JP5181380B1 - 光学多層膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い環境温度において照射される青色レーザを含む紫外域の光に対して高い耐性を付与する光学多層膜を提供する。
【解決手段】プラスチック基板上に形成された光学多層膜であって、該光学多層膜のそれぞれの層は酸化物または酸窒化物から形成され、隣接する層は屈折率の異なる材料から形成され、酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は−0.9ボルト以下であり、該基板に接する第1の層の厚さは10ナノメータ以上で、該基板の材料と第1の層を形成する材料との波長400ナノメータにおける屈折率の差は0.2以下であり、隣接する層を形成する2種類の材料の波長400ナノメータにおける屈折率の差が0.45以下であり、該光学多層膜の全体の厚さが3000ナノメータ以下であるように構成された光学多層膜である。
【選択図】図1

Description

本発明は、高い環境温度において照射される青色レーザを含む紫外域の光に対して高い耐性を付与する光学多層膜に関する。
一般的に、プラスチックは、300ナノメータ未満の波長の光に対しては、透過率が著しく低下するので光学素子の材料として使用することができない。また、450ナノメータを超える波長の光に対しては、光によるプラスチックの劣化は小さく問題とならない。そこで、波長が300ナノメータから450ナノメータの光に対するプラスチックの耐性が重要な問題となる。本明細書において、波長が300ナノメータから450ナノメータの光を青色レーザを含む紫外域の光とも呼称する。
プラスチックは、波長が300ナノメータから450ナノメータの光による損傷を受けやすく、光に対する耐性が低い。そこで、従来、青色レーザを含む紫外域の光を使用する光学装置においては、ガラスから構成される光学素子が主に使用されていた。
他方、光学装置に使用される光学素子の表面に、反射防止などを目的とした光学多層膜が形成されることが多い。そこで、プラスチックからなる基板上に青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性を付与する光学多層膜を備えた光学素子を製造する方法が開発されている(特許4178190号)。しかし、高い環境温度において照射される青色レーザを含む紫外域の光に対して高い耐性を付与する光学多層膜は開発されていない。
特許4178190号公報
したがって、高い環境温度において照射される青色レーザを含む紫外域の光に対して高い耐性を付与する光学多層膜に対するニーズがある。
本発明の第1の態様による光学多層膜は、プラスチック基板上に形成された光学多層膜であって、該光学多層膜のそれぞれの層は酸化物または酸窒化物から形成され、隣接する層は屈折率の異なる材料から形成され、酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は−0.9ボルト以下であり、該基板に接する第1の層の厚さは10ナノメータ以上で、該基板の材料と第1の層を形成する材料との波長400ナノメータにおける屈折率の差は0.2以下であり、隣接する層を形成する2種類の材料の波長400ナノメータにおける屈折率の差が0.45以下であり、該光学多層膜の全体の厚さが3000ナノメータ以下であるように構成された光学多層膜である。
本態様による光学多層膜によれば、青色レーザを含む紫外域の光による化学反応を抑えることができ、光学素子の青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性を向上させることができる。
本発明の第1の態様の第1の実施形態による光学多層膜は、光学多層膜を形成する材料のうち最も屈折率が高い材料が、アルミニウム、ランタン、ガドリニウム、ジルコニウム、カルシウム、セリウム、ユウロピウム、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、イットリウム及びイッテルビウムのいずれかを含む。
本発明の第1の態様の第2の実施形態による光学多層膜は、前記第1の層を形成する材料が、ケイ素またはアルミニウムを含む。
本発明の第1の態様の第3の実施形態による光学多層膜は、2種類の材料から形成されている。
本発明の第1の態様の第4の実施形態による光学多層膜は、3種類の材料から形成されている。
本発明の第1の態様の第5の実施形態による光学多層膜は、全体の厚さが240ナノメータ以上であるように構成されている。
本発明の第2の態様による光学多層膜は、プラスチック基板上に形成された光学多層膜であって、該光学多層膜のそれぞれの層は酸化物または酸窒化物から形成され、隣接する層は屈折率の異なる材料から形成され、酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は−0.9ボルト以下であり、該基板に接する第1の層の厚さは10ナノメータ以上で、該基板の材料と第1の層を形成する材料との波長400ナノメータにおける屈折率の差は0.2以下であり、隣接する層を形成する2種類の材料の波長400ナノメータにおける屈折率の差が0.45以下であり、該光学多層膜の全体の厚さが3000ナノメータ以下であるように構成され、75℃の環境温度において照射される300乃至450ナノメータの波長の光に対する耐性を付与する光学多層膜である。
本態様による光学多層膜によれば、光学素子に、75℃の環境温度において照射される300乃至450ナノメータの波長の光に対する耐性を付与することができる。
基板上に形成された光学多層膜の構成を示す図である。 本発明の一実施形態による反射防止用光学多層膜の設計方法を説明するための流れ図である。 イオンプレーティング法を実施するためのイオンプレーティング装置の構成を示す図である。 元素の酸化還元電位と反応速度との関係を概念的に示した図である。 光学多層膜を構成する酸化物または酸窒化物の内、二酸化ケイ素以外の酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。 第1の層を構成する材料及び基板の材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。 光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。 光学多層膜の全体の厚さ(総膜厚)と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。
図1は、基板上に形成された光学多層膜の構成を示す図である。プラスチックの基板101上に2種類以上の材料から構成される複数の層103、105、107、109及び111が形成される。屈折率の異なる2種類以上の材料を使用する光学多層膜によって光の干渉が生じる。この光の干渉を利用して、光学多層膜の透過率または反射率を適切に制御して反射防止用光学多層膜、光学フィルタ用光学多層膜、反射用光学多層膜などを実現することができる。
図1において、光学多層膜の層の数はL個である。層の数の決め方については後で説明する。一般的に、光学素子に使用されるこのような光学多層膜の全体の厚さは、3000ナノメータ以下であれば、光学多層膜が形成される光学素子の他の光学特性への影響は問題とならない。
図2は、本発明の一実施形態による反射防止用光学多層膜の設計方法を説明するための流れ図である。本実施形態において反射防止用光学多層膜を例として説明するが、光学フィルタ用光学多層膜、反射用光学多層膜などについても同様に設計することができる。
図2のステップS010において、複数の材料の種類を定める。材料の種類の定め方については後で説明する。
図2のステップS020において、反射防止機能を満足するように各層の厚さ及び層数を定める。
図1において、基板101の屈折率をn(s)、層103の屈折率をn(1)、層105の屈折率をn(2)とし、一般的に基板側からj番目の層の屈折率をn(j)とする。また、基板側からj番目の層の厚さをd(j)とする。光学多層膜に対して波長λの光を入射角度θで入射した場合の光学特性は以下の特性マトリクスで表すことができる。図1において、光学多層膜の入射光、反射光及び透過光をI、R及びTで示す。
M=M(L)・M(L-1)・・・M(j )・・・M1
Mは2×2のマトリクスであり、各層のマトリクスも2×2のマトリクスとなる。ここでM(j )はj 層目のマトリクスを意味し、
Figure 0005181380
と表すことができる。ここで、
δ(j )=(2π/λ)・(n(j )・d(j )・cosθ(j )
である。Lは、上述のように光学多層膜の層数である。ただし、
λ: 入射光の波長
n(s): 基板の屈折率
n(m): 媒質の屈折率
n(j): j層の材料の屈折率
d(j): j層の膜厚
θ(j): j層への光の入射角
とする。
また、この時の反射率(R)および透過率(T)は以下の式で求めることができる。
Figure 0005181380
ここで、光学多層膜を設計する際には使用する波長と光の入射角度、および光学特性仕様(反射率、透過率)は要求仕様で決まる。そこで、光学多層膜の設計では上記の理論を基にして、要求仕様から要求光学特性(反射率、透過率) を満足するように各層を構成する複数の材料の種類を定め、各層の厚さ及び層数を求める。
上記の反射率の式から明らかなように、反射防止用光学多層膜の反射率を小さくするには屈折率の異なる2種類の層を交互に重ねるのが構造の簡単さから有利である。
図2のステップS030において、反射防止機能は満足されるかどうか判断する。満足されればステップS040に進む。満足されていなければ、ステップS010に戻る。
図2のステップS040において、青色レーザを含む紫外域のレーザに対して所定の耐性を有するように層数などを調整する。
本発明による光学多層膜は、青色レーザを含む紫外域のレーザに対して所定の耐性を有するように形成する。したがって、所望の反射防止機能を有することに加えて、青色レーザを含む紫外域のレーザに対して所定の耐性を有するように光学多層膜を形成する必要がある。
一般的に、反射防止用光学多層膜において、光学多層膜の種類を定めて層数を増加しても設計の最適化を行うことにより反射防止機能には著しい影響を及ぼさない。また、レーザ耐性は、反射防止用光学多層膜の全体の厚さ(総膜厚)が大きいほど向上する。したがって、層数を増加することによってレーザ耐性を増加させることができる。
図2のステップS050において、成膜条件を定め成膜を実施する。成膜方法については後で説明する。
図2のステップS060において、レーザ耐性は満足されるかどうか判断する。レーザ耐性が満足されれば処理を終了する。レーザ耐性が満足されなければステップS010に戻る。レーザ耐性が満足されるかどうかは、実際にレーザ照射試験を行ってレーザ照射前後の透過波面収差の変化量を測定により求めてもよい。あるいは、層を構成する材料の種類及び厚さを変化させた種々の標準的な光学多層膜を定めて予めレーザ照射前後の透過波面収差の変化量を測定しておき、これらの測定値から推定するようにしてもよい。
ここで、成膜方法、すなわち、多層膜の形成方法について説明する。多層膜は、イオンプレーティング法やスパッタリング法などの真空薄膜形成法により形成するのが好ましい。真空薄膜形成法により形成された多層膜は緻密性が高く、光に対する耐性も向上する。本明細書では一例としてイオンプレーティング法について説明する。なお、多層膜は、同じ性質を有するものであれば他の製法で製造してもよい。
図3は、イオンプレーティング法を実施するためのイオンプレーティング装置の構成を示す図である。イオンプレーティング装置は、たとえば、特公平1-48347号に開示されている。真空チャンバ412内に、基材408を支持する導電性部材からなる基材ホルダ407と、絶縁部材を介して基材ホルダを支持する導電性部材からなる支持部材とによりコンデンサ406が構成される。
真空チャンバ412と基材ホルダ407との間には、ブロッキングコンデンサ403およびマッチングボックス402を介して高周波電源401が接続され、高周波電圧が供給されている。真空チャンバ412と基材ホルダ407との間には、基材ホルダ407側が陰極となるように、チョークコイル405を介して直流電源404が接続され、直流バイアス電圧が供給されている。一例として、高周波電源401の出力は、500W、直流電源404の電圧は、100Vである。
高周波電源401の出力は、300−900Wであるのが好ましい。この範囲で、出力の値を調整することにより、膜の緻密性を高めることができる。
コンデンサ406が、チャンバ412内に高周波電圧を供給する高周波電源401に接続されたマッチングボックス402とともに動作してマッチングを行うようにすることにより、抵抗加熱ボード410上の蒸発材料409と基材408との間に安定した電界を形成し維持することができる。この結果、基材408の表面に、高純度・高密度・高密着な薄膜を成膜することができる。
抵抗加熱ボード410を含むるつぼの下部には、電子ビーム加熱のための電子銃4101が設置されている。
また、成膜の際、真空チャンバ412内に、図示しないバルブにより酸素やアルゴンなどの雰囲気ガスを導入する。一例として酸素を導入する場合に、酸素導入圧力設定とは、チャンバの酸素圧力の設定である。酸素分圧値は3.0×10-3〜5.0×10-2Paの範囲内であるのが好ましい。酸素分圧値を上記の範囲で調整することにより、後に説明する光学素子の光透過率変化量を適切な値とすることができる。真空チャンバ412内のガスは、排気口411から排気される。
複数種類の蒸発材料409をプラスチックの基板408上に順次成膜させることにより多層膜を形成する。成膜の際に、高周波電圧及び雰囲気ガス圧力を適切に設定することにより緻密性の高い膜を形成することができる。雰囲気ガス圧力の設定値については後で具体的に示す。
ここで、多層膜を構成する複数の材料の種類の定め方について説明する。本願は発明者の新たな知見によれば、多層膜を構成する複数の材料の性質、特に屈折率により多層膜の青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性が大きく変化する。したがって、多層膜を構成する複数の材料の性質、特に屈折率を考慮しながら、多層膜の青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性をできるだけ大きくするように多層膜を構成する複数の材料の種類を定める。このように、本願発明者は、多層膜の反射率や透過率などの光学的特性の観点からではなく、多層膜の光に対する耐性の観点から多層膜を構成する材料の屈折率に着目したものであり、この点において上記の本願発明者による知見は、全く新たなものである。
表1乃至11は、反射防止機能を有するように、隣接する層が屈折率の異なる材料から形成された光学多層膜1乃至11の構成及び代表的な成膜条件を示す表である。光学多層膜2の基板は、ガラスである。その他の10個の光学多層膜の基板は、プラスチック(シクロオレフィンポリマー)である。光学多層膜1乃至8は、屈折率の異なる2種類の材料の層を交互に重ねた構造を有する。光学多層膜9乃至11は、3種類の材料の層を重ねた構造を有する。光学多層膜1乃至11において、最も低い屈折率の材料は、二酸化ケイ素(SiO)である。最も低い屈折率の材料としては、二酸化ケイ素の代わりに一酸化ケイ素または、SixAlyOz(x、y、zは正の数)などの二酸化ケイ素を含む混合材料を使用してもよい。
表1乃至11において、屈折率は波長400nmにおけるものであり、1.5未満を低屈折率、1.5以上かつ1.9未満を中屈折率、1.9以上を高屈折率に分類した。基板の材料であるガラスの屈折率は、波長400nmにおいて1.52であり、基板の材料であるシクロオレフィンポリマーの屈折率は、波長400nmにおいて1.52である。
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
Figure 0005181380
表12は、光学多層膜1乃至11の、青色レーザを含む紫外域のレーザに対する耐性を示す表である。レーザに対する耐性の指標としては、所定の条件でレーザを照射し、その前後の透過波面収差を測定しその変化量を求めた。表12及び以下の表において、波面収差は1波長の1/1000を単位(mλ)として標準偏差で表す。また、表12において、LaxAlyOzのx、y、zは正の数を表す。
Figure 0005181380
表13は、上記の所定のレーザ照射条件を示す表である。ここでは、波長405nmのレーザを、多層膜表面におけるエネルギ密度が60mW/mmとするような状態で、75℃の環境温度で1000時間照射した。この時の積算光量は60Whrである。積算光量のこの値は、通常の用途の光学素子の耐性を考慮する場合に十分に大きな値である。
なお、300ナノメータ乃至450ナノメータの波長範囲の光に対しても同様の結果が得られた。
ここで、照射試験環境温度について説明する。たとえば、表13に示したレーザ照射条件で照射を行った場合に、表12の膜No.1の多層膜を備えた光学素子の60whr後の波面収差変化量は37mλである。ここで、表13に示したレーザ照射条件のうち、照射試験環境温度のみを25℃に変更して照射試験を行った場合に、膜No.1の多層膜を備えた光学素子の60whr後の波面収差変化量は2mλである。このように、照射試験環境温度が25℃の場合には波面収差変化量がほとんど生じない多層膜を備えた光学素子であっても、照射試験環境温度が75℃の場合には大きな波面収差量を生じることがある。従来、照射試験環境温度が75℃の場合にも、青色レーザを含む紫外域の光に対して十分な耐性を有する多層膜を備えた光学素子は開発されていなかった。なお、75℃の照射試験環境温度は、通常の用途の光学素子の耐性を考慮する場合に十分に高い温度である。これに対して、特許4178190号に記載のレーザ照射試験環境温度は25℃であり、高い環境温度における耐性は考慮されていない。
本願発明は、照射試験環境温度が75℃の場合にも波面収差量が小さな多層膜を提供することを目的とする。
Figure 0005181380
たとえば、光ピックアップ装置の光学部品において、75℃の環境温度において60Whrの積算光量の青色レーザに対する耐性が求められる場合がある。他方、光ピックアップ装置の光学部品の透過波面収差は25mλ以下であることが要求されることが多い。光学部品には、5mλ程度の初期波面収差が存在するので、青色レーザ照射前後の波面収差変化は、20mλ以下であることが要求される。
表1及び表2に示されるように、光学多層膜1及び2は、同じ構成を有する。ただし、光学多層膜1の基板はプラスチックから構成され、光学多層膜2の基板はガラスから構成される。表12において、光学多層膜1及び2のレーザ照射前後の透過波面収差の変化量を比較すると、光学多層膜1の波面収差変化量は、光学多層膜2の波面収差変化量に比較してかなり大きい。一般的に、プラスチック基板に形成された光学多層膜の青色レーザを含む紫外域のレーザに対する耐性は、ガラス基板に形成された光学多層膜の青色レーザを含む紫外域のレーザに対する耐性よりも大幅に低い。その理由は、プラスチック基板と光学多層膜の境界を通じて触媒反応などの化学反応が起こっているためであると考えられる。すなわち、レーザ照射によって化学反応が起こりやすい場合にはレーザによる光学多層膜の損傷が大きいことが考えられる。
表12の結果に基づいて、光学多層膜のレーザ耐性がどのような要因によって変化するのかを検討する。
図4は、元素の酸化還元電位と反応速度との関係を概念的に示した図である。図4の横軸は元素の酸化還元電位を示す。左側が高電位であり、右側が低電位である。図4の縦軸は、酸化または還元の反応速度(反応の起こりやすさ)を示す。
表14は、元素の酸化還元電位を示す表である。
Figure 0005181380
上述のように、レーザによる光学多層膜の損傷は、レーザ照射によって化学反応が起こりやすい場合に大きくなることが考えられる。そこで、光学多層膜を構成する材料として、酸化還元電位が低い元素の酸化物を使用すれば、図4に示されるように還元律速領域において反応速度が小さいので、レーザによる光学多層膜の損傷を小さくできることが考えられる。
表15Aは、光学多層膜を構成する酸化物または酸窒化物の内、二酸化ケイ素以外の酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す表である。表15Aにおいて、光学多層膜4を構成する酸化物の内、二酸化ケイ素以外の酸化物を構成する元素の酸化還元電位は、La(ランタン)及びAl(アルミニウム)の酸化還元電位の平均値とした。
図5は、光学多層膜を構成する酸化物または酸窒化物の内、二酸化ケイ素以外の酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。元素の酸化還元電位が低いほど波面収差変化量は小さい。また、ケイ素の酸化還元電位が−0.9ボルト以下であることを考慮すると、光学多層膜を構成する酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は、−0.9ボルト以下であるのが好ましい。酸化還元電位が−0.9ボルト以下である元素は、ジルコニウム、アルミニウム、ランタン、ガドリニウム、バリウム、リチウムなどである。これらの元素は、1種類のイオン価のみを有し、複数種類のイオン化を有する元素よりもレーザ照射による化学反応を起こしにくいと考えられる。
Figure 0005181380
表15Bは、酸化還元電位が−0.9V以下であるその他の元素及びその酸化物を示す表である。元素は、カルシウム、セリウム、ユウロピウム、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、イットリウム及びイッテルビウムである。これらの酸化物も、中屈折率または高屈折率の材料として使用することができる。
Figure 0005181380
表16は、第1の層を構成する材料及び基板の材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す表である。ここで、第1の層とは、基板に隣接する層を意味する。
図6は、第1の層を構成する材料及び基板の材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。
Figure 0005181380
表16及び図6に示されるように、第1の層を構成する材料及び基板の材料の屈折率差が0.2以下である場合に波面収差変化量は10(mλ)以下である。基板の材料の屈折率は1.52である。なお、第1の層の厚さは、基板との密着性を確保するため10ナノメータ以上とする必要がある。
表17は、光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す表である。光学多層膜は、上述のように多くの場合、高い屈折率の材料から構成される層と、低い屈折率の材料から構成される層とを交互に積層して形成される。光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差とは、上記の高い屈折率と低い屈折率との差を意味する。なお、表17において、光学多層膜11の屈折率差は、AlとSiOとの屈折率差を0.2とし、ZrOとAlとの屈折率差を0.36とした。
図7は、光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。
Figure 0005181380
表17及び図7に示されるように、光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差が0.40以下である場合に波面収差変化量は12(mλ)以下である。一般的に、光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差が0.45以下であれば、波面収差の変化量が十分に小さくなる。
隣接する層を構成する材料の屈折率差が大きい場合に劣化が大きくなる理由は、以下のように推定される。結晶化しやすい高屈折率の層と結晶化しにくい低屈折率の層との間の界面において、界面準位が生じる。したがって、界面準位のエネルギの放出及び吸収の確率が高くなる。この結果、特に紫外線放射発光により界面劣化が進み、また、吸収による界面の熱損傷などが生じることが考えられる。
表18は、光学多層膜の全体の厚さと、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す表である。
図8は、光学多層膜の全体の厚さ(総膜厚)と、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量との関係を示す図である。
Figure 0005181380
表18及び図8に示すように、表15乃至表17の結果から求めた好ましい条件を満たす総膜厚240ナノメータの光学多層膜4は、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量が20(mλ)であり、同様の構成で総膜厚360ナノメータの光学多層膜6は、レーザ照射前後の透過波面収差の変化量が12(mλ)である。したがって、総膜厚は240ナノメータ以上であるのが好ましい。
光学多層膜の、青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性を高くするための条件を以下にまとめる。
光学多層膜の各層は、酸化物または酸窒化物から形成される。
光学多層膜を構成する酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は、−0.9ボルト以下であるのが好ましい。この条件を満たす元素は、アルミニウム、ランタン、ガドリニウム、ジルコニウム、カルシウム、セリウム、ユウロピウム、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、イットリウム、イッテルビウムなどである。
第1の層を構成する材料及び基板の材料の屈折率差が0.2以下であるのが好ましい。基板の材料がシクロオレフィンポリマー(波長400nmの光の波長の屈折率は1.52)である場合に、この条件を満たす材料は、二酸化ケイ素(SiO)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸化アルミニウム(Al)などである。
光学多層膜の隣接する層を構成する材料の屈折率差が0.45以下であるのが好ましい。
光学多層膜の全体の厚さ(総膜厚)は、240ナノメータ以上であるのが好ましい。
一般的に、高屈折率材料の層と低屈折材料の層とを隣接して形成した光学多層膜によって所定の光学性能を達成するには、層間の屈折率差を大きくした方が層数を減少することができる。したがって、特に、手間のかかる真空薄膜形成法により多層膜を形成する場合には、層間の屈折率差は大きく設定される傾向にある。
しかし、基板の材料及び各層の材料の間の屈折率の差が、高い環境温度における、光学素子の青色レーザを含む紫外域の光に対する耐性に大きな影響を与えるという、本願発明者による新たな知見によれば、基板の材料及び各層の材料の間の屈折率の差を所定の値より小さくすることによって、青色レーザの波長領域を含む波長領域の光に対する耐性の高い多層膜が得られる。

Claims (8)

  1. プラスチック基板上に形成された光学多層膜であって、該光学多層膜のそれぞれの層は酸化物または酸窒化物から形成され、隣接する層は屈折率の異なる材料から形成され、酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は−0.9ボルト以下であり、該基板に接する第1の層の厚さは10ナノメータ以上で、該基板の材料と第1の層を形成する材料との波長400ナノメータにおける屈折率の差は0.2以下であり、隣接する層を形成する2種類の材料の波長400ナノメータにおける屈折率の差が0.45以下であり、該光学多層膜の全体の厚さが3000ナノメータ以下であるように構成された光学多層膜。
  2. 前記光学多層膜を形成する材料のうち最も屈折率が高い材料が、アルミニウム、ランタン、ガドリニウム、ジルコニウム、カルシウム、セリウム、ユウロピウム、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、イットリウム及びイッテルビウムのいずれかを含む請求項1に記載の光学多層膜。
  3. 前記光学多層膜の前記第1の層を形成する材料が、ケイ素またはアルミニウムを含む請求項1または2に記載の光学多層膜。
  4. 2種類の材料から形成された請求項1から3のいずれかに記載の光学多層膜。
  5. 3種類の材料から形成された請求項1から3のいずれかに記載の光学多層膜。
  6. 全体の厚さが240ナノメータ以上であるように構成された請求項1から5のいずれかに記載の光学多層膜。
  7. プラスチック基板上に形成された光学多層膜であって、該光学多層膜のそれぞれの層は酸化物または酸窒化物から形成され、隣接する層は屈折率の異なる材料から形成され、酸化物または酸窒化物を構成する元素の酸化還元電位は−0.9ボルト以下であり、該基板に接する第1の層の厚さは10ナノメータ以上で、該基板の材料と第1の層を形成する材料との波長400ナノメータにおける屈折率の差は0.2以下であり、隣接する層を形成する2種類の材料の波長400ナノメータにおける屈折率の差が0.45以下であり、該光学多層膜の全体の厚さが3000ナノメータ以下であるように構成され、75℃の環境温度において照射される300乃至450ナノメータの波長の光に対する耐性を付与する光学多層膜。
  8. プラスチック基板とその上に形成された請求項1から7のいずれかに記載の光学多層膜とからなる光学素子。
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