JP5185701B2 - 磁性基体 - Google Patents

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Description

本発明は、RFIDデバイスや電磁波吸収体等に用いられる磁性基体に関する。
磁性基体は、例えば、RFIDデバイスや電磁波吸収体に用いられる。磁性基体は、基板の表面に直接、磁性膜が成膜された構成となっている。
磁性膜は、例えば下記特許文献1に示すようなFe−M−O膜である。後述する実験結果に示すように、基板上に直接、Fe−M−O膜を成膜しただけの構成では、磁性膜の膜厚を厚くしても、複素比透磁率の実数部μ´を効果的に大きくできず良好な軟磁気特性を得ることが出来なかった。
また特許文献1にあるように、通常、Fe−M−O膜に対して熱処理(アニール)を施さないと良好な軟磁気特性を得ることができなかった。そのため、基板に耐熱性の低い薄いシート状の樹脂基体を用いることが出来ず、磁性基体の薄型化、フレキシブル化を実現できなかった。
特開平6−316748号公報
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、高抵抗軟磁性膜(A−M−O)を用いた磁性基体において、従来に比べて適切に軟磁気特性の向上を図ることが可能な磁性基体を提供することを目的としている。
本発明における磁性基体は、基体上に、Cr膜と、A−M−O(ただし元素AはFeまたはCoまたはその混合物を表し、元素Mは、Hf、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Mg、Zn、Ca、Ce、Y、Siのうち少なくともいずれか一種を表す)から成る磁性膜とが順に成膜されて積層されており、
前記磁性膜は、元素MとOの化合物を含むアモルファス相と、前記アモルファス相中に点在するFeまたはCoから選ばれる一種または二種を主体とした平均結晶粒径30nm以下の微結晶相との膜構造で形成されており、
前記磁性膜は、元素AがFeであり、組成式がFe a b c から成り、元素Oの組成比cが、6.85at%〜47at%の範囲内、元素Mの組成比bが11at%〜17at%の範囲内、残部が元素Feの組成比aであり、a+b+c=100at%の関係を満たし、
前記磁性膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc(110)のピークの他に、異なる結晶面のbcc相のピークが現れることを特徴とするものである。
また本発明では、前記磁性膜は、RF平行平板マグネトロンスパッタ法により成膜されたものであり、
前記元素Oの組成比cは、27.08at%〜47at%であり、元素Mの組成比bは、11.40at%〜15.74at%であることが好ましい。
また本発明では、前記磁性膜と前記Cr膜とが共に、前記RF平行平板マグネトロンスパッタ法により成膜されることが好ましい。
また本発明では、前記磁性膜は、DC対向ターゲットスパッタ法により成膜されたものであり、
前記元素Oの組成比cは、6.85at%〜12.46at%であり、元素Mの組成比bは、12.91at%〜13.52at%であることが好ましい。
また本発明では、前記Cr膜は結晶質であることが好ましい。
また本発明では、前記磁性膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc(110)のピークの他に、bcc(200)や、bcc(211)が現れることが好ましい。
また本発明では、前記Cr膜は、前記磁性膜よりも薄いことが好ましい。
また本発明では、前記磁性膜の膜厚(前記磁性膜が複数ある場合には合計膜厚)は、0.001μm〜50μmであることが好ましい。
また本発明では、前記Cr膜の膜厚(前記Cr膜が複数ある場合でも個々の前記Cr膜の膜厚)は、0.001μm〜0.2μmであることが好ましい。
これにより、微結晶相の析出を促進でき、軟磁気特性の改善を図ることが可能である。特に磁性膜の膜厚(磁性膜が複数層ある場合は合計膜厚)が薄くても、また、熱処理を施さなくても、優れた軟磁気特性を得ることが可能である。
本発明では、基板上に、下から前記Cr膜、及び前記磁性膜の順に積層されている構成でも、前記基板上に、下から前記磁性膜、及び前記Cr膜の順に積層されている構成でもよい。
また本発明では、前記基板上に、前記Cr膜と前記磁性膜とが交互に繰り返して積層されている構成であることが好ましい。
また本発明では、前記基体は、可撓性の樹脂シートであることが好ましい。本発明では、熱処理を施さなくても、アモルファス相と、微結晶相との混相構造を得ることができ、したがって、基板として耐熱性の低い樹脂シートを用いることが可能である。よって磁性基体の薄型化、フレキシブル化が可能である。
本発明の磁性基体によれば、微結晶相の析出を促進でき、軟磁気特性の改善を図ることが可能である。特に磁性膜の膜厚(磁性膜が複数層ある場合には合計膜厚)が薄くても、また、熱処理を施さなくても、優れた軟磁気特性を得ることが可能である。
図1は、RFIDデバイス及びリードライタの模式図、図2は本発明の実施形態の磁性基体である磁性シートの部分断面図、図3はFe−M−O膜の膜構造の模式図である。
図1に示すようにRFID(Radio Frequency ID)デバイス1は、アンテナ及びICチップを備えるRFIDタグ2と、金属部材3と、RFIDタグ2と金属部材3との間に挿入された磁性シート4とを有して構成される。
RFIDタグ2は、基板上にアンテナ及びICチップが形成された形態である。
金属部材3は例えば筐体の一部を成しており、Al、Ti、Cr等で形成される。金属部材3の膜厚T1は、0.05〜0.5mm程度である。
RFIDタグ2と金属部材3との間に挿入される磁性シート4は、図2に示すように可撓性の樹脂シート5上に磁性膜6とCr膜9とが順に積層されたものである。
磁性膜6は、A−M−O(ただし元素AはFeまたはCoまたはその混合物を表し、元素Mは、Hf、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Mg、Zn、Ca、Ce、Y、Siのうち少なくともいずれか一種を表す)から成る。
図2(a)では、樹脂シート5の上面5aにCr膜9が成膜され、Cr膜9の上面9aに磁性膜6が成膜されている。
図2(b)では、樹脂シート5の上面5aに磁性膜6が成膜され、磁性膜6の上面6aにCr膜9が成膜されている。
図2(c)では、樹脂シート5上にCr膜9と磁性膜6とが交互に繰り返し積層された構成である。なお図2(c)では、Cr膜9と磁性膜6の積層構造の全体がかなり厚く図示されているが、実際には各Cr膜9及び各磁性膜6を非常に薄く形成できるので多層化しても積層構造の合計膜厚を薄く形成することが出来る。
図2(c)は、図2(a)の磁性膜6上に、さらに、Cr膜9/磁性膜6・・・が積層された構成であるが、図2(b)のCr膜9上に、さらに磁性膜6/Cr膜9が積層された構成であってもよい。
また、「Cr膜9と磁性膜6とが交互に繰り返し積層された構成」には、Cr膜9及び磁性膜6を共に同じ数だけ積層した構成(例えば図2(c)は、共に7層)のみならず、Cr膜9及び磁性膜6を異なる数で積層した構成も含む。すなわち、樹脂シート5/Cr膜9/磁性膜6/Cr膜9(Cr膜9が2層で、磁性膜6が1層)の積層構成や樹脂シート5/磁性膜6/Cr膜9/磁性膜6/Cr膜9/磁性膜6(Cr膜9が2層で、磁性膜6が3層)の積層構成等を含む。
本実施形態の磁性膜6は、図3に示す膜構造を有している。すなわち磁性膜6の膜構造は、図3に示すように、元素MとOの化合物を含むアモルファス相7と、アモルファス相7中に点在するFeを主体とした微結晶相8との混相構造で形成されている。微結晶相8の平均粒径を30nm以下にでき、また微結晶相8の結晶構造をbcc構造にできる。微結晶相8は、bcc構造に限定されずhcp構造、fcc構造でもよい。微結晶相8は、元素AにCo、あるいは元素AにFe及びCoを選択したときは、Co、あるいは、Fe及びCoを主体とした平均結晶粒径30nm以下の微結晶相である。
アモルファス相7は、元素Mの酸化物を多量に含み、そのほか、FeOやFe23も含むと考えられる。元素MがHfの場合、アモルファス相7にはHfO2が多量に含まれていると考えられる。
本実施形態のA−M−Oから成る磁性膜6の膜構造は、ナノグラニュラー合金とは異なる。ナノグラニュラーは、強磁性微粒子と強磁性微粒子間に絶縁物等の粒界物質が介在する構成である。一方、磁性膜6におけるアモルファス相7は、微結晶相8間の粒界だけに存在しない。上記したように磁性膜6は、アモルファス相7中に微結晶相8が点在した混相構造となっている。後述するX線回折スペクトルでもアモルファス相7の存在とはっきりと見て取れる。
磁性膜6中に含まれるアモルファス相7は体積比率で20〜80%程度であることが好適である。
なおCr膜9は結晶質である。
本実施形態の磁気シート4は、樹脂シート5上にCr膜9とA−M−Oから成る磁性膜6とが順に積層された構成である。これにより、磁性膜6の微結晶相8の析出を促進できる。後述する実験結果によれば、樹脂シート5上に磁性膜6を直接、成膜しただけの従来例に比べて微結晶相8の析出を促進できることがわかっている。後述するX線回折スペクトルの結果によれば、本実施形態では、Feのbcc(110)のピークが従来構造よりも強く出た。また本実施形態には、bcc(110)のピーク以外に、bcc(200)や、bcc(211)のピークも見られた。
以上のように本実施形態では、従来例に比べて磁性膜6の微結晶相8の析出を促進でき、よって良好な軟磁気特を得ることができる。
本実施形態では、複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)を50以上、好ましくは300以上に設定できる。
特に、本実施形態では、磁性膜6の膜厚(図2(c)のように磁性膜6が複数層あるときは合計膜厚)を薄くしても、良好な軟磁気特性を得ることができることがわかっている。
本実施形態では、磁性膜6の膜厚T2(図2(a)参照)を、0.001〜50μmの範囲内に設定できる。また、図2(c)のように複数の磁性膜6がある場合でも合計膜厚を、0.001〜50μmの範囲内に設定できる。また膜厚(合計膜厚)の好ましい上限値は10μm、より好ましい上限値は5μmである。またCr膜9は磁性膜6より薄いことが好ましい。Cr膜9の膜厚T3(図2(a)参照)は、0.001〜0.2μm程度であることが好適である。なお図2(c)のようにCr膜9が複数ある場合も、個々のCr膜9の膜厚T3を、0.001〜0.2μm程度とする。
また樹脂シート5の膜厚は、0.01〜0.10mm程度であることが好適である。
以上により磁性シート4の薄型化を促進できる。
また本実施形態では、熱処理を施さなくても、アモルファス相7と微結晶相8との混相構造を得ることができる。よって、樹脂シート5の材質を特に限定しなくてもよい。すなわち樹脂シート5の材質の選択性を広げることができる。また樹脂シート5に対する熱的影響がないため磁性シート4の寸法安定性を従来よりも高精度に得ることが可能である。樹脂シート5には、熱可塑性樹脂を使用でき、その中でも耐熱性に優れたPPS(ポリフェニレンスルフィド)の使用が好適であるものの、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、アミラード(全芳香族系ポリアミド)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、アクリルニトリル・ブタジェン・スチレン(ABS)等各種エンジニアリングプラスチックやガラスエポキシ基板、ポリイミドフィルム等の使用も可能である。したがって、磁性シート4のフレキシブル化を促進できる。よって、磁性シート4をRFIDタグ2と金属部材3との間に密着させやすい。また、磁性シート4を湾曲させるような場合でも適切に磁性シート4を湾曲できる。
なお本実施形態では基板としてリジッドなガラス基板等を用いることもでき、例えば比耐熱性の基体に直接性膜したり、携帯機器等をはじめとする電子機器の筐体へ直接性膜することも可能である。
また、磁性膜6は、A−M−O膜の元素AがFeであり、Feabcの組成式からなり、元素Oの組成比cが、6.85〜47at%の範囲内、元素Mの組成比bが11〜17at%の範囲内、残部が元素Feの組成比aであり、a+b+c=100at%の関係を満たす高抵抗軟磁性膜であることが好ましい。元素Oの組成比cを13〜47at%とすることがより好ましい。さらに、元素Oの組成比cを27〜47at%とすることがより好ましい。さらに、元素Oの組成比cを27〜36at%とすることがより好ましい。これにより、アモルファス相と微結晶相との混相構造が得やすくなり、軟磁気特性の向上をより効果的に図ることが出来る。
本実施形態では、図1に示すように、樹脂シート5上に、Cr膜9とA−M−Oから成る磁性膜6とを順に積層した磁性シート4をRFIDタグ2と金属部材3との間に挿入することで、リードライタ10からの磁束Hが磁性膜6内を通り、RFIDデバイス1とリードライタ10との間で還流磁束が形成される。この結果、RFIDタグ2のアンテナにて受信した信号出力の減衰量を小さくでき、例えば13.56MHzでのRFID特性の向上を効果的に図ることができる。また、本実施形態では、RFIDデバイス1とリードライタ10間の通信距離L1の範囲を広げることができ、具体的には通信距離L1を10〜50mmの範囲に設定しても適切に無線通信を行うことが可能である。
なお図2に示す磁性シート4は、電磁波抑制シート(ノイズ抑制シート)として用いることも出来る。
図2は、樹脂シート5の片面にのみ、Cr膜9と磁性膜6とを積層した構造であるが、樹脂シート5の両面に、Cr膜9と磁性膜6とを積層した構造であってもよい。
図2に示す磁性シート4は、物理蒸着法により、樹脂シート5上にCr膜9と磁性膜6とを順に積層したものである。
物理蒸着法としては、スパッタ法、金属蒸着法、イオンビームスパッタ等を提示できる。またスパッタ法には、DC−FTS(対向ターゲットスパッタ)、RF−FTS(対向ターゲットスパッタ)、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ、DCコンベンショナルスパッタ、RFコンベンショナルスパッタ等を提示できる。
(基板上にCr膜とFe−Hf−O膜とを積層した実施例と、基板上にFe−Hf−O膜を成膜した従来例における軟磁気特性の実験)
実験では樹脂シート上に[Fe−Hf−O膜/Cr膜]の積層体を15層、積層した実施例1及び実施例2、樹脂シート/Cr膜/Fe−Hf−O膜の実施例3、樹脂シート/Fe−Hf−O膜の従来例1を夫々、作製した。
実施例1では、各Fe−Hf−O膜の膜厚を0.2μm(合計膜厚3μm)とし、各Cr膜の膜厚を0.1μm(合計膜厚1.5μm)とした。また実施例2では、各Fe−Hf−O膜の膜厚を0.3μm(合計膜厚4.5μm)とし、Cr膜の膜厚を0.1μm(合計膜厚1.5μm)とした。また、実施例3では、Fe−Hf−O膜の膜厚を3μm、Cr膜の膜厚を0.1μmとした。また、従来例1では、Fe−Hf−O膜の膜厚が異なる複数の試料を作製した。
樹脂シートには、帝人DuPont製のPEN(ポリエチレンナフタレート)シート、あるいは、PPS(ポリフェニレンスルファイド)シートのいずれかを用いた。樹脂シートの膜厚は75μmであった。
また、Fe−Hf−O膜をArとO2の混合ガス中で、RF平行平板マグネトロンスパッタにより成膜した。スパッタ装置には、キヤノンアネルバ製のSPF−730 マグネトロンスパッタ装置を用いた。ターゲットにはFe−Hfターゲットを用いた。またArガス流量を50sccm、Ar+5%O2ガス流量を25sccm、O2/(Ar+O2)流量比を1.67%とした。またRF電力を600W、ガス圧を3mTorr、T/S=0%、基板間接冷却とした。
また、上記スパッタ装置を用いて、Arガス中で、Cr膜を成膜した。Cr膜の成膜では、RF電力を600W、ガス圧を8mTorr、Arガス流量を70sccmとした。
なお各試料に対して熱処理は行っていない。
Fe−Hf−O膜の組成比は、Feが、50.2at%、Hfが13.7at、Oが36.1at%であった。
そして、実施例1〜3及び従来例1における13.56MHzでの複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″を測定した。その実験結果が図4に示されている。図4における実施例1,2のプロットの横軸は、夫々、Fe−Hf−O膜の合計膜厚の位置である。
図4に示すように、実施例1〜3は、共に従来例1より、複素比透磁率の実数部μ´が大きくなった。
特に、図4に示すように、従来例1では、Fe−Hf−O膜の膜厚を厚くしても複素比透磁率の実数部μ´は、270程度に留まり、それ以上大きくならなかった。
一方、実施例1〜3は、いずれも複素比透磁率の実数部μ´が300を越えた。
Cr膜とFe−Hf−O膜を多層構造とした実施例1(Fe−Hf−O膜の合計膜厚が3μm)では、450を越える非常に大きい複素比透磁率の実数部μ´を得ることが出来た。
(実施例における複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″の周波数特性)
上記の実験で用いた実施例1及び実施例2における複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″の周波数特性を調べた。その実験結果が図5に示されている。図5に示すように、高周波帯域で、高く且つ安定した複素比透磁率の実数部μ´を得ることが出来た。
また、磁性シートを電磁波抑制シート(ノイズ抑制シート)として用いる場合には、高周波帯域で複素比透磁率の虚数部μ″が大きいことが好ましいので、本実施例の磁性シートは、電磁波抑制シート(ノイズ抑制シート)としても有効に用いることが出来るとわかった。
(X線回折スペクトルの実験1)
従来例2として、Si/Al23基板上に、Fe−Hf−O膜を0.7μmの膜厚でスパッタ成膜した。なおスパッタ成膜条件は上記の実験と同じである。
上記実験で用いた実施例1、従来例1、及び従来例2のX線回折スペクトルを測定した。従来例1には、Fe−Hf−O膜の膜厚が3.5μmの試料を用いた
来例1及び従来例2のX線回折スペクトルはよく似ていることがわかった。一方、実施例1のX線回折スペクトルには、従来例1及び従来例2と違って、Fe相のbcc(200)やbcc(211)のピークが現れた。
また、実施例1におけるbcc(110)のピークは、従来例1及び従来例2に比べて強く出ることがわかった。
実施例1、従来例1及び従来例2におけるFe−Hf−O膜の膜構造は、共に、酸化物アモルファス相とFeのbcc相との混相構造になっていることがわかったが、実施例1は、従来例1及び従来例2と違って複数種のbcc相のピークが見られ、またbcc(110)のピークが強く出ることがわかった。
よってこの実験結果から、基板の違いによる磁性膜の膜構造への影響は小さく、本実施例のように、Cr膜とFe−Hf−O膜との積層構造とすることで、熱処理を施さずとも微結晶相の析出を促進できることがわかった。
(X線回折スペクトルの実験2)
施例1及び従来例1のほかに実施例3のX線回折スペクトルを測定した。
実施例3は、樹脂シート(PPS)上にCr膜とFe−Hf−O膜とを一層ずつ積層した構成である。
施例3のX線回折スペクトルに現れるbcc相のピークは、樹脂シート(PPS)上にCr膜及びFe−Hf−O膜を多層積層した実施例1に比べると小さくなっが、従来例1に対しては大きくなった。
よって、基板上に直接、磁性膜を成膜しただけの従来構成に比べて、Cr膜を少なくとも1層、Fe−Hf−O膜と重ねることで、熱処理を施さずとも微結晶相の析出を促進できることがわかった。
(組成比とX線回折スペクトルとの関係)
元素Oの組成比が6.41at%、27.08at%、66.91at%の各Fe−Hf−O膜のX線回折スペクトルを求めた。スパッタ装置には上記実験と同じものを使用した。実験ではO2流量比を変化させて、Fe−Hf−O中に取り込まれる元素Oの組成比を変化させた。いずれの試料に対しても熱処理を施していない。なお基板にはSi/Al23を用いた。またFe−Hf−O膜を基板上に直接、スパッタ成膜した。その結果が図に示されている。
元素Oの組成比を6.41at%とした場合、アモルファス相が主相となり、一方、Feのbcc相の存在を確認できなかった。また、元素Oの組成比を66.91at%としたFe−Hf−O膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc相のピークが見られず、HfO、FeOのピークとアモルファス相(FeあるいはHfの酸化物)が存在することがわかった。
一方、元素Oの組成比を27.08at%としたFe−Hf−O膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc相に対応するシャープで明瞭なピークとHfあるいはFeの酸化物に近い回折角にブロードなピークが観察された。
(組成比と複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″との関係)
基板上にFe−Hf−O膜をスパッタ成膜し、元素Oの組成比と複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)及び虚数部μ″(13.56MHz)との関係を調べた。各試料のFe−Hf−O膜をほぼ1μmの膜厚にて形成した。スパッタ装置には上記実験と同じものを使用した。実験ではO2流量比を変化させて、Fe−Hf−O中に取り込まれる元素Oの組成比を変化させた。
には、元素Oの組成比と、複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)及び虚数部μ″(13.56MHz)との関係が示されている。また下記の表1は、組成比と、複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″とをまとめたものである。
Figure 0005185701
及び表1に示すように、元素Oの組成比を適正化することで、複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)をより効果的に大きくできることがわかった。
また、DC対向ターゲットスパッタ法(FTS法)により、様々な組成比によりなるFe−Hf−O膜を基板上にスパッタ成膜した。以下の表2に示すようにガス圧を0.7mTorr、1.0mTorr、3.0mTorrと変えた。
Figure 0005185701
表2に示すように元素Oを6.85at%まで小さくしても複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″の双方が高い優れた軟磁気特性を得ることが可能であることがわかった。
RFIDデバイス及びリードライタの模式図、 本発明の実施形態の磁性シートの部分断面図、 Fe−M−O膜の膜構造の模式図、 実施例1〜3(いずれも基板上にCr膜とFe−Hf−O膜との積層構造)及び従来例1(基板上にFe−Hf−O膜を成膜した構成)における13.56MHzでの複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″の実験結果、 実施例1及び実施例2における複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部μ″の周波数特性の実験結果、 元素Oの組成比を6.41at%、27.08at%、66.91at%と した各Fe−Hf−O膜のX線回折スペクトル、 Fe−Hf−O膜の元素Oの組成比と複素比透磁率の実数部μ´及び虚数部 μ″との関係を示すグラフ、
符号の説明
1 RFIDデバイス
2 RFIDタグ
3 金属部材
4 磁性シート
5 樹脂シート
6 磁性膜
7 アモルファス相
8 微結晶相
9 Cr膜
10 リードライタ

Claims (14)

  1. 基体上に、Cr膜と、A−M−O(ただし元素AはFeまたはCoまたはその混合物を表し、元素Mは、Hf、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Mg、Zn、Ca、Ce、Y、Siのうち少なくともいずれか一種を表す)から成る磁性膜とが順に成膜されて積層されており、
    前記磁性膜は、元素MとOの化合物を含むアモルファス相と、前記アモルファス相中に点在するFeまたはCoから選ばれる一種または二種を主体とした平均結晶粒径30nm以下の微結晶相との膜構造で形成されており、
    前記磁性膜は、元素AがFeであり、組成式がFe a b c から成り、元素Oの組成比cが、6.85at%〜47at%の範囲内、元素Mの組成比bが11at%〜17at%の範囲内、残部が元素Feの組成比aであり、a+b+c=100at%の関係を満たし、
    前記磁性膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc(110)のピークの他に、異なる結晶面のbcc相のピークが現れることを特徴とする磁性基体。
  2. 前記磁性膜は、RF平行平板マグネトロンスパッタ法により成膜されたものであり、
    前記元素Oの組成比cは、27.08at%〜47at%であり、元素Mの組成比bは、11.40at%〜15.74at%である請求項1記載の磁性基体。
  3. 前記磁性膜と前記Cr膜とが共に、前記RF平行平板マグネトロンスパッタ法により成膜される請求項1又は2に記載の磁性基体。
  4. 前記磁性膜は、DC対向ターゲットスパッタ法により成膜されたものであり、
    前記元素Oの組成比cは、6.85at%〜12.46at%であり、元素Mの組成比bは、12.91at%〜13.52at%である請求項1記載の磁性基体。
  5. 前記Cr膜は結晶質である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁性基体。
  6. 前記磁性膜のX線回折スペクトルには、Feのbcc(110)のピークの他に、bcc(200)や、bcc(211)が現れる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁性基体。
  7. 前記Cr膜は、前記磁性膜よりも薄い請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁性基体。
  8. 前記磁性膜の膜厚(前記磁性膜が複数ある場合には合計膜厚)は、0.001μm〜50μmである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁性基体。
  9. 前記Cr膜の膜厚(前記Cr膜が複数ある場合でも個々の前記Cr膜の膜厚)は、0.001μm〜0.2μmである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁性基体。
  10. 基体上に、下から前記Cr膜、及び前記磁性膜の順に積層されている請求項1ないし9のいずれか1項に記載の磁性基体。
  11. 前記基体上に、下から前記磁性膜、及び前記Cr膜の順に積層されている請求項1ないし10のいずれか1項に記載の磁性基体。
  12. 前記基体上に、前記Cr膜と前記磁性膜とが交互に繰り返して積層されている請求項10又は11に記載の磁性基体。
  13. 前記Cr膜と前記磁性膜とが複数層、積層される請求項12記載の磁性基体。
  14. 前記基体は、可撓性の樹脂シートである請求項1ないし13のいずれかに記載の磁性基体。
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