しかしながら、スタンパーに透明薄膜を形成して光ディスクの偏心量を測定する場合と同じ方法で偏心量を測定しても、次のような理由により正確な偏心量を測定することができないという問題がある。すなわち、スタンパーは薄いため、光ディスクのように直接スピンドルモータなどの回転手段の回転軸に連結したクランプにスタンパーをセットすることはできず、図22に示すように、ホルダーにスタンパーをセットし、このホルダーをクランプにセットしている。スタンパーをホルダーにセットするには、スタンパーの穴をホルダーの円筒状凸部に嵌め込めばよいが、嵌め込むためにスタンパーの穴の径は、ホルダーの円筒状凸部の外径よりやや大きく作成されており、図23(A)(B)に示すように、ホルダーの中心からのスタンパーの中心位置がランダムにずれてしまい、測定した偏心量は、このずれ分を加えたものになる。そして、このずれはランダムに変化するため、測定した偏心量から除去することができない。
本発明は、この問題を解消するためになされたもので、押し当て具を用いてホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面をホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てた状態で、ホルダーをクランプにセットしてモータによりスタンパーを回転させて取得したスタンパーの所定の径方向におけるずれ量を用いてスタンパーの偏心量を測定することにより、スタンパーの偏心量を正確に測定することができるスタンパー偏心量測定方法を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前記目的を達成するために、本発明の特徴は、スタンパー(ST)を回転させるためのモータ(11)と、スタンパーの中央の穴を、中央部に設けた円筒状凸部に嵌め込ませてスタンパーを保持するホルダー(13)と、前記モータの回転軸に固定されて前記ホルダーをセットするクランプ(12)と、前記ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てるための押し当て具(15)と、レーザ光源(21)からのレーザ光を対物レンズ(25)で集光して、前記クランプにセットされた前記ホルダーに保持されているスタンパー上に光スポットを形成し、前記光スポットによるスタンパーからの反射光をフォトディテクタ(28)で受光して受光信号を出力する光ピックアップ装置(20)と、前記モータの回転角度を検出する回転角度検出手段(32)と、スタンパーの回転時における回転中心に対するスタンパーの中心の所定の径方向における径方向ずれ量を前記光ピックアップ装置との協働により検出するずれ量検出手段(37〜42,61〜63)とを備えたスタンパー偏心量測定装置を用いて、スタンパーの偏心量を測定するスタンパー偏心量測定方法であって、スタンパーの穴の内周面を一方向から前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に押し当てた際の前記ホルダーの中心とスタンパーの中心とのずれ量を測定して押し当て偏心量として記憶しておく押し当て偏心量測定工程(S11〜S13)と、スタンパーの穴を前記ホルダーの円筒状凸部に嵌め込ませるとともに、前記押し当て具を用いて、前記ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てた状態で、前記ホルダーを前記クランプにセットして、前記モータを駆動することによりスタンパーを少なくとも1回転させるスタンパー回転工程(S72,S81,S87)と、前記スタンパー回転工程時に、前記回転角度検出手段によって検出されたモータの回転角度を、前記ホルダーを前記クランプにセットした状態から変化するスタンパーの回転角度として取得するとともに、前記ずれ量検出手段によって検出されたスタンパーの径方向ずれ量を取得して、前記スタンパーの回転角度に対応させて前記スタンパーの径方向ずれ量を記憶する径方向ずれ量取得工程(S71,S73〜S80,S82〜S86)と、前記径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量を用いて、スタンパーの偏心量及び偏心方向を計算する測定偏心計算工程(S88,S89)と、前記測定偏心計算工程で計算したスタンパーの偏心量及び偏心方向から定まる測定偏心ベクトルから、前記押し当て偏心量測定工程で記憶した押し当て偏心量及び前記スタンパー回転工程でスタンパーをホルダーに押し当てた方向から定まる押し当て偏心ベクトルを減算する減算処理の手法により、スタンパー自身の偏心量を計算するスタンパー偏心量計算工程(S90)とを含むようにしたことにある。
この場合、前記押し当て偏心量測定工程は、例えば、スタンパーの穴の径を測定するとともに、前記ホルダーの円筒状凸部の外径を測定し、前記測定したスタンパーの穴の径から前記測定したホルダーの円筒状凸部の外径を減算して「2」で除することにより、スタンパーの穴の内周面を一方向から前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に押し当てた際の前記ホルダーの中心とスタンパーの中心とのずれ量を押し当て偏心量として計算する(S11〜S13)。また、前記ずれ量検出手段は、例えば、トラッキングサーボ制御をかけない状態で、前記フォトディテクタによる受光信号を用いて前記光スポットに対する前記スタンパーの径方向移動量を測定することにより、前記スタンパーの径方向ずれ量を検出するとよい(37〜42)。また、前記ずれ量検出手段は、トラッキングサーボ制御をかけた状態で前記対物レンズの径方向移動量を測定することにより、前記スタンパーの径方向ずれ量を検出してもよい(61〜63)。
前記本発明の特徴においては、スタンパー回転工程において、ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面がホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てられた状態で、スタンパーが回転される。径方向ずれ量取得工程及び測定偏心計算工程において、ホルダーの中心からのスタンパーの中心のずれが一定とされた状態で、スタンパーの偏心量及び偏心方向が計算される。そして、スタンパー偏心量計算工程において、前記のようにホルダーの中心からのスタンパーの中心のずれを一定にしたスタンパーの偏心量及び偏心方向と、前記スタンパーの穴をホルダーの円筒状凸部に押し当てた際のホルダーの中心とスタンパーの中心とのずれ量である押し当て偏心量及び押し当て方向とを用いて、ベクトルの減算処理の手法により、スタンパー自身の偏心量が計算される。その結果、ホルダーの中心からのスタンパーの中心のずれは一定となるため測定した偏心量から除去することができ、スタンパー自身の偏心量を正確に求めることができる。
また、本発明の他の特徴は、前述したスタンパー偏心量測定装置を用いて、スタンパーの偏心量を測定するスタンパー偏心量測定方法であって、スタンパーの穴を前記ホルダーの円筒状凸部に嵌め込ませるとともに、前記押し当て具を用いて、前記ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てた状態で、前記ホルダーを前記クランプにセットして、前記モータを駆動することにより前記スタンパーを少なくとも1回転させる第1スタンパー回転工程(S32,S41,S47,S202,S211,S217)と、前記第1スタンパー回転工程時に、前記回転角度検出手段によって検出されたモータの回転角度を、前記ホルダーを前記クランプにセットした状態から変化するスタンパーの回転角度として取得するとともに、前記ずれ量検出手段によって検出されたスタンパーの径方向ずれ量を取得して、前記スタンパーの回転角度に対応させて前記スタンパーの径方向ずれ量を記憶する第1径方向ずれ量取得工程(S31,S33〜S40,S42〜S46,S201,S203〜S210,S212〜S216)と、前記スタンパーの穴を前記ホルダーの円筒状凸部に嵌め込ませるとともに、前記押し当て具を用いて、前記ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に前記第1スタンパー回転工程とは反対方向から押し当てた状態で、前記ホルダーを前記クランプの前記第1スタンパー回転工程と同一回転位置にセットして、前記モータを駆動することにより前記スタンパーを少なくとも1回転させる第2スタンパー回転工程(S32,S41,S47,S202,S211,S217)と、前記第2スタンパー回転工程時に、前記回転角度検出手段によって検出されたモータの回転角度を、前記ホルダーを前記クランプにセットした状態から変化するスタンパーの回転角度として取得するとともに、前記ずれ量検出手段によって検出されたスタンパーの径方向ずれ量を取得して、前記スタンパーの回転角度に対応させて前記スタンパーの径方向ずれ量を記憶する第2径方向ずれ量取得工程(S31,S33〜S40,S42〜S46,S201,S203〜S210,S212〜S216)と、前記第1径方向ずれ量取得工程で前記スタンパーの回転角度に対応させて記憶した前記スタンパーの径方向ずれ量と、前記第2径方向ずれ量取得工程で前記スタンパーの回転角度に対応させて記憶した前記スタンパーの径方向ずれ量とを用いて、前記スタンパーの穴の内周面の前記ホルダーの円筒状凸部への押し当てによる影響を除去することにより、スタンパー自身の偏心量を計算するスタンパー偏心量計算工程(S48,S49,S101,S102,S218,S221,S222)とを含むようにしたことにある。
この場合、前記スタンパー偏心量計算工程を、前記第1径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量を用いて、スタンパーの第1偏心量及び第1偏心方向を計算する第1測定偏心計算工程(S48,S49)と、前記第2径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量を用いて、スタンパーの第2偏心量及び第2偏心方向を計算する第2測定偏心計算工程(S48,S49)と、前記第1測定偏心計算工程で計算したスタンパーの第1偏心量及び第1偏心方向から定まる第1測定偏心ベクトルと、前記第2測定偏心計算工程で計算したスタンパーの第2偏心量及び第2偏心方向から定まる第2測定偏心ベクトルとの加算処理の手法により、スタンパー自身の偏心量を計算する加算工程(S101,S102)とで構成するとよい。
また、前記スタンパー偏心量計算工程を、前記第1径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量と、前記第2径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量とをスタンパーの回転角度ごとに平均化することにより、スタンパーの回転角度に応じて変化する合成径方向ずれ量を計算する合成工程(S218,S221)と、前記合成工程により合成されたスタンパーの回転角度に応じて変化する合成径方向ずれ量を用いてスタンパーの偏心量を計算する偏心量計算工程(S222)とで構成してもよい。
この本発明の他の特徴においては、第1スタンパー回転工程と第2スタンパー回転工程とでは、スタンパーがホルダーに押し付けられる方向が互いに反対方向になるとともに、ホルダーがクランプの同一回転位置にセットされて、ホルダー及びスタンパーが回転される。そして、第1及び第2径方向ずれ量取得工程においてスタンパーの回転角度に対応させてスタンパーの径方向ずれ量がそれぞれ記憶され、スタンパー偏心量計算工程において、前記スタンパーの回転角度に対応させてそれぞれ記憶されたスタンパーの径方向ずれ量を用いて、スタンパーの穴の内周面のホルダーの円筒状凸部への押し当てによる影響を除去することにより、スタンパー自身の偏心量が計算される。この場合、第1測定偏心計算工程、第2測定偏心計算工程及び加算工程を利用する場合には、第1偏心量及び第1偏心方向と、第2偏心量及び第2偏心方向とを用いて、ベクトルの加算処理の手法により他の成分が打ち消され、スタンパー自身の偏心量が計算される。また、合成工程及び偏心量計算工程を利用する場合には、第1及び第2径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量の合成により他の成分が打ち消され、スタンパー自身の回転角度に応じて変化する合成径方向ずれ量が計算されて、スタンパー自身の偏心量が計算される。その結果、測定した偏心量からホルダーの中心からのスタンパーの中心のずれの影響を除外することができ、スタンパー自身の偏心量が正確に計算される。また、第1スタンパー回転工程と第2スタンパー回転工程とで、スタンパーがホルダーに押し付けられる方向が互いに反対方向になるようにしたので、スタンパーをホルダーに押し当てたことで発生する偏心量が自動的に除去されて、スタンパーをホルダーに押し当てたことで発生する偏心量を測定しなくても、スタンパー自身の偏心量を正確に求めることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記のようにスタンパー偏心量測定方法において、さらに、前記モータによる前記ホルダーの回転時における回転中心に対する前記ホルダーの中心のずれである偏心量及び偏心方向を取得するモータ回転偏心取得工程(S31〜S49,S61,S62,S201〜S218,S221,S222)を含み、前記スタンパー偏心量計算工程は、さらに前記モータ回転偏心取得工程で取得した偏心量及び偏心方向から定まるモータ回転偏心ベクトルの減算処理の手法を加えたうえで、スタンパー自身の偏心量を計算する(S90,S103)ことにある。
この場合、前記モータ回転偏心取得工程を、例えば、前記スタンパーの穴を前記ホルダーの円筒状凸部に嵌め込ませるとともに、前記押し当て具を用いて、前記ホルダーに保持されたスタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に一方向から押し当てた状態で、前記ホルダーを前記クランプにセットして、前記モータを駆動することにより前記スタンパーを少なくとも1回転させる第3スタンパー回転工程(S32,S41,S47)と、前記第3スタンパー回転工程時に、前記回転角度検出手段によって検出されたモータの回転角度を、前記ホルダーを前記クランプにセットした状態から変化するスタンパーの回転角度として取得するとともに、前記ずれ量検出手段によって検出されたスタンパーの径方向ずれ量を取得して、前記スタンパーの回転角度に対応させて前記スタンパーの径方向ずれ量を記憶する第3径方向ずれ量取得工程(S31,S33〜S40,S42〜S46)と、前記第3径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量を用いて、スタンパーの第3偏心量及び第3偏心方向を計算する第3測定偏心計算工程(S48,S49)と、前記スタンパーの穴の内周面を前記ホルダーの円筒状凸部の外周面に前記第3スタンパー回転工程と同一方向から押し当てた状態で、前記ホルダーを前記第3スタンパー回転工程とは180度回転させて前記クランプにセットして、前記モータを駆動することにより前記スタンパーを少なくとも1回転させる第4スタンパー回転工程(S32,S41,S47)と、前記第4スタンパー回転工程時に、前記回転角度検出手段によって検出されたモータの回転角度を、前記ホルダーを前記クランプにセットした状態から変化するスタンパーの回転角度として取得するとともに、前記ずれ量検出手段によって検出されたスタンパーの径方向ずれ量を取得して、前記スタンパーの回転角度に対応させて前記スタンパーの径方向ずれ量を記憶する第4径方向ずれ量取得工程(S31,S33〜S40,S42〜S46)と、前記第4径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量を用いて、スタンパーの第4偏心量及び第4偏心方向を計算する第4測定偏心計算工程(S48,S49)と、前記第3測定偏心計算工程で計算したスタンパーの第3偏心量及び第3偏心方向から定まる第3測定偏心ベクトルと、前記第4測定偏心計算工程で計算したスタンパーの第4偏心量及び第4偏心方向から定まる第4測定偏心ベクトルとの加算処理の手法により、前記ホルダーの回転時における回転中心に対する前記ホルダーの中心のずれである偏心量及び偏心方向を計算する加算工程(S61、S62)とで構成するとよい。
また、前記前記モータ回転偏心取得工程を、前記第3及び第4スタンパー回転工程と、前記第3及び第4径方向ずれ量取得工程と、前記第3径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量と、前記第4径方向ずれ量取得工程で記憶したスタンパーの回転角度に応じて変化する径方向ずれ量とをスタンパーの回転角度ごとに平均化することにより、スタンパーの回転角度に応じて変化する合成径方向ずれ量を計算する合成工程(S218,S221)と、前記合成工程により合成されたスタンパーの回転角度に応じて変化する合成径方向ずれ量を用いて、前記ホルダーの回転時における回転中心に対する前記ホルダーの中心のずれである偏心量及び偏心方向を計算する偏心計算工程(S222)とで構成してもよい。
これによれば、前記スタンパーの偏心量に、モータによるホルダーの回転時における回転中心に対するホルダーの中心のずれの影響を除外することができ、スタンパーの偏心量をより正確に求めることができる。また、第3及び第4スタンパー回転工程、第3及び第4径方向ずれ量取得工程、第3及び第4測定偏心計算工程、並びに加算工程によれば、ベクトル加算の手法による他の成分の打消しにより、モータによるホルダーの回転時における回転中心に対するホルダーの中心のずれが正確に計算される。また、第3及び第4スタンパー回転工程、第3及び第4径方向ずれ量取得工程、合成工程、並びに偏心計算工程によっても、径方向ずれ量の合成による他の成分の消し合いにより、モータによるホルダーの回転時における回転中心に対するホルダーの中心のずれが正確に計算される。
a.実施形態の構成
本発明の一実施形態に係るスタンパー偏心量測定装置について図面を用いて説明する。図1は、スタンパー偏心量測定装置の全体構成図である。この場合、スタンパーSTはROM型の光ディスクを作製するもの、すなわちピット列が形成されたものであるとする。スタンパー偏心量測定装置は、スタンパーSTを回転駆動する回転駆動装置10と、スタンパーSTにレーザ光を照射するとともにレーザ光の照射によるスタンパーSTからの反射光を受光する光ピックアップ装置20を備えている。
回転駆動装置10は、スタンパーSTを回転駆動するためのスピンドルモータ11を備えている。スピンドルモータ11の回転軸11aの上端にはクランプ12が固定されている。クランプ12は、円盤状のプレート12aと、プレート12a上に一体的に形成された円錐台部分12bとからなる。このクランプ12には、中央部分に円形の穴を有する円盤状のスタンパーSTを保持したホルダー13がセットされるようになっている。ホルダー13は、図2A及び図2Bに示されるように、中央部分に円形の穴を有する円盤状に形成されていて、穴の周囲は円筒状に盤面に対して垂直方向に突出した円筒状凸部13aを有する。スタンパーSTをホルダー13に組み付ける際には、スタンパーSTの中央部分の穴内にホルダー13の円筒状凸部13aを侵入させる。そして、ホルダー13をクランプ12にセットするには、クランプ12の円錐台部分12bをホルダー13の円筒状凸部13aに貫通させる。その後、クランプ12の円錐台部分12bに対応した凹部を有するキャップ14を、前記円錐台部分12bに被せることにより、ホルダー13をクランプ12に固定する。
また、ホルダー13には、スタンパーSTの中央部の穴の内周面をホルダー13の円筒状凸部13aの外周面に押し当てるための押し当て具15が組み付けられるようになっている。押し当て具15は、長尺状に形成された枠材本体15a1と、枠材本体15a1の両端から下方に突出させた一対の突出部15a2,15a2とを有するように、断面コ字状に一体形成した枠材15aを備えている。突出部15a2,15a2の内周面間の距離は、ホルダー13の直径よりも僅かに大きく設定されている。枠材15aの一方の突出部15a2には、スタンパーSTの外周面を押圧する押圧機構が設けられている。この押圧機構は、前記一方の突出部15a2に設けた貫通孔を進退可能に貫通する連結軸15bを備え、連結軸15bの外側端にはノブ15cが固定されるとともに、連結軸15bの内側端には押し当て部材15dが固定されている。前記一方の突出部15a2に設けた貫通孔は外側にて細径に形成されるとともに、段差をもって内側にて大径に形成されており、押し当て部材15dは前記大径に形成された貫通孔内を進退するが、前記細径に形成された貫通穴内には侵入し得ない。また、ノブ15cは、前記一方の突出部15a2の外側に位置し、同突出部15a2に設けた貫通穴内には侵入し得ない。前記大径に形成した貫通孔内には、連結軸15bを貫通させたコイルスプリング15eが組み込まれており、コイルスプリング15eは押し当て部材15dを内側に付勢している。
これにより、スタンパーSTをホルダー13に組み付け、ホルダー13をクランプ12にセットし、かつキャップ14をクランプ12に組み付けた後、押し当て具15のノブ15cを外側に引っ張った状態で押し当て具15をホルダー13及びキャップ14上に押し当てて、押し当て部材15dの先端をスタンパーSTの外周上に接触させる位置にてノブ15cを離せば、スタンパーSTはホルダー13の円筒状凸部13aに押し付けられて固定される。この状態では、図3に示すように、スタンパーSTの中央部の穴の内周面の一部は、ホルダー13の円筒状凸部13aの外周面に押し当てられている。
スピンドルモータ11内には、スピンドルモータ11の回転すなわち回転軸11a及びクランプ12の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ11bが組み込まれている。この回転検出信号は、回転軸11a及びクランプ12の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号Idexと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すパルス列信号とからなるとともに互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φAおよびB相信号φBとからなる。
光ピックアップ装置20は、レーザ光源21、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24、対物レンズ25、凸レンズ26、シリンドリカルレンズ27、フォトディテクタ28及びフォーカスアクチュエータ29を備えている。この光ピックアップ装置20においては、レーザ光源21からのレーザ光を、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24及び対物レンズ25を介して、スタンパーSTに集光させ、スタンパーST上に光スポットを形成する。また、このスタンパーSTに形成された光スポットからの反射光は、対物レンズ25、1/4波長板24、偏光ビームスプリッタ23、凸レンズ26及びシリンドリカルレンズ27を介して、フォトディテクタ28に導かれて受光される。フォトディテクタ28は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、各受光素子は受光量に比例した検出信号A,B,C,Dをそれぞれ受光信号として出力する。なお、検出信号A,B,C,Dは、左上から時計回りに配置された各受光素子の受光量を表している。フォーカスアクチュエータ29は、対物レンズ25をレーザ光の光軸方向(スタンパーSTの盤面の垂直方向)に駆動して光スポットを光軸方向に微動させる。
スタンパー偏心量測定装置は、スピンドルモータ制御回路31、回転角度検出回路32、レーザ駆動回路33、増幅回路34、フォーカスエラー信号生成回路35、フォーカスサーボ制御回路36、トラッキングエラー信号生成回路37、微分回路38、進行方向変化検出回路39、2値化回路41、カウント回路42、コントローラ100、入力装置101及び表示装置102も備えている。
スピンドルモータ制御回路31は、エンコーダ11bから出力されるA相信号φA及びB相信号φBを入力して、スピンドルモータ11の回転速度を計算し、コントローラ100に指示される回転速度でスピンドルモータ11が回転するように、スピンドルモータ11の回転をサーボ制御する。回転角度検出回路32は、インデックス信号Idex、A相信号φA及びB相信号φBを入力して、回転軸11a及びクランプ12の回転角度を検出して、コントローラ100の指示に応じて検出回転角度をコントローラ100に出力する。なお、この場合の検出回転角度は、インデックス信号Idexが入力する位置を基準位置とした、基準位置に対する絶対回転角度である。レーザ駆動回路33は、コントローラ100の指示に応じて、レーザ光源21の作動を制御する。
増幅回路34は、フォトディテクタ28による検出信号A,B,C,Dをそれぞれ増幅して、フォーカスエラー信号生成回路35及びトラッキングエラー信号生成回路37に出力する。フォーカスエラー信号生成回路35は、増幅回路34を介したフォトディテクタ28からの検出信号A〜Dを用いた演算(具体的には、非点収差法による(A+C)−(B+D)の演算)により、フォーカスエラー信号を生成して、フォーカスサーボ制御回路36に出力する。フォーカスサーボ制御回路36は、コントローラ100からの指示に応じて作動を開始し、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成してフォーカスアクチュエータ29を駆動制御して、対物レンズ25をレーザ光の焦点がスタンパーSTの表面に合うように光軸方向に変位させる制御を行う。
トラッキングエラー信号生成回路37は、増幅回路34を介したフォトディテクタ28からの検出信号A〜Dを用いた演算により、トラッキングエラー信号を生成して出力する。この場合の演算は、差動位相差法(Differential Phase Detection法(以下、単にDPD法という))に従った演算である。そして、レーザスポットがピット列を横切るように移動すると、トラッキングエラー信号生成回路37によるトラッキングエラー信号は、図9(A)に示すように、鋸歯状波形となり、レーザスポットがビット列を横切る向きが変わると鋸歯状波形の向きが変わる。本実施形態においては、レーザスポットがビット列を横切る方向がスタンパーSTの外側方向である場合を正方向とし、この正方向は図9(A)の左側部分に対応する。
微分回路38は、トラッキングエラー信号生成回路37から出力されるトラッキングエラー信号を微分し、この微分した信号を進行方向変化検出回路39に出力する。この微分した信号は、図9(B)のようになる。進行方向変化検出回路39は、前記微分した信号を2値化し、正側のパルス幅を検出して、正側のパルス幅が所定値以上になるとカウント回路に正方向信号を出力し、その後、負側のパルス幅を検出して負側のパルス幅が所定値以上になるとカウント回路42への正方向信号の出力を停止し、その後、正側のパルス幅を検出して、正側のパルス幅が所定値以上になるとカウント回路42に正方向信号を再び出力する。これを連続して繰り返す。これにより、レーザスポットがピット列を横切る方向の情報をカウント回路42に与える。この場合、レーザスポットがビット列を横切る方向がスタンパーSTの外側方向(又は内側方向)である場合に、進行方向変化検出回路39は正方向信号(又は負方向信号)を出力する。
2値化回路41は、トラッキングエラー信号生成回路37からのトラッキングエラー信号を2値化して、この2値化信号を出力する。この2値化信号は、図9(C)のようになる。カウント回路42は、コントローラ100からの指示に応じて、2値化回路41から出力されるパルス信号のパルス数をカウントし、カウント値を所定の時間間隔でコントローラに出力する。そして、進行方向変化検出回路39からの正方向信号の有無によりカウントアップとカウントダウンを切り換える。これにより、スタンパーSTが1回転したときのカウント値は「0」に戻る。なお、この場合、レーザスポットがビット列を横切る方向がスタンパーSTの外側方向(正方向)である場合に、カウント値はカウントアップする。
コントローラ100は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置101からの指示に従って図4〜8のプログラムを実行する。そして、コントローラ100は、前記プログラムの実行により、スピンドルモータ制御回路31、回転角度検出回路32、レーザ駆動回路33、フォーカスサーボ制御回路36、カウント回路42及び表示装置102を制御するとともに、エンコーダ11bからのインデックス信号Idex、回転角度検出回路32による検出回転角度及びカウント回路42によるカウント値を入力して、スタンパー偏心量を計算して表示装置102に表示する。
b.実施形態の動作原理
上記のように構成した実施形態の作動について説明する前に、スタンパー偏心量の検出動作原理について簡単に説明しておく。スタンパーSTをホルダー13に保持させてクランプ12にセットし、さらに押し当て具15によりスタンパーSTをホルダー13に押し当てた後、スピンドルモータ11を回転させるとともに、フォーカスサーボ制御を行いながらレーザ光をスタンパーSTに照射する。この場合、トラッキングサーボ制御は行われていないので、スタンパーST上のレーザスポットは、スタンパーST上のビット列を径方向に横切り、スタンパーSTが1回転する間に1往復する。なお、実際には、スタンパーSTが径方向に移動することでピット列が径方向に移動する。一方、カウント回路42は、このレーザスポットのビット列に対する径方向への横切りをカウントするとともに、横切る方向に応じてカウントダウン又はカウントアップする。本実施形態においては、レーザスポットがビット列を横切る方向がスタンパーSTの外側方向(正方向)である場合に、カウント値はカウントアップする。
そして、スタンパーSTが1回転する間すなわちレーザスポットが1往復する間のカウント値を検出するとともに、カウント開始時のカウント値を「0」とすれば、このレーザスポットの1往復の間には、カウント回路42によるカウント値は、「0」から減少(又は増加)して最小値(又は最大値)を通過した後、増加(又は減少)して最大値(又は最小値)を通過した後、「0」に戻る。すなわち、スタンパーSTの回転角度に対するカウント値は、図10に示すように正弦波状に変化する。この場合、最大値と最小値のカウント値の差にピット列間距離(ピッチ)を乗算し、1/2にしたものが偏心量である。なお、ピット列間距離(ピッチ)はCDは1.6μm、DVDは0.74μm、Blu−rayディスクは0.32μmと規格で決まっている値である。そして、偏心方向は、最大値の回転角度である。なお、カウント値は、単に定数を乗算するだけで偏心量に一致するので、最大値と最小値の差はスタンパーSTの偏心量に相当すると同時に、特に、本願発明における、スタンパーの回転の際の回転中心に対するスタンパーの中心の所定の径方向における径方向ずれ量に対応する。
この偏心量及び偏心方向を表すベクトルは、図11に測定された偏心として示されている。しかし、この測定された偏心には、(a)スタンパーSTの偏心、(b)スタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心、(c)スピンドルモータ11による回転中心に対するホルダー13の中心のずれによる偏心(以後、モータ回転の偏心という)からなる3つ偏心が含まれている。したがって、図11に示すように、測定された偏心量と偏心方向(偏心ベクトル)から(b)スタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心ベクトルと、(c)モータ回転の偏心ベクトルを減算することにより、(a)スタンパー偏心ベクトル(必要とするのは偏心量)を求めることができる。
この場合、(b)スタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心量及び偏心方向(偏心ベクトル)と、(c)モータ回転の偏心量及び偏心方向(偏心ベクトル)とを予め次のようにして求めておく。(b)スタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心ベクトルに関しては、スタンパーSTの穴の直径とホルダー13の円筒状凸部13aの外径を精密な測定器で測定し、{(スタンパーSTの穴の直径)−(ホルダー13の円筒状凸部13aの外径)}・1/2を偏心量とし、スタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向を偏心方向とする。このスタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心ベクトルは、図11に押し当てによる偏心として示されている。
また、(c)モータ回転の偏心ベクトルに関しては、スタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向はホルダー13に対して一定方向とし、図12のようにクランプ12に対しては正反対を含む4つの異なる方向にして、それぞれにおいて偏心量と偏心方向(偏心ベクトル)を測定する。図12では偏心ベクトルの加減算を分かり易くするために、0度、90度、180度、270度としているが、正反対の方向を含む4つの異なる方向であればどのような方向であってもよい。このとき4つの偏心量と偏心方向(偏心ベクトル)が測定されるが、この4つの偏心ベクトルは、図13に示すように、モータ回転の偏心ベクトル、スタンパーSTの偏心ベクトル及びスタンパーSTの押し当てによる偏心ベクトルの3つの偏心ベクトルをそれぞれ含んでいる。ここでモータ回転の偏心ベクトルは一定の方向であるが、スタンパーSTの偏心ベクトル及びスタンパーSTの押し当てによる偏心ベクトルは、方向が90度ずつずれた同じ大きさの偏心ベクトルである。よって、測定された4つの偏心ベクトルを加算すると、モータ回転の偏心ベクトルを4倍したベクトルとなり、測定された4つの偏心ベクトルを平均すればモータ回転の偏心ベクトルとなる。このモータ回転の偏心ベクトルは、図11にモータ回転の偏心として示されている。
c.実施形態の具体的な作動
(押し当て偏心量の取得工程)
上記のように構成した実施形態の具体的な作動について説明する。まず、作業者は、(b)スタンパーSTをホルダー13に押し当てることによる偏心量を求めておく。この場合、作業者は、スタンパーSTの穴の直径とホルダー13の円筒状凸部13aの外径を精密な測定器で測定して、入力装置101を操作して、コントローラ100に押し当て偏心量取得プログラムを実行させる。コントローラ100は、図4のステップS10にて押し当て偏心量取得プログラムの実行を開始し、ステップS11,S12にて、表示装置102を用いて、スタンパーSTの穴の直径及びホルダー13の円筒状凸部13aの外径の入力を促す。作業者が、入力装置101を用いてスタンパーSTの穴の直径及びホルダー13の円筒状凸部13aの外径を入力すると、コントローラ100は、ステップS11,S12にて前記入力されたスタンパーSTの穴の直径及びホルダー13の円筒状凸部13aの外径を取り込む。
そして、コントローラ100は、ステップS13にて、スタンパーSTの穴の直径からホルダー13の円筒状凸部13aの外径を減算し、減算結果を「2」で除算することにより、スタンパーSTをホルダー13に押し当てた際の偏心量すなわち押し当て偏心量を計算して記憶し、ステップS14にてこの押し当て偏心量取得プログラムの実行を終了する。なお、後述するように、スタンパーSTをホルダー13に押し当てたことによる偏心量を求めることは、スタンパーST自身の偏心量を求める際にスタンパーSTをホルダー13に押し当てた方向をベクトル方向とするので、実質的には、スタンパーSTをホルダー13に押し当てたことによる偏心ベクトルを求めたことと同じである。
(モータ回転偏心ベクトルの取得工程)
次に、作業者は、スピンドルモータ11の回転を開始させる際にスピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転位置が常に一定となるようにするために、入力装置101を操作してコントローラ100に位置決めプログラムを実行させる。この位置決めプログラムの実行はステップS20にて開始され、コントローラ100は、ステップS21にて、スピンドルモータ制御回路31を制御して、スピンドルモータ11を低速で回転させる。そして、ステップS22にて、スピンドルモータ11のエンコーダ11bからインデックス信号Idexの入力を待つ。スピンドルモータ11の回転により、エンコーダ11bからインデックス信号Idexが出力されると、コントローラ100は、ステップS22にて「Yes」と判定して、ステップS23にてスピンドルモータ制御回路31を制御してスピンドルモータ11の回転を停止させて、ステップS24にてこの位置決めプログラムの実行を終了する。この場合、スピンドルモータ11の回転速度を遅くしているために、エンコーダ11bからインデックス信号Idexが出力された直後の回転位置にてスピンドルモータ11は回転を停止する。このスピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の停止位置を基準位置とし、次にスピンドルモータ11の回転を開始させるときには、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12はこの基準位置から回転し始める。
次に、作業者は、モータ回転の偏心ベクトルを取得する作業に入る。このモータ回転の偏心ベクトルは、前述のように、スピンドルモータ11による回転中心に対するホルダー13の中心のずれによる偏心を表すものである。そして、ホルダー13の円筒状凸部13a及びクランプ12の円錐台部分12bは精度よく製作されていると同時に、ホルダー13をクランプ12に組み付けた際には円筒状凸部13aが円錐台部分12bに密着するので、ホルダー13を如何なる回転位置でクランプ12に組み付けても、ホルダー13の中心は常に固定される。また、このモータ回転の偏心量はそれほど大きくはない。
モータ回転の偏心ベクトルの取得作業においては、作業者は、まず、図2A及び図2Bに示すように、スタンパーSTをホルダー13に保持させ、ホルダー13をクランプ12にセットし、かつキャップ14をクランプ12に組み付ける。その後、枠材本体15a1を予め決めた方向(図2Bの横方向)に延設させるとともに、ノブ15cを外側に引っ張った状態で押し当て具15をホルダー13及びキャップ14上に押し当てて、押し当て部材15dの先端をスタンパーSTの外周上に接触させる位置にてノブ15cを離す。これにより、スタンパーSTは、図2B及び図3にて示されているように、右方向にホルダー13の円筒状凸部13aに押し付けられて固定される。このスタンパーSTのクランプ12に対する組み付け位置を基準位置とし、図3の右方向を0度、下方向を90度、左方向を180度、かつ上方向を270度として定める。
なお、本実施形態では、レーザスポットは、前記0度と180度を結ぶライン上であって、中心から180度方向に向かうライン上を移動するものとする。これにより、後述する測定偏心ベクトルの方向を決定する際には、カウント値が最大となる回転角度をベクトルの方向としてそのまま採用すればよく、測定偏心ベクトルの導出が簡単になる。なお、レーザスポットは必ずしも前記ライン上になくてもよく、レーザスポットが形成される回転角度を検出しておけば、カウント値が最大となる回転角度をレーザスポットが形成される回転角度で補正してやればよい。
この状態で、作業者は、入力装置101を操作することにより、コントローラ100に測定偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。この測定偏心ベクトル取得プログラムの実行は図6のステップS30にて開始され、コントローラ100は、ステップS31にて変数nを初期値「0」に設定する。この変数nは、所定時間ごとに後述するカウント値及び回転角度の取り込みを行わせるための変数である。前記ステップS31の処理後、コントローラ100は、ステップS32にてスピンドルモータ制御回路31にスピンドルモータ11の回転開始を指示する。スピンドルモータ制御回路31は、スピンドルモータ11を所定の方向に所定の速度で回転させ始め、ホルダー13にセットされたスタンパーSTも所定の速度で回転し始める。
次に、コントローラ100は、ステップS33にてレーザ駆動回路33にレーザ光の照射開始を指示し、ステップS34にてフォーカスサーボ制御回路36にフォーカスサーボ制御の開始を指示する。レーザ駆動回路33はレーザ光源21の駆動を開始し、レーザ光源21はレーザ光を出射し始める。レーザ光源21からのレーザ光は、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24及び対物レンズ25を介して、スタンパーSTに集光されて、スタンパーST上に光スポットが形成される。そして、スタンパーSTに形成された光スポットからの反射光が、対物レンズ25、1/4波長板24、偏光ビームスプリッタ23、凸レンズ26及びシリンドリカルレンズ27を介して、フォトディテクタ28に導かれて受光される。フォトディテクタ28による検出信号A,B,C,Dは、増幅回路34によって増幅されて、フォーカスエラー信号生成回路35に導かれる。フォーカスエラー信号生成回路35は、フォーカスエラー信号を生成して、フォーカスエラー信号をフォーカスサーボ制御回路36に供給する。フォーカスサーボ制御回路36は前記ステップS34の処理により作動開始しているので、フォーカスサーボ制御回路36によるフォーカスアクチュエータ29の制御により、スタンパーST上に照射されるレーザ光はフォーカスサーボ制御されて、スタンパーST上に常にレーザ光の焦点が合うように光スポットが形成される。
一方、トラッキングエラー信号生成回路37は、トラッキングエラー信号(図9(A)参照)を生成して、生成したトラッキングエラー信号を2値化回路41及び微分回路38に供給する。2値化回路41は、供給されたトラッキングエラー信号を2値化した2値化信号(図9(C)参照)をカウント回路42に出力する。一方、微分回路38は、前記供給されたトラッキングエラー信号を微分した微分信号(図9(B)参照)を進行方向変化検出回路39に出力する。進行方向変化検出回路39は、前記微分信号に基いて、レーザスポットがビット列を横切る方向がスタンパーSTの外側方向(又は内側方向)である場合に正方向信号(又は負方向信号)をカウント回路42に出力する。
ふたたび、図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの説明に戻ると、コントローラ100は、前記ステップS34の処理後、ステップS35にてスピンドルモータ11のエンコーダ11bからのインデックス信号Idexの到来を待つ。そして、インデックス信号Idexが到来すると、コントローラ100は、ステップS35にて「Yes」と判定し、ステップS36にてカウント回路42にカウント開始を指示する。このカウント開始の指示に応答して、カウント回路42は、カウント値「0」からカウント動作を開始して、レーザスポットがビット列をスタンパーSTの外側方向に向けて横切るたびに「1」ずつカウントアップし、レーザスポットがビット列をスタンパーSTの内側方向に向けて横切るたびに「1」ずつカウントダウンするカウント値を出力する。前記ステップS36の処理後、コントローラ100は、ステップS37にて時間計測を開始する。そして、ステップS38において、計測時間が変数nに予め決めた周期Tを乗算した時間値n・T以上であるか否かを判定する。計測時間が時間値n・T以上になるまで、コントローラ100はステップS38にて「No」と判定し続ける。
計測時間が時間値n・T以上になると、コントローラ100はステップS38にて「Yes」と判定し、ステップS39にてカウント回路42からカウント値を取り込み、ステップS40にて回転角度検出回路32から回転角度を取り込む。なお、初期の状態では、カウント値及び回転角度として「0」が取り込まれている。前記ステップS40の処理後、ステップS41にてスピンドルモータ11のエンコーダ11bからインデックス信号Idexを入力したか否かを判定する。エンコーダ11bからインデックス信号Idexがコントローラ100に入力されるまで、コントローラ100は、ステップS41にて「No」と判定して、ステップS42にて変数nに「1」を加算して、ステップS38の判定処理に戻る。そして、計測時間が時間値n・T以上になるごとに、ステップS39,40の処理により、カウント値及び回転角度を取り込み、回転角度に対応させてカウント値を記憶する。これらのステップS38〜S42からなる循環処理中、エンコーダ11bからインデックス信号Idexが入力されると、コントローラ100は、ステップS41にて「Yes」と判定して、ステップS43以降の処理を実行する。したがって、この時点では、スタンパーSTの1回転分のカウント値及び回転角度がコントローラ100に取り込まれている。
ステップS43においては、コントローラ100は、カウント回路42のカウント動作を停止させる。その後、コントローラ100は、ステップS44にて時間計測を停止し、ステップS45にてフォーカスサーボ制御回路36にフォーカスサーボ制御を停止させ、ステップS46にてレーザ駆動回路33を制御してレーザ光源21によるレーザ光の照射を停止させ、ステップS47にてスピンドルモータ制御回路31を制御してスピンドルモータ11の回転を停止させる。
次に、コントローラ100は、ステップS48にて、前記ステップS39,S40の処理によって取り込んだカウント値及び回転角度を用いて、回転角度に対するカウント値の関係曲線を作成して記憶する。この場合、回転角度は0度から360度に亘って周期Tに対応した角度ずつ変化する角度を表している。一方、カウント値は、スタンパーSTが1回転する間に、レーザスポットがビット列をスタンパーSTの外側方向に向けて横切るたびに「1」ずつカウントアップし、レーザスポットがビット列をスタンパーSTの内側方向に向けて横切るたびに「1」ずつカウントダウンするカウント値を表している。したがって、前記関係曲線は、正弦波状に変化する曲線となる。より具体的には、カウント値の初期値は「0」であり、初期の回転角度はインデックス信号Idexの発生に合わせた0度であるので、前記関係曲線は、例えば図10に示すように、「0」から減少して最小値に達し、その後に上昇して最大値に達して、その後に減少して「0」に戻る曲線となる。
前記ステップS48の処理後、コントローラ100は、ステップS49にて測定偏心ベクトルを計算し、ステップS50にてこの測定偏心ベクトル取得プログラムの実行を終了する。この測定偏心ベクトルの取得においては、前記作成した回転角度に対するカウント値の関係曲線における最大値から最小値を減算する。そして、減算結果にスタンパーSTのピット列間距離(ピッチ)を乗算し、乗算結果を「2」で除算することにより、偏心量を計算する。そして、カウント値が最大となる回転角度を偏心方向として決定して、この偏心方向と前記計算した偏心量を測定偏心ベクトルとする。この測定偏心ベクトルは、例えば図13に測定された偏心(0度方向)として示されている。
次に、作業者は、押し当て具15によりスタンパーSTの中央部の穴の内周面をホルダー13の円筒状凸部13aに押し当てた状態のまま、スタンパーSTを、ホルダー13、キャップ14及び押し当て具15と共に一体的にクランプ12から取り外し、90度回転させて、ふたたびクランプ12にセットする。すなわち、ホルダー13に対するスタンパーSTの組み付け位置を変更することなく、スタンパーST及びホルダー13がクランプ12に対して図12(A)の方向から図12(B)の方向に変更されてクランプ12にセットされることになる。
次に、作業者は、入力装置101を操作することにより、コントローラ100に測定偏心ベクトル取得プログラムを再度実行させる。この測定偏心ベクトル取得プログラムの実行開始は、前回の図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行により、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の停止位置が前回の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行開始時と同じであること、すなわちスピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始位置が基準位置にあることを条件とする。もし、前回の図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行によって、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の停止位置が正確に基準位置になかったり、その後に基準位置から動かされている場合には、スタンパーST、ホルダー13等をクランプ12にセットする前に、作業者は入力装置101を操作して前述したコントローラ100に位置決めプログラムを実行させて、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始位置を基準位置に再度設定する。
この測定偏心ベクトル取得プログラムの実行により、スタンパーST及びホルダー13が図12(A)の状態から90度回転された図12(B)の状態に設定された状態における測定偏心ベクトルが計算される。この測定偏心ベクトルは、例えば図13の測定された偏心(90度方向)として示されている。
次に、作業者は、図12(B)の状態にあるスタンパーST及びホルダー13を、前述した場合と同様にして、さらに90度回転させてクランプ12にセットする。すなわち、ホルダー13に対するスタンパーSTの組み付け位置を変更することなく、スタンパーST及びホルダー13が図12(B)の方向から図12(C)の方向に変更されてクランプ12にセットされることになる。そして、作業者は、入力装置101を操作することにより、コントローラ100に測定偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。この場合も、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始位置が基準位置にあることを条件とする。もし、基準位置になければ、前述のように、コントローラ100に位置決めプログラムを実行させて、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始位置を基準位置に再度設定する。そして、この測定偏心ベクトル取得プログラムの実行により、スタンパーST及びホルダー13が図12(C)の状態に設定された場合の測定偏心ベクトルが計算される。この測定偏心ベクトルは、例えば図13の測定された偏心(180度方向)として示されている。
次に、作業者は、図12(C)の状態にあるスタンパーST及びホルダー13を、前述した場合と同様にして、さらに90度回転させてクランプ12にセットする。すなわち、ホルダー13に対してスタンパーSTの組み付け位置を変更することなく、スタンパーST及びホルダー13が図12(C)の方向から図12(D)の方向に変更されてクランプ12にセットされることになる。そして、作業者は、入力装置101を操作することにより、コントローラ100に測定偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。この場合も、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始位置が基準位置にあることを条件とする。もし、基準位置になければ、前述のように、コントローラ100に位置決めプログラムを実行させて、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12の回転開始止位置を基準位置に再度設定する。そして、この測定偏心ベクトル取得プログラムの実行により、スタンパーST及びホルダー13が図12(C)の状態に設定された場合の測定偏心ベクトルが計算される。この測定偏心ベクトルは、例えば図13の測定された偏心(270度方向)として示されている。
このようにして、0度、90度、180度及び270度の4つの測定偏心ベクトルの導出後、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100にモータ偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。コントローラ100は、図7のステップS60にてモータ偏心ベクトル取得プログラムの実行を開始し、ステップS61に前記4つの測定偏心ベクトルを加算する。次に、コントローラ100は、ステップS62にて、前記加算したベクトルの大きさを「4」で除算して、この除算したベクトルをモータ偏心ベクトルとして記憶し、ステップS63にてこのモータ偏心ベクトル取得プログラムの実行を終了する。
この場合、前述したように、4つの測定偏心ベクトルは、図13に示すように、モータ回転の偏心ベクトル、スタンパーSTの偏心ベクトル及びスタンパーSTの押し当てによる偏心ベクトルの3つの偏心ベクトルを含んでいる。ここでモータ回転の偏心ベクトルは一定の方向であるが、スタンパーSTの偏心ベクトル及びスタンパーSTの押し当てによる偏心ベクトルは、方向がそれぞれ90度ずつずれた同じ大きさの偏心ベクトルである。よって、4つの測定偏心ベクトルを加算すると、モータ回転の偏心ベクトルを4倍したベクトルとなり、測定された4つの偏心ベクトルを平均すればモータ回転の偏心ベクトルとなる。
なお、このモータ回転の偏心ベクトルは、スタンパーST及びホルダー13とは無関係に、スピンドルモータ11及びクランプ12によって決まる偏心であるので、一度測定して記憶しておけば、新たなスタンパーSTの偏心ベクトルを測定する際に新たに測定する必要はない。また、このモータ回転の偏心ベクトルは小さいので、無視できる場合もある。
(スタンパー偏心ベクトルの取得工程)
次に、スピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12が基準位置にある状態で、偏心ベクトルを測定しようとするスタンパーSTをクランプ12に対して基準位置にセットする(前述した図3の状態)。そして、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100にスタンパー偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。コントローラ100は、図8のステップS70にてスタンパー偏心ベクトル取得プログラムの実行を開始する。このスタンパー偏心ベクトル取得プログラムのステップS71〜S89の処理は、前述した図6の測定偏心ベクトル取得プログラムのステップS31〜S49の処理と同じである。このステップS71〜S89の処理により、測定しようとするスタンパーSTの偏心ベクトルが導出される。なお、この測定しようとするスタンパーSTが、前述したモータ回転の偏心ベクトルを導出するために用いたスタンパーSTと同じであれば、図12(A)に示すようにスタンパーST及びホルダー13をクランプ12にセットして導出した偏心ベクトルを記憶しておけば、前記図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行によって取得された測定偏心ベクトルを利用できる。
いずれの場合も、コントローラ100は、ステップS90にて、前記導出された測定偏心ベクトルから押し当て偏心ベクトル及びモータ回転の偏心ベクトルを減算して、スタンパーST自身の偏心ベクトルを計算する。なお、この場合、押し当て偏心ベクトルに関しては実際には取得されておらず、前記図4の押し当て偏心プログラムによって押し当て偏心量だけが取得されている。しかし、クランプ12を基準位置にした状態で、スタンパーSTのホルダー13に対する押し当て方向を基準角度である0度方向にしているので、押し当て偏心量に等しい大きさを有する0度方向のベクトルが押し当て偏心ベクトルとなる。前述のように、測定偏心ベクトルには、図11に示すように、スタンパーSTの偏心ベクトル、スタンパーSTの押し当て偏心ベクトル、及びモータ回転の偏心ベクトルが含まれている。したがって、前記減算処理により、図11に示すようなスタンパーSTの偏心ベクトルを導出することができる。なお、モータ回転の偏心ベクトルが無視できるほど小さな場合には、モータ回転の偏心ベクトルの取得及びモータ回転の偏心ベクトルの減算処理は不要となる。このステップS90の処理後、コントローラ100は、ステップS91にてスタンパーSTの偏心ベクトルを表示装置102に表示して、ステップS92にてこのスタンパー偏心ベクトル取得プログラムの実行を終了する。
このスタンパーSTの偏心ベクトルの取得後、新たなスタンパーSTの偏心ベクトルを取得したい場合には、作業者は、新たなスタンパーSTに対して前述した押し当て偏心量の取得工程及びスタンパー偏心ベクトルの取得工程を実行する。なお、この場合、モータ偏心ベクトルに関しては、前回のスタンパーSTの偏心ベクトルの測定時と同じであるので、前回記憶しておいてモータ回転の偏心ベクトルを利用すればよく、モータ回転偏心ベクトルの取得工程を実行する必要はない。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、図8のステップS72,S81,S87の処理によって、スタンパーSTがスピンドルモータ11によって回転される際、ホルダー13に保持されたスタンパーSTの穴の内周面がホルダー13の円筒状の円筒状凸部13aの外周面に一方向から押し当てられている。図8のステップS71,S73〜S80,S82〜S86,S88,S89の処理により、カウント値が取り込まれるとともに回転角度が取り込まれて、スタンパーSTの測定偏心ベクトルが計算される際には、ホルダー13の中心からのスタンパーSTの中心のずれが一定とされている。そして、図8のステップS90の処理により、前記のようにホルダー13の中心からのスタンパーSTの中心のずれを一定にしたスタンパーSTの偏心ベクトルと、図4の押し当て偏心量取得プログラムを用いて生成した押し当て偏心ベクトルとを用いて、ベクトルの減算処理の手法により、スタンパーST自身の偏心量が計算される。その結果、ホルダー13の中心からのスタンパーSTの中心のずれは一定となるため測定した偏心量から除去することができ、スタンパーSTの偏心量を正確に求めることができる。
また、図8のステップS90においては、図6の測定偏心ベクトル取得プログラム及び図7のモータ回転偏心ベクトル取得プログラムの処理を用いて生成したモータ偏心ベクトルをも、スタンパーSTの測定偏心ベクトルから減算することにより、スタンパーSTの偏心量に、スピンドルモータ11によるホルダー13の回転時における回転中心に対するホルダー13の中心のずれの影響を除外することができ、スタンパーSTの偏心量をより正確に求めることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
(変形例1)
上記実施形態では、スタンパーSTをホルダー13に押し当てて1回転させて測定したスタンパーSTの偏心ベクトルから、別途測定して記憶しておいた押し当て偏心量に基づく押し当て偏心ベクトル及び別途測定して記憶しておいたモータ回転偏心ベクトルを減算してスタンパーST自身の偏心ベクトルを計算するようにした。しかし、これに代えて、スタンパーST自身の偏心ベクトルとモータ回転偏心ベクトルとを加算した偏心ベクトルを測定して、この測定した偏心ベクトルからモータ回転偏心ベクトルを減算してスタンパーST自身の偏心ベクトルを取得するようにしてもよい。
この場合、スタンパーSTの回転開始時におけるスタンパーSTとクランプ12との位置関係を固定したまま、押し当て具15によるスタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向を90度ずつ変更して、前記押し当て方向が異なる4種類のスタンパーSTの偏心ベクトルを測定する。本実施形態では、図12(A)〜(D)に示すように、0度、90度、180度及び270度の4方向に、スタンパーSTをホルダー13に押し当てる。なお、上述したモータ回転の偏心ベクトルを求める際には、ホルダー13に対するスタンパーSTの押し当て方向を変更することなく、スタンパーST及びホルダー13を回転させることを図12(A)〜(D)で示している。しかし、この場合には、スタンパーST及びホルダー13はクランプ12に対して常に同じ回転位置に保たれていて、スタンパーSTをホルダー13に対して押し当てる方向が、図示左方向を0度、下方向を90度、右方向を180度及び上方向を270度となるように変更している。これは理解を容易にするためのもので、90度ずつ異なる4つの組み合わせであれば、スタンパーSTの押し当て方向はいずれの方向であってもよい。
そして、この場合も、上記実施例の場合と同様に、図5の位置決めプログラムの実行によってスピンドルモータ11の回転軸11a及びクランプ12を基準位置に設定した後、スタンパーSTとクランプ12との位置関係を固定したまま、押し当て具15によるスタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向を90度ずつ変更した4種類のスタンパーSTに対して、図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行により、4種類の測定偏心ベクトルを求める。図6の測定偏心ベクトル取得プログラムのステップS48によって取得される回転角度に対するカウント値の4種類の関係曲線は、それぞれ図15に示すように、およそ90度ずつ位相のずれた正弦波となる。なお、この図15の関係曲線においては、「0」の位置が最大値と最小値との中央値になるように、関係曲線を移動して示している。
前記図6の測定偏心ベクトル取得プログラムの実行によって前記4種類の偏心ベクトルを取得した後、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100に図14のスタンパー偏心ベクトル取得プログラムを実行させる。コントローラ100は、ステップS100にてこのスタンパー偏心ベクトル取得プログラムの実行を開始し、ステップS101にて前記4種類の偏心ベクトルを加算し、ステップS102にて前記加算したベクトルの大きさを「4」で除して大きさを1/4にする。これにより、スタンパーST自身の偏心ベクトルとモータ回転の偏心ベクトルとを加算した測定偏心ベクトルが取得される。これは、図16に示すように、90度ずつ方向のずれた押し当て偏心ベクトルは互いに打ち消し合うことで、前記加算して1/4にした測定ベクトルは、スタンパーST自身の偏心ベクトルとモータ回転の偏心ベクトルのみを含むものとなるためである。
前記ステップS102の処理後、上記実施形態の場合と同様にして、コントローラ100は、ステップS103にて前記測定偏心ベクトルからモータ回転偏心ベクトルを減算して、スタンパーST自身の偏心ベクトルを取得して記憶しておく。なお、モータ回転偏心ベクトルに関しては、上記実施形態の場合と同様に、予め測定しておくとよい。前記ステップS103の処理後、コントローラ100は、ステップS104にて表示装置102にスタンパーST自身の偏心ベクトルを表示して、ステップS105にてこのスタンパー偏心ベクトル取得プログラムの実行を終了する。
この変形例によれば、上記実施形態の押し当て偏心量の取得工程が不要となり、スタンパーSTの穴の直径とホルダー13の円筒状凸部13aの外径を測定するための精密な測定器及び測定作業が不要となる。また、この変形例においても、モータ回転偏心ベクトルが小さければ、前記ステップS103によりモータ回転偏心ベクトルの減算処理も不要となる。
(変形例2)
上記実施形態では、スタンパーSTはROM型の光ディスクを作製するためのもの、すなわちピット列が形成されたものであった。しかし、スタンパーSTがR型及びRW型の光ディスクを作成するためのもの、すなわちグルーブ及びランド(図18参照)が形成されたものである場合には、以下のように構成すればよい。すなわち、トラッキングエラー信号生成回路37を、プッシュプル(Push Pull)法によってトラッキングエラー信号を生成する回路に変更する。トラッキングエラー信号生成回路37で生成されたトラッキングエラー信号は、図17に示すように、ローパスフィルタ51を介した後に、微分回路38及び2値化回路41に供給するようにする。進行方向変化検出回路39は、微分回路38からの微分信号に加えて、トラッキングエラー信号生成回路37で生成されたトラッキングエラー信号を、ハイパスフィルタ52を介して入力する。そして、進行方向変化検出回路39は、前記ハイパスフィルタ52を通過した信号の振幅値が所定レベルよりも大きいか否かにより信号レベルが変化する2値化信号を作成し、微分回路38からの微分信号がハイレベルであるときにおける2値化信号のレベルにハイレベルがあるか否かにより、カウント回路42へのカウントアップ又はカウントダウンを制御するための信号の有無を切換える。
これは、次のような理由による。R型及びRW型の光ディスクのグルーブにはウォブル(図18)が形成されているため、この光ディスクを作成するためのスタンパーSTにもウォブルが形成されている。そして、ウォブルが形成されていると、光スポットがグルーブを横切るときのトラッキングエラー信号には正弦波状の高周波信号が乗り、この高周波信号は光スポットがランドにある場合とグルーブにある場合とで振幅が大きく変化する。正弦波状の信号が最小から最大に変化するとき、光スポットがグルーブを横切る向きが異なる場合、片方はランドを経由し、他の片方はグルーブを経由する。よって、正弦波状の信号が最小から最大に変化するとき、高周波信号の振幅が大きいか小さいかを検出することで光スポットのグルーブを横切る向きを検出できる。図19A及び図19Bは、この光スポットがグルーブを横切る向きが異なる場合のトラッキングエラー信号生成回路51からのトラッキングエラー信号、ローパスフィルタ51の出力信号、ハイパスフィルタ52の出力信号、及び微分回路38の出力信号の波形図を示している。
(変形例3)
上記変形例1においては、押し当て偏心ベクトルを除去して、スタンパーST自身の偏心ベクトルとモータ回転偏心ベクトルとを加算した偏心ベクトルを求める際に、4種類の偏心ベクトルを求めた後に、これらの4種類の偏心ベクトルを加算して「4」で除することにより偏心ベクトルを求めるようにした。しかし、これに代えて、スタンパーSTの回転角度に応じて変化する4種類のカウント値(径方向ずれ量)を合成して、スタンパーSTの回転角度に応じて変化する1種類のカウント値(径方向)を求めて偏心ベクトルを求めるようにしてもよい。
具体的には、上記変形例1の場合と同様に、スタンパーSTの回転開始時におけるスタンパーSTとクランプ12との位置関係を固定したまま、押し当て具15によってスタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向を90度ずつ変更して、0度、90度、180度及び270度ごとに、作業者は、入力装置101を操作して、図20の径方向ずれ量取得プログラムをコントローラ100に実行させる。この径方向ずれ量取得プログラムのステップS201〜S218の処理は、上記実施形態の図6の測定偏心ベクトル取得プログラムのステップS31〜S48の同じである。したがって、この4回の径方向ずれ量取得プログラムの実行により、0度、90度、180度及び270度のそれぞれに対して、図15の細い実線、破線、一点鎖線及び二点鎖線で示すように、スタンパーSTの回転角度に応じて正弦波状に変化する4種類のカウント値(径方向ずれ量)の関係曲線が得られて記憶される。
前記4種類の関係曲線の取得後、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100に図21の偏心量計算プログラムを実行させる。この偏心量計算プログラムの実行は、ステップS220にて開始され、コントローラ100は、ステップS221にて前記4種類のカウント値(径方向ずれ量)を平均化する、すなわち前記4種類のカウント値(径方向ずれ量)を角度ごとに加算して「4」で除する。その結果、図15の前記4種類の曲線は、太い実線で示す正弦波状の曲線に合成される。これが、スタンパーSTの回転角度に応じて変化するカウント値(径方向ずれ量)の関係曲線であり、この関係曲線は、スタンパーSTの押し当て偏心ベクトルを除去したスタンパーST自身の偏心ベクトルとモータ回転偏心ベクトルとを加算した偏心ベクトルにより発生する所定の径方向位置(180度方向)における回転角度ごとの径方向ずれ量を表している。
前記ステップS221の処理後、コントローラ100は、ステップS222にて前記太い実線で示す回転角度に応じて変化する合成後のカウント値(径方向ずれ量)から偏心ベクトルを計算し、ステップS223にてこの偏心量計算プログラムの実行を終了する。この偏心ベクトルの取得においては、上記実施形態及び変形例1の場合と同様に、前記作成した回転角度に対するカウント値の関係曲線における最大値から最小値を減算する。そして、減算結果にスタンパーSTのピット列間距離(ピッチ)を乗算し、減算結果を「2」で除算することにより、偏心量を計算する。そして、カウント値が最大となる回転角度を偏心方向として決定して、この偏心方向と前記計算した偏心量を用いて偏心ベクトルを求める。この測定偏心ベクトルは、図16にスタンパー+モータ回転の偏心として示されている。したがって、この偏心ベクトルは、前記変形例1の場合と同様なモータ回転の偏心ベクトルを含むスタンパーSTの偏心ベクトルである。
また、上記実施形態において、モータ回転偏心ベクトルを求める際に、4種類の偏心ベクトルを求めた後に、これらの4種類の偏心ベクトルを加算して「4」で除することにより偏心ベクトルを求めるようにした。しかし、この場合も、これに代えて、前述のように、スタンパーSTの回転角度に応じて変化する4種類のカウント値(径方向ずれ量)を合成して、スタンパーSTの回転角度に応じて変化する1種類のカウント値(径方向)を求めて偏心ベクトルを求めるようにしてもよい。ただし、この場合は、モータ回転の偏心ベクトルを求めるので、ホルダー13に対してスタンパーSTを同一方向から押し当てたまま、スタンパーST及びホルダー13を0度、90度、180度及び270度の4方向に回転させてクランプ12にそれぞれセットして、コントローラ100に図20の径方向ずれ量取得プログラムを実行させる。そして、回転角度に応じて変化する4種類のカウント値(径方向ずれ量)を取得後、前述した図21の偏心量計算プログラムをコントローラ100に実行させる。これにより、この場合には、モータ回転の偏心ベクトルが求められることになる。
(その他の変形例)
上記実施形態及び変形例では、スタンパーSTの偏心ベクトル、モータ回転の偏心ベクトル、及びスタンパーSTの偏心ベクトルにモータ回転の偏心ベクトルを加えた偏心ベクトルを求めるための、図8のスタンパー偏心ベクトル取得プログラム、図6の測定偏心ベクトル取得プログラム、及び図20の径方向ずれ量取得プログラムにおいては、スタンパーSTを1回転だけさせて、スタンパーSTの1回転分のカウント値及び回転角度を取り込んで偏心ベクトルを計算するようにした。しかし、スタンパーSTの1回転は最低限の回転であり、前記に代えて、スタンパーSTを複数回回転させて、スタンパーSTの複数回転分のカウント値及び回転角度を取り込んで偏心ベクトルを計算するようにしてもよい。この場合、複数回転分のカウント値を回転角度ごとに平均すればよい。
上記実施形態及び変形例では、モータ回転偏心ベクトル、及びスタンパーSTの偏心ベクトルにモータ回転偏心ベクトルを加えた偏心ベクトルを求めるための、図6の測定偏心ベクトル取得プログラム、及び図20の径方向ずれ量取得プログラムの実行時には、スタンパーSTをクランプ12にセットする方向、及びスタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向を互いに正反対の方向を含む4つの異なる方向とした。しかし、前記スタンパーSTをクランプ12にセットする方向、及びスタンパーSTをホルダー13に押し当てる方向は、それぞれの方向において正反対の方向が含まれていればよく、偶数である2・n(n=1,2,3・・・)個の異なる方向であればよい。すなわち、180度方向の異なる2つの方向を最低限とし、180度方向の異なる1対の方向を含む偶数個の方向であれば、方向の数は任意である。この場合、方向の数が増加するに従って測定精度は向上する。
また、上記実施形態及び変形例においては、偏心によるレーザスポットに対するスタンパーSTの径方向移動を検出するために、DPD法又はプッシュプル法によるトラッキングエラー信号を2値化してパルス信号を生成し、生成したパルス信号のパルス数をカウントすることにより、レーザスポットがピット列を横切る回数を検出するようにした。しかし、これに代えて、偏心によるレーザスポットに対するスタンパーSTの径方向移動を検出できれば、次のような方法も採用できる。すなわち、図1に破線で示すように、光ピックアップ装置20の対物レンズ25を径方向に駆動するトラッキングアクチュエータ61を設けて、トラッキングサーボ制御回路62を用いてトラッキングエラー信号に基いてトラッキングアクチュエータ61を、光スポットがスタンパーSTのピット列又はランドやグルーブを追従するように制御する。そして、トラッキングアクチュエータ61に併設した位置センサ63により、対物レンズ25の径方向への移動量を検出するようにしてもよい。また、この場合の対物レンズ25を径方向へ駆動するトラッキングサーボ制御信号自体を、対物レンズ25の径方向への移動量の検出に利用してもよい。
また、上記実施形態では、ROM型の光ディスクを作製するためのスタンパーSTの場合には、DPD法のトラッキングエラー信号を2値化してパルス信号を生成し、生成したパルス信号をカウントしてスタンパーSTの径方向への移動量を検出するようにした。しかし、これに代えて、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号をローパスフィルタを介した後に2値化してパルス信号を生成し、生成したパルス信号をカウントしてスタンパーSTの径方向への移動量を検出するようにしてもよい。この場合、DPD法のトラッキングエラー信号とは異なり、トラッキングエラー信号からレーザスポットがピット列を横切る方向が切り換わったことが検出できても、レーザスポットがピット列を横切る方向は検出できないので、何らかの方法でこの方向を検出する必要がある。例えば、前記スタンパーSTの径方向への移動量の検出後、スタンパーを再度回転させるとともに、トラッキングサーボ制御を行い、回転角度に対応させてトラッキングサーボ信号の瞬時値を検出して、これからレーザスポットがピット列を横切る方向を検出するようにしてもよい。これによれば、トラッキングサーボ制御を行わずに、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号からスタンパーSTの径方向への移動量を検出する場合において、レーザスポットがピット列を横切る方向を検出できるようになる。
また、上記実施形態では、所定の回転角度を検出した後にスピンドルモータ11の回転を停止させ、作業者が設定された方向にスタンパーSTを押すようにしたが、スピンドルモータ11の停止を任意の回転角度とし、クランプ12に回転角度を表示しておいて、作業者はこの表示を確認しながら設定された方向にスタンパーSTを押すようにしてもよい。