JP5182264B2 - 流体伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は、流体伝達装置に関し、特に動力源が発生する動力を作動流体を介して伝達可能である流体伝達装置に関するものである。
従来、車両などに搭載される自動変速機は、発進停止などの運転状態の変化の移行を円滑に行うため、例えば、流体伝達装置としてのトルクコンバータが使用されているものがある。このような従来の流体伝達装置として、例えば、特許文献1に記載された車輌用無段変速機に適用されたトルクコンバータは、ベルト式無段変速装置への入力トルクが上限トルクを越えないように、油圧制御によりロックアップクラッチ機構におけるスリップ量を制御することで上記入力トルクを制限している。
特開平9−242866号公報
ところで、上述のような特許文献1に記載されている車輌用無段変速機に適用されたトルクコンバータでは、例えば、油圧制御系における応答遅れなどに影響されずに、より確実に過剰なトルクの発生を抑制することが望まれていた。
そこで本発明は、過剰なトルクの発生を抑制することができる流体伝達装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明による流体伝達装置は、入力部材に伝達された動力を作動流体を介して出力部材に伝達可能な流体伝達部と、前記入力部材に伝達された動力を一対の摩擦面が摩擦係合可能な摩擦係合部を介して前記出力部材に伝達可能なロックアップクラッチ部と、前記流体伝達部が前記入力部材に入力されたトルクを増幅して前記出力部材から出力する運転状態である場合に、前記流体伝達部を介して伝達されるトルクに応じて前記一対の摩擦面を摩擦係合させる係合押圧力を発生させるトルクカム部とを備えることを特徴とする。
また、上記流体伝達装置では、前記トルクカム部は、前記流体伝達部を介して相対的に大きなトルクが伝達される場合に相対的に大きな前記係合押圧力を発生させ、前記流体伝達部を介して相対的に小さなトルクが伝達される場合に相対的に小さな前記係合押圧力を発生させるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記一対の摩擦面に対して前記係合押圧力が作用する方向とは逆方向に向かって作用し当該一対の摩擦面の摩擦係合を解放させる解放押圧力を発生させる解放押圧力発生部を備えるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記解放押圧力発生部は、内部に供給される前記作動流体の圧力により前記解放押圧力を発生させる解放油圧室を含んで構成されるようにしてもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記解放押圧力発生部は、付勢力により前記解放押圧力を発生させる第1弾性部材を含んで構成されるようにしてもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記解放押圧力発生部は、前記出力部材から出力されるトルクが伝達される動力伝達系での許容トルクに応じて前記解放押圧力が設定されるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記流体伝達部、前記ロックアップクラッチ部及びトルクカム部を搭載した車両の運転状態に応じて前記解放押圧力発生部が発生させる前記解放押圧力を制御する制御部を備えるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記制御部は、前記入力部材に伝達されるトルクに応じて前記解放押圧力を変えるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記入力部材に伝達される動力を発生させる動力源は、過給機が排気ガスを利用して吸気通路の吸入空気の圧力を上昇させ過給を行う内燃機関であり、前記制御部は、前記過給圧に応じて前記解放押圧力を変えるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記制御部は、前記出力部材から出力されるトルクが伝達される変速機の状態に応じて前記解放押圧力を変えるように構成してもよい。
また、上記流体伝達装置では、前記トルクカム部は、前記出力部材の回転軸線周り方向に沿って相対変位可能かつ前記回転軸線に沿って相対移動可能な一対のカム部材であって前記流体伝達部を介してトルクが伝達され前記相対変位することで前記流体伝達部を介して伝達されるトルクに応じた前記係合押圧力を発生させるようにカム面が形成された一対のカム部材と、前記回転軸線周り方向に沿って前記一対のカム部材に付勢力を作用させる第2弾性部材とを有するように構成してもよい。
本発明に係る流体伝達装置によれば、確実に過剰なトルクの発生を抑制することができる。
図1は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータの要部断面図である。 図2は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータが適用された車両の駆動系の概略構成例を示す図である。 図3は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータが備えるトルクカム機構の一例を説明するための部分的な模式図である。 図4は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータのトルク比を説明する線図である。 図5は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータにおけるトルク配分を説明する模式的な線図である。 図6は、本発明の実施形態1に係るトルクコンバータの発進制御を説明するフローチャートである。 図7は、本発明の実施形態2に係るトルクコンバータの要部断面図である。 図8は、本発明の変形例に係るトルクコンバータの発進制御を説明するフローチャートである。 図9は、本発明の実施形態3に係るトルクコンバータの要部断面図である。 図10は、本発明の実施形態3に係るトルクコンバータが備えるトルクカム機構の一例を説明するための部分的な模式図である。 図11は、本発明の実施形態4に係るトルクコンバータの発進制御を説明するフローチャートである。 図12は、本発明の実施形態4に係るトルクコンバータが適用された車両の発進時動力性能の一例を説明する線図である。 図13は、本発明の実施形態5に係るトルクコンバータの発進制御を説明するフローチャートである。
以下に、本発明に係る流体伝達装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
以下の説明では、この流体伝達装置としてのトルクコンバータ1は、図1に示す出力軸50の回転軸線Xを中心軸線としてほぼ対称になるように構成されることから、この図1には、回転軸線Xを中心軸線として一方側のみを図示し、特に断りのない限り、回転軸線Xを中心軸線として一方側のみを説明し、他方側の説明はできるだけ省略する。また、以下の説明では、特に断りのない限り、回転軸線Xに沿った方向を軸方向といい、回転軸線Xに直交する方向、すなわち、軸方向に直交する方向を径方向といい、回転軸線X周りの方向を周方向という。また、径方向において回転軸線X側を径方向内側といい、反対側を径方向外側という。また、軸方向において動力源が設けられる側(動力源から動力が入力される側)を入力側といい、反対側、つまり、変速機5が設けられる側(変速機5に動力を出力する側)を出力側という。なお、この出力軸50は、例えばトルクコンバータ1の出力側に配置された変速機5の入力軸などである。
図1に示す流体伝達装置としてのトルクコンバータ1は、走行用の動力源である内燃機関としてのエンジン3や変速機5などを含んで構成される駆動装置を搭載した車両2(図2参照)に適用される。本実施形態のトルクコンバータ1は、車両2の動力伝達経路においてエンジン3と変速機5との間に設けられる。
まず、トルクコンバータ1が適用される車両2は、図2に示すように、走行時の動力を発生する動力源である内燃機関としてのエンジン3を搭載している。エンジン3は、出力軸であるクランクシャフト4に機械的な動力(エンジントルク)を発生させる。トルクコンバータ1は、エンジン3で発生した機械的動力、言い換えれば、トルクがクランクシャフト4から伝達(入力)され、伝達されたトルクを増幅し、あるいは、そのままで出力軸50から変速機5に伝達(出力)する。変速機5は、トルクコンバータ1の出力軸(変速機5の入力軸)50から伝達された回転動力を車両2の運転状態に適した変速段又は変速比で変速し、変速後の動力を出力軸6から差動装置7に伝達(出力)する。差動装置7は、変速機5の出力軸6から伝達(入力)された動力を左右の二方向に分配し、各ドライブシャフト8に伝達(出力)する。各ドライブシャフト8は、差動装置7から伝達(入力)された動力により各駆動輪9を回転駆動させる。車両2は、上記のように構成される動力伝達系統を介して、エンジン3の出力トルクが各駆動輪9に伝達される構成となっている。
ここでは、エンジン3は、例えば、タービンおよびコンプレッサを有すると共に、エンジン3の排気ガスのエネルギーをタービンにて取得してコンプレッサを駆動することで吸入空気の圧力(過給圧)を上昇させ過給を行う過給機が設けられたいわゆる過給エンジンである。また、変速機5は、いわゆる自動変速機であり、入力される入力回転速度と変速機5から出力される出力回転速度との比である変速比を無段階(連続的)に変更可能な無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよいし、変速比を段階的(不連続)に変更可能な有段変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよい。なお、車両2の走行用の動力源は、内燃機関に限らず、モータなどの電動機、あるいは、内燃機関とモータなどの電動機とを併用したものであってもよい。
次に、本実施形態に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ1は、図1に示すように、入力部材としてのフロントカバー10と、流体伝達部としての流体伝達機構20と、ロックアップクラッチ部としてのロックアップクラッチ機構30と、トルクカム部としてのトルクカム機構40と、出力部材としての出力軸50と、油圧制御装置60と、制御部としての電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)70とを備える。このトルクコンバータ1は、軸方向に対して入力側から出力側に向かって、フロントカバー10、ロックアップクラッチ機構30、トルクカム機構40、流体伝達機構20の順番で配置されている。
フロントカバー10は、入力部材であり、動力源であるエンジン3からの動力が伝達され、伝達された動力を流体伝達機構20又はロックアップクラッチ機構30に伝達するものである。フロントカバー10は、フロントカバー本体部11が出力軸50の中心軸線である回転軸線Xと同軸の円板形状に形成され、フロントカバーフランジ部12がこのフロントカバー本体部11の径方向外側端部から出力側に突出して形成されている。フロントカバー10は、ボルト11aなどによりドライブプレート80と締結(固定)される。したがって、エンジン3の回転動力は、クランクシャフト4からドライブプレート80を介してフロントカバー本体部11に伝達される。これにより、フロントカバー10は、回転軸線Xを中心としてクランクシャフト4と共に回転可能である。
流体伝達機構20は、流体伝達部であり、フロントカバー10に伝達された動力を作動流体としての作動油を介して出力軸50に伝達するものである。流体伝達機構20は、ポンプインペラ21と、タービンライナ22と、ステータ23と、ワンウェイクラッチ24と、ポンプインペラ21とタービンライナ22との間に介在する作動流体である作動油とにより構成されている。
ポンプインペラ21は、ポンプシェル21aの径方向外側端部がフロントカバーフランジ部12に固定される。ポンプインペラ21は、フロントカバー10と一体回転し、フロントカバー10に伝達された動力がポンプシェル21aを介してこのポンプシェル21aの内周面に周方向に沿って等間隔に複数設けられるポンプブレード(翼)21bに伝達される。また、ポンプインペラ21は、ポンプシェル21aの径方向内側端部がスリーブ21cに固定されている。スリーブ21cは、円筒状部分の内側に出力軸50及びハウジング52の一部が挿入される。タービンライナ22は、軸方向に対してポンプインペラ21に対向するように配置されている。タービンライナ22は、タービンシェル22aの内周面に周方向に沿って等間隔に複数のタービンブレード(翼)22bが設けられている。ステータ23は、周方向に形成された複数のステータブレード(翼)23aを有し、このステータブレード23aによりポンプインペラ21とタービンライナ22との間を循環する作動油の流れを変化させ、伝達される動力に基づいて所定のトルク特性を得るためのものである。ワンウェイクラッチ24は、トルクコンバータ1を収納するハウジング52に対してステータ23を一方向のみに回転可能に支持するものである。
そして、タービンライナ22は、タービンシェル22aの径方向内側端部が後述するトルクカム機構40の第1カムプレート41に固定されており、トルクカム機構40の第1カムプレート41、カムローラ43、第2カムプレート42やハブ51などを介して出力軸50と一体回転可能に接続されている。したがって、タービンシェル22aは、トルクカム機構40、ハブ51を介して出力軸50と一体回転可能となり、タービンライナ22が出力軸50と一体回転することで、流体伝達機構20を構成するポンプインペラ21、作動油及びタービンライナ22を介して伝達された動力が出力軸50に伝達される。
なお、このトルクカム機構40の構成については後で詳細に説明する。また、本実施形態のトルクカム機構40の第2カムプレート42は、ロックアップクラッチ機構30のロックアップピストン31としても兼用されるが、これに限らず、ロックアップピストン31と第2カムプレート42とをそれぞれ別個に設けてもよい。
ロックアップクラッチ機構30は、ロックアップクラッチ部であり、フロントカバー10に伝達された動力を流体伝達機構20の作動流体を介さずに、摩擦係合部32を介して直接的に出力軸50に伝達するものである。ロックアップクラッチ機構30は、係合部材としてのロックアップピストン31と、摩擦係合部32と、解放油圧室としてのクラッチ解放油圧室33と、係合油圧室としてのクラッチ係合油圧室34とを有する。ロックアップクラッチ機構30は、軸方向に対して入力側から出力側に向かって、摩擦係合部32の一方の摩擦面をなすフロントカバー10のフロントカバー内壁面36、摩擦係合部32の他方の摩擦面をなす摩擦材35、ロックアップピストン31の順番で配置されている。
ロックアップピストン31は、係合部材であり、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、軸方向に対してフロントカバー10とタービンライナ22との間に配置されている。ロックアップピストン31は、軸方向においてフロントカバー10と対向するようにして配置されている。ロックアップピストン31は、径方向内側端部31aが回転軸線Xと同軸の円筒状に形成され、径方向内側端部31aの径方向内側にハブ51が挿入されている。ハブ51は、回転軸線Xと同軸の円筒状に形成されており、径方向内側に出力軸50が挿入されている。ロックアップピストン31は、例えばスプライン嵌合部などの連結部37を介してハブ51と接続され、このハブ51に対して軸方向に相対移動可能、かつ、このハブ51と一体回転可能に支持される。これにより、ロックアップピストン31とハブ51とは、相互に動力を伝達可能な構成となる。また、ハブ51は、例えばスプライン嵌合部などの連結部53を介して出力軸50と接続され、この出力軸50と一体回転可能に支持される。これにより、ハブ51と出力軸50とは、相互に動力を伝達可能な構成となる。
したがって、トルクカム機構40の第2カムプレート42としても兼用されるロックアップピストン31は、ハブ51を介して出力軸50に一体回転可能に連結される。この結果、ロックアップピストン31は、このロックアップピストン31に伝達された動力をハブ51を介して出力軸50に伝達することができると共に、ハブ51に対して軸方向に相対移動することで、フロントカバー10に対して軸方向に接近、離間することができる。
摩擦係合部32は、一対の摩擦面である摩擦材35とフロントカバー内壁面36とが摩擦係合可能な摩擦係合面として構成される。フロントカバー内壁面36は、フロントカバー本体部11においてロックアップピストン31と軸方向に対向する壁面である。摩擦材35は、ロックアップピストン31においてフロントカバー本体部11と軸方向に対向する壁面の径方向外側の部分に設けられる。摩擦係合部32は、フロントカバー内壁面36と摩擦材35とが対向して接触することで摩擦係合可能であり、すなわち、ロックアップピストン31とフロントカバー10とを摩擦係合可能である。
また、ロックアップクラッチ機構30は、ロックアップピストン31の径方向内側端部31aがハブ51の外周面と対向して接触し軸方向に摺動自在に支持されると共に、径方向内側端部31aとハブ51との間に作動流体(作動油)の漏れを抑制するシール部材S1が配置されている。これにより、フロントカバー10とポンプシェル21aとによって区画されるトルクコンバータ1の内部は、ロックアップピストン31により、流体伝達機構20が位置する流体伝達機構空間部Aと摩擦材35が位置するクラッチ空間部Bとに区画される。この流体伝達機構空間部Aとクラッチ空間部Bとは、摩擦係合部32側でロックアップピストン31とフロントカバーフランジ部12との間の連通部分を介して連通可能となっている。
クラッチ解放油圧室33は、内部に供給される作動油の油圧(圧力)により摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合を解放させる解放押圧力を発生させるものである。ここでは、クラッチ解放油圧室33は、ロックアップピストン31を軸方向に対してフロントカバー10から離間する側に移動させるための解放押圧力を発生させる。クラッチ解放油圧室33は、軸方向に対してロックアップピストン31とフロントカバー10との間に作動油が通過可能な空間部として形成され、ここでは、クラッチ空間部Bがクラッチ解放油圧室33として機能する。このクラッチ解放油圧室33は、内部の作動油の油圧をロックアップピストン31の受圧面31bに作用させることによって、ロックアップピストン31にフロントカバー10から離間する側への解放押圧力(推力)を作用させる。
クラッチ係合油圧室34は、内部に供給される作動油の油圧(圧力)により摩擦材35とフロントカバー内壁面36とを摩擦係合させる係合押圧力を発生させるものである。ここでは、クラッチ係合油圧室34は、ロックアップピストン31を摩擦材35と共に軸方向に対してフロントカバー10に接近する側に移動させるための係合押圧力を発生させる。ここでは、流体伝達機構空間部Aがクラッチ係合油圧室34として機能する。このクラッチ係合油圧室34は、内部の作動油の油圧をロックアップピストン31の受圧面31cに作用させることによって、ロックアップピストン31にフロントカバー10側への係合押圧力(推力)を作用させる。
上記のように構成されるロックアップクラッチ機構30は、クラッチ係合油圧室34(流体伝達機構空間部A)に供給される作動流体(作動油)の液圧(油圧)により、ロックアップピストン31が軸方向に沿ってフロントカバー10側に接近移動し、摩擦材35とフロントカバー内壁面36とが接触し摩擦係合することで、ロックアップクラッチ機構30がONとなる。ロックアップクラッチ機構30がONとなると、フロントカバー10とロックアップピストン31とが一体回転することとなるので、このロックアップクラッチ機構30は、フロントカバー10に伝達された動力をフロントカバー内壁面36、摩擦材35、ロックアップピストン31、ハブ51を順番に介して、出力軸50に伝達することとなる。
ここで、このトルクコンバータ1は、クラッチ係合油圧室34又はクラッチ解放油圧室33の一方に油圧制御手段としての油圧制御装置60から作動油が供給される。この油圧制御装置60は、トルクコンバータ1を含むトランスミッションの各部に供給される作動油の流量あるいは油圧を制御するものである。そして、油圧制御装置60は、クラッチ係合油圧室34の油圧と、クラッチ解放油圧室33の油圧との圧力差を制御することができる。
油圧制御装置60は、ロックアップクラッチ機構30のON制御時に、例えば、クラッチ係合油圧室34に作動油を供給し、クラッチ解放油圧室33からトルクコンバータ1の外部に排出することで、クラッチ解放油圧室33の油圧を相対的に低下させ、クラッチ係合油圧室34の油圧をクラッチ解放油圧室33の油圧よりも大きくする。これにより、油圧制御装置60は、ロックアップピストン31に作用する係合押圧力を解放押圧力より大きくすることができ、摩擦材35をフロントカバー内壁面36と接触、摩擦係合させて、フロントカバー10とロックアップピストン31とを一体回転させる。
また、油圧制御装置60は、ロックアップクラッチ機構30のOFF制御時に、例えば、クラッチ解放油圧室33に作動油を供給し、クラッチ係合油圧室34からトルクコンバータ1の外部に作動油を排出することで、クラッチ解放油圧室33の油圧をクラッチ係合油圧室34の油圧よりも大きくする。これにより、油圧制御装置60は、ロックアップピストン31に作用する解放押圧力を係合押圧力より大きくすることができ、フロントカバー内壁面36と摩擦係合していた摩擦材35をフロントカバー内壁面36から離間させ、摩擦係合を解除し非係合状態とし、ロックアップピストン31とフロントカバー10との一体回転を解除する。
ECU70は、トルクコンバータ1やエンジン3、変速機5などが搭載された車両2の各所に取り付けられたセンサから入力された各種入力信号や各種マップなどに基づいて各部を制御する。ECU70は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意されたマップデータ等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。ECU70は、油圧制御装置60に電気的に接続され、この油圧制御装置60の各種弁などの開閉制御などを実行する。
次に、本実施形態に係るトルクコンバータ1の基本的な動作について説明する。トルクコンバータ1は、エンジン3が動力を発生し、クランクシャフト4が回転すると、フロントカバー10に伝達されたエンジン3からの動力が、ポンプインペラ21及び作動油を介してタービンライナ22に伝達され、タービンライナ22がフロントカバー10と同一方向に回転する。このとき、ステータ23は、ステータブレード23aを介してポンプブレード21bとタービンブレード22bとの間を循環する作動油の流れを変化させ、これにより、このトルクコンバータ1は、所定のトルク特性を得ることができる。
そして、ロックアップクラッチ機構30のOFF時は、摩擦係合部32の摩擦係合が解除されている。したがって、上記のように作動油を介してタービンライナ22に伝達された動力は、後述するトルクカム機構40、ハブ51を介して出力軸50に伝達される。つまり、ロックアップクラッチ機構30のOFF時は、フロントカバー10に伝達された動力が流体伝達機構20を介して出力軸50に伝達される。
一方、ロックアップクラッチ機構30のON時は、摩擦係合部32が摩擦係合することで、フロントカバー10とロックアップピストン31とが一体回転する。したがって、フロントカバー10に伝達された動力は、摩擦係合部32を介してロックアップピストン31に伝達される。ロックアップピストン31に伝達された動力は、ハブ51を介して出力軸50に伝達される。つまり、ロックアップクラッチ機構30のON時は、フロントカバー10に伝達された動力がロックアップクラッチ機構30、ハブ51を介して作動油を介さずに直接的に出力軸50に伝達される。
ところで、上記のよう構成されるトルクコンバータ1が適用される車両2では、例えば、動力源であるエンジン3の過給ダウンサイジング化により燃費の向上を図る場合がある。すなわち、過給ダウンサイジング化されたエンジン(過給ダウンサイジングエンジン)3は、相対的に小さい排気量、より少ない気筒数で構成された上でターボチャージャなどの過給機を適用することで、過給効果により排気量の減少分によるトルク不足を補う。これにより、エンジン3は、相対的に小さな排気量で相対的に大きな排気量の自然吸気(NA:Natural Aspiration)エンジンと同等の出力、トルクを実現する。
ここで、上記のように過給機が適用されたエンジン3は、例えば、アイドル運転状態からの発進時ではエンジン回転数が低く十分な過給圧が作用しにくい傾向にある。つまり、過給機が適用されたエンジン3は、過給圧が十分に作用している場合ではNAエンジンより大きなトルクを発生させることができるものの、過給圧が作用していない場合では従来のNAエンジンと比較して、発生させることができるトルクが小さい。このため、過給ダウンサイジング化されたエンジン3が適用された車両2では、エンジン回転数が上昇し排気ガス流量が増加し吸気通路に十分な過給圧が作用するまでは駆動トルクが不足し、発進に際しもたつきが生じるなど発進性能が低下するおそれがある。
このため、本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20のトルク比を従来のNAエンジンに適用されるトルクコンバータのトルク比(出力部材に生じる出力軸トルク/入力部材に生じる入力軸トルク)などと比較して相対的に大きく設定し、これにより、発進時に流体伝達機構20にて増幅されるトルクを増加し、流体伝達機構20から出力軸50に伝達されるトルクを増加している。本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20のトルク比が相対的に大きくなるように、流体伝達機構20のポンプブレード21b、タービンブレード22b、ステータブレード23aの形状や位置関係が設定される。
また、本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20のトルク容量を従来のNAエンジンに適用されるトルクコンバータのトルク容量と比較して相対的に小さく設定し、これにより、ポンプインペラ21からタービンライナ22に伝達される動力を少なくしポンプインペラ21を回転させる際の抵抗を少なくしている。そして、トルクコンバータ1は、ポンプインペラ21とタービンライナ22との間で滑りを発生させ、エンジン回転数が速く上昇するようにし早期に吸気通路に過給圧が作用するようにしている。本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20のトルク容量係数が相対的に小さくなるように、流体伝達機構20のポンプブレード21b、タービンブレード22b、ステータブレード23aの形状や位置関係が設定される。
この結果、本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20のトルク比が相対的に大きく設定され、また、流体伝達機構20のトルク容量係数が相対的に小さく設定されることで、過給ダウンサイジング化されたエンジン3が適用された車両2であっても、発進時に流体伝達機構20にて増幅されるトルクが相対的に増加され、また、エンジン回転数が素早く上昇し早期に吸気通路に過給圧が作用するので、発進時に発進トルク(駆動トルク)が不足することを抑制することができ、発進に際しもたつきが生じるなど発進性能が低下することを抑制することができる。
一方、トルクコンバータ1は、上記のように流体伝達機構20のトルク比を相対的に大きく設定し、トルク容量係数を相対的に小さく設定すると、例えば急激なエンジントルクの上昇が生じた際に流体伝達機構20にてトルクが増幅されすぎて出力軸50から後段の変速機5に過剰なトルクが出力されるおそれがある。このため、このようなトルクコンバータ1は、上記のように動力源であるエンジン3の過給ダウンサイジング化を図った場合であっても、例えば、油圧制御系における応答遅れなどに影響されずに、確実に過剰なトルクの発生を抑制することが望まれていた。
そこで、本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20がフロントカバー10に入力されたトルクを増幅して出力軸50から出力する運転状態である場合に、トルクカム部としてのトルクカム機構40が流体伝達機構20を介してこのトルクカム機構40に伝達されるトルクに応じて係合押圧力を発生させることで、過剰なトルクの発生を抑制している。
ここで、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態は、典型的には、車両2の発進時にトルクコンバータ1の流体伝達機構20がいわゆるコンバータ範囲で運転される状態に相当する。流体伝達機構20のトルク比は、速度比(出力部材の回転速度/入力部材の回転速度)が0のときに最大となり速度比eの増加に伴って減少し、クラッチ点以上ではほぼ1.0となる。コンバータ範囲とは、この速度比が0からクラッチ点までの速度比範囲であり、流体伝達機構20でトルクの増幅効果が得られる速度比範囲である。このトルクコンバータ1は、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態では、基本的にはロックアップクラッチ機構30の油圧制御がOFF制御状態となっている。
本実施形態のトルクカム機構40は、軸方向に対してフロントカバー10と流体伝達機構20との間に設けられている。また、トルクカム機構40は、動力の伝達経路において、流体伝達機構20と出力軸50との間に設けられている。
トルクカム機構40は、一対のカム部材としての第1カムプレート41及び第2カムプレート42と、カムローラ43とを備えている。トルクカム機構40は、軸方向に対して入力側から出力側に向かって、ロックアップピストン31として兼用される第2カムプレート42、第1カムプレート41の順番で配置されており、この第1カムプレート41と第2カムプレート42との間にカムローラ43が配置されている。トルクカム機構40は、第1カムプレート41に作用するトルクを軸方向に向けた推力に変換して第2カムプレート42により摩擦係合部32に向けて押圧する。
第1カムプレート41は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、径方向内側にハブ51が挿入されている。また、第1カムプレート41は、タービンシェル22aの径方向内側端部が固定されている。これにより、フロントカバー10に伝達され流体伝達機構20で増幅されたトルクは、この第1カムプレート41に伝達される。
第2カムプレート42は、上述したように、ロックアップピストン31として兼用される。すなわち、第2カムプレート42(ロックアップピストン31)は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、ハブ51に対して軸方向に相対移動可能、かつ、このハブ51と一体回転可能に支持される。これにより、第2カムプレート42は、第1カムプレート41に対して軸方向に相対移動可能であり、すなわち、第1カムプレート41に対して軸方向に接近、離間することができる。
第1カムプレート41と第2カムプレート42とは、軸方向に対してカムローラ43を挟んで周方向に相対変位(相対回転)可能に設けられる。そして、第1カムプレート41と第2カムプレート42とは、軸方向に対して互いに対向する面にそれぞれ所定の形状のカム面41a、42aが形成されている。
カムローラ43は、円柱状に形成された転動体であり、外周面がカム面41aとカム面42aとに接触するようにして複数配置され保持されている。各カムローラ43は、回転軸線がトルクコンバータ1の径方向に沿うようにして設けられる。各カムローラ43は、第1カムプレート41のカム面41aと第2カムプレート42のカム面42aとの間でトルク(動力)を伝達する。なお、このトルクカム機構40は、カムローラ43に変えて球状に形成されたカムボールを用いてもよいし、あるいはカムローラ43自体を設けず、カム面41a、42a同士が直接当接するような構成であってもよい。
トルクカム機構40のカム面41a、42aは、第1カムプレート41に伝達されたトルクに応じて第2カムプレート42が係合押圧力を発生させるようにその形状が決められている。カム面41a、42aは、例えば、図3に示すように、例えば周方向に沿った傾斜面(断面がV字形状に凹んだ溝部状)として形成され、カム面41aとカム面42aとの軸方向の間隔が周方向に沿って徐々に変化するように形成される。言い換えれば、第1カムプレート41、第2カムプレート42は、軸方向の厚さが周方向に沿って次第に変化するようにカム面41a、42aが形成される。
さらに具体的には、トルクカム機構40は、流体伝達機構20を介して相対的に大きなトルクが第1カムプレート41に伝達される場合に相対的に大きな係合押圧力を発生させ、流体伝達機構20を介して相対的に小さなトルクが第1カムプレート41に伝達される場合に相対的に小さな係合押圧力を発生させるようにカム面41a、42aの形状が設定される。これにより、トルクコンバータ1は、トルクカム機構40に大きなトルクが伝達された場合には機械的な構成により過剰なトルクの発生を確実に抑制する構成としている。
上記のように構成されるトルクカム機構40は、流体伝達機構20で増幅されたトルクがタービンライナ22から第1カムプレート41に伝達され、カムローラ43を挟み込んでいる箇所の間隔が狭くなる方向のトルクが第1カムプレート41と第2カムプレート42との間に作用すると、伝達されたトルクに応じて第1カムプレート41と第2カムプレート42とが周方向に沿って相対変位(相対回転)する。すると、トルクカム機構40は、カム面41aとカム面42aとの間に位相差が生じ、第1カムプレート41と第2カムプレート42とがカムローラ43を挟み付けて相互に一体化される。この結果、トルクカム機構40は、第1カムプレート41に伝達されたトルク(動力)をカムローラ43を介して第2カムプレート42に伝達することができる。そして、トルクカム機構40は、第2カムプレート42に伝達されたトルク(動力)をハブ51を介して出力軸50に伝達することができる。
この間、トルクカム機構40は、図3に示すように、第1カムプレート41からカムローラ43を介して第2カムプレート42に対して軸方向の推力(押圧力)が作用する。この軸方向の推力の大きさは、第1カムプレート41からカムローラ43を介して第2カムプレート42に伝達されるトルク(動力)の大きさに基づく。
例えば、図3に示すように、カムローラ43から第2カムプレート42に作用する軸方向係合推力(係合押圧力)を「Ftc」、流体伝達機構20を介して第1カムプレート41に伝達されるトルク、すなわち、タービンライナ22に生じるタービントルクを「Tto」、カムローラ43を挟み付けている箇所における回転方向(接線方向)の接線力を「Fto」、カムローラ43が当接する箇所のカム面41a、42aのカム角(カム面41a、42aの傾斜角度)を「θ」、カム位置半径(回転軸線Xからカムローラ43の径方向中心位置までの距離)を「Rca」(図1参照)とすると、トルクカム機構40による軸方向係合推力Ftc及び接線力Ftoは、下記の数式(1)、(2)で表すことができる。
Ftc=Fto・tanθ ・・・ (1)
Fto=Tto/Rca ・・・ (2)
つまり、トルクカム機構40は、流体伝達機構20で増幅されたトルクTtoが第1カムプレート41に伝達され、第1カムプレート41と第2カムプレート42とが周方向に相対変位することで、この第1カムプレート41に伝達されたトルクTtoをカム面41a、42aの形状に応じて第1カムプレート41と第2カムプレート42とが軸方向に離間する方向の力に変換する。すなわち、トルクカム機構40は、第1カムプレート41に伝達されたトルクTtoをカムローラ43が当接する箇所のカム面41a、42aのカム角θに応じて軸方向係合推力Ftcに変換する。そして、トルクカム機構40は、第1カムプレート41に伝達されたトルクTtoの大きさに応じて変換された軸方向係合推力Ftcに応じた係合押圧力を第2カムプレート42(ロックアップピストン31)から摩擦係合部32に作用させる。
このとき、トルクカム機構40は、流体伝達機構20から第1カムプレート41に伝達されカムローラ43を介して第2カムプレート42に伝達されるトルクが大きいほど、より大きな係合押圧力を発生させる。つまり、トルクカム機構40は、流体伝達機構20から伝達されるトルクが大きくなるほど相対的に大きな係合押圧力を摩擦係合部32に作用させ、この係合押圧力がロックアップピストン31として兼用される第2カムプレート42に作用する解放押圧力より大きくなると、摩擦係合部32をなす摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合が開始される。
摩擦係合部32の摩擦係合状態は、トルクカム機構40が発生させる係合押圧力が大きくなるにしたがって、非係合状態から半係合状態を経て完全係合状態へと変化する。トルクコンバータ1は、これに伴って摩擦係合部32を介して出力軸50に伝達されるトルクの大きさが徐々に大きくなる一方、流体伝達機構20を介して出力軸50に伝達されるトルクの大きさが徐々に小さくなる。ここで、摩擦係合部32の半係合状態は、摩擦材35とフロントカバー内壁面36とが接触しつつ相対回転しスリップする状態であり、摩擦係合部32において解放と係合の中間の動力伝達状態が形成される。トルクコンバータ1は、摩擦係合部32の半係合状態では摩擦材35とフロントカバー内壁面36とのスリップ量に応じて摩擦係合部32を介して伝達されるトルクの大きさが変わる。
この結果、トルクコンバータ1は、図4(横軸が速度比、縦軸がトルク比)に示すように、流体伝達機構20から第1カムプレート41に伝達されトルクの大きさに応じて、トルクコンバータ1全体でのトルク比tを各速度比において固定値として設定される流体伝達機構20のトルク比Kから摩擦係合部32が完全に係合した際のトルク比であるクラッチトルク比tcl=1までの範囲で可変とすることができる。ここで、トルクコンバータ1全体でのトルク比tは、出力軸50から出力されるトルクとフロントカバー10に入力されるトルクとの比である一方、流体伝達機構20のトルク比Kは、タービンライナ22に生じるトルクとポンプインペラ21に生じるトルクとの比である。
すなわち、トルクコンバータ1は、フロントカバー10に伝達されるトルクが相対的に小さく、流体伝達機構20で増幅され第1カムプレート41に伝達されるトルクが相対的に小さく、トルクカム機構40により発生させる係合押圧力が解放押圧力より小さい状態では、摩擦係合部32が非係合状態で維持される。この場合、トルクコンバータ1は、フロントカバー10から摩擦係合部32を介して出力軸50に伝達されるトルクが0となり、フロントカバー10に伝達されたトルクの全てが流体伝達機構20にてトルク比Kで増幅され出力軸50に伝達される。この結果、トルクコンバータ1は、トルクコンバータ1全体でのトルク比tが最大トルク比である流体伝達機構20のトルク比Kとなる。よってこの場合、トルクコンバータ1は、全体としてフロントカバー10に入力されたトルクを最大のトルク比Kで増幅し、出力軸50から出力することができ、例えば、過給圧が十分に作用せずエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に小さい場合であっても、十分な発進トルクを発生させることができる。
また、トルクコンバータ1は、フロントカバー10に伝達されるトルクが相対的に大きくなり、流体伝達機構20で増幅され第1カムプレート41に伝達されるトルクが相対的に大きくなり、トルクカム機構40により発生させる係合押圧力が解放押圧力より大きくなると、摩擦係合部32の摩擦係合が開始され半係合状態を経て完全係合状態へと変化する。この場合、トルクコンバータ1は、フロントカバー10に伝達されたトルクのうち、フロントカバー10から摩擦係合部32を介して増幅されずに出力軸50に伝達されるトルクが増加する一方、流体伝達機構20を介してトルク比Kで増幅され出力軸50に伝達されるトルクが減少する。この結果、トルクコンバータ1は、トルクコンバータ1全体でのトルク比tがトルクカム機構40により発生させる係合押圧力に応じて、さらに言えば、摩擦係合部32のスリップ量に応じて流体伝達機構20のトルク比Kより小さくなる。よってこの場合、トルクコンバータ1は、全体としてフロントカバー10に入力されたトルクを最大のトルク比Kより小さいトルク比で増幅し、出力軸50から出力することができ、例えば、過給圧が十分に作用しエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に大きくなった場合に、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
つまり、トルクコンバータ1は、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態において、トルクカム機構40が流体伝達機構20を介して伝達されるトルクに応じて係合押圧力を発生させることで、摩擦係合部32の摩擦係合状態が可変とされ、トルクコンバータ1全体での見かけ上のトルク比が可変とされるので、機械的な構成により過剰なトルクの発生を抑制することができる。この結果、トルクコンバータ1は、例えば、仮に油圧制御系に不具合が生じた場合であっても、確実に過剰トルクを防止することができる。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ1は、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態において、解放押圧力が適正に設定されることで、トルクカム機構40が作動し摩擦係合部32をなす摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合が開始されるトルクを適正に設定することができ、言い換えれば、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能を適正に設定することができる。
トルクコンバータ1は、一対の摩擦面である摩擦材35、フロントカバー内壁面36に対して、トルクカム機構40による係合押圧力が作用する方向とは逆方向に向かって作用し摩擦材35、フロントカバー内壁面36の摩擦係合を解放させる解放押圧力を発生させる解放押圧力発生部90を備える。トルクコンバータ1は、この解放押圧力発生部90が発生させる解放押圧力を適正に設定することで、トルクカム機構40が作動し摩擦係合部32の摩擦係合が開始されるトルクを適正に設定し、トルクリミット性能を適正に設定している。本実施形態の解放押圧力発生部90は、内部に供給される作動油の油圧により解放押圧力を発生させる上述のクラッチ解放油圧室33を含んで構成される。すなわち、本実施形態では、このクラッチ解放油圧室33は、ロックアップクラッチ機構30の一部であると共に解放押圧力発生部90の一部でもある。したがって、トルクコンバータ1は、クラッチ解放油圧室33の作動油の油圧を適正に設定することで解放押圧力、トルクリミット性能を設定できる。
解放押圧力発生部90をなすクラッチ解放油圧室33は、内部に供給される作動油の油圧(圧力)によりロックアップピストン31に軸方向解放推力Fpを作用させ、軸方向解放推力Fpに応じた解放押圧力を発生させる。ここで、クラッチ解放油圧(クラッチ解放油圧室33の油圧)を「P」、クラッチ代表半径(図1参照)を「Rcl」とすると、クラッチ解放油圧室33が発生させる軸方向解放推力(解放押圧力)Fpは、下記の数式(3)で表すことができる。
Fp=π・Rcl・P ・・・(3)
そして、トルクコンバータ1は、クラッチ係合油圧室34の油圧がクラッチOFF油圧(相対的に小さな油圧)に設定され摩擦係合部32の非係合状態で、上述したように、フロントカバー10に伝達されるトルクが相対的に大きくなり、ポンプインペラ21に生じるトルクが所定のトルクより大きくなり、流体伝達機構20で増幅され第1カムプレート41に伝達されるトルクが相対的に大きくなり、トルクカム機構40が発生させる軸方向係合推力Ftcに応じた係合押圧力とクラッチ解放油圧室33が発生させる軸方向解放推力Fpに応じた解放押圧力との関係が下記の式(4)の関係を満たすようになると、摩擦係合部32の摩擦係合が開始される。
Ftc−Fp>0 ・・・ (4)
ここで、トルクコンバータ1の各部に生じるトルクの基礎式は、下記の式(5)乃至(9)で表すことができる。この式(5)乃至(9)において、「Te」はエンジントルク(クランクシャフト4に生じるトルクでありフロントカバー10に伝達されるトルク)、「Tti」はポンプ伝達トルク(フロントカバー10からポンプインペラ21に伝達されポンプインペラ21に生じるトルク)、「Tcl」はクラッチ伝達トルク(フロントカバー10から摩擦係合部32を介して出力軸50に伝達されるトルク)、「C」は流体伝達機構20のトルク容量係数、「Ne」はエンジン回転数(クランクシャフト4の回転数)、「Tto」はタービントルク(タービンライナ22に生じるトルク)、「K」は各速度比において固定値として設定される流体伝達機構20のトルク比、「μ」はクラッチ摩擦係数(摩擦係合部32の摩擦面の摩擦係数)、「T」は出力軸トルク(トルクコンバータ1の出力軸50から出力されるトルク)を表している。
Te=Tti+Tcl ・・・(5)
Tti=C・Ne ・・・(6)
Tto=K・Tti ・・・(7)
Tcl=μ・(Ftc−Fp)・Rcl ・・・(8)
T=Tto+Tcl ・・・(9)
そして、例えば、図5(横軸がエンジン回転数、縦軸がトルク)に示すように、摩擦係合部32の摩擦係合が開始される瞬間のポンプ伝達トルク、言い換えれば、Ftc=Fpとなるときのポンプ伝達トルクを係合開始設定トルクTs(例えば係合開始設定トルクTs=エンジン最大トルクTemax/2)とする。
この場合、トルクコンバータ1は、摩擦係合部32が非係合状態で、ポンプ伝達トルクTtiが係合開始設定トルクTsを超えるまでは摩擦係合部32の非係合状態が維持され、Tcl=0であることから、Tti=Te、T=Tto=K・Tti=K・Teとなる。
そして、トルクコンバータ1は、エンジン回転数Neが上昇し、ポンプ伝達トルクTtiが係合開始設定トルクTsを超えると、軸方向係合推力(係合押圧力)Ftcと軸方向解放推力Fpとの関係が式(4)を満たし、摩擦係合部32の摩擦係合が開始される。このとき、トルクコンバータ1は、クラッチ係合油圧室34の油圧がクラッチOFF油圧に設定され摩擦係合部32がスリップしている状態では、摩擦係合部32を介してトルクカム機構40に伝達され出力軸50に伝達されるトルクと、流体伝達機構20を介してトルクカム機構40に伝達され出力軸50に伝達されるトルクとが所定の比率で維持され、摩擦係合部32が完全に摩擦係合することはない。
つまり、図5に例示するように、ポンプ伝達トルクTti(=エンジントルクTe)が係合開始設定トルクTsを超えるまではこの係合開始設定トルクTsに相当する大きさのポンプ伝達トルクTtiが流体伝達機構20にてトルク比Kで増幅される。そして、ポンプ伝達トルクTtiが係合開始設定トルクTsを超えると、係合開始設定トルクTsを超えた分のトルク、すなわち(Te−Ts)に相当するトルクが所定の比率で流体伝達機構20側と摩擦係合部32側とに分配されて伝達される。この比率を仮に流体伝達機構20側に伝達されるトルク(流体伝達機構20を介してトルクカム機構40に伝達され出力軸50に伝達されるトルク):摩擦係合部32側に伝達されるトルク(摩擦係合部32を介してトルクカム機構40に伝達され出力軸50に伝達されるトルク)=1:Nとすると、トルクカム機構40は、(Te−Ts)に相当するトルクが流体伝達機構20を介したトルクK・(1/(1+N))・(Te−Ts)と摩擦係合部32を介したトルク(N/(1+N))・(Te−Ts)とに分配されて伝達される。
したがってこの場合、トルクコンバータ1は、エンジントルクTeが大きくなり、ポンプ伝達トルクTti(=エンジントルクTe)が係合開始設定トルクTsを超えて軸方向係合推力(係合押圧力)Ftcと軸方向解放推力(解放押圧力)Fpとの関係が式(4)を満たし摩擦係合部32の摩擦係合が開始されると、出力軸トルクTが下記の数式(10)を満たして動作することとなる。
T=K・Ts+K・(1/(1+N))・(Te−Ts)+(N/(1+N))・(Te−Ts) ・・・(10)
例えば、係合開始設定トルクTs=エンジン最大トルクTemax/2、流体伝達機構20のトルク比K=2.4、N=4と仮定すると式(10)からT≒1.8Te程度となる。
そして、トルクコンバータ1は、出力軸トルクTと許容トルクTmaxとの関係が下記の数式(11)の関係を満たすような任意の係合開始設定トルクTsが設定されることで、エンジン回転数Neが上昇し、ポンプ伝達トルクTti(=エンジントルクTe)が大きくなると、適正なタイミングでトルクカム機構40が作動し、摩擦係合部32をなす摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合が開始され、出力軸トルクTが許容トルクTmaxより大きくなることが抑制される。ここで、許容トルクTmaxは、出力軸50から出力されるトルクが伝達される動力伝達系ここでは変速機5において許容できるトルクなどに応じて予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて設定される。係合開始設定トルクTsは、フロントカバー10にエンジン最大トルクTemaxが入力された場合でも出力軸トルクTが許容トルクTmaxより小さく、数式(11)の関係を満たすような任意の値(例えば、Ts=Temax/2)に設定される。よって、トルクコンバータ1は、トルクコンバータ1の後段の動力伝達系ここでは変速機5に対する過剰なトルクの発生を制限することができる。
T=K・Ts+K・(1/(1+N))・(Te−Ts)+(N/(1+N))・(Te−Ts)<Tmax ・・・(11)
そして、この係合開始設定トルクTsは、軸方向解放推力Fpに応じて定まり、例えば、下記の数式(12)で表すことができる。これにより、上記のように任意に設定される係合開始設定トルクTsを実現するための軸方向解放推力Fpを算出することができ、ひいては、下記の数式(13)からこの軸方向解放推力Fpを実現するためのクラッチ解放油圧P(クラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧)を設定することができる。つまり、軸方向解放推力Fp、ひいてクラッチ解放油圧Pは、フロントカバー10にエンジン最大トルクTemaxが入力された場合でも出力軸トルクTが許容トルクTmaxより小さく、数式(11)の関係を満たすような任意の値に設定される。
Ts=μ・Fp・Rcl ・・・(12)
P=Fp/(π・Rcl) ・・・(13)
したがって、トルクコンバータ1は、クラッチ係合油圧室34の油圧がクラッチOFF油圧(相対的に小さな油圧)に設定され摩擦係合部32の非係合状態で、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態において、上記のようにして算出されるクラッチ解放油圧Pをクラッチ解放油圧室33に供給し、ロックアップピストン31として兼用される第2カムプレート42に作用させる解放押圧力を設定することで、トルクカム機構40が作動し摩擦係合部32をなす摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合が開始されるトルクを適正に設定することができ、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能を適正に設定することができる。つまり、解放押圧力発生部90は、出力軸50から出力されるトルクが伝達される動力伝達系ここでは変速機5での許容トルクに応じて解放押圧力が設定され、これにより、トルクコンバータ1は、動力伝達系ここでは変速機5の許容トルクに応じて解放押圧力、トルクリミット性能を設定でき、トルクコンバータ1の後段の動力伝達系ここでは変速機5に対する過剰なトルクの発生を制限することができる。また、トルクコンバータ1は、過剰トルクが出力されることを防止することができることから、過剰トルクにそなえて駆動系を必要以上に補強する必要がないので、トルクコンバータ1の製造コストを低減することができる。
ここで、トルクコンバータ1は、クラッチ係合油圧室34の油圧がクラッチOFF油圧(相対的に小さな油圧)に設定され摩擦係合部32の非係合状態で、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態において、係合開始設定トルクTs、軸方向解放推力(解放押圧力)Fp、ひいてクラッチ解放油圧Pを許容トルクTmaxなどに応じて予め定められた固定値で一定としておいてもよいが、例えば、車両2の運転状態などに応じて適宜変更することがより好適である。
本実施形態のトルクコンバータ1は、車両2の運転状態に応じて解放押圧力発生部90が発生させる解放押圧力を制御するECU70を備える。これにより、トルクコンバータ1は、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能を車両2の運転状態に応じて適正に設定でき、過剰トルクの抑制とトルク不足の抑制とを両立することができ、良好な発進性能(動力特性)を確保しつつ、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
ECU70は、油圧制御装置60を制御し、解放押圧力発生部90をなすクラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧であるクラッチ解放油圧Pを車両2の運転状態に応じて変えることで、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsを車両2の運転状態に応じて変える。
本実施形態のECU70は、車両2が搭載する動力源であるエンジン3の過給圧に応じてクラッチ解放油圧Pを変え、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsを変える。ここでは、ECU70は、エンジン回転数が相対的に低く過給圧が十分に作用していない運転状態であるときにはクラッチ解放油圧P、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsを相対的に大きくする一方、エンジン回転数が上昇し過給圧が十分に作用する運転状態になったらクラッチ解放油圧P、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsを相対的に小さくする。これにより、トルクコンバータ1は、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能をエンジン3の過給圧や過給の状態に応じて適正に設定でき、エンジン3の過給ダウンサイジング化により燃費の向上を図る場合であっても良好な発進性能(動力特性)を確保しつつ、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
すなわち、トルクコンバータ1は、エンジン回転数が低く過給圧が十分に作用せずエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に小さい場合、クラッチ解放油圧P、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsが大きな値に設定されることから、エンジン回転数Neが上昇しても、ポンプ伝達トルクTtiが係合開始設定トルクTsを超えず、軸方向係合推力(係合押圧力)Ftcと軸方向解放推力(解放押圧力)Fpとの関係が式(4)を満たさない。よって、トルクコンバータ1は、摩擦係合部32が非係合状態を維持することから、トルクコンバータ1のトルク比が最大で維持され、十分な発進トルクを発生させることができる。
一方、トルクコンバータ1は、エンジン回転数が上昇し過給圧が十分に作用するようになりエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に大きくなった場合、クラッチ解放油圧P、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsが許容トルクTmaxに応じた小さな値に設定されることから、エンジン回転数Neが上昇すると、ポンプ伝達トルクTtiが係合開始設定トルクTsを超えて、軸方向係合推力(係合押圧力)Ftcと軸方向解放推力(解放押圧力)Fpとの関係が式(4)を満たすようになる。よって、トルクコンバータ1は、摩擦係合部32が半係合状態となり、これに応じてトルクコンバータ1全体でのトルク比が最大トルク比より小さくなり、トルクの増幅が抑制されるので、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
なお、ECU70は、例えば、エンジン3の過給圧を計測、推定して、このエンジン3の過給圧に対してリニアにクラッチ解放油圧P、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsを変えるようにしてもよい。
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係るトルクコンバータ1の発進制御の一例を説明する。
ECU70は、車両2の車速やエンジン回転数など車両2の種々のセンサの検出結果に基づいて、発進制御の種々の公知の開始条件が成立することにより発進制御が開始されると、クラッチ係合油圧室34の油圧をクラッチOFF油圧(相対的に小さな油圧)に設定し摩擦係合部32を非係合状態とすると共に、カウンタNcに0を代入しこのカウンタNcをクリアする(S100)。
次に、ECU70は、アイドルスイッチがON状態であるか否かを判定する(S102)。アイドルスイッチは、例えばエンジン3のスロットル開度センサ71と兼用されており、ECU70は、アイドルスイッチとして兼用されるスロットル開度センサ71からアイドル制御ONのアイドル信号が出力されている場合(例えばスロットル開度が全閉状態である場合)にアイドルスイッチがON状態であると判定する。
ECU70は、アイドルスイッチがON状態でないと判定した場合(S102:No)、カウンタNcをインクリメントし、すなわち、カウンタNcに1を加算しカウンタNc+1をカウンタNcに代入する(S104)。
次に、ECU70は、カウンタNcが所定値Ntより小さいか否かを判定する(S106)。所定値Ntは、例えば、運転者によるアクセルペダルの踏み込み時点からエンジン3の過給圧が十分に作用する時点までの期間などに応じて予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて設定される。
ECU70は、カウンタNcが所定値Nt以上であると判定した場合(S106:No)、すなわち、エンジン回転数が上昇し過給圧が十分に作用するようになったと判定した場合、係合開始設定トルクTsをフロントカバー10にエンジン最大トルクTemaxが入力された場合でも出力軸トルクTと許容トルクTmaxとの関係が数式(11)の関係を満たすような任意の値、例えば、Ts=Temax/2に設定する(S108)。
次に、ECU70は、設定した係合開始設定トルクTsに基づいて数式(12)から軸方向解放推力(解放押圧力)Fpを算出し、この軸方向解放推力Fpに基づいて数式(13)からクラッチ解放油圧Pを算出し、このクラッチ解放油圧Pに基づいてクラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧を制御する(S110)。これにより、トルクコンバータ1は、エンジン回転数が上昇し過給圧が十分に作用するようになりエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に大きくなった場合、トルクコンバータ1全体でのトルク比が最大トルク比より小さくなり、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
次に、ECU70は、車両2の車速やエンジン回転数など車両2の種々のセンサの検出結果に基づいて、発進制御の種々の公知の終了条件が成立することにより発進制御が終了したか否かを判定し(S112)、発進制御が終了したと判定した場合(S112:Yes)、係合開始設定トルクTsを相対的に小さな値に設定しクラッチ解放油圧室33のクラッチ解放油圧PをクラッチON油圧(相対的に小さな油圧)、クラッチ係合油圧室34のクラッチ係合油圧をクラッチON油圧(相対的に大きな油圧)に設定し、この制御を終了する。ECU70は、発進制御が終了していないと判定した場合(S112:No)、S102に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU70は、S102にてアイドルスイッチがON状態であると判定した場合(S102:Yes)、クラッチ解放油圧室33のクラッチ解放油圧PをクラッチOFF油圧(相対的に大きな油圧)に制御し、軸方向解放推力(解放押圧力)Fpひいては係合開始設定トルクTsをエンジントルクTeと比較して相対的に大きな値に設定し(S114)、S112に移行する。これにより、トルクコンバータ1は、トルク比が最大トルク比で維持され、十分な発進トルクを発生させることができる。
ECU70は、S106にてカウンタNcが所定値Ntより小さいと判定した場合(S106:Yes)、すなわち、エンジン回転数が低く過給圧が十分に作用せずエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に小さいと判定した場合、そのままS112に移行する。これにより、トルクコンバータ1は、エンジン回転数が低く過給圧が十分に作用せずエンジン3が発生させるエンジントルクが相対的に小さい場合に、トルク比が最大トルク比で維持され、十分な発進トルクを発生させることができる。
なお、以上の説明では、ECU70は、係合開始設定トルクTsを設定し、この係合開始設定トルクTsに基づいて軸方向解放推力(解放押圧力)Fpを算出し、クラッチ解放油圧Pを算出するものとして説明したが、係合開始設定トルクTsや軸方向解放推力(解放押圧力)Fpを算出せずに、フロントカバー10にエンジン最大トルクTemaxが入力された場合でも出力軸トルクTと許容トルクTmaxとの関係が上記の式(11)の関係を満たすように予め設定されたクラッチ解放油圧Pそのものを用いるようにしてもよい。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ1によれば、フロントカバー10に伝達された動力を作動油を介して出力軸50に伝達可能な流体伝達機構20と、フロントカバー10に伝達された動力を一対の摩擦面である摩擦材35とフロントカバー内壁面36とが摩擦係合可能な摩擦係合部32を介して出力軸50に伝達可能なロックアップクラッチ機構30と、流体伝達機構20がフロントカバー10に入力されたトルクを増幅して出力軸50から出力する運転状態である場合に、流体伝達機構20を介して伝達されるトルクに応じて一対の摩擦面である摩擦材35とフロントカバー内壁面36とを摩擦係合させる係合押圧力を発生させるトルクカム機構40とを備える。
したがって、トルクコンバータ1は、流体伝達機構20がトルクを増幅して出力する運転状態において、トルクカム機構40が流体伝達機構20を介して伝達されるトルクに応じて係合押圧力を発生させることで、摩擦係合部32の摩擦係合状態が可変とされ、トルクコンバータ1全体での見かけ上のトルク比が可変とされるので、例えば、油圧制御系における応答遅れなどに影響されずに、機械的な構成により過剰なトルクの発生を抑制することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る流体伝達装置は、実施形態1に係る流体伝達装置と略同様の構成であるが解放押圧力発生部の構成が実施形態1に係る流体伝達装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す(以下の実施形態でも同様である。)。
本実施形態に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ201は、図7に示すように、解放押圧力発生部90を備える。本実施形態の解放押圧力発生部90は、上述したクラッチ解放油圧室33に加えて第1弾性部材としての板バネ部材291を含んで構成される。この解放押圧力発生部90は、クラッチ解放油圧室33の内部に供給される作動油の油圧と板バネ部材291の付勢力とにより解放押圧力を発生させる。
板バネ部材291は、板バネであり、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、クラッチ解放油圧室33として機能するクラッチ空間部B内に設けられる。すなわち、板バネ部材291は、軸方向に対してフロントカバー10のフロントカバー本体部11とロックアップピストン31としても兼用される第2カムプレート42との間に配置される。つまり、トルクコンバータ201は、軸方向に対して入力側から出力側に向かって、板バネ部材291、ロックアップピストン31として兼用される第2カムプレート42、第1カムプレート41の順番で配置されている。
そして、板バネ部材291は、径方向内側端部が固定部材292などを介してハブ51の外周面側に固定される一方、径方向外側端部がロックアップピストン31として兼用される第2カムプレート42の当接部31d(受圧面31bにおいてフロントカバー本体部11側に突起した部分)に当接し、第2カムプレート42(ロックアップピストン31)に付勢力を作用させる。板バネ部材291は、第2カムプレート42(ロックアップピストン31)に対して軸方向の入力側から出力側に向かう付勢力、すなわち、一対の摩擦面である摩擦材35とフロントカバー内壁面36とを離間させる方向の付勢力を作用させる。
この場合、解放押圧力発生部90が発生させる軸方向解放推力(解放押圧力)は、クラッチ解放油圧室33による軸方向油圧解放推力(油圧解放押圧力)Fpと板バネ部材291による付勢力に応じた軸方向バネ解放推力(バネ解放押圧力)Fbとの和となる。そして、トルクコンバータ201は、トルクカム機構40が発生させる軸方向係合推力Ftcに応じた係合押圧力と解放押圧力発生部90が発生させる軸方向解放推力に応じた推力、すなわち、軸方向油圧解放推力(油圧解放押圧力)Fp、軸方向バネ解放推力(バネ解放押圧力)Fbとの関係が下記の数式(14)の関係を満たすようになると、摩擦係合部32の摩擦係合が開始される。
Ftc−Fb−Fp>0 ・・・ (14)
そして、トルクコンバータ201では、係合開始設定トルクTsは例えば、下記の数式(15)で表すことができる。これにより、任意に設定される係合開始設定トルクTsを実現するための軸方向油圧解放推力(油圧解放押圧力)Fp、軸方向バネ解放推力(バネ解放押圧力)Fbを算出することができ、ひいては、クラッチ解放油圧P(クラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧)を設定することができる。
Ts=μ・(Fb+Fp)・Rcl ・・・(15)
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ201によれば、解放押圧力発生部90は、クラッチ解放油圧室33に加えてさらに、付勢力により解放押圧力を発生させる板バネ部材291を含んで構成される。したがって、トルクコンバータ201は、板バネ部材291の付勢力の分、ロックアップクラッチ機構30のOFF時の油圧、すなわち、クラッチ解放油圧室33のクラッチOFF油圧を相対的に小さくすることができ、例えば、油圧制御装置60が備えるポンプの負荷(仕事量)を低減できるので、燃費を向上することができる。また、トルクコンバータ201は、仮に油圧制御系に不具合が生じクラッチ解放油圧室33による軸方向油圧解放推力(油圧解放押圧力)Fpが作用不能になった場合であっても、トルクカム機構40に伝達されるトルクが小さいときには板バネ部材291の付勢力により摩擦係合部32を半係合状態にすることも可能であるので、所定以上のトルク比を維持することができ、ある程度の発進性能は確保することができる。その上で、トルクコンバータ201は、クラッチ解放油圧室33の油圧制御も併用できるので、解放押圧力、トルクリミット性能を運転状態に応じて適正に設定できる。
なお、以上で説明したトルクコンバータ201では、解放押圧力発生部90は、クラッチ解放油圧室33を含まず板バネ部材291のみによって構成されてもよい。この場合、トルクコンバータ201は、トルクカム機構40が発生させる軸方向係合推力Ftcに応じた係合押圧力と解放押圧力発生部90が発生させる軸方向解放推力に応じた推力、すなわち、軸方向バネ解放推力(バネ解放押圧力)Fbとの関係が下記の数式(16)の関係を満たすようになると、摩擦係合部32の摩擦係合が開始される。また係合開始設定トルクTsは、例えば、下記の数式(17)で表すことができる。
Ftc−Fb>0 ・・・ (16)
Ts=μ・Fb・Rcl ・・・(17)
この場合、トルクコンバータ201は、任意に設定される係合開始設定トルクTs、軸方向バネ解放推力Fbを許容トルクTmaxなどに応じて予め定められた固定値で一定としておけばよい。すなわち、係合開始設定トルクTs、軸方向バネ解放推力Fbは、フロントカバー10にエンジン最大トルクTemaxが入力された場合でも出力軸トルクTが許容トルクTmaxより小さく、数式(11)の関係を満たすような任意の値に予め設定されればよい。この場合であっても、トルクコンバータ201は、板バネ部材291の付勢力を適正に設定することで解放押圧力、トルクリミット性能を設定でき、また、例えば、油圧制御装置60が備えるポンプの負荷(仕事量)をさらに低減できるので、燃費をさらに向上することができる。またこの場合、トルクコンバータ201は、発進制御において、上述の図6で説明した係合開始設定トルクTsやクラッチ解放油圧Pの設定制御は不要であり、例えば、図8に示すような通常の発進制御でよく、このため、例えば製造コストを抑制することができる。
この場合、ECU70は、図8に示すように、例えば、スロットル開度センサ71(図1、図7参照、以下同様)、エンジン回転数センサ72、アクセル開度センサ73、油温センサ74、車速センサ75による種々の検出結果や変速機5から取得する現在選択されているギヤ段情報などに基づいて、エンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、アイドルスイッチ等のエンジン3の状態、現在選択されているギヤ段や作動油の油温等の変速機5の状態、車速等の車両2の状態を検出する(S200)。
次に、ECU70は、S200で検出した状態に基づいて、エンジン性能マップ、変速線マップ、ロックアップ線マップ等を用いてエンジン3や変速機5を含む車両2の状態を設定する(S202)。
そして、ECU70は、S202でロックアップクラッチ機構30がONに設定される指示があったか否かを判定し(S204)、ロックアップクラッチOFFと判定した場合(S204:No)、油圧制御装置60を制御して、クラッチ解放油圧室33のクラッチ解放油圧をクラッチOFF油圧(相対的に大きな油圧)に設定し、クラッチ係合油圧室34のクラッチ係合油圧をクラッチOFF油圧(相対的に小さな油圧)に設定して(S206)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
ECU70は、ロックアップクラッチONと判定した場合(S204:Yes)、油圧制御装置60を制御して、クラッチ解放油圧室33のクラッチ解放油圧をクラッチON油圧(相対的に小さな油圧)に設定し、クラッチ係合油圧室34のクラッチ係合油圧をクラッチON油圧(相対的に大きな油圧)に設定して(S208)、摩擦係合部32を完全係合状態として、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
なお、このトルクコンバータ201は、解放押圧力発生部90が板バネ部材291のみによって構成される場合であっても、例えば、電動アクチュエータなどにより板バネ部材291の付勢力を調節することで、係合開始設定トルクTs、軸方向バネ解放推力Fbを車両2の運転状態などに応じて適宜変更する構成としてもよい。
[実施形態3]
実施形態3に係る流体伝達装置は、実施形態1に係る流体伝達装置と略同様の構成であるがトルクカム部の構成が実施形態1に係る流体伝達装置とは異なる。
本実施形態に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ301は、図9、図10に示すように、トルクカム部としてのトルクカム機構340を備える。トルクカム機構340は、一対のカム部材としての第1カムプレート341及び第2カムプレート342と、第2弾性部材としてのバネ343と、センタ保持プレート344と、サイド保持プレート345とを有している。
ここで、本実施形態のロックアップクラッチ機構30が備えるロックアップピストン331は、トルクカム機構340のカム部材とは兼用されていない。本実施形態のロックアップピストン331は、タービンライナ22側に折れ曲がるようにして形成される径方向外側端部331eが連結部338を介してトルクカム機構340のセンタ保持プレート344の径方向外側端部344aに対して軸方向に相対移動可能で、かつ、このセンタ保持プレート344と一体回転可能に支持される。したがって、ロックアップピストン331は、このロックアップピストン331に伝達された動力をセンタ保持プレート344に伝達可能に連結されると共に、フロントカバー10に対しても軸方向に相対移動可能な構成となり、すなわち、フロントカバー10に対して軸方向に接近、離間可能な構成となる。また、ロックアップピストン331は、径方向内側端部331aがセンタ保持プレート344の径方向内側端部344cの外周面と対向して接触し軸方向に摺動自在に支持されると共に、径方向内側端部331aと径方向内側端部344cとの間にシール部材S1が配置されている。
トルクカム機構340は、軸方向に対して入力側から出力側に向かって、ロックアップピストン331、サイド保持プレート345、センタ保持プレート344、第1カムプレート341の順番で配置されており、センタ保持プレート344に第2カムプレート342とバネ343とが保持されている。
トルクカム機構340は、第1カムプレート341と第2カムプレート342とが出力軸50の回転軸線X周り方向、すなわち周方向に沿って相対変位可能かつ回転軸線X、すなわち軸方向に沿って相対移動可能な一対のカム部材をなす。第1カムプレート341と第2カムプレート342とは、流体伝達機構20を介してトルクが伝達されこれに伴って周方向に相対変位することで流体伝達機構20を介して伝達されるトルクに応じた係合押圧力を発生させるようにカム面341a、342aが形成されている。そして、トルクカム機構340は、複数のバネ343が第1カムプレート341と第2カムプレート342との相対変位の方向、すなわち、第1カムプレート341、第2カムプレート342の回転方向である周方向に沿って配置され、この第1カムプレート341と第2カムプレート342とに周方向に沿って所定の付勢力を作用させる。複数のバネ343は、第1カムプレート341と第2カムプレート342とを周方向に対して相互に離間させる方向に付勢力を作用させる。
具体的には、第1カムプレート341は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、タービンシェル22aの径方向内側端部がフランジ部材などと共に固定されている。これにより、フロントカバー10に伝達され流体伝達機構20で増幅されたトルクは、この第1カムプレート341に伝達される。
第2カムプレート342は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、一部分がセンタ保持プレート344の径方向外側端部344a近傍に形成されたカム保持部344b内に支持されている。カム保持部344bは、センタ保持プレート344に対して軸方向に対する貫通孔として形成される。第2カムプレート342は、センタ保持プレート344に対して周方向に相対変位不能かつ軸方向に相対移動可能にこのカム保持部344b内に支持されている。
センタ保持プレート344は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成される。センタ保持プレート344は、回転軸線Xと同軸の円筒状に形成された径方向内側端部344cが例えばスプライン嵌合部などの連結部353を介して出力軸50と接続され、この出力軸50と一体回転可能に支持される。これにより、センタ保持プレート344と出力軸50とは、相互に動力を伝達可能な構成となる。
サイド保持プレート345は、回転軸線Xと同軸の円環板状に形成され、例えば、リベット、スペーサなどを介して第1カムプレート341と一体化されている。第1カムプレート341とサイド保持プレート345とは、一体化された状態でセンタ保持プレート344に対して相対回転可能に設けられる。
したがって、第1カムプレート341と第2カムプレート342とは、軸方向に相対移動可能であり、すなわち、軸方向に接近、離間することができると共に、周方向に対して相対変位(回転)可能な構成となる。
そして、第1カムプレート341と第2カムプレート342とは、軸方向に対して互いに対向する面にそれぞれ所定の形状のカム面341a、342aが形成されている。カム面341a、342aは、上述の実施形態と同様に第1カムプレート341に伝達されたトルクに応じて第2カムプレート342が係合押圧力を発生させるようにその形状が決められている。なお、本実施形態のトルクカム機構340は、カムローラ43(図1参照)を備えておらずカム面341aとカム面342aとが直接当接する構成となっている。
また、トルクカム機構340は、第1カムプレート341と、センタ保持プレート344と、サイド保持プレート345とが、第1カムプレート341とサイド保持プレート345との間に周方向に沿って複数設けられるバネ343を保持する。第1カムプレート341は、周方向に沿って複数の第1サイド保持部341bが設けられ、センタ保持プレート344は、周方向に沿って複数の中心保持部344dが設けられ、サイド保持プレート345は、周方向に沿って複数の第2サイド保持部345aが設けられる。
複数のバネ343は、例えば、複数のコイルスプリングであり、それぞれ、第1サイド保持部341b、中心保持部344d、第2サイド保持部345aにより動力伝達可能に保持される。つまり、複数のバネ343は、第1カムプレート341、サイド保持プレート345とセンタ保持プレート344との間で相互に動力を伝達する。また、複数のバネ343は、これら第1サイド保持部341b、中心保持部344d、第2サイド保持部345aを介して第1カムプレート341と第2カムプレート342とを周方向に対して相互に離間させる方向に付勢力を作用させる。
上記のように構成されるトルクカム機構340は、ロックアップクラッチ機構30のON状態では、ロックアップピストン331に伝達されたトルク(動力)が連結部338にてセンタ保持プレート344に伝達され、径方向内側端部344cから出力軸50に伝達する。
また、トルクカム機構340は、ロックアップクラッチ機構30のOFF状態では、流体伝達機構20で増幅されたトルク(動力)がタービンライナ22から第1カムプレート341に伝達され、伝達されたトルクを第1サイド保持部341b、第2サイド保持部345aの周方向端部を介して各バネ343に伝達する。そして、トルクカム機構340は、各バネ343に伝達されたトルクを中心保持部344dの周方向端部を介してセンタ保持プレート344に伝達し径方向内側端部344cから出力軸50に伝達する。したがって、トルクカム機構340は、第1カムプレート341に伝達されたトルクを各バネ343を介して出力軸50に伝達することができる。
このとき、各バネ343は、カム面341aとカム面342aとの間隔が狭くなる方向のトルクが第1カムプレート341と第2カムプレート342との間に作用すると、第1カムプレート341の第1サイド保持部341b、サイド保持プレート345の第2サイド保持部345aの周方向端部とセンタ保持プレート344の中心保持部344dの周方向端部との間に保持されつつ、伝達されるトルクの大きさに応じて弾性変形する。すなわち、図10に例示するように、各バネ343の周方向に沿った長さは、伝達されるトルクが大きくなるにしたがって、言い換えれば、第1カムプレート341と第2カムプレート342との相対変位が大きくなるにしたがって、L1からL2を経てカム面341aとカム面342aとが当接するL3(L1>L2>L3)まで変化する。
つまり、トルクカム機構340は、流体伝達機構20で増幅されたトルクがタービンライナ22から第1カムプレート341に伝達され、伝達されたトルクに応じて各バネ343の付勢力に抗して第1カムプレート341と第2カムプレート342とが周方向に沿って相対変位(相対回転)する。トルクカム機構340は、伝達されたトルクが各バネ343の付勢力に応じた所定のトルクより大きくなると、カム面341aとカム面342aとの間に位相差が生じ、カム面341aとカム面342aとが当接することで第1カムプレート341と第2カムプレート342とが相互に一体化される。この結果、トルクカム機構340は、第1カムプレート341に伝達されたトルク(動力)を第2カムプレート342に伝達することができる。
そして、トルクカム機構340は、第1カムプレート341から第2カムプレート342に対して軸方向係合推力(係合押圧力)Ftcが作用する。トルクカム機構340は、流体伝達機構20で増幅されたトルクが第1カムプレート341に伝達され、第1カムプレート341と第2カムプレート342とが各バネ343の付勢力に打ちかって周方向に相対変位することで、この第1カムプレート341に伝達されたトルクをカム面341a、342aの形状に応じて第1カムプレート341と第2カムプレート342とが軸方向に離間する方向の力に変換する。そして、トルクカム機構340は、軸方向係合推力Ftcに応じた係合押圧力を第2カムプレート342からロックアップピストン331を介して摩擦係合部32に作用させる。そして、トルクコンバータ301は、トルクカム機構340による係合押圧力が解放押圧力発生部90によって発生される解放係合力より大きくなると摩擦係合部32の摩擦係合が開始される。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ301によれば、トルクカム機構340は、出力軸50の回転軸線X周り方向、すなわち周方向に沿って相対変位可能かつ回転軸線Xに沿って相対移動可能な一対のカム部材であって流体伝達機構20を介してトルクが伝達され相対変位することで流体伝達機構20を介して伝達されるトルクに応じた係合押圧力を発生させるようにカム面341a、342aが形成された一対のカム部材としての第1カムプレート341及び第2カムプレート342と、周方向に沿って第1カムプレート341と第2カムプレート342とに付勢力を作用させるバネ343とを有する。
したがって、トルクコンバータ301は、バネ343の付勢力を設定することでトルクカム機構340が作動し摩擦係合部32の摩擦係合が開始されるトルクを適正に設定することができ、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能を適正に設定することができる。バネ343の付勢力は、出力軸50から出力されるトルクが伝達される動力伝達系での許容トルクに応じて適正な係合開始設定トルクTsが設定されるように予め設定される。また、トルクコンバータ301は、第1カムプレート341、第2カムプレート342の回転方向に沿って配置されるバネ343の付勢力を設定することでトルクリミット性能を設定することができることから、トルクカム機構340の作動開始精度を向上することができ、トルクリミット性能の精度を向上することができる。また、トルクコンバータ301は、トルクカム機構340が作動し摩擦係合部32をなす摩擦材35とフロントカバー内壁面36との摩擦係合が開始されるまでは各バネ343がいわゆるダンパースプリングとして機能することから、各バネ343が振動を吸収することで、こもり音などの振動を低減することができ、静粛性を向上することができる。
[実施形態4]
実施形態4に係る流体伝達装置は、実施形態1に係る流体伝達装置と略同様の構成であるが動力源の状態に応じて解放押圧力を変える点で実施形態1に係る流体伝達装置とは異なる。なお、実施形態4に係る流体伝達装置の各構成については、図1等を参照する。
本実施形態に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ401は、ECU70が動力源であるエンジン3の状態に応じて解放押圧力を変える。ECU70は、フロントカバー10に伝達されるトルク、すなわち、動力源であるエンジン3が発生させる実際のエンジントルクに応じて解放押圧力を変える。ここでは、ECU70は、係合開始設定トルクTsとして固定値を用いるのではなく、エンジン3が発生させる実際のエンジントルクに応じてこの係合開始設定トルクTsを設定し、軸方向解放推力Fp、クラッチ解放油圧Pを制御する。
次に、図11のフローチャートを参照して、本実施形態に係るトルクコンバータ401の発進制御の一例を説明する。なお、ここでも実施形態1のトルクコンバータ1と同様なステップについてはその説明をできるだけ省略する。
ECU70は、カウンタNcをインクリメントした後(S104)、スロットル開度センサ71、エンジン回転数センサ72、アクセル開度センサ73による種々の検出結果に基づいて、エンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、アクセル踏み込み時間(例えば、カウンタNcの値)等のエンジン3の状態を検出する(S406)。
次に、ECU70は、記憶部(不図示)に記憶されている多数のエンジントルクマップ(不図示)の中からS406で検出したエンジン3の状態に応じたエンジントルクマップを選定し、このエンジントルクマップに基づいて、エンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、アクセル踏み込み時間に応じた過給圧などから種々の公知の手法で現在の実際のエンジントルクを算出(推定)する(S407)。
そして、ECU70は、S407で算出した実際のエンジントルクに基づいて、この実際のエンジントルクがフロントカバー10に入力された場合でも出力軸トルクTと許容トルクTmaxとの関係が数式(11)の関係を満たすような係合開始設定トルクTsを設定し(S408)、設定した係合開始設定トルクTsに基づいて、軸方向解放推力Fp、クラッチ解放油圧Pを算出し、このクラッチ解放油圧Pに基づいてクラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧を制御する(S110)。
図12は、本実施形態のトルクコンバータ401と比較例との発進時動力性能を比較する図であり、横軸をエンジン回転数、縦軸をトルク(出力軸50に生じるトルク)としている。図12中、実線(太実線)L1は過給ダウンサイジング化されたエンジン3に本実施形態のトルクコンバータ401を適用した場合の発進時動力性能、実線(細実線)Lds1−0は過給ダウンサイジング化されたエンジン3において過給圧が十分に作用しておらずかつトルクコンバータによるトルク増幅効果がない場合の発進時動力性能、一点鎖線(細一点鎖線)Lds2−0は過給ダウンサイジング化されたエンジン3において過給圧が十分に作用しておりかつトルクコンバータによるトルク増幅効果がない場合の発進時動力性能、点線(太点線)Lna1−0は排気量が相対的に大きく設定された従来のNAエンジンにおいてトルクコンバータによるトルク増幅効果がない場合の発進時動力性能、点線(細点線)Lds1−1は過給ダウンサイジング化されたエンジン3において過給圧が十分に作用しておらずかつトルクコンバータにより相対的に小さなトルク比でトルク増幅される場合の発進時動力性能、点線(細点線)Lds1−2は過給ダウンサイジング化されたエンジン3において過給圧が十分に作用しておらずかつトルクコンバータにより相対的に大きなトルク比でトルク増幅される場合の発進時動力性能、二点鎖線Lds2−1は過給ダウンサイジング化されたエンジン3において過給圧が十分に作用しておりかつトルクコンバータにより相対的に大きなトルク比でトルク増幅される場合の発進時動力性能、一点鎖線(太一点鎖線)Lna1−1は排気量が相対的に大きく設定された従来のNAエンジンにおいてトルクコンバータにより相対的に小さなトルク比でトルク増幅される場合の発進時動力性能を示している。また、図12中、実線(細実線)e1は速度比e=0でのトルクコンバータ401の特性、実線(細実線)e2は速度比e=0.5でのトルクコンバータ401の特性、実線(細実線)e3は速度比e=0.7でのトルクコンバータ401の特性、実線(細実線)e4は速度比e=0.9でのトルクコンバータ401の特性、点線(細点線)Tmaxは許容トルクを示している。
図12からも明らかのように、本実施形態のトルクコンバータ401が適用された車両2においては、出力軸50に生じるトルクが許容トルクTmax以下の範囲で相対的に大きくなっており、高い動力性能を発揮している。なお、トルクコンバータ401が適用された車両2においては、低回転域にて出力軸50に生じるトルクが従来のNAエンジンに相対的に小さなトルク比に設定されたトルクコンバータを適用した車両などと比較して相対的に小さくなっているが、上述のように流体伝達機構20のトルク容量係数Cが相対的に小さく設定されることでエンジン回転数が素早く上昇し早期に吸気通路に過給圧が作用するので、実際には発進からの時間経過に伴った駆動トルクの上昇は本実施形態のトルクコンバータ401が適用された車両2の方が相対的に大きくなり、すなわち、発進性能が向上する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ401によれば、ECU70は、フロントカバー10に伝達されるトルクに応じて解放押圧力を変える。したがって、トルクコンバータ401は、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能をフロントカバー10に伝達されるトルク、言い換えれば、エンジン3が発生させるエンジントルクに応じて適正に設定でき、例えば、エンジントルクの変動に応じて最適な発進性能(動力特性)を確保しつつ、過剰なトルクの発生を抑制することができる。
[実施形態5]
実施形態5に係る流体伝達装置は、実施形態4に係る流体伝達装置と略同様の構成であるがさらに変速機の状態に応じて解放押圧力を変える点で実施形態4に係る流体伝達装置とは異なる。なお、実施形態5に係る流体伝達装置の各構成については、図1等を参照する。
本実施形態に係る流体伝達装置としてのトルクコンバータ501は、ECU70が動力伝達系ここでは変速機5の状態に応じて解放押圧力を変える。以上で説明した動力伝達系、ここでは変速機5の許容トルクTmaxは、複数のギヤ段(変速段)を有する有段変速機であれば現在選択されているギヤ段、無段変速機であれば現在の変速比、あるいは、変速機5の油温などに応じて変わる可能性がある。ここでは、変速機5の許容トルクTmaxは、例えば、予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて、変速機5で許容できるトルクとして、各ギヤ段(あるいは変速比)や油温などに応じてそれぞれ設定されている。本実施形態のECU70は、変速機5の状態、例えば、現在選択されているギヤ段や油温に応じて許容トルクTmaxを算出し、これに応じてこの係合開始設定トルクTsを設定し、軸方向解放推力Fp、クラッチ解放油圧Pを制御する。
なお、本実施形態のECU70は、過給圧が十分に作用している場合のエンジントルクマップと、過給圧が全く作用していない場合のエンジントルクマップとの2つのエンジントルクマップ(不図示)に基づいて、この二つの間の過渡期の運転状態におけるエンジントルクを補間して現在の実際のエンジントルクを算出(推定)しており、これによりECU70の記憶部に記憶させておくデータ量を抑制している。
次に、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係るトルクコンバータ501の発進制御の一例を説明する。
ECU70は、カウンタNcをインクリメントした後(S104)、例えば下記の数式(18)に基づいて、現在の実際のエンジントルクを算出(推定)する(S506)。数式(18)において、「Te」はエンジントルク、「Tea」は過給圧が十分に作用している場合のエンジン回転数に応じたエンジントルクであり記憶部(不図示)に記憶されている過給作用時エンジントルクマップに基づいてエンジン回転数センサ72が検出する現在のエンジン回転数から算出される過給作用時エンジントルク、「Teb」は過給圧が十分に作用してない場合のエンジン回転数に応じたエンジントルクであり記憶部(不図示)に記憶されている過給不作用時エンジントルクマップに基づいてエンジン回転数センサ72が検出する現在のエンジン回転数から算出される過給不作用時エンジントルク、「Nc」は現在のカウンタの値、「Nt」は運転者によるアクセルペダルの踏み込み時点からエンジン3の過給圧が十分に作用する時点までの期間などに応じて予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて設定される所定値を表している。
Te=Teb+(Nc/Nt)・(Tea−Teb) ・・・ (18)
次に、ECU70は、例えば、油温センサ74による種々の検出結果や変速機5から取得する現在選択されているギヤ段情報などに基づいて、現在選択されているギヤ段、変速機5の油温等の変速機5の状態を検出し(S507)、S507で検出した変速機5の状態に基づいて、変速線マップ、ロックアップ線マップ等を読み込んで変速機5の状態を設定する(S508)。
そして、ECU70は、S507、S508で検出、設定された変速機5の状態に応じて許容トルクTmaxを設定し、S506で算出した実際のエンジントルクに基づいて、この実際のエンジントルクがフロントカバー10に入力された場合でも出力軸トルクTと上記で設定された許容トルクTmaxとの関係が数式(11)の関係を満たすような係合開始設定トルクTsを設定し(S509)、設定した係合開始設定トルクTsに基づいて、軸方向解放推力Fp、クラッチ解放油圧Pを算出し、このクラッチ解放油圧Pに基づいてクラッチ解放油圧室33に供給される作動油の油圧を制御する(S110)。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトルクコンバータ501によれば、ECU70は、出力軸50から出力されるトルクが伝達される動力伝達系である変速機5の状態に応じて解放押圧力を変える。したがって、トルクコンバータ501は、過剰なトルクの発生を制限するトルクリミット性能を変速機5の状態に応じて適正に設定でき、例えば、現在選択されているギヤ段や油温の変化など変速機5の状態の変化に応じて最適な発進性能(動力特性)を確保しつつ、より確実に過剰なトルクの発生を抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る流体伝達装置は、上述した実施形態に限定されず、請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る流体伝達装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上で説明した流体伝達装置は、摩擦係合部32をなす摩擦面の面積を相対的に大きくしたり多板化したりするなどして、この摩擦係合部32の熱耐久性を向上させる構成を備えているとよい。
以上で説明した制御部は、動力伝達系の状態、動力源の状態などの他に、例えば、流体伝達部、ロックアップクラッチ部、トルクカム部などを搭載する車両が位置する路面の傾斜角度、車両の舵角などに応じて解放押圧力を変えるようにしてもよい。この場合、流体伝達装置は、車両が位置する路面の傾斜角度、車両の舵角などに応じて最適な発進性能(動力特性)を確保しつつ、より確実に過剰なトルクの発生を抑制することができる。
以上のように、本発明に係る流体伝達装置は、過剰なトルクの発生を抑制することができるものであり、動力源が発生する動力を作動流体を介して伝達可能である種々の流体伝達装置に用いて好適である。
1、201、301、401、501 トルクコンバータ(流体伝達装置)
2 車両
3 エンジン(動力源、内燃機関)
5 変速機(動力伝達系)
10 フロントカバー(入力部材)
20 流体伝達機構(流体伝達部)
30 ロックアップクラッチ機構(ロックアップクラッチ部)
32 摩擦係合部
33 クラッチ解放油圧室(解放油圧室)
35 摩擦材(摩擦面)
36 フロントカバー内壁面(摩擦面)
40、340 トルクカム機構(トルクカム部)
41a、42a、341a、342a カム面
41、341 第1カムプレート(カム部材)
42、342 第2カムプレート(カム部材)
50 出力軸(出力部材)
70 ECU(制御部)
291 板バネ部材(第1弾性部材)
343 バネ(第2弾性部材)
X 回転軸線

Claims (11)

  1. 入力部材に伝達された動力を作動流体を介して出力部材に伝達可能な流体伝達部と、
    前記入力部材に伝達された動力を一対の摩擦面が摩擦係合可能な摩擦係合部を介して前記出力部材に伝達可能なロックアップクラッチ部と、
    前記流体伝達部が前記入力部材に入力されたトルクを増幅して前記出力部材から出力する運転状態である場合に、前記流体伝達部を介して伝達されるトルクに応じて前記一対の摩擦面を摩擦係合させる係合押圧力を発生させるトルクカム部とを備えることを特徴とする、
    流体伝達装置。
  2. 前記トルクカム部は、前記流体伝達部を介して相対的に大きなトルクが伝達される場合に相対的に大きな前記係合押圧力を発生させ、前記流体伝達部を介して相対的に小さなトルクが伝達される場合に相対的に小さな前記係合押圧力を発生させる、
    請求項1に記載の流体伝達装置。
  3. 前記一対の摩擦面に対して前記係合押圧力が作用する方向とは逆方向に向かって作用し当該一対の摩擦面の摩擦係合を解放させる解放押圧力を発生させる解放押圧力発生部を備える、
    請求項1又は請求項2に記載の流体伝達装置。
  4. 前記解放押圧力発生部は、内部に供給される前記作動流体の圧力により前記解放押圧力を発生させる解放油圧室を含んで構成される、
    請求項3に記載の流体伝達装置。
  5. 前記解放押圧力発生部は、付勢力により前記解放押圧力を発生させる第1弾性部材を含んで構成される、
    請求項3又は請求項4に記載の流体伝達装置。
  6. 前記解放押圧力発生部は、前記出力部材から出力されるトルクが伝達される動力伝達系での許容トルクに応じて前記解放押圧力が設定される、
    請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の流体伝達装置。
  7. 前記流体伝達部、前記ロックアップクラッチ部及びトルクカム部を搭載した車両の運転状態に応じて前記解放押圧力発生部が発生させる前記解放押圧力を制御する制御部を備える、
    請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の流体伝達装置。
  8. 前記制御部は、前記入力部材に伝達されるトルクに応じて前記解放押圧力を変える、
    請求項7に記載の流体伝達装置。
  9. 前記入力部材に伝達される動力を発生させる動力源は、過給機が排気ガスを利用して吸気通路の吸入空気の圧力を上昇させ過給を行う内燃機関であり、
    前記制御部は、前記過給圧に応じて前記解放押圧力を変える、
    請求項7又は請求項8に記載の流体伝達装置。
  10. 前記制御部は、前記出力部材から出力されるトルクが伝達される変速機の状態に応じて前記解放押圧力を変える、
    請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の流体伝達装置。
  11. 前記トルクカム部は、前記出力部材の回転軸線周り方向に沿って相対変位可能かつ前記回転軸線に沿って相対移動可能な一対のカム部材であって前記流体伝達部を介してトルクが伝達され前記相対変位することで前記流体伝達部を介して伝達されるトルクに応じた前記係合押圧力を発生させるようにカム面が形成された一対のカム部材と、前記回転軸線周り方向に沿って前記一対のカム部材に付勢力を作用させる第2弾性部材とを有する、
    請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の流体伝達装置。
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