JP5186606B1 - バイオディーゼル燃料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽油代替燃料として十分に高い品質を有するバイオディーゼル燃料を、高い生産効率で製造するための方法を提供すること。
【解決手段】油脂および低級アルコールからなる混合液中に、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を添加する工程と、前記酸化カルシウム粉末の存在下で、前記低級アルコールと前記油脂とを反応させる工程と、前記の反応後にグリセリンを除去して粗バイオディーゼル燃料を回収する工程と、前記粗バイオディーゼル燃料を前処理無しのそのままの状態で減圧蒸留する工程から成る簡素なプロセスの利用を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、原料油脂からバイオディーゼル燃料(BDF)を製造するための製造方法に関する。
トリアシルグリセリドからなる油脂と低級アルコール(たとえば、メタノール)とのエステル交換によって得られる脂肪酸メチルエステルを主成分とする軽油代替燃料は、バイオディーゼル燃料と呼ばれ、温室効果ガスおよび大気汚染物質の排出量の削減に寄与するため、来るべき「エネルギー循環型社会」の構築に極めて重要な役割を果たすものとして期待されている。
このようなバイオディーゼル燃料を製造する方法としては、現行では、「水酸化アルカリ触媒法」が用いられている。この水酸化アルカリ触媒法によれば、エステル交換を行なう際に、苛性アルカリ(水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を添加することで、これらの有する均一触媒作用によって反応効率を高めている。なお、水酸化アルカリ触媒法により、油脂とメタノールとを混合し、反応させた場合には、常圧下60℃で1時間程度加熱する。反応後は、副生成物としてのグリセリンを分離することにより、エステル相(粗バイオディーゼル燃料)を回収する。回収された粗バイオディーゼル燃料は反応原料、水酸化アルカリ触媒、その他の副生成物を含んでおり、これらの不純物は水洗浄によって除去するのが通常である。しかし、このようにして得られるバイオディーゼル燃料は、残留グリセリド類、遊離脂肪酸等が多く、軽油代替燃料として必ずしも十分な品質を有するものでなかった。また、水洗浄後の廃水には多量の石鹸分と油分が含まれており、廃棄物としての処理に多大なコストを要している。副生グリセリンも水酸化アルカリと油分を多量に含んでいるため廃棄物として処理せざるをえないのが現状である。
上述の問題を解消するため、特許文献1のように吸着、遠心分離、および減圧蒸留を組み合わせる技術が提案されている。この方法は廃水を発生することなく高品質なバイオディーゼル燃料を得ることに有用であるが、工程が複雑化するだけでなく、モレキュラーシーブのような高価な吸着剤を用いるのでコストが悪化し、実用に耐えない。また、副生グリセリンが廃棄物として扱われるままである。
特開2008−231345号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、軽油代替燃料として十分に高い品質を有するバイオディーゼル燃料を、高い生産効率で製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、活性表面を有する酸化カルシウム粉末の存在下で、油脂と低級アルコールとを反応させて、生成物からグリセリンを除去した粗バイオディーゼル燃料を前処理することなくそのまま減圧蒸留することにより、軽油代替燃料として十分に高い品質を有するバイオディーゼル燃料を低コストで効率的に得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
酸化カルシウムは、前記の油脂と低級アルコールの反応に高活性な固体塩基触媒であり、均一触媒である水酸化アルカリを用いた場合に近い反応効率をもたらす。使用済みの触媒は水酸化アルカリ触媒法の場合と同様に、大半がグリセリンに含まれる。この副生グリセリンはセメント用キルン炉、道路用アスファルト合材用砕石の熱風乾燥炉の燃料に利用することができる。使用済みの触媒は塩基性の低いカルシウムグリセロキシドから成っており、燃焼雰囲気下では熱分解して中性の炭酸カルシウムへ変わるので炉材の腐食をもたらすことはなく、炉を長期間安定に操作することができる。一方、水酸化アルカリ触媒法からのグリセリンは、アルカリ分を多く含んでいるために深刻な炉材腐食をもたらすことから、燃料に利用することはできない。
酸化カルシウムを触媒とする反応で得られた粗バイオディーゼル燃料も少量のカルシウムグリセロキシドを含んでいるが、これを除去することなく減圧蒸留によって精製できることも見出した。水酸化アルカリ触媒法によって得た粗バイオディーゼル燃料を前処理することなく同じ方法で精製すると、高温の蒸留装置内で残留油の粘度が著しく増加したり、強固な固体状炭素質物質が生成するために、減圧蒸留を円滑に操作することができない。これは、粗バイオディーゼル燃料に残存している水酸化アルカリの強い塩基性によって、脂肪酸メチルエステルの重合反応が促進されるためである。一方、酸化カルシウムを触媒に用いる方法では、粗バイオディーゼル燃料に残存する使用済み触媒(カルシウムグリセロキシド)の塩基性が弱いために脂肪酸メチルエステルの重合反応は起こらない。このような条件で減圧蒸留すると、廃水を発生することなく、不純物の少ない高品質なバイオディーゼル燃料を効率的に得ることができる。
すなわち、本発明によれば、油脂および低級アルコールからなる混合液中に、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を添加する投入工程と、
前記酸化カルシウム粉末の存在下で、前記低級アルコールと前記油脂を反応させる反応工程と、
前記反応による生成物からグリセリン分を除去し、粗バイオディーゼル燃料を回収する回収工程と、
前記粗バイオディーゼル燃料を前処理することなくそのまま減圧蒸留する減圧蒸留工程を備え、前記活性表面を有する酸化カルシウム粉末として、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散させた状態で粉砕することにより、粒径分布の90%累積値(D90)が0.01〜2μmであり、平均粒径が0.3μm以下とされたものを用い、かつ、前記投入工程において、前記活性表面を有する酸化カルシウム粉末を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散させ、粉砕することにより得られるバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物の形態で、油脂および低級アルコールからなる混合液中に添加することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法が提供される。
発明においては、前記投入工程、前記反応工程、および前記回収工程を、複数のバイオディーゼル燃料製造工場にて、それぞれ行い、粗バイオディーゼル燃料をそれぞれ得て、得られた前記粗バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料精製センターに集約して、前記バイオディーゼル燃料精製センターにて、前記減圧蒸留工程を行うように構成することができる。
本発明によれば、軽油代替燃料として十分に高い品質を有するバイオディーゼル燃料を、高い生産効率で製造することできる。
図1は、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、従来例に係るバイオディーゼル燃料の製造方法を示すフローチャートである。 図3は、本発明のバイオディーゼル燃料の製造スキームの一例を示す図である。
本発明は、バイオディーゼル燃料の製造方法に係り、
油脂および低級アルコールからなる混合液中に、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を添加する工程と、
前記酸化カルシウム粉末の存在下で、前記油脂と前記低級アルコールとを反応させる工程と、
前記反応の生成物からグリセリンを除去し、粗バイオディーゼル燃料を回収する工程と、
前記粗バイオディーゼル燃料を減圧蒸留することで、精製されたバイオディーゼル燃料を得る工程と、を備えることを特徴とするものである。
(1)バイオディーゼル燃料製造用触媒
まず、本発明で用いるバイオディーゼル燃料製造用触媒について説明する。本発明で用いるバイオディーゼル燃料製造用触媒は、活性表面を有する酸化カルシウム粉末からなるものである。
活性表面を有する酸化カルシウム粉末としては特に限定されないが、酸化カルシウムを主成分とし、その表面が水分や炭酸ガスにより変質されずに活性な酸化物状態を維持しているものが好ましい。このような活性表面を有する酸化カルシウム粉末としては、量産化の観点から石灰製品工場にて大量製造される生石灰を粉砕してなるものを用いることが好ましい。
生石灰は、粒子径が数mmから100mm程度の塊状の酸化カルシウムである。このような生石灰は、通常、大気下で焼成、ハンドリングされているため、その表面は炭酸化・水和によって変質し、塩基性が著しく弱まっている。これに対し、本発明においては、このような生石灰を粉砕することで、生石灰内部に存在する酸化物状態を表面に露出させ、これにより、触媒活性を具備させるものである。しかしその一方で、生石灰として、粒子径が小さいものを用いると、粒子内部まで炭酸化・水和が進行しており、表面が酸化物状態の粒子を得難くなるため、好ましくない。そのため、生石灰(触媒原料)としては、粒子径が0.5mm以上のものを用いることが望ましい。
また、触媒原料としての生石灰としては、生産効率の観点から、好ましくは80重量%以上、特に90重量%以上の純度を有するものが好ましい。特に、本発明においては、これらの条件を満たしていれば、販売用に適さない性状の焼成石灰石でも触媒原料として使用可能である。しかしその一方で、触媒原料として生石灰を用いる場合には、製造後に長期間大気に曝されると炭酸化・水和が生石灰の内部にまで進行するおそれがあるため、製造後は速やかに触媒原料として使用することが好ましい。
また、触媒原料としては、貝殻、卵殻のような生体由来の炭酸カルシウム含有物質を元来形状を保持したまま大気下で加熱焼成されたものを使用することもできる。この場合には加熱焼成炉が必要となるが、生体由来の炭酸カルシウム含有物質の多くは廃棄物として扱われることが多いので、固体触媒の原料に利用することは資源の有効活用として大きな意義を持つと共に、原料調達コストの面で有利である。あるいは、石灰製品工場から塊状の「未焼成石灰石」を購入し、これを焼成することにより、触媒原料として用いることもできる。なお、この場合には、原料購入費に加えて加熱焼成炉の購入・運転にコストを要したり、塊状の石灰石を焼成して、生石灰とするためには高度な産業技術的ノウハウがあることに留意する必要がある。
あるいは、本発明においては、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を得るための原料として、炭酸カルシウムを主成分とするものに代えて、ドロマイトを用いてもよい。本発明において、ドロマイトとは、カルシウムとマグネシウムとの複合炭酸塩鉱物(化学組成CaCO・MgCO、または、Ca・Mg(CO)であり、一般には復塩を形成しているが、本発明の効果を妨げない限り、複塩を形成していないものでもかまわない。そのため、ドロマイトを原料として用いた場合には、活性表面を有する酸化カルシウム粉末は、酸化カルシウムに加えて、酸化マグネシウムをも含有するものとなる。なお、ドロマイトとしては天然に産出されるもの以外に、化学合成によっても製造することができ、本発明には天然品、合成品のいずれも使用することができるが、工業的に利用する上では安価な点から天然品が好ましい。ドロマイトを用いることにより、得られる触媒の触媒活性をより良好なものとすることができる。
なお、本発明で用いるバイオディーゼル燃料製造用触媒としては、活性表面を有する酸化カルシウム粉末からなるものであればよく、その粒子径や形状は特に限定されないが、触媒活性が高く、これによりバイオディーゼル燃料の生産効率を高くすることができるという観点より、粒径分布の90%累積値(D90)が2μm以下のものが好ましく、1μm以下のものがより好ましい。なお、粒径分布の90%累積値(D90)の下限は特に限定されないが、通常、0.01μmである。粒径分布の90%累積値(D90)が小さすぎると、触媒製造コストの悪化を招くおそれがある。なお、触媒粒子の粒径分布の90%累積値(D90)は、たとえば、レーザー回折・散乱法により、体積粒径分布にて測定することができる。また、平均粒径は、通常、0.6μm以下であり、好ましくは0.3μm以下である。
(2)バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物
また、本発明においては、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、バイオディーゼル燃料製造用触媒を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散してなるバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物を用いてもよい。
このようなバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物によれば、上述したバイオディーゼル燃料製造用触媒(触媒粒子)を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散してなるものであるため、これにより、触媒粒子の酸化状態にある(劣化していない)酸化カルシウム表面を適切に保護することができ、触媒活性を良好に保つことができる。特に、バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物によれば、脂肪酸メチルエステルなどのバイオディーゼル燃料を主成分とするオイルで均質に混ざった状態であることが好ましい。
バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物は、通常、炭酸カルシウムなどを主成分とする石灰石などの天然産物質を焼成したものを、触媒原料とし、該触媒原料を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散し、得られた分散液中に含まれる触媒原料を機械的に粉砕することで製造される。あるいは、触媒原料としては、炭酸カルシウムを主成分とするものに代えて、ドロマイトを用いてもよい。そして、これにより、触媒原料(たとえば、生石灰やドロマイト)内部に存在する酸化物状態を表面に露出させることができ、これにより、触媒活性を実現することができる。
なお、本発明においては、触媒粒子を、バイオディーゼル燃料の原料であるメタノールなどの低級アルコールや、植物油などの油脂に分散させる方法も考えられるが、これらを用いた場合には、以下のような不具合が考えられる。
すなわち、メタノールなどの低級アルコールは、触媒粒子の主成分としての酸化カルシウムに対する反応性が高く、特に、酸化カルシウムとメタノールとの反応により生成するカルシウムメトキシドは、粒子同士が強く固着する性質を有しているので、バイオディーゼル燃料合成反応で使用する際の取り扱いが難しいという問題がある。さらに、この固着しやすいという性質は、触媒組成物の製造に使用する粉砕機やその周辺機器、配管にも固着が発生してしまうという問題も引き起こすものであり、これらのメンテナンスが困難となるという不具合を生じてしまう。
また、バイオディーゼル燃料のもう一方の原料である、植物油などの油脂は、酸化カルシウムと反応することはないものの、水分や遊離脂肪酸を多く含むものであり、水分や遊離脂肪酸は、酸化カルシウムの触媒活性低下をもたらす被毒成分であることが知られている。これに対し、食用用途のように、水分および遊離脂肪酸の含有量が管理された植物油を入手する方法も考えられるが、これらは非常に高価であり、そのため、触媒組成物の原料に用いることは現実的ではない。これに加えて、植物油などの油脂は粘度が高いために、触媒原料を機械的に粉砕する際において、粉砕メディアからの衝撃力が砕料へ充分に伝達されずに粉砕効率の低下をもたらすという不具合もある。
これに対して、バイオディーゼル燃料は、酸化カルシウムと反応することがなく、さらには、水分および遊離脂肪酸の含有量が比較的少なく、さらには、その粘度は、植物油などの油脂と比較して1/10以下と低い水準にあることから、上記のような問題が起こらないものである。なお、バイオディーゼル燃料以外の溶媒を用いることも可能であるが、バイオディーゼル燃料を用いることにより、バイオディーゼル燃料は最終製品そのものであるため、別途、回収・再利用に係る工程が不要であるため好適である。あるいは、バイオディーゼル燃料以外の溶媒を用いた場合には、別途、回収・再利用のための工程が必要となるため、生産コストが上昇してしまうという不具合がある。
バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物中における、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒の含有量は、触媒粒子(あるいは、触媒原料)100重量部に対して、好ましくは100〜900重量部であり、より好ましくは200〜500重量部である。溶媒の添加量が少な過ぎると、触媒粒子の酸化状態にある(劣化していない)酸化カルシウム表面の保護効果が得難くなり、触媒活性が低下したり、粉砕時における粉砕効率が低下してしまうおそれがある。一方、溶媒の添加量が多過ぎると、生産コスト的に不利となってしまう。
このようなバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物の製造方法としては、特に限定されないが、酸化カルシウムを主成分とする触媒原料を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散することで、酸化カルシウム分散液を得て、得られた酸化カルシウム分散液に含まれる触媒原料を粉砕する方法などが挙げられる。また、この場合において、酸化カルシウム分散液に含まれる触媒原料を粉砕する際には、触媒原料を一次粉砕し、次いで、一次粉砕により得られた一次粉砕原料を、ビーズミルを用いて二次粉砕するような工程を採用してもよい。特に、触媒原料の粉砕を、このように二段階で行うことで、バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物に含有される、活性表面を有する酸化カルシウム粉末の粒径分布の90%累積値(D90)および平均粒径を上記した範囲とすることができる。
なお、触媒原料の粉砕を二段階で行う場合における具体的な粉砕方法としては、次のとおりとすればよい。
すなわち、触媒原料として、たとえば、生石灰などの天然産炭酸カルシウム資源を焼成することによって得られる酸化カルシウムを用い、これをバイオディーゼル燃料に分散させ、まず、触媒原料を、数mmの塊状物質から、粒径分布の90%累積値(D90)が10μm以下、好ましくは8μm以下となるように、一次粉砕を行なう。一次粉砕は、数mmの塊状物質を粉砕するのに適した方法を用いて行なえばよいが、たとえば、タワーミル(日本アイリッヒ株式会社製)などを用いて行うことができる。
次いで、一次粉砕により得られた一次粉砕原料について、ビーズミルを用いて、二次粉砕を行い、粒径分布の90%累積値(D90)が2μm以下、好ましくは1μm以下に粉砕することで、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を得る。なお、本方法では、触媒原料として、数mm〜100mm程度と粗大な塊状酸化カルシウムを用いるため、このような粗大な原料を砕くためには、粗大な原料を砕くことに適した粉砕機を用いる必要があるが、このような粉砕機では、微粒子を製造することができない。そのため、本発明の触媒組成物の製造方法では、粗大な原料を砕く一次粉砕と、ビーズミルを用いた二次粉砕とを組み合わせた2段階の機械的粉砕を行なうことが好ましい。
なお、二次粉砕を行なう際においては、粉砕用のメディアとして、粒子径が、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.1〜0.3mmであるものを好ましく用いることができる。また、粉砕用のメディアとしては、コンタミネーションが防止できるという観点より、セラミック製のものが好ましく用いられる。
(3)バイオディーゼル燃料の製造方法
次いで、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法について、図1に示すフローチャートに沿って説明する。図1は、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を示すフローチャートである。
第1工程:油脂および低級アルコールの投入
まず、反応容器に、バイオディーゼル燃料となる油脂および低級アルコールを投入する。油脂としては、植物油を用いることができ、具体的には、食用用途の油、調理使用済みの食用油、非食用用途の植物油、藻類からの抽出油等を用いることができる。なお、遊離脂肪酸が比較的多い高酸価植物油を使用する場合には、たとえば、特開2008−1856号公報に記載されている方法などによって、遊離脂肪酸を事前に除去しておくことが望ましい。また、水分を多く含む原料植物油に対しては、加熱乾燥しておくことが好ましい。副原料の低級アルコールとしては、安価で入手が容易なメタノールが適当である。メタノールを用いる場合に、油脂とメタノールの混合比は、油脂:メタノールの容積比で、100:20程度とすることが一般的である。なお、メタノールの比率を下げることは可能であるが、100:13が化学量論比に相当するため、これ以上低くすることは望ましくない。また、メタノールの混合比を高めることで、バイオディーゼル燃料合成の反応効率を高めることも可能であるが、一方で、グリセリン相へ多くのバイオディーゼル燃料がリークしてしまい、歩留まりが悪化するという不具合もある。
第2工程:バイオディーゼル燃料製造用触媒の投入
次いで、油脂および低級アルコールを投入した反応容器中に、上述したバイオディーゼル燃料製造用触媒としての、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を投入する。なお、バイオディーゼル燃料製造用触媒としての、活性表面を有する酸化カルシウム粉末としては、固体状のものを用いてもよいが、これに代えて、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散してなるバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物を用いてもよい。なお、バイオディーゼル燃料製造用触媒としての、活性表面を有する酸化カルシウム粉末の配合量は、特に限定されないが、油脂100重量部に対して、好ましくは0.05〜1.0重量部である。また、バイオディーゼル燃料製造用触媒としての、活性表面を有する酸化カルシウム粉末として、粒径分布の90%累積値(D90)が2μm以下と微粒化させたものを用いる場合には、その配合量は、油脂100重量部に対して、好ましくは0.05〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.3重量部、さらに好ましくは0.05〜0.2重量部と、比較的少量の添加でも、十分な触媒活性を実現することができる。
第3工程:バイオディーゼル燃料合成反応
次いで、バイオディーゼル燃料製造用触媒としての、活性表面を有する酸化カルシウム粉末の存在下において、油脂と低級アルコールとを反応させ、バイオディーゼル燃料を生成させる。油脂と低級アルコールとを反応させて、バイオディーゼル燃料を合成する際の合成反応の操作条件としては、特に限定されないが、低級アルコールとしてメタノールを用いる場合を例示すると、常圧下でメタノールが蒸発しない程度の加熱撹拌が好ましく、具体的には50〜60℃に加熱することが好ましい。なお、メタノールの沸点以上に加熱することは反応効率の向上に効果的であるが、メタノール蒸気のリークを防止できる耐圧容器が必要となるため、設備コストの面で不利となってしまう。一方、加熱温度が50℃を下回ると、合成反応に長時間を要することが懸念される。反応容器は一般的に回分方式で操作されるが、流通方式としてもよい。
第4工程:グリセリン分離
次いで、上記にて得られたバイオディーゼル燃料を含有する反応液から、反応副生成物としてのグリセリンを分離除去する。具体的には、上記にて得られたバイオディーゼル燃料を含有する反応液を静置し、反応液中に含まれるバイオディーゼル燃料とグリセリンとを、比重/極性差によって分離し、下相に沈降するグリセリン相を分離・除去することで、粗バイオディーゼル燃料(粗BDF)を得る。また、遠心分離機を用いてグリセリン相を分離しても良い。
第5工程:減圧蒸留
次いで、グリセリンを分離・除去することにより得られた粗バイオディーゼル燃料の精製に、本発明では減圧蒸留を行う。減圧蒸留の前には粗バイオディーゼル燃料に混入する触媒成分を除去するために水洗浄、吸着処理等が行うのが通常である。本発明は、粗バイオディーゼル燃料を前処理することなく減圧蒸留へ供することが特徴であり、通常操作のように廃棄物(石鹸・油分を含有する廃水、使用済み吸着材等)を発生することはない。減圧蒸留は、減圧度10mmHg以下、加熱温度150〜250℃で操作され、精製バイオディーゼル燃料が留出する。粗バイオディーゼル燃料に含まれる残存グリセリド類、遊離脂肪酸等の不純物は残留油に濃縮される。本発明の減圧蒸留には市販の蒸留装置を使用することができ、たとえば、製品名「D・OiL N型」、株式会社ダイキアクシス製)などが挙げられる。
本発明によれば、活性表面を有する酸化カルシウム粉末の存在下で、低級アルコールと油脂とを反応させることにより得られた粗バイオディーゼル燃料を、前処理することなく減圧蒸留により精製することで、高品質なバイオディーゼル燃料を低コストで効率的に得ることができる。高品質化の指標を具体的に記すと、残存グリセリド類について、トリグリセリドとジグリセリドは未検出としなければならない。モノグリセリドの残存量は0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。このように残存グリセリド類が減少すると、脂肪酸メチルエステルの含有率が99%以上に高まる。酸価(遊離脂肪酸の含有量)については0.5mg−KOH/g以下が好ましい。より好ましくは0.3mg−KOH/g以下、さらに好ましくは0.2mg−KOH/g以下である。
なお、たとえば、上述した特許文献1(特開2008−231345号公報)に開示されている技術のように、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、水酸化カリウムなどの苛性アルカリ触媒を用いる方法においては、粗バイオディーゼル燃料を前処理なしでそのまま減圧蒸留しようとすると、残存している苛性アルカリの強い塩基性のために重合反応が起こることで、高温の装置内で残留油の粘度が著しく増加したり、強固な固体状炭素質物質が生成する。その結果、減圧蒸留を円滑に操作することができなくなる。円滑な蒸留操作のため、図2が示すように、前処理として粗バイオディーゼル燃料の水洗し、アルカリ分を除去する方法を採用しているが、工程が煩雑になるだけでなく前処理に多大な時間を要する。さらには、石鹸分や油分を多く含む廃水を発生しており、その処理に多大なコストを要する。加えて、前処理を行った後に、蒸留操作を行っても必ずしも高品質なバイオディーゼル燃料を得ることができない場合もあり、一方で、高品質なバイオディーゼル燃料を得ることができたとしても、石鹸分や油分を多く含む廃水が多量に発生してしまうため、多大なコストを要するものであった。図2は、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、苛性アルカリ(水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を用いる方法における、バイオディーゼル燃料の製造方法を示すフローチャートである。
これに対して、酸化カルシウムを触媒に用いる本発明では、得られる粗バイオディーゼル燃料を前処理(酸処理および水洗によりアルカリ分を除去する処理)なしで減圧蒸留しても、残存する触媒成分(カルシウムグリセロキシド)の塩基性が弱く、高温の装置内でエステル分が重合することはない。その結果、残留油の粘度が低く、強固な固体状炭素質も生成しないので、減圧蒸留を円滑に操作し、高品質なバイオディーゼル燃料を効率的に得ることができる。蒸留後の残留油は、グリセリンと同様に、セメント用キルン炉、道路用アスファルト合材用砕石の熱風乾燥炉の燃料に利用することが可能である。従って、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を触媒に用い、生成した粗バイオディーゼル燃料を前処理することなくそのまま減圧蒸留する本発明によれば、廃棄物として扱われる廃液は全く発生せず、環境に負荷を与えないゼロエミッションのバイオディーゼル燃料生産が可能となる。
加えて、本発明によれば、たとえば、図3に示すように、複数のバイオディーゼル燃料製造工場で酸化カルシウム触媒による反応と生成物の分離までを行い、得られた粗バイオディーゼル燃料を特定の場所で集約・減圧蒸留すれば、良好な品質を有するバイオディーゼル燃料をより低コストで効率的に製造することができる。すなわち、図3に示す方式では、図1に示す第1〜第4工程を複数のバイオディーゼル燃料製造工場にて行い、第5の蒸留精製工程をバイオディーゼル燃料精製センターにて集約的に実施する。これにより、高品質なバイオディーゼル燃料をより低コストで効率的に生産できるだけでなく、バイオディーゼル燃料をユーザーへ安定かつ大量に供給することができる。これは、バイオディーゼル燃料の利用を促進する新規な技術となり、来るべき「エネルギー循環型社会」の構築に大きく貢献するはずである。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
(バイオディーゼル燃料製造用触媒組成物の調製)
平均粒径が約5mmの市販生石灰を触媒原料として用い、これを、バイオディーゼル燃料に分散させ、得られた分散液を湿式の機械的粉砕操作によって粉砕することで、一次粉砕原料を含有する組成物を得た。機械的粉砕には、直径6mmのステンレス鋼球を用いるボールミルを用いた。なお、得られた一次粉砕原料は、粒径分布の90%累積値(D90)が10μm以下で、平均粒子径が3μmであった。そして、得られた一次粉砕原料を、さらに、0.3mm径の球状セラミックスを充填したビーズミルを用いて、粉砕時間1時間の条件で二次粉砕を行なうことで、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、粒径分布の90%累積値(D90)が1μm以下で、平均粒子径が0.2μmである活性表面を有する酸化カルシウム粉末を含有する触媒組成物を得た。なお、実施例1においては、触媒組成物中における、触媒粒子の含有割合が25重量%となるように、各成分の比率を調整した。そして、得られた触媒組成物は、製造後速やかに、真空パックで封入保管した。
(粗バイオディーゼル燃料の製造(第1工程〜第4工程))
そして、内容積300mlのガラス製回分方式の反応装置を用いて、粗バイオディーゼル燃料の製造を行った。原料の植物油として、家庭の食材調理に用いた後の食用油(酸価=0.2mg−KOH/g、水分量=210ppm)を準備し、150mlの原料植物油に対して、30mlのメタノール(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)を混ぜてから63℃まで加熱撹拌し、上記にて得られたバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物6g(活性表面を有する酸化カルシウム粉末換算で1.5g)を添加した。その後、63℃の加熱を保ち、バイオディーゼル燃料合成反応を行った。ガスクロマトグラフを用いた分析で、バイオディーゼル燃料の主成分である脂肪酸メチルエステル生成率を測定したところ、1時間後で74%、2時間で96%であった。
2時間の合成反応の後、2時間静置することでバイオディーゼル燃料と副生グリセリンを分離し、副生グリセリンを装置下部に設置されるノズルより抜き出すことで、粗バイオディーゼル燃料を得た。
(粗バイオディーゼル燃料の減圧蒸留(第5工程))
次いで、得られた粗バイオディーゼル燃料について、前処理を実施せずにそのままを減圧蒸留法で精製した(減圧蒸留装置:株式会社ダイキアクシス製、「D・OiL N型」)。蒸留装置の加熱温度(230℃)と減圧度(5mmHg)は安定し、操作は容易であった。装置内の残留油も円滑に抜き出すことができた。留出した精製バイオディーゼル燃料をガスクロマトグラフで分析すると脂肪酸メチルエステルの含有量は99%を超えていた。不純物である残留グリセリド類について、トリグリセリド、ジグリセリドは含有されておらず、モノグリセリドが僅かな残存(0.2重量%)であった。電位差滴定法による酸価は0.17mg−KOH/gであった。これらの結果より、精製バイオディーゼル燃料は、軽油代替燃料として十分な品質を備えるものであった。
実施例2
触媒原料として、平均粒径が約5mmの市販生石灰の代わりに、平均粒径が約8mmのドロマイトを用いた以外は、実施例1と同様の操作によってバイオディーゼル燃料合成反応を行った。脂肪酸メチルエステルの生成率は1時間後で86%、2時間後で97%であった。その後も実施例1と同様の操作を行い、得られた粗バイオディーゼル燃料を前処理することなくそのままを減圧蒸留した。このときも蒸留装置の操作は容易であり、装置内の残留油も円滑に抜き出すことができた。留出した精製バイオディーゼル燃料をガスクロマトグラフで分析すると脂肪酸メチルエステルの含有量は99%を超えていた。不純物である残留グリセリド類について、トリグリセリド、ジグリセリドは含有されておらず、モノグリセリドが僅かな残存(0.3重量%)であった。電位差滴定法による酸価は0.07mg−KOH/gであった。これらの結果より、精製バイオディーゼル燃料は、軽油代替燃料として十分な品質を備えるものであった。
比較例1
実施例1で得た粗バイオディーゼル燃料の一部を、酸処理(塩酸を用いた酸処理および水洗)することで、精製バイオディーゼル燃料を得た。水洗の前に塩酸で処理するのは、粗バイオディーゼル燃料に混入した酸化カルシウム触媒を除去するためである。酸処理によって得たバイオディーゼル燃料をガスクロマトグラフで分析すると、エステル含有率は96%であり、減圧蒸留で精製したときよりも少なくなった。残留グリセリド類については、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドのそれぞれが、2.0重量%、0.5重量%、1.5重量%であり、蒸留精製したものよりも不純物が多かった。また、酸価は3.8mg−KOH/gと高い値であった。これより、酸洗浄による精製では品質の良いバイオディーゼルを得ることは難しいといえる。
比較例2
触媒に水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同じ条件でバイオディーゼル燃料合成反応を行った。得られた粗バイオディーゼル燃料は前処理することなくそのままを減圧蒸留した。実施例1と同じ条件で操作したが、減圧度の変動が頻発したために適切に精製することができなかった。装置内から抜き出した残留油は粘度が高く、強固な固体状炭素質物質が存在していた。
比較例3
触媒に水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同じ条件でバイオディーゼル燃料合成反応を行った。得られた粗バイオディーゼル燃料は、水洗浄によって精製した。精製バイオディーゼル燃料は脂肪酸メチルエステルの含有量が97%であり、実施例1,2で得た精製バイオディーゼル燃料よりも少ない結果となった。不純物であるトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドについては、それぞれの含有量が1.0重量%、0.5重量%、1.5重量%であり、実施例1,2で得た精製バイオディーゼル燃料よりも多い値であった。これらの結果から、従来の水酸化アルカリ触媒法では高品質のバイオディーゼル燃料を効率的に得ることはできないといえる。また、水洗浄の際には、多量の石鹸と油分を含む廃水が発生した。

Claims (2)

  1. 油脂および低級アルコールからなる混合液中に、バイオディーゼル燃料製造用触媒として、活性表面を有する酸化カルシウム粉末を添加する投入工程と、
    前記酸化カルシウム粉末の存在下で、前記低級アルコールと前記油脂を反応させる反応工程と、
    前記反応による生成物からグリセリン分を除去し、粗バイオディーゼル燃料を回収する回収工程と、
    前記粗バイオディーゼル燃料を前処理することなくそのまま減圧蒸留する減圧蒸留工程を備え、
    前記活性表面を有する酸化カルシウム粉末として、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散させた状態で粉砕することにより、粒径分布の90%累積値(D90)が0.01〜2μmであり、平均粒径が0.3μm以下とされたものを用い
    かつ、前記投入工程において、前記活性表面を有する酸化カルシウム粉末を、バイオディーゼル燃料を主成分とする溶媒中に分散させ、粉砕することにより得られるバイオディーゼル燃料製造用触媒組成物の形態で、油脂および低級アルコールからなる混合液中に添加することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
  2. 前記投入工程、前記反応工程、および前記回収工程を、複数のバイオディーゼル燃料製造工場にて、それぞれ行い、粗バイオディーゼル燃料をそれぞれ得て、
    得られた前記粗バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料精製センターに集約して、前記バイオディーゼル燃料精製センターにて、前記減圧蒸留工程を行うことを特徴とする請求項に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
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