JP5184770B2 - 被服 - Google Patents

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Description

この発明は被服に関する。
尚、この明細書において、「前身頃」は、被服の着用時において着用者の前面に位置する生地片全てを意味し、「後身頃」は、同様に着用者の後面(背面)に位置する生地片全てを意味するものとして使用する。
被服は一般に複数枚の生地片、具体的には、前身頃となる生地片と後身頃となる生地片とを縫着して形成される。生地片を縫着した部位には縫い代などが形成され、その縫い代は被服の内側(裏側)に位置させられる。そのため、縫い代などは着用者の肌(皮膚)に直接接触し、着用感を低下させるという不具合があった。また、肌の弱い人(例えば、アトピー性皮膚炎などの症状を持つ人)においては、縫い代などが肌に接触して刺激を受けると、痒みを覚えたり、炎症が悪化するなどの不具合もあった。
そこで、近年、縫い代を肌に接触させないようにした技術が種々提案されている。例えば、下記の特許文献1記載の技術にあっては、2枚の生地片を縫着し、縫着線より端辺側の端地、即ち、縫い代を被服の外側に配置すると共に、外側に露出した縫い代をライン形成用テープ地で被覆するように構成している。
特開2001−316925号公報(段落0008,0009、図3など)
しかしながら、特許文献1記載の技術の如く、縫い代を被服の外側に配置し、それをライン形成用テープ地で覆うようにすると、被服の着用感は向上するものの、被服を構成する部材や製作工数が増加するという不都合が生じる。
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激を低減させると共に、着用感を向上させるようにした被服を提供することにある。
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、少なくとも前身頃と後身頃とを備えた被服において、衿部が前記前身頃から一体的に連続する前衿部と前記後身頃から一体的に連続する後衿部とを縫着してなる立ち衿からなると共に、前記前身頃と後身頃と衿部と別体前立て部分を有し、前記前身頃と後身頃から一体的に連続する衿部の外側前記前立て部分を重ねて縫合するように構成した。
請求項に係る被服にあっては、前記前身頃と後身頃は肌に対する刺激が比較的少ない素材のニットから製作されるように構成した。
請求項1に係る被服にあっては、衿部が前身頃から一体的に連続する前衿部と後身頃から一体的に連続する後衿部とを縫着してなる立ち衿からなると共に、前身頃と後身頃と衿部と別体前立て部分を有し、前身頃と後身頃から一体的に連続する衿部の外側前立て部分を重ねて縫合するように構成したので、簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
具体的には、特許文献1などの従来技術に係る被服にあっては、衿部が、前身頃と後身頃の上端(首グリ)に別体からなる衿生地片を縫着してなるように構成される。そのため、着用者の首つけ根廻りには、前後身頃と衿生地片とを縫着する際に形成される縫い代が位置させられることとなり、それが肌に接触して着用感を低下させていた。特に、肌の弱い人においては、縫い代が首つけ根廻りの肌に接触することによって刺激を受け、痒みを覚えたり、アトピー性皮膚炎などの症状が悪化することもあった。
しかしながら、請求項1に係る被服にあっては、衿部が前身頃から一体的に連続する前衿部と後身頃から一体的に連続する後衿部とを縫着してなる立ち衿からなると共に、前身頃と後身頃と衿部と別体前立て部分を有し、前身頃と後身頃から一体的に連続する衿部の外側前立て部分を重ねて縫合するように構成、即ち、従来技術において着用者の首つけ根廻りに位置させられていた縫い代を除去するように構成したので、縫い代を被服の外側に配置し、それをライン形成用テープ地で覆う従来技術に比して簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激、より具体的には、着用者の首つけ根廻りの肌に生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
た、請求項に係る被服にあっては、前身頃と後身頃は肌に対する刺激が比較的少ない素材のニットから製作されるように構成したので、上記と同様の効果を得ることができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る被服の最良の実施の形態について説明する。
図1はこの発明の実施例に係る被服のうちの上着の正面図と上着を着用したときの左側面図であり、図2は図1に示す上着の背面図と上着を着用したときの右側面図である。また、図3はこの発明の実施例に係る被服のうちのズボンの正面図とズボンを着用したときの左側面図であり、図4は図3に示すズボンの背面図とズボンを着用したときの右側面図である。尚、この明細書において、左右あるいは前後などの記載は、着用者にとっての左右方向あるいは前後方向を意味する。
図1から4において、符号Tは被服、具体的には、上着(上衣。トップス)からなる被服を示す。また、符号Pは被服、具体的には、ズボン(下衣。ボトムス。パンツ)からなる被服を示す。
先ず、上着(被服)Tから説明すると、上着Tは、図1,2に示す如く、上着前身頃(前身頃)TFと、上着後身頃(後身頃)TBと、左右の袖部SL,SRと、上乗せ前立てMの各生地片からなる。
図5は、上記した生地片のうち、縫着(縫合)する前の上着前身頃TFを示す平面図である。
図5に示す如く、上着前身頃TFは、前中心線(1点鎖線で示すが、実際に線があるわけではない)1−8を軸として左右対称な右上着前身頃TFRと左上着前身頃TFLとからなる。
右上着前身頃TFRは、前記した前中心線1−8と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たる8−7Rと、後に脇線となる曲線辺たる7R−6Rと、後に袖グリとなる曲線辺たる6R−5Rと、後に肩部となる直線辺たる5R−4Rと、後に衿部C、より詳しくは、前衿部CFとなる、直線辺と曲線辺たる4R−3R−2R(後述)と、後に前立てとなる曲線辺たる2R−1とによって画成される領域である。
また、左上着前身頃TFLは、同様に前記した前中心線1−8と、それに連続する直線辺たる8−7、曲線辺たる7−6、曲線辺たる6−5と、直線辺たる5−4と、直線辺と曲線辺たる4−3−2と、曲線辺たる2−1によって画成される領域である。尚、図5などに示す破線FNLは、上着前身頃TFにおいて着用者の首Nの廻り、即ち、首つけ根廻りに該当する部位を表す。
この上着前身頃TFにおいて特徴的なことは、上着Tの衿部Cの一部である前衿部CFが、上着前身頃TFと同一の生地片から製作される、換言すれば、上着前身頃TFから一体的に連続して形成されることにある。尚、図5において、理解の便宜のため、前衿部CFを斜線で示す。
図6は、上着Tを構成する生地片のうち、縫着(縫合)する前の上着後身頃TBを示す平面図である。
上着後身頃TBは、図6に示す如く、後中心線(1点鎖線で示すが、実際に線があるわけではない)10−17を軸として左右対称な右上着後身頃TBRと左上着後身頃TBLとからなる。
右上着後身頃TBRは、前記した後中心線10−17と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たる17−16Rと、後に脇線となる曲線辺たる16R−15Rと、後に袖グリとなる曲線辺たる15R−14Rと、後に肩部となる直線辺たる14R−13Rと、後に衿部C、より詳しくは、後衿部CBとなる、2つの直線辺たる13R−12R−10(後述)とによって画成される領域である。
左上着後身頃TBLは、同様に前記した前中心線10−17と、それに連続する直線辺たる17−16と、曲線辺たる16−15と、曲線辺たる15−14と、直線辺たる14−13と、2つの直線辺たる13−12−10とによって画成される領域である。尚、図6などに示す破線BNLは、上着後身頃TBにおいて着用者の首つけ根廻りに該当する部位を表す。
この上着後身頃TBにおいて特徴的なことは、上着Tの衿部Cの一部である後衿部CBが、上着後身頃TBと同一の生地片から製作される、換言すれば、上着後身頃TBから一体的に連続して形成されることにある。尚、図6において、後衿部CBを斜線で示す。
図7は、上着Tを構成する生地片のうち、縫着する前の上乗せ前立てMを示す平面図(図7(a))と背面図(図7(b))である。
図7に示すように、上乗せ前立てMは平面視略V字状を呈し、より正確には、前述した上着前身頃TFの曲線辺2R−1−2と、前衿部CFの曲線辺2R−3R,2−3と、上着後身頃TBの後衿部CBの直線辺12R−10,12−10に即した形状となるように裁断されてなる。図7(b)に示す上乗せ前立てMの符号は、理解の便宜のため、それぞれ上着前身頃TFと上着後身頃TBの部位に対応した番号となるようにして付した。また、図7(a)に示す上乗せ前立てMの符号は、図7(b)で付した符号に20を加算した番号とした。具体的には、図7(b)で符号「1」あるいは「11」と付した部位は、図7(a)で対応する部位に符号「21」あるいは「31」と付した。
尚、上記した上着前身頃TF、上着後身頃TB、上乗せ前立てMおよび左右の袖部SL,SRなどの生地片は、肌に対する刺激が比較的少ない素材(例えば、特許第2987605号公報に記載されるセラミックス微粒子を含有する繊維(綿)、あるいは特開2004−131453号公報に記載されるマイナスイオン発生素材と遠赤外線素材を含有する繊維、若しくはこれらの繊維からなる混紡糸など)のニットから製作される。
次いで、図1および図2を参照して上着前身頃TF、上着後身頃TB、上乗せ前立てMおよび左右の袖部SL,SRの縫着(縫合)について説明する。尚、図において、括弧で表す符号は図示上見えない箇所を示す。
先ず、上着前身頃TFと上着後身頃TBは、上着前身頃TFの上端縁5R−4R−3Rおよび5−4−3と上着後身頃TBの上端縁14R−13R−12Rおよび14−13−12をそれぞれ縫合すると共に、上着前身頃TFの脇線たる7R−6Rおよび7−6と上着後身頃TBの脇線たる16R−15Rおよび16−15をそれぞれ縫合して接続される。
接続された上着前身頃TFと上着後身頃TBに、上乗せ前立てMが縫合される。具体的には、上乗せ前立てMの曲線辺22R(2R)−21(1)−22(2)を上着前身頃TFの曲線辺2R−1−2に縫合すると共に、上乗せ前立てMの曲線辺25R−26−25を、図1によく示す如く、上着前身頃TFの適宜位置に縫合する。
また、上乗せ前立てMの曲線辺22R(2R)−23R(3R)(12R)−30(10)と22(2)−23(3)(12)−30(10)を上着前後身頃TF,TBの曲線辺2R−3R(12R)−10と2−3(12)−10に縫合すると共に、残余の上乗せ前立てMの曲線辺30(10)−31(11)−24R(4R)(13R)−25Rと30(10)−31(11)−24(4)(13)−25を、図1および2に示すように、上着前後身頃TF,TBの適宜位置に縫合する。上記のようして構成された衿部Cは、図1(b)、図2(b)によく示すように、立ち衿(スタンドカラー)からなる。
以上の如く、上着Tにおける衿部Cおよび前立ては、上着前後身頃TF,TBの外側に上乗せ前立てMを乗せて縫合することで形成され、よって上着前後身頃TF,TBの内側において、従来技術に係る上着の衿部や前立て付近に存在していた縫い代などを除去することができる。尚、この明細書で「外(表)側」とは、着用された被服において露出される部分、即ち、着用者の身体に接触しない部分を意味し、「内(裏)側」とは、被覆される部分、即ち、着用者の身体に接触する部分を意味する。
図1および図2の説明を続けると、接続された上着前身頃TFと上着後身頃TBの袖グリ15R(6R)−14R(5R)および15(6)−14(5)に、左右の袖部SL,SRを縫合することにより、上着Tが完成する。
このように、この実施例に係る被服(上着T)にあっては、衿部Cが、上着前身頃TFから一体的に連続する前衿部CFと、上着後身頃TBから一体的に連続する後衿部CBとを縫着してなるように構成したので、簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
具体的には、前記した特許文献1などの従来技術に係る被服にあっては、衿部が、前身頃と後身頃の上端に別体からなる衿生地片を縫着してなるように構成される。そのため、着用者の首つけ根廻りには縫い代が位置させられることとなり、それが肌に接触して着用感を低下させていた。特に、肌の弱い人においては、縫い代が首つけ根廻りの肌に接触することによって刺激を受け、痒みを覚えたり、アトピー性皮膚炎などの症状が悪化することもあった。
しかしながら、この実施例に係る被服にあっては、衿部(立ち衿)Cが、上着前身頃TFから一体的に連続する前衿部CFと、上着後身頃TBから一体的に連続する後衿部CBとを縫着してなるように構成、即ち、従来技術において着用者の首つけ根廻りに位置させられていた縫い代を除去するように構成したので、縫い代を被服の外側に配置し、それをライン形成用テープ地で覆う従来技術に比して簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激、より具体的には、着用者の首つけ根廻りの肌に生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
次いで、ズボン(被服)Pについて説明する。ズボンPは、図3,4に示す如く、ズボン右身頃PRと、ズボン左身頃PLの各生地片からなる。尚、この明細書において、「右身頃」は、被服の着用時において着用者の右側に位置する生地片全てを意味し、「左身頃」は、同様に着用者の左側に位置する生地片全てを意味するものとして使用する。
図8は、上記した生地片のうち、縫着(縫合)する前のズボン右身頃PRを示す平面図である。
図8に示す如く、ズボン右身頃PRは、内股線(1点鎖線で示すが、実際に線があるわけではない)R51−R62を境界として前ズボン右身頃(前身頃)PRFと後ズボン右身頃(後身頃)PRBとからなる。
前ズボン右身頃PRFは、上記した内股線R51−R62と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たるR62−R63と、後に脇線となる曲線辺たるR63−R64−R65−R66と、後にウエストラインWLとなる、3つの直線辺たるR66−R67−R68−R69−R70−R71と、後にクロッチ部(股グリ)CLとなる曲線辺たるR71−R72−R51とによって画成される領域である。
後ズボン右身頃PRBは、内股線R51−R62と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たるR62−R61と、後に脇線となる曲線辺たるR61−R60−R59−R58と、後にウエストラインWLとなる、3つの直線辺たるR58−R57−R56−R55−R54−R53と、後にクロッチ部CLとなる曲線辺たるR53−R52−R51とによって画成される領域である。尚、図8などに示す破線RMLは、ズボン右身頃PRにおいて着用者のもも廻りに該当する部位を表すと共に、破線RFHLは右前ヒップラインに、破線RBHLは右後ヒップラインに該当する部位を表す。また、破線RFWLは右前ウエストライン(腰部廻り)に、破線RBWLは右後ウエストラインに該当する部位を表す。
このズボン右身頃PRにおいて特徴的なことのひとつは、ズボン右身頃PRが1枚の生地片から製作されることである。換言すれば、ズボン右身頃PRは、前ズボン右身頃PRF(前身頃)と後ズボン右身頃PRB(後身頃)が内股側(内股線)において一体的に連続する1枚の生地片からなることである。
図9は、ズボンPを構成する生地片のうち、縫着(縫合)する前のズボン左身頃PLを示す平面図である。
図9に示すように、ズボン左身頃PLは、内股線(1点鎖線で示すが、実際に線があるわけではない)51−62を境界として前ズボン左身頃(前身頃)PLFと後ズボン左身頃(後身頃)PLBとからなる。
前ズボン左身頃PLFは、前記した内股線51−62と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たる62−63と、後に脇線となる曲線辺たる63−64−65−66と、後にウエストラインWLとなる、3つの直線辺たる66−67−68−69−70−71と、後にクロッチ部CLとなる曲線辺たる71−72−51とによって画成される領域である。
また、後ズボン左身頃PLBは、内股線51−62と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たる62−61と、後に脇線となる曲線辺たる61−60−59−58と、後にウエストラインWLとなる、3つの直線辺たる58−57−56−55−54−53と、後にクロッチ部CLとなる曲線辺たる53−52−51とによって画成される領域である。尚、図9などに示す破線LMLは、ズボン左身頃PLにおいて着用者のもも廻りに該当する部位を表すと共に、破線LFHLは左前ヒップラインに、破線LBHLは左後ヒップラインに該当する部位を示す。また、破線LFWLは左前ウエストラインに、破線LBWLは左後ウエストラインに該当する部位を示す。
このズボン左身頃PLにおいて特徴的なことのひとつは、ズボン左身頃PLが1枚の生地片から製作されることである。換言すれば、ズボン左身頃PLは、前ズボン左身頃PLF(前身頃)と後ズボン左身頃PLB(後身頃)が内股側(内股線)において一体的に連続する1枚の生地片からなることである。
尚、上記したズボン右身頃PR、ズボン左身頃PLなどの生地片は、前述した上着Tと同様に、肌に対する刺激が比較的少ない素材のニットから製作される。
ここで、従来技術に係る一般的なズボンの右身頃と上記したズボン右身頃PRとを、図10を参照して比較する。尚、以下において、ズボン右身頃PRを例にとって説明するが、ズボン左身頃PLも略左右対称であるため、以下の説明はズボン左身頃PLにも妥当する。
図10は、図8に示すズボン右身頃PRを従来技術に係るズボンの右身頃と比較して示す説明図である。尚、図10において、理解の便宜のため、ズボン右身頃PRを内股線R51−R62で切り離して示すが、この実施例に係るズボン右身頃PRは、前述した通り、内股線R51−R62において一体的に連続している。
図10に示す如く、従来のズボンの右身頃(1点鎖線で示す。以下「ズボン右身頃PPR」という)は、前ズボン右身頃PPRFと後ズボン右身頃PPRBの2枚の生地片からなる。前ズボン右身頃PPRFは、後に内股線となる直線辺たるR51−aと、後に裾となる直線辺たるa−bと、後に脇線となる曲線辺たるb−c−R65−dと、後にウエストラインとなる直線辺たるd−eと、後にクロッチ部となる曲線辺たるe−R72−R51とによって画成される領域である。
また、後ズボン右身頃PPRBは、後に内股線となる直線辺たるR51−fと、後に裾となる直線辺たるf−gと、後に脇線となる曲線辺たるg−h−R59−iと、後にウエストラインとなる直線辺たるi−jと、後にクロッチ部となる曲線辺たるj−R52−R51とによって画成される領域である。
図10から分かるように、この実施例に係る前ズボン右身頃PRFは、脇線側においてその分量が従来の前ズボン右身頃PPRFに比して減少させられる一方、その減少した分量だけ内股線(内股側)において増加させられる。尚、図10において、従来のズボンに比して減少した部分を斜線で表すと共に、増加した部分を網掛け線で表す。
また、後ズボン右身頃PRBも同様に、脇線側においてその分量が従来の後ズボン右身頃PPRBに比して減少させられる一方、その減少した分量だけ内股線において増加させられる。このように裁断することで、ズボン右身頃PRは、前記した如く、前ズボン右身頃PRFと後ズボン右身頃PRBが内股側(内股線)において一体的に連続して形成されてなるように構成することが可能となる。
さらに、ウエストライン部分について説明すると、従来技術に係る前ズボン右身頃PPRFにあっては、ウエストラインとなる直線辺d−eの長さが、右前ヒップラインRFHLの長さと略同一となるように裁断される。また、後ズボン右身頃PPRBにあっても同様に、直線辺i−jの長さが右後ヒップラインRBHLの長さと略同一となるように裁断される。
これに対して、この実施例に係る前ズボン右身頃PRFにあっては、脇側とクロッチ部におけるウエストライン付近の生地片の分量をそれぞれ減少させる、別言すれば、右前ウエストラインRFWLたる直線辺R67(R66)(R68)−R70(R71)(R69)の長さが右前ヒップラインRFHLのそれよりも短く裁断されてなる。尚、図10において、従来のズボンに比して減少した部分を斜線で表す。
また、後ズボン右身頃PRBにあっても同様に、右後ウエストラインRBWLたる直線辺R57(R58)(R56)−R54(R53)(R55)の長さが右後ヒップラインRBHLのそれよりも短く裁断されてなる。このように、ズボン右身頃PRの生地片は、ウエストラインRFWL,RBWLの長さがヒップラインRFHL,RBHLのそれよりも短く裁断されてなる。
次いで、図3および図4を参照してズボン右身頃PRとズボン左身頃PLの縫着(縫合)について説明する。先ず、ズボン右身頃PRとズボン左身頃PLは、ズボン右身頃PRのウエストラインとなる直線辺の一部であるR69−R70−R71,R55−R54−R53およびクロッチ部たるR71−R72−R51−R52−R53と、ズボン左身頃PLのウエストラインとなる直線辺の一部である69−70−71,55−54−53およびクロッチ部たる71−72−51−52−53を縫合して接続される。
そして、ズボン右身頃PRとズボン左身頃PLをそれぞれ、内股線R51−R62,51−62で折り合わせて対向配置させつつ、ズボン右身頃PRにあっては、脇線であるR63−R64−R65−R66、ウエストラインとなる直線辺の一部であるR66−R67−R68と、脇線であるR61−R60−R59−R58、ウエストラインとなる直線辺の一部であるR58−R57−R56とを縫合する。一方、ズボン左身頃PLにあっては、脇線である63−64−65−66、ウエストラインとなる直線辺の一部である66−67−68と、脇線である61−60−59−58、ウエストラインとなる直線辺の一部である58−57−56とを縫合する。
このように接続されたズボン右身頃PRとズボン左身頃PLにおいて、次にウエストラインが形成される。具体的には、ズボン右身頃PRとズボン左身頃PLの上端R68−R69,R56−R55,68−69,56−55を、図11に示すように(図11ではR68部分を示す)、外側に折り返した後、それぞれR66−R71,R58−R53,66−71,58−53に縫着する。これにより、ズボンP完成時において、R67−R70,R57−R54,67−70,57−54がウエストラインの上端縁となると共に、ウエストラインの縫い代が外側に位置させられる。
また、ズボン右身頃PRとズボン左身頃PLの上端を折り返すことによって、図11に示す如く、ウエストラインには腰部廻りを周回する空間Aが形成され、その空間Aには弾性部材(例えば、平ゴムなど)Gが配置される。これにより、ウエストラインは伸縮自在とされると共に、図3などに示すギャザー(ひだ。しわ)gが形成され、ズボンPが完成する。
このように、この実施例に係る被服(ズボンP)にあっては、ズボンの前身頃(前ズボン右身頃PRF、前ズボン左身頃PLF)と後身頃(後ズボン右身頃PRB、後ズボン左身頃PLB)が、内股側において一体的に連続する左右の生地片、即ち、ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PLからなり、左右の生地片をそれぞれ折り合わせて対向配置させつつ、脇側を縫着してなるように構成したので、簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
具体的には、従来技術に係る被服(ズボン)は、左右の前身頃と左右の後身頃の4枚の生地片からなり、右の前身頃と右の後身頃、左の前身頃と左の後身頃をそれぞれ内股側と脇側で縫着して左右身頃を形成し、その左右身頃を縫着させてなるように構成されるため、ズボンの内股側と脇側の両方に縫い代が形成される。ところで、着用者が歩行や運動などするとき、着用者の肌にはズボンの内股側が脇側に比して多く接触する。従って、着用者が歩行や運動などする際、内股側の縫い代が着用者の肌に接触し、着用感を低下させていた。特に、肌の弱い人においては、内股側の縫い代が肌に接触することによって刺激を受け、痒みを覚えたり、アトピー性皮膚炎などの症状が悪化することもあった。
しかしながら、この実施例に係る被服にあっては、ズボンPの前身頃PRF,PLFと後身頃PRB,PLBが、内股側において一体的に連続する左右の生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)からなり、左右の生地片をそれぞれ折り合わせて対向配置させつつ、脇側を縫着してなるように構成、即ち、従来技術において着用者の内股側に位置させられていた縫い代を除去するように構成したので、4枚の生地片を縫着する従来技術に比して簡易な構成でありながら、縫い代などが肌に接触することで生じる刺激、より具体的には、着用者の内股側の肌に生じる刺激を低減できると共に、着用感を向上させることができる。
また、生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)は、ウエストラインの長さがヒップラインのそれよりも短く裁断されてなるように構成したので、被服が肌に接触することで生じる刺激を効果的に低減できると共に、着用感をより一層向上させることができる。
具体的には、従来技術に係る被服(ズボン)は、生地片が、ウエストラインの長さとヒップラインの長さが略同一となるように裁断されてなると共に、ウエストライン、換言すれば、着用者の腰部廻りにおいてギャザーが形成される。そのため、腰部廻りに位置させられたギャザーが着用者の肌に接触し、着用感を低下させていた。特に、肌の弱い人においては、ギャザーが肌に接触することによって刺激を受け、痒みを覚えたり、アトピー性皮膚炎などの症状が悪化することもあった。
しかしながら、この実施例に係る被服にあっては、ズボンPの生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)は、ウエストラインの長さがヒップラインのそれよりも短く裁断されてなるように構成したので、ウエストラインに形成されるギャザーgの量を従来のものに比して減少させることができ、よって被服が肌に接触することで生じる刺激、より具体的には、着用者の腰部廻りの肌に生じる刺激を効果的に低減できると共に、着用感をより一層向上させることができる。より具体的には、ズボンPの生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)は、ズボンP完成時において、ヒップラインが約103[cm]であるのに対し、ウエストラインが約78[cm]となる、換言すれば、約24[%]減少するように裁断されてなるため、その分だけギャザーgの量を減少、より詳しくは、約20[%]程度減少させることができる。
以上の如く、この発明の実施例にあっては、少なくとも前身頃(上着前身頃TF)と後身頃(上着後身頃TB)とを備えた被服(上着T)において、衿部Cが前記前身頃から一体的に連続する前衿部CFと前記後身頃から一体的に連続する後衿部CBとを縫着してなる立ち衿からなると共に、前記前身頃と後身頃と衿部と別体前立て部分(上乗せ前立てM)を有し、前記前身頃TFと後身頃TBから一体的に連続する衿部Cの外側前記前立て部分(上乗せ前立てM)を重ねて(乗せて)縫合するように構成した。
また、さらに、少なくとも前身頃(前ズボン右身頃PRF、前ズボン左身頃PLF)と後身頃(後ズボン右身頃PRB、後ズボン左身頃PLB)が内股側(内股線R51(51)−R62(62))で一体的に連続させられる左右の生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)からなると共に、前記左右の生地片がそれぞれクロッチ部CL(RCL,LCL)からもも廻り部RML,LMLを経て裾(R61(61)−R62(62)−R63(63))に至る形状からなるズボンPを備え、前記左右の生地片PR,PLがそれぞれ、前記内股側において前記もも廻り部から前記裾に向けて徐々に増加された増加部位(具体的には、図10で網掛け線で表す部位)を備える一方、脇側(脇線R63(63)−R64(64)、R61(61)−R60(60))において前記増加部位に対応する部位(具体的には、図10で斜線で表す部位)を減少されてなると共に、前記左右の生地片を前記クロッチ部で縫着した後、それぞれ前記内股側で折り返して前記脇側縫着してなるように構成した。
また、前記生地片(ズボン右身頃PR、ズボン左身頃PL)は、ウエストラインWLの長さがヒップラインHLのそれよりも短く裁断されてなるように構成した。また、前記左右の生地片PR,PLのウエストラインにおいて端部(上端R68−R69,R56−R55,68−69,56−55)を外側に折り返して縫着して形成された空間Aに弾性部材Gが配置されるように構成した。また、前記前身頃TF,PRF,PLFと後身頃TB,PRB,PLBは肌に対する刺激が比較的少ない素材のニットから製作されるように構成した。
尚、上記において、上着前身頃TF、上着後身頃TB、ズボン右身頃PRおよびズボン左身頃PLなどの生地片の素材を具体的に示したが、それらは例示であって限定されるものではなく、要は肌に与える刺激が比較的少ない素材であればよい。
また、ウエストラインWLやヒップラインHLの長さを具体的に示したが、それらは例示であって限定されるものではない。
また、上着Tの前立て部分が開くように構成したが、上乗せ前立てM付近にボタンとボタンホール、あるいはマジック・テープ(登録商標)などを配置させ、前立てを開閉自在となるように構成してもよく、さらにはリボンやレースなどで装飾するようにしてもよい。
また、上着Tを半袖としたが、それに限られれるものではなく、例えば7分袖や長袖などであってもよい。また、ズボンPも長ズボンとしたが、半ズボン、ショートパンツなどであってもよい。即ち、この発明は、様々な形状からなる被服に適用が可能である。
この発明の実施例に係る被服のうちの上着の正面図と上着を着用したときの左側面図である。 図1に示す上着の背面図と上着を着用したときの右側面図である。 この発明の実施例に係る被服のうちのズボンの正面図とズボンを着用したときの左側面図である。 図3に示すズボンの背面図とズボンを着用したときの右側面図である。 図1などに示す上着前身頃を表す平面図である。 図2などに示す上着後身頃を表す平面図である。 図1などに示す上乗せ前立てを表す平面図と背面図である。 図1などに示すズボン右身頃を表す平面図である。 図1などに示すズボン左身頃を表す平面図である。 図8に示すズボン右身頃を従来技術に係るズボンの右身頃と比較して示す説明図である。 図1に示すウエストラインの断面図である。
符号の説明
C 衿部、CB 後衿部、CF 前衿部、HL ヒップライン、P ズボン(被服)、PL ズボン左身頃(生地片)、PLB 後ズボン左身頃(後身頃)、PLF 前ズボン左身頃(前身頃)、PR ズボン右身頃(生地片)、PRB 後ズボン右身頃(後身頃)、PRF 前ズボン右身頃(前身頃)、R51(51)−R62(62) 内股線、R61(61)−R60(60)−R59(59)−R58(58) 脇線、R63(63)−R64(64)−R65(65)−R66(66) 脇線、T 上着(被服)、TB 上着後身頃(後身頃)、TF 上着前身頃(前身頃)、WL ウエストライン

Claims (2)

  1. 少なくとも前身頃と後身頃とを備えた被服において、衿部が前記前身頃から一体的に連続する前衿部と前記後身頃から一体的に連続する後衿部とを縫着してなる立ち衿からなると共に、前記前身頃と後身頃と衿部と別体前立て部分を有し、前記前身頃と後身頃から一体的に連続する衿部の外側前記前立て部分を重ねて縫合したことを特徴とする被服。
  2. 前記前身頃と後身頃は肌に対する刺激が比較的少ない素材のニットから製作されることを特徴とする請求項1記載の被服。
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