JP5198913B2 - カード用樹脂組成物及びカード用シート - Google Patents
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Description
そこで本発明は、芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするシートとの融着性に優れたカード用シート、並びに該カード用シートを形成するためのカード用樹脂組成物を提供せんとするものである。
そして、かかるカード用シートを少なくとも1枚以上積層して熱融着してなるカードを提供することができる。例えば、かかるカード用シートと、芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするシートとを積層し熱融着してなる構成を備えたカードを提供することができる。
本発明の実施形態の一例に係るカード用樹脂組成物(以下、「本カード用樹脂組成物」という)は、乳酸系重合体(A)と、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂(B)と、熱可塑性エラストマー(C)とを含み、必要に応じてさらに無機充填剤(D)を含む樹脂組成物である。以下、それぞれの成分、配合量などについて詳細に説明する。
乳酸系重合体は、乳酸を主成分とするモノマーを縮重合してなる重合体であり、本カード用樹脂組成物に使用する乳酸系重合体(A)としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸の両方からなるポリ(DL−乳酸)、或いはこれら二種類以上の組合せからなる混合物を用いることができる。
乳酸系重合体を主成分とする乳酸系重合体系シートを数枚(数層)重ねて加熱しながらプレスして互いに融着させる場合、結晶性が高い乳酸系重合体では、熱プレスのときに結晶化してしまい、融着が困難になるか、或いは、乳酸系重合体が完全に融けきる状態近傍まで加熱温度を設定した場合には、乳酸系重合体は熱プレス時に溶融流動し、カードとして外観の良好なものが得難くなるかのいずれかであるため、結晶性が高い乳酸系重合体は好ましいとは言えない。また、既存の熱プレス機はもともと塩化ビニル樹脂の融着ができるように製作されており、このような熱プレス機における熱プレス可能な温度域は100〜170℃の範囲内、好ましくは110〜160℃、さらに好ましくは120〜150℃の範囲内であるため、既存の熱プレス機を利用しようとすると、前記温度範囲で熱プレスできる乳酸系重合体を選択して用いるのが好ましい。このような点を考慮すると、乳酸系重合体中のL−乳酸とD―乳酸の割合は、99:1〜92:8或いは1:99〜8:92であるのが好ましいと言える。
但し、このL−乳酸とD−乳酸の割合は、この割合で得られる乳酸系重合体樹脂単独で用いてもよいし、これらの割合が異なる乳酸系重合体を複数種混合して用いてもよい。その場合、混合物の重量平均分率による平均値のL−乳酸とD−乳酸の割合が、前記範囲内になるよう調整して混合するのが好ましい。
共重合される「他のヒドロキシカルボン酸」としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分との縮合重合してなる樹脂であればよく、中でも、芳香族ジカルボン酸成分およびジオール成分のうちの片方の成分もしくは両方の成分が単一の化合物から成るのではなく、数種の化合物からなる、いわゆる共重合ポリエステルが好ましい。
他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等が挙げられる。これらは、一種でも二種以上であってもよく、また置換される他のジカルボン酸の量も適宜選択することができる。
他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセンリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらは、一種でも二種以上であってもよく、また置換される他のジカルボン酸の量も適宜選択することができる。
すなわち、芳香族ポリエステル系樹脂の代表例としてポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられるが、このPETは、溶融させた後、急冷すると結晶化せず、非晶状態ではあるが、再び150〜250℃程度の範囲内で加熱すれば結晶化する半結晶性樹脂である。このような樹脂は、実質溶融押出する適正な温度としては、このPETの融点よりも高い270℃以上の温度で加熱する必要がある。したがって、乳酸系重合体と混合し、溶融押出ししようにも270℃以上の温度設定が必要となる訳であるが、この高い温度では乳酸系重合体は熱分解を生じ、溶融押出しシートは得難くなる。仮に、溶融押出ししたシートを急冷して非晶性にしたとしても、カード用シートを重ね合わせて熱プレスした際に結晶化して融着性を生じなくなる。よって、芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、実質的に非結晶性のポリエステル系樹脂であることが重要である。
この際、非晶化度を高める観点からは、他のジカルボン酸、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分を10〜50モル%、中でも12モル%以上、中でも特に15モル%以上含むことが好ましい。上限値は、47モル%以下であるのがより好ましく、45モル%以下であるのがさらに好ましい。
より好ましいIV値としては、0.5〜0.8の範囲内、さらに好ましくは0.55〜0.75の範囲である。
熱可塑性エラストマーには大きく分けて、スチレン系、オレフィン系、PVC系、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系などがあるが、本カード用樹脂組成物に用いる熱可塑性エラストマー(C)としては、ポリエステル系エラストマー(c1)か、或いは、ポリエステル系エラストマー(c1)を主成分として含有し、その他にスチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーもしくはポリアミド系エラストマーなどから選ばれる1種類或いは2種類以上のエラストマーが混合したエラストマーが好ましい。中でも、ポリエステル系エラストマー(c1)とスチレン系エラストマー(c2)とを含有するエラストマーが特に好ましい。
熱可塑性エラストマー(C)を添加することで、乳酸系重合体(A)と芳香族ポリエステル系樹脂(B)との相溶性を高めることができ、特にポリエステル系エラストマー(c1)とスチレン系エラストマー(c2)との混合物からなるエラストマーを用いることにより、芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするシートとの熱融着性を優位に高めることができる。
変性スチレン系エラストマーの具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマーに反応性の高い官能基で変性したポリマーである旭化成ケミカルズ社製「タフテックM1943」やJSR社製「ダイナロン8630P」やエポキシ化熱可塑性エラストマーであるダイセル化学社製「エポフレンド」シリーズ等が挙げられる。
上記ポリエステル系エラストマー(c1)と上記スチレン系エラストマー(c2)との混合割合は、質量比率でc1:c2=100:0〜20:80であるのが好ましく、より好ましくは、c1:c2=90:10〜30:70、特に80:20〜40:60であるのが好ましい。
なお、MFRの値は、JISK−7210に準じ、230℃、荷重21.2N、10分の条件で測定した値である。
無機充填剤(D)としては、屈折率が2以上である無機充填剤、例えば酸化チタン、チタン酸鉛、チタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化亜鉛などが好ましく、その中でも、屈折率が高い酸化チタンが特に好ましい。
酸化チタンなどの屈折率が高い顔料を含有させることにより、不透明な白色シートとすることができる。
なお、塩素法プロセスで製造された酸化チタン、硫酸法プロセスで製造された酸化チタンのいずれも使用可能である。
また、酸化チタンは、その表面が、シリカ、アルミナ、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆処理されたものが好ましい。不活性無機酸化物で被覆処理することにより、酸化チタンの光触媒作用を抑制できるため、製造時及び使用時において、酸化チタンの光触媒作用によって乳酸系重合体が分解されるのを防ぐことができる。
さらに、ベース樹脂への分散性を向上させるため、酸化チタンの表面がシロキサン化合物、シランカップリング剤等から選ばれた少なくとも1種類の無機化合物や、ポリオール、ポリエチレングリコールから選ばれた少なくとも1種類の有機化合物で表面処理された酸化チタンを用いるのがより一層好ましい。
乳酸系重合体(A)の配合割合は、植物由来である乳酸系重合体をより高い割合で配合する方が、カードにしたときに占める植物由来成分が高まり好ましいものとなるが、一方で乳酸系重合体(A)の配合割合が高くなり過ぎると、耐衝撃性が低下する傾向にあり、芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするシートとの融着性が低下することになるため、このような点を踏まえて乳酸系重合体(A)の配合割合を調整する必要がある。
芳香族ポリエステル系樹脂(B)を配合する目的は、乳酸系重合体(A)と同様、カードにしたときの剛性を得ることと、カードにする際の芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするシートとの融着性を補完することなどであるから、このような目的に応じて芳香族ポリエステル系樹脂(B)の配合量を調整する必要がある。
また、熱可塑性エラストマー(C)を配合する主な目的は、乳酸系重合体(A)の耐衝撃性を改良するためと、乳酸系重合体(A)と芳香族ポリエステル系樹脂(B)との相溶性を高めるためなどであるから、このような目的に応じて熱可塑性エラストマー(C)の配合量を調整する必要がある。
加水分解抑制剤の例としては、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物等を挙げることができ、これら化合物は高分子量体であるものでもよい。
また、シートの滑り性の向上や柔軟性を付与する目的で、乳酸系重合体との共重合成分として挙げた脂肪族ポリエステルもしくは脂肪族・芳香族ポリエステルの単独重合体を混合しても構わない。これらの重合体の重量平均分子量はおおよそ2万〜30万程度である。
本カード用樹脂組成物を用いて、次のようにカード用シート(本カード用シートという)を形成することができる。
例えば乳酸系重合体(A)、芳香族ポリエステル系樹脂(B)及び熱可塑性エラストマー(C)を混合し、必要に応じてさらに無機充填剤(D)を添加して混合し、さらに必要に応じてその他の添加剤を混合し、これを加熱溶融しシート成形すればよい。この際、製造方法としては、特に制限されないが、通常用いられる溶融押出法を用いることが好ましい。
この時、原料の配合比率によって樹脂の粘度が変化するため、混練条件は適宜調整する必要があるが、通常は樹脂温度が180〜250℃になるように調整してシート形成するのが好ましい。使用する口金としてはTダイ、Iダイ、丸ダイを使用し、これら押出したフラット状物又は円筒状物として引き取り、冷却キャストロールや水、圧空等により冷却し固化させるようにすればよい。
このような積層構成において、表裏層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合が、中間層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合よりも多くすることが好ましく、中でも、表裏層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合が、中間層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合よりも、20〜40質量部多くなるようにすることが好ましく、特に25〜35質量部多くなるようにすることが特に好ましい。
他方、シートのカール性を重視した場合には、第1層/第2層の2層構成、第1層/第2層/第1層/第2層の4層構成、さらには第1層/第2層/・・・/第2層の多層構成などを採用することも可能である。
なお、本カード用シートを、カードのコア層を形成するためのコアシートとして使用する場合は、構成する各シートの重ね会わせ枚数にもよるが、厚みとしては20μm〜500μmの範囲で適宜選択するのが好ましい。
表面処理としては、物理的な粗面(凹凸)化処理、酸化処理等を挙げることができる。粗面化処理の例としては、サンドブラスト処理、ヘアーライン加工処理がある。酸化処理の例としては、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線処理、クロム酸処理、火炎処理等を挙げることができる。その他、有機溶剤処理を施してもよい。
また、乳酸系重合体系重合体の結晶化度による耐溶剤性の差異を利用して、良溶媒・貧溶媒を調整して、本発明のフィルム表面を侵食して粗面化する方法を施すことも可能である。この際の良溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、THF、MEK、DMF等を挙げることができ、貧溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン等を挙げることができる。
本樹脂組成物を用いて上記のように形成したシートは、カード用シートとして、特にコアシートとして優れた性能を有する。さらに、前述の芳香族ポリエステル系樹脂等、すなわち芳香族ポリエステル系樹脂や、芳香族ポリエステル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との混合樹脂を主成分として用いてなるシートとの熱融着性に優れているため、本樹脂組成物を用いてコアシートを形成する一方、前記芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分として用いてオーバーシートを形成すれば、両者を容易かつ確実に熱融着することができ、耐久性に優れたカードをより容易に製造することができるから、カード基材として好ましく用いることができる。但し、両者を接着することも可能である。
なお、芳香族ポリエステル系樹脂等を主成分とするオーバーシートにおける芳香族ポリエステル系樹脂は、上記の芳香族ポリエステル系樹脂(B)と同様の樹脂を挙げることができる。
また、ICチップとアンテナを備えたインレットシートを2枚のコアシート間に挟んで積層し、各コアシートの表裏両面にオーバーシートを積層するようにして非接触式ICカードを形成することもできる。
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分樹脂である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において「カード用シート」とは、カードを製造するために用いるシート、すなわちカード材料としてのシートであり、コア層を形成するためのコアシート及びオーバー層を形成するためのオーバーシートの両方を包含するものである。
また、本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
ダート型衝撃試験機であるハイドロショットR高速衝撃試験機HTM−1型((株)島津製作所製)を用いて耐衝撃性を評価した。
実施例・比較例で得られたシートを100mm×100mmに切り出して試験片とした。この試験片を上記試験機のクランプに固定し、シート中央に錘を落として衝撃を与え、試験片が破壊した時のエネルギー(N・cm)を読み取った。測定温度は23℃、落錘の落下速度は3m/秒であった。
フィルム破壊時のエネルギーが低いほど、耐衝撃性に劣ると評価することができる。
芳香族系共重合ポリエステルであるPETGを主原料とする非晶性ポリエステルシート(三菱樹脂社製カード用透明オーバーシート「ディアフィクスPG−CHI」、厚さ100μm)を20cm×20cmに切り出してシート(I)を得た。
実施例・比較例で得られたシート(厚さ)を、シート(I)と同サイズに切り出してシート(II)を得た。
これらのシート(I)及びシート(II)を、(I)/(II)/(II)/(I)となるように重ね合わせ、熱プレスにて融着させて積層シート(試験体)を得た。
熱プレスは、昇温・降温可能な上下の加熱板間に、上下それぞれ剛性の十分ある鏡面板を介して試験体を挟み込み、室温から10〜30分かけて加熱し、表1に示す温度まで到達するよう加熱した。この時のプレス圧は、0.1MPa〜0.2MPaの範囲内になるよう調整した。その後、室温まで10分〜30分かけて冷却した。
融着温度120℃にて融着した場合を「◎」、120℃では融着しないが、160℃にて融着した場合を「〇」と表記し、良好と判断した。その一方、160℃でも全く融着しないか、或いは融着しても剥離強度が6N/cm未満の場合を「×」と表記し、不良と判断した。
上記「(2)非晶性ポリエステルシートとの融着性評価方法」と同様に熱プレスして得られた積層シート((I)/(II)/(II)/(I))を、勘合型(両刃)の打ち抜き器を用いてカード型サイズ(85.6mm×54.0mm)に打ち抜き、打ち抜いたシートの端部に、毛羽立ちや切りかす等が全く付着してない場合を「◎」、毛羽立ちや切りかす等が付着していたが実用上問題ないレベルである場合を「○」と表記し、良好と判断した。その一方、毛羽立ちや切りかす等が付着していて実用上問題があるレベルの場合を「×」と表記し、不良と判断した。
上記「(2)非晶性ポリエステルシートとの融着性評価方法」と同様に熱プレスして得られた積層シート((I)/(II)/(II)/(I))を、勘合型(両刃)の打ち抜き器を用いてカード型サイズ(85.6mm×54.0mm)に打ち抜き、得られたシート(端に毛羽立ち等があるものは予め取り除く)を、日本データカード(株)製自動エンボス文字打刻機「DC500」でエンボス文字を打刻した。そして、打刻時あるいは打刻後の各評価を以下のように評価した。
なお、エンボス文字は、JIS X 6301(1979年)の第6項に記されている第1領域には、「1234 5678 9012 3456」の16桁の数字を文字間隔3.6mm、縦4.3mmで、第2領域には「TEST SAMPLE 00/00」と「ABCDEFGHIJ KLMNOPQR STU」の文字を2行に渡り、文字間隔2.54mm、縦3.02mmで打刻した。
エンボス文字を打刻した時に、シートに割れやひびが無いかを評価した。
割れもひびも全く無いものを良好と評価して「○」と表記し、割れ或いはひびが入ったものは不良と評価して「×」と表記した。
エンボス文字を打刻したシート(カード)について、JIS X 6301(1998年)の第8項に準拠して、カード全体の反りについて評価した。
すなわち、カードの反りで1.5mm以下であったものを良好と評価して「○」と表記し、反りが1.5mmを超えていたものを不良と評価して「×」と表記した。
反りは、定盤にカードをおいて反りによる高さを1級直定規で目分量にて求めた。
エンボス文字を打刻したシート(カード)について、JIS X 6301(1979年)の第6項に準拠して、エンボス文字のカード面からの高さが0.43mm〜0.48mm以内になるものを良好と評価して「○」と表記し、0.43mm〜0.48mmの範囲外であるものを不良と評価して「×」と表記した。
エンボス文字高さは、(株)テクロック社製ダイヤルゲージ(最小目盛単位0.001mm)でカードの厚みとエンボス文字込みのカードの厚みをそれぞれ、下記式より求めた。なお、本測定の対象としたエンボス文字は、第1領域のエンボス文字についてである。
上記(1)〜(4)の評価結果より、総合的に良好なものを「○」と表記し、良好でないものを「×」と表記した。
A−1:乳酸系重合体(L体:D体=95.7:4.3、重量平均分子量約19万)
A−2:乳酸系重合体(L体:D体=89:11、重量平均分子量約18万)
A−3:乳酸系重合体(L体:D体=98.5:1.5、重量平均分子量約20万)
B−1:非晶性芳香族ポリエステル系樹脂(ガラス転移温度(Tg):79℃、固有粘度:0.83dl/g(測定条件JIS K7367−5)、カルボン酸単量体単位:テレフタル酸100モル%、グリコール単量体単位:エチレングリコール68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール32モル%)
B−2:非晶性芳香族ポリエステル系樹脂(ガラス転移温度(Tg):78℃、固有粘度:0.67dl/g(測定条件JIS K7367−5)、カルボン酸単量体単位:テレフタル酸100モル%、グリコール単量体単位:エチレングリコール68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール32モル%)
C−1:ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分をモル比で75:25の割合で含有してなるブロック共重合体からなるポリエステル系エラストマー(c1)(MFR(測定条件:JIS K7210条件Mに準じて、温度230℃、荷重21.2Nで測定):30)
C−2:ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分をモル比で67:33の割合で含有してなるブロック共重合体からなるポリエステル系エラストマー(c1)と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるスチレン系エラストマー(c2)との混合物(c1:c2=74:26)(MFR(測定条件:JIS K7210条件Mに準じて、温度230℃、荷重21.2Nで測定):11)
D−1:石原産業社製二酸化チタン「タイペークCR−60−2」(ルチル型)
乳酸系重合体(A)としてA−1、芳香族ポリエステル系樹脂(B)としてB−1、及び、熱可塑性エラストマー(C)としてC−1を用いて、これらを質量比45/45/10の割合で混合した。さらにこの混合樹脂100質量部に対して無機充填剤(D)としてのD−1を5質量部を混合して同方向二軸押出機((株)テクノベル製)に供給し、樹脂温度が220℃となるよう溶融混練してストランド状に吐出した後、水冷し、ペレタイザーでペレット状に粉砕し、原料ペレットを得た。
このようにして得られたシートについて、上記の各種評価を行い、その結果を表1に示した。
実施例2及び比較例1〜4は、表1に示す樹脂を表1に示す割合で混合し、実施例1と同様にシートを得た。なお、シートを得るときのキャスト温度は、シートに厚みむら等が生じないように、表1に示す60〜70℃の温度範囲で適宜設定した。
このようにして得られた各シートについて、上記の各種評価を行い、その結果を表1に示した。
乳酸系重合体(A)としてA−1、芳香族ポリエステル系樹脂(B)としてB−2、及び、熱可塑性エラストマー(C)としてC−2を用いて、これらを表1に示す割合で混合した。さらにこの混合樹脂100質量部に対して無機充填剤(D)としてのD−1を5質量部を混合し、同方向二軸押出機に供給し、樹脂温度が210℃になるよう溶融混練してストランド状に吐出した後、水冷し、ペレタイザーでペレット状に粉砕し、原料ペレットを得た。
この原料ペレットを用いて実施例1と同様にシートを製造した。得られたシートについて上記の各種評価結果を行い、その結果を表1に示した。
本実施例では、2種3層の積層シートを作製した。
この乾燥後の中間層用原料ペレットを単軸押出機(モダンマシナリー(株))製に供給する一方、乾燥後の表裏層用原料ペレットを単軸押出機(モダンマシナリー(株))製に供給し、それぞれリップ幅750mm、ギャップ0.7mmの2種3層用マニホールド型のTダイに導いて溶融押し出した。押出温度としては、それぞれ樹脂温度が210℃になるよう設定した。そして、温度62℃に設定したキャストロールにて、表層/中間層/裏層の厚み比が1:8:1になるように押出量を調整して共押出して約280μm(厚みの厚薄280±20μm)のシートを得た。この時、(内側が冷水循環している)シリコーンゴムロールをキャストロール面とは反対面に接触させてシートの引き取りを安定させた。
得られたシートについて、上記の各種評価を行い。その結果を表1に示した。
実施例1〜5及び比較例1〜4の評価結果並びに従来までの経験を加味すると、乳酸系重合体(A)は10〜75質量部、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂(B)は15〜70質量部、熱可塑性エラストマー(C)は10〜35質量部配合するのが好ましいことが分かった。
また、実施例1〜5の中でも特に実施例3及び4は非晶性ポリエステルシートとの熱融着性に優れていたことより、熱可塑性エラストマー(C)としては、非晶性ポリエステルシートとの熱融着性の観点から、ポリエステル系エラストマーよりも、ポリエステル系エラストマーとスチレン系エラストマーの混合組成物の方が好ましいことが分かった。
Claims (5)
- 乳酸系重合体(A)10〜45質量部と、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂(B)23〜70質量部と、熱可塑性エラストマー(C)10〜32質量部とを含む混合物((A)(B)(C)の各質量部は3成分合計100質量部に対する質量割合)を含むカード用樹脂組成物であって、
前記熱可塑性エラストマー(C)が、ポリエステル系エラストマー(c1)100〜20質量部とスチレン系エラストマー(c2)0〜80質量部とを含むことを特徴とするカード用樹脂組成物。 - 前記混合物のほかに無機充填剤(D)を含むことを特徴とする請求項1記載のカード用樹脂組成物。
- 請求項1又2に記載のカード用樹脂組成物を用いてなる層を少なくとも1層備えたカード用シート。
- 中間層と表裏層とを備えたカード用シートであって、中間層及び表裏層のいずれも、請求項1又は2に記載のカード用樹脂組成物を用いてなり、且つ、表裏層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合が、中間層を構成する樹脂組成物中の芳香族ポリエステル系樹脂(B)の割合よりも多いことを特徴とするカード用シート。
- 中間層と表裏層とを備えたカード用シートであって、中間層は、請求項1又は2に記載のカード用樹脂組成物を用いてなる層であり、表裏層は、芳香族ポリエステル系樹脂(B)を主成分とする層であることを特徴とするカード用シート。
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