一般に、アイドルストップ車は、走行停止状態でブレーキペダルが踏み続けられる信号待ちの間等にはエンジンを停止し、信号が赤から青に変化する等してキースイッチ(メインスイッチ)をスタート位置へ操作するか、又は、ブレーキペダルを開放することによって、エンジンを再始動することをくり返す。この場合、アイドルストップ中に消費されるエネルギを走行中の発電で賄うことができないため、車両に従来からの例えば12Vの鉛蓄電池等の車載バッテリ(主バッテリ)だけでなく、充電受入性能および深放電耐性が鉛蓄電池等より高いニッケル水素電池等の車載バッテリ(補助バッテリ)も搭載し、2種類の車載バッテリを切り替えてアイドルストップ中及び再始動時の電気負荷を駆動することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、2種類の車載バッテリを搭載した従来のアイドルストップ車の車載電源システムには、例えば図6に示すように構成されたものがある。
図6において、100は12Vの鉛蓄電池からなる車載バッテリ(主バッテリ)であり、負荷給電路110のヒューズ111を介してヘッドランプやエアコン等の車内の12Vの各種の電気負荷120に給電する。
130は例えばニッケル水素電池からなる車載バッテリ(補助バッテリ)であり、アイドルストップ状態からのエンジン再始動時にはスタータ電源切り替えリレー140を介してスタータ150に給電する。160は車載バッテリ130の入出力調整器としての双方向のスイッチングレギュレータであり、図7に示すように、マイクロコンピュータ構成の4モード制御のDC/DCコントローラ161と、このコントローラ161によりスイッチング制御される複数個のFET162および平滑用のリアクタ163のブリッジ回路とを備える。そして、スイッチングレギュレータ160は、車載バッテリ130の状態および負荷給電路110の電圧状態等に基づき、コントローラ161の制御によって昇圧の充電/放電、降圧の充電/放電の4つのモードのいずれかで動作し、各FET162をスイッチング動作して車載バッテリ130の負荷給電路110を介した充放電を制御する。なお、図6において、車載バッテリ130の充電路は実線矢印で示し、放電路は破線矢印で示す。
図6の170は車両のキースイッチ(メインスイッチ)であり、イグニッションオンによりイグニッション接点171がオンし、スタート(始動)位置によりスタート接点172がオンする。180はエンジンを含む車両全体を制御するマイクロコンピュータ構成の車両制御ECUであり、接点171、172の接点信号の変化等から、エンジンの始動および再始動を認識すると、スタータ電源の切替信号SW、スタート信号SSを発生する。切替信号SWは、冷間始動時を除き、スタータ電源切り替えリレー140を車載バッテリ100の選択接点mから車載バッテリ130の選択接点sに切り替える。スタート信号SSは、シフトレバー(図示せず)がパーキング又はニュートラルのポジションでスイッチ200がオン(閉)していることにより、スタータリレー190のコイル191を通電し、スタータリレー190の接点192を閉じてスタータ150を励磁駆動する。
210はレギュレータ付きのオルタネータであり、車両制御ECU180と情報をやり取りするマイクロコンピュータ構成の制御回路211の制御に基づきエンジンに軸着された発電機部212がエンジン出力に応じたU、V、Wの三相交流を発電し、その発電出力を複数個のダイオードDの三相フルブリッジに形成されたレクチファイア213に供給して全波整流し、エンジン動作中に、レクチファイア213の出力を、車載バッテリ100に直接給電するとともにスイッチングレギュレータ160を介して車載バッテリ130に給電し、車載バッテリ100、130を充電する。なお、図6の220は制御回路211により点消灯制御される充電異常報知用の充電警報灯である。
そして、鉛蓄電池の車載バッテリ100は、短期放電性能が高く、かつ、長期保管の自己放電は少ないが、充電受入性能が低く、充電に時間を要する。ニッケル水素電池の車載バッテリ130は、充電受入性能および深放電耐性が鉛蓄電池より高く、短時間で充電できる。
そのため、図6の車載電源システムの場合、駐車状態等からの冷間始動時は、イグニッションオンの操作により、スタータ電源切り替えリレー140を車載バッテリ100の選択接点mに保持し、車載バッテリ100によってスタータ150駆動し、エンジンを始動するが、その後のアイドルストップによるエンジンの再始動時(温間始動時)は、スタータ電源切り替えリレー140を車載バッテリ130の選択接点sに切り替え、車載バッテリ130によってスタータ150を駆動し、エンジンを始動する。
そして、始動後の車両走行中には、加速や減速のエンジン出力に基づくレクチファイア213の整流出力を車載バッテリ100に給電して車載バッテリ100を充電するとともに、レクチファイア213の整流出力をスイッチングレギュレータ160により電圧調整して車載バッテリ130に給電し、車載バッテリ130も充電する。
このとき、充電受入性能が高い車載バッテリ130は、つぎのアイドルストップのエンジン再始動までの短時間で満充電状態に充電され、つぎのアイドルストップ中の電気負荷120の給電及びエンジン再始動のスタータ給電に備える。
特開2004−150354号公報(例えば、段落[0004]、[0017]−[0018]、図1等)
前記図6の従来システムの場合、車載バッテリ130の充電受入性能および深放電耐性が高い利点を生かすため、オルタネータ210のレクチファイア213の低電圧の整流出力を入出力調整器としての双方向のスイッチングレギュレータ160で昇圧して車載バッテリ130を高電圧に充電し、車載バッテリ130の出力(放電エネルギ)をアイドルストップ中の電気負荷120の給電及びアイドルストップからのエンジン再始動のスタータ給電に優先的に使用している。この場合、レクチファイア213からスイッチングレギュレータ160までの充電伝送路は低電圧かつ高電流であり、損失が多い。そのため、車載バッテリ130の充電効率が低下する。また、前記充電伝送路の配線径を大きくしなければならず、コストアップを招来する。加えて、スイッチングレギュレータ160での昇圧に伴う損失も発生する。
また、車載バッテリ130の充電時および放電時(負荷給電時)に電圧降下の要因となるレクチファイア213のダイオードDやスイッチングレギュレータ160のFET162等の素子を充電電流や放電電流が通り、充電電流や放電電流の素子の通過回数が多く(4〜5回程度)、その分、損失がさらに大きくなるとともに、充放電路の故障確率が高くなって信頼性が低下する。
さらに、冷間始動時のスタータ給電を車載バッテリ100の出力で行うが、アイドルストップのエンジン再始動のスタータ給電を車載バッテリ130の出力でも行うため、インピーダンスの低いスタータ電源切り替えリレー140を要し、それぞれの配線を太くする必要がある上、部品数が多くなるとともに製造作業が煩雑になる。
その上、オルタネータ210のレクチファイア容量を車載バッテリ100、130の充電とその充放電損失を賄う大容量にしなければならず、そのコストアップする問題もある。
本発明は、充電受入性能が高くアイドルストップのエンジン再始動のスタータ給電に使用される車載バッテリの充電が安価な構成で効率よく行えるようにすることを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明の車載電源システムは、アイドルストップ車の車載電源システムにおいて、エンジン出力により発電した交流を整流して出力するオルタネータと、前記オルタネータの出力により充電される第1の車載バッテリと、前記オルタネータが発電した交流の相間電圧または単相電圧の出力をn倍(nは2以上の整数)電圧整流する整流器と、前記第1の車載バッテリより充電受入性能が高く、前記整流器の出力により充電される第2の車載バッテリと、前記第2の車載バッテリから取り出す出力を前記第1の車載バッテリより高い電圧に降圧調整する出力調整器とを備え、前記第1の車載バッテリの出力および前記出力調整器を介した前記第2の車載バッテリの出力を前記エンジンのスタータを含む車両負荷に並列給電することを特徴としている(請求項1)。
請求項1の本発明の車載電源システムの場合、オルタネータが発電した交流の相間電圧または単相電圧の発電出力がオルタネータのレクチファイアとは別個の整流器でn倍電圧整流され、この整流器のn倍電圧の整流出力により、第2の車載バッテリが第1の車載バッテリより高い充電受入性能を有効に利用して短時間に、かつ、効率よく高電圧に充電される。
また、第2の車載バッテリの出力は放電時(負荷給電時)の降圧調整のみを行う出力調整器により第1の車載バッテリより高い電圧に降圧調整して取り出される。そして、オルタネータの整流出力で充電される第1の車載バッテリの出力と、出力調整器を介した第2の車載バッテリの出力とが、エンジンのスタータを含む車両負荷に並列給電される。
そして、アイドルストップ状態からのエンジン再始動時には、出力調整器の降圧調整により、アイドルストップ前のエンジン出力により満充電状態に充電された第2の車載バッテリから、残存エネルギが効果的に取り出され、第1の車載バッテリの出力電圧より出力調整器で降圧調整された第2の車載バッテリの出力電圧が高い電圧になる。そのため、第2の車載バッテリの出力がスタータ等の車両負荷に優先的に給電され、アイドルストップのエンジン再始動のスタータ給電が第2の車載バッテリの出力で行われる。なお、第1の車載バッテリが鉛蓄電池等の自己放電が少ないバッテリの場合、冷間始動時のスタータ給電は、第2の車載バッテリより自己放電が少ない第1の車載バッテリが高電圧、かつ、低インピーダンスになることから、従来装置のスタータ電源切り替えリレー等を設けなくても、自動的に第1の車載バッテリの出力でスタータ給電が行われる。
そして、オルタネータから第2の車載バッテリへの充電電力の取り出しおよび、取り出した電力の伝送が損失の少ない発電交流の高電圧、小電流で効率よく行え、しかも、従来装置のように直流配線径を太くする必要もなく安価になる。そのため、第2の車載バッテリを従来システムより安価な構成で効率よく充電できる。
また、従来システムの充電の入力調整および放電の出力調整の両方行う双方向のスイッチングレギュレータ(入出力調整器)160に代えて放電時の電圧降下調整のみを行う出力調整器を設ければよく、しかも、従来システムのスタータ電源切り替えリレー140は省けるため、一層安価になる。
さらに、第2の車載バッテリの充電電流、放電電流の電圧降下の要因となるダイオードやFET(スイッチング素子)等の素子の通過回数が少なくなって充放電の損失が少なくなるとともに、充放電路の故障確率が低くなって信頼性が向上する。
その上、オルタネータのレクチファイア容量は第1の車載バッテリの充電を賄う小容量でよく、一層安価になる利点もある。
つぎに、本発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して詳述する。
図1は本実施形態の車載電源システムの構成を示し、図2は図1のスイッチングレギュレータ3の詳細な構成を示す。図3、図4は図1の車載電源システムの動作説明図である。
図1において、1は図6の車載バッテリ100に対応する第1の車載バッテリ(主バッテリ)であり、車載バッテリ100と同様の12Vの鉛蓄電池からなる。2は図6の車載バッテリ130に対応するリチウムイオン二次電池構成の第2の車載バッテリ(補助バッテリ)であり、例えば端子間電圧14.6Vの2個のセル2aの直列接続回路2bを3組備え、各直列接続回路2bの並列出力(満充電時に29、2Vになる出力)が取り出される。
3は本発明の出力調整器としてのスイッチングレギュレータであり、図2に示すように、マイクロコンピュータ構成の1モード制御のDC/DCコントローラ31を備え、コントローラ31によりスイッチング制御される1個のFET32および平滑用のリアクトル33を第2の車載バッテリ2の放電路に直列に設けて形成される。
そして、スイッチングレギュレータ3は、第2の車載バッテリ2の状態および負荷給電路4の電圧状態等に基づき、コントローラ31によってFET32をスイッチングし、第2の車載バッテリ2の放電エネルギに基づくスイッチングレギュレータ3の直流出力の電圧を、第1の車載バッテリ1の電圧より若干高い電圧、かつ、オルタネータ11の直流出力より低い電圧に制御する。なお、図1、図2においては、第2の車載バッテリ2の充電路を実線矢印で示し、放電路を破線矢印で示している。
さらに、第1の車載バッテリ1の出力および、スイッチングレギュレータ3により電圧調整された第2の車載バッテリ2の出力が、負荷給電路4のヒューズ41を介してヘッドランプやエアコン等の12Vの各種の電気負荷5に並列給電されるとともに、スタータ6に給電される。このスタータ6は図6のスタータ150に対応するが、図6のスタータ電源切り替えリレー140が省かれているので、第1の車載バッテリ1の出力および、スイッチングレギュレータ3により電圧調整された第2の車載バッテリ2の出力が、常時並列給電される。
そして、エンジンの最初の始動時およびその後のアイドルストップの再始動時、図6のスタート信号SSと同様のスタート信号SS*が、図6のスイッチ200と同様のスイッチ8を介して図6のスタータリレー190と同様のスターリレー7のコイル71を通電し、スターリレー7の接点72を閉じ、スタータ6を励磁駆動する。
つぎに、図1の9は図6の車両のキースイッチ170に対応する車両のキースイッチであり、イグニッションオンの操作により、イグニッション接点91、スタート接点92がオンする。10は図6の車両制御ECUに対応するマイクロコンピュータ構成の車両制御ECUであり、接点91、92の接点信号の変化等から、エンジンの始動および再始動を認識すると、スタート信号SS*を発生する。
11は図5のオルタネータ210に対応するレギュレータ付きのオルタネータであり、車両制御ECU10と情報をやり取りするマイクロコンピュータ構成の制御回路12の制御に基づきエンジンに軸着された発電機部13がエンジン出力にしたがってU、V、Wの三相交流を発電し、その発電出力を複数個のダイオードDの三相フルブリッジに形成されたレクチファイア14に供給して全波整流し、レクチファイア14の出力を第1の車載バッテリ1に給電する。
15は本発明の整流器であり、オルタネータ11の発電機部13が発電した交流の相間電圧または単相電圧の出力を、各ダイオード16の半波整流によってn倍(nは2以上の整数)電圧整流し、その整流出力で第2の車載バッテリ2を充電する。具体的には、本実施形態の場合、発電機部13から取り出したUとV、VとW、WとUの各相間電圧それぞれを倍電圧整流(n=2)し、第2の車載バッテリ2の各直列接続回路2bの2個のセル2aを充電する。そのため、例えばUとVの相間電圧については、U相が正電圧になると、U相にアノードが接続されたダイオード16の整流出力で該当する直列接続回路2bの一方のセル2aを充電し、V相が正電圧になると、U相にカソードが接続されたダイオード16の整流出力でその直列接続回路2bの他方のセル2aを充電し、直列接続回路2bを倍電圧整流で充電する。なお、VとWの相間電圧、WとUの相間電圧についても、同様にして、それぞれの直列接続回路2bを倍電圧整流で充電する。この倍電圧整流出力の充電により、第2の車載バッテリ2は、例えば前記した29.2Vに充電される。なお、第2の車載バッテリ2、スイッチングレギュレータ3および整流器15は、実際には、単一部品である、倍電圧整流回路付補助バッテリユニット17により形成される。また、図1の18は図5の充電警報灯220と同じ充電警報灯である。
したがって、車両の走行中等のエンジン動作中には、第1の車載バッテリ1は従来装置の車載バッテリ100と同様にオルタネータ11のレクチファイア14の整流出力で徐々に12V前後に充電される。一方、第2の車載バッテリ2はオルタネータ11の発電機部13の三相交流の発電出力を整流器15で倍電圧整流した出力により効率よく短時間に高電圧(29.2V)に充電される。
また、アイドルストップのエンジン再始動時(温間始動時)は、第2の車載バッテリ2の放電エネルギに基づくスイッチングレギュレータ3の出力電圧が第1の車載バッテリ2の電圧より高く、従来システムのスタータ電源切り替えリレー140等を設けなくても、自動的に第2の車載バッテリ2の放電エネルギがスタータ6に給電されてエンジンが再始動される。
つぎに、図1の車載電源システムの具体的な充放電動作について、図3、図4を参照して説明する。なお、図3、図4においては、オルタネータ11と第2の車載バッテリ2との間の整流器15は省略している。
まず、駐車状態等からの最初の冷間始動時は、第2の車載バッテリ2の残存エネルギが少なく、自己放電の少ない第1の車載バッテリ1の電圧が、スイッチングレギュレータ3の電圧より高くなる。そのため、第1の車載バッテリ1の放電エネルギがスタータ6に優先的に給電され、この給電に基づき、スタート信号SS*にしたがってスタータ6が回転してエンジンが始動する。このとき、第1の車載バッテリ1は放電する。
そして、エンジン始動直後のアイドル状態中は、図3(a)の矢印線α、βに示すオルタネータ11の整流出力(レクチファイア14の出力)により第1の車載バッテリ1が充電されるとともに電気負荷5の給電が賄われる。また、同図(a)の矢印線γに示すオルタネータ11の発電交流(発電機部13の三相交流)の倍電圧整流出力により第2の車載バッテリ2が充電される。このとき、第1の車載バッテリ1は待機電力とエンジン始動のエネルギ消費で深放電気味であるが、充電受入性の低さから充電が進まない。一方、充電受入性能が高い第2の車載バッテリ2は自己放電で完全放電していても素早く充電される。そのため、エンジン始動直後の両車載バッテリ1、2は例えば図3(a)に斜線に示す充電状態になる。なお、図3、図4において、第2の車載バッテリ2の左側の上向きの矢印線はこの車載バッテリ2が充電状態であることを示す。
つぎに、車両が走行すると、走行中の加速や減速に基づくエンジンの余剰のエネルギによってオルタネータ11の発電量が上昇し、図3(b)に示すようにオルタネータ11の整流出力、発電交流によって車載バッテリ1、2それぞれが充電されるとともに、オルタネータ11の整流出力が電気負荷5の給電を賄う。このとき、第1の車載バッテリ1は、オルタネータ11の発電量上昇で見かけの電圧は上がるが、実質の残存エネルギ(蓄積エネルギ)の増加は少なく、満充電までに時間がかかる。一方、第2の車載バッテリ2は、充電電圧が高く、しかも、充電受入性能が高いので、短時間に高い電圧(例えば29.2V)の満充電状態に達する。
つぎに、アイドルストップが働かない設定で走行が停止し、エンジンがアイドル状態に戻ると、このとき、図3(c)に示すように第2の車載バッテリ2は満充電状態であり、同図(c)の矢印線α、βに示すようにオルタネータ11の整流出力による第1の車載バッテリ1の充電と電気負荷5の給電とが行われる。このとき、アイドル状態程度ではオルタネータ11の発電量が少ないため、電気負荷5が大きく、重負荷状態であれば、第1の車載バッテリ1はなかなか満充電状態にならない。なお、図3(c)の矢印線γと×印は第2の車載バッテリ2が満充電状態で充電電流が注入されないことを示す。そして、エンジン出力(動力)がアイドル状態に減少してオルタネータ11の発電量が少なくなっても、第2の車載バッテリ2は既に充電状態にあるので満充電状態に維持される。
つぎに、アイドルストップに設定して車両が走行する場合について説明する。
まず、赤信号等によりアイドルストップ状態になると、エンジン出力がオフし、オルタネータ11の発電交流および整流出力もオフする。このとき、図4(a)に示すように第1の車載バッテリ1が満充電状態でなくても、第2の車載バッテリ2はそれまでの充電で満充電状態である。そして、スイッチングレギュレータ3の出力電圧が第1の車載バッテリ1の電圧より少し高くなるように制御されるので、図中の矢印線δに示すように第2の車載バッテリ2の放電エネルギがスイッチングレギュレータ3を介して電気負荷5に優先的に給電される。このようにするのは、充電受入性能が高く、充放電効率が高い第2の車載バッテリ2のエネルギを積極的に使用してエンジン出力の利用効率を高くし、最終的に車両の燃費の向上を図るためである。そのため、スイッチングレギュレータ3は、例えば、出力電圧が、第1の車載バッテリ1が充電も放電もされないように設定された目標電圧(例えば12.5V)になるように調整する。なお、前記目標電圧をアイドルストップ直前の負荷給電路4の電圧を計測して車載バッテリ1の残電量を予測してアイドルストップ中のスイッチングレギュレータ3の出力電圧を調整してもよい。
つぎに、赤信号から青信号に変わる等してアイドルストップが終了し、エンジンを再始動するとき(温間再始動)には、第2の車載バッテリ2は、アイドルストップ中の負荷給電によって残量エネルギが少なくなっても、倍電圧整流で充電されているので電圧が高い(29.2V)。そのため、スイッチングレギュレータ3により、深放電耐性が高い第2の車載バッテリ2の残存エネルギを十分に使い切って、スタータ6の始動に十分な直流電流を負荷給電路4に給電することができる。そのため、図4(b)に示すように、実線矢印δの第2の車載バッテリ2からの給電が実線矢印εの第1の車載バッテリ1からの給電に優先し、第2の車載バッテリ2の放電エネルギによりスタータ6が回転してエンジンが再始動する。このとき、スイッチングレギュレータ3のインピーダンスは低く、従来のスタータ電源切り替えリレー140等を用いなくても、第2の車載バッテリ2の放電エネルギはスタータ6等に確実に給電される。
もし、スタータ6及び電気負荷5の消費電力が車載バッテリ2からの給電だけでは賄えないときは、電圧の降下によって車載バッテリ1からもエネルギが持ち出される。
そして、本実施形態の車載電源システムの場合、オルタネータ11の発電出力の三相交流により、第2の車載バッテリ2への電力の取り出しおよび伝送を行うため、オルタネータ11から整流器15までの充電伝送路は高電圧かつ小電流であり、損失が少なく、第2の車載バッテリ2の充電の伝送効率が従来システムより飛躍的に向上する。また、配線径を大きくしなくてよく、コストダウンを図ることができる。さらに、スイッチングレギュレータ3は放電時の降圧調整のみを行う単一モードで動作する構成であるため、充電、放電の複数モードで動作する双方向のものより構成が簡単であり、通過する電流に対するインピーダンスが低く、一層のコストダウンを図ることができる。
また、整流器15はダイオードの半波整流の構成であり、しかも、第2の車載バッテリ2の充電電流はレクチファイア14やスイッチングレギュレータ3を通らないため、第2の車載バッテリ2の充電時および放電時に電圧降下の要因となるダイオードやFET等の素子を充電電流や放電電流が通る回数は従来システムより少なくなり、損失が少なく、充放電路の故障確率も低くなって信頼性が向上する。
さらに、車載バッテリ1、2の出力を負荷給電路4に並列給電する構成であり、従来システムの充電の入力調整及び放電の出力調整の両方を行う双方向のスイッチングレギュレータ160に代えて放電時の電圧降下調整器3を一段のみ設ければよく、一段の電圧降下調整器3の電圧降下手段(FET32及びリアクトル33)による低インピーダンス効果によって、従来システムでは必須であったスタータ電源切り替えリレー140が不要になるため、それぞれの給電配線径を細くでき、部品数が少なく、製造作業が容易になる。
つぎに、倍電圧整流の整流器15により、第2の車載バッテリ2の各セル2aを、2個ずつの3組に分け、各組の2個のセル2aを、組毎に異なる3種類の相間電圧それぞれの倍電圧整流出力で分散して充電したため、例えば、1組が故障等しても他の2組で充電および放電が行え、信頼性が一層向上する。
さらに、第2の車載バッテリ2の充電昇圧損失エネルギが不要となり、オルタネータ11のレクチファイア容量は第1の車載バッテリ1の充電を賄う小容量でよく、第2の車載バッテリ2の容量も小さくてよいので、アイドルストップシステムの小型化および一層のコストダウンを図ることができる。
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、第2の車載バッテリ2は、水素ニッケル電池以外の充電受入性能が高い種々の二次電池であってもよく、さらには、いわゆる大容量キャパシタ等のキャパシタで構成されていてもよい。また、第1の車載バッテリ1は鉛蓄電池以外の自己放電量の少ない二次電池であってもよい。
また、スイッチングレギュレータ3や整流器15の構成、第2の車載バッテリ2のセル数、充電電圧等は前記実施形態のものに限るものではない。
つぎに、前記実施形態においては、オルタネータ11の発電機部12が三相構造であり、整流器15により発電機部12の各相間電圧の倍電圧整流出力によって第2の車載バッテリ2を充電したが、整流器15を3倍、4倍、…の電圧整流器に形成して第2の車載バッテリ2を3倍、4倍、…の倍電圧整流出力によって充電してもよいのは勿論である。また、例えば、オルタネータ11の発電機部12から単相電圧(線電圧)を取り出し、それをn倍電圧整流して第2の車載バッテリ2を充電するようにしてもよい。そして、倍電圧整流(n=2)して充電する場合は、整流器15に代えて、例えば図5に示す構成の整流器15*を備える。同図において、2cは第2の車載バッテリ2の2組に分割したセル、16*は整流器15*の正、負の整流用ダイオードである。
そして、本発明は、種々のアイドルストップ車の車載電源システムに適用することができる。