JP5196256B2 - エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れ、銅張積層板やビルドアップ接着フィルムに適するエポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂を主剤とする硬化性組成物は、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れた硬化物を与えることから、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ接着フィルム、塗料、注型材料用途等に好適に用いられている。これらの用途のうち、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ接着フィルムなどの電気部品、電子部品の技術分野では、樹脂材料に対して難燃性能が求められており、例えば、難燃性を付与するために臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、及びは難燃助剤として三酸化、四酸化、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物が配合されている。然し乍ら、近年の環境、安全への取り組みが加速する中で、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系の難燃剤や、発ガン性が疑われているアンチモン化合物は使用が避けられる傾向にあり、これらに代わる環境負荷の低い新規の難燃化方法の開発要求が強くなっている。
さらに近年の技術革新に伴う耐熱性、耐湿性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張等を高いレベルで兼備する熱硬化性樹脂組成物が求められており、このため、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール樹脂にも耐熱性、耐湿性、難燃性、低誘電率等の付加価値の高い性能が求められており、特にハロゲンフリーで高度な難燃性を持つ材料の開発が強く要求されている。
そのため、従来より、ハロゲンフリーで優れた難燃性を発現する熱硬化システムとして、エポキシ樹脂の硬化剤に分子構造内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂を用いる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
然し乍ら、これらの分子構造内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂は、リン系難燃剤などを併用すれば良好な難燃性を発現するものの、添加系難燃剤や難燃助剤の併用なしには十分な難燃性を発現するには至らないものであった。加えて、近年の電子部品における高周波化の傾向は著しく、半導体封止材や銅張積層板、ビルドアップ用接着剤フィルムなどの絶縁材料にはより誘電率や誘電正接の低い樹脂材料が求められているところ、前記した分子構造内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂は、その硬化物における誘電率や誘電正接が高く、このような要求への対応が困難なものであった。
特許第3975552号報公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物において優れた難燃性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった誘電特性に優れるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、エポキシ樹脂用の硬化剤として、アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化した分子構造を有する活性エステル樹脂を用いることにより、その硬化物において優れた難燃性、具体的には添加系難燃剤又は難燃助剤を使用しなくとも優れた難燃性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった誘電特性も良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(I)、及び、アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化した分子構造を有する活性エステル樹脂(II)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、上記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
本発明によれば、硬化物において優れた耐熱性及び難燃性を与えるエポキシ樹脂組成物、及び、その硬化物を提供できる。
このため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に、銅張積層板用樹脂組成物、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、ビルドアップ接着フィルムなど高度に難燃性と耐熱性が要求される用途に適するものである。
本発明のエポキシ樹脂組成物で用いるエポキシ樹脂(I)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、
ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、下記構造式
Figure 0005196256

で表される4官能ナフタレン型エポキシ樹脂等の分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂、及びビスフェニールA型エポキシ樹脂を、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記したエポキシ樹脂(A)のなかでも、特に耐熱性の点から、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、分子構造中にリン原始を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
また、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を高くして耐熱性を高めるには、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基当量は700g/eq.以下、とりわけ500g/eq.以下であることが好ましい。
これらのなかでも特にノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及びキサンテン型エポキシ樹脂が、難燃性や誘電特性に優れる点から特に好ましい。また、ビルドアップ接着フィルム用途では、エポキシ当量150〜500g/当量のビスフェノール型エポキシ樹脂が柔軟性の点から好ましく、更に4官能ナフタレン型エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
次に、本発明で用いる活性エステル樹脂(II)は、アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化した分子構造を有する。
このように活性エステル樹脂(II)中にトリアジン構造を有することから優れた難燃性を発現させることができる。加えて、アルキルエステル構造又はアリールエステル構造を活性エステル構造として有することから、硬化物の誘電率及び誘電正接を従来になく低減できると共に、このような活性エステル構造を有することから、従来のトリアジン環含有フェノール樹脂を硬化剤として用いた場合に比べて、難燃性が更に向上する。
ここで、トリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化する割合は、前記トリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基の40〜95%の範囲であることが、硬化性及び難燃性の向上効果の点から好ましい。また、トリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化する割合は、原料として用いたトリアジン環含有フェノール樹脂の理論水酸基量(モル数)に対する、反応に供されたエステル化剤(塩化ベンゾイル)のモル数として算出することができる。
また、前記活性エステル樹脂(II)中の窒素原子の含有量は3〜20質量%となる割合であることが、有機溶剤への溶解性が良好なものとなり、銅張積層板用ワニス又はビルドアップ接着フィルム用途に特に適した材料となる点から好ましい。ここで、前記活性エステル樹脂(II)中の窒素原子の含有量は、該樹脂(II)を製造する際に用いた各原料の仕込量から算出される値である。これらのなかでも特に難燃性の点から3〜8質量%であることが特に好ましい。本発明ではこのように比較的窒素原子含有率が低いにも拘わらず、極めて良好な難燃性を発現できることは特筆すべき点である。また、耐熱性の点からは、フェノール類としてフェノールを用い、かつ、活性エステル樹脂(II)中の窒素原子の含有量が8〜20質量%の範囲であることが好ましい。
ここで、フェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化して得られるアルキルエステル又はアリールエステルを構成するアルキル基又はアリール基としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル等の炭素原子数1〜4のアルキル基、或いは、フェニル基、ビフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、i−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基で核置換したフェニル基が挙げられる。これらのなかでも特に耐熱性の点から、アリール基であることが好ましい。
ここで活性エステル樹脂(II)の原料となる、アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂は、下記構造式1又は2
Figure 0005196256

(式中、Rは、メチル基、フェニル基、又はヒドロキシカルボニルフェニル基を表し、Rは、メチル基又は水素原子を表し、Rは、メチル基、フェニル基、水素原子を表す。)
Figure 0005196256

で表される構造部位が、下記構造式3
Figure 0005196256
(式中、Rは、メチル基又は水素原子を表し、Rは、メチル基、フェニル基、水素原子を表す。)
で表される構造部位を介してフェノール類、又は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応物と結合した分子構造を有するものであり、具体的には、フェノール類(以下、これを「フェノール類(x1)」と表記する)と、アミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(以下、これを「トリアジン化合物(x2)」と表記する)と、アルデヒド類(以下、これを「アルデヒド類(x3)」と表記する)とを反応させて得られる分子構造であることが硬化物の硬化性及び難燃性が良好となる点から好ましい。
ここで、前記フェノール類(x1)は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール等のキシレノール類等の一価フェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(ジヒドロキシナフチル)メタン、テトラメチルビフェノール、ビフェノール、ヘキサメチルビフェノール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類等の二価フェノール類;トリスヒドロキシフェニルメタン等の三価フェノール類が挙げられる。
これらのなかでも、特にフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール類、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6−キシレノール、レゾルシン、ハイドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが、工業的生産が容易であり、かつ、硬化性に優れフェノール樹脂(II)が得られる点から好ましく、とりわけフェノール、o−クレゾールが好ましい。
アミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(トリアジン化合物(x2))は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、カルボキシルフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;カルボキシルナフチル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;カルボキシルビフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンで表わされる化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に難燃性の点からメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンが好ましく、また、耐熱性の点からカルボキシルフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンが好ましい。
前記アルデヒド類(x3)は、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−ヒドロキシビフェニルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、5−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、7−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドなどのヒドロキシル基置換芳香族アルデヒドが挙げられる。これらの中でも、特に工業的供給安定性、得られる硬化物の耐熱性、難燃性、誘電特性に優れる点からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
前記したトリアジン環含有フェノール樹脂は、上記(x1)〜(x3)の各成分を反応させて得られるものであるが、具体的には、フェノール類(x1)、トリアジン化合物(x2)、及びアルデヒド類(x3)を無触媒あるいは触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。また、各原料の反応順序も特に制限はなく、フェノール類(x1)、アルデヒド類(x3)をまず反応させてからトリアジン化合物(x2)を加えてもよいし、逆にアルデヒド類(x3)、トリアジン化合物(x2)を反応させてからフェノール類(x1)を加えて反応させてもよい。或いは、同時に全ての原料を加えて反応させてもよい。
この時、フェノール類(x1)に対するアルデヒド類(x3)のモル比は特に限定されるものではないが、好ましくはアルデヒド類(x3)/フェノール類(x1)=0.1〜1.1(モル比)であり、より好ましくは前記比として0.2〜0.8である。
フェノール類(x1)に対するトリアジン化合物(x2)とのモル比は、反応系が均一であって、かつ、反応物も均一になる点、及び得られる硬化物の架橋密度が適当であり、硬化物の物性に優れる点から、トリアジン化合物(x2)/フェノール類(x1)=0.03〜1.50(モル比)となる範囲であることが好ましく、特にトリアジン化合物(x2)/フェノール類(x1)=0.03〜0.50(モル比)であることが好ましい。
また、触媒を使用する場合、塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、およびこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等が挙げられ、酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸、燐酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、あるいは酢酸亜鉛などの2価金属塩等が挙げられる。ここで、本発明のエポキシ樹脂組成物を電気電子材料用の樹脂として使用する場合には、金属などの無機物が触媒残として残ないようにすることが好ましいことから、塩基性の触媒としてはアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用することが好ましい。
また、上記反応は反応制御の面から反応を各種溶媒の存在下で行ってもよい。必要に応じて中和、水洗して塩類などの不純物の除去を行ってもよいが、無触媒あるいは触媒にアミン類を使用した場合は不純物の除去は行わなくてもよい。
反応終了後、縮合水、未反応のアルデヒド類(x3)、フェノール類(x1)、溶媒等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、メチロール基を実質的に含まないトリアジン環含有フェノール樹脂とすることが好ましく、そのため120℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。また120℃以上の温度であれば充分時間をかけることによりメチロール基を消滅させることができるが、効率的に消滅させるにはより高い温度、好ましくは150℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。この時高温においてはノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい、加熱とともに蒸留することが好ましい。
この様にして得られるトリアジン環含有フェノール樹脂は、該樹脂中、残留する未反応フェノール類(x1)の含有率が3質量%以下であることが硬化物の耐熱性や耐湿性が良好なものとなる。
また、上記したトリアジン環含有フェノール樹脂は、特に、軟化点75〜150℃の範囲であることが難燃性と耐熱性とのバランスに優れる点から好ましい。ここで軟化点は、環球法(「JIS K7234−86」に準拠、昇温速度が5℃/分)にて測定した値である。
次いで、この様にして得られたトリアジン環含有フェノール樹脂に、アルキルエステル化剤又はアリールエステル化剤を反応させることにより活性エステル樹脂(II)を得ることができる。ここで、トリアジン環含有フェノール樹脂に反応させるアルキルエステル化剤又はアリールエステル化剤としては、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられるが、耐熱性の点から安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが好ましい。
そして、トリアジン環含有フェノール樹脂と、アルキルエステル化剤又はアリールエステル化剤とを反応させる方法は、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、トリアジン環含有フェノール樹脂と、アルキルエステル化剤又はアリールエステル化剤とを混合し、前記アルカリ触媒又はその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0〜30%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
このようにして得られる活性エステル樹脂(II)は、軟化点50〜150℃の範囲のものであることが難燃性及び耐熱性の点からから好ましい。ここで軟化点は、環球法(「JIS K7234−86」に準拠、昇温速度が5℃/分)にて測定した値である。
このようにして得られる活性エステル樹脂(II)は、通常、有機溶媒溶液として得られる為、銅張積層板用ワニスやビルドアップ接着フィルムとして用いる場合には、そのままで他の配合成分と混合し、更に、適宜、有機溶媒量を調節して目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記活性エステル樹脂(II)の配合量は、前記エポキシ樹脂(I)中のエポキシ基と、活性エステル樹脂(II)中の活性水素とエステル結合との合計との比率が、前者のエポキシ基/後者の活性水素及びエステル結合のモル比で0.1〜1.2となる配合割合、特に0.3〜0.8となる配合割合であることが、難燃性及び誘電特性が良好なものとなる点から好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤として前記活性エステル樹脂(II)の他、本発明の効果を損なわない範囲でアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物など、その他のエポキシ樹脂用硬化剤(II’)を併用してもよい。この場合、硬化剤(II’)は、前記活性エステル樹脂(II)の一部を硬化剤(II’)に置き換えて使用することができる。即ち、硬化剤(II’)を併用する場合、該硬化剤(II’)中の活性水素と、活性エステル樹脂(II)中の活性水素及びエステル結合との合計が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1モルに対して、0.1〜1.2となる割合であることが好ましい。また、硬化剤(II’)は、活性エステル樹脂(II)との合計質量に対して、50質量%以下となる割合で使用することができる。
ここで使用し得る、アミン系化合物は、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。アミド系化合物は、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系化合物は、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系化合物は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。また、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂は、具体的には、メラミンやベンゾグアナミン等のアミノ基含有トリアジン化合物と、フェノール、クレゾール等のフェノール類と、ホルムアルデヒドとの共重合体が挙げられる。
これらの中でも、特に、硬化物の線膨張係数がより低くなり、熱的衝撃及び物理的衝撃に強く靱性に優れる点から多価フェノール系化合物が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した各成分に加え、更に、硬化促進剤(III)を併用してもよい。
ここで使用し得る硬化促進剤(III)は、イミダゾール類、三級アミン類、三級ホスフィン類等が挙げられる。
ここでイミダゾール類としては、具体的には2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノメチル−2−メチル−イミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等の他、マスク化イミダゾール類が挙げられる。
三級アミン類としては、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、テトラメチルペンタンジアミン、テトラメチルヘキサジアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジメチルアニシジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N′−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられる。
三級ホスフィン類として具体的には、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性がより高くなる点から三級アミン類が好ましい。
また、硬化促進剤(III)の添加量は、目標とする硬化時間等によって適宜調整することができるが、前記したエポキシ樹脂成分、硬化剤成分及び前記硬化促進剤(III)の総質量に対して0.1〜2質量%となる範囲であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、使用用途に応じて、上記した各成分に加え、更に有機溶剤(IV)を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を銅張積層板用ワニスとして用いる場合には基材への含浸性が改善される他、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、特にビルドアップ接着フィルムとして用いる場合には、基材シートへの塗工性が良好になる。ここで使用し得る有機溶剤(IV)は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤(IV)の使用量は、銅張積層板用ワニスとして用いる場合には基材への含浸性が改善される他、組成物中の不揮発分が50〜70質量%となる範囲であることが好ましい。一方、ビルドアップ接着フィルム用ワニスとして用いる場合、組成物中の不揮発分が30〜60質量%となる範囲であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、使用用途に応じ、上記した各成分の他、適宜、無機質充填材、改質剤、難燃付与剤等を配合してもよい。
ここで用いる前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらのなかでも特に溶融シリカが無機充填材の充填率を高めることができる点から好ましい。ここで、溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
無機充填材の配合割合は用途や所望特性によって、望ましい範囲が異なるが、例えば半導体封止材用途に使用する場合は、線膨張係数や難燃性を鑑みれば高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物全体量に対して65〜95質量%の範囲、特に85〜95質量%の範囲であることが好ましい。また導電ペーストや導電フィルムなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
前記改質剤として使用される熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂としては種々のものが全て使用できるが、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが例示できる。
前記難燃付与剤は、例えば、ハロゲン化合物、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物などが挙げられる。具体的には、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂やブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのハロゲン化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6ジメチルフェニル)ホスフェート、レゾルシンジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、赤リン、リン酸グアニジン、ジアルキルヒドロキシメチルホスホネートなどの縮合リン酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミンなどの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が挙げられる。
然しながら、本発明のエポキシ樹脂組成物は、環境負荷の高いハロゲン系の難燃剤を使用しなくとも優れた難燃効果を発現することを特徴とする為、上記した難燃付与剤を用いる場合には、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物を用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物の熱硬化の条件は特に制限されるものではなく、通常のフェノール樹脂を硬化させる条件で硬化せしめることが可能であり、樹脂成分が軟化する温度以上であれば問題なく、通常、120℃以上250℃以下の温度で行うことができる。特に成形性が良好となる点から170〜220℃の温度範囲であることが好ましい。
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した通り、銅張積層板用樹脂組成物、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、ビルドアップ接着フィルム等として有用であるが、これらの他、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ用樹脂組成物、摩擦材用結合剤、導電ペースト、樹脂注型材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料等に用いることもできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物から銅張積層板用樹脂組成物を製造する方法は、具体的には、前記エポキシ樹脂(I)、及び前記活性エステル樹脂(II)を必須成分とし、更に、必要により、有機溶剤(IV)、硬化促進剤(III)を配合してワニス化する方法が挙げられる。ここで該ワニスは不揮発分が50〜70質量%となる範囲であることが繊維基材への含浸性とプリプレグの生産性の点から好ましい。
次に、上記銅張積層板用樹脂組成物から銅張積層板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
上記方法により得られたワニスを紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの繊維基材に含浸させ、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。この際、用いるエポキシ樹脂組成物と補強基材の配合割合は、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調整することが好ましい。
得られたプリプレグを積層し、更に銅箔を重ねて、加熱圧着させることにより、目的とする銅張積層板を得ることができる。ここで加熱圧着させる方法は、具体的には、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃なる温度条件で行う方法が挙げられる。また、加熱圧着は、10分〜3時間行うことが好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料としても極めて有用である。
かかるビルドアッププリント基板の層間絶縁材料は、前記したワニス化の方法のなかでも、特に、前記エポキシ樹脂(I)、前記活性エステル樹脂(II)を必須成分とし、更に、必要により、前記有機溶剤(IV)、硬化促進剤(III)を配合する方法により調整することができる。ここで該ワニスは不揮発分が30〜60質量%となる範囲であることが、特に塗工性やフィルム成形性の点から好ましい。このようにして得られたビルドアップ基板用層間絶縁材料からビルドアップ基板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
すなわち、該ビルドアップ基板用層間絶縁材料を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させ、次いで、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法は、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基板を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましく、また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
また、前記ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料は、前記した塗料状の材料のみならずビルドアップ接着フィルムとして用いることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂成分自体が優れた耐熱性を発現することから、ビルドアップ接着フィルムとして特に有用である。
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmの範囲であり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmの範囲であることが好ましい。
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
また、前記した前記ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料や、ビルドアップ接着フィルム用途においては、本発明における優れた耐熱性を発現するという特質から、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵基板における絶縁材料としてとりわけ有用である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した通り、硬化物において優れた難燃性を発現すると共に、低誘電正接、低誘電率といった誘電特性に優れる点から銅張積層板用樹脂組成物、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料、ビルドアップ接着フィルム等として有用である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、その他電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ用樹脂組成物、摩擦材用結合剤、導電ペースト、接着剤、絶縁塗料、樹脂注型材料等に用いることもできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を電子部品の封止材用樹脂組成物として用いる場合の具体的用途は、半導体封止材料、半導体のテープ状封止剤、ポッティング型液状封止剤、アンダーフィル用樹脂、半導体の層間絶縁膜等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材料用に調整するためには、前記前記エポキシ樹脂(I)、前記活性エステル樹脂(II)、必要に応じて配合されるその他のカップリング剤、離型剤などの添加剤や無機充填材などを予備混合した後、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合する手法が挙げられる。半導体のテープ状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を加熱して半硬化シートを作製し、封止剤テープとした後、この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をレジストインキ用樹脂組成物として用いる方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂(I)と、前記活性エステル樹脂(II)に、更に、有機溶剤(IV)、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。ここで用いる有機溶剤(IV)としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を摩擦材用結着剤に用いる場合、前記エポキシ樹脂(I)、前記活性エステル樹脂(II)に加え、更に、ヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド等の加熱によりホルムアルデヒドを発生する物質を用い、その他、前記硬化促進剤を配合することによって摩擦材用結着剤を製造することができる。かかる摩擦材用結着剤を用いて摩擦材を調整するには、上記各成分に充填剤、添加剤等を添加、熱硬化させる方法、繊維基材に上記各成分を含浸させ熱硬化させる方法が挙げられる。ここで用いる充填剤、添加剤は、例えばシリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、カシュー油重合物、二硫化モリブデン、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、黒鉛、グラファイト、ゴム粒、アルミニウム粉、銅粉、真ちゅう粉等が挙げられる。
更にポッティング型液状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を必要に応じて溶剤に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル用樹脂として使用する方法は、例えば、予め基板ないし半導体素子上にワニス状のエポキシ樹脂組成物を塗布、次いで半硬化させてから、加熱して半導体素子と基板を密着させ、完全硬化させるコンプレッションフロー法等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体の層間絶縁材料として使用する方法は、例えば、前記エポキシ樹脂(I)、前記活性エステル樹脂(II)に加え、硬化促進剤、シランカップリング剤を配合して組成物を調整し、これをシリコン基板上にスピンコーティング等により塗布する方法が挙げられる。この場合、硬化塗膜は半導体に直接接することになるため、高温環境下において線膨張率の差によるクラックが生じないよう、絶縁材の線膨張率を半導体の線膨張率に近づけることが好ましい。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物から導電ペーストを調整する方法は、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を接着剤用樹脂組成物に調整する方法は、例えば、前記エポキシ樹脂(I)、前記活性エステル樹脂(II)、必要に応じて樹脂類、硬化促進剤、溶剤、添加剤等を室温または加熱下で混合ミキサー等を用いて均一に混合する方法が挙げられ、各種の基材に塗布した後、加熱下に放置することによって基材の接着を行うことができる。
本発明の硬化物は、以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物を成形硬化させて得られるものであり、用途に応じて積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルム等として使用できる。前記した通り、プリント基板用の銅張積層板、及びビルドアップ接着フィルムとして特に有用である。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」「%」は質量基準である。なお、合成例における軟化点は下記の方法にて測定したものであり、窒素原子含有率は、使用原料の仕込み量からの計算値である。
[軟化点測定法]
環球法(「JIS K7234−86」に準拠、昇温速度が5℃/分)にて測定した。
合成例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにフェノール/メラミン/ホルムアルデヒド共縮合樹脂(DIC製「LA−7052」、水酸基当量:120(固形分値)、軟化点115℃(固形分値)、不揮発分60%(MEKカット)、窒素原子含有率8質量%)200gとメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と略記する。)563.8gを仕込み、系内の減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの0.54gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20質量%水酸化ナトリウム水溶液181.8gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、整地分液して水層を取り除いた。水槽のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(A−1)を合成した。この樹脂(A−1)の官能基当量214.6、軟化点は114℃、窒素原子含有率4.5質量%であった。
合成例2
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにフェノール/メラミン/ホルムアルデヒド共縮合樹脂(DIC製「LA−1356」、水酸基当量:146(固形分値)、軟化点135℃(固形分値)、不揮発分60%(MEKカット)、窒素原子含有率19質量%)243.3gとMIBK624.4gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの0.60gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液181.8gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、整地分液して水層を取り除いた。水槽のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(A−2)を合成した。この樹脂(A−2)の官能基当量240.6、軟化点は125℃、窒素原子含有率11.5質量%であった。
合成例3
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにクレゾール/メラミン/ホルムアルデヒド共縮合樹脂(DIC製「LA−3018」、水酸基当量:151(固形分値)、軟化点135℃(固形分値)、窒素原子含有率18質量%)151gとMIBK631.8gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイドの0.61gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液181.8gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、整地分液して水層を取り除いた。水槽のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(A−3)を合成した。この樹脂(A−3)の官能基当量245.6、軟化点は128℃、窒素原子含有率11.0質量%であった。
実施例1〜3及び比較例1〜3
下記表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂及びエステル化合物を配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合し、均一な樹脂溶液を得た。これをアルミシャーレに移し、120℃で乾燥させてメチルエチルケトンを除去して半硬化物とした。次いで、15cm×15cm×2mmの型枠に該半硬化物を入れ真空プレス成形(温度条件:200℃、圧力:40kg/cm、成形時間:1.5時間)して板状の硬化物を得た。これを試験片として用い、以下の各種の評価を行った。結果を表1に示す。
[耐熱性試験]
ガラス転移温度: 試験片をDMA法にて測定。昇温スピード3℃/分。
[難燃性試験]
試験片を1cm×10cm×2mmに切り出したものの片端に10秒間着火。自然消火後の試験片状態を目視にて観察
◎: 実質的に炭化せず
○: 炭化するが試験片形状を維持
×: 完全燃焼。若しくは、完全消失
[誘電率及び誘電正接の測定]
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
Figure 0005196256

表1中の略号は以下の通りである。
「EXB−9460」:オリゴマー型活性エステル樹脂
エステル化当量:223g/eq 軟化点130℃
DIC株式会社製
「TD−2090」:フェノールノボラック樹脂
水酸基当量:105g/eq、軟化点120℃
「LA−7052」:DIC(株)製フェノール/メラミン/ホルムアルデヒド共縮合樹脂 水酸基当量:120g/eq. 軟化点115℃

Claims (6)

  1. エポキシ樹脂(I)、及び、アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるトリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基をアルキルエステル化又はアリールエステル化した分子構造を有する活性エステル樹脂(II)を必須成分とし、前記トリアジン環含有フェノール樹脂が、
    下記構造式1又は2
    Figure 0005196256
    (式中、R は、メチル基、フェニル基、又はカルボキシフェニル基を表す。)
    Figure 0005196256
    で表される構造部位が、下記構造式3
    Figure 0005196256
    (式中、R は、メチル基又は水素原子を表し、R は、メチル基、フェニル基、水素原子を表す。)
    で表される構造部位を介してフェノール類、又は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応物と結合した分子構造を有するものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記活性エステル樹脂(II)が、前記トリアジン環含有フェノール樹脂のフェノール性水酸基の40〜95%をアルキルエステル化又はアリールエステル化した分子構造を有するものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記活性エステル樹脂(II)が、該樹脂中窒素原子を3〜20質量%となる割合で含有するものである請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記活性エステル樹脂(II)が、軟化点75〜150℃の範囲のものである請求項1、2、又は3記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記エポキシ樹脂(I)及び前記活性エステル化合物(II)に加え、更に、硬化促進剤(III)を含有する請求項1〜の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1〜の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
JP2008219588A 2008-08-28 2008-08-28 エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物 Active JP5196256B2 (ja)

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