JP5196712B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネートの製造方法に関し、詳しくは、フィッシュアイ含量が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。以下の説明において芳香族ポリカーボネートをPCと略記することがある。
一般に、エステル交換法によるPCは、触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態で重合し、副生するフェノール類を脱離しながら製造される。その際、反応途中のプレポリマーの分子量によって溶融粘度が大きく異なることや、分子量が大きくなる程フェノールの脱離促進のために高温・高真空で反応することが必要であること等から、工業的には、複数の反応器を直列に接続して段階的に温度や減圧度を変更する方法が採用される(例えば特許文献1参照)。
特開平2−153925号公報
ところで、PCには、分岐構造の生成を抑制して製造される汎用グレードや分岐構造の生成を助長して製造される分岐グレードが存在する。これらの異種グレードのPCは、工業的には、一つの製造設備を使用した一連のプロセスの中で重合条件を変更する切替え運転によって製造される。例えば、汎用グレードから分岐グレードへの切替えは、触媒濃度および重合温度を高めることによって行われる。
そして、一般的に、エステル交換法によるPCの製造方法では、重合時に分岐構造単位の生成を完全に回避することは困難であり、特に分子量の大きなグレードや分岐化PCでは必然的に重合温度や触媒濃度を上げざるを得ず、分岐構造単位に由来すると推測されるフィッシュアイ数は増加する傾向にある。特に、重合条件の変更によって異種グレードの芳香族ポリカーボネートを切替え生産する方法において、汎用グレードのPCを製造する場合、上記のフィッシュアイ数の問題は顕著である。そして、フィッシュアイ数に起因してPCは着色する。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、フィッシュアイ含量が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネートを長期間安定して製造する方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は、複数基の反応器から成る反応装置を使用し、触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態で重合して芳香族ポリカーボネートを製造する方法であって、反応器の気相部の露出部に付着しているポリマーの除去操作を含み、当該除去操作においては、最終反応器から導出される芳香族ポリカーボネートから経時的に試料を採集し、130℃で5時間乾燥した後に320℃で押出成形し、幅140mm、厚さ70μmのフィルムを製膜し、光学式異物検査装置((株)ダイアインスツルメンツ製「GX40K」)を使用し、フィルムの中心から選択された幅80mm×長さ1.7m×厚さ70μmのフィルムのフィッシュアイ数(サイズ50〜500μm)を以下の方法にて測定し、当該フィッシュアイ数の測定値に基づき、最終反応器についてのポリマーの除去操作の時期を決定し、先ず、反応装置の運転を一時的に停止し、次いで、付着ポリマーの除去操作が行われる反応器内に存在するプレポリマー又はポリマーを次工程に移送する操作と、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合して除去する操作とを行ない、その後、反応装置の運転を再開することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法に存する。
<フィッシュアイ数の測定法>
800mVの光量を使用し、吸収された100〜300mVの光量の範囲におけるフィッシュアイ数を(A)、300mV以上の光量の範囲の数を(B)として、次の式より算出する。但し、測定は2回行い、その平均値を求める。
フィッシュアイ数=(A)−(B)
本発明によれば、フィッシュアイ含量が少なくて色相に優れた芳香族ポリカーボネートを長期間安定して製造することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
本発明においては、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを使用する。
芳香族ジヒドロキシ化合物は以下の式(I)で表される。
Figure 0005196712
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」ともいう)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられるが、好ましくはビスフェノールAである。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は2種以上併用してもよい。
炭酸ジエステルは以下の式(I I)で表される。
Figure 0005196712
炭酸ジエステルの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられるが、好ましくはジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートであり、更に好ましくはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステルは2種以上併用してもよい。
また、上記の炭酸ジエステルと共にジカルボン酸またはジカルボン酸エステルを使用してもよい。ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルを併用した場合は、ポリエステルカーボネートが得られる。ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルの使用割合は、炭酸ジエステルに対し、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
炭酸ジエステル(好ましくはジフェニルカーボネート)の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物(好ましくはビスフェノールA)1モルに対し、通常1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.20モルである。モル比が1.001より小さくなると、製造されたPCの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.30より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のPCの製造が困難となるばかりか、製造されたPC中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが成形時または成形品の臭気の原因となる。
本発明において、エステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が単独で使用されることが特に好ましい。
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩などが挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、四級ホスホニウム塩などが挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
エステル交換触媒の使用量は次の通りである。すなわち、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用する場合、ビスフェノールA1モルに対する金属量として、通常0.5〜5μモルである。特に分岐化PCを得るためには、通常1〜5μモル、好ましくは1.2〜4.5μモル、更に好ましくは1.3〜4μモル、特に好ましくは1.5〜3.5μモルである。
エステル交換触媒の使用量が余りに少ない場合は、所望の分子量のPCを製造するのに必要な重合活性と溶融特性をもたらす分岐成分量が得られず、余りに多い場合は、ポリマー色相が悪化し、分岐成分量が多すぎて流動性が低下し、目標とする溶融特性の優れた分岐化PCが製造できない。また、反応器に付着滞留するポリマーの劣化を促進させ、ゲル等の異物発生原因となる。
エステル交換触媒は分割して供給してもよい。例えば、少量の触媒量でプレポリマーを製造し、重合の途中段階で新たに触媒を追添加して重合することも出来る。その際、追添加する触媒量は、重合反応で使用される全触媒量、すなわち、重合初期より供給される量と重合途中で供給される量の総和に対し、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。追添加する触媒量が20重量%より少ない場合は、重合初期より高濃度の触媒を含有することになり、プレポリマーを製造する段階で副反応などにより得られるPCの着色を招く。更には、重合時に脱離するフェノールガスに一部同伴され、反応器の気相部などに付着したプレポリマーの劣化を加速させ、延いては、異物コンタミを招き品質低下の原因となる。また、重合初期より触媒を添加しない場合(追添加する触媒量が100%の場合)は、プレポリマーの重合活性が悪くなり全体として生産性の低下となる。従って、追添加する触媒の比率の上限は、通常90%、好ましくは80%である。
また、触媒の追添加するタイミングは、プレポリマーの生長した段階が好ましく、複数の反応器を直列に接続して段階的に温度や減圧度を変えてPCを製造する場合には、2段目以降の反応器ないしは配管内に供給することが好ましい。更に、触媒を追添加する際のPCの粘度平均分子量は、通常5,000以上、好ましくは6,000以上、更に好ましくは7,000以上である。粘度平均分子量の低い段階で追添加したのでは、重合初期より触媒を供給した場合と同様にプレポリマーの製造段階で着色を招き、更には、エントレしたプレポリマーの劣化が促進され、異物コンタミの要因となる。より具体的には、反応器の天板や撹拌翼の軸などの一部冷却した部分に付着した樹脂が結晶化し、PCの該結晶化物の経時での生長、高融点化を招き、異物コンタミが生じる。更に、触媒の追添加は上記の好ましい粘度平均分子量の範囲内であれば、1回で追添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。触媒は、水溶液またはフェノール溶液として添加することが出来、場合によっては、芳香族ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル又はオリゴマー成分に混合した後、添加してもよい。
エステル交換反応は、一般的には二段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第一段目の反応は、通常140〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次第に反応系の圧力を下げながら反応温度を高め、最終的には200Pa以下の減圧下、240〜350℃の温度で重縮合反応を行う。ここで、最終反応器は横型であることが好ましく、横型最終反応器の反応温度は、通常260〜350℃、好ましくは280〜320℃、更に好ましくは282〜300℃である。
また、最終横型反応器の平均滞留時間は、通常0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間である。滞留時間は、分子量の生長だけでなく、副反応による分岐構造の生成にも大きく影響するため、厳密に制御する必要がある。具体的には、所定の滞留時間に対し、通常20%の範囲内、好ましくは10%範囲内、更に好ましくは5%範囲内に制御する。滞留時間の監視には、種々の方法が採用でき、液面を測定して供給および/または抜き出し量を調整する方法、供給速度と抜き出し速度をシーケンス制御する方法などがあるが、高粘度液の撹拌および発泡による測定の困難さから、最終反応器に含有する樹脂の重量でもって監視する方法が最も精度良く管理できる。また、反応の形式は、バッチ式、連続式、バッチ式と連続式の組み合わせの何れの方法でもよいが、連続式が好ましい。
PCの粘度平均分子量は汎用グレードと分岐グレードとでは異なる。汎用グレードの粘度平均分子量は通常13,000以上であり、分岐グレードの平均分子量は通常20,000以上である。分岐グレードの平均分子量は、好ましくは22,000以上、更に好ましくは、24,000以上である。粘度平均分子量が余りに低い場合は耐衝撃性などの機械的強度が低下する。
また、PCの末端OH基量は、製品の熱安定性、耐加水分解性、色相などに大きな影響を及ぼし、実用的な物性を維持せる観点から、PCの重量に対し、通常100〜1,500ppm、好ましくは150〜1,200ppm、更に好ましくは200〜1,000ppmである。末端OH量が100ppm未満の場合は、重合直後のPC中の炭酸ジエステル化合物量が多く、脱揮により炭酸ジエステル化合物量を200重量ppm以下まで下げるのが困難となる。
また、分岐化PCの場合、以下の式(a)で表される構造単位1モルに対する以下の式(b)〜(e)で表される分岐構造単位の1又は2以上の合計のモル数の比(分岐化度)は、通常0.2〜1.0モル%、好ましくは0.3〜0.8モル%である。斯かる条件を満足することにより、溶融張力が高く、ブロー成形が良好で、更に、熱安定性および色調の良いものが得られる。分岐化度が上記範囲より小さい場合は、溶融張力が得られず、目標とする溶融特性の優れた分岐化PCが製造できず、また、上記範囲より大きい場合は、溶融張力が大きすぎて、流動性が劣り、目標とする溶融特性の優れた分岐化PCが製造できない。本発明の好ましい態様においては、式(a)で表される構造単位1モルに対する式(d)及び/又は(e)で表される分岐構造単位のモル数は、通常0.0002〜0.15mol%、好ましくは0.0003〜0.12mol%である。
Figure 0005196712
(上記式(a)〜(e)において、Xは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、または、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−SO−の群から選択される2価の基である。)
ところで、上記の式(b)及び(c)の分岐構造単位は、PCの溶融法(エステル交換法)の製造方法において、重合反応系中で転位反応を併発することにより生成することが知られている(例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,vol.10,p.723(1969)。一方、式(d)及び(e)の分岐構造単位は、本発明者によって見出されたものであり、特定の反応条件で溶融法によりPCを製造した場合に生成し、以下の様な経路を経て生成すると推定される。
Figure 0005196712
式(d)及び(e)の構造単位は、式(b)及び(c)の構造単位を経由して生成すると考えられるため、式(b)及び(c)の構造単位より量的に少ない。しかしながら、目標とする溶融特性の優れた分岐化PCを製造する際の重要な要素となっている。
上記の各々の分岐構造単位の量は、製造されたPCをアルカリ加水分解後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)等により容易に求められる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用した場合には、アルカリ加水分解後の、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等では、それぞれ、下記式(f)〜(j)の化合物として検知されるため、各化合物の標準物質の吸光係数から各化合物を定量することが出来る。具体的には、各化合物の標準物質を使用し、濃度とピーク面積の検量線を作成し、各々の含有量を定量することが出来る。
Figure 0005196712
また、分岐化PCは一定の溶融張力が必要とされ、そのため、下記式(1)で表されるフローレイト比(MVR−R)は、通常15〜40、好ましくは17〜30、更に好ましくは18〜25である。ここで、MVRは、JIS K 7210に準拠し、21.6kg荷重時のMVRと2.16kg荷重時のMVRの比で表すことが出来る。
Figure 0005196712
フローレイト比(MVR−R)が余りに低い場合は、溶融張力が低くなり、押出分野の成形が困難となり、余りに高い場合は、ゲル等の異物混入が多くなり、外観不良を招く恐れがある。
エステル交換法で製造されたPC中には、通常、原料モノマー、触媒、エステル交換反応で副生する芳香族モノヒドロキシ化合物、PCオリゴマー等の低分子量化合物が残存している。中でも、原料モノマーと芳香族モノヒドロキシ化合物は、残留量が多く、耐熱老化性、耐加水分解性などの物性に悪影響を与える。この様な見地から、分岐化PC中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存量は300重量ppm以下であることが好ましく、芳香族モノヒドロキシ化合物は300重量ppm以下であることが好ましい。
更に、原料モノマーのうち炭酸ジエステル化合物は、溶融成形時またはブロー成形による中空容器に臭気として残り、特に食品用途に使用する場合に問題となる。従って、PC中の炭酸ジエステル化合物の残存量は、通常200重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下、更に好ましくは60重量ppm以下になる様に除去される。
PC中の原料モノマーと芳香族モノヒドロキシ化合物の残存量を減少させる方法は、特に制限されず、例えば、重合後、ベント式の押出機により連続的に脱揮することにより残存炭酸ジエステル化合物などを除去する方法、得られたペレットを減圧下で加熱処理する方法などが可能である。ベント式の押出機により連続的に脱揮する場合は、予め、酸性化合物またはその前駆体を添加し、PC中に残留している塩基性エステル交換触媒を失活させておくならば、脱揮中の副反応を抑え、効率よく芳香族ジヒドロ化合物と炭酸ジエステル化合物および芳香族モノヒドロキシ化合物を除去することが出来る。
上記の酸性化合物またはその前駆体の種類は、特に制限されず、重縮合反応に使用する塩基性エステル交換触媒を中和する効果のあるものであれば、何れも使用できる。具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸などのブレンステッド酸およびそのエステル類が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、スルホン酸化合物又はそのエステル化合物、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等が好ましい。
酸性化合物またはその前駆体の使用量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和量に対し、通常0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モルである。酸性化合物またはその前駆体を添加する時期としては、重縮合反応後であれば、何時でもよく、添加方法にも特別な制限はなく、酸性化合物またはその前駆体の性状や所望の条件に応じ、直接添加する方法、適当な溶媒に溶解して添加する方法、ペレットやフレーク状のマスターバッチを使用する方法などが採用される。
炭酸ジエステル化合物などの低分子量体の脱揮に使用される押出機は、単軸でも二軸でもよい。また、噛み合い型二軸押出機の場合、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。脱揮の目的には、酸性化合物添加部の後にベント部を有する押出機が好ましい。通常、ベント数は2〜10段である。また、押出機では、必要に応じ、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤などの添加剤を添加し、樹脂と混練することも出来る。
本発明においては、前述の様に、複数基の反応器から成る反応装置を使用し、触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態で重合してPCを製造するが、反応器の気相部の露出部に付着しているポリマーの除去操作を含む。
上記の除去操作においては、最終反応器から導出される芳香族ポリカーボネートから経時的に試料を採集して製膜し、明細書に定義した方法に従ってフィッシュアイ数を測定し、当該フィッシュアイ数の測定値に基づき、最終反応器についてのポリマーの除去操作の時期を決定し、先ず、反応装置の運転を一時的に停止し、次いで、付着ポリマーの除去操作が行われる反応器内に存在するプレポリマー又はポリマーを次工程に移送する操作と、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合して除去する操作とを行なう。
最終反応器から導出されるPCは、通常、反応器底部のポリマー排出口から抜き出され、溶融状態のままで2軸押出機に送入され、前述の酸性化合物と混練され、ダイからストランド状で抜き出され、カッターで切断してペレット化される。本発明においては、フィッシュアイ数の測定用試料として、上記の製品ペレットから経過時的に採取した試料を使用することが出来る。そして、フィッシュアイ数の測定は、先行して行われる製膜方法も含め、後述の実施例に記載の方法に従って行うことが出来る。
ところで、フィッシュアイは当業者にとって周知の通り、ゲル状異物であり、分岐構造単位に由来して生成すると考えられる。そして、エステル交換法によるPCの製造においては、分岐構造単位の生成を完全に回避することは困難であり、特に、分子量の大きなグレードや分岐化PCを得るためには必然的に重合温度や触媒濃度を上げざるを得ず、分岐構造単位の生成が助長される。従って、エステル交換法によるPCの製造においては、分岐構造単位に由来して必然的にフィッシュアイが生成して蓄積する。
その結果、PC中のフィッシュアイ数はPCの製造期間に応じて漸次増加し、その増加傾向は、PCのグレードによって異なる。しかも、製品として許容されるフィッシュアイ数の範囲もPCのグレードによって異なる。例えば、光学用途グレードの場合は、通常500個以下、好ましくは300個以下、更に好ましくは100個以下、特に好ましくは50個以下であり、分岐化ポリカーボネートを使用する中空容器などの押出成形グレードの場合は、通常2500個以下、好ましくは1500個以下、更に好ましくは800個以下、特に好ましくは600個以下である。フィッシュアイ数が上記範囲を増える場合は、製品の品質低下(信号エラーや外観不良)を招く。従って、PCの製造における反応装置の運転管理は、PCのグレード毎に上記のフィッシュアイ数の範囲を超えない様に行なわれる。
従って、本発明において、ポリマーの除去操作の時期を決定するフィッシュアイ数の測定は、頻繁に行う必要はなく、例えば、半日ないしは1日に一度の頻度で十分であり、また、フィッシュアイ数の測定結果に基づいてポリマーの除去操作を直ちに行っても、複数の測定結果に基づくフィッシュアイ数の増加の傾向からポリマーの除去操作時期を予測してもよい。何れにしても、フィッシュアイ数の測定値に基づく最終反応器についてのポリマーの除去操作の時期の決定は、PCの各グレード毎に行われる。例えば、光学用途グレード製造中の場合は、前述の許容されるフィッシュアイ数を超えることがない時期に
ポリマーの除去操作を行なう。
反応装置の運転の一時的な停止は、主として、各反応器への原料供給の停止によって行われる。そして、付着ポリマーの除去操作が行われる反応器内に存在するプレポリマー又はポリマーを次工程に移送する操作と、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合して除去する操作とは、任意の順序で行なうことが出来る。付着ポリマーの除去操作が行われる反応器は、少なくとも最終反応器であるが、その上流側の反応器についても付着ポリマーの除去操作を行なってもよい。
上記のプレポリマー又はポリマーの移送操作には、例えばプロセス内に配置されたポンプを利用することが出来、最終反応器内に存在するポリマーは次工程としての2軸押出機に移送される。
上記の付着ポリマーの解重合は、保安上、付着ポリマーの除去操作が行われる反応器の温度を180〜200℃程度にまで低下させた後に行うのが好ましい。この場合、上記の反応器内にポリマーが多量に残存していると、その固化や閉塞に起因するトラブルにより、付着ポリマーの解重合後の再スタートに長時間を要し経済的でない。そこで、本発明においては、反応器や配管内を置換洗浄し、残存ポリマーを除去するのが好ましい。
上記の置換洗浄には、例えば、付着ポリマーを解重合に使用するフェノール類またはフェノール類含有媒体を利用することも出来る。この場合は、置換洗浄と後述する付着ポリマーの解重合とを平行して行なうことも出来る。
しかしながら、本発明においては、付着ポリマーの解重合に先立ち、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合液を使用して置換洗浄を行なうのが好ましい。何故ならば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合液は、融点が比較的低く且つ溶融粘度も低いため、置換洗浄の際に固化(閉塞)することがなく、しかも、置換洗浄に使用する上記の混合液としては、比較的早い段階の反応器における反応物を利用することが出来るからである。
置換洗浄に使用する上記の媒体の使用量は、付着ポリマーの除去操作を行う反応器の全容積当たり、液量として、通常1〜30容量%、好ましくは5〜20容量%である。
本発明において、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合する方法は、特に制限されないが、予め設置された配管からポリマーの除去操作を行う反応器などにフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給してフェノール類の蒸気を発生させる方法が好ましい。この場合、フェノール類などは反応器を密閉状態にして供給される。なお、フェノール類含有媒体としては比較的早い段階の反応器における反応物を利用することが出来る。斯かる蒸気洗浄法によれば、反応装置の運転中は液相に位置していた場所(特に死空間)に蓄積したポリマーも同時に解重合することが出来る。
フェノール類またはフェノール類含有媒体の供給量は、付着ポリマーに対し、フェノール類の量として、通常10〜500重量倍、好ましくは10〜300重量倍である。フェノール類の蒸気を発生させる条件(すなわち解重合条件)は、ポリマーの付着部の形状などによっても異なるが、通常、温度は150〜250℃、圧力は0.01〜2kgf/cm、時間は0.5〜5時間である。そして、上記の操作(解重合)の際は酸素の混入を遮断して行うのが好ましい。
なお、解重合後の廃液は反応器から即座に排出して別ラインでフェノール等の有効成分を回収してもよいし、また、反応器の中でフェノールの大半を蒸発回収して残液のみを系外へパージしてもよい。
付着ポリマーの除去操作を伴う本発明のPCの製造方法は、重合条件の変更によって異種グレードの芳香族ポリカーボネートを製造する方法であって、1つのグレードとして粘度平均分子量20,000以上の分岐化PCを含む製造方法として好適である。何故ならば、上記の様な分岐化PCの製造においては反応器内の付着ポリマーによる汚染が顕著であるからである。この場合、分岐化PC後に続いて製造するPCのグレードとして低分子量PCを選択する場合は、次の様な利点がある。すなわち、エステル交換法による重合反応は平衡反応であるため、生成するPCの分子量を低下させると副生フェノールの分圧が上昇し、反応器の気相部の露出部に付着しているポリマーの解重合が促進される。その結果、反応装置の運転を一時的に停止して行なう付着ポリマーの除去操作が容易となる。
本発明においては、前述の様に、PC中のフィッシュアイ数を測定し、当該フィッシュアイ数の測定値に基づき、最終反応器についてのポリマーの除去操作の時期を決定し、反応装置の運転を一時的に停止し、その後、前述の所要の操作を行なう。従って、本発明においては、フィッシュアイ数が目標値以下のPCを可能な限り連続する運転で製造することが出来という多大な利点がある。なお、本発明の製造方法で得られるPCのフィッシュアイ数は一般的に言えば次の通りである。すなわち、通常2,500個以下、好ましくは1,500個以下、更に好ましく800個以下、特に好ましくは600個以下である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。以下の実施例および参考例で得られたPCの分析は、以下の測定法により行った。
(1)粘度平均分子量(Mv):
ウベローデ粘度計を使用し、PC(試料)の塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式(2)及び(3)より求めた。
Figure 0005196712
(2)末端OHの定量:
四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)により比色定量を行った。測定値は、PC重量に対する末端OH基の重量をppm単位で表示した。
(3)分岐構造単位の濃度:
前記式(a)で表される構造単位1モルに対する前記式(b)〜(e)で表される分岐構造単位の合計モル数の比(モル%)で表される。具体的には、各々の構造単位の含有量は下記の様にして求めて、式(f)で表される構造単位1モルに対するそれぞれ式(g)〜(j)で表される構造単位の合計モル数の比(モル%)より算出した。
塩化メチレン100mlにPC(試料)1gを溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml及びメタノール80mlを加え、更に純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1規定塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。
アセトニトリル10mlに加水分解物0.05gを溶解し、逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し測定を行った。逆相液体クロマトグラフィーは、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液とから成る混合溶媒を使用し、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液比率を20/80からスタートし80/20までグラジュエントする条件下、カラム温度40℃で測定を行った。検出は波長280nmのUV検出器((株)島津製作所製、SPD−6A)で行った。
前記式(a)〜(e)で表される構造単位は、式(f)〜(j)の化合物として検知されるため、Agilent(株)製LC−MS(Agilent−1100)及び日本電子製NMR(AL−400)で同定した。また、各構造単位の含有量は、各化合物の標準物質を使用し、濃度とピーク面積の検量線を作成し、各々の含有量を定量した。
(4)MVR−R:
JIS K 7210に準拠し、タカラ工業(株)製メルトインデクサーを使用し、130℃で5時間乾燥したPC(試料)について、280℃、荷重21.6kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(21.6)と、同様に280℃、荷重2.16kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(2.16)とを使用し、下式(1)で求めた。MVR−Rの値が大きいほど分岐化の度合いが大きいことを示す。
Figure 0005196712
(5)色相(YI):
先ず、130℃で5時間乾燥したPC(試料)を360℃(シリンダー設定温度)で射出成形し、100mm×100mm×3mm厚のプレスシートを得た。次いで、カラーテスター(スガ試験機株式会社製「SC−1−CH」)を使用し、上記のプレスシートについて、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式(4)により黄色度の指標であるYI値を計算した。このYI値が大きいほど着色していることを示す。
Figure 0005196712
(6)フィッシュアイ数:
先ず、130℃で5時間乾燥したPC(試料)を320℃で押出成形し、幅140mm、厚さ70μmのフィルムを得た。押出成形には、直径30mmの単軸押出機((株)いすず化工製)を使用した。次いで、光学式異物検査装置((株)ダイアインスツルメンツ製「GX40K」)を使用し、フィルムの中心から選択された幅80mm×長さ1.7m×厚さ70μmのフィルム(体積952cm)のフィッシュアイ(サイズ50〜500μm)数を測定した。すなわち、800mVの光量を使用し、吸収された100〜300mVの光量の範囲におけるフィッシュアイ数を(A)、300mV以上の光量の範囲の数を(B)として、次の式(5)より算出した。測定は2回行い、その平均値を示した。
Figure 0005196712
(7)ブロー成形品の外観:
先ず、130℃で、5時間乾燥した試料について、バレル温度240〜270℃、金型温度70℃で5ガロンボトルのブロー成形を行った。成形機には、日本製鋼所(株)製「B−30」を使用した。次いで、成形品の外観評価を次の要領で行った。すなわち、成形品の向こう側に方眼模様の用紙を置き、手前側から成形品を通して向こう側の用紙を見た際、方眼模様に殆ど歪みが無く綺麗に見えた場合を○、僅かに歪んで見えた場合を△、一部でもはっきりとした歪みが確認された場合を×と判定した。
参考例1:
窒素ガス雰囲気下、ジフェニルカーボネート(DPC)とビスフェノールA(BPA)とを一定のモル比(DPC/BPA=1.050)に混合して原料溶融液を調製した。この原料溶融液を、88.7kg/時の流量で、原料導入管を介して、220℃、1.33×10Paに制御した容量100Lの第1竪型撹拌反応器内に連続供給し、平均滞留時間が60分になる様に、反応器底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、原料溶融液の供給を開始すると同時に、触媒として、ビスフェノールA1モルに対し、1.0μモル(金属量としてビスフェノールA1モルに対し2.0μモル)の割合で炭酸セシウム水溶液を連続供給した。
反応器底部より排出された重合液は、引き続き、第2、第3の竪型攪拌反応器(容量100L)及び第4の横型反応器(容量150L)に逐次連続供給され、第4反応器底部のポリマー排出口から抜き出された。次に、溶融状態のままで、このポリマーを2軸押出機に送入し、p−トルエンスルホン酸ブチル(触媒として使用した炭酸セシウムに対して4倍モル量)を連続して混練し、ダイからストランド状で抜き出し、カッターで切断し、Mv=25,500の分岐化PCペレットを得た。第2〜第4反応器での反応条件は、夫々、第2反応器(240℃、2.00×10Pa、75rpm)、第3反応器(270℃、66.7Pa、75rpm)、第4反応器(290℃、67Pa、5rpm)とし、反応の進行と共に、高温、高真空、低攪拌速度に条件設定した。また、反応の間は、第2と3反応器の平均滞留時間が60分、第4反応器の平均滞留時間が90分となる様に液面レベルの制御を行い、また、同時に副生するフェノールの留去も行った。
上記運転を連続して5ヶ月間行い、その後、DPC/BPAモル比を徐々に1.090まで上昇し、炭酸セシウム水溶液の供給量を半分とし、かつ、第4反応器の温度を低下し、約1週間に亘り、Mv=15,000の光学グレードペレットを製造し続けた。この間、得られたペレットには白色異物が混入しており、その部分のみを採取し、DSCを測定した結果、295℃の融点が観測され、PCが一部結晶化していることが確認された。
また、上記の運転終了後、反応器内のポリマーを排出し、DPC・BPA混合液を約40L移送して残ポリマーを置換した後、反応装置内の残液を完全にパージした。その後、反応装置を180℃まで冷却し、各反応器にフェノールを合計100kg供給し、180℃、1気圧条件で反応器内を1hr洗浄し、反応装置内に付着しているポリマーを解重合した。その後、フェノール洗浄廃液を均一とし一部サンプリングして、分岐構造単位量を定量した。その後、前述した方法と同様に、分岐化PCを製造したが、フィッシュアイ数は約1ヶ月で1,600個まで増加した。恐らく、上記条件では反応装置の洗浄が十分でなく、付着物の劣化がある程度進行してしまうと、却って洗浄処理にかなりの時間が必要であると言える。
運転初期、1ケ月後、2ケ月後、3ケ月後、4ケ月後、5ケ月後における運転条件を表1に示し、経時で得られたペレット及び成形品の評価結果ならびにフェノール洗浄液の分析結果を表2に示す。
実施例1:
参考例1の運転終了後、反応装置にフェノールを合計100kg供給し、全反応器内を180℃、1気圧条件下で1日洗浄し、洗浄廃液を各部よりパージした後、系内を窒素で完全に置換して、参考例1と同様にして分岐化PCを製造した。そして、PCペレットのフィッシュアイ数を24時間毎に連続的に測定した。運転開始から3ヶ月が経過した時点におけるフィッシュアイ数は1320個であり、その時点で運転を一時的に停止し、第3および第4反応器廻りの反応装置の洗浄操作に入った。なお、第3反応器におけるポリマーの粘度平均分子量は8,000、第4反応器におけるポリマーの粘度平均分子量は25,600であった。
先ず、第3および第4反応器の残存ポリマーを移送し、重合原料であるDPC・BPA混合液を約20L移送して残ポリマーを置換した後、反応装置内の残液を完全にパージした。その後、反応装置を180℃まで冷却し、各反応器にフェノールを合計50kg供給して反応器内を180℃、1気圧条件で1hr洗浄し、反応装置内に付着しているポリマーを解重合した。その後、フェノール洗浄廃液を均一とし一部サンプリングして、分岐構造単位量を定量した。その後、前述した方法と同様に、PCペレットのフィッシュアイ数を24時間毎に連続的に測定しつつ、分岐化PCを約1年製造した。フィッシュアイ数の測定結果に基づく洗浄操作は結果的に3ヶ月毎に導入した。運転途中に、光学グレードのPCを製造したが、参考例1に示した様な白色異物は一切観察されず、高品質のPCを長期間安定して製造することが出来た。
運転初期、3ケ月後、6ケ月後、9ケ月後、12ケ月後における運転条件を表1に示し、経時で得られたペレット及び成形品の評価結果ならびにフェノール洗浄液の分析結果を表3に示す。
実施例2:
実施例1の運転終了後、異なるグレードのPCを製造するために次の要領で切替運転を行った。すなわち、実施例1において、触媒、第3反応器のMv及び第4反応器の温度に関してのみ表4に示す様に変更した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行い、Mvが約21,000の一般グレードとMvが約25,500の分岐グレードを1ヶ月毎に交互に製造した。同一グレードのフィッシュアイ数が高くなり、1380個となった6ヶ月後の時点で、以下に記す洗浄を行い、その後、同様に4ケ月運転を継続した。その後、表1及び表4に記載の条件でMvが約25,500の分岐グレードを約2ヶ月製造した。その間に、得られたペレットの評価結果などを表5に示す。但し、約1ヶ月
経過した時点におけるフィッシュアイ数は1500個であり、その時点で運転を一時的に停止し、第3および第4反応器廻りの反応装置の洗浄操作に入った。
上記洗浄操作は、実施例1と同様に、運転を一時的に停止した後、第3および第4反応器廻りの反応装置について行った。先ず、第3および第4反応器の残存ポリマーを移送し、重合原料であるDPC・BPA混合液を約20L移送して残ポリマーを置換した後、反応装置内の残液を完全にパージした。その後、反応装置を180℃まで冷却し、各反応器にフェノールを合計50kg供給して反応器内を180℃、1気圧条件で1hr洗浄し、反応装置内に付着しているポリマーを解重合した。その後、フェノール洗浄廃液を均一とし一部サンプリングして、分岐構造単位量を定量した。
Figure 0005196712
Figure 0005196712
Figure 0005196712
Figure 0005196712
Figure 0005196712

Claims (5)

  1. 複数基の反応器から成る反応装置を使用し、触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態で重合して芳香族ポリカーボネートを製造する方法であって、反応器の気相部の露出部に付着しているポリマーの除去操作を含み、当該除去操作においては、最終反応器から導出される芳香族ポリカーボネートから経時的に試料を採集し、130℃で5時間乾燥した後に320℃で押出成形し、幅140mm、厚さ70μmのフィルムを製膜し、光学式異物検査装置((株)ダイアインスツルメンツ製「GX40K」)を使用し、フィルムの中心から選択された幅80mm×長さ1.7m×厚さ70μmのフィルムのフィッシュアイ数(サイズ50〜500μm)を以下の方法にて測定し、当該フィッシュアイ数の測定値に基づき、最終反応器についてのポリマーの除去操作の時期を決定し、先ず、反応装置の運転を一時的に停止し、次いで、付着ポリマーの除去操作が行われる反応器内に存在するプレポリマー又はポリマーを次工程に移送する操作と、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合して除去する操作とを行ない、その後、反応装置の運転を再開することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
    <フィッシュアイ数の測定法>
    800mVの光量を使用し、吸収された100〜300mVの光量の範囲におけるフィッシュアイ数を(A)、300mV以上の光量の範囲の数を(B)として、次の式より算出する。但し、測定は2回行い、その平均値を求める。
    フィッシュアイ数=(A)−(B)
  2. 付着ポリマーの除去操作が行われる反応器内に存在するプレポリマー又はポリマーを次工程に移送する操作を行なった後、ポリマーの付着部にフェノール類またはフェノール類含有媒体を供給して付着ポリマーを解重合して除去する操作を行なう前に、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合液で反応器を置換洗浄する請求項1に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
  3. 重合条件の変更によって異種グレードの芳香族ポリカーボネートを製造する方法であって、1つのグレードとして粘度平均分子量20,000以上の分岐化ポリカーボネートを含み、分岐化ポリカーボネートにおける、下記式(a)で表される構造単位1モルに対する下記式(b)〜(e)で表される分岐構造単位の1又は2以上の合計のモル数の比が0.2〜1.0モル%の範囲である請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
    Figure 0005196712

    (上記式(a)〜(e)において、Xは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、または、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−SO−の群から選択される2価の基である。
  4. 前記分岐化ポリカーボネートのJIS K 7210に準拠して測定され、下記式(1)で表される分岐化ポリカーボネートのフローレイト比(MVR−R)が15〜40の範囲である請求項3に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
    Figure 0005196712
  5. 分岐化ポリカーボネートを製造する際に使用するエステル交換触媒の割合が芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対する金属量として1〜5μモルのアルカリ金属化合物および/又はアルカリ土類金属化合物である請求項3〜5の何れかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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