JP4264036B2 - 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材 - Google Patents

電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材 Download PDF

Info

Publication number
JP4264036B2
JP4264036B2 JP2004193742A JP2004193742A JP4264036B2 JP 4264036 B2 JP4264036 B2 JP 4264036B2 JP 2004193742 A JP2004193742 A JP 2004193742A JP 2004193742 A JP2004193742 A JP 2004193742A JP 4264036 B2 JP4264036 B2 JP 4264036B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal material
electrolytic
electrolysis
electrolytic oxidation
oxidation treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004193742A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006016647A (ja
Inventor
元宏 中山
悦男 浅見
美輝 神谷
Original Assignee
スギムラ化学工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by スギムラ化学工業株式会社 filed Critical スギムラ化学工業株式会社
Priority to JP2004193742A priority Critical patent/JP4264036B2/ja
Publication of JP2006016647A publication Critical patent/JP2006016647A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4264036B2 publication Critical patent/JP4264036B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は、電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材に関し、更に詳しくは、マグネシウム合金(Mg合金)その他の金属材に対する特別な電解方法により、その金属材に導電性と耐食性を併せ備えた皮膜を形成させる電解酸化処理方法及びこの方法により電解酸化皮膜を形成させた電解酸化処理金属材に関する。
本発明において「電解酸化処理」とは、金属材に対してそれぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理することを言う。通常の陽極酸化処理が金属材を陽極とする電解酸化反応により金属材の表面に酸化皮膜を形成する方法であるのに対し、本発明では金属材を陽極酸化した後に、引き続いてこれを陰極として電解還元すると言う特別な電解方法を行い、しかも従来に見られない性状、機能の皮膜が得られるため、このように呼ぶこととした。又、この電解酸化処理により金属材に形成された皮膜を「電解酸化皮膜」と呼ぶ。
従来より、各種の金属材に対する表面処理方法あるいは皮膜形成方法として、例えば、化成処理、電着塗装、陽極酸化処理等が行われている。金属材に対する上記各種の処理の目的は多様であるが、例えば、電気化学的に卑な金属に対する耐食性の付与や防錆性の付与等であったり、電子機器製品や自動車用内装部品等への利用に関連して導電性や電磁波シールド性等の付与であったりする。
これらの処理の対象となる金属材のうち、有用性においてとりわけ注目されるのがMg合金である。Mg合金は軽量であり、各種の機械的物性の他、熱伝導性、導電性、熱放散性、電磁波シールド性等も優れ、更に資源的にも豊富であり、リサイクル性も良好である点等から、最近は種々の分野への利用が注目されている。そして、電子・電気機器製品、自動車部品、航空・宇宙機器部品、輸送用機器、各種の機械・器具・工具製品、事務機器、光学機器、通信機器、スポーツ用品等、広範囲の用途で多用されつつある。
特に近年、電子機器製品や自動車用内装部品は小型化、軽量化、高機能化の方向であり、製品の単位容積当たりにおける電子部品の発熱量が増大している。又、電磁波による障害問題もクローズアップしている。これらの理由から、上記の各種特徴点を備えたMg合金がクローズアップされている。
しかしながらMg合金には、電気化学的に卑な金属で極めて活性な金属でもあるため、種々の腐食環境において防錆性、耐食性、耐変色性に劣ると言う弱点がある。このため従来より、Mg合金に対して、前記の化成処理、電着塗装、陽極酸化処理等が行われ、耐食性の付与が図られている。一方、電磁波シールド性のニーズに応えるためには、表面処理皮膜の表面抵抗が小さく、導電性が高いことが必要となる。
以上の事情から、Mg合金について、あるいはその他の有用性の高い金属材について、要するに耐食性と導電性とを良好に付与することができる簡便な表面処理方法ないしは皮膜形成方法が求められている。
特許第3307882号公報 上記の特許文献1には化成処理方法の一例が開示されている。しかし、化成処理皮膜では、導電性を確保し易いものの、耐食性が不十分であると言う問題がある。一方、電着塗装や陽極酸化皮膜は耐食性があるものの、導電性が劣ると言う問題がある。
特開2003−272659号公報 金属材に対して導電性皮膜を形成する最も簡便な方法は、例えば上記の特許文献2に開示されているような導電性を有する塗料を塗布する方法である。しかし、特許文献2の方法は耐食性確保のために多層皮膜としており、これらの多層皮膜を形成するための表面処理工程が複雑となる煩わしさがある。
Mg合金に関して現在主流となっている導電性皮膜を分類すると、有機樹脂皮膜型と陽極酸化皮膜型に大別できる。有機樹脂皮膜型では、化成処理した後に電着塗装を施して耐食性を確保し、次いで導電性付与のためにCuめっきを施し、更にその上層にNiめっきを施すことが一般的である。このCu/Niめっきの実施にあたっては、無電解めっき法の他に、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的な表面処理方法が適用されている。現状では、スパッタリング法やイオンプレーティング法は設備コストが高い上に量産性に劣ることから、無電解めっき法が多用されている。
一方、陽極酸化処理法では、陽極酸化処理してからその表面に有機樹脂皮膜型と同様にCu/Ni系の金属めっきを施すことにより、導電性を付与している。Cu/Ni系の2層めっきの方法としては、上記したように、無電解めっき法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などがある。
特開2002−235182号公報 上記の特許文献3には、このタイプの無電解めっき法の例が開示されている。この場合には、陽極酸化膜により耐食性を確保し、その上層に無電解めっきにより金属系皮膜を付与して導電性を確保する方法を提案している。
以上のように、耐食性と導電性とを付与するための現状品の表面処理皮膜は、いずれも多段工程において処理される3〜5層の多層膜である。このため、生産性、生産コストなどの問題がある。更に、各処理工程において高度の生産技術や表面処理のための工程管理技術が必要とされるため、商品の品質・性能が変動し易いなどの問題もある。
これに加えて、有機樹脂や、マグネシウムの精錬に不都合な金属であるCu、Ni等の金属を皮膜中に多量に含有することとなる従来法は、地球環境への優しさ、リサイクル性等の点からも適切なものではない。
(着眼点)
本願発明者は、上記の各種従来技術においては、多層皮膜の各層に耐食性と導電性とを機能分担させている点に本質的な問題がある、と考えた。そこで本発明は、導電性と耐食性とを両立させ得る単層の表面処理皮膜を、単一の処理工程により形成させる手段を開発することを、解決すべき技術的課題とする。
本願発明者は、上記の技術的課題を解決するために鋭意研究を重ねる過程で、以下の2点の新規かつ重要な知見を得た。本願発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
(1)陽極酸化法により酸化膜を形成できるMg合金その他の金属材に対して、アルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中でそれぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理すると言う電解酸化処理を施すと、金属材の表面に導電性と耐食性を有する表面処理皮膜(電解酸化皮膜)を形成することができる。
(2)電解液中のイオンから酸化物を陽極析出できる金属〔マンガン(Mn)、鉄(Fe)等〕のイオンを含む電解液中で、任意の金属材を一方の電極として、それぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理すると言う電解酸化処理を施すと、その金属材の表面に導電性と耐食性を有する表面処理皮膜(電解酸化皮膜)を形成することができる。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、陽極酸化法により酸化膜を形成できる金属からなる金属材に対して、アルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中で、それぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成させる、電解酸化処理方法である。
なお、ここに「一定の時間的継続」とは、後述の第5発明において更に具体的に限定するように、数十秒ないし数百秒のオーダーでの継続を言うのであって、通常の周波数の交流電流による交番電解とは全く意味合いが異なる。本願発明者は、通常の周波数の交流電流を印加しても、本願発明のような効果は得られないことを確認している。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る金属材が、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ya)及び亜鉛(Zn)から選ばれるいずれかの金属又はその合金からなる、電解酸化処理方法である。
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る水溶液が、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びリチウム(Li)から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を合計濃度0.5〜6モル/Lの範囲内で含有する、電解酸化処理方法である。
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る水溶液が、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有する、電解酸化処理方法である。
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る陽陰交番電解において、いずれも0.7〜7A/dmの範囲内の電流密度で、金属材を陽極とする陽電解は25〜500秒の範囲内で継続され、金属材を陰極とする陰電解は10〜500秒の範囲内で継続される、電解酸化処理方法である。
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る陽陰交番電解が少なくとも2回の陽電解を含む、電解酸化処理方法である。
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、第1発明〜第6発明のいずれかに係る電解酸化処理方法により形成された電解酸化皮膜を有する金属材である、電解酸化処理金属材である。
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第7発明に係る金属材がMg合金からなる、電解酸化処理金属材である。
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第7発明又は第8発明に係る電解酸化処理金属材において、電解酸化皮膜の膜厚が1〜12μmの範囲内である、電解酸化処理金属材である。
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、電解液中のイオンから酸化物を陽極析出できる金属のイオンを含む電解液中で、任意の金属材を一方の電極として、それぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成させる、電解酸化処理方法である。
(第11発明の構成)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、前記第10発明に係る金属材がMg合金からなる、電解酸化処理方法である。
(第12発明の構成)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、前記第10発明又は第11発明に係る金属のイオンが、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ルビジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び鉛(Pb)から選ばれる1種又は2種以上の金属のイオンである、電解酸化処理方法である。
(第13発明の構成)
上記課題を解決するための本願第13発明の構成は、前記第10発明〜第12発明のいずれかに係る陽陰交番電解において、いずれも0.7〜7A/dmの範囲内の電流密度で、金属材を陽極とする陽電解は25〜500秒の範囲内で継続され、金属材を陰極とする陰電解は10〜500秒の範囲内で継続される、電解酸化処理方法である。
(第14発明の構成)
上記課題を解決するための本願第14発明の構成は、前記第10発明〜第13発明のいずれかに係る陽陰交番電解が少なくとも2回の陽電解を含む、電解酸化処理方法である。
(第15発明の構成)
上記課題を解決するための本願第15発明の構成は、第10発明〜第14発明のいずれかに係る電解酸化皮膜の形成方法により形成された電解酸化皮膜を有する金属材である、電解酸化処理金属材である。
(第16発明の構成)
上記課題を解決するための本願第16発明の構成は、前記第15発明に係る金属材がMg合金からなる、電解酸化処理金属材である。
(第1発明の効果)
第1発明の電解酸化処理方法によれば、Mg合金その他の一定の金属材の表面に、導電性と耐食性とを有する電解酸化皮膜を形成することができる。従って、これらの金属材を、例えば電磁波シールド用の電子機器筐体等として、各種の用途に適用することができる。
又、従来法の表面処理皮膜に基づく電磁波シールド用金属材とは異なり、単一の処理工程(単一電解浴での処理)で形成された単層皮膜により導電性と耐食性を発現するため、生産効率が高く、高位に安定した品質も確保し易い。
更に、生成した電解酸化皮膜の主要成分はMg合金等の金属材に含まれる成分からなる無機系酸化物であり、有機樹脂や、Mgの精錬に不都合なCu、Ni等の金属を含まないため、地球環境に優しく、Mg合金等の回収・再利用が容易であり、リサイクル性にも優れる。
次に、第1発明の電解酸化処理方法は、現在実施されている無電解めっき法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等に比べても、比較的に安価な設備で処理でき、処理条件や作業条件も高度の技術や操作を要しない。即ち、技術内容的には従来から行われている陽極酸化処理法に近いものであり、その点で実用化・工業化において有利な特徴を有している。
(第2発明の効果)
電解酸化処理方法の適用対象となる金属材は、陽極酸化法により酸化膜を形成できる金属からなる限りにおいて限定されないが、第2発明に列挙する金属材を好ましく例示できる。中でも、金属材の有用性や用途上の適合性においてMg又はMg合金が好ましく、とりわけMg合金が好ましい。
(第3発明の効果)
電解酸化処理方法における電解液に第3発明の成分を含有させると、より望ましい電解酸化膜を形成することができる。アルカリ金属の水酸化物の合計濃度が0.5モル/L未満では、電解酸化皮膜の生成が不十分となる場合があり得る。アルカリ金属の水酸化物の合計濃度が高いほど安定した電解酸化皮膜を形成できるが、合計濃度が6モル/Lを超えると効果が飽和気味になり、処理液コストが増加する分だけ経済的に不利となる。
(第4発明の効果)
電解酸化処理方法における電解液組成としては、第3発明のようなアルカリ金属の水酸化物に加え、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有させると、より安定した電解酸化皮膜を生成することができる。
アルカリ金属リン酸塩の合計濃度が0.01モル/L未満では、効果が不十分となり易く、2モル/Lを超えても、効果が飽和するのでコスト的に不利となると共に、場合によっては耐食性が劣化する恐れがある。
(第5発明の効果)
陽陰交番電解において、陽電解、陰電解ともに、電流密度としては、0.7〜7A/dmの範囲内が特に望ましい。陽電解の電流密度が0.7A/dm未満であると電解酸化皮膜の成長が不十分となる恐れがあり、7A/dmを超えるとMg等の金属材の溶損の増大、電解液の汚染が懸念される他、電解酸化皮膜が荒くなることがあり得る。陰電解の電流密度が0.7A/dm未満であると電解酸化皮膜の導電性の低下が懸念され、7A/dmを超えると電解酸化皮膜の耐食性が不十分となることがあり得る。
陽電解は25〜500秒の範囲内で継続することが特に好ましい。電解時間が25秒未満では電解酸化皮膜の成長速度が不十分となり、必要な膜厚を得るための効率が不十分となり易い。電解時間が500秒を超えると、続く陰電解において皮膜の導電性を確保するための電解時間が増加し、生産性が低下する。
陰電解は10〜500秒の範囲内で継続で継続することが特に好ましい。電解時間が10秒未満では、電解酸化皮膜の導電性が不十分となり易く、電解時間が500秒を超えると、効果が飽和すると共に、電解酸化皮膜の耐食性が不十分となることがあり得る。
(第6発明の効果)
陽陰交番電解においては、少なくとも2回の陽電解を含むこと、即ち、少なくとも、「陽電解→陰電解→陽電解」の最小限プロセスを行うことが、極めて有益である。その限りにおいて、上記の最小限プロセスに対して更に陰電解を前置しても良く、最小限プロセスの後に更に陰電解を付加しても良い。しかし、例えば「陽電解→陰電解」、「陰電解→陽電解」あるいは「陰電解→陽電解→陰電解」等のプロセスは、一般的な語義上は交番電解であるが、2回の陽電解を含まないため、十分に良好な電解酸化皮膜を形成できない恐れがある。
又、陽陰交番電解の繰り返し回数は限定されないが、繰り返し回数が30回を超えると電解酸化皮膜の耐食性や導電性の上積みがなく、生産性において徒らに不利となる。
(第7発明の効果)
第7発明の電解酸化処理金属材は、本願発明の電解酸化処理方法により初めて得られるものであり、単一の処理工程で形成された単層皮膜により導電性と耐食性を付与されているため、高生産効率のもとで安価に提供され、かつ高位に安定した品質が確保される。
このような電解酸化処理金属材の原材料たる金属材としては、プレス法、チクソモールド法、ダイキャスト法、切削加工法等の種々の方法で得られた各種用途の金属成形体が例示される。電磁波シールド性を考慮した場合には、特に、例えばノートパソコン筐体や携帯電話筐体等の成形体が好ましく例示される。これらの成形体は薄肉化やサイズの小型化が必要となることから、プレス法による成形部品に本発明を適用することが、実用的でメリットも大きい。
(第8発明の効果)
上記の電解酸化処理金属材としては、Mg合金からなるものが、とりわけ有用性が高い。
(第9発明の効果)
電解酸化皮膜の膜厚は、1〜12μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が1μm未満であると、電解酸化処理金属材の金属質感や導電性が向上する反面、耐食性が不十分となる恐れがある。膜厚が12μmを超えると、耐食性は十分であるが光沢等の外観が劣化する傾向にあり、処理費用も徒らに増加する。
(第10発明の効果)
第10発明の電解酸化処理方法によれば、単一の処理工程により、任意の金属材の表面に導電性と耐食性とを有する単層の電解酸化皮膜を形成できる。従って、前記第1発明の電解酸化処理方法による場合と同様に、電解酸化処理金属材を電磁波シールド用の電子機器筐体として各種用途に適用でき、しかも生産効率が高く、高位に安定した品質も確保し易い。更に、無電解めっき法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等に比べて、比較的安価な設備で処理でき、処理条件や作業条件も高度の技術や操作を要しない。
なお、この電解酸化処理方法においては、電解液中にイオンとして含まれる金属種と電解酸化に供される金属材の金属種とが一致する必要はなく、例えばMg合金材の表面に、他種金属の電解酸化皮膜、又は、他種金属を成分として含有する電解酸化皮膜を形成させることもできる。
(第11発明の効果)
前記第10発明の電解酸化処理方法において、対象となる金属材は任意であるが、有用性においてMg合金が特に好ましい。
(第12発明の効果)
電解液中にイオンとして含まれる金属は、電解液中のイオンから酸化物を陽極析出できる金属のイオンである限りにおいてその種類を限定されないが、第12発明に列挙する金属の1種又は2種以上のイオンを好ましく例示することができる。
(第13発明及び第14発明の効果)
第10発明の電解酸化処理方法において、陽陰交番電解の電流密度、陽電解と陰電解との継続時間、及び陽陰交番電解のプロセスパターンについての好ましい内容及び条件は、前記第5発明及び第6発明の場合と同様であり、それらが好ましい理由も同様である。
(第15発明及び第16発明の効果)
第15発明の電解酸化処理金属材は、前記第7発明の電解酸化処理金属材の場合と同様の安価性と高品質を期待することができる。そして電解酸化処理金属材の原材料たる金属材としては、各種成形方法で得られた各種用途の金属成形体を例示することができ、特にノートパソコン筐体や携帯電話筐体等の成形体を好ましく例示することができる。このような金属材としては、Mg合金からなるものが、とりわけ有用性が高い。
〔第1発明〜第9発明の実施形態〕
次に、本願の第1発明〜第9発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。この項において「本発明」と言う時は第1発明〜第9発明を全体的に指している。
本発明の電解酸化処理方法の適用対象とする金属材は、陽極酸化法により酸化膜を形成できる金属からなる金属材であり、より具体的には第2発明に列挙する金属材であるが、とりわけ好ましいのがMg合金である。
Mg合金の種類としては、例えば、Mg−Al−Zn系合金(AZ31A、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80A等)、Mg−Al−Zr系合金(ZK51A、ZK61A、ZK60等)、Mg−Al−Mn系合金(AM100A等)、Mg−Mn系合金、Mg−Al−Si系合金、Mg−希土類元素系合金(EZ33A、ZE41A、QE22A等)等が挙げられ、特にMg−Al−Zn系合金やMg−Al−Zr系合金が好ましい。
電解酸化処理方法の適用対象とする金属材に対しては、通常、前処理→電解酸化処理→水洗→乾燥の順で処理を行う。前処理は本発明の要点ではないが、要するに金属材の表面を清浄化する目的であり、その内容として、溶剤脱脂、アルカリ脱脂、酸洗、活性化処理等の内の1又は2以上の前処理を含み得る。2種以上の前処理を行う場合、それらの間に、又はそれらの前後に、水洗を介在させることが多い。
前処理の種類とその処理条件は、金属材の清浄度、電解酸化皮膜の仕上がりに対する美粧性も含めた各種の要求等を考慮して適宜に選択される。一般的には、マグネシウム合金の陽極処理等で行われている前処理の方法や条件をそのまま適用することができる。
電解酸化処理方法における電解液組成としては、K、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を、「発明の効果」欄で前記した理由から、合計濃度0.5〜6モル/Lの範囲内で含有させることが好ましい。とりわけ、2〜5モル/Lの範囲内で含有させることが好ましい。より好ましくは、アルカリ金属の水酸化物を2種類以上組み合わせて添加する。更に好ましくは、例えばKOHとNaOHとを等モル混合する。
電解酸化処理方法における電解液組成としては、更に、K、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を含有させることが、より安定した電解酸化皮膜を生成させるために好ましい。それらの合計濃度は、「発明の効果」欄で前記した理由から、0.01〜2モル/Lの範囲内が好ましく、とりわけ、0.03〜1モル/Lの範囲内の合計濃度が好ましい。アルカリ金属のリン酸塩としては、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸の他に、ポリリン酸、ヘテロポリリン酸、ウルトラリン酸等のアルカリ金属との化合物を挙げることができる。これらの化合物を単独で、又は2種類以上を混合して添加する。
電解酸化処理方法においては、それぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理する。陽陰交番電解では、「発明の効果」欄で前記した理由から、好ましくは、いずれも0.7〜7A/dmの範囲内の電流密度で、金属材を陽極とする陽電解は25〜500秒の範囲内で継続し、金属材を陰極とする陰電解は10〜500秒の範囲内で継続する。第6発明において前記したように、陽陰交番電解は少なくとも2回の陽電解を含むことが必要もしくは有益である。
電解酸化処理を付与する電解波形は特に限定されないが、矩形波、台形波、正弦波、三角波、又はそれらの波形を組み合わせた変則波等を適用できる。いずれの波形においても、上記の電流密度と電解時間で極性を反転し交番電解を反復して与えることができる。1波形において最高電流値に対する平均電流値の割合を高く確保し易い点では、矩形波が最も有利であり、ついで台形波や正弦波が有利である。一定の電流密度を付与でき、陽陰の電解時間を制御し易い点では矩形波が最も好ましい。
電解酸化処理方法において、例えば矩形波によって初回の通電を行う場合、直ちに所定の電流密度まで急速に昇電すると過大な電流や過大な電圧が生じて不安定となることがある。このため、徐々に電流を上げて所定の電流密度まで上昇させることが望ましい。即ち、所定の電流密度まで、数秒から数分程度(例えば3秒〜60秒程度)かけて電流を上昇させることが望ましい。
初回以降での陽・陰電解においては、電流密度の変更や、陽→陰又は陰→陽の極性の変更の速度は特段にこだわる必要はない。従って、例えば電源装置の能力範囲において設定電流値まで急速に電流を上げたり、急速に電流を下降させたりすることができるし、電解酸化処理の所要時間を短縮化することにこだわらないなら、あえてこれらを緩徐に行っても良い。
陽陰交番電解の反復処理により導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を生成し得るメカニズムについては、未だ明確には解明していないが、想定される電気化学的な反応から、次の1)〜4)のように推定することができる。
1)陽電解の後に陰電解を付与すると、界面での酸素還元反応によりOHイオンが生成し、陽極反応により消費されたOHイオン濃度を安定的に維持する作用がある。このため、陽極反応で金属材から溶出したイオン(例えばMg合金から溶出したMg++イオン)による酸化膜の生成が促進され、より微細で緻密な結晶が析出し易くなり、同一の膜厚で比較すれば、通常の陽極酸化膜よりは、本発明の電解酸化皮膜の方が、耐食性を確保する上で有利な皮膜となる。
2)陽電解で生成した酸化膜が、陰電解での陰極還元反応により還元されて、例えばMgを例にとると、Mg(OH)よりも、耐食性と導電性の上で有利なMgO型の酸化膜が成長し易くなる。
3)陽電解で生成した酸化膜中の酸化物や水酸化物、および素地である金属材(例えばMg合金)中から溶出している各種の金属イオン(例えば、Zn、Mn、Zr等のイオン)や金属間化合物(例えば、AlMg、AlMn等)等が、陰電解での陰極還元反応により、酸化皮膜中に分散して固定される。これらの還元生成物は、金属状態だけではなく、金属酸化物(水酸化部物や水和酸化物より優先的に生成)や金属間化合物として皮膜中に存在し易くなると考えられる。このため、例えばMg合金材におけるMg皮膜中に分散するこれらの物質が導電性物質として作用し、電解酸化膜に導電性を与えることになる。
4)陽電解を少なくとも2回適用することが極めて有益である点について考察すると、1回目の陽電解に続いて陰電解を施すことにより、上記の1)〜3)で述べたように、陰電解によるOHイオンの生成と同時に、陽電解で生成した水酸化物を含む酸化膜中の成分からは、陰電解による還元反応によりOやHが一部除去される。このため、酸化皮膜がポーラス化しルーズな構造となると同時に、陰電解により生成した導電性物質も皮膜中に離散的に分散して存在する。このようなポーラスでルーズな皮膜構造は耐食性と導電性が不十分と考えられる。この皮膜に対し引き続き第二回目の陽電解を適用すると、素地たる金属材からMgイオン等が新たに溶出してポーラス部分に補給されると同時に、導電性物質の再配列化も起こるため、パーコレーション作用により導電性物質の連続化が起こる。そして、表層だけでなく、表層から素地に到達するミクロ的な回路が網目状に構成されるため、導電性が発現することになる。又、第2回目の陽電解による陽電流は、生成した皮膜のカソード反応通路部を通じて皮膜の内部と反応するため、実質的な電流密度が著しく高くなっていると考えられ、金属材の素地表面を激しく溶解するため、上述のポーラスな部分の空間充填や導電性物質の再配列を促進すると同時に、母材(金属材)中に微細粒子として分散している金属間化合物等も皮膜中に取り込み易くなるため、導電性の発現が促進される。
以上のように、陽・陰電解を反復することで、次第に皮膜中に導電性物質が堆積しながらパーコレーション化が進行し、かつ皮膜結晶の微細化と緻密化を伴いながら皮膜が成長していくため、導電性がありかつ耐食性も有する皮膜として析出・成長していくものと推定される。
次に、電解酸化処理方法における電解液の温度は、20〜80°Cの温度範囲で処理することが好ましい。電解液の温度が20°Cより低いと、電解酸化膜の生成やその耐食性に必ずしも有利ではない。電解液の温度が80°Cを超えると、皮膜性能の改善効果が飽和し、熱エネルギーのロスとなる。35〜65°Cの温度範囲が、経済的にも液温管理上も特に有利である。
以上において本発明の電解酸化処理方法を電流制御方法の点から述べたが、周知の電圧制御法(電位制御法)による電解酸化処理も有効に適用できる。電流制御法又は電位制御法において、陽陰交番電解による反復処理を実施するという本質は同じであり、得られる電解酸化膜も同様の効果を有する。但し、電流制御法の方が、電源としての処理条件の操作や制御信号などの計測において操作し易く、かつ、電源回路の各部位における電圧損失を考慮する必要がないため、制御性と再現性において適用し易い方法である。
電解液は、必要に応じて、上記した組成分以外の組成分を含有することができる。例えば、Zn、Mn、Al、Si、Sn、Ca等の金属イオンはもちろん、これらの金属成分の酸素酸等の酸化物や水酸化物を適当量を添加することもできる。ただし、水酸化イオンを確保する意味から、強酸性物質ではなく、アルカリ金属との化合物やその塩類、あるいは弱酸の塩、中性物質、アルカリ性物質等として添加することが好ましい。その他に、マグネシウム合金の場合の陽極酸化処理液に適用されている有機物質等も、必要に応じて添加できる。有機物質としては例えば、アルコール基又はカルボキシル基を有する種々の有機化合物を添加することができる。又、マグネシウム合金や対照電極(カーボン電極、白金電極、ステンレス電極、鉄系電極等)、及び電解槽やその配管系統等から混入する不可避的な各種の不純物をイオン状態、コロイド状態、不溶性浮遊物質などの状態で含有することがある。
金属材に形成される電解酸化皮膜は、「発明の効果」欄で前記した理由から、1〜12μmの範囲内であることが好ましい。とりわけ、2〜8μm の範囲内であることが好ましい。電解酸化皮膜は、電解液組成、温度、電解酸化処理等の条件の他に、前処理条件等によっても左右される。前処理、電解液組成、電解酸化処理温度が一定であれば、陽電解と陰電解の電流密度と電解時間を選択することで、電解酸化皮膜の膜厚を制御できる。
通常の陽極酸化膜の耐食性は膜厚が厚い方が良好になる傾向にあるが、本発明の電解酸化皮膜においては必ずしもその傾向にはなく、電解酸化皮膜の結晶構造や、電解酸化皮膜中に存在する成分の化学的構造、分布状態にも左右されるため複雑となる。しかしながら、上記の膜厚範囲を確保すれば、必要とされる耐食性を確保できる。
本発明で得られた電解酸化皮膜に対しては、必要に応じて封孔処理や着色処理等も適用できる。封孔処理では、導電性を劣化することなく耐食性を向上させることができるし、着色処理では、導電性や耐食性を劣化させることなく各種の色調を電解酸化膜に付与することが可能である。封孔処理や着色処理の方法は、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の金属材に対しての陽極酸化処理に行われている従来の方法を、そのまま適用できる。
〔第10発明〜第16発明の実施形態〕
次に、本願の第10発明〜第16発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。この項において「本発明」と言う時は第10発明〜第16発明を全体的に指している。
本発明の電解酸化処理方法は、電解液中のイオンから酸化物を陽極析出できる金属のイオンを含む電解液中で、任意の金属材を一方の電極として、それぞれ一定の時間的継続を以て陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成させる、と言う方法である。
ここにおいて、基本的に、電解酸化処理方法の適用対象となる金属材の種類には限定がなく、その金属材の種類と、電解液中のイオンから酸化物として陽極析出される金属の種類とが一致する必要もない。電解酸化処理方法の適用対象となる金属材としては、有用性の点から、Mg合金が特に好ましい。
一方、電解液中に含まれる金属のイオンは、酸化物を陽極析出できるものである限りにおいて限定されないが、好ましくは、前記の第12発明に規定するように、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Os、Ir及びPbから選ばれるいずれかの金属の1種又は2種以上のイオンが挙げられる。
従って、本発明の電解酸化処理方法により得られる電解酸化処理金属材としては、任意の種類の金属材の表面に対して、上記いずれかの金属イオンの陽極析出物を主成分とする電解酸化皮膜が形成された電解酸化処理金属材が挙げられる。このような電解酸化処理金属材としては、金属材がMg合金からなるものが特に好ましく、又、その電解酸化皮膜がMnイオン又はNiイオンの陽極析出物を主成分とする場合がとりわけ好ましい。電解酸化皮膜の好ましい膜厚は、前記の場合と同様に1〜12μmの範囲内である。
本発明に係る電解酸化処理方法においても、その適用対象とする金属材に対して、通常は前記と同様の前処理→電解酸化処理→水洗→乾燥の順で処理を行う。前処理の内容も前記と同様である。
本発明に係る電解酸化処理方法においても、陽陰交番電解を反復処理する際の処理内容及び処理条件は、前記「第1発明〜第9発明に係る電解酸化処理方法」の場合と同様である。電解酸化皮膜の生成メカニズムについても、同様であると推測される。電解酸化処理方法を電流制御法又は電圧制御法によって行い得る点も同様である。得られた電解酸化皮膜に対しては、必要に応じて、前記と同様の封孔処理や着色処理等も適用できる。
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。これらの例は第1発明〜第9発明に関するものである。これらの実施例や比較例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
試料たる金属材としてマグネシウム合金AZ31Bの圧延板(サイズ:幅50mm×長さ120mm×厚さ0.7mm)を使用した。この金属材に対して、前処理として溶剤脱脂を行った。溶剤脱脂の処理内容としては、ノルマルヘキサンに浸漬し、超音波洗浄を30分間実施した後、アルカリ脱脂を行い、水洗した後に酸洗し、更に水洗した後に活性化処理を行い、水洗と純水洗浄を行った。
以上の前処理後の試料を縦向きに保持し下端部80mmを電解液に浸漬した状態で、本発明の電解酸化処理に供した。電解酸化処理は、電流走査電解法(北斗電工製HA3210A 型、関数発生器HB105 型使用)によった。具体的には、矩形波により所定の電流密度と電解時間で電解酸化処理を行なった後、水洗してからドライヤーにて表面に付着する水分を除去した。更に、加熱炉(95°C)にて10分間加熱乾燥してから、室内にて放冷した。なお、初回の通電開始時は、40秒間で所定の電流密度まで上昇させた。
次に、評価項目として、導電性と耐食性を評価した。導電性に関しては、三菱化学製ロレスタ(MCP-T360、四端子四探針法、触針径2φ)にて、表面抵抗値を測定した。1mΩ以下の抵抗値を5点、それより大きい抵抗値を全て1点として表示する。耐食性に関しては、湿潤箱(50°C)にて3日間経時して、発錆状況を相対評価した。5段階評価にて、数字が大きいほど耐食性が良好であることを示す。
なお、下記の各試験例の結果を示す表1及び表2において、試験例の「番号」欄に示す「実施例」、「比較例」の表記上の区別は相対的・便宜的に付したものであって、必ずしも、本発明の技術的範囲に属すると言う意味での「実施例」、あるいは本発明の技術的範囲に属しないと言う意味での「比較例」を意味するものではない。
(試験例1)
電解条件として「A」と「B」の2種類の電解条件を設定し、下記の「表1」に示す「実施例1」〜「実施例7」及び「比較例1」〜「比較例3」に表記した種々の組成の電解液により、電解処理を施した。表1中の「温度」欄は電解処理時の温度を示す。
電解条件A:2A/dmの電流密度での陽電解を180秒間行い、次に2A/dmの電流密度での陰電解を60秒間行うと言う陽陰交番電解サイクルを、3回繰り返して行った。
電解条件B:2A/dmの電流密度での陽電解を600秒間行った。
Figure 0004264036
(試験例2)
電解液としてNaOHを1.9モル/L、KOHを2.1モル/L及び第三リン酸Naを0.07モル/L含む電解液を用い、下記の「表2」に示す「実施例8」〜「実施例10」及び「比較例4」〜「比較例6」に表記した種々の陽陰交番電解の条件(陽極電解条件、陰極電解条件、及びこれらの陽陰交番電解サイクルの反復回数)により、電解処理を施した。
Figure 0004264036
(試験例3)
試験例1における実施例1の処理を行った試料について、そのMg合金の表面に生成した電解酸化皮膜を観察するため、試料の垂直断面をダイヤモンド研磨した後、0.16%ナイタールにてエッチングして、その断面をCCD型光学顕微鏡にて倍率1000倍で観察した。
その観察像を図1に示すが、Mg合金1の表面に約5μmの厚さの電解酸化皮膜2が生成していることを確認できる。なお、埋込樹脂層3は、研磨加工のために形成した表面保護用の樹脂層であって、2液混合による常温硬化型のエポキシ樹脂によって形成されたものである。
その他の実施例及び比較例についての同様の観察像は図示しないが、耐食性の評価が「3」以上であった全ての例(即ち、実施例1〜実施例10、及び比較例5、比較例6)において1〜12μmの範囲内の膜厚で電解酸化皮膜が生成していた。
本発明により、各種の用途を有するMg合金等の金属材に対して、単一の処理工程で、有効な導電性と耐食性を有する単層の表面処理皮膜を簡便に形成させる手段が提供される。
実施例における電解酸化皮膜の顕微鏡観察像である。
符号の説明
1 Mg合金
2 電解酸化皮膜
3 埋込樹脂層



Claims (8)

  1. マグネシウム(Mg)又はその合金からなる金属材に対して、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びリチウム(Li)から選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物を含有する電解液中で、金属材を陽極とする陽電解は25〜500秒の範囲内で継続され、金属材を陰極とする陰電解は10〜500秒の範囲内で継続される陽陰交番電解を反復処理することにより、前記金属材の表面に導電性と耐食性を有する電解酸化皮膜を形成させることを特徴とする電解酸化処理方法。
  2. 前記電解液に含有される少なくとも1種類のアルカリ金属の水酸化物の合計濃度が0.5〜6モル/Lの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電解酸化処理方法。
  3. 前記電解液が、更にK、Na及びLiから選ばれる少なくとも1種類のアルカリ金属のリン酸塩を合計濃度0.01〜2モル/Lの範囲内で含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解酸化処理方法。
  4. 前記陽陰交番電解において、いずれも0.7〜7A/dmの範囲内の電流密度で陽電解と陰電解とを行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
  5. 前記陽陰交番電解が少なくとも2回の陽電解を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電解酸化処理方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電解酸化処理方法により形成された電解酸化皮膜を有する金属材であって、表面抵抗値が1mΩ以下であるという導電性を示すことを特徴とする電解酸化処理金属材。
  7. 前記金属材がMg合金からなることを特徴とする請求項6に記載の電解酸化処理金属材。
  8. 前記電解酸化処理金属材において、電解酸化皮膜の膜厚が1〜12μmの範囲内であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電解酸化処理金属材。
JP2004193742A 2004-06-30 2004-06-30 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材 Expired - Fee Related JP4264036B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004193742A JP4264036B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004193742A JP4264036B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006016647A JP2006016647A (ja) 2006-01-19
JP4264036B2 true JP4264036B2 (ja) 2009-05-13

Family

ID=35791187

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004193742A Expired - Fee Related JP4264036B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4264036B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008099513A1 (ja) * 2007-02-16 2008-08-21 Sugimura Chemical Industrial Co., Ltd. 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材
KR100895415B1 (ko) 2007-04-13 2009-05-07 (주) 태양기전 마그네슘 금속재, 마그네슘 금속재의 제조방법 및 마그네슘 산화 조성물
JP5329848B2 (ja) * 2007-06-12 2013-10-30 ヤマハ発動機株式会社 マグネシウム合金部材の製造方法
JP5081570B2 (ja) * 2007-10-19 2012-11-28 住友金属工業株式会社 チタン材ならびにチタン材製造方法
CN103726093B (zh) * 2013-12-04 2016-05-18 武汉材料保护研究所 一种采用环保型含镍电解液在镁合金表面制备微弧氧化膜层的方法
JP2015147954A (ja) * 2014-02-05 2015-08-20 国立大学法人 新潟大学 メソポーラス酸化ニオブの製造方法、及び製造装置
EP3319159A4 (en) * 2015-07-02 2018-06-06 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Titanium material
JP7228227B2 (ja) * 2018-12-11 2023-02-24 国立大学法人大阪大学 き裂修復性複合材料及びそれを用いた非加熱電気化学的き裂修復方法
CN113322499A (zh) * 2021-04-27 2021-08-31 昆山一鼎工业科技有限公司 电解处理生产设备制备多层电解金属端子的连续生产方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006016647A (ja) 2006-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Walsh et al. Versatile electrochemical coatings and surface layers from aqueous methanesulfonic acid
Wang et al. Electrodeposition mechanism and characterization of Ni–Cu alloy coatings from a eutectic-based ionic liquid
Chen et al. Corrosion-resistant electrochemical platings on magnesium alloys: a state-of-the-art review
CN101608332B (zh) 表面具微弧氧化陶瓷膜的铝合金及其制备方法
Zhou et al. Electrodeposition and corrosion resistance of Ni–P–TiN composite coating on AZ91D magnesium alloy
Wang et al. Preparation and performance of MAO coatings obtained on AZ91D Mg alloy under unipolar and bipolar modes in a novel dual electrolyte
Yao et al. Influence of ZrO2 particles on fluorine-doped lead dioxide electrodeposition process from nitrate bath
JP4264036B2 (ja) 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材
CN107313080B (zh) 钕铁硼产品直接电镀铜的电镀液、制备方法及电镀方法
Adabi et al. Electrodeposition mechanism of Ni–Al composite coating
CN103088384A (zh) 阀金属等离子体电解氧化表面处理方法
Raj et al. Comparative study of formation and corrosion performance of porous alumina and ceramic nanorods formed in different electrolytes by anodization
AU2014252764A1 (en) Coated composite anodes
CN105349971A (zh) 一种铝合金表面改性工艺
JP4736084B2 (ja) マグネシウム又はマグネシウム合金からなる製品の製造方法
Hu et al. Effect of Zn content on the chemical conversion treatments of AZ91D magnesium alloy
Hakimi et al. Pulse electrodeposition synthesis of Ti/PbO2-IrO2 nano-composite electrode to restrict the OER in the zinc electrowinning
Zhang et al. Electrodeposition of Cu-Zn alloy from EMImTfO ionic liquid/ethanol mixtures for replacing the cyanide zincate layer on Al alloy
Hamid et al. Synthesis and protection of AM50 magnesium alloy and its composites using environmentally pretreatment electrolyte
CN110636693A (zh) 一种利用复杂脉冲电镀石墨烯-金属复合材料镀层的方法和一种pcb及电机
JP5199892B2 (ja) 電解酸化処理方法及び電解酸化処理金属材
JP2013189660A (ja) マグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法
CN102146578A (zh) 一种在Cr、Ni元素含量高的合金钢上制备磷化膜的方法
KR101353663B1 (ko) 우수한 내식성을 갖는 마그네슘계 금속재 및 그 제조방법
CN101967668A (zh) 用化学镀或电镀工艺制备Ni-P-UFD复合镀层的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060120

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070703

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070827

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081104

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090203

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090213

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120220

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150220

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees