JP5192005B2 - 缶蓋の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、缶蓋の製造方法に関するものである。
各種飲料物を収容するスチール缶あるいはアルミ缶に用いられる缶蓋としては、飲み口を開口する際にタブをパネル(缶蓋本体、天板)から取り外すプルタブ方式の缶蓋と、タブをパネルに取り付けたままの状態で飲み口を開口可能なステイオンタブ方式の缶蓋とがある。プルタブ方式のタブはパネルから分離して捨てられ、回収し難いため、環境問題の観点などから、近年においてはステイオンタブ方式の缶蓋が広く用いられている。
図6はステイオンタブ方式の缶蓋を示す平面図である。図6に示すように、ステイオンタブ方式の缶蓋10は、円形のパネル(缶蓋本体、天板)1と、パネル1の周縁に設けられ、缶胴10aに巻き締められる巻き締め部2と、巻き締め部2とパネル1との間に周設された外周溝3と、溝状のスコア(主スコア)4に囲まれた開口片5と、その先端7aがスコア4の一部を覆うように配置され、リベット6によりパネル中心CPに固定されたタブ7とを備えている。タブ7は中央部にインナーランス8を有しており、このインナーランス8に形成されているリベットホール9を介してリベット6に固定されている。そして、タブ7の後端7bが引き起こされることにより、タブ7の先端(タブノーズ)7aがスコア4に囲まれた開口片5を押圧し、この押圧動作によってスコア4が切断され、飲み口が開口される。
このように、開口動作は、タブ7の後端7bを引き上げ、タブ7の先端7aで開口片5を押圧することで行われるため、先端7aと開口片5との位置関係が変わると、開口性に影響を与える。
リベット6によるタブ7に対する固定が十分でないと、タブ7はリベット6を中心に容易に回転してしまい、先端7aと開口片5との位置関係が開口動作をする上で不利な位置となる場合がある。このように、タブ7がリベット6を中心に回転してしまう状態(以下、「タブ回り」と称する)が生じると、開口性に影響を与えるため、従来より、タブ回りを抑えるための様々な方法が行われてきた。
ここで、タブ回りを抑えるための従来の方法について図7、図8を参照しながら説明する。
図7は従来のタブ回り防止方法の一例であって、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のB−B矢視断面図である。
この図に示すように、缶蓋10は、パネル1の所定位置に設けられた突起部11を2つ有している。この突起部11は、タブディンプルと呼ばれるものであって、タブ7の下方に位置するパネル1表面のうち、図7(b)に示すように、タブ7の縁部7cに引っ掛かる位置に設けられている。そして、突起部11と、屈曲しているタブ7の縁部7cとが引っ掛かることにより、タブ回りが抑えられている。
図8に示す缶蓋10は、パネル1表面のうち、タブ7のインナーランス8の下方に位置する部分に突起部12を有している。この突起部12は、タングディンプルと呼ばれるものであって、リベット6を基準として飲み口(開口片5)と反対側に設けられている。そして、インナーランス8に設けられた切欠部8aと突起部12とが引っ掛かることによって、タブ回りが防止されている。
更に、従来のタブ回り防止方法として、図7、図8に示した方法以外に、例えば、リベット6を大径化してインナーランス8に対するかしめ力を大きくしたり、リベット成形する際の金型条件の変更や潰し量の拡大をするなど、リベット成形条件を変更する方法がある。
ここで、従来におけるリベット成形工程について図9、図10を参照しながら説明する。図9は従来のリベット成形方法による成形後の缶蓋を示す図であって、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のC−C矢視断面図である。また、図10はリベット成形工程を説明する図であって、図9(a)のC−C矢視断面図に相当する。
まず、パネル1上面にタブ7を接続するに際し、図10(a)に示すように、タブ7のインナーランス8に形成されているリベットホール9に対してパネル1の上面中央部に予め設けられているニップル部13を挿入する。このとき、インナーランス8の下面と、タブ7の縁部7cの下面とは、同じ高さ(面一)に形成されている。
そして、図10(b)に示すように、ニップル部13に対して、上方からリベットパンチ(金型)20をあてがうとともに、下方からリベットピン(金型)21をあてがい、これらリベットパンチ20及びリベットピン21を用いてニップル部13を押圧する。このとき、パネル1を支持しているパネル支持部22の上面とリベットピン21の肩部21aとは同じ高さ(面一)に設定されている。したがって、パネル1の平面部分は上下方向に変形せず、ニップル部13のみが潰されるように変形する。
このように、リベットパンチ20及びリベットピン21を用いてニップル部13を加工することによって、図10(c)に示すように、ニップル部13はリベット成形されてリベット6となり、タブ7のインナーランス8がリベット6を介してパネル1に固定される。
ところで、図10で示した従来のリベット成形方法によってパネル1にタブ7を固定した際、図9(b)に示すように、タブ7の縁部7c下面とパネル1とが離間する場合がある(符号D参照)。このように、パネル1とタブ7の縁部7c下面とが離間すると、パネル1とタブ7との密着性が低下し、タブ回りを十分に抑えることができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、パネルとタブとを密着させ、タブ回りの発生を抑えることができる缶蓋の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の缶蓋の製造方法は、パネル上面にタブを接続するに際し、前記タブのインナーランスに形成されているリベットホールに対して前記パネル上面中央部に設けられているニップル部を挿入し、該ニップル部をリベット成形することによって前記パネルと前記タブとを接続するリベット成形工程を有する缶蓋の製造方法において、前記パネル上面を基準として、前記インナーランス下面が前記タブの縁部下面より高くなるように前記タブを予め成形しておき、該タブのリベットホールに対して前記ニップル部を挿入し、前記パネルの下面を支持するパネル支持部の上面とリベットピンの肩部との高さ位置を同一とした状態で、前記パネル支持部によってパネル下面を支持し、前記ニップル部に対して、上方からリベットパンチをあてがうとともに、下方からリベットピンをあてがい、前記リベットパンチ及び前記リベットピンを用いて押圧することにより、前記インナーランスを弾性変形領域内で下方に変形させつつ、前記リベット成形することを特徴とする。
本発明によれば、インナーランス下面がタブの縁部下面より高くなるように予め成形しておき、インナーランスを弾性変形領域内で下方に変形させつつリベット成形することにより、インナーランスの弾性変形に基づく復元力によって、パネルは上方に引き上げられる力を受ける。したがって、パネル中央部とインナーランスとの密着度が増し、これに伴ってパネルとタブとの密着度が増す。したがって、タブ回りの発生を抑えることができる。
請求項2に記載の缶蓋の製造方法は、請求項1に記載の缶蓋の製造方法において、前記タブのインナーランス下面と前記タブの縁部下面との高さの差aが、0mm< a <0.2mmの範囲内に設定されていることを特徴とする。
以上説明したように、インナーランスの下面がタブの縁部下面より高くなるようにタブを予め成形しておくことにより、パネルに接続される際、インナーランスは下方に移動される。このインナーランスの下方への移動に伴って、インナーランスに接続しているタブの縁部は、パネルを押圧する方向に力を与えられるので、タブとパネルとは所定の力で密着する。したがって、タブ回りの発生を抑えることができる。そして、リベット成形する際、リベットが形成されるパネル中央部を所定量上方に弾性変形させつつリベット成形することによって、リベット成形後、パネル中央部の弾性変形に基づく復元力によって、インナーランスは下方に移動される。したがって、このインナーランスの下方への移動によって、パネルに対するタブの縁部の押圧力を高めることができ、タブ回りの発生を防止できる。
本発明の缶蓋の一実施形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。 本発明の缶蓋の製造方法の一実施形態を説明するための断面図である。 タブトルク測定装置を説明するための図である。 本発明の缶蓋と従来の缶蓋とのタブトルク測定結果を説明するための表である。 本発明の缶蓋の他の実施形態を示す断面図である。 缶蓋全体を説明するための平面図である。 従来の缶蓋を説明するための平面図である。 従来の缶蓋を説明するための平面図である。 従来の缶蓋を説明するための断面図である。 従来の缶蓋の製造方法を説明するための断面図である。
以下、本発明の缶蓋について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の缶蓋を示す図であって、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A矢視断面図である。ここで、本実施形態に係るタブは図6で説明したものと同様の缶蓋に取り付けられるものであり、以下の説明において、図6と同一あるいは同等の構成部分については、同一の符号を付すとともにその説明を簡略もしくは省略する。
図1において、缶蓋10は、円形のパネル(缶蓋本体、天板)1と、溝状の主スコア4に囲まれた開口片5と、主スコア4の内側に沿うように溝状に形成された補助スコア8と、その先端(タブノーズ)7aが開口片5のパネル中心CP側に重なるように配置され、パネル1と一体成形されているリベット6によりパネル中心CPに固定されたタブ7とを備えている。タブ7は中央部にインナーランス8を有しており、このインナーランス8に形成されているリベットホール9を介してリベット6に固定されている。そして、タブ7の後端7bが引き起こされることにより、タブ7の先端7aが主スコア4に囲まれた開口片5を押圧し、この押圧動作によって主スコア4が切断され、飲み口が開口される。
タブ7の後端7b側には、開口動作の際、後端7bを引き起こすために指などを挿入するためのフィンガーホール7dが設けられている。また、タブ7のうち、リベット6を基準にして開口片5と反対側には半円弧状の空間部15が形成されている。インナーランス8を含むタブ7のうち、空間部15以外の部分は連続するように一体成形となっている。
図1(b)に示すように、インナーランス8は平板状に形成されており、空間部15を介してその両側には、内側にカールするように形成されたタブ縁部7cが設けられている。そして、リベットホール9を有するインナーランス8がパネル1の上面中央部に形成されたリベット6に挟みつけられることによって、タブ7とパネル1とが固定されている。
インナーランス8の下面K1は、パネル1表面を基準として、タブ7の縁部7c下面K2より高くなるように設定されている。そして、リベット6が形成されているパネル1の中央部は、後述するリベット成形工程時において上方に所定量弾性変形され、インナーランス8は、パネル1中央部の弾性変形に基づく復元力によって、下方に引っ張られるように弾性変形している。
パネル1及びタブ7は、アルミニウムによって構成されている。このうち、パネル1はアルミニウム薄板によって構成され、パネル1の板厚は、缶蓋の大きさなどによっても相違するが、一般的に、0.2mm〜0.5mm、好ましくは、0.25mm〜0.31mmの範囲内にあるものが用いられる。また、タブ7の板厚は、0.280mm〜0.330mmの範囲内にあるものが用いられている。アルミニウム薄板としては、イージーオープンタイプの缶蓋に使用されているアルミニウム薄板は全て適用可能であり、例えば、純アルミニウムやアルミニウムと他の物質との合金用金属、特に、マグネシウム、マンガンなどを少量含むアルミニウム合金板が適用可能である。
なお、本実施形態において、タブ全長L1=25.4mm、タブ幅L2=15.9mm、ノーズ長さL3=6.17mm、カールシクネスL4=1.45mm、リベットホール径L5=3.785mm、リベット外径L6=4.15mmに設定されている。
次に、上述した構成を備える缶蓋10の製造方法について図2を参照しながら説明する。ここで、缶蓋は、バブル成形、ニップル成形、スコア&インナービート成形、パネルデポス成形、リベット成形などを経て製造される。
そして、以下の説明においては、前記複数の成形工程のうち、パネル1上面にタブ7を接続するに際し、タブ7のインナーランス8に形成されているリベットホール9に対してパネル1上面中央部に予め成形されているニップル部13を挿入し、このニップル部13をリベット成形することによってパネル1とタブ7とを接続するリベット成形工程について説明する。
図2(a)に示すように、タブ7は、パネル1上面を基準として、インナーランス8の下面K1が、タブ7の縁部7c下面K2より高くなるように、予め成形されている。すなわち、タブ7は、インナーランス8の下面K1が、縁部7c下面K2より高くなるように予め塑性変形されている。このとき、塑性変形されたタブ7のインナーランス8下面K1と縁部7cの下面K2との高さの差をaとする。
そして、タブ7のインナーランス8に形成されているリベットホール9に対してパネル1の上面中央部に予め設けられているニップル部13が挿入される。
次いで、図2(b)に示すように、ニップル部13に対して、上方からリベットパンチ(金型)20をあてがうとともに、下方からリベットピン(金型)21をあてがい、これらリベットパンチ20及びリベットピン21を用いて、ニップル部13を押圧する。このとき、パネル1を支持しているパネル支持部22の上面に対して、リベットピン21の肩部21aを所定量上方に配置させながらニップル部13に対する押圧動作を行う。つまり、リベットパンチ20とリベットピン21とによるニップル部13に対する挟み付け力は一定としたまま、リベットピン21をリベットパンチ20とともに上方にシフトさせる。このときの移動量(つまり、パネル支持部22に対するリベットピン21の肩部21aの上方シフト量)をbとする。
ここで、前記移動量bは、ニップル部13を含むパネル1中央部が弾性変形領域内で変形されるように予め設定された値である。すなわち、移動量bは、パネル1中央部を上方に弾性変形させる際の予め設定された値である。この移動量bは、実験などによって予め求めておくことができる。ここで、移動量bは、前記高さの差aに対して小さい値になるように、すなわち、b<aの関係となるように設定されている。
そして、好ましくは、前記高さの差a、パネル1中央部の移動量bは、
0 < a ≦ 0.5mm、且つ
0 < b ≦ 0.3mm、且つ
0 < a−b ≦ 0.2mm
になるように設定されている。
こうして、リベット成形は、パネル1の中央部を所定量bだけ上方に弾性変形させつつ行われ、ニップル部13は、リベットパンチ20及びリベットピン21によって潰されるようにリベット成形される。リベット成形を施されたニップル部13は図2(c)に示すようにリベット6となり、リベット6はインナーランス8を挟みつけるように固定する。こうして、タブ7のインナーランス8がリベット6を介してパネル1に固定される。
ここで、リベット成形後のインナーランス8は、パネル1中央部の上方への弾性変形に基づく復元力によって、下方に向かう力を作用される。このとき、パネル1中央部を弾性変形させた際の移動量bは、この復元力によってインナーランス8が塑性変形しない程度に、すなわち、インナーランス8が弾性変形領域内で下方に弾性変形するように、予め設定されている。インナーランス8は、パネル1の復元力によって、下方に所定量弾性変形する。
ここで、b<aに設定しつつリベット成形を行ったため、インナーランス8はリベットピン21によって持ち上げられることなく、下方に変形(移動)されつつリベット成形されたことになる。そして、この下方への移動量は、インナーランス8の弾性変形領域になるように、予め設定されている。
このように、インナーランス8の下方への弾性変形(移動量a−b)に基づく復元力によって、パネル1中央部は上方に引き上げられる力を受けるとともに、パネル1の弾性変形(移動量b)に基づく復元力によってインナーランス8は下方に引き下げられる。そして、パネル1及びタブ7の互いの引き付け力によって、タブ7の縁部7cがパネル1を所定の押圧力で押圧する。
以上説明したように、インナーランス8の下面K1がタブ7の縁部7a下面K2より高くなるようにタブ7を予め塑性変形しておくことにより、パネル1に接続される際、インナーランス8は下方に移動するように変形される。このインナーランス8の下方への変形に伴って、インナーランス8に接続しているタブ7の縁部7aはパネル1を押圧するので、タブ7とパネル1とは密着する。したがって、タブ回りの発生を抑えることができる。
そして、リベット成形する際、リベット6が形成されるパネル1中央部を所定量bだけ上方に弾性変形させつつリベット成形することによって、リベット成形後、パネル1中央部の弾性変形に基づく復元力によって、インナーランス8は下方に移動される。このとき、インナーランス8の移動は、パネル1の復元力に基づくものなので、パネル1に対するタブ7の縁部7aの押圧力を高めることができる。
そして、b<aとし、インナーランス8を弾性変形領域内で下方に変形させつつリベット成形することにより、インナーランス8の弾性変形に基づく復元力によって、パネル1は上方に引き上げられる力を受ける。さらに、パネル1の弾性変形に基づく復元力によってインナーランス8が下方に引き下げられる。このように、b<aとすることによって、インナーランス8はリベット成型時にパネル1側に矯正され、パネル1及びタブ7のそれぞれは互いに引き付け合う力を発生するので、密着性は向上する。したがって、タブ回りの発生を抑えることができる。
そして、パネル1中央部の上方への移動量bを、このパネル1中央部に復元力によってインナーランス8が塑性変形しない程度に予め設定しておくことにより、パネル1及びタブ7の互いの引き付けは安定して実現される。
そして、インナーランス8及びパネル1をそれぞれ弾性変形領域内で変形させ、互いの引き付け力を安定して発生させるためには、0 < a ≦ 0.5mm、且つ0 < b ≦ 0.3mm、且つ0 < a−b ≦ 0.2mmに設定し、リベット成形することが好ましい。
なお、上記実施形態においては、リベット成形時においてパネル1中央部を上方に弾性変形させつつパネル1とタブ7との接続をするように説明したが、パネル1中央部を弾性変形させなくても、タブ7の縁部7cより高い位置に形成されたインナーランス8を平面状のパネル1に接続することによって、インナーランス8は下方に移動(変形)しつつパネル1に接続されるので、このインナーランス8の下方への移動に伴って、タブ7の縁部7cも下方に移動することになる。したがって、パネル1とタブ7と密着性は向上する。
次に、本実施形態に係る製造方法で製造した缶蓋のタブ回り性に関する実験結果について説明する。
実験は、図3(a)に示すタブトルク測定装置を用いて、タブ回り性の指標であるタブトルクTを測定し、従来の缶蓋におけるタブトルクとの比較を行った。
図3(a)に示すタブトルク測定装置Sは、回転可能に設けられ、缶蓋10を支持する支持台30と、支持台30に支持された缶蓋10のパネル中心CP(つまりリベット6)を中心に回転させる回転装置31と、回転装置31によって回転する缶蓋10のパネル中心CPから所定距離Rに配置された測定ピン32とを備えている。測定ピン32はタブ7のフィンガーホール7dに挿入されるようになっており、回転する缶蓋10のタブ7から受ける荷重を測定する。測定ピン32の測定結果は不図示の演算装置に出力され、演算装置は、測定ピン32からの荷重測定結果と所定距離Rとに基づいて、リベット6を基準とした測定ピン32(距離R)の位置におけるトルクを求める。そして、このトルク値に基づいて、タブ回り性(タブ7がリベット6を中心に容易に回転するかどうか)を評価する。ここで、タブトルクT〔N・cm〕は、
T = Pmax × R
であり、R=1.15cmとし、Pmaxは、測定ピン32にかかる荷重の最大値(すなわち、タブ7が回転し始めるときの荷重値)とする(図3(b)参照)。
また、実験条件は、
a=0、 0.1、 0.2、 0.3、 0.4、 0.5〔mm〕、
b=0、 0.1、 0.2、 0.3〔mm〕として行った。図4に実験結果を示す。
図4の表中、最上段(a=0、b=0)の値が従来の缶蓋における実験結果であって、T=12〔N・cm〕である。図4から分かるように、a−bが0.2〔mm〕より大きくなると、タブ固着力が低下するだけではなく、リベットクラック(リベットに生じる割れ)が発生しやすくなる。これは、インナーランス8がリベット6に吊り下げられる状態となってリベットに無理な力が掛かることが一因である。
また、a−bが0.2〔mm〕より大きくなると、リベット加工時において、インナーランス8が下方に大きく移動され、弾性変形域を超えて塑性変形されることになるので、タブ7の固着力が低下する。
一方、a≦0.5〔mm〕とした理由は、aが0.5〔mm〕以上になるとタブタング部分の加工硬度が十分でなくなり、タブ強度が低下するためである。
また、bがaより大きいと、リベット成型時において、インナーランス8はパネル1(リフトピン21)によって更に持ち上げられてしまうことになるので、リベット成形において、タブ7の縁部7cは所定の力でパネル1を押圧できなくなり、密着力が低下する。
以上の結果より、a、bのそれぞれを、
0 < a ≦ 0.5mm、且つ
0 < b ≦ 0.3mm、且つ
0 < a−b ≦ 0.2mmに設定することにより、従来の缶蓋に比べて、タブトルク値Tを向上できる。
次に、図5を参照しながら、本発明の缶蓋の他の実施形態について説明する。
ここで、以下の説明において、前述した実施形態と同一又は同等の構成部分についてはその説明を簡略もしくは省略する。
図5の断面図に示すように、缶蓋10’は、上面中央部に凹部1Aを有するパネル1を有している。そして、タブ7はインナーランス8を有しており、インナーランス8の下面K1は、タブ7の縁部7a下面K2より低くなるように設定されている。インナーランス8は、パネル1中央部の凹部1Aに設けられたリベット6に接続されることによって、下方に所定量弾性変形されている。
このように、パネル1上面中央部に凹部1Aを設けたことにより、前記リベットパンチ20及びリベットピン21を用いてインナーランス8を凹部1Aに接続する際、インナーランス8は下方に変形(移動)される。すると、インナーランス8に接続しているタブ7の縁部7cも下方に移動するので、タブ7の縁部7cはパネル1を押圧する。したがって、タブ7とパネル1とは所定の力で密着され、タブ回りの発生が抑えられる。このとき、インナーランス8の下面K1がタブ7の縁部7c下面K2より予め低くなっているので、リベット成形前においてインナーランス8と凹部1Aとの距離が近くなっている。したがって、リベットパンチ20及びリベットピン21を用いてインナーランス8と凹部1Aとを接続する際、過剰な力がインナーランス8に作用せず、インナーランス8は弾性変形領域内で下方に移動し、リベットクラックなどを発生させることなく、パネル1に接続される。
1 パネル(缶蓋本体、天板)
5 開口片
6 リベット
7 タブ
7a (タブ)先端
7b (タブ)後端
7c (タブ)縁部
8 インナーランス
9 リベットホール
CP パネル中心
K1 (インナーランス)下面
K2 (タブ縁部)下面

Claims (2)

  1. パネル上面にタブを接続するに際し、前記タブのインナーランスに形成されているリベットホールに対して前記パネル上面中央部に設けられているニップル部を挿入し、該ニップル部をリベット成形することによって前記パネルと前記タブとを接続するリベット成形工程を有する缶蓋の製造方法において、
    前記パネル上面を基準として、前記インナーランス下面が前記タブの縁部下面より高くなるように前記タブを予め成形しておき、
    該タブのリベットホールに対して前記ニップル部を挿入し、前記パネルの下面を支持するパネル支持部の上面とリベットピンの肩部との高さ位置を同一とした状態で、前記パネル支持部によってパネル下面を支持し、前記ニップル部に対して、上方からリベットパンチをあてがうとともに、下方からリベットピンをあてがい、前記リベットパンチ及び前記リベットピンを用いて押圧することにより、前記インナーランスを弾性変形領域内で下方に変形させつつ、前記リベット成形することを特徴とする缶蓋の製造方法。
  2. 前記タブのインナーランス下面と前記タブの縁部下面との高さの差aが、
    0mm< a <0.2mm
    の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋の製造方法。
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