JP5191248B2 - 熱交換器用アルミニウムフィン材及びそれを用いた熱交換器 - Google Patents
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このような問題を解決するために、熱交換器用のフィン材について、防カビ性あるいは抗菌性を有する物質を塗膜中に含有させた発明(特許文献1〜9)が多く報告されている。
上記第1塗膜は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル系樹脂のうち少なくとも1種よりなる耐食性樹脂に第1の防カビ性及び/または抗菌性を有する物質(以下、第1抗菌剤という)を含有させてなると共に、膜厚t1が0.5〜10μmであり、
該第1塗膜における上記第1抗菌剤の含有量は、第1塗膜全体の乾燥後重量を100重量部とすると1〜30重量部であり、
上記第1抗菌剤は、20℃における水溶解度が0ppm超え10ppm以下であり、
上記第1抗菌剤の平均粒径D1は、0.5μm≦D1≦2(t1+t2)であり、
上記第2塗膜は、親水性樹脂よりなると共に、膜厚t 2 が0.5〜2μmであり、
上記第2塗膜は、第2の防カビ性及び/または抗菌性を有する物質(以下、第2抗菌剤という)を含有し、
上記第2抗菌剤の含有量は、第2塗膜全体の重量を100重量部とすると、0.1〜5重量部であり、
上記第2抗菌剤は、20℃における水溶解度が0ppm超え10ppm以下であり、
上記第2抗菌剤の平均粒径D 2 は、D 2 ≦2t 2 であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材にある(請求項1)。
すなわち、親水性樹脂よりなる上記第2塗膜を設けることによって親水性を得ることができる。上記第2塗膜は、上記親水性樹脂よりなるため、熱交換器用アルミニウムフィン材の表面で結露水を均一な水膜とし、円滑に落下、排出させ、結露水による通風抵抗を低くし、熱交換器の性能を維持するための優れた親水性を有することができる。
このように、本発明によれば、優れた親水性を有すると共に、防カビ性及び/または抗菌性の速効性及び持続性に優れた熱交換器用アルミニウムフィン材を提供することができる。
上記フィンは、第1の発明の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いて形成されていることを特徴とする熱交換器にある(請求項7)。
なお、上記「銅合金」は、銅を主体とする金属及び合金の総称であり、純銅、及び銅合金を含む概念である。
上記第1塗膜の膜厚t1が0.5μm未満の場合には、第1抗菌剤を保持できないという問題や、耐食性を十分に確保することができないという問題がある。一方、第1塗膜の膜厚は、厚い程、上記第1抗菌剤の残留率が高くなるが、上記第1塗膜の膜厚t1が10μmを超える場合には、熱交換器用アルミニウムフィン材の伝熱性が劣るという問題がある。
コスト、伝熱性等の観点から、上記第1塗膜の膜厚t1は、1〜3μmであることがより好ましい。
上記第1抗菌剤の含有量が1重量部未満の場合には、防カビ性及び/または抗菌性の効果を得ることができないという問題があり、一方、上記第1抗菌剤の含有量は多いほど第1抗菌剤残留率が高くなるが、上記第1抗菌剤の含有量が30重量部を超える場合には、第1抗菌剤の含有量が多すぎて、第1塗膜が脆弱になり、熱交換器用アルミニウムフィン材の耐食性、耐アルカリ性に劣るという問題がある。
上記第1抗菌剤の20℃における水溶解度が10ppmを超える場合には、上記第1抗菌剤が第1塗膜から短時間で溶出してしまい、防カビ性及び/または抗菌性を持続させることが困難になるという問題がある。
上記親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールとその誘導体)、ポリアクリルアミド系樹脂(ポリアクリルアミドとその誘導体)、ポリアクリル酸系樹脂(ポリアクリル酸とその誘導体)、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース系アンモニウム等)、ポリエチレングリコール系樹脂(ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等)等が挙げられる。
また、上記第2塗膜は、水分散性シリカ(コロイダルシリカ)、アルカリケイ酸塩(水ガラス)等を含んでも良い。
上記第1抗菌剤の平均粒径D1が、0.5μm未満である場合には、第1抗菌剤の粒径が小さすぎるため、第1抗菌剤が第2塗膜中へと突出した状態とはなり難く、防カビ性及び/または抗菌性の速効性が得難いという問題がある。一方、上記平均粒径D1が、D1>2(t1+t2)である場合には、第1抗菌剤の平均粒径があまりにも大きく、使用中に塗膜から脱落する危険性が高くなる。
上記第2塗膜中に含まれる抗菌剤は、使用初期段階において親水性樹脂に含まれる水分と速やかに接触することができる。そのため、この場合には、更に、上記熱交換器用アルミニウムフィン材の防カビ性及び/または抗菌性の速効性を向上させることができる。
上記ZPTは、ピリジン系の防カビ・抗菌剤であり、皮膚刺激性がなく、20℃における水溶解度は1.5ppmである。また、上記BCMは、イミダゾール系の防カビ剤であり、皮膚刺激性がなく、20℃における水溶解度は8ppmである。また、上記TBZは、イミダゾール系の防カビ剤であり、皮膚刺激性がなく、20℃における水溶解度は3ppmである。
そして、特に、上記ZPTは、防カビ性及び抗菌性が共に優れているため、上記第1抗菌剤は、ZPTを主成分とすることがより好ましい(請求項2)。
また、上記第1抗菌剤と上記第2抗菌剤は、同じ種類のものを用いても、異なる種類のものを用いてもよい。
この場合には、第1抗菌剤及び/または第2抗菌剤を、第1塗膜及び/または第2塗膜に均一に分散させることができ、凝集を防止することができるため、さらに優れた親水性、防カビ性及び/または抗菌性の持続性効果を得ることができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のソルビタン誘導体等が挙げられる。
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。
また、上記ワックスとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン分散体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
この場合には、上記熱交換器用アルミニウムフィン材を、フィンにプレス加工する際に、優れたプレス加工性を有することができる。
この場合にも、上記熱交換器用アルミニウムフィン材を、フィンにプレス加工する際に、優れたプレス加工性を有することができる。
この場合には、上記基板と、上記第1塗膜との密着性を向上することができる。
本例は、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材にかかる実施例について説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例として、17種類の熱交換器用アルミニウムフィン材(試料E1〜試料E17)と、表2に示すごとく、本発明の比較例として、6種類の熱交換器用アルミニウムフィン材(試料C1〜試料C6)を作製し、各種性能の比較試験を行った。
以下、これを詳説する。
基板2として、JIS A 1050−H26、厚み0.1mmのアルミニウム板を準備した。そして、該基板2に対してリン酸クロメートを浸漬処理することにより、基板2の表面に化成皮膜5を形成した。
上記耐食性樹脂31としては、エポキシ樹脂を用いた。また、上記第1抗菌剤32としては、20℃における水溶解度が1.5ppmのジンクピリチオン(ZPT)を用いた。その平均粒径は表1、2に示す通りである。
上記親水性樹脂41としては、ポリビニルアルコールを用いた。
上記親水性樹脂41としては、上述の試料E1〜試料E10及び試料C1〜試料C6と同様に、ポリビニルアルコールを用いた。また、上記第2抗菌剤42としては、20℃における水溶解度が1.5ppmのジンクピリチオン(ZPT)を用いた。その平均粒径は表1に示す。
本例では、5L/時間の流水にさらし、流水開始直後の試料(初期状態)、流水開始から100時間後の試料について、それぞれ、必要に応じて、耐アルカリ性試験、防カビ性試験、抗菌性試験、親水性試験を行った。
流水100時間後の試料では、防カビ性及び/または抗菌性の持続性を評価するために、防カビ性試験、抗菌性試験を行い、また、耐食性を評価するために耐アルカリ性試験を行った。
なお、初期状態において、親水性試験が不合格であった試料については、100時間後の耐アルカリ性試験、防カビ性試験、抗菌性試験を行わなかった。
耐アルカリ性試験では、幅50mm長さ100mmの試料を、pH13の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液に20℃で1時間浸漬した後、試料の外観を目視にて観察し、耐食性の評価を行った。耐食性は評価が○の場合を合格とし、評価が×の場合を不合格とする。結果を表3、表4に示す。
(評価基準)
○:変色が確認されない場合。
×:変色が確認される場合。
カビ抵抗性試験は、JIS Z 2911(かび抵抗性試験方法)に準拠して行った。
まず、培地として、日水製薬株式会社製のサブロー寒天培地を、水1Lに対して、65.0g(ペプトン10.0g、ブドウ糖40.0g、寒天15.0g)溶解したものを準備した。
・アスペルギルス ニゲル FERM S−1(Aspergillus niger van Tieghem FERM S−1)
・アスペルギルス ニゲル FERM S−2(Aspergillus niger van Tieghem FERM S−2)
・ペニシリウム シトリナム FERM S−5(Penicillium citrinum Thom FERM S−5)
・ペニシリウム フニクロスム FERM S−6(Penicillium funiculosum Thom FERM S−6)
・クラドスポリウム クラドスポリオイデス FERM S−8(Cladosporium cladosporioides(Fresenius)de Vrieg FERM S−8)
・オーレオバシジウム プルランス FERM S−9(Aureobasidium Pullulans(de Bary)Arnaud FERM S−9)
・グリオクラジウム ビレンス FERM S−10(Gliocladium virens Miller,Giddens&Foster FERM S−10)
・フザリウム プロリフェラーツム FERM S−12(Fusarium Proliferatum(Matusima)Nirenbeg FERM S−12)
次に、幅30mm、長さ30mmの試料を塗装面が上になるようにして上記平板培地の上にのせ、混合胞子懸濁液1mLを塗装面の中央付近に滴下し、28±2℃にて培養を行った。滴下した混合胞子懸濁液は、塗装面全面及びその周辺の培地上に拡がる。周辺に拡がらない場合は、滅菌したスプレッダーにて拡げる。培養は、培地の乾燥を防ぐために、28℃に保った恒温槽中をほぼ飽和湿度になるようにして行った。
(評価基準)
○:阻止帯の形成がある場合。
×:阻止帯の形成がない場合。
なお、初期状態の試料が合格の場合には、防カビ性の初期効果を確認することができ、流水100時間後の試料が合格の場合には、長期に亘る防カビ性を有していることが確認できる。
抗菌性試験はJIS Z 2801:2000(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に準拠して行った。
まず、菌として、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)及び黄色状ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を準備した。
抗菌活性値は、以下の式に基づいて算出した。
抗菌活性値=Log(Y/X)・・・(I)
(上記式中、Xは、抗菌加工試験片の生菌個数値を、Yは、比較対照用の抗菌剤無添加の無加工試験片の生菌個数平均値を表す)
評価が◎及び○の場合を合格とし、評価が×の場合を不合格とする。結果を表3、表4に示す。
(評価基準)
◎:3つの試料片とも抗菌活性値が2.0以上である場合。
○:3つの試料片の抗菌活性値の平均値が2.0以上であり、3つの試料片の抗菌活性値のうち1つ以上が2.0未満である場合。
×:3つの試料片の抗菌活性値の平均値が2.0未満である場合。
なお、流水1時間後の試料が合格の場合には、抗菌性の初期効果を確認することができ、流水100時間後の試料が合格の場合には、長期に亘る抗菌性を有していることが確認できる。
親水性試験は、初期状態の試料について、接触角計を用いて液滴法により測定した。
評価が◎及び○の場合を合格とし、評価が×の場合を不合格とする。結果を表3、表4に示す。
(評価基準)
◎:接触角が20°以下の場合。
○:接触角が20°超え40°以下の場合。
×:接触角が40°超えの場合。
また、第2塗膜に第2抗菌剤が適正な粒径、含有量にて含まれる試料E11、試料E13、試料E14、試料E16は、親水性、及び抗菌性の速効性が共に特に優れていることがわかる。
また、比較例としての試料C2は、第1抗菌剤の含有量が本発明の上限を上回ることにより第1塗膜が脆弱となって、流水100時間後の抗菌性、カビ抵抗性が不合格であった。
また、比較例としての試料C4は、第2塗膜の膜厚t2が本発明の下限を下回るため、親水性が不合格であった。
また、比較例としての試料C6は、第1抗菌剤の平均粒径D1が本発明の下限を下回るため、防カビ性、抗菌性の速効性が十分に得られず、初期状態において抗菌性、防カビ性が不合格であった。
本例は、図3及び図4に示すごとく、銅合金からなる冷媒配管7を、アルミニウムからなるフィン11に設けられた円筒状のカラー部12内に挿入配設することにより上記冷媒配管7と上記フィン11とを一体的に組み付けてなるクロスフィンチューブ61からなる熱交換器6である。
上記フィン11は、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いて形成されている。
熱交換器用アルミウムフィン材としては、上記実施例1の試料E1を用いた。冷媒配管7に用いる銅合金としては、φ6.35mmの内面溝付き管を用いた。
2 基板
3 第1塗膜
31 耐食性樹脂
32 第1抗菌剤
4 第2塗膜
41 親水性樹脂
Claims (7)
- アルミニウムよりなる基板と、該基板の表面に形成した第1塗膜と、該第1塗膜の表面に形成した第2塗膜とからなる熱交換器用アルミニウムフィン材であって、
上記第1塗膜は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル系樹脂のうち少なくとも1種よりなる耐食性樹脂に第1の防カビ性及び/または抗菌性を有する物質(以下、第1抗菌剤という)を含有させてなると共に、膜厚t1が0.5〜10μmであり、
該第1塗膜における上記第1抗菌剤の含有量は、第1塗膜全体の乾燥後重量を100重量部とすると1〜30重量部であり、
上記第1抗菌剤は、20℃における水溶解度が0ppm超え10ppm以下であり、
上記第1抗菌剤の平均粒径D1は、0.5μm≦D1≦2(t1+t2)であり、
上記第2塗膜は、親水性樹脂よりなると共に、膜厚t 2 が0.5〜2μmであり、
上記第2塗膜は、第2の防カビ性及び/または抗菌性を有する物質(以下、第2抗菌剤という)を含有し、
上記第2抗菌剤の含有量は、第2塗膜全体の重量を100重量部とすると、0.1〜5重量部であり、
上記第2抗菌剤は、20℃における水溶解度が0ppm超え10ppm以下であり、
上記第2抗菌剤の平均粒径D 2 は、D 2 ≦2t 2 であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。 - 請求項1において、上記第1抗菌剤は、ジンクピリチオン(ZPT)を主成分とすることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1又は2において、上記第1塗膜及び/または上記第2塗膜は、更に、界面活性剤を含有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記第2塗膜は、更に、ポリエチレングリコール(PEG)を含有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記第2塗膜の表面には、ポリエチレングリコール(PEG)からなる第3塗膜が形成されていることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、上記基板と上記第1塗膜との間に、下地処理層が形成されていることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 銅合金からなる冷媒配管を、アルミニウムからなるフィンに設けられた円筒状のカラー部内に挿入配設することにより上記冷媒配管と上記フィンとを一体的に組み付けてなるクロスフィンチューブからなる熱交換器であって、
上記フィンは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いて形成されていることを特徴とする熱交換器。
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