JP5196183B2 - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電アクチュエーター - Google Patents

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Description

本発明は、ノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにこの液体噴射ヘッドに用いられる圧電アクチュエーターに関する。
液体噴射ヘッドの代表例としては、圧電アクチュエーターの変位を利用してノズルからインク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。具体的には、インクジェット式記録ヘッドは、インク滴を噴射するノズルと連通する圧力発生室の一部が振動板で構成され、この振動板を圧電素子(圧電アクチュエーター)により変形させて圧力発生室のインクを加圧することで、ノズルからインク滴を噴射させている。
このような圧電アクチュエーターを構成する圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、下電極と上電極との2つの電極で挟んで構成されたものがある。例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィー法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−127366号公報 国際公開第2002/029129号パンフレット
このような圧電素子(圧電アクチュエーター)は、変位を繰り返すことにより経時的に変位量が低下してしまうという問題がある。インクジェット式記録ヘッドにおいては、このような圧電素子の変位量の低下に伴って、インク滴の噴射特性が変化して印刷品質が低下してしまう虞がある。
このように圧電素子の変位量が低下する原因の一つとしては、圧電素子を駆動する際に、圧電体層を構成する圧電材料の分極が一部固定されて残り(残留分極)、この残留分極が圧電素子の繰り返し駆動に伴って徐々に増加してしまうことが挙げられる。
ここで、圧電体層がイオン欠損のある柱状結晶領域とイオン欠損のない柱状結晶領域とを有するようにしたものがある。具体的には、柱状結晶領域が電極の面方向と直交する方向に形成されたものがある(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2には、このような構成により圧電体層の残留応力が緩和されることは記載されているが、残留分極に関する記載はない。特許文献2に記載の構成としても、やはり残留分極に起因して圧電素子の変位量は低下すると思われる。
なお、上記のような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドが具備する圧電アクチュエーターだけではなく、液体噴射ヘッド以外の装置に搭載される圧電アクチュエーターにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧電素子の変位低下を抑制して耐久性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電アクチュエーターを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、ノズルに連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室内に前記ノズルから液滴を噴射させるための圧力を発生させる圧電素子とを具備し、前記圧電素子は、第1の電極と、該第1の電極上に形成される圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極とで構成され、前記圧電体層の内部には、当該圧電体層の面内方向に沿って脱分極領域が前記第1の電極及び前記第2の電極に接触することなく形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる本発明では、圧電体層が分極されても、脱分極領域が脱分極されると共に脱分極領域を基点として圧電体層の他の部分の脱分極も促進される。したがって、圧電素子の初期状態からの変位量の変化が小さく抑えられる。
ここで、前記圧電体層は、一般式がABOで示されるペロブスカイト構造を有し、前記脱分極領域は、前記圧電体層の構成元素が欠損している領域として存在する。これにより、圧電体層がより良好に脱分極される。
また前記圧電体層は、例えば、鉛、ジルコニウム及びチタンを少なくとも構成元素として含んでいる。これにより、圧電体層を良好に変位させることができると共に、変位量の変化が小さく抑えられる。またこの場合、脱分極領域は、圧電体層内に、鉛、ジルコニウム及びチタンが欠損する領域として存在していてもよい。
このような脱分極領域の誘電率は、当該脱分極領域を除く前記圧電体層の誘電率の95%以上であることが好ましい。これにより、圧電素子の初期変位量が低下する等、圧電素子の変位量への悪影響を抑制することができる。
また本発明は、上記のような液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置にある。かかる本発明では、耐久性や信頼性を向上した液体噴射装置を実現することができる。
さらに本発明は、基板上に設けられる第1の電極と、該第1の電極上に形成される圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極とで構成される圧電素子を具備し、前記圧電体層の内部には、当該圧電体層の面内方向に沿って脱分極領域が前記第1の電極及び前記第2の電極に接触することなく形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーターにある。
かかる本発明では、圧電体層が分極されても、脱分極領域が脱分極されると共に脱分極領域を基点として圧電体層の他の部分の脱分極も促進される。したがって、圧電素子の初期状態からの変位量の変化が小さく抑えられる。
一実施形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 一実施形態に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 一実施形態に係る圧電素子を示す拡大断面図である。 圧電素子の駆動回数と変位量との関係を示すグラフである。 一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 圧電素子の駆動回数(対数)と変位量との関係を示すグラフである。 一実施形態に係る圧電素子の変形例を示す拡大断面図である。 一実施形態に係る記録装置の概略を示す斜視図である。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には酸化膜からなる弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路13と連通路14とが隔壁11によって区画されている。また、連通路14の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバー100の一部を構成する連通部15が形成されている。
流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路13とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なおノズルプレート20の材料としては、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼などが挙げられる。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料の酸化膜からなる絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1の電極である下電極膜60と、圧電体層70と、第2の電極である上電極膜80とでからなる圧電素子300が形成されている。本実施形態では、下電極膜60を複数の圧電素子300に共通する共通電極とし、上電極膜80を各圧電素子300で独立する個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
圧電素子300を構成する下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加すると、圧電素子300(圧電体層70)に撓み変形が生じ、この撓み変形に伴って振動板(弾性膜50及び絶縁体膜55)が変形することで各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル21からインク滴が噴射される。すなわち本実施形態では、圧電素子300が振動板を変形ささせるための圧電アクチュエーターを構成している。
なお本実施形態では、圧電素子300によって弾性膜50及び絶縁体膜55で構成される振動板を変形させているが、例えば、圧電素子300の一部がさらに振動板の一部を兼ねるようにしてもよいし、圧電素子300自体が実質的に振動板として機能するようにしてもよい。
圧電体層70は、一般式がABOで示される酸化物の圧電材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適に用いられる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又はマグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等が挙げられる。圧電体層70の厚さは、製造工程でクラックが発生しない程度に薄く、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成することが好ましい。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成している。
また圧電体層70の内部には、図3に示すように、脱分極領域71が下電極膜60及び上電極膜80に接触することなく形成されている。さらに脱分極領域71は、下電極膜60と上電極膜80との間に連続することなく圧電体層70内に存在している。例えば、本実施形態では、脱分極領域71は、圧電体層70の面内方向に沿って層状に複数箇所(例えば、3箇所)に形成されている。なお圧電体層70の面内方向とは、圧電体層70の下電極膜60或いは上電極膜80が形成された表面に沿った方向をいう。換言すれば、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80の積層方向(例えば、図3中上下方向)とは直交する方向をいう。
この脱分極領域71とは、圧電素子300に電圧を印加して圧電体層70が分極された後に、脱分極が起こり易い領域をいい、具体的には、圧電体層70の構成元素が欠損している領域、例えば、酸素が欠損した酸素欠損領域として存在する。
このように圧電体層70の構成元素が欠損している領域である脱分極領域71は脱分極が起こり易く、また圧電体層70内に脱分極領域71が存在することで、脱分極領域71を基点として圧電体層70aの脱分極も促進される。
ここで、圧電体層70の材料としてPZTを用いる場合、脱分極領域71の組成は、Pb(TiZr)O3(1−x)であり0<x≦0.2であるのが好ましい。すなわち、脱分極領域71の酸素量は、圧電体層70aの酸素量よりも少なく且つ80%以上であることが好ましい。脱分極領域71の酸素量が圧電体層70aの酸素量の80%よりも少ないと、脱分極領域71の圧電特性が著しく低下してしまうため好ましくない。さらに、脱分極領域71の誘電率は、圧電体層70aの誘電率の95%以上であることが好ましい。なお脱分極領域71の酸素量が圧電体層70aの酸素量の80%よりも少ない、或いは脱分極領域71の誘電率が圧電体層70aの誘電率の95%よりも小さいと、脱分極領域71の圧電特性が著しく低下してしまうため好ましくない。
また圧電体層70に対する脱分極領域71の割合が大きい程、圧電体層70の脱分極は促進されるが、脱分極領域71の割合が大きすぎると圧電体層70全体の変位特性に悪影響を与えてしまう。このため、脱分極領域71の割合は、圧電体層70の変位特性に悪影響を与えない程度に適宜決定する必要がある。例えば、本実施形態では、脱分極領域71を圧電体層70内に3層形成するようにしたが、必要に応じて1層又は2層としてもよいし4層以上としてもよい。
このように圧電体層70内に脱分極領域71が存在することで圧電体層70の脱分極が促進されるため、圧電素子300の初期状態からの変位量の変化が小さく抑えられる。また脱分極領域71が下電極膜60と上電極膜80との間に連続することなく形成されていることで、脱分極領域71に起因する下電極膜60と上電極膜80との間でのリークや、圧電体層70の割れ等の問題が生じることもない。したがって、圧電素子300の劣化が抑えられて耐久性が向上するため、良好な印刷品質を長期に亘って維持することができる。
図4は、圧電素子の駆動回数と変位量との関係を示すグラフである。なおこのグラフは、インクジェット式記録ヘッドを製造後、後述するエージング工程を実施しない状態で測定された結果に基づく。図4に示すように、圧電体層内に脱分極領域が存在する実施例の圧電素子の変位量の低下率は、1億回駆動後において、圧電体層内に脱分極領域が存在しない比較例の圧電素子の変位量の低下率の1/2程度であった。この結果からも明らかなように、圧電体層70内に脱分極領域が形成されていることで、圧電素子300の変位量の変化を小さく抑えることができる。
なお脱分極領域71は、圧電体層70の内部に下電極膜60及び上電極膜80とは接触することなく形成されていればよいが、圧電体層70の厚さ方向中央部よりも上電極膜80側に形成されていることが好ましい。圧電体層70は、中央部より上電極膜80側が下電極膜60側よりも変位に大きく寄与するからである。これにより、圧電体層70の変位量の低下をより確実に抑制することができる。
また、このような圧電素子300を構成する各上電極膜80には、インク供給路13側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、弾性膜50及びリード電極90上には、圧電素子300を保護するための圧電素子保持部31を有する保護基板30が接合されている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。保護基板30には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部32が設けられている。リザーバー部32は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部32の一方面が封止されている。固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC等からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応する圧電素子300に電圧を印加してたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル21からインク滴が噴射する。
以下、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図5〜図7を参照して説明する。まず図5(a)に示すように、シリコンウエハーである流路形成基板用ウエハー110を熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)からなる二酸化シリコン膜51を形成し、この弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。次いで、図5(b)に示すように、例えば、白金及びイリジウム等からなる下電極膜60を絶縁体膜55の全面に亘って形成する。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。勿論、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず図5(c)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜73を成膜する。すなわち下電極膜60が形成された流路形成基板用ウエハー110上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜73を所定温度に加熱して一定時間、例えば、170〜180℃で8〜30分間、乾燥させる(乾燥工程)。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜73を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、圧電体前駆体膜73を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂する。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜73に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
そして、圧電体前駆体膜73を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜74を形成する(焼成工程)。例えば、680〜900℃の加熱を行って圧電体前駆体膜73を焼成して圧電体膜74を形成する。
なお、このような乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
そして、図5(d)に示すように、下電極膜60上に圧電体膜74の1層目を形成した段階で、下電極膜60及び1層目の圧電体膜74を同時にパターニングする。なお、下電極膜60及び圧電体膜74のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
この下電極膜60及び1層目の圧電体膜74をパターニングした後、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことで、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。例えば、本実施形態では、図6(a)に示すように、複数層、例えば、2層又は3層の圧電体前駆体膜73を形成した後、これら複数層の圧電体前駆体膜73を焼成することによって圧電体膜74を形成している。
またこのとき、圧電体層70内に脱分極領域71を同時に形成する。すなわち所定の圧電体膜74を形成する際に、酸素を実質的に含まない窒素(N)或いは水素(H)等の還元ガス雰囲気下で圧電体前駆体膜73を焼成する。これにより、圧電体膜74の表層に酸素が欠損した酸素欠損領域である脱分極領域71が形成される。なお脱分極領域71の組成比は、焼成温度や昇温レート等の各種条件を設定することができる。
そして、このような工程を複数回繰り返すことで、図6(b)に示すように、複数層(本実施形態では10層)の圧電体膜74からなると共に脱分極領域71が層状に複数形成された圧電体層70を形成することができる。
次いで図7(a)に示すように、圧電体層70上に亘って上電極膜80を形成する。次に図7(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び上電極膜80のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。次に、リード電極90を形成する。具体的には、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘って金属膜91を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介してこの金属膜91を各圧電素子300毎にパターニングすることでリード電極90を形成する。
なおその後の工程については図示を省略するが、次いで、流路形成基板用ウエハー110に複数の保護基板30が一体的に形成された保護基板用ウエハーを接合した後、流路形成基板用ウエハー110を所定の厚みに薄くする。そして流路形成基板用ウエハー110を、所定のマスクを介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウエハー110にノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハーにコンプライアンス基板を接合し、これら流路形成基板用ウエハー110等を所定のチップサイズに分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドが製造される(図2参照)。
このようにインクジェット式記録ヘッドが製造された後は、各圧電素子300を所定条件で駆動させて変位量を安定させるエージング工程を実施する。このエージング工程を実施することにより、圧電素子300を構成する圧電体層70が分極処理されると共に、振動板や圧電素子300等を構成する各層の内部応力、特に、下電極膜60の内部応力が緩和される。これにより、実使用時の圧電素子300の変位量の変動が著しく小さく抑えられる。そして、上述のように圧電体層70内に脱分極領域71が存在する場合には、このようなエージング工程の短縮を図ることができる。
図8は、図4に示したグラフの駆動回数(X軸)を対数表示したものである。またこのグラフは、駆動回数0.1〜1億回における圧電素子の変位量の変化に基づいて駆動回数1億回以降の圧電素子の変位量の変化を予測したものである。そして、この図から分かるように、実施例の圧電素子における変位量の変化の傾きは、比較例の圧電素子のものよりも明らかに小さくなっている。したがって、実施例の圧電素子は、比較例の圧電素子に比べてエージング工程を短縮することができる。例えば、ヘッドの耐久性として圧電素子の駆動回数を190億回程度と想定し、ユーザーの使用による圧電素子の変位量の低下を10nm以下にしたいとする。この条件を満たすためには、図8に示すように、比較例の圧電素子では、エージング工程において60億回程度駆動させる必要があるのに対し、実施例の圧電素子では5億回程度で済む。つまり、実施例の圧電素子では、比較例の圧電素子に比べてエージング工程を大幅に短縮することができる。さらにはエージング工程自体を行わなくて済む可能性もある。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態では、脱分極領域71が酸素欠損領域として存在する例を説明したが、脱分極領域71は、圧電体層70aの構成元素が欠損している領域として存在していればよい。すなわち、圧電体層70の構成元素である鉛、ジルコニウム又はチタンの何れかが欠損している領域として存在していてもよい。このような脱分極領域71は、例えば、圧電体層70aとは異なる組成の材料を用いることで形成することができる。
また上述の実施形態では、還元ガス雰囲気下で圧電体前駆体膜73を焼成することで脱分極領域71を形成するようにしたが、脱分極領域71の形成方法は特に限定されず、例えば、プラズマ等で圧電体膜74の表面を還元することによって形成してもよいし、圧電体膜74の間に組成の異なる材料を塗布して脱分極領域71を形成してもよい。
また、上述の実施形態では、脱分極領域71が層状に形成された例を説明したが、脱分極領域71は、層状でなくてもよく、例えば、図9に示すように、脱分極領域71Aを圧電体層70A内に点在させるようにしてもよい。このような構成としても、勿論、圧電素子300の初期状態からの変位量の変化が小さく抑えられる。また下電極膜60と上電極膜80との間に脱分極領域71が連続することなく形成されているため、脱分極領域71に起因する下電極膜60と上電極膜80との間でのリークや、圧電体層70Aの割れ等の問題が生じることもない。
なおこのように脱分極領域71Aが点在する圧電体層70Aの形成方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、圧電体層70として薄膜で形成されたものを例示したが、いわゆるバルクの圧電体層であってもよく、この場合には、圧電体層70aと脱分極領域71Aとで異なる組成の材料(粉末)を用いることで、脱分極領域71Aが点在する圧電体層70Aを形成することができる。
また本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図10に示すように、インクジェット式記録装置における記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお上述の実施形態では、液体噴射ヘッドとしてインク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドを例示すると共に液体噴射装置としてインクジェット式記録装置を例示したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
また、上述したインクジェット式記録装置として、ヘッドユニットがキャリッジに搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、例えば、インクジェット式記録ヘッド(又はヘッドユニット)が固定されて、紙等の記録シートを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、いわゆるライン式のインクジェット式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載され圧電アクチュエーターに限られず、他の装置に搭載される圧電アクチュエーターにも適用することができる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 71 脱分極領域、 80 上電極膜、 90 リード電極、 300 圧電素子

Claims (8)

  1. ノズルに連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室内に前記ノズルから液滴を噴射させるための圧力を発生させる圧電素子とを具備し、
    前記圧電素子は、第1の電極と、該第1の電極上に形成される圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極とで構成され、
    前記圧電体層の内部には、当該圧電体層の面内方向に沿って脱分極領域が前記第1の電極及び前記第2の電極に接触することなく形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記圧電体層は、一般式がABOで示されるペロブスカイト構造を有し、前記脱分極領域は、前記圧電体層の構成元素が欠損している領域であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記圧電体層は、鉛、ジルコニウム及びチタンを少なくとも構成元素として含むことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記脱分極領域が、前記圧電体層の面内方向に沿って層状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 前記脱分極領域が、前記圧電体層内に点在していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  6. 前記脱分極領域の誘電率は、当該脱分極領域を除く前記圧電体層の誘電率の95%以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置。
  8. 基板上に設けられる第1の電極と、該第1の電極上に形成される圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極とで構成される圧電素子を具備し、
    前記圧電体層の内部には、当該圧電体層の面内方向に沿って脱分極領域が前記第1の電極及び前記第2の電極に接触することなく形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
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