所定の電流密度に上昇させることが有利である。
初回以降での陽・陰電解においては、陽陰の各過程内で区分された電流密度の変更や、陽→陰または陰→陽の極性変換における電流密度の変化速度は特段にこだわる必要はない。従って、電源装置の能力範囲において設定電流値まで急速上昇、急速下降をさせることができるし、電解酸化処理の所要時間にこだわらないなら、これらを所定の電流値まであえて緩除に昇降させることもできる。
初回の陽電解を除けば、電流値の上昇や下降は急速である方が望ましい傾向にあるが、1秒以内又はミリ秒オーダーでも適用可能である。電流値の上昇や下降を緩除に行う場合には、過剰に緩除であると電解酸化皮膜の性能を劣化させる恐れがあるため、一般的には10秒以内に、より好ましくは5秒以内に所定の電流値まで移行させることが好ましい。
次に、電解酸化処理方法における電解液の温度は20〜80°Cの温度範囲で処理することが好ましい。電解液が20°Cより低いと、電解酸化皮膜の生成やその耐食性に必ずしも有利ではない。より好ましくは、35°C以上である。電解液の温度が80°Cを超えると、皮膜性能の改善効果が飽和し、熱損失となるので不利である。40〜70°Cの温度範囲が、経済的、品質管理面、液管理面で特に有利となるため、とりわけ好ましい。
以上において、本発明の電解酸化処理方法を電流制御方法の観点から述べたが、周知の電圧制御法(電位制御法)による電解酸化処理も有効に適用できる。しかしながら、電流密度を直接的に制御できる面からは、工業的には電流制御法がやり易いといえる。
本発明は、陽極酸化法により酸化膜を形成できる金属材、例えばMg合金等に対して陽陰交番電解を反復処理することで、導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成するものである。電解酸化皮膜がどのようにしてその機能を発現するかのメカニズムに関しては現時点で未だ不明である。ここでは、皮膜の生成する特徴を踏まえて、Mg合金を例にとり、第1発明に関しても述べた機構を更に詳しく推定する。
陽電解過程では、Mg合金の素地が溶解しながら、Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)を主体とする酸化膜を形成する。その際、酸化皮膜中には、例えばAZ合金系ではAl、Zn、Mnなどの合金成分のイオンが皮膜内に濃化する。この状況で陰電解が施されると、電気化学的な還元反応により、Mg(OH)2の一部がMgOに還元され、また皮膜内に濃化している合金成分イオンが金属状態に還元されて皮膜内にトラップされることになる。この結果、陽電解と陰電解が反復されることで、電解酸化皮膜の一部がMgOに転移し、かつ皮膜内に合金成分をトラップした状態で導電部位を形成するものと考えられる。また、Mg合金の表層は、結晶方位や結晶粒径の異なる種々の結晶粒で構成されており、かつ金属間化合物も存在することから、これらの存在により導電部位の形成が促進されるものと推定される。
なお、陽陰交番電解において、電流密度や電解時間に適性範囲があるのは、反応界面のpHを最適に制御することに関係すると考えられる。即ち、界面pHに注目すると、陽電解過程では酸素発生反応を伴いながらpHが低下する。一方、陰電解においては、水素発生反応あるいは酸素還元反応を伴いながら界面pHが上昇することになる。
陽電解過程において溶出した金属イオンを安定に界面に確保するには、pHがある程度低いことが必要であり、このことによって、その後の陰電解過程で、金属イオンを導電性に有利な状態で還元できることになる。但し、pHが下がり過ぎると、陽電解過程においては酸化膜の生成効率が低下するし、陰電解過程では水素イオンの還元反応が優先することになり、それらの結果、Mg(OH)2や金属イオンの還元が起こり難くなるため、皮膜の性能が低下する。
一方、界面pHが高すぎると、陽電解過程では、水酸化物の形成が促進されるため、溶出した金属イオンなどが水酸化物として固定され易くなる。従って、引き続く陰電解過程において導電性物質の生成が不十分となるため、導電性が低下して不利となる。
このように、電解酸化膜の生成と導電物質の形成において、陽電解および陰電解において、それぞれ界面pHと合金成分濃度を望ましい範囲に確保した状態で電解反応を進行させる必要があることから、本発明に示した電解酸化処理条件が必要となる。
前処理の効果、特に酸洗処理や表面調整処理に関しては、反応界面において溶出するMgイオンや合金成分の不均一化な酸化−還元反応を生起させることや、反応界面において局所的な濃度や界面pHのゆらぎを発生させることが重要であると考えられる。これらのことにより、導電部位の生成基点である核形成が行われ、導電部位の成長が促進されると推定される。
このことは、後述するように、電解酸化皮膜の導電部位が、素地まで達している状況で皮膜中に離散した状態で生成していることからも理解される。即ち、導電部位が分散構造的に生成していることが本発明の特徴であり、反応界面における局所的な濃度やpHの分布状態、すなわち電解反応場の濃度的なゆらぎ状態が導電部位の生成に重要であることが認められる。
この点を確認するため、AZ91Dの電解酸化処理において、表面抵抗の低い皮膜と高い皮膜とを比較して走査型電子顕微鏡により皮膜表面観察を行った。その結果、表面抵抗値の低い皮膜はAl濃度の高い部位と低い部位とが数μmの領域で明瞭に分散して生成しているのに対して、表面抵抗値の高い皮膜はAl濃度の分散が不明瞭か、または分散領域が1μm以下と細かいと言う特徴を確認している。このように皮膜内におけるAl濃度の分散と偏析は、反応界面における成分濃度のゆらぎの重要性を示唆していると考える。
上述したように、本発明により形成された導電部位は、電解酸化皮膜中に分散して存在する。このため、2端子法において0.1Ω程度と良好な表面抵抗値を有する場合でも、先端径の小さい針状の接触探針(0.37R)で測定すると、測定場所によっては表面抵抗値が測定できないか、又は1kΩ以上の大きな抵抗値を示すことがある。このことは、導電部位が電解酸化皮膜の表面において連続的な皮膜として生成しているのではなく、離散的に生成していることを想定させる。因みに、硝酸銀系の水溶液めっき液において銀めっきを施したところ、Ag粒子が数μm〜数10μmの間隔で離散的に分散して電析することを確認した。このことからも、導電部位は皮膜表面において連続皮膜として生成しているのではなく、数μm〜数10μm程度の間隔でランダムに離散的に分散分布して生成していることが裏付けられた。このように微細な導電部位が電解酸化皮膜内に分散して存在するが、導電部位は表層から素地表面まで導通性を有する状態で生成していることが特徴である。このことが、導電部位が微細でかつ分散構造でありながら、表面抵抗の小さい良好な導電性を示すものと推定される。
このような皮膜構造の導電性皮膜においても、表面抵抗値0.1Ωを示す導電性化成処理皮膜と同等の電磁波シールド性を示すことを確認したので、以下にその結果を示す。
ネットワークアナライザー(HP8510B)を使用し、マイクロストリップライン法により1〜10GHzの周波数領域で評価した。S21パラメータ(透過強度比/dB)で電磁波シールド性を比較評価した結果、電解酸化皮膜と導電性化成処理皮膜は同等の電磁波シールド性を示し、周波数4〜6GHz範囲の平均値で比較するといずれもS21=−15.0dBと良好な値を示した。なお、比較のために、電磁波シールド用材料として代表的な金属材料の表面を測定した結果、電解酸化皮膜の無いMg合金では、−16.0dB、電解酸化皮膜の無い純銅板(0.8mm厚)では−16.5dBを示した。なお、本電解酸化皮膜の表層に絶縁性のSiNを0.2μmの厚さでスパッタリング法によりコーティングして測定したところ、−7.0dBまで電磁波シールド性が低下した。
以上に述べた結果を踏まえて、本発明に係る電解酸化皮膜のような導電部位が離散的に分散した構造を有する導電性皮膜は、金属材料自体の表面よりは劣るが、導電性化成処理皮膜と同等の電磁波シールド性を有することを確認した。
このような構造の導電性皮膜の表面抵抗値を測定する方法としては、一般的に使用されている0.37Rの半球端子では、点接触のため安定した表面抵抗値を測定できない恐れがある。そのため、面接触状態で測定できる2φ平面型の円筒型接触端子を使用して測定することが望ましい。また、より好ましくは、銅製薄膜フィルムなど利用して2mm角の接触端子を作成し、端子の裏面をシリコンゴム(3mm厚、硬度50度)などで補強した端子を使用するなど、測定方法を工夫することにより、2端子法又は4端子法でも安定して表面抵抗値を測定することができる。このような接触端子を使用して測定すると、加工した部品のように平坦部が少ない部品でも接触状態を良好に保持できることから、表面抵抗値を再現性よく測定できる利点がある。
ところで、電解液は必要に応じて、上記した組成分以外の成分を含有することができる。例えば、Zn、Mn、Al、Si、Sn、Ca、V等の金属イオンはもちろん、これらの金属成分の酸素酸等の酸化物や水酸化物を適当量に添加することもできる。但し、水酸化物イオンを確保する意味から、強酸性物質ではなく、アルカリ金属との化合物やその塩類、あるいは弱酸の塩、中性物質、アルカリ性物質として添加することが好ましい。その他に、Mg合金の陽極酸化処理液に適用されている金属イオン成分や有機物質等も必要に応じて添加できる。有機物質としては、例えばアルコール基、カルボキシル基、アミノ基を有する種々の有機物を添加することができる。
また、電解液は各種のMg合金の材料成分自体から混入する合金成分を含有できる。更に、電解液は、対照電極(カーボン電極、白金電極、ステンレス電極、鉄系電極等の各種電極)及び電解槽やその配管系統から混入する不可避な各種の不純物を、イオン状態、コロイド状態、不溶性浮遊物質などの状態で含有することができる。
特に、Mg合金を処理する際に、電解液中に合金成分が溶解し混入することは避けられないが、むしろこれらの成分が混入した方が、電解皮膜の性能が向上または安定する効果もあることから好ましいといえる。
電解酸化皮膜の膜厚は、第15発明に関して前記した理由から0.1〜12μmの範囲が好ましく、とりわけ1〜8μmの範囲内であることが好ましい。電解酸化皮膜の膜厚は、電解液組成、温度、電解酸化処理条件等の条件の他に、Mg合金の表面性状や前処理条件によっても左右される。材料種、前処理、電解液組成、電解酸化処理温度、電解液の攪拌状況等が一定あれば、陽電解と陰電解の電流密度と電解時間を選択することで、電解酸化皮膜の膜厚を制御できる。これらの中で、陽電解の電流密度と陽電解時間の効果が最も大きく影響する。
通常の陽極酸化処理では、陽極酸化皮膜の耐食性は膜厚が大きい方が良好になる傾向にあるが、本発明の電解酸化皮膜では必ずしもその傾向にはない。電解酸化皮膜の耐食性は、その結晶構造や、電解酸化皮膜中に存在する成分の化学的構造、分布状態、クラックやポアの存在状態等に大きく左右されるため、複雑である。しかしながら、陽極酸化処皮膜と電解酸化皮膜との耐食性を同一膜厚で比較すると電解酸化皮膜の方が良好である。その理由は、電解酸化皮膜が平滑・緻密であること、その結晶構造がMgO主体であること、電解酸化皮膜の結晶粒子が微細であること、電解酸化皮膜に存在するクラックやポアも極めて微細であること、等によるものと推定される。本発明で示した一連の処理条件、即ち、脱脂、酸洗、表面調整処理、電解酸化処理、各工程間の水洗処理等の処理条件をMg合金の表面状態に応じて本発明の適正範囲内に制御することにより、電解酸化皮膜に必要とされる膜厚、導電性、耐食性を良好に確保することができる。
本発明で得られた電解酸化皮膜に対しては、必要に応じて封孔処理や着色処理等も適用できる。封孔処理では、導電性を損なうことなく耐食性を向上させることができる。着色処理では、導電性や耐食性を劣化させることなく各種の色調を電解酸化皮膜に付与することができる。
封孔処理や着色処理の方法は、Mg合金やAl合金等の金属材料に対する陽極酸化処理に行われている従来の方法を有効に適用できる利点がある。
(参考例)
最初に、参考例として、前記した特願2004−193742号に開示された発明に係る実施例、比較例の記載と、その評価結果の記載の要点を述べる。
この参考例においては、試料たる金属材としてマグネシウム合金AZ31B(Al:3重量%、Zn:1重量%、Mg:96重量%)の圧延板(サイズ:幅50mm×長さ120mm×厚さ0.7mm)を使用した。
そして、前処理として適宜な脱脂処理、水洗、酸洗、水洗等を行った後、前処理後の試料を電解酸化処理に供した。
電解酸化処理の電解条件として、電解条件Aを、「2A/dm2の電流密度での陽電解を180秒間行い、次に2A/dm2の電流密度での陰電解を60秒間行う陽陰交番電解サイクルを、3回繰り返して行う」と言う内容に設定した。又、電解条件Bを、「2A/dm2の電流密度での陽電解を600秒間行う」と言う内容に設定した。電解酸化処理用の電解液としては、それぞれ適宜な濃度に調整したNaOH又はKOHを用い、あるいは両者の混合液を用い、かつ一定の例においては第一、第二又は第三リン酸ナトリウムをそれぞれ特定の濃度で添加した。更に、電解時の温度は、25°C〜85°Cの範囲で適宜に設定した。
以上のいずれかの電解条件、電解液の組成及び電解温度の組み合わせに係る電解酸化処理に供した試料の酸化皮膜について、所定の方法で導電性と耐食性を評価した。その結果、導電性に関しては電解条件Aで電解酸化処理を行った試料はいずれも表面抵抗値が1mΩ以下であり、電解条件Bで電解酸化処理を行った試料は表面抵抗値が1mΩを超えていた。耐食性に関しては湿潤箱(50°C)にて3日間経時して発錆状況を評価する方法によったが、基本的に、NaOH/KOH混合液にリン酸ナトリウムを添加した電解液を使用した電解酸化処理例が高い耐食性を示した。
(実施例A)
本発明の実施例Aとして、特願2004−193742号に「実施例1」として記載された例と対比して、電解酸化処理の電解条件のみが異なる実施例を行った。その詳細は以下の通りである。
試料たる金属材としてマグネシウム合金AZ31Bの圧延板(サイズ:幅50mm×長さ120mm×厚さ0.7mm)を使用した。この金属材に対して、前処理として溶剤脱脂を行った。溶剤脱脂の処理内容としては、ノルマルヘキサンに浸漬し、超音波洗浄を30分間実施した後、アルカリ脱脂を行い、水洗した後に酸洗し、更に水洗した後に活性化処理を行い、水洗と純水洗浄を行った。
以上の前処理後の試料を縦向きに保持し下端部80mmを電解液に浸漬した状態で電解酸化処理に供した。電解温度は60°Cであり、電解液はNaOHを2.2モル/L、KOHを2.2モル/L及び第三リン酸Naを0.1モル/L含む電解液である。
電解酸化処理の電解条件は、前記の電解条件Aとは異なり、次の電解条件Cである。
電解条件C:陽電解3分、陰電解60秒の陽陰交番電解を、4回反復する。陽電解過程では第1回目は0.3A/dm2×3分、第2回目は2A/dm2×3分、第3回目は2A/dm2×3分、第4回目は2A/dm2×3分とする。陰電解は、その各1回ごとの過程を電流密度2区分で行い、前段を高電流密度の−4A/dm2×3秒で、後段を低電流密度の−2A/dm2×57秒で行う。
電解酸化処理は、電流走査電解法(北斗電工製HA3210A型、関数発生器HB105型使用)によった。具体的には、矩形波により所定の電流密度と電解時間で電解酸化処理を行なった後、水洗してからドライヤーにて表面に付着する水分を除去した。更に、加熱炉(95°C)にて10分間加熱乾燥してから、室内にて放冷した。なお、初回の通電開始時は、40秒間で所定の電流密度まで上昇させた。
評価項目として、導電性と耐食性を評価した。導電性に関しては、三菱化学製ロレスタ(MCP−T360、四端子四探針法、触針径2φ)にて、表面抵抗値を測定した。なお、ここでは、加工部品のために平坦性が劣る場合にも比較的に再現性良く測定できるように工夫した接触端子を使用して、電子機器用途で表面抵抗値の測定試験方法として利用されている2端子法により測定した。接触端子としては、銅箔粘着テープ(70μm厚)を使用し、シリコンゴム(2mm厚、硬度50度)で銅箔の裏面を補強したものを利用した。端子の接触部の面積は2mm×2mmの正方形とした状態で、試料表面に接触させて2端子法での表面抵抗値を計測した。なお、2端子間の距離(中央部で計測)は7mmである。
表面抵抗値の評価としては、0.2Ω以下の抵抗値を5点、0.2Ωを超えるが0.4Ω以下の抵抗値を4点、0.4Ωを超えるが0.7Ω以下の抵抗値を3点、0.7Ωを超えるが1.2Ω以下の抵抗値を2点、1.2Ωより大きい表面抵抗値を全て1点として評価する。
又、耐食性に関しては、湿潤箱(50°C)にて3日間経時して発錆状況を1〜5の5段階で相対評価した。数字が大きいほど耐食性が良好である。
その結果、実施例Aの評価結果は、導電性、耐食性ともに評価点が「5」であり、特願2004−193742号に「実施例1」として記載された例と同等の評価結果であった。
(実施例B−1)
本発明の実施例B−1として、マグネシウム合金AZ91D(Al:9重量%、Zn:1重量%、Mg:90重量%)のダイカスト板(サイズ:幅50mm×長さ120mm×厚さ3mm)を試料とした実施例を行った。
電解処理条件としては、前記した電解条件Bの例と、電解条件Aの例と、下記の電解条件Dの例とをそれぞれ行った。
電解条件Dは、次の通りである。即ち、陽電解3分、陰電解60秒の陽陰交番電解を3回反復する。陽電解過程では、第1回目は0.3A/dm2×3分、第2回目は0.4A/dm2×3分、第3回目は0.5A/dm2×3分とする。陰電解は、その各1回ごとの過程を電流密度2区分で行い、前段を高電流密度の−10A/dm2×3秒で、後段を低電流密度の−2.6A/dm2×57秒で行う。
いずれの例も、試料と電解条件とを除いては、実施例Aと同じ条件で同様に行い、かつ同様に評価した。
その結果、いずれの例も耐食性の評価点が「5」であった。しかし、導電性に関しては、電解条件Bの例の評価点が「1」、電解条件Aの例の評価点が「3」、電解条件Dの例の評価点が「5」となり、互いに有意な差異が認められた。
(実施例B−2)
本発明の実施例B−2として、上記の実施例B−1の場合と同じマグネシウム合金AZ91Dのダイカスト板を試料とするが、実施例B−1の場合と比較して前処理の内容、電解液の内容、電解酸化処理の電解条件の内容が異なる実施例を行った。これらの例は、以上の点を除いては、実施例Aと同じ条件で同様に行い、かつ同様に評価した。
これらの内容及び評価結果を下記の表1に示す。表1において、「陽電流密度(パターン)」の欄で例えば「3−5−6」とある記載は、反復する各陽電解の電流密度を示す。各数字は、初回−2回目−3回目の陽電流密度の値(mA/cm2)を意味する。又、表1において、「陰電流密度(前段−後段)」の欄で例えば「110−23」とある記載は、陰電解の前段階を−110mA/cm2で行い、陰電解の後段階を−23mA/cm2で行ったことを示す。なお、言うまでもなく、1mA/cm2は0.1A/dm2に等しい。
Claims (16)
- 陽極酸化法により酸化膜を形成できるマグネシウム(Mg)合金からなる金属材に対して、アルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中で、それぞれ一定の時間的継続を以て、前記金属材を陽極とする陽電解過程と、前記金属材を陰極とする陰電解過程とを行う陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成させる電解酸化処理方法において、
前記陽陰交番電解における1回又は2回以上の陰電解過程のそれぞれを陰電流密度が異なる2段階以上の継続的ステップで行う電解酸化処理方法。 - 前記陽陰交番電解において、陽電解過程は0.1〜20A/dm2の範囲内の陽電流密度及び25〜500秒の範囲内の電解時間で行い、陰電解過程は0.5〜20A/dm2の範囲内の陰電流密度及び10〜500秒の範囲内の電解時間で行う請求の範囲1項に記載の電解酸化処理方法。
- 前記陰電解過程における2段階以上の継続的ステップにおいて、その各1回ごとのステップ(過程)を電流密度2区分として、前段を後段より高電流密度で、後段を前段より低電流密度で行う請求の範囲1項又は2項に記載の電解酸化処理方法。
- 前記陰電解過程における2段階以上の継続的ステップにおいて、その各1回ごとのステップ(過程)を電流密度2区分として、前段を後段より高電流密度かつ短い継続時間で、後段を前段より低電流密度かつ長い継続時間で行う請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記陰電解過程がそれぞれ陰電流密度が異なる2段階の継続的ステップからなり、第1段階のステップを1〜20A/dm2の範囲内の陰電流密度及び0.5〜10秒の範囲内の継続時間で行い、引き続き第2段階のステップを、第1段階のステップよりも低電流密度でかつ第1段階のステップよりも長い継続時間で行う請求の範囲1項〜4項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記電解液がカリウム(K)、ナトリウム(Na)及びリチウム(Li)から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を合計濃度0.5〜6モル/Lの範囲内で含有する請求の範囲1項〜5項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記電解液が、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有する請求の範囲1項〜6項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記陽陰交番電解において2回以上の陽電解過程を行い、かつ後の陽電解過程に至るほど高い陽電流密度で行う請求の範囲1項〜7項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記電解酸化処理方法の前処理として、陽陰交番電解の処理に供する金属材に対して、酸洗処理及び水洗と、アルカリ溶液による表面調整処理及び水洗とを行う請求の範囲1項〜8項のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
- 前記酸洗処理を、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、弗化水素酸及び弗化水素アンモニウムから選ばれる1種類以上の成分からなる酸洗溶液を用いて行う請求の範囲9項に記載の電解酸化処理方法。
- 前記酸洗処理において酸洗による金属材の溶解量を3〜100g/m2の範囲内とする請求の範囲9項又は10項に記載の電解酸化処理方法。
- 請求の範囲1項〜11項のいずれかに記載の電解酸化処理方法により形成された電解酸化皮膜を有する電解酸化処理金属材。
- 前記電解酸化処理金属材の電解酸化皮膜の膜厚が1〜12μmの範囲内である請求の範囲12項に記載の電解酸化処理金属材。
- 前記マグネシウム合金が、マグネシウムの組成比が97重量%又はそれ以下の合金である請求の範囲12項又は13項に記載の電解酸化処理金属材。
- 前記マグネシウム合金において、Mgを基材として添加される合金成分が、アルミニウム15重量%以下、亜鉛10重量%以下、マンガン5重量%以下である請求の範囲12項〜14項のいずれかに記載の電解酸化処理金属材。
- 前記マグネシウム合金が、ダイキャスト法、チクソモールド法または切削加工法により成形された鋳造材、もしくは、圧延法、プレス法または切削加工法により成形された展伸材である請求の範囲12項〜15項のいずれかに記載の電解酸化処理金属材。
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