JP5190083B2 - S100a8発現調節剤 - Google Patents

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本発明は、S100A8の発現を調節するS100A8発現調節剤に関する。
S100A8(別名:カルグラニュリンA又はMRP-8)は、カルシウム応答性を有するカルシウム結合タンパク質である(非特許文献1)。S100A8は、カルシウム結合タンパク質のカルシウム結合部位に共通してみられるEFハンド(EF-hand)と呼ばれる立体構造を有する。
近年、急性期応答、創傷治癒及び乾癬などの角化亢進に伴い、S100A8の発現が亢進することが報告されている(非特許文献2〜4)。また、S100A8はケラチン繊維と結合するなど、細胞外及び細胞内における分子間相互作用に関与することが報告されている(非特許文献5〜6)。
一方、S100A8遺伝子やS100A8の発現を促進する物質が、S100A8の減少に伴う皮膚疾患、創傷、創傷治癒遅延及び毛髪の成長促進に有効であることが報告されている(特許文献1〜2)。
さらに、S100A8の機能として、好中球及び単球の遊走活性を上昇させること(非特許文献7)及び抗菌活性を示すこと(非特許文献8)が報告されている。
最近では、顆粒放出能を有する細胞系における活性型S100A8を制御することで、顆粒放出反応を制御できることが見出されている(特許文献3)。上記細胞系を、活性型S100A8を増加せしめる処理に供することで、該細胞系は顆粒放出し、一方、活性型S100A8を減少せしめる処理に供することで、該細胞系の顆粒放出が減少する。例えば、顆粒放出能を有する細胞系である好中球を、活性型S100A8を減少せしめる処理に供することによって、好中球の顆粒放出反応を抑制し、血管内膜の障害を抑制できることが報告されている。
米国特許出願公開第2003/0003482号明細書 特表2000-501115号公報 国際公開第00/18970号パンフレット
Donato, R., Biochim. Biophys. Acta., 1450, 191-231, 1999 Thorey, I.S.ら, J. Biol. Chem., 276, 35818-25, 2001 Siegenthaler, G.ら, J. Biol. Chem., 272, 9371-77, 1997 Broome, AM.ら, J. Histochem. Cytochem., 51, 675-685, 2003 Donato, R., International J. Biochem. & Cell Biology, 33, 637-668, 2001 Goebeler, M.ら, Biochem. J., 309, 419-424, 1995 Geczy, C.L., Biochim. Biophys. Acta., 1313, 246-253, 1996 Murthy, A.R.K.ら, J. Immunol., 151, 6291-6301, 1993
本発明は、例えば、S100A8の過剰発現や発現低下に関連して生じる各種症状や疾患の予防又は治療に有用な、生体内においてS100A8の発現を調節するS100A8発現調節剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、S100A8の発現を調節する天然物質について検討したところ、特定の植物等にS100A8の発現を促進又は抑制する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下を包含する。
(1)植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースからなる群から選ばれる1以上を有効成分とするS100A8発現調節剤。
(2)上記植物が、マメ科、シソ科、キク科、ウコギ科、ミカン科、ツバキ科、アカネ科、スミレ科、アオギリ科、イチョウ科、ムロクジ科、シナノキ科、ムラサキ科、クラメリア科、スイカズラ科、クスノキ科、リンドウ科、ウリ科、イネ科、カバノキ科、フトモモ科、ナス科、キンポウゲ科、ウルシ科、ヒユ科、ミズキ科又はバラ科に属する植物であることを特徴とする、(1)記載のS100A8発現調節剤。
(3)上記植物がログウッド、ダイズ、イナゴマメ、シソ、メリッサ、マンネンロウ、エキナセア、アルニカ、カワラヨモギ、セイヨウキズタ、トチバニンジン、グレープフルーツ、チャ、キナ、サンシキスミレ、コラ、イチョウ、ガラナ、ライム、ムラサキ、ラタニア、ニワトコ、シナモン、ゲンチアナ、カボチャ、ハトムギ、ヘーゼルナッツ、グアバ、ナス、サラシナショウマ、ヌルデ、ヒナタイノコズチ、サンシュユ又はペールローズであることを特徴とする、(1)記載のS100A8発現調節剤。
(4)植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物及びこれらの抽出物並びにトレハロースからなる群から選ばれる1以上を有効成分とするS100A8発現抑制剤。
(5)上記植物が、マメ科、シソ科、キク科、ウコギ科、ミカン科又はツバキ科に属する植物であることを特徴とする、(4)記載のS100A8発現抑制剤。
(6)上記植物が、ログウッド、ダイズ、シソ、メリッサ、マンネンロウ、エキナセア、セイヨウキズタ、グレープフルーツ又はチャであることを特徴とする、(4)記載のS100A8発現抑制剤。
(7)植物、スピルリナ及びこれらの抽出物からなる群から選択される1以上を有効成分とする、S100A8発現促進剤。
(8)上記植物が、アカネ科、スミレ科、アオギリ科、イチョウ科、ムロクジ科、シナノキ科、ムラサキ科、クラメリア科、スイカズラ科、クスノキ科、リンドウ科、ウリ科、イネ科、カバノキ科、フトモモ科、ナス科、マメ科、ウコギ科、キク科、キンポウゲ科、ウルシ科、ヒユ科、ミズキ科又はバラ科の植物であることを特徴とする、(7)記載のS100A8発現促進剤。
(9)上記植物が、キナ、サンシキスミレ、コラ、イチョウ、ガラナ、ライム、ムラサキ、ラタニア、ニワトコ、シナモン、ゲンチアナ、カボチャ、ハトムギ、ヘーゼルナッツ、グアバ、ナス、イナゴマメ、トチバニンジン、アルニカ、カワラヨモギ、サラシナショウマ、ヌルデ、ヒナタイノコズチ、サンシュユ又はペールローズであることを特徴とする、(7)記載のS100A8発現促進剤。
本発明によれば、S100A8の過剰発現や発現低下に関連して生じる各種症状や疾患の予防又は治療に有用なS100A8発現調節剤を提供される。本発明に係るS100A8発現調節剤は、有効成分として天然物質に由来するものを含有することから、医薬、医薬部外品又は化粧料として安全に使用できる。
図1は、S100A8タンパク質の発現抑制作用を示す図である。 図2は、S100A8タンパク質の発現促進作用を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るS100A8発現調節剤は、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ(Spirulina)及びこれらの抽出物並びにトレハロースからなる群から選ばれる1以上を有効成分とするものである。本発明に係るS100A8発現調節剤を、ヒトに投与することにより、生体内においてS100A8の発現を調節することができる。
ここで、「S100A8発現調節」とは、S100A8をコードする遺伝子レベル及び/又はS100A8タンパク質レベルでの発現調節を意味する。発現調節には、発現抑制及び発現促進の双方が含まれる。本発明に係るS100A8発現調節剤は、S100A8発現抑制剤及びS100A8発現促進剤の双方を意味する。
以下の説明において、S100A8の発現を抑制するS100A8発現調節剤を「S100A8発現抑制剤」と称する。また、S100A8の発現を促進するS100A8発現調節剤を「S100A8発現促進剤」と称する。
本発明に係るS100A8発現抑制剤は、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物及びこれらの抽出物並びにトレハロースからなる群から選ばれる1以上を有効成分とするものである。
本発明に係るS100A8発現抑制剤において使用する植物としては、特に限定されるものではないが、マメ科、シソ科、キク科、ウコギ科、ミカン科又はツバキ科に属する植物が挙げられる。特に下記に示す植物が好ましい。
マメ科:ログウッド(Haematoxylon campechianum L.)、ダイズ(Glycine Max Merrill)
シソ科:シソ(Perilla ocymoides)、メリッサ(コウスイハッカ)(Melissa officinalis L.)、マンネンロウ(ローズマリー)(Rosmarinus officinalis L.)
キク科:エキナセア(Echinacea angustifolia DC.、Echinacea purpurea Moench)
ウコギ科:セイヨウキズタ(Hedera helix)
ミカン科:グレープフルーツ(Citrus paradisi Macf.)
ツバキ科:チャ(Camellia Sinensis(L)O.Kuntze)
本発明に係るS100A8発現抑制剤においては、上記植物の全草、葉、樹皮、枝、果実又は根等をそのまま用いることができる。あるいは、当該植物の全草、葉、樹皮、枝、果実又は根等を粉砕して用いてもよい。
上記で具体的に列挙した植物について使用することが好ましい部位を、以下の表1に示す。なお、特定の植物の部位に別名がある場合には、その名称を付記する(*)。
Figure 0005190083
また、本発明に係るS100A8発現抑制剤において使用する酵母としては、特に限定されるものではないが、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属又はピキア(Pichia)属の酵母が挙げられる。特に、サッカロミセス(Saccharomyces)属の酵母を用いることが好ましい。なお、複数種の酵母を組合せて用いることもできる。さらに、医薬品又は化粧料用原料として市販されている酵母抽出物を使用してもよい。
ホエイとは、牛乳タンパク質の水溶液又は脱脂粉乳及びブドウ糖の水溶液を乳酸連鎖球菌又は乳酸桿菌で発酵させた液をろ過したものを意味する。本発明に係るS100A8発現抑制剤においては、例えば医薬品又は化粧料用原料として市販されているホエイを使用できる。
絹加水分解物とは、絹を完全又は部分的に分解したものを意味する。本発明に係るS100A8発現抑制剤において使用する絹加水分解物としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の酸又は水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリのいずれかを用いた加水分解に絹を供して得られたものが挙げられる。また、上述した酸又はアルカリによる加水分解と酵素による加水分解とを併用して得られた絹加水分解物も使用できる。さらに、化粧料用原料として市販されている絹加水分解物を使用してもよい。
トレハロースは、キノコ類、エビ、カビ、酵母、紅藻、地衣、多くの昆虫に広く分布する二糖類である。本発明に係るS100A8発現抑制剤においては、例えば、デンプンに微生物が有する酵素を作用させることにより製造したもの、又は市販品をトレハロースとして使用することができる。
一方、本発明に係るS100A8発現促進剤は、植物、スピルリナ及びこれらの抽出物からなる群から選択される1以上を有効成分とするものである。
本発明に係るS100A8発現促進剤において使用する植物としては、特に限定されるものではないが、アカネ科、スミレ科、アオギリ科、イチョウ科、ムロクジ科、シナノキ科、ムラサキ科、クラメリア科、スイカズラ科、クスノキ科、リンドウ科、ウリ科、イネ科、カバノキ科、フトモモ科、ナス科、マメ科、ウコギ科、キク科、キンポウゲ科、ウルシ科、ヒユ科、ミズキ科又はバラ科の植物が挙げられる。特に下記に示す植物が好ましい。
アカネ科:キナ(Cichona ledgeriana)
スミレ科:サンシキスミレ(Viola tricolor)
アオギリ科:コラ(Cola acuminata Schott et Endl.)
イチョウ科:イチョウ(Ginkgo biloba L.)
ムロクジ科:ガラナ(Paulinia Cupana Kunth)
シナノキ科:ライム(セイヨウシナノキ(Tilia europaea))
ムラサキ科:ムラサキ(Lithospermum erythrorhizone)
クラメリア科:ラタニア(Krameria triandra Ruiz and Pavon)
スイカズラ科:ニワトコ(セイヨウニワトコ(S. nigara L))
クスノキ科:シナモン(Cinnamomum zeylanicum)
リンドウ科:ゲンチアナ(Gentiana lutea L.)
ウリ科:カボチャ(Cucurbita)
イネ科:ハトムギ(Coix lachryma-jobi var.ma-yuen)
カバノキ科:ヘーゼルナッツ(Corylus avellana L.)
フトモモ科:グアバ(Psidium guajava L.)
ナス科:ナス(Solanum melongena L.)
マメ科:イナゴマメ(Ceratonia siliqua)
ウコギ科:トチバニンジン(Panax japonicaus)
キク科:アルニカ(Arnica Montana L.)、カワラヨモギ(Artemisia capillaryis)
キンポウゲ科:サラシナショウマ(Cimicifuga simplex)
ウルシ科:ヌルデ(フシノキ)(Rhus javanica L.)
ヒユ科:ヒナタイノコズチ(Achyranthes fauriei)
ミズキ科:サンシュユ(Cornus officinalis Sieb. et Zucc.)
バラ科:ペールローズ(Pale Rose)
本発明に係るS100A8発現促進剤においては、上記植物を、その植物の全草、葉、樹皮、枝、果実又は根等をそのまま用いることができる。あるいは、当該植物の全草、葉、樹皮、枝、果実又は根等を粉砕して用いてもよい。
上記で具体的に列挙した植物について使用することが好ましい部位を、以下の表2に示す。なお、特定の植物の部位に別名がある場合には、その名称を付記する(*)。
Figure 0005190083
スピルリナとは、藍藻類ネンジュモ目ユレモ科スピルリナ属の微細なラセン藻を意味する。本発明に係るS100A8発現促進剤に使用するスピルリナとしては、特に限定されるものではないが、例えばスピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、スピルリナ・マキシマ(Spirulina maxima)、スピルリナ・ゲイトレリ(Spirulina geitleri)、スピルリナ・サイアミーゼ(Spirulina siamese)、スピルリナ・メイヤー(Spirulina major)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、スピルリナ・プリンセプス(Spirulina princeps)、スピルリナ・ラキシシマ(Spirulina laxissima)、スピルリナ・クルタ(Spirulina curta)及びスピルリナ・スピルリノイデス(Spirulina spirulinoides)等が挙げられる。本発明に係るS100A8発現促進剤においては、例えば、医薬品又は化粧料用原料として市販されているスピルリナを使用できる。
一方、本発明に係るS100A8発現調節剤において、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物及びスピルリナ(以下、「植物等」という)の抽出物は、植物等を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる。本発明において、植物等の抽出物とは、上記抽出方法で得られた各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末を意味する。
植物等の抽出物を得るために用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤又は非極性溶剤のいずれをも使用することができる。抽出溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び二酸化炭素等が挙げられる。あるいは、上記溶剤の2種以上を組み合わせた混合物を、抽出溶剤として用いることができる。
本発明に係るS100A8発現調節剤においては、上記植物等の抽出物を、そのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、上記植物等の抽出物をクロマトグラフィー液々分配等の分離技術に供し、当該抽出物から不活性な夾雑物を除去したものを用いることもできる。なお、本発明に係るS100A8発現調節剤においては、上記植物等の抽出物の2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係るS100A8発現調節剤を医薬又は医薬部外品として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、錠剤及びカプセル剤等の内服剤、軟膏、水剤、エキス剤、ローション剤及び乳剤等の外用剤並びに注射剤が挙げられる。当該医薬又は医薬部外品には、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースの他に、助剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、吸収促進剤及び界面活性剤等の薬学的に許容される担体を任意に組合せて配合することができる。
一方、本発明に係るS100A8発現調節剤を化粧料として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、油中水型又は水中油型の乳化化粧料、クリーム、ローション、ジェル、フォーム、エッセンス、ファンデーション、パック、スティック及びパウダー等が挙げられる。当該化粧料には、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースの他に、化粧料成分として一般に使用されている油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料及び各種皮膚栄養剤等を任意に組合せて配合することができる。
本発明に係るS100A8発現調節剤を医薬、医薬部外品又は化粧料として使用する場合、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースの配合量は、乾燥物として計算して、通常、医薬、医薬部外品又は化粧料の全組成の0.00001〜1重量%、特に0.0001〜0.1重量%とすることが好ましい。また、本発明に係るS100A8発現調節剤を医薬として用いる場合、植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースの投与量は、通常の成人で固形分残量にして0.01mg〜1g/1日とすることが望ましい。
本発明に係るS100A8発現抑制剤及びS100A8発現促進剤は、例えば、以下のようにin vitroで薬理評価を行なうことができる。
in vitroでの薬理評価としては、例えば、S100A8を発現する細胞系を用いた方法が挙げられる。正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞などの細胞系に、本発明に係るS100A8発現抑制剤又はS100A8発現促進剤を作用又は接触させる。次いで、作用又は接触させた細胞を培養し、培養後、当該細胞からタンパク質又はmRNAを抽出する。さらに、得られたタンパク質を、例えばELISAやウエスタンブロッティングに供する。あるいは、得られたmRNAを、例えばPCRやノーザンハイブリダイゼーションに供する。
本発明に係るS100A8発現抑制剤に作用又は接触させていない細胞に比べて、本発明に係るS100A8発現抑制剤に作用又は接触させた細胞において、S100A8タンパク質量又はS100A8をコードするmRNA量が、1.5〜10倍、好ましくは2〜5倍低下した場合、in vitroレベルで発現を抑制することができたと判断することができる。
一方、本発明に係るS100A8発現促進剤に作用又は接触させていない細胞に比べて、本発明に係るS100A8発現促進剤に作用又は接触させた細胞において、S100A8タンパク質量又はS100A8をコードするmRNA量が、1.5〜10倍、好ましくは2〜6倍増加した場合、in vitroレベルで発現を促進することができたと判断することができる。
本発明に係るS100A8発現調節剤において有効成分として含有する植物、酵母、ホエイ、絹加水分解物、スピルリナ及びこれらの抽出物並びにトレハロースは、後記実施例に示すように、S100A8の発現を抑制又は促進することから、その有効量をヒトに投与することにより、生体内においてS100A8の発現を調節することができる。
すでに述べたように、S100A8遺伝子やS100A8の発現を促進する物質は、S100A8の減少に伴う皮膚疾患、創傷、創傷治癒遅延や毛髪の成長促進に有効であることが報告されている(特許文献1〜2)。さらに、S100A8の機能として、好中球及び単球の遊走活性を上昇させること(非特許文献7)及び抗菌活性を示すこと(非特許文献8)が報告されている。また、S100A8の発現量を増減しめることによって、細胞系(好中球等)において顆粒放出反応を制御できることが報告されている(特許文献3)。
以上の事実を考慮すると、本発明に係るS100A8発現抑制剤は、S100A8過剰発現に関連して生じる症状又は疾患、例えば、乾癬、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性心筋梗塞時の虚血後再灌流障害、糸球体腎症、のう胞性線維症、リューマチ性関節炎、慢性気管支炎、脳血管レン縮、喘息、末梢循環障害、狭心症、高血圧症又は動脈硬化等の好中球の顆粒放出による血管内膜障害関連疾患の予防又は治療等に有用である。
一方、本発明に係るS100A8発現促進剤は、S100A8の発現低下に関連して生じる症状又は疾患、例えば、創傷の予防や創傷治癒の促進等の皮膚性状の保護や治療、感染症の予防又は治療、毛髪の成長促進、顆粒(エラスターゼ、ラクトフェリン等)放出促進等に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕 植物抽出物等の調製
(1)セイヨウシナノキ抽出物の製造:
セイヨウシナノキ乾燥粉砕物100gに1,3-ブタンジオール1Lを加え、室温で時々撹拌しながら、7日間抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、濾液を5℃で3日間静置した後、再度濾過することで上澄みを得た。次いで、得られた上澄みを濃縮し、溶剤を除去することで、抽出物4.2mlをシロップとして得た。得られたセイヨウシナノキ抽出物を50% 1,3-ブタンジオールを加え濃度調整を行った。
(2)ムラサキ抽出物の製造:
ムラサキの根(日本薬局方紫根(シコン))を細切し、細切した断片5gにエタノール15mlを加え、浸漬した。当該断片を含む混合液を濾過し、ムラサキ抽出液を得た。次いで、このムラサキ抽出液を濃縮することでムラサキ抽出物を得た。なお、ムラサキ抽出物の固形分は228mgであった。得られたムラサキ抽出物に50%エタノール10mlを加え濃度調整を行った。
(3)他の植物の抽出物の製造:
上記同様に、以下の表3に示す植物についても抽出物を製造した。なお、各植物において、抽出物の製造に使用した部位及び抽出溶剤を表3に示す。
各植物の全草、葉、根、根茎、果実、種子又は花等の使用部位を細切し、細切した断片10gに適宜、濃度を調整した抽出溶剤100mlを加え、室温下で時々攪拌しながら24時間抽出を行った。得られた抽出液を濾過し、濾液に水100mlを加え、40℃で減圧下、約70mlまで濃縮した。この操作を3回繰り返した後、水及びエタノール、プロピレングリコール又は1,3-ブタンジオールを加えて、エタノール濃度、プロピレングリコール濃度又は1,3-ブタンジオール濃度を適宜調整し、総量100mlとした各植物の抽出液を得た。
Figure 0005190083
(4)その他
<酵母抽出物>
酵母抽出物Aとして、一丸ファルコス社製「イーストリキッド」、酵母抽出物Bとして、一丸ファルコス社製「イーストリキッドB」を用いた。
<ホエイ>
ホエイとして、一丸ファルコス社製「FMエキス LA-B」を用いた。
<絹加水分解物>
絹加水分解物として、一丸ファルコス社製「シルクゲンGソルブルKE」を用いた。
<スピルリナ抽出物>
スピルリナ抽出物として、インデナ社製「SPIRULINA」を用いた。
<トレハロース>
トレハロースとして、一丸ファルコス社製「トレハロース 30H(PFB)」を用いた。
<上記植物以外の他の植物抽出物>
市販の抽出物を用いた各植物抽出物については製造元、製品名を以下の表4に示す。
Figure 0005190083
〔実施例2〕 S100A8の発現調節効果
(1)材料及び方法
試験には、正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞(KK-4009、Strain No1C0919、クラボウ)を用いた。
まず、1穴あたりDefined-ケラチノサイト-SFM培地1mlを含有する12穴プレートに、細胞をプレーティングし、50〜60%コンフルエントになるまで培養した。なお、培養は5%CO2、37℃条件下で行った。50〜60%コンフルエントに達した後、細胞を試験に用いるために、被験物質添加24時間前に、培地を添加剤不含のDefined-ケラチノサイト-SFM培地(以下、「Defined-ケラチノサイト-SFM(-)培地」という)1mlに交換し、馴化させた。
次いで、培地を、1.5ミリモル濃度のカルシウムおよび0.1ナノモル濃度のアクチビンを含むDefined-ケラチノサイト-SFM(-)培地に交換し、さらに、被験物質を0.1%又は1%vol濃度(すなわち、1μl又は10μlを添加)となるように直接培地中に添加することで、試験を開始した。試験開始から24時間培養した後、培地を吸引除去し、PBS(-)で細胞を2回洗浄した。洗浄後、1穴あたりRIPAバッファー200μlを添加し、細胞からタンパク質を抽出した。
BMA社が提示する方法に従ってMRP8 ELISAキット(S-1007、BMA Biomedicals)を用い、各被験物質に供した細胞から得られたタンパク質5μgをELISAに供し、当該サンプル中のS100A8タンパク質量を算出した。なお、対照として、被験物質を添加しない以外は上記と同様にして培養した細胞を用いた。
(2)結果
試験結果を図1及び図2に示す。図1は、S100A8タンパク質の発現抑制作用を示す被験物質を示す。図2は、S100A8タンパク質の発現促進作用を示す被験物質を示す。なお、図1及び図2において、S100A8タンパク質量は、対照の細胞から得られたS100A8タンパク質量を1とした場合に対する相対値で表す。
図1から明らかなように、酵母、ホエイ、絹加水分解物、ログウッド、シソ(ソヨウ)、エキナセア、ダイズ、メリッサ、マンネンロウ、セイヨウキズタ、グレープフルーツ及びチャの抽出物並びにトレハロースは、正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞においてS100A8タンパク質の発現を抑制した。
一方、図2から明らかなように、キナ、サンシキスミレ、コラ(コーラナッツ)、イチョウ、ガラナ、ライム、ムラサキ(シコン)、ラタニア、カボチャ(種子)、ニワトコ、シナモン、ゲンチアナ、カボチャ、ハトムギ(ヨクイニン)、ヘーゼルナッツ、グアバ、ナス、イナゴマメ、トチバニンジン(チクセツニンジン)、スピルリナ、アルニカ、サラシナショウマ(ショウマ)、カワラヨモギ(インチンコウ)、ヌルデ(ゴバイシ)、ヒナタイノコズチ(ゴシツ)、サンシュユ及びペールローズの抽出物は、正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞においてS100A8タンパク質の発現を促進した。

Claims (1)

  1. トレハロースを有効成分とするS100A8発現抑制剤であって、ただし急性心筋梗塞時の虚血後再灌流障害並びに関節炎及びリウマチの予防及び治療には使用されないものである、前記S100A8発現抑制剤。
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