JP5194956B2 - 酸性ヘパリン水溶液を調製し、保存するための容器、および酸性ヘパリン水溶液の調製方法 - Google Patents

酸性ヘパリン水溶液を調製し、保存するための容器、および酸性ヘパリン水溶液の調製方法 Download PDF

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Description

本発明は患者の血管に留置されるカテーテルの内腔内に注入される静菌効果を有する酸性ヘパリン水溶液の調製方法および酸性ヘパリン水溶液を得るために好適な医療用隔室容器に関し、特に酸性下におけるヘパリンの失活防止において、有用な調製方法、および収容容器に関する。
院内感染は、患者の生命を脅かし、また病院にとっては入院期間の延長に加えて過剰な医療費を費やす事となるため、近代医療において重要な課題となっている。
院内感染の経路は、主に(1)薬剤汚染、(2)投与経路の汚染であり、感染対策として(1)の薬剤調製時の汚染の機会を減らす為にプレフィルドシリンジ製剤が使用されたり、(2)の投与経路の汚染を減らす為に、流路がクローズド化された医療器具が開発されたりしている。
血管内留置カテーテルは、輸液製剤や薬剤を血液中へ投与する為に、血管に挿入される管である。医療現場では、血管へのアクセスとして抹消静脈カテーテルや中心静脈カテーテルが頻繁に利用されており、これらは血管留置カテーテルの代表例である。この血管内留置カテーテルは院内感染の源として問題視されており、カテーテルの局所的な感染、血管内カテーテル関連血流感染や敗血症などの感染症を引き起こしている。この対策として、非特許文献1〔「血管留置カテーテルに関連する感染予防のCDCガイドライン(米国疾病予防管理センター)」〕に示すようなガイドラインが策定されるなど、様々な取り組みがなされている。
ところで、この血管内留置カテーテルを介して長期間に渡って輸液を受けている患者の場合、入浴や就寝などの理由により、静脈留置カテーテルを留置したまま、輸液ラインを外す事が日常的に行われるが、この際にカテーテルの閉塞を防止するためにカテーテルロックが実施される。カテーテルロックとは、生理食塩液や生理食塩液で希釈したヘパリン(ヘパリン生食)をカテーテル内に充填し、一般的には約24時間封入するものである。カテーテルロックの多くは、抗凝血作用を持つヘパリン生食が使用されるが、抹消静脈カテーテルの短時間のロックには生理食塩液が使用されるケースもある。カテーテルロックによる血管内へのカテーテルの留置は、患者の針刺し頻度を減らし、医療従事者のカテーテル挿入の手間を軽減するなどの利点があり、広く行われている。
しかし、カテーテルロックの際に、カテーテル内に細菌が混入すると、体温で温められたカテーテル内で細菌が増殖してしまい、時にはバイオフィルムを形成し、感染症を引き起こす危険性がある。2002年には作り置きしていたヘパリン生食液がセラチア菌に汚染され、これをカテーテルロック溶液として投与された患者が次々と敗血症を発症し、数名の患者さんが亡くなっている。この事故を契機に、非特許文献2に示すように、カテーテルロック溶液による感染の危険性が認知され、ヘパリンのカテーテルロック溶液の院内での作り置きは原則禁止となり、プレフィルドヘパリン生食が広く使用されるようになった。
特許文献1には、1〜100単位/mLのヘパリンを含み、生理的に等張で、pHが6以上、防腐剤を含まない事を特徴とする溶液を充填したプレフィルドシリンジが開示されている。カテーテルロック溶液のプレフィルド化によって、院内調剤時の汚染の機会が減り、院内感染は減少したと考えられるが、後でデータを示すように、カテーテルロック溶液、すなわち生理食塩液やヘパリン生食は抗菌・静菌作用を持っておらず、細菌が混入すると増殖してしまうので、院内感染を根絶したとは言い難い。つまり、予めシリンジに充填されている無菌のカテーテルロック溶液であっても、輸液セットなどの投与ラインに接続して患者さんへ投与する場合、輸液セットが汚染されていたり、施術者による不適切な処置、操作によって、カテーテル内に細菌が混入するリスクがある。
そうするとカテーテルロック中に細菌が増殖し、大量の細菌が血流に入り、重篤な感染症を引き起こしてしまう。特に血管留置カテーテルの場合、カテーテルロック溶液はカテーテル内で血液と接触するため、血液に由来する栄養源により、更に細菌の増殖に適した環境となってしまう。このように、プレフィルド製剤においてもカテーテルロック中の細菌増殖によって院内感染が発生する危険性は高く、抗菌・静菌作用を持つカテーテルロック溶液が望まれている。
抗菌作用を持つヘパリン製剤として、防腐剤としてパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、クレゾール、フェノールあるいはベンジルアルコールを添加したものが販売されている。しかし、非特許文献3に示されるように、ベンジルアルコールを大量に投与されると、呼吸困難やアレルギー反応を起こすとの報告があり(Drug Intell Clin Pharm, 9, p154, 1975)、上記の有毒性の防腐剤は安全性の観点から、使われなくなっている。
血管内カテーテル関連血流感染を防止するため、抗生物質であるバンコマイシンの溶液でカテーテルの内腔のフラッシュと充填を行う抗生物質ロック法が試みられ、非特許文献4〜6に示すように、その効果が立証されている。しかし、前述のCDCガイドラインでは耐性菌を出現させる危険性から、この方法を推奨していない。
また、非特許文献7に示されるように、抗生物質のアミノサイクリンとエチレンジアミン四酢酸を含む抗凝固剤/抗菌剤の組み合わせもカテーテルロック溶液として提案され、検討されている。
特開2003−183154 Carratala J, Niubo J, Fernandez-Sevilla A, et al. Randomized, doubleblind trial of an antibiotic-lock technique for prevention of grampositive central venous catheter-related infection in neutropenic patients with cancer. Antimicrob Agents Chemother 1999;43:2200-4. Schwartz C, Henrickson KJ, Roghmann K, Powell K. Prevention of bacteremia attributed to luminal colonization of tunneled central venous catheters with vancomycin-susceptible organisms. J Clin Oncol 1990;8:1591-7. Raad II, Buzaid A, Rhyne J, et al. Minocycline and ethylenediaminetetraacetate for the prevention of recurrent vascular catheterinfections. Clin Infect Dis 1997;25:149-51.
本発明の発明者らは、そのため、防腐剤、抗菌剤や抗生物質を添加しなくとも、実質的に感染の問題が生じないカテーテルロック液の調製に取り組み、調査・研究を行った。即ち、注入ラインに菌が混入した場合でも、ロック液に防腐剤、抗菌剤や抗生物質を実質的に添加すること無しに、ロック液が貯留される24時間程度の間、菌の(対数的)増殖を抑止でき、且つカテーテル内における血栓形成を防止できる抗凝血活性を維持するカテーテルロック液の調製、保存について、実験を重ねた。その結果、本発明者らは、感染源となる代表的な細菌において、液剤に含有される脂肪乳剤や糖、アミノ酸等の栄養源の有無に限らず、ロック液のpHを所定の範囲に維持することで、菌の増殖を効果的に抑制できることを見出した。
しかし、カテーテルロック液を酸性にすると、静菌効果を保持できるが、ロック液に含まれるヘパリンの抗凝血活性が失活し易くなることが判明した。また、過度の酸性は血液適合性の点でも、好ましくなく、ロック液のpHによっては、視覚的に判別可能な溶血も引き起こす事が確認された。つまり、カテーテルロック溶液に静菌効果を持たせようとすると、溶液のpHを下げて、溶液を酸性に保たなくてはならないが、そうすると、ヘパリンの抗凝血活性の失活や溶血の問題が発生する。逆に、ヘパリンの失活や溶血を懸念して、溶液を中性側にすると、静菌効果が失われることになり、静菌効果とヘパリン失活、血液適合性とは、いわゆる二律背反の関係にあった。
そして、発明者らによる実験や検討により、上述の酸性下におけるヘパリン水溶液の抗凝血活性の失活は、熱滅菌によって、さらに促進され、その失活の程度はヘパリン水溶液のpHに依存することが判明した。熱滅菌は、現在 カテーテルロック液を製品化する際に、最も一般的で且つ効果的な滅菌法である。これらの事実、知見に基づいて、明確となった1つの課題は、メーカーで製造したカテーテルロック液を、臨床で使用するまでの期間、どのような方法、手段により、抗凝血性を維持し、且つ静菌効果を保存させるか?という事であり、本発明は、この課題に基づいて、到達できたものである。
以上、既述したように、本発明の主となる課題は、以下のような事である。即ち、
(1)使用するまでの期間、ヘパリンの抗凝血活性を維持することができ、且つカテーテルロック溶液として使用する際には、実質的に防腐剤や抗菌剤を含有せずに、静菌効果を有すること。
静菌効果の定義
本願明細書中で記載する「静菌効果」とは、カテーテルロック液を使用する際、室内に常在する感染の可能性の高い菌がロック液や注入ラインに混入した場合に、24時間後に前記菌が対数的(10倍以上)な増殖をしないように抑止し得る、増殖抑止効果をいう。
(2)使用時に、面倒な調合や調製(例えばpH)等が不要で、簡単・迅速に前記(抗凝血性、および静菌効果を有する)カテーテルロック液が調達(準備)できること。
(3)カテーテルロック液として使用する場合に、前記酸性ヘパリン水溶液が溶血等の血液に対する悪影響の少ないこと。
本発明では、隔壁で隔てて液密に独立した少なくとも2室を備えた隔室容器であって、該隔室容器は、その1室にヘパリンの凍結乾燥物、または該凍結乾燥物を含む固形物、粉末、或いはヘパリン水溶液(以下、ヘパリン含有物ともいう)を収容し、他の1室に酸性水溶液を収容し、前記隔壁を破壊、または連通することにより、前記2室間が液通可能となり、前記ヘパリン含有物と前記酸性水溶液とが混合される隔室容器であって、前記2室の各収容物を混合した混合溶液が、収容時のヘパリン含有物の70%以上の抗凝血活性(ヘパリン力価)を維持し、且つ静菌効果を奏することを特徴とする隔室収容容器(発明1)によって、上記課題を解決できた。
本発明は、また、隔壁で隔てて液密に独立した少なくとも2室を備えた容器において、前記容器の1室にヘパリン含有物を無菌的に収容し、他の1室に(pH3.0〜5.0の範囲の)酸性水溶液を無菌的に収容した状態で保存し、使用時に、前記隔壁を破壊、または連通することにより、前記2室間を液通させ、前記ヘパリンと前記酸性水溶液とを混合することにより、仕込み時の70%以上の抗凝血活性(ヘパリン力価)を維持しながら、且つ静菌効果を奏するヘパリン水溶液を得ることを特徴とする酸性ヘパリン水溶液の調製方法(発明2)によって、上記課題を解決できた。
或いは、隔壁で隔てて液密に独立した少なくとも2室を備えた容器において、前記容器の1室にヘパリン含有物を収容し、他の1室に(pH3.0〜5.0の範囲の)酸性水溶液を収容した後、容器全体を熱、ガス、または放射線のいずれかで滅菌し、使用するまで、前記ヘパリンと前記酸性水溶液とを隔離した状態で保存し、使用時、または使用前に、前記隔壁を破壊、または連通することにより、前記2室間を液通させ、前記ヘパリンと前記酸性水溶液とを混合することにより、70%以上のヘパリン力価(仕込み時のヘパリン力価を100%とした時の)を維持しながら、且つ静菌効果を奏するヘパリン水溶液を得ることを特徴とする酸性ヘパリン水溶液の調製方法(発明3)によって、上記課題を解決できた。
上記発明1(収容容器)の構成によって、使用時に隔壁を破壊、連通するまで、酸性水溶液を収容した隔室と、ヘパリンを収容した隔室とは隔離した状態で保存できるので、ヘパリンを酸性下で保存しなくても済む。そのため、ヘパリンの失活が防止できる。そして、使用時には、前記隔壁を破壊、連通することで、各室を液通可能にでき、酸性水溶液とヘパリンを混合することで、容易に抗凝血活性と静菌効果を有するカテーテルロック液を調製することができる。
上記発明2(調製方法)の構成は、隔室にヘパリンや酸性水溶液を収容した後に滅菌できないものに有用である。そして、熱滅菌しない場合であっても、ヘパリンを酸性水溶液に溶解した状態で保存すると、水溶液の酸性度によっては、ヘパリンの失活が進むので、製造後、使用するまでの期間が特定できない状況では、酸性化したヘパリン水溶液中のヘパリン活性が低下し、効果の低いものとなる恐れがあった。ヘパリンと酸性水溶液とを隔離して保存すれば、酸性水溶液が低pHのものであっても、使用時までは、両者が隔離して保存され、酸性下におけるヘパリンの失活が抑止できるので、ロック液を長期間保存する場合でも有用である。
上記発明3(熱滅菌を含む調製方法)の構成は、隔室にヘパリンや酸性水溶液を収容した後に滅菌を行う場合に適用されるものであるが、特に熱滅菌を行う場合に、有用である。熱滅菌を行う場合には、前記の酸性下でのヘパリン失活が特に顕著であり、pHが低いほど、前記失活の影響も大きい。そのため、へパリン含有物を酸性水溶液から隔離して保存すると、ヘパリン失活は防止できる。。また、熱滅菌による失活だけでなく、既述した滅菌後における(酸性下での)経時的なヘパリン失活も防止できる。
以上の各発明に基づいて、以下に開示するようなそれぞれの実施形態を採用することで、さらに優れた効果を奏することができる。例えば、隔壁を破壊して、各隔室に収容された前記酸性水溶液とヘパリンとを混合した時の混合液のpHが5.5以下であるような前記収容容器が望ましい。pH5.5以下の酸性ヘパリン水溶液は、血管カテーテルにおけるカテーテルロック液として使用した場合に、有効な抗凝血活性を維持し、且つ静菌効果も保持できるからである。さらに、混合後の前記ヘパリン水溶液はpH3.0〜5.0の範囲であると、より好ましい。
そして、1室に収容されるヘパリンについては、固形物、または粉末状態であっても、水溶液中に溶解したものであっても良い。用事混合を考慮すると、ヘパリン水溶液の状態で収容した方が好ましいのであるが、ヘパリンの溶解性、濃度を考えると、調製に要する時間、手間としては、実質的に大差は無い。
或いは、前記混合溶液をカテーテルロック液として、使用した際、前記カテーテルロック液に血液が接触した場合でも、前記カテーテルロック液のpHが5.5以下に維持できるように、前記酸性水溶液を収容した隔室、或いは前記ヘパリンを収容した隔室のいずれかの隔室内に、緩衝剤を添加、または収容した前記記載の収容容器である。隔室が、3室以上存在する場合は、酸性水溶液やヘパリンを収容した各隔室以外の隔室内に、緩衝剤を添加、または収容しても良い。カテーテルロック液として、前記混合液を注入し、貯留すると、ロック液が血液と境界層で接触することにより、微量の血液が混入し、その結果、貯留されるロック液のpHが上昇して、静菌効果が低下したり、無くなってしまう。そのpH上昇を抑制するため、上記いずれかの隔室に緩衝剤を添加、収容するのであって、その結果、ロック液が血液層と接触した場合であっても、pHの上昇を抑制でき、静菌効果を維持できる。
前記緩衝剤としては、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、グリシン塩、コハク酸塩、3,3―ジメチルグルタル酸塩のいずれかから選ばれたものが望ましい。
カテーテルロック液における緩衝剤濃度としては、10〜250mMの範囲内にあれば、上記目的を達することができるが、50〜150mMの範囲にあるものが、より好ましい。
前記隔壁を破壊、各隔室を連通する前に、前記隔室内にそれぞれ収容物が収容された状態で収容容器が加熱滅菌されたものは、酸性下における加熱滅菌によるヘパリンの抗凝血活性の失活を防止できるので、好ましい。
前記混合溶液の、人体の体液に対する浸透圧比が0.5〜3.0となるように、前記酸性水溶液を収容した隔室、或いは前記ヘパリン含有物を収容した隔室のいずれかの隔室に、等張化剤を添加、または収容する前記収容容器は、ロック液による、生体への影響を懸念しなくても良いので、望ましい。前記等張化剤は、前述したように、隔室が3室以上存在する場合は、酸性水溶液やヘパリンを収容した各隔室以外の隔室内に、添加、収容しても良い。
前記等張化剤は、効果、及び安全性、実績の点から、電解質または糖類から選択するのが好ましい。
カテーテルロック液として使用すること、それに必要な抗凝血活性を考慮すると、前記収容容器の隔室に収容されるヘパリン含有物の抗凝血活性(ヘパリン力価)は、1〜1000単位であるものが望ましい。
前記収容容器の隔室に収容される酸性水溶液を酸性にするための酸調整剤としては、無機酸、有機酸、またはアミノ酸のいずれかを含有するものが望ましい。
そして、前記無機酸としては、塩酸、リン酸のいずれか、また前記有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、酒石酸、のいずれかの酸から選択された酸調整剤が望ましい。上記の無機酸、或いは有機酸は、いずれもその効果、安全性、実績の点から確認されている。
前記酸性水溶液に増粘剤を含有する収容容器は、混合後のカテーテルロック液が血液層と接触した場合でも、その粘度のため、血液がロック液中に拡散し難いので、望ましい。或いは、ヘパリンを収容する側の隔室収容部がヘパリン水溶液、または溶液である場合、その水溶液(溶液)の中に増粘剤を混入しても良い。
本発明において酸性ヘパリン水溶液の調製用成分を収納する容器としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂のような合成樹脂製の可撓性の袋状物が使用できる。該袋状物の内部は隔壁、例えば該袋状物を部分的に熱シールすることによって、隔壁を形成することが可能である。前記隔壁によって、独立に区画された少なくとも2室以上の複数室が形成できるので、一室にヘパリン水溶液やヘパリン粉末等、ヘパリン含有物を充填し、もう一方の室には、酸性水溶液を充填する。酸性ヘパリン水溶液を投与する直前、或いは製造(滅菌)してから、投与するまでの間のいずれかに、前記隔壁を破壊することによって、前記各隔室に収納した各液、または液と粉末、固体を混合して、酸性ヘパリン水溶液を調製することができる。以上のような隔室容器は、本発明の好ましい1つの実施形態である。上記シール方法はイージー・ピールシール(EPS)と称されるが、EPS以外の隔室形成手段としては、クリップ方式、連通管方式、等が挙げられる。
以下、本発明の好ましい実施態様について、図と共に説明する。
図1に、本発明の収容容器1を示す。収容容器1は、ヘパリン水溶液を収容した第1隔室2と酸性水溶液を収容した第2隔室3とを有し、第1隔室2と第2隔室3とは、弱シール部4で隔離されている。用事混合、即ち、使用にあたって、第1隔室内のヘパリン水溶液と第2隔室内の酸性水溶液とが混合されるが、その際に前記両隔室を圧迫することで、弱シール部4が破壊され、両隔室が連通する。また、収容容器1の第1隔室側には、ヘパリン水溶液を注入するための注入口5が、収容容器1の第2隔室側には、酸性水溶液を注入するための注入口6が、それぞれ設けられている。さらに、収容容器1の第2隔室側には、ヘパリン水溶液と酸性水溶液とを混合した酸性ヘパリン水溶液を注出するための注出口7が設けられている。
収容容器1は、複数の素材を積層した基材で形成され、素材として、ポリオレフィン、詳細には、ポリプロピレンと、ポリプロピレンとSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)のブレンドからなる積層シートを使用した。
〔二液隔離による、熱滅菌におけるヘパリンナトリウム水溶液の残存ヘパリン活性への影響〕
上記隔室容器を使用して、各隔室に以下に示すヘパリン水溶液と緩衝剤を添加した酸性水溶液(以下、酸性緩衝液ともいう)を充填し、前記両液を隔離した状態で熱滅菌した。熱滅菌後に、弱シール部を破壊して、両隔室を連通させ、ヘパリン水溶液と酸性緩衝液とを混合した。容器に収容された上記混合液を所定期間 保存し、混合液に残存するヘパリン活性を調べた。詳細な実験条件を以下に示す。
第1隔室に、塩化ナトリウムの添加により浸透圧を生体と等脹にした市販の中性ヘパリンナトリウム水溶液を10U/mlとなるように充填し、また他の1室に種々のpHに調整した100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH:6.0、5.5、4.5、3.0、2.5、2.0)を充填した。
前記容器を121℃で20分間加熱処理してヘパリンナトリウム水溶液と酸性緩衝液を同時に熱滅菌した。該熱滅菌後に前記2室間の前記隔壁部を破壊して前記熱滅菌したヘパリンナトリウム水溶液と酸性緩衝液を混合して酸性pHであるヘパリンナトリウム水溶液を調製した。この調製した酸性pHヘパリンナトリウム水溶液の調製直後から63日迄の継時的な残存ヘパリン活性を調べ、その結果を図2に示す。該図1の結果から明らかように、本実施例の酸性ヘパリンナトリウム水溶液は、pH2という強酸性のものでも調製直後および7日後までは、残存ヘパリン活性は高水準に保持されていた。
〔比較例1〕
実施例1で使用したと同様のヘパリンナトリウム水溶液と酸性リン酸ナトリウム緩衝ヘパリンナトリウム水溶液(pH:6.0、5.5、4.5、4.0、3.5、3.0)を一つの容器に入れ121℃で20分間熱滅菌した。この熱滅菌直後から63日迄の継時的な残存ヘパリン活性を調べ、その結果を図3に示す。図2の結果から明らかように、121℃で20分間熱滅菌したものは、pH3.0、3.5および4.0のものでは、熱滅菌直後には残存ヘパリン活性が既に大きく低下していた。
〔血液添加による緩衝液のpHへの影響〕
pHが3,4,5の下記緩衝液を調製し、生体と等張圧となるように塩化ナトリウムを添加した。これら緩衝液と比較のため、生食に1%、2%、5%および10%のヘパリン加ヒト血液を加え室温で放置し、24時間後のpHを測定した。上記緩衝液は表2〜6に示す結果から明らかなように、pH3,4および5のいずれにおいても、血液によるpHの上昇を1以内において、抑えることができた。これに対して、グリシン−塩酸緩衝液は表7に示すように、pH3,4および5の大部分の場合において、血液によるpHの上昇を1以内において抑えることができなかった。
1.リン酸ナトリウム緩衝液(50/100/150mM)
2.クエン酸ナトリウム緩衝液(50/100/150mM)
3. 酢酸ナトリウム緩衝液(50/100/150mM)
4.コハク酸−水酸化ナトリウム緩衝液(50/100/150mM)
150mM、pH5は塩化ナトリウムの添加なし。
5. ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液
150mM、pH5は塩化ナトリウムの添加なし。
生食のpHの変化
Figure 0005194956
リン酸ナトリウム緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
クエン酸ナトリウム緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
酢酸ナトリウム緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
コハク酸−水酸化ナトリウム緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
グリシン−塩酸緩衝液のpHの変化
Figure 0005194956
〔血液添加ヘパリンナトリウム加緩衝液の静菌効果〕
中性(7.0,6.0)ヘパリンナトリウム水溶液および実施例1と同様に調製した酸性ヘパリンナトリウム水溶液(pH5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.0)に2容量%の血液を添加して調製した2%(V/V)血液添加ヘパリンナトリウム(10U/mL)加緩衝液に菌濃度10 CFU(Colony Forming Unit)/mlとなるようにグラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌の菌液を添加したものを試験液として菌の培養を行った。血液添加直後、ならびに3、6,12,24時間培養後の各菌の菌数を調べた。その結果を下表8、9および10に示すが、pH6.0以下の酸性ヘパリンナトリウム水溶液は、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対して静菌効果があること、およびpHが3.0以下のものではグラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌のいずれの菌に対して殺菌効果があることが確認された。
Figure 0005194956
前表において、++は菌が対数的に増殖したこと、+は対数的ではないが増殖したこと、−は菌が減少したことを意味する。
Figure 0005194956
Figure 0005194956
なお、本発明においてはpHの測定は、pHメーターとしてTOA AUTO TITRATION(東亜ディーケーケー社製)およびpH METER D−21(堀場製作所製)を使用して行った。
本発明の隔室収容容器の1つの実施形態を示す概略図である。 実施例2で調製した酸性ヘパリン溶液の継時的な残存ヘパリン活性を示す図である。 比較例1で調製した酸性ヘパリン溶液の継時的な残存ヘパリン活性を示す図である。
符号の説明
1.(隔室)収容容器
2.第1隔室
3.第2隔室
4.弱シール部
5.注入口
6.注入口
7.注出口

Claims (12)

  1. 液密に独立した少なくとも二つの隔室及び該隔室を連通可能な隔壁で隔てて構成された容器の隔室の1室にヘパリンの凍結乾燥物、該凍結乾燥物を含む固形物、ヘパリンの粉末、あるいはヘパリン水溶液(以下、ヘパリン含有物とも言う)が収納され、他の隔室に緩衝剤が配合された酸性水溶液が収納された容器において、以下の要件(1)及び(2)を満足するものであることを特徴とする容器。
    (1)前記酸性水溶液が、前記各収納物を混合して酸性ヘパリン水溶液を調製した場合に、該酸性ヘパリン水溶液に静菌効果を奏するpHを付与できるものであること。
    (2)前記各収納物が、該収納物を混合して酸性ヘパリン水溶液を調製した場合に、該酸性ヘパリン水溶液のヘパリン力価を混合前のヘパリン力価の70%以上に維持できるものであること
  2. 前記緩衝剤の配合量が、酸性ヘパリン水溶液中に10〜250mMの範囲で存在する量である請求項1に記載の容器。
  3. 前記緩衝剤の配合量が、酸性ヘパリン水溶液中に50〜250mMの範囲で存在する量である請求項1に記載の容器。
  4. 前記酸性水溶液が、pH3.0〜5.0のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
  5. 前記酸性ヘパリン水溶液のpHが、5.5以下である請求項1〜4のいずれかに記載の容器。
  6. 前記緩衝剤が、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、乳酸塩緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤及びアスコルビン酸緩衝剤よりなる群から選ばれたものである請求項1〜5のいずれかに記載の容器。
  7. 前記酸性ヘパリン水溶液の人体の体液に対する浸透圧比が、0.5〜3.0となるように、酸性水溶液あるいはヘパリン含有物に等張化剤が配合されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の容器。
  8. 前記酸性水溶液あるいはヘパリン含有物に増粘剤が配合されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の容器。
  9. 前記酸性ヘパリン水溶液が血管内留置カテーテルに注入されるものである請求項1〜8のいずれかに記載の容器。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の容器を、隔室内の収納物の使用時に、各隔室を連通させて該隔室の収納物を混合し、静菌効果を奏するpHを有し、かつ混合後のヘパリン力価が混合前のヘパリン力価の70%以上である酸性ヘパリン水溶液の調製方法。
  11. 隔室内の収納物の混合前に、該容器全体を熱、ガスまたは放射線で滅菌することを特徴とする請求項10に記載の酸性ヘパリン水溶液の調製方法。
  12. 酸性ヘパリン水溶液が血管内留置カテーテルに注入されるものである請求項10または11に記載の酸性ヘパリン水溶液の調製方法。
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