JP5184805B2 - ポリマー微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
懸濁重合法は、分散安定剤を含む水中で、機械的攪拌によりビニル単量体の分散油滴を形成し、油溶性重合開始剤によりビニル単量体の重合を行う方法である。
乳化重合法は、水溶性重合開始剤を用いて界面活性剤ミセル中でビニル単量体の重合を行う方法である。
分散重合法は、ビニル単量体を溶解するが、ビニル単量体から生成するポリマーは溶解しない溶媒中で、溶媒に可溶の重合開始剤を用いて、ビニル単量体の重合を行う方法である。
シード重合法で、粒子径分布が狭い粒子を得るには、使用するポリマー微粒子の粒子径分布を狭くする必要がある。ポリマー微粒子の製造方法として、懸濁重合法は、粒子径分布が狭いポリマー微粒子を製造する場合、ポリマー微粒子の平均粒子径を10μm以下にすることが工業的に困難である。
ポリマー微粒子が吸収するビニル単量体の量を多くできれば、得られるポリマー粒子の粒子径を大きくすることができる。吸収する量を多くする方法として、重合を連鎖移動剤の存在下で行うことによりポリマー微粒子の分子量を低くする方法が知られている。
しかしながら、ソープフリー重合法ではポリマー微粒子は、狭い粒子径分布を有するが、重合のメカニズム上、平均粒子径を1μm以上にすることが困難である。
また、特開平9−12610号公報(特許文献4)には、分散重合を行うに際し、水と親水性有機液体とからなる媒体中に溶解する重合開始剤とエチレン性不飽和単量体の重量比が5〜40:95〜60、かつ水と親水性有機液体の重量比が1〜50:99〜50であるポリマー微粒子の製造方法が示されている。
一方、特許文献4の方法では、分子量を低下させるために、単量体と開始剤の重量比が95〜60:5〜40と、非常に多量の重合開始剤を投入する必要があり、重合の制御が難しいという課題や重合終了後においても多量の重合開始剤が系内に残存しているという課題があった。
かくして本発明によれば、ビニル単量体は溶解するが、前記ビニル単量体から生成するポリマーは実質的に溶解しない溶媒中で、前記ビニル単量体の重合転化率が10%以上、30%未満の段階で、前記溶媒中に連鎖移動剤を添加しつつ、前記ビニル単量体を重合させることにより、平均粒子径1〜10μmのポリマー微粒子を得ることからなり、
前記ビニル単量体が、(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記溶媒が、水とアルコールの混合溶媒であり、
前記連鎖移動剤が、メルカプタン類から選択されることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法が提供される。
本発明の方法により得られたポリマー微粒子は、シード重合法のシード粒子や、電子工業分野(例えば、LCDスペーサー、銀塩フィルム用表面改質剤、磁気テープ用フィルム改質剤及び感熱紙走行安定剤等)、塗料/インク/接着剤分野(例えば、レオロジーコントロール剤、艶消し剤等)、医療分野(例えば、抗原抗体反応検査用粒子等)、化粧品分野(例えば、滑り剤、体質顔料等)、樹脂分野(例えば、不飽和ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤、紙、歯科材料、アンチブロッキング剤、光拡散剤、樹脂改質剤等)で使用されるポリマー粒子の製造原料として使用可能である。
本発明に使用できるビニル単量体としては、特に限定されず、当該分野で公知のビニル単量体をいずれも使用できる。特に、ビニル単量体は、ビニル基を1つ有する単量体を含むことが好ましい。更に、ビニル単量体には、ビニル基を1つ有する単量体以外に、2以上のビニル基を有する他の単量体(以下、他の単量体)が含まれていてもよい。他の単量体は、ビニル基を1つ有する単量体へのコポリマー成分として使用できる。
分散安定剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)等のホモポリマー、各種ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー等の合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の天然高分子誘導体;等が挙げられる。
メルカプタン類としては、ノルマルオクチルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、ベンジルメルカプタン等の芳香族メルカプタン類、メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル等のメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。中でも、ノルマルオクチルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好適である。連鎖移動剤を使用することで、分子量を低下できる(ここで、分子量は重量平均分子量を意味する)。
重合温度は、ビニル単量体の種類及び量、重合開始剤の種類及び量等によって適宜決定される。
本発明の方法より得られるポリマー微粒子の平均粒子径は1〜10μmの範囲にある。更に、本発明の方法では、標準偏差を平均粒子径で除した値である変動係数(CV値)が10%以下と粒子径分布の狭いポリマー微粒子を得ることができる。
特に、平均粒子径が3〜10μmと比較的大きく、重量平均分子量が10000〜50000のポリマー微粒子を好適に得ることができる。
(平均粒子径及び変動係数(CV値))
得られた重合体微粒子を走査型電子顕微鏡により観察し、任意の50個について粒子径を計測し、計測結果から平均粒子径(X)及び粒子径の標準偏差(σ)を計算し、次式に代入することにより変動係数(CV値)を算出する。
CV値(%)=(σ/X)×100
反応混合液からサンプリングした試料の重量Aと、重合停止剤を含む有機溶媒溶液(t−ブチルカテコールを含むメタノール溶液)に前記試料を添加して重合反応を停止した後、100℃のオーブン中に2時間放置し、測定した不揮発分の重量Bとに基づいて以下の式により重合転化率を算出する。
重合添加率=A/(B×(反応器に仕込んだ原料中の単量体の重量比率))×100
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定する。その測定方法は次の通りである。なお、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を、数平均分子量(Mn)はポリスチレン(PS)換算数平均分子量を意味する。
試料50mgをテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットルに溶解させ、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上でクロマトグラフを用いて測定する。クロマトグラフの条件は下記の通りとする。
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel GMH−XL−L」φ7.8mm×30cm×2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:テトラヒドロフラン(THF)
キャリアーガス流量:1ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:35℃
検出:RI
注入量:100マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、870
50ml三角フラスコに試料(分散安定剤)0.2gを精秤し、20mlのメタノールを加えて溶解して試料溶液を得る。次いで、30±0.1℃の恒温水槽にて、オストワルド粘度計を用い試料溶液の落下秒数を測定する。同時にメタノールの落下秒数も測定する。得られた結果から、固有粘度を次式により算出する。
η=3{{t/to}1/3−1}/C
式中、ηは固有粘度、tは試料溶液の落下秒数、t0はメタノールの落下秒数、Cは試料溶液中の分散安定剤の濃度g/100mlを意味する。
2Lの反応器にメタノール635g、イオン交換水225g、分散剤としてメタクリル酸とメタクリル酸メチル組成比8/2の共重合体(固有粘度〔η〕=0.493)の20%メタノール溶液50g、メタクリル酸メチル(MMA)100gを加えて攪拌し、窒素置換した。次いで、60℃に昇温して2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を2g加えて反応を開始した。
n−ドデシルメルカプタンを1.0g使用すること以外は実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は3.46μm、CV値は5.6%であった。また重量平均分子量は32000、数平均分子量は12200、Mw/Mnは3.5であった。
n−ドデシルメルカプタン2gを反応開始後1時間目、すなわち重合転化率23%のときに加えること以外は実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は3.42μm、CV値は6.5%であった。また重量平均分子量は42350、数平均分子量は1050、Mw/Mnは4.0であった。
n−ドデシルメルカプタンを使用しないこと以外は実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は3.75μm、CV値は6.4%であった。また重量平均分子量は132000、数平均分子量は38000、Mw/Mnは3.5であった。
n−ドデシルメルカプタン0.5gを反応開始前のMMAに加えること以外は実施例1と同様に反応を開始した。反応開始後1時間目にサンプリングし、500倍拡大鏡で観察したところ粒子径1〜30μmの多分散粒子が生成していた。この結果、反応開始前からn−ドデシルメルカプタンが存在すると均一な粒子径の粒子の形成が妨げられことがわかった。
n−ドデシルメルカプタン3gを反応開始後3時間目、すなわち重合転化率60%のときに加えること以外は実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は3.72μm、CV値は5.9%であった。また重量平均分子量は113200、数平均分子量は13300、Mw/Mnは8.5であった。
n−ドデシルメルカプタン3gを反応開始後2時間目、すなわち重合転化率35%のときに加えること以外は実施例1と同様にしてポリマ微粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は3.72μm、CV値は7.1%であった。また重量平均分子量は65720、数平均分子量は9850、Mw/Mnは6.7であった。
実施例1で得られた粒子を以下のようにシード重合に付した。
2Lの反応器に鹸化度85%のポリビニルアルコール4%水溶液500g、実施例1で得られた分散液60g(ポリマー微粒子6g含有)、亜硝酸ナトリウム0.09gとを加え、120rpmで攪拌した。次いで、MMA270g、エチレングリコールジメタクリレート30g、AIBN1.5gの混合溶液にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8g、水400gを加えてホモジナイザーで乳化した溶液を、上記ポリマー微粒子を含む系に室温下10分かけて添加した。3.5時間後、加えたモノマーの液滴は全てシード粒子に吸収されたのを確認した。次いで、窒素置換した後、60℃に昇温して4時間反応して粒子を取り出し、粒子径を測定した。その結果、平均粒子径は11.8μm、CV値は7.9%であった。
Claims (3)
- ビニル単量体は溶解するが、前記ビニル単量体から生成するポリマーは実質的に溶解しない溶媒中で、前記ビニル単量体の重合転化率が10%以上、30%未満の段階で、前記溶媒中に連鎖移動剤を添加しつつ、前記ビニル単量体を重合させることにより、平均粒子径1〜10μmのポリマー微粒子を得ることからなり、
前記ビニル単量体が、(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記溶媒が、水とアルコールの混合溶媒であり、
前記連鎖移動剤が、メルカプタン類から選択されることを特徴とするポリマー微粒子の製造方法。 - 前記連鎖移動剤が、前記ビニル単量体に対して0.01〜15重量%添加される請求項1に記載のポリマー微粒子の製造方法。
- 前記ポリマー微粒子が、10%以下の変動係数(CV値)、10000〜50000の重量平均分子量を有する請求項1又は2に記載のポリマー微粒子の製造方法。
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