JP5189774B2 - 軌道車両の制動エネルギ回収装置および輸送システム - Google Patents

軌道車両の制動エネルギ回収装置および輸送システム Download PDF

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本発明は、定置式の軌道に沿って走行する軌道車両の制動エネルギ回収装置およびそれを用いる輸送システムに関するものである。
この種の軌道車両として、遊園地などに設置されるジェットコースタが従来よりあった(例えば特許文献1参照)。またジェットコースタのように位置エネルギを利用して、駅間に敷設された軌道上を走行する無人の軌道車両を用いた輸送システムが提案されている。
このような軌道車両では、軌道車両自体に自走するための動力源を備えておらず、軌道に設けた定置式の駆動装置により加速させられ、その後は駆動装置から与えられたエネルギにより運動エネルギを得て、目的地点まで走行するようになっていた。また、急勾配の上り勾配区間と、上り区間を越えたあとの下り勾配区間とを軌道に設け、上り勾配区間に設けられた定置式の引き上げ装置により軌道車両に上り勾配区間を上らせ、その後の下り勾配区間を軌道車両に滑走走行させることで、軌道車両を目的地点まで走行させるものもあった。
上述の軌道車両では、外部の駆動装置によって加速させられたり、引き上げ装置によって位置エネルギを与えられると、以後は起動時に与えられたエネルギにより無人で自走するため、軌道車両が目的地まで到達した際に軌道車両に制動をかける制動装置を軌道側に設ける必要があった。また、上り勾配区間の後に設けた下り勾配区間を滑走走行させるシステムでは、地形的な理由によって急勾配が発生し、それによって軌道車両の速度が急激に増加する場合もあるが、乗客を輸送する輸送システムでは急加速によって乗客に不快感を与えるため、速度が急激に増加する区間には軌道車両に制動をかける制動装置を軌道側に設置して、軌道車両の速度を抑える必要があった。
そこで、従来は、走行方向に沿わせて軌道車両に制動板を設けるとともに、軌道の減速区間に、制動板を両面から挟圧するブレーキシューを配置してあり、ブレーキシューを制動板に押し当てた際に発生する摩擦力で制動をかけるようになっていた。この場合、軌道車両を制動する際に、軌道車両のもつ速度エネルギが熱エネルギとして消費されるだけなので、軌道車両のもつ速度エネルギを有効に利用することができなかった。
一方、走行のための動力源として電動機を備えた電車では、制動時に電動機を発電機として動作させ、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって、制動エネルギを回収しているが、車体に電動機を搭載しているため、車体が大型化したり、重量が重くなり、軌道などの関連施設を含めた全体の建設費が高騰するという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、制動時に失われる速度エネルギを回収して有効に利用できる安価な軌道車両の制動エネルギ回収装置およびそれを用いる輸送システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、軌道車両の制動エネルギ回収装置に関するものであって、軌道上を走行する軌道車両の制動エネルギ回収装置であって、走行方向に沿うようにして軌道車両に取り付けられた制動板と、軌道において軌道車両を制動して停止させる制動停止区間の手前側に設けられた減速区間に配置され制動板に周面が当接することによって回転駆動される回転体と、回転体の回転に応じて回転軸が回転し、回転軸の回転数に応じた電気エネルギを発電する発電機とを備え、発電機が軌道車両のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって軌道車両を減速させることを特徴とする。
請求項2の発明は、単線の軌道に沿って設置した駅の間を軌道車両が走行する輸送システムであって、単線の軌道は、軌道の駅近傍区間であって軌道定置式の駆動装置にて軌道車両を加速する加速区間と、加速区間で加速された軌道車両が自走する自走区間と、軌道車両を制動して停止させる制動停止区間と、制動停止区間の手前側に設けられて、軌道車両を減速する減速区間とを少なくとも有し、走行方向に沿うようにして軌道車両に制動板を取り付けるとともに、軌道の減速区間に、制動板に周面が当接することによって回転駆動される回転体と、回転体の回転に応じて回転軸が回転し、回転軸の回転数に応じた電気エネルギを発電する発電機とを配設し、発電機が軌道車両のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって軌道車両を減速させることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、軌道を走行する軌道車両に設けた制動板が、軌道の減速区間に設置された回転体の周面に当接して回転体を回転させることで、電動機の回転軸が回転駆動されて、電動機が回転軸の回転数に応じた電気エネルギを発生するので、軌道車両のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって、軌道車両を減速させることができ、且つ、減速によって失われる速度エネルギを電気エネルギとして有効に利用できるという効果がある。
請求項2の発明によれば、軌道車両を減速させることによって失われる速度エネルギを電気エネルギとして有効に利用できる輸送システムを実現できるという効果がある。
以下では、本発明に係る軌道車両の制動エネルギ回収装置を輸送システムに適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
図3は本実施形態の輸送システムの軌道配設図であり、単線の軌道1に沿って2つの駅2a,2bを設けてあり、軌道1上を走行する軌道車両3が駅2a,2b間を往復するようになっている。ここにおいて、単線の軌道1は、各駅2a,2bから出発した軌道車両3が軌道定置式の駆動装置によって加速される加速区間A1,A2と、加速区間A1,A2で加速された軌道車両3が加速区間A1,A2で与えられた走行エネルギのみで次駅2bまで走行する自走区間Bとで構成されており、各駅2a,2b…毎に加速区間A1,A2が設けられている。
ここで、本実施形態の輸送システムでは、上記加速区間として、電磁力により軌道車両3を加速するリニア式加速区間A1と、軌道車両3に位置エネルギを与え、位置エネルギを運動エネルギに変換することで軌道車両3を加速するコースター式加速区間A2とを採用している。リニア式加速区間A1では軌道1が略水平に形成され、軌道1側に設置した電磁石装置4(図5参照)と、車両3に備えた永久磁石よりなる可動磁石体5(図5参照)との間に作用する電磁力によって、軌道車両3に推進力を加えて軌道車両3を加速するようになっている。またコースター式加速区間A2では軌道1に急勾配の勾配区間を設け、勾配区間に設けた引き上げ装置(図示省略)にて軌道車両3を引き上げ、勾配区間の上側に登らせることによって、軌道車両3に位置エネルギを与えた後、勾配区間を軌道車両3が滑り降りることで、位置エネルギを運動エネルギに変換して軌道車両3を加速するようになっている。具体的には、軌道1において駅2aに対して駅2b側の近傍区間にはリニア式加速区間A1が、駅2bに対して駅2aと反対側の近傍区間にはコースター式加速区間A2がそれぞれ設けられており、加速区間A1,A2の間が自走区間Bとなっている。なお、コースター式加速区間A2の引き上げ装置としては、例えばチェーンと減速機付きモータ、又は、ロープと巻取装置と減速機付きモータと昇降台等から構成されている。
このような輸送システムにおいて、駅2aと駅2bの間で軌道車両3を往復させるには、下記のように運行すれば良い。なお、図4に示すように複数両の軌道車両3が連結された連結車両を軌道1上に走行させるようにしても良いし、軌道車両3を1両のみで走行させるようにしても良い。
まず、一方の駅2aから他方の駅2bに軌道車両3を走らせるには、駅2aから駅2bに向けて軌道車両3を発車させ、この軌道車両3をリニア式加速区間A1で加速させ、この加速された軌道車両3をそのまま自走区間Bに滑らせて他方の駅2bに至らせるようにしている。また、他方の駅2bから一方の駅2aに軌道車両3を走らせるには、一旦、駅2bから駅2aと反対側に向けて軌道車両3を発車させ、この軌道車両3をコースター式加速区間A2に引きげた後、軌道車両3を下り勾配に沿わせて滑落させることで加速させ、この加速された軌道車両3をそのまま自走区間Bに滑らせて駅2aに至らせるようにしている。
そして、滑走走行してきた軌道車両3を駅2a,2bで停止させる際には、軌道車両3を減速させる必要があり、本システムでは図3に示すように駅2a,2bの手前側に減速区間Dを設けて、減速区間Dに進入してきた軌道車両3を減速させた後、駅2a,2bに設けた制動停止区間Cで制動をかけて軌道車両3を停止させるようになっている。
図1(a)(b)及び図6に示すように軌道車両3の車体下面には、走行方向を長手方向とする矩形板状の制動板40が突設されている。
一方、軌道1の減速区間Dには、図1及び図7に示すように、周面が当接することによって回転駆動される回転体としての制動タイヤ41が、制動板40の両側面に対向し、且つ、走行方向において所定の間隔を開けて複数(本実施形態では片面に4個ずつ)配置されるとともに、各制動タイヤ41の回転に応じて回転軸42が回転し、回転軸42の回転数に応じた電気エネルギを発電する複数台(例えば8台)の発電機43が設けられている。なお制動板40の両側に配置される各2個の制動タイヤ41は、制動板40を間にしてそれぞれ対向する位置に配置されている。
また、軌道1の制動停止区間には、図6及び図7に示すように駅のプラットホーム付近に、制動板40を挟んで左右両側に制動板40を挟圧するブレーキシュー20と、制動板40に当接する位置と制動板40から離れる位置との間でブレーキシュー20を進退させるアクチュエータ21とが配置されている。
そして、駅2a又は2bに向かって自走してきた軌道車両3を減速、停止させる場合、先ず軌道車両3が減速区間Dに入ってくると、軌道車両3の制動板40が制動タイヤ41,41の間に進入するので、制動タイヤ41の周面が制動板40に当接することによって制動タイヤ41が回転させられ、制動タイヤ41の回転数に応じた交流の電気エネルギを発電機43が発電する。図2は制動エネルギ回収装置の回路図であり、発電機43により発電された回生電力はインバータ49により直流電圧に変換され、昇圧チョッパ45により所望の電圧値に昇圧された後、バッテリなどの蓄電装置46に蓄電されるようになっており、この蓄電装置46に蓄電されたエネルギを、駅2a,2b内の照明などの電源や、軌道車両3を加速するための電磁石装置4或いは引き上げ装置の電源として利用することができる。ここに、軌道車両3に設けた制動板40、制動タイヤ41、発電機43、インバータ49、昇圧チョッパ45および蓄電装置46などから制動エネルギ回収装置が構成されるのである。
その後、減速区間Dで減速された軌道車両3が駅2a又は2bに入り、所定の停止位置(プラットホームの乗降場所と軌道車両3の出入口が一致する位置)まで走行すると、アクチュエータ21がブレーキシュー20を軌道車両3の制動板40に挟圧することで、軌道車両3を制動し、所望の停止位置で軌道車両3を停止させるのである。なお、駅2a又は2bに停止した軌道車両3が走行を開始する際には、アクチュエータ21がブレーキシュー20を制動板40から離れる位置に駆動するので、軌道車両3に制動力が加えられることは無い。
以上説明したように、本実施形態の制動エネルギ回収装置では、減速区間Dに進入してきた軌道車両3の制動板40が制動タイヤ41,41の間に進入すると、制動タイヤ41の周面が制動板40に当接することによって制動タイヤ41が回転させられ、制動タイヤ41の回転数に応じた電気エネルギを発電機43が発生し、この電気エネルギが蓄電装置46に蓄電されるので、軌道車両3のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって、軌道車両を減速させることができ、また減速によって失われる速度エネルギを電気エネルギに変換し、蓄電装置46に蓄電することで有効に利用することができる。
尚、本実施形態では駅2a,2bの近傍を減速区間Dとし、該減速区間Dに制動エネルギ回収装置を設置した例について説明したが、駅2a,2bの間の自走区間Bなどで軌道車両3の急加速や速度超過を防止するために必要な区間に上記の制動エネルギ回収装置を設けても良いことは言うまでもない。
ところで本実施形態の輸送システムでは、それぞれの駅2a,2bを発車した軌道車両3が軌道定置式の駆動装置(電磁石装置4や引き上げ装置など)を備えた加速区間A1,A2によって加速されるようになっている。一般に軌道車両3の走行にあっては、停車時からの加速に最も大きな駆動力を必要とするのであるが、本実施形態の輸送システムでは軌道1側に設けた定置式の駆動装置により軌道車両3を加速し、以後は加速区間A1,A2で与えられた運動エネルギにより軌道車両3が自走するようになっているので、軌道車両3自体に、停車時からの加速に必要な大きな動力源を備える必要が無く、つまり自走走行に必要な大型の動力源を軌道車両3に備える必要がないため、軌道車両3の小型化、軽量化が図れるようされているのである。これによると、軌道1が単線であることで得られる輸送システム敷設にかかる必要面積の縮小効果を更に図ることができて、更なる狭小地への建設も可能にするものであり、また、これに加えて軌道車両3や軌道1を支持する支持脚6等に求める耐荷重性能も低減でき、併せて、建設コストの大幅な低廉化を図ることができるようになっているのである。なお、本実施形態では加速区間としてリニア式加速区間A1とコースター式加速区間A2とを採用しているが、図8に示すようにコースター式加速区間A2のみで加速区間を構成しても良いし、図9に示すようにリニア式加速区間A1のみで加速区間を構成しても良い。また、本実施形態では2つの駅2a,2bの間を往復する場合について説明を行ったが、軌道1に沿って3つ以上の駅2a,2b…を設け、軌道1を往復することによって駅2a,2b…間を運行するようにしても良い。また、軌道1を環状として、軌道1を一方向或いは往復走行し、軌道1に沿って設けた複数の駅2a…の間を移動するようにしても良い。
以上に概要を示した本実施形態の輸送システムにあっては、軌道1上を走行する軌道車両3の安全性や、快適な乗り心地も確保されており、以下に走行装置の構成を詳述する。
図5に示すように、軌道1は、主桁7と、その上方の左右に配設された丸パイプ鋼材の2本の軌条8と、主桁7とこの2本の軌条8を連結するように所定ピッチに配設された連結部材9とを、有して構成されている。軌道車両3は、各軌条8を、上方・側方・下方から接触して転動する上輪10、横輪11、下輪12を有している。上輪10は車両重量を支持する主車輪であり、横輪11は側方ガイド車輪であり、下輪12は浮き上がり防止車輪であるといえる。而して図5中左側の軌条8を上輪10、横輪11、下輪12にて上側、左側、下側の3方向から抱え込むとともに、図中右側の軌条8を上輪10、横輪11、下輪12にて上側、右側、下側の3方向から抱え込むことによって、どのような傾斜、曲線の軌道1でも軌道車両3が軌道1から脱線する虞を無くしているのであり、輸送システムの安全性が確保されている。なお、上輪10、横輪11、下輪12はウレタン等の弾性材質の車輪としてあり、軌道1を走行する際の軌道車両3の振動を抑えて快適な乗り心地を確保すると共に、走行騒音も無くして騒音公害の防止も図られている。
なお、図5に示すように軌道1側には給電設備23が設けられている。この給電設備23は、軌道車両3側の集電子(図示せず)に摺接させることで軌道車両3側の電源回路に電気的に接続されるようになっている。たとえば、駅舎内の軌道1に給電設備23を備えておき、軌道車両3にバッテリー(図示せず)を備えておくと、駅停車中に集電子を介して軌道車両3に確実に電気を供給させることができ、この電気が充電されたバッテリーによる給電によって、車内照明や空調装置24等を動作させるようにできるのである。
尚、本実施形態では軌道車両の制動エネルギ回収装置を輸送システムに適用した形態について説明を行ったが、遊園地などに設置され、急勾配の上り勾配を有する軌道を軌道車両に登らせて位置エネルギを与えた後、下り勾配を滑り下りさせることで位置エネルギを運動エネルギに変換して、軌道車両を自走させるようなコースタ装置に上記の制動エネルギ回収装置を適用しても良い。
本発明の制動エネルギ回収装置を適用した輸送システムを示し、(a)は概略側面図、(b)は概略上面図である。 同上の回路図である。 同上の軌道を示す概略側面図である。 同上の軌道上を走行する連結車両の側面図である。 同上の軌道上を走行する車両の要部の正面図である。 同上の軌道上を走行する車両の正面図である。 同上の駅付近の軌道を示す概略の上面図である。 同上の軌道の他の例を示す概略側面図である。 同上の軌道のまた別の例を示す概略側面図である。
符号の説明
1 軌道
3 軌道車両
40 制動板
41 制動タイヤ
42 回転軸
43 発電機

Claims (2)

  1. 軌道上を走行する軌道車両の制動エネルギ回収装置であって、
    走行方向に沿うようにして前記軌道車両に取り付けられた制動板と、
    前記軌道において前記軌道車両を制動して停止させる制動停止区間の手前側に設けられた減速区間に配置され前記制動板に周面が当接することによって回転駆動される回転体と、
    前記回転体の回転に応じて回転軸が回転し、前記回転軸の回転数に応じた電気エネルギを発電する発電機とを備え、
    前記発電機が前記軌道車両のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって前記軌道車両を減速させることを特徴とする軌道車両の制動エネルギ回収装置。
  2. 単線の軌道に沿って設置した駅の間を軌道車両が走行する輸送システムであって、
    前記単線の軌道は、前記軌道の駅近傍区間であって軌道定置式の駆動装置にて軌道車両を加速する加速区間と、前記加速区間で加速された前記軌道車両が自走する自走区間と、前記軌道車両を制動して停止させる制動停止区間と、前記制動停止区間の手前側に設けられて前記軌道車両を減速する減速区間とを少なくとも有し、
    走行方向に沿うようにして前記軌道車両に制動板を取り付けるとともに、
    前記軌道の前記減速区間に、前記制動板に周面が当接することによって回転駆動される回転体と、前記回転体の回転に応じて回転軸が回転し、前記回転軸の回転数に応じた電気エネルギを発電する発電機とを配設し、
    前記発電機が前記軌道車両のもつ速度エネルギを電気エネルギに変換することによって前記軌道車両を減速させることを特徴とする輸送システム。
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