JP5190308B2 - 排気ガス浄化用触媒 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンなどから排出される排気ガスに含まれる浮遊粒子状物質を浄化する排気ガス浄化用触媒に関する。
ディーゼル燃料を用いる内燃機関は、ガソリン燃料を用いる内燃機関に比べて熱効率が高いことから省エネルギー型のエネルギー機関として注目されている。
ディーゼル機関は、熱効率が高いが、その排気ガスにカーボン、炭化水素、サルフェート等からなる粒径が10μm以下であるような微小な浮遊粒子状物質(Particulate Material(PM))を多く含んでいる。前記浮遊粒子状物質は、大気汚染の主要因と考えられており、また発ガン性や喘息などの疾病との因果関係も指摘されている人体にとって有害物質であって、大気中に放出するまえに、無害化処理が必要である。
前記浮遊粒子状物質を浄化するために、一般的にDPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるセラミックス製などのフィルタ等の捕集装置が用いられている。前記捕集装置により捕集された浮遊粒子状物質は、当該捕集装置内で燃焼されることにより無害の気体に変化することにより浄化される。
前記浮遊粒子状物質において、単独で主成分であるカーボンを燃焼させるには、少なくとも600℃程度の高温状態にまで加熱することが必要である。このような高温状態を実現するために、捕集装置に断熱機構を組み込む必要が生じ、捕集装置が大型になるために、移動体に捕集装置を実装する点では不利である。加えて、そのような高温状態を作り出すためには過剰なエネルギーを必要とするため、エネルギーの有効利用という観点からも不利である。そのため、より低い温度において、浮遊粒子状物質を燃焼できる方法が求められている。
通常、フィルタ内部に、例えば白金その他の貴金属を含む酸化触媒層を塗布等により形成してあり、比較的低い温度にて、浮遊粒子状物質を燃焼せしめることが行われている。従来このような、PMの酸化触媒に関しては、多くの提案がされている。例えばセリアと銀からなる触媒を用いることが提案されている(特許文献1および特許文献2を参照。)。
他には、Pt粒子をCeO2にて内包した粒子と、酸化ジルコニウムおよび酸化ランタンを複合化したセリア基材とを混合して得られる混合物を触媒に用いることが提案されている(特許文献3を参照。)。またセリウム、ジルコニウムおよびランタンを含むPd担持アルミナ粉末を触媒に用いることが提案されている(特許文献4を参照。)。
さらに、Pr0.3Ce0.72、Pr0.35Ce0.652、La0.01Nd0.01Pr0.28Ce0.72などの複合酸化物と、Pt、Pd、Rhなどの貴金属を混合して得られる混合物を触媒に用いることが提案されている(特許文献5を参照。)。
特開2007−296518号公報 特開2007−315328号公報 特開2006−255610号公報 特開2003−290661号公報 特開2003−071250号公報
しかしながら、上記した触媒を用いた場合、燃焼温度の多少の低下は見られるが、依然として、燃焼温度が高く、さらなる改良が要求されるものであった。すなわち、カーボンを含む浮遊粒子状物質を浄化するには、捕集装置を比較的高温にまで加熱する必要があり、上記触媒の性能は、満足されるものではなく、不十分であった。
例えば、特許文献1および特許文献2において、実施例等において具体的に記載されているセリアと銀からなる触媒は、浮遊粒子状物質のより効率的な燃焼には、性能が不十分なセリアを用いており、浮遊粒子状物質を単独で燃焼させる場合に比べて、燃焼温度の多少の低下は見られるが、触媒として満足な性能を有するものではなかった。
また、特許文献3に記載されているPt粒子をCeO2で内包した粒子と、酸化ジルコニウムおよび酸化ランタンを複合化したセリア基材とを混合して得られる混合物は、やはり浮遊粒子状物質を燃焼させるには性能が十分でなく、さらにPt粒子と混合しており、触媒活性が不十分であるために、浮遊粒子状物質の燃焼温度はあまり低くならず、触媒として満足な性能を有するものではなかった。
特許文献4に記載されているセリウム、ジルコニウムおよびランタンを含むPd担持アルミナ粉末もまた、組成や担持させる化合物が不適切であるため、浮遊粒子状物質を燃焼させ、浄化するための十分な性能を有しておらず、触媒として満足な性能を有するものではなかった。
さらに、特許文献5に具体的に記載されているPr0.3Ce0.72、Pr0.35Ce0.652、La0.01Nd0.01Pr0.28Ce0.72などの複合酸化物と、Pt、Pd、Rhなどの貴金属を混合して得られる混合物は、混合する金属の組み合わせが不適切であるため、浮遊粒子状物質を燃焼させ、浄化するための十分な性能を有しておらず、触媒として満足な性能を有するものではなかった。
以上の状況において、本発明の目的は、浮遊粒子状物質を、さらに低い温度にて燃焼させて、浄化することができる排気ガス浄化用触媒を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を続けた結果、セリウムとサマリウム等の希土類元素からなる、特定の結晶構造を有する複合酸化物と、銀等を含む混合物を用いることにより、浮遊粒子状物質をより低い温度で燃焼させることができ、排気ガス浄化用触媒として極めて優れた性能を有することを見出し本発明を完成した。
本発明に従えば、以下の浮遊粒子状物質含有排気ガス浄化用触媒が提供される。
〔1〕
少なくともセリウムを含む複合酸化物と、銀を含む金属またはその化合物とを含む、浮遊粒子状物質を含有する排気ガスの浄化用触媒において、当該複合酸化物が、セリウムとLn(Lnは、サマリウム、ガドリニウム、イットリウム、サマリウムおよびガドリウムの組み合わせ、またはランタンおよびネオジムの組み合わせのいずれかを示す。)からなる、蛍石型結晶構造を有する複合酸化物であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
〔2〕
前記複合酸化物は、その結晶構造中に酸素欠損を有するものである〔1〕に記載の排気ガス浄化用触媒。
〔3〕
前記複合酸化物が、化学式(1)
Ce1-xLnx2-δ (1)
(式中、xは、0<x<0.5の範囲であり、δは、酸素欠損量を示し、0<δ<0.25の範囲である。)
で表される〔2〕に記載の排気ガス浄化用触媒。
〔4〕
前記化学式(1)
Ce1-xLnx2-δ (1)
において、xの範囲が0.02≦x≦0.4である〔3〕に記載の排気ガス浄化用触媒。
〔5〕
前記複合酸化物が、酸化物イオン伝導性を有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
〔6〕
500℃において測定した、前記複合酸化物の酸化物イオン伝導性が、0.00005〜5S/cmである〔5〕に記載の排気ガス浄化用触媒。
〔7〕
前記排気ガス浄化用触媒に含まれる、銀を含む金属またはその化合物が銀または酸化銀である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
〔8〕
Lnが、サマリウム又はイットリウムである請求項1〜7のいずれかに記載の
排気ガス浄化用触媒。
また、本発明にしたがえば、以下の排気ガス浄化装置が提供される。

内燃機関から排出される排気ガスを処理して、当該排気ガスに含まれるカーボンを含む浮遊粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒を配置したことを特徴とする排気ガス浄化装置。
10
前記フィルタの構造が、ウォールスルー型ハニカム形状のフィルタである〔〕に記載の排気ガス浄化装置。
以下に詳述するように、本発明によれば、浮遊粒子状物質を、従来の触媒を用いた場合よりも低い温度で燃焼させることができる。すなわち、より低い温度にて、カーボンを含む浮遊粒子状物質を、効率良く分解させることができる排気ガス浄化用触媒(以下、「カーボン燃焼触媒」ということもある。)を提供することができる。
本発明によって、何故に上記した効果が得られるかについては、その理由乃至メカニズムは必ずしも明確ではないが、基本的に次のように推定される。本発明の複合酸化物は、セリウムとLn(Lnは、上記と同一の元素の組み合わせを示す。)という所定の元素の新規な組み合わせからなり、かつ蛍石型結晶構造を有する複合酸化物を使用している。一般的に、セリウムは4価、Lnは3価をとる元素であるため、蛍石型結晶構造を有する本発明の複合酸化物の結晶構造中には、格子位置の酸化物イオン(O2-)が抜け、酸素欠損(酸化物イオン空孔)が存在すると考えられる。そのため、酸化物イオンが、当該空孔を介して、粒子内を非常に移動しやすく、カーボンを含む浮遊粒子状物質の燃焼時に伴う酸化反応が促進されると推定される。
さらに、本発明においては、特に銀を含む化合物等と混合させることで、この酸化反応がさらに促進され、カーボンを含む浮遊粒子状物質を効率良く、低温で燃焼させ、浄化させることができると考えられる。
本発明の排気ガス浄化用触媒は、セリウム(Ce)とLn(Lnは、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Ru)、イットリウム(Y)およびスカンジウム(Sc)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)からなる、蛍石型結晶構造を有する複合酸化物と、銀を含む金属または化合物とを含む混合物からなる。なお、以下において、Lnは、上記にて定義した元素の組み合わせを示す。
(複合酸化物)
本発明の排気ガス浄化用触媒に含まれる複合酸化物は、セリウムと上記Lnとからなる複合酸化物である。Lnはサマリウム、ガドリニウム、イットリウム、サマリウムおよびガドリウムの組み合わせ、またはランタンおよびネオジムの組み合わせのいずれかであり、なかでもサマリウムまたはイットリウムが好ましく、サマリウムである場合が特に好ましい。
(結晶構造)
また、本発明の排気ガス浄化用触媒に含まれる複合酸化物の結晶構造は、蛍石型構造を有する化合物であり、蛍石型結晶構造を有し、かつ当該結晶構造中に酸素欠損を有する化合物が好ましい。当該複合酸化物が、蛍石型結晶構造であり、また結晶構造中に酸素欠損を有すると、酸化物イオン(O2-)伝導性が向上するため、酸化物イオンが触媒粒子間を容易に移動しやすく、カーボン等の浮遊粒子状物質の分解をより促進して、浮遊粒子状物質を一層低い温度にて燃焼させ、浄化できると考えられる。すなわち、排気ガス浄化用触媒に用いる複合酸化物は、蛍石結晶構造であるとともに、酸化物イオン伝導性を有することが好ましい。
(酸化物イオン伝導性)
具体的には、当該複合酸化物が示す酸化物イオン伝導性は、500℃で測定した場合、0.00005S/cm以上が好ましく、0.0001S/cm以上がより好ましく、0.005S/cm以上がさらに好ましく、0.001S/cm以上が特に好ましい。また上限値としては、5S/cm以下が好ましく、1S/cm以下がより好ましく、0.1S/cm以下がさらに好ましく、0.02S/cm以下が特に好ましい。
酸化物イオン導電体の酸化物イオン伝導性は、直流4端子法、交流4端子法、複素平面インピーダンス解析などの電気的な評価法や、同位体酸素を用いた酸化物イオンの拡散係数測定などによって評価することができる。酸化物イオンの輸率が1に近い物質においては、電気的評価法と拡散係数測定によって評価された酸化物イオン伝導度が一致することが一般的に知られている。酸化セリウムを主成分とする酸化物イオン導電体は、大気中、600℃以下の条件下において酸化物イオンの輸率がほぼ1であることがわかっている。したがって、大気中、600℃以下の条件で電気特性を評価することで、酸化セリウムを主成分とする化合物の酸化物イオン伝導性の有無を判定できる。本発明においては、500℃で、直流4端子法を用いて、酸化物イオン伝導性を測定した。
なお、後述の実施例における「複合酸化物b」についての酸化物イオン伝導性の数値は、実施例2で示したとおりである。また、後述の実施例における「複合酸化物d−j」についても、実施例2に記載の方法で測定したところ、これらの複合酸化物が酸化物イオン伝導性を有することが確認でき、具体的な数値は0.0001〜0.002S/cmの範囲であった。
(複合酸化物の組成)
本発明においては、複合酸化物は、化学式(1)
Ce1-xLnx2-δ (1)
(式中、xは、0<x<0.5の範囲であり、δは、酸素欠損量を示し、0<δ<0.25の範囲である。)
で表される化合物であることが好ましい。
なお、式(1)において、xの範囲については、0.02≦x≦0.4がより好ましく、0.1≦x≦0.3が特に好ましい。また、δの範囲については、0.01≦δ≦0.2がより好ましく、0.05≦δ≦0.15が特に好ましい。
また、xとδに関して、結晶構造中に存在するセリウムが4価である限りにおいてはδ=x/2の関係を満たすことは明らかである。一方、δがδ>x/2の関係にある場合は、4価のセリウムは容易に還元されて3価のセリウムになり、組成物中に3価のセリウムと4価のセリウムが共存することで、当該複合酸化物が酸素原子の欠損を多く有する結晶構造をとるため、触媒の活性が向上して、浮遊粒子状物質をより低い温度で分解できることになる。そのため、δはδ>x/2の関係にあると好ましい。
またLnが3価の元素である場合は、4価のセリウムに対して3価のLnが置換され、Lnの置換量により結晶構造中の酸素欠損を濃度に適宜コントロールできることにより、触媒の活性を調節できるため、Lnは3価の元素であると好ましい。
(複合酸化物粒子の特性等)
本発明において、排気ガス浄化用触媒に含まれるセリウムとLnからなる複合酸化物は、通常、粉末状または粒子状である。当該複合酸化物粉末の比表面積は、BET法により測定した場合、1m2/g以上であると好ましく、なかでも5m2/g以上がより好ましく、10m2/g以上が特に好ましい。また、上限は、1000m2/g以下が好ましく、500m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下が特に好ましい。
なお、実際に排気ガス浄化用触媒として用いる場合、必ずしも粉末状等の形態のままで用いる必要はなく、通常の触媒粒子の常法にしたがい、粒状やペレット状の形状に成型したり、スラリーにして任意の基板上に塗布したりして用いることもできる。
(銀または銀含有金属等)
また、本発明の排気ガス浄化用触媒は、上記複合酸化物とともに、銀を含む金属または銀の化合物を組み合わせて使用することを特徴とする。銀を含む金属または銀の化合物としては、なかでも、銀または銀の酸化物が好ましく、銀がより好ましい。銀または酸化銀を用いると、よりカーボンなどの浮遊粒子状物質の燃焼といった酸化反応が促進され、より低い温度にて排気ガスを浄化することができる。
本発明の排気ガス浄化用触媒に含まれる銀を含む金属または化合物は、当該複合酸化物に対して、銀に換算してモル比で、20〜80%の割合であることが好ましい。
(複合酸化物の製造方法等)
本発明の排気ガス浄化用触媒に含まれるセリウムとLnからなる複合酸化物の製造方法に関しては、特に限定されない。具体的には、液相法、固相法、錯体重合法、ゾル−ゲル法などを用いて、本発明に係る複合酸化物を製造することができる。
なお、当該複合酸化物を製造するにあたり、より高い比表面積を有する粉末を得るには、クエン酸塩法、シュウ酸塩法および共沈法などの液相法を用いることが好ましい。クエン酸、シュウ酸などを用いた液相法により調整する場合、原料を混合した混合物粉末に含まれる炭素、水素などの有機成分は、混合物粉末を空気中で焼成(熱処理)することで除去することができる。
これら液相法の具体的な方法は、すでに公知な製法として確立されており、例えば特開平2−74505号公報などに記載された方法と同様にして製造することができる。
以上の方法により、得られた複合酸化物の化学組成については、ICP発光分析(高周波誘導結合プラズマ発光分析)、蛍光X線分析、化学滴定などにより分析できる。
また、本発明者らの検討によれば、上記したように例えばクエン酸塩法や共沈法を用いることで、共沈物を500℃以下の低温で焼成して本発明に係る複合酸化物を得ることができる。
(本発明の触媒の調製)
本発明の排気ガス浄化用触媒は、上記のようにして得られた複合酸化物粉末と銀を含む金属または化合物の粉末を混合、好ましくは粉砕(解砕)しながら混合することにより、これらを均一に混合した微粉状の混合物とすることにより得られる。複合酸化物粉末と所定の金属の粉末または酸化物の粉末との混合方法は特に限定されず、例えば任意の固体混合機、より好ましくは粉砕機構を備えた固体混合機により、これらを混合(および粉砕)することにより得られる。固体混合機としては、らいかい機、乳鉢、ボールミル、振動ミル、コロイドミル、ミクロンミル、V型混合機、ミュラー型混合機等で混合(および粉砕)することにより、製造することができる。混合・粉砕した複合酸化物は、常法に従い、さらに600〜1200℃程度の温度で焼成してもよい。
なお、これらの粉末の混合方法において、より均一な混合物を得るためには、複合酸化物に対して、銀を含む金属またはその化合物を分散させた溶液を含浸させ、または、銀等の沈殿を当該酸化物粒子の表面に析出させることも好ましい。また、複合酸化物を、クエン酸塩法や共沈法で製造する際に、炭酸セリウムや炭酸サマリウム等を含む同じ液相において、銀も、炭酸銀、硝酸銀等の可溶性塩から共沈させる手段を採用することもできる。この場合は、複合酸化物の沈殿と銀の沈殿が、粒子の析出段階から均一に混合するので、原理的に非常に均一な混合粒子が得られ、好ましい。
さらに、共沈法などで得た酸化触媒粉末をさらに上記のごとくして機械的に混合処理(および粉砕処理)することも好ましい。
本発明の酸化触媒の比表面積は、0.1〜1000m2/g、好ましくは0.5〜200m2/g、更に好ましくは1〜100m2/g程度である。
(排ガス浄化装置)
本発明は、また、内燃機関から排出される排気ガスを処理して、当該排気ガスに含まれるカーボンを含む浮遊粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、上記した排気ガス浄化用触媒を配置した排気ガス浄化装置を提供するものである。
ここで、本発明の排気ガス浄化装置としては、本発明の排気ガス浄化用触媒を備えるものであれば良く、実施形態は特に限定されず、通常の形態を適用することができる。好適な実施形態の1つとしては、ディーゼル機関の排出ガスの排出口に浮遊粒子状物質を捕集できるフィルタを設置した装置が例示される。このフィルタの形状は特に限定されず、本発明の排気ガス浄化用触媒を備えるものであれば良いが、まず、十分な浮遊粒子状物質捕集機能を有するものが好ましい。例えば、ハニカム状、モノリス状、ペレット状、フォーム状、ファイバー状、発泡状のセラミックスまたはワイヤメッシュ等が使用できる。これらの中でも、触媒の活性の観点から、ウォールスルー型ハニカム形状のフィルタがより好ましい。フィルタの材質は特に限定されないが、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、ジルコニアなどの多孔質状耐熱セラミックス、またはクロム、アルミニウムなどを含むステンレス鋼が好適に使用される。これらのウォールスルー型ハニカム形状のフィルタ上に、浸漬法や共沈法などの手段、およびこの焼成により、触媒層を形成することができる。
なお、これらのセラミックスや金属は、酸化触媒の担体としても使用することができる。例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ等の無機粉末または粒子状担体上に、浸漬や共沈などの手段により、当該触媒を担持させることも好ましい。
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれら実施例に限定されたり、また、これにより限定的に解釈されたりするものではない。なお、%とあるものは、とくに断りなき限り、重量%である。
以下の実施例において、X線回折の測定には、粉末X線回折測定法を用いた。使用測定機器としては、Rigaku社製のXRD測定装置RINT2000を用い、X線源として出力を40kV、40mAとしたCuKα線を使用した。測定試料は該当する粉末を測定装置専用のアルミ製冶具に充填し、測定表面をガラス板で平滑にすることで作製した。測定は、θ/2θ法で、2θ範囲を10〜80°、測定スピードを2°/minとした連続測定で行い、取得したデータを評価用のX線回折パターンとした。
〔実施例1〕
(1)撹拌機を備えた、撹拌槽型反応容器中で、炭酸セリウム56.8gと炭酸サマリウム11.1gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム99.0gとクエン酸131.5gを加え、70〜80℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。この懸濁液の撹拌を続けながら、炭酸銀28.6gとクエン酸29.0gを当該懸濁液に投入し、2時間反応させて、セリウムとサマリウムおよび銀を含むスラリーを得た。
得られたスラリーを濾過し、105℃で乾燥し、水分を除去して得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して、Ce0.8Sm0.22-δ(δ=0.1)の組成を有する複合酸化物と銀を含む灰色の粉末を得た。当該灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒A」とし、粉末中の複合酸化物を「複合酸化物a」とする。
(2)BET法により測定したカーボン燃焼触媒Aの比表面積は、61.6m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒AのX線回折の測定を行ったところ、複合酸化物aの結晶構造は蛍石型構造であり、カーボン燃焼触媒Aは、複合酸化物aと銀の混合物であることが確認された。
〔実施例2〕
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム47.5gと炭酸サマリウム9.5gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム80.0gとクエン酸110.0gを加え、70〜80℃の温度にて、撹拌しつつ2時間反応させて、セリウムとサマリウムを含むスラリーを製造した。得られたスラリーを、濾過後、105℃で乾燥し水分を除去して得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して、Ce0.8Sm0.22-δ(δ=0.1)の組成を有する黄色の複合酸化物を得た。この黄色の複合酸化物を「複合酸化物b」とする。BET法により測定した複合酸化物bの比表面積は80.9m2/gであった。次いで、当該複合酸化物bのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物bの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、直流4端子法を用いて、当該複合酸化物bの酸化物イオン伝導性を測定した。金型と一軸プレス機を用いてこの複合酸化物bを、幅5mm、長さ15mm、厚さ2〜5mmに加圧成型した後、大気中、1200℃で10時間焼成し、棒状の多結晶焼結体を得た。棒状焼結体の表面を紙やすりで研磨し、さらにダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨し、平滑化した表面に白金線と白金ペーストを用いて白金電極を形成し、さらに大気中、1000℃で焼結体に白金電極を焼き付けた。大気中、500℃で当該多結晶焼結体の4端子直流伝導度を測定した。得られた電気伝導度は0.002S/cmであった。この電気伝導度の値は酸化物イオン伝導度を表し、複合酸化物bは、酸化物イオン導電体であることがわかった。すなわち複合酸化物bの酸化物イオン伝導度は、大気中500℃において、0.002S/cmであった。
(3)さらに、1.00gの複合酸化物bを10mlのイオン交換水に分散させ、炭酸銀0.8gとクエン酸0.5gを添加して、室温で1時間撹拌してスラリーを得た。続いて、このスラリーをホットプレートで70〜80℃に加熱し、乾固させて得られた固体を空気中、400℃で3時間の焼成し、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒B」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Bの比表面積は、32.3m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒BのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Bは複合酸化物bと銀の混合物であった。
〔実施例3〕
炭酸銀0.8gとクエン酸0.5gの代わりに、硝酸銀1.0gを添加したこと以外は実施例2と同様にして、灰色の粉末状化合物を得た。この粉末状化合物を「カーボン燃焼触媒C」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Cの比表面積は、26.6m2/gであった。
次いで、カーボン燃焼触媒CのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Cは、複合酸化物bと銀の混合物であった。
〔実施例4〕
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム176.8gと炭酸ガドリニウム15.55gを1000mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、クエン酸158.0gを加え、40〜60℃の温度で、2時間撹拌して、セリウムおよびガドリニウムを含むスラリーを得た。得られたスラリーを濾過後、105℃で乾燥し、水分を除去して、得られた乾燥物を400℃、空気中で10時間焼成して、粉末を得た。当該粉末を粉砕、混合して、次いで600℃、空気中にて10時間焼成し、さらに当該焼成粉末を粉砕、混合した後、1000℃、空気中にて10時間焼成し、Ce0.9Gd0.12-δ(δ=0.05)の組成を有する白色の複合酸化物を得た。なお、この粉砕、混合にはボールミルを使用した。ボールミルを用いて当該複合酸化物を粉砕、整粒し「複合酸化物d」を得た。
(2)BET法により測定した当該複合酸化物dの比表面積は、10.7m2/gであった。次いで、複合酸化物dのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物Dの結晶構造は蛍石型構造であることが確認された。
(3)さらに、1.00gの当該複合酸化物dを、10mlのイオン交換水に分散させ、硝酸銀1.0gを添加して、室温で1時間撹拌してスラリーを得た。続いて、このスラリーをホットプレートで70℃〜80℃に加熱し、乾固させて得られた固体を、空気中、400℃で3時間の焼成し、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒D」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Dの比表面積は、5.6m2/gであった。
次いで、カーボン燃焼触媒DのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Dは複合酸化物dと銀の混合物であった。
〔実施例5〕
(1)実施例1で使用した反応容器中で、炭酸セリウム47.5gと炭酸イットリウム7.0gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム83.0gとクエン酸110.0gを投入し、70〜80℃で2時間撹拌して、セリウムとイットリウムを含むスラリーを得た。得られたスラリーを105℃で乾燥し水分を除去して得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して、Ce0.80.22-δ(δ=0.1)の組成を有する白色の粉末を得た。この白色の粉末を「複合酸化物e」とする。BET法により測定した複合酸化物Eの比表面積は、73.7m2/gであった。次いで、複合酸化物eのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物eの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、当該複合酸化物eを使用して、カーボン燃焼触媒を得るため、1.00gの当該複合酸化物eを10mlのイオン交換水に分散させ、炭酸銀0.8gとクエン酸0.5gを添加した後、室温で1時間の撹拌をしてスラリーを得た。続いて、このスラリーをホットプレートで70〜80℃に加熱し、乾固させて得られた固体を空気中、400℃で3時間の焼成し、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒E」とする。
(3)BET法により測定したカーボン燃焼触媒Eの比表面積は、24.2m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒EのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Eは、複合酸化物eと銀の混合物であることが確認された。
比較例1
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム82.2gと炭酸プラセオジム7.1gと炭酸ガドリニウム8.4gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液を1時間撹拌した後、50℃まで加熱し、クエン酸85gを投入し、50℃で2時間撹拌して、セリウム、プラセオジムおよびガドリニウムを含むスラリーを得た。得られたスラリーを105℃で乾燥し水分を除去して、得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して得られた粉末を乳鉢で粉砕、混合し、600℃、空気中にて10時間焼成した。さらに得られた焼成粉末を乳鉢で粉砕、混合し、1000℃、空気中で10時間焼成し、Ce0.8Pr0.1Gd0.12-δ(δ=0.1)の組成を有する白色の複合酸化物の粉末を得た。振動ミルを用いて当該複合酸化物を粉砕、整粒し、これを「複合酸化物f」とする。BET法により測定した複合酸化物fの比表面積は、14.9m2/gであった。次いで、複合酸化物fのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物fの結晶構造は蛍石型構造であることが確認された。
(2)さらに、カーボン燃焼触媒を得るため、複合酸化物dの代わりに複合酸化物fを使用したこと以外は実施例4と同様にして処理し、銀を沈積させ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒F」とする。
(3)BET法により測定したカーボン燃焼触媒Fの比表面積は、5.1m2/gであった。
また、当該カーボン燃焼触媒FのX線回折を測定したところ、カーボン燃焼触媒Fは複合酸化物fと銀の混合物であった。
比較例2
(1)撹拌機を備えた反応容器中で、50℃に加熱されたイオン交換水300mlを撹拌しつつ、酸化ランタン7.2gと硝酸セリウム83.4gと硝酸プラセオジム25.7gを投入後、クエン酸94.5gをただちに投入し、3時間撹拌して、セリウム、ランタンおよびプラセオジムを含むスラリーを得た。得られたスラリーを105℃で乾燥し、水分を除去して、得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して得られた粉末を乳鉢で粉砕、混合し、600℃、空気中で10時間焼成した。さらに当該焼成粉末を乳鉢で粉砕、混合し、1200℃、空気中で6時間焼成し、Ce0.65La0.15Pr0.22-δ(δ=0.175)の組成を有する白色の粉末を得た。この白色の粉末を、「複合酸化物g」とする。BET法により測定した複合酸化物gの比表面積は、1.8m2/gであった。次いで、複合酸化物gのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物gの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、カーボン燃焼触媒を得るため、複合酸化物dの代わりに複合酸化物gを使用したこと以外は実施例4と同様にして、銀を沈積させ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を、「カーボン燃焼触媒G」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Gの比表面積は、0.6m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒GのX線回折を測定したところ、カーボン燃焼触媒Gは複合酸化物gと銀の混合物であった。
比較例3
(1)実施例と同じ反応容器中で、炭酸セリウム27.0gと酢酸ランタン11水和物3.0gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム40.0gとクエン酸55.0gを加え、70〜80℃の温度で、2時間撹拌して、セリウムとランタンを含む黄色透明の水溶液を得た。得られた水溶液を105℃で加熱して、水分を除去し、得られた乾燥物を400℃、空気中で10時間焼成して、さらに600℃、空気中で3時間焼成してCe0.9La0.12-δ(δ=0.05)の組成を有する黄色の粉末を得た。この黄色の粉末を「複合酸化物h」とする。複合酸化物hのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物hの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、カーボン燃焼触媒を得るため、複合酸化物dの代わりに複合酸化物hを使用したこと以外は実施例4と同様にして、銀を沈着せしめ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒Hと」する。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Hの比表面積は、30.5m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒HのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Hは複合酸化物hと銀の混合物であった。
比較例4
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム27.0gと炭酸ネオジム2.5gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム40.0gとクエン酸55.0gを加え、70〜80℃の温度にて、撹拌しつつ2時間反応させセリウムとネオジムを含む黄色透明の水溶液を得た。得られた水溶液を105℃で加熱して水分を除去し、得られた乾燥物を400℃、空気中で10時間焼成して、さらに600℃、空気中で3時間焼成してCe0.9Nd0.12-δ(δ=0.05)の組成を有する黄色の粉末を得た。この黄色の粉末を「複合酸化物i」とする。次いで、複合酸化物iのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物iの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、カーボン燃焼触媒を得るにあたり、複合酸化物dの代わりに複合酸化物iを使用したこと以外は実施例4と同様にして、銀を沈積させ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒I」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Iの比表面積は、25.1m2/gであった。
次いで、カーボン燃焼触媒IのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Iは複合酸化物iと銀の混合物であった。
〔実施例
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム35.7gと酢酸ランタン11水和物2.0と炭酸ネオジム1.6gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム70.0gとクエン酸60.0gを加え、70〜80℃の温度で、2時間撹拌して、セリウム、ランタンおよびネオジムを含む黄色透明の水溶液を得た。得られた水溶液を105℃で加熱して水分を除去し、得られた乾燥物を400℃、空気中で10時間焼成して、さらに600℃、空気中で3時間焼成してCe0.9La0.05Nd0.052-δ(δ=0.05)の組成を有する黄色の粉末を得た。この黄色の粉末を「複合酸化物j」とする。次いで、複合酸化物jのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物jの結晶構造は蛍石型構造であった。
(2)さらに、カーボン燃焼触媒を得るために、複合酸化物dの代わりに複合酸化物jを使用したこと以外は実施例4と同様にして、銀を沈着せしめ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒J」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Jの比表面積は、27.5m2/gであった。次いで、カーボン燃焼触媒JのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Jは複合酸化物jと銀の混合物であった。
〔比較例
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム59.5gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム85.0gとクエン酸110.0gを加え、70〜80℃の温度で、2時間撹拌して、スラリーを得た。得られたスラリーを105℃で水分を除去して、得られた乾燥物を400℃、空気中で10時間焼成して、CeO2の組成を有する黄色の粉末を得た。この黄色の粉末を「酸化物k」とする。この条件で焼成する場合、酸素欠損は極めて小さくなり、組成は実質的にCeO2となると考えられる。(なお、当該酸化物kにおいて、3価のセリウムがわずかに存在し、微小量の酸素欠損が存在する可能性も考えられるが、この量は実質的に無視できるとしてよい。)
(2)BET法により測定した酸化物kの比表面積は、81.7m2/gであった。
次いで、酸化物kのX線回折の測定をしたところ、酸化物kの結晶構造は蛍石型構造であった。この酸化物kをそのまま「カーボン燃焼触媒K」とする。
(3)さらに、直流4端子法を用いて、実施例2と同様にして、酸化物kの酸化物イオン伝導性を測定した。その結果、電気抵抗は非常に高く一般的な直流4端子法の測定限界とされる107Ωcmを越えたため電気伝導度を測定することは出来なかった。このことは、作成した酸化物k(すなわち実質的にCeO2からなる。)において、いかなる電荷キャリアも有効な濃度で存在していないことを意味する。つまり、酸化物kに含まれるセリウムは、空気中500℃では、ほぼ完全に4価であることを意味する。
〔比較例
実施例2と同様にして「複合酸化物b」を得た。この複合酸化物を「カーボン燃焼触媒L」とする。
〔比較例
(1)特許文献1に記載の方法にしたがい、セリアからなる酸化物、セリアと銀からなるカーボン燃焼触媒を調製した。すなわち、硝酸セリウム0.02molおよびイオン交換水を適量秤量し混合溶液とした。炭酸ナトリウム3.2gおよびイオン交換水を適量混合した溶液に上記混合溶液を7ml/minの速度で滴下し、沈殿物を得た。得られた沈殿物はろ液が中性になるまでイオン交換水を用いて濾過洗浄を繰り返し、洗浄終了後、200℃で2時間、熱処理を行った後、350℃で3時間の熱処理して、乾燥物を得た。得られた乾燥物を製粒(造粒)し、粒径が2μm以下の粉末を得た。当該粉末を空気中、800℃で10時間焼成し、粉末を得た。この粉末を「酸化物m」とする。
(2)3.00gの酸化物mと硝酸銀0.52gを10mlのイオン交換水に分散させ、105℃に加熱し、乾固させ、さらに空気中、200℃で2時間、空気中、600℃で2時間の焼成をして得られた粉末を粒径が2μm以下となるように整粒して得た粉末を、「カーボン燃焼触媒M」とする。
BET法により測定したカーボン燃焼触媒Mの比表面積は、8.3m2/gであった。
〔比較例
(1)実施例1と同じ反応容器中で、炭酸セリウム6.0gと炭酸サマリウム18.5gを100mlのイオン交換水に加えて得られた懸濁液に、炭酸アンモニウム40.0gとクエン酸55.0gを加え、70〜80℃の温度、2時間撹拌して、セリウムとサマリウムを含むスラリーを得た。得られたスラリーを105℃で水分を除去して、得られた乾燥物を400℃、空気中にて10時間焼成して、Ce0.2Sm0.82-δ(δ=0.4)の組成を有する黄色の粉末を得た。この黄色の粉末を「複合酸化物n」とする。BET法により測定した複合酸化物nの比表面積は12.5m2/gであった。
(2)次いで、複合酸化物nのX線回折の測定をしたところ、複合酸化物nの結晶構造はSm23類似の構造であった。この黄色の粉末(複合酸化物n)をそのまま「カーボン燃焼触媒N」とする。
〔比較例
カーボン燃焼触媒を得るにあたり、複合酸化物dの代わりに複合酸化物nを使用したこと以外は、実施例4と同様にして、これに銀を沈積させ、灰色の粉末を得た。この灰色の粉末を「カーボン燃焼触媒O」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Oの比表面積は、4.7m2/gであった。
次いで、カーボン燃焼触媒OのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Oは複合酸化物nと銀の混合物であった。
〔比較例10
まず、実施例2と同様にして複合酸化物bを得た。
白金黒0.34gを硝酸と塩酸が体積比で1:3で混合された王水5mlに溶解させた。この白金の王水溶液を70〜80℃に加熱し、蒸発乾固させ、橙色の塩化白金酸を得た。得られた塩化白金酸を20mlのイオン交換水に溶解させた水溶液に、上記複合酸化物bを0.3g添加し、70〜80℃に加熱し、白金と複合酸化物bを含む乾燥物を得た。この乾燥物を空気中、400℃で3時間焼成して得られた粉末を「カーボン燃焼触媒P」とする。BET法により測定したカーボン燃焼触媒Pの比表面積は、21.8m2/gであった。
次いで、カーボン燃焼触媒PのX線回折の測定をしたところ、カーボン燃焼触媒Pは複合酸化物bと白金の混合物であった。
(X線回折の測定結果の評価、考察)
上記の実施例および比較例に記載した「酸化物」、「複合酸化物」および「カーボン燃焼触媒」の粉末X線回折の測定から得られたX線回折パターンを解析して、判明した結晶構造の結果を表1にまとめた。また図1〜図4に、2θ=20〜60°の範囲で各試料のX線回折パターンを示した。
Figure 0005190308

図1に複合酸化物b(実施例2)および複合酸化物nとカーボン燃焼触媒B(実施例2)のX線回折パターンを示す。図中の黒丸(●1〜4)は蛍石型の結晶構造に起因する回折ピークであり、複合酸化物bに関するすべての回折ピークは、当該複合酸化物が蛍石型の結晶構造を有していることを示している。図中の白丸(○1〜2)は金属状態の銀に由来するX線回折ピークであり、カーボン燃焼触媒Bにおいて金属状態の銀が生成していることが示され、さらには蛍石型の結晶構造に起因する回折ピークと金属状態の銀由来の回折ピーク、すなわち図中の黒丸と白丸で表される回折ピークのみが観察される。また、複合酸化物bのX線回折パターンとカーボン燃焼触媒BのX線回折パターンにおいて、蛍石型の結晶構造に起因する回折ピークは、その回折角度2θが変化していない。
以上のことから、(i)複合酸化物bがCeとSmのみからなる複合酸化物〔Ce0.8Sm0.22-δ(δ=0.1)の組成を有する。〕であって、その結晶構造が蛍石型であること、(ii)カーボン燃焼触媒Bは蛍石型の結晶構造有する複合酸化物と金属状態の銀の混合物であること、および(iii)カーボン燃焼触媒Bにおいて複合酸化物は分解や銀と反応することなく、複合酸化物bの状態を保持していることが示される。
図2に複合酸化物b〜j(実施例2〜5、6、比較例1〜4)のX線回折パターンを、図3にカーボン燃焼触媒A〜J(実施例1〜5、6、比較例1〜4)のX線回折パターンを示す。上記と同様に回折ピークを分析することで、すべての複合酸化物が蛍石型の結晶構造を有していることが示される。また全てのカーボン燃焼触媒A〜Jは、銀を含まない複合酸化物b〜jと金属状態の銀のみからなる混合物であることが示される。
図2において、複合酸化物bと複合酸化物eの回折ピーク角度がわずかに異なるのはCeと組み合わせた元素種Ln(この場合ではSmとY)のイオン半径の違いによる格子定数の違いを反映しているが、両者が共に蛍石型の結晶構造を有する事実は保持される。任意の異なる種類の複合酸化物間のX線回折ピーク角度の違いは、Ceと組み合わせた元素種Ln(例えばSmやY等)のイオン半径に起因するため、組み合わせに用いた元素種とCeに対する添加量、すなわち式(1)で表される複合酸化物の化学組成の違いを反映しているだけのものである。
図1に複合酸化物n(比較例)のX線回折パターンを、複合酸化物bとカーボン燃焼触媒BのX線回折パターンに併せて示す。複合酸化物nの回折ピーク(△)は複合酸化物bと異なり、黒丸(●1〜4)、すなわち蛍石型の結晶構造に起因する回折ピークが観測されない。複合酸化物nの回折ピークは、複合酸化物nの結晶構造がSm23の結晶構造に類似であることを示している。
しかしながら、複合酸化物nにおいては、このようにCeとSmを組み合わせたとしても、相対的にSmの濃度が高く、Ce0.2Sm0.82-δという表記において、酸素欠損量δ=0.4と過剰になるために、蛍石型構造を維持できなくなっていることが示される。
図3にカーボン燃焼触媒A〜JのXRDパターンを、図4にカーボン燃焼触媒K〜PのXRDパターンを示す。カーボン燃焼触媒N、Oに含まれる複合酸化物nの結晶構造がSm23類似の構造であり、また蛍石型の結晶構造に起因する回折ピーク(●1〜4)を有し、カーボン燃焼触媒K、L、M、Pに含まれるそれぞれの複合酸化物の結晶構造が蛍石型であることがわかる。また、○1〜2の回折ピークを有することから、カーボン燃焼触媒形が、酸化物と金属状態の銀、複合酸化物と金属状態の銀、または金属状態の白金の混合物であることをわかる。
(カーボン燃焼触媒のTG/DTAの測定)
上記した実施例、比較例で得られた各カーボン燃焼触媒に関して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定)を測定して、排気ガス浄化能力の特性評価をした。TG/DTAの測定には、TG/DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジ−社製 モデル:TG/DTA6300)を用いた。上記した実施例、比較例で得られたそれぞれのカーボン燃焼触媒100mgと、5.0mgのカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストFM)とを混合して、混合物を得た。この混合物21mgサンプリングし、白金パンに充填し測定試料とした。リファレンスにはα−アルミナの粉末を用いた。TG/DTAの測定は50〜600℃の温度範囲にて昇温過程について行い、測定時の条件は昇温速度10℃/min、Air流速400ml/minとした。(ただし、カーボン燃焼によらない重量減少が認められる評価サンプルについては、TG/DTA装置内にて評価サンプルを適度に加熱し、この種の重量減少が消失することを確認した後、前記の条件でカーボン燃焼触媒としての特性評価を実施した。)各試料のDTA曲線を図5〜図7に示した。また、DTA曲線においてピークが観測された温度をDTAピーク温度Tmとして、このDTAピーク温度を表2にまとめた。
Figure 0005190308
(DTA測定結果の評価)
図5には、評価サンプルA(実施例1)、評価サンプルL(比較例)、評価サンプルM(比較例)、および評価サンプルP(比較例10)のそれぞれのサンプルに関して、DTA曲線を示す。
評価サンプルA〜CのDTAピーク温度Tmは、すべて350℃よりも低温であり、評価サンプルLのDTAピーク温度は460℃である。このように本発明においては、同種の複合酸化物であっても、これに銀を組み合わせることで、DTAピーク温度を100℃以上も低下させることができる。これに対し、同種の複合酸化物に、白金を組み合わせる場合(評価サンプルP)、DTAピーク温度Tmはほとんど低下しなかった。これは、特異的に銀と複合酸化物の組み合わせがカーボン燃焼触媒の特性向上に有効であることを示している。
一方、評価サンプルMのDTAピーク温度Tmは394℃であり、酸素欠損量δの小さい酸化セリウムと銀を組み合わせた場合には、銀との組み合わせによるDTAピーク温度の低下は認められるものの、より多くの酸素欠損を含む複合酸化物と銀の組み合わせに比べて、DTAピーク温度は依然として高い。銀と組み合わせる複合酸化物の酸素欠損量δを大きくすることがカーボン燃焼触媒の特性向上に有効であることを示している。
図6には評価サンプルA(実施例1)、評価サンプルK(比較例)、評価サンプルN(比較例)および評価サンプルO(比較例)のそれぞれのサンプルに関して、DTA曲線を示す。DTAピーク温度Tmは、評価サンプルAが最も低く、次いで評価サンプルO、評価サンプルKが低く、評価サンプルNが最も高いという関係にある。
以上より、CeとSmという同じ元素種の組み合わせであっても蛍石型の結晶構造を有している評価サンプルA(実施例1)の方が、Sm23に類似の結晶構造を有する評価サンプルN(比較例)および評価サンプルO(比較例)に比べて、DTAピーク温度が低下することがわかる。これは、過剰な酸素欠損の導入(δ=0.1→δ=0.4)が結晶構造を変化させ、カーボン燃焼触媒の特性を低下させていると考えられる。
図7に評価サンプルA〜E(実施例1〜5)の、図8に評価サンプルF〜J(比較例1〜4、実施例6)の、図9に評価サンプルK〜P(比較例5〜10)のDTA曲線をそれぞれ示す。図9から明らかなように、特許文献1に示される方法を用いて製造された評価サンプルO(比較例)は、比較例5〜10の中で最も低いDTAピーク温度を示す。しかしながら、本発明の実施例(実施例1〜)で作製した評価サンプルのすべてが、当該比較例中で最も活性の高い評価サンプルOよりも、いずれも一層低いDTAピーク温度を示していることから、本発明の実施例で示したカーボン燃焼触媒は、カーボン燃焼に対して、より高い特性を発現していると言える。
なお、表2より、評価サンプルA〜Jのうち、ランタンやネオジムを使用する評価サンプルH〜J(比較例3〜4、実施例)は、評価サンプルO(比較例)よりも低いDTAピーク温度を示すものの、サマリウムを使う評価サンプルA(実施例1)などに比べてDTAピーク温度が高く、実施例の中ではサマリウムの場合、比較的カーボン燃焼特性が低いと言える。これは式(1)の遷移金属Lnにおいて、サマリウムがランタンやネオジムと比較して、より好ましいものであることを示していると考えられる。
本発明によれば、カーボンを含む浮遊粒子状物質を、従来よりも低い温度で燃焼させ、効率良く分解することができる、高性能の排気ガス浄化用触媒を提供することができる。
カーボン燃焼触媒B、複合酸化物bおよび複合酸化物nのX線回折パターンを示すグラフである。 複合酸化物b−jのX線回折パターンを示すグラフである。 カーボン燃焼触媒A−JのX線回折パターンを示すグラフである。 カーボン燃焼触媒K−PのX線回折パターンを示すグラフである。 評価サンプルA、L、MおよびPのDTA曲線を示グラフである。 評価サンプルA、K、NおよびOのDTA曲線を示すグラフである。 評価サンプルA−EのDTA曲線を示すグラフである。 評価サンプルF−JのDTA曲線を示すグラフである。 評価サンプルK−PのDTA曲線を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 少なくともセリウムを含む複合酸化物と、銀を含む金属またはその化合物とを含む、浮遊粒子状物質を含有する排気ガスの浄化用触媒において、当該複合酸化物が、セリウムとLn(Lnは、サマリウム、ガドリニウム、イットリウム、サマリウムおよびガドリウムの組み合わせ、またはランタンおよびネオジムの組み合わせのいずれかを示す。)からなる、蛍石型結晶構造を有する複合酸化物であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  2. 前記複合酸化物は、その結晶構造中に酸素欠損を有するものである請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
  3. 前記複合酸化物が、化学式(1)
    Ce1-xLnx2-δ (1)
    (式中、xは、0<x<0.5の範囲であり、δは、酸素欠損量を示し、0<δ<0.25の範囲である。)
    で表される請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
  4. 前記化学式(1)
    Ce1-xLnx2-δ (1)
    において、xの範囲が0.02≦x≦0.4である請求項3に記載の排気ガス浄化用触媒。
  5. 前記複合酸化物が、酸化物イオン伝導性を有する請求項1〜4のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
  6. 500℃において測定した、前記複合酸化物の酸化物イオン伝導性が、0.00005〜5S/cmである請求項5に記載の排気ガス浄化用触媒。
  7. 前記排気ガス浄化用触媒に含まれる、銀を含む金属またはその化合物が銀または酸化銀である請求項1〜6のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
  8. Lnが、サマリウム又はイットリウムである請求項1〜7のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
  9. 内燃機関から排出される排気ガスを処理して、当該排気ガスに含まれるカーボンを含む浮遊粒子状物質を捕集可能なフィルタの内部に、請求項1〜のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒を配置したことを特徴とする排気ガス浄化装置。
  10. 前記フィルタの構造が、ウォールスルー型ハニカム形状のフィルタである請求項に記載の排気ガス浄化装置。
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