JP5181320B2 - 皮膚刺激の少ない経皮吸収型製剤 - Google Patents
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Description
こうした従来の経皮吸収型製剤に含有される薬剤の多くは、本来、皮膚からの投与を目的としてデザインされておらず、経皮投与時に製剤の有効性を確保しうる水準には血中濃度を高める必要があり、製剤を貼付した個所が局所的に非常に高い薬剤濃度とならざるを得ない。このため、発赤などの刺激性接触皮膚炎が発現することが多く、その殆どは数時間で消失する一時的な炎症ではあるものの、2乃至3日間、あるいは1週間以上も発赤が続く場合も少なからず存在する。
例えば特許文献1には、一般的な皮膚刺激の低減のために配合されるグリチルレチン酸やその塩類は、消炎鎮痛薬により発生する独特の皮膚刺激を低減させるには十分なものではないとし、アントラニル酸系、フェニル酢酸系、インドール系、プロピオン酸系、ピラゾロン系、ベンゾサイアジン系およびスルホンアミド系等の消炎鎮痛薬配合の外用組成物において、皮膚刺激の低減を目的として生薬成分を配合することにより、消炎鎮痛効果を有し且つ皮膚刺激が発生しないものとしたところの消炎鎮痛薬配合外用組成物が開示されている。
また、薬効成分が主原因となる皮膚障害に対する技術として、薬物と該薬物の代謝を調節しうる代謝調節剤を含む組成物による、経皮投与される感作性または刺激性薬物の代謝または主体内変換によって生ずる感作または刺激の調節、軽減又は除去する方法(特許文献2)並びに、皮膚刺激性を有する薬剤/浸透促進組成物に起因する皮膚刺激を抑制する方法(特許文献3)などの開示がある。
そして上記の作用を為すには、薬効成分の含有量に比べて2乃至3倍量の経皮吸収促進剤を配合し、且つ、粘着剤層の厚さを20乃至80μmと為す構成により実現できることを見出し、本発明を完成させた。
また本発明は前記粘着剤層において、該粘着剤層の総質量に対して粘着基剤25乃至60質量%、粘着付与樹脂15乃至60質量%、経皮吸収促進剤2乃至30質量%及び抗炎症剤1乃至15質量%を含有することを特徴とする、経皮吸収型製剤に関する。
そして、上記経皮吸収型製剤において、前記粘着基剤がスチレン系熱可塑性エラストマーであり、前記粘着付与樹脂がロジン系樹脂であり、前記前記経皮吸収促進剤が脂肪酸エステルであることが望ましい。
また、前記薬効成分が前記粘着剤層内で溶解された状態にあるか、或いは結晶状態にあり、結晶状態にある場合には、該結晶が経皮吸収型製剤の適用期間内に消失することが望ましい。
膚透過量が減少する。
このように、本発明の経皮吸収型製剤は、貼付後所定の時間経過後に薬効成分の皮膚透過量が徐々に減少する構成を為すことで、皮内の薬効成分の濃度もまた徐々に低下し、製剤の剥離直前には濃度を格段に低く(実質濃度0に近づく)することができる。そして経皮吸収促進剤により、表皮内の薬効成分は速やかに真皮へ移行することとなり、結果、薬効成分による皮膚刺激を低減することが可能となる。
すなわち、本発明の経皮吸収型製剤は、含有する各種薬効成分による皮膚刺激、特に製剤適用期間の終了後(剥離後)に起こる皮膚刺激を低減することができる。
従来、経皮吸収型製剤を貼付することによる皮膚刺激は、急性刺激や遅延性刺激など、製剤適用時(患部への貼付時)の問題として考えられてきた部分が多い。しかし、製剤適用個所(患部)である表皮には、製剤除去(剥離)後も薬効成分がしばらく留まるため、結果として製剤適用時同様、場合によってはむしろそれ以上に刺激が発現する可能性がある。
そこで本発明者らは、製剤除去後における適用個所の皮内の薬物動態を把握することが刺激発現の予測に非常に重要であるとして、モルモットの腹部摘出皮膚を用いたin vitroの皮膚透過性試験、並びに、製剤除去後の皮膚からの薬効成分の放出試験によりその薬物挙動を調べ、同時に色彩色差計でモルモットの腹部に出現した紅斑を測定することにより皮膚刺激性(発赤度)を評価し、薬物動態と皮膚刺激の関連について検討を行った。
その結果、皮膚刺激性(発赤度)は、製剤適用時の薬効成分の累積透過量とは必ずしも相関せず、製剤除去後の皮膚からの薬効成分の放出(消失)速度に相関する傾向が認められた。
一方、経皮吸収促進剤の添加は、たとえそれが薬効成分の皮膚透過にはあまり影響を与えない(皮膚透過を殆ど促進しない)少量の添加量であっても、皮内への薬効成分の溶解度を高め、その結果、薬効成分の貯留量を増加させることから、皮膚刺激の発現につながる場合があることも見出された。
したがって、経皮吸収促進剤を含有する経皮吸収型製剤において、貼付された製剤の剥離後における皮内の薬効成分の放出速度を、相対的により早いものとすることが必要とされた。
そして本発明者らは、斯かる関係を明確にすべく更に研究を進め、その結果、経皮吸収促進剤の配合量を薬効成分の配合量と比して2乃至3倍量とし、かつ粘着剤層の厚さを20乃至80μmの範囲とすることで、製剤除去後に皮内に残存する薬効成分を速やかに消失させ、皮膚刺激の低減を可能にすることができることを見出した。
以上が本発明を完成するに至った経緯である。
なお本発明において「粘着剤層全質量基準」とは、粘着基剤、粘着付与樹脂、経皮吸収促進剤、薬効成分およびその他の成分(抗酸化剤、充填剤、防腐剤、紫外線吸収剤など)からなる粘着剤層構成成分の全質量を基準とすることを意味するものとする。但し、希釈
塗工のために用いた有機溶媒などは含まれない。
本発明の経皮吸収型製剤における粘着剤層は、粘着基剤、粘着付与樹脂、経皮吸収促進剤、薬効成分を必須の成分として含む。
また所望により、経皮吸収型製剤の粘着剤層に一般に用いられる以下に述べるようなその他添加剤をさらに含むことができる。
本発明の経皮吸収型製剤の粘着剤層に含まれる粘着基剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリル系ポリマー(ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、メタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メトキシエチルアクリレートおよびアクリル酸のうちの少なくとも2種類の共重合体)、天然ゴム、ポリウレタン系ゴムなどの各種合成ゴム系エラストマーを挙げることができるが、特に好ましいものとしてスチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
このうち、凝集性、皮膚付着性、耐候性、耐老化性、耐薬品性の観点からスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISブロック共重合体という)を用いることが最も好ましい。
さらに所望により、上記SISブロック共重合体に加えて、その他の合成ゴム系エラストマー、例えばポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどを組み合わせて用いることもできる。
前記SISブロック共重合体からなる粘着基剤に適度な粘着性を付与する粘着付与樹脂としては、石油系樹脂(脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂)、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明において、粘着力を向上する目的としては、ロジン系樹脂又は石油系樹脂を用いることが好ましい。
ングリセリンエステルが特に好ましい。
ロジン系樹脂の具体的な市販品の例としては、エステルガムH(荒川化学工業(株)製)、パインクリスタルKE−100、KE−311(荒川化学工業(株)製)などが挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に係る粘着剤層は、上記粘着基剤および粘着付与剤に加えて薬効成分を含有する。本発明に適用可能な薬効成分としては、経皮吸収されるものであればその種類は特に限定されないが、例えば抗炎症剤、筋弛緩剤、強心剤、循環器官治療剤、抗アレルギー剤などが挙げられる。
中でもサリチル酸、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、フェルビナク、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトチフェン、オキシブチニン、フェンタニルおよびそれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される抗炎症剤が好適であり、その中でもロキソプロフェンが最も好ましい。
上記薬効成分の薬学的に許容できる塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム化合物の塩などが挙げられ、具体的にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどとの塩が挙げられる。
なお、上記薬効成分、例えばロキソプロフェンはフリー体の形態または塩の形態で粘着剤層中に存在し、塩の形態で存在する場合には塩基性の添加物を加えて薬効成分の一部又は全部をフリー体の形態に変換した後、使用することが望ましい。このとき使用する塩基性の添加物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硫酸マグネシウム、酢酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
また、ロキソプロフェンを配合する場合には、粘着剤層全質量基準で5乃至15質量%にて配合することが好適である。
上記薬効成分はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着剤層全質量基準で好ましくは0.1乃至30質量%、より好ましくは0.5乃至20質量%である。
あるいは、上記薬効成分は結晶状態にあり、すなわち、粘着剤層内で薬効成分の結晶が析出した状態にある。その場合、経皮吸収型製剤の適用期間内(剥離前)に結晶が消失することが望ましい。
本発明の貼付剤においては、粘着剤層に経皮吸収促進剤をさらに含有する。配合される経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも良く、具体的にはカプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、L−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オリーブ油、n−メチル−2−ピロリドン、dl−カンフル、ハッカ油などが挙げられる。上記化合物のうち、特に脂肪酸エステル類を採用することが望ましい。
上記経皮吸収促進剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお配合される上記薬効成分がロキソプロフェンの場合、経皮吸収促進剤としてパルミチン酸イソプロピルを用いることにより、薬効成分の皮膚透過性がより向上する傾向にあることから好適に用いられる。
また、ロキソプロフェンと共にパルミチン酸イソプロピルを配合する場合には、粘着剤層全質量基準で15乃至30質量%を配合することが好適である。
本発明の経皮吸収型製剤の粘着剤層には、上記成分の他に、以下に挙げる抗酸化剤、軟化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等をさらに含むことが出来る。
上記抗酸化剤として、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸イソプロピル等を好適な
ものとして挙げることができる。
上記軟化剤としては、流動パラフィン、石油系オイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、サリチル酸グリコール等が挙げられ、中でも流動パラフィンを好適に用いることができる。
上記充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸アルミニウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機充填剤が望ましい。
上記架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤を挙げることができる。
また、上記防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が望ましい。
さらに上記紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が望ましい。
またその配合量(その他添加剤合計の配合量)は、充分な透過性や貼付剤としての充分な凝集力の維持などを考慮し、粘着剤層全質量基準で好ましくは1乃至55質量%であり、より好ましくは10乃至50質量%にて適宜配合される。
上記の諸成分を用いて形成される本発明の経皮吸収型製剤に係る粘着剤層の厚さ(後述する支持体及び剥離シートの厚さは含まない)は20乃至80μmであり、薬効成分として抗炎症剤を含有する場合には30乃至70μmである。いずれの場合も厚さ40乃至60μmとすることがより好ましい。
粘着剤層の厚さが上記に定めた範囲の下限未満では粘着性や付着性の持続が低下する傾向にある。また、粘着剤層の厚さが上記に定めた範囲の上限を超えると、経皮吸収促進剤が薬効成分含有量の2乃至3倍量添加されたとしても、製剤適用期間の終了時において製剤中の薬効成分が枯渇状態に近づかず、皮膚透過量が殆ど減少していないため、製剤適用期間の終了後(剥離後)にも皮内に薬効成分が多量に残留し、発赤が現れる傾向にある。
本発明の経皮吸収型製剤は、粘着基剤(SISブロック共重合体など)、粘着付与樹脂(ロジン系樹脂など)、経皮吸収促進剤(パルミチン酸イソプロピルなど)及び薬効成分(ロキソプロフェンなど)、さらに必要に応じてその他添加剤を配合して得られた混合物(粘着剤)を適当な剥離ライナー上に塗布し、その上から適当な支持体を貼り合わせ、必
要により適当な大きさに切断して、最終的な製品とすることができる。
上記支持体は、粘着剤層の薬効成分の放出に影響を与えず、また、患部への追従性ならびに貼付時の自己支持性などを加味して、柔軟性、伸縮性ならびに厚さなどを考慮し、目的に応じて適宜選択する。
用いる支持体の厚みは、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質や貼付時の感触や患部の密閉性、薬物の支持体への移行等を考慮して適宜選択可能であるが、10μm乃至300μmの範囲で形成されるのが好ましい。
また上記支持体は、所望により撥水処理や、粘着剤層との密着性を改善する目的にてプライマー処理を施すこともできる。
本発明の経皮吸収型製剤に用いられる剥離ライナーは、粘着剤層からの容易な剥離性、通気性、通水性ならびに柔軟性などを考慮して、目的に応じて適宜選択する。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルムや、合成樹脂、合成紙、合成繊維等にシリコーン加工したシリコーン加工紙、アルミ箔、クラフト紙にポリエチレン等をラミネートしたラミネート加工紙等の無色又は着色したシートを用いることができる。
また剥離ライナーは、30μm乃至100μm、好ましくは40μm乃至80μmの範囲の厚さにて用いられることが好ましい。
本発明の経皮吸収型製剤は一般的な経皮吸収型製剤の製造方法である溶液塗工法より製造することができる。
溶液塗工法では、まずはじめに、SISブロック共重合体(粘着基剤)、ロジン系樹脂(粘着付与樹脂)、パルミチン酸イソプロピル(経皮吸収促進剤)及びロキソプロフェン(薬効成分)、さらに所望により抗酸化剤、軟化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤などを、上記所定の割合になるようにヘキサン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤に添加し、攪拌して均一な溶液を調製する。これら有機溶媒にて調製した溶液中の固形分濃度は、好ましくは20乃至60質量%、より好ましくは30乃至50質量%である。
次に、各成分を含有する上記溶液を、例えばナイフコーター、コンマコーター又はリバースコーターなどの塗工機を用いて、剥離ライナー(シリコーン処理したポリエステルフィルムなど)上に均一に塗布し、乾燥して粘着剤層を完成させ、該層の上に支持体をラミネートすることにより、経皮吸収型製剤を得ることができる。支持体の種類によっては、支持体に粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に剥離ライナーをラミネートしても良い。
このようにして得られた経皮吸収型製剤は、使用用途に応じて楕円形、円形、正方形、長方形などの形状に適宜裁断する。
質量%」「質量部」を意味するものである。
なお、実施例及び比較例の経皮吸収型製剤の作製にあたって、以下の手順に従ってロキソプロフェンナトリウム(市販品)をフリー体(ベース体)化し、ロキソプロフェンとして用いた。
500mmLの分液ロートに、ロキソプロフェンナトリウム30gを入れ、300mLの精製水で溶解し(pH8)、1N塩酸8.7mLを加え、pH試験紙を用いてpH3であることを確認した。次にクロロホルム100mLで抽出してクロロホルムを分取し、硫酸マグネシウムを適量加え、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。残った油状物質にトルエンを5mL加え、5℃に密封して一晩保存し、折出した結晶をろ過し乳鉢で細粉後、デシケーターで乾燥後、ベース体を得た(収率78.6%)。
表1の各物質及び表2の配合割合にて各成分を均一に混合し、固形分が40%となるようにトルエンを加え、ステンレス製撹枠翼を用いて均一に溶解し、粘着剤溶液とした。次に少量のメタノール(ロキソプロフェン:メタノール=1:1)で溶解したロキソプロフェンを粘着剤溶液に加え、更に均一になるまで撹枠した。
この粘着剤溶液を粘着剤層の厚さが50μm又は100μmとなるよう、アプリケーター(テスター産業(株))を用いて片面シリコーン処理PETフィルム#75(藤森工業(株)、フィルムバイナ75E−0010)に塗工した。1分間乾燥した後、支持体として未処理PETフィルム#25を貼り合せ、実施例及び比較例の経皮吸収型製剤を作製した。
モルモット(日本チャールス・リバー(株)、Crj:Hartley、♂、6週令)の腹部を剃毛して剥離して試験皮膚とし、ウォータージャケットで32℃に保温した横型拡散セル(口径20mmφ)に該皮膚の真皮側を装着し、15mmφの円形に打ち抜いた実施例1又は2、或いは比較例1乃至6の経皮吸収型製剤を角質層側に貼付した。
レセプター溶液には生理食塩水を用い、2時間毎に24時間経過後まで1mlずつサンプリングを行った。なお、レセプター液の採取時に32℃に保温した薬効成分を含まない食塩水を1mlずつ加え、レセプター溶液の容積を一定に保った。
得られたサンプリング液の500μLにメタノール500μLを加え、遠心分離機(10,000rpm、5分)にて除タンパク後、HPLC(東ソー(株)、SC−8020システム)にてロキソプロフェンを定量した。
HPLC測定は、カラム:Shim−pack((株)島津製作所、CLC−ODS(M)4.6mm×15cm、5μm)、カラム温度:40℃、移動相:メタノール/水/酢酸(100)/トリエチルアミン混液(600:400:1:1)、検出波長:222mmにて行った。
得られた結果よりロキソプロフェンの皮膚透過量及び累積透過量を算出するとともに、皮膚透過速度を算出して下記表3に示す判定基準にて皮膚透過性を評価した。
そして薬効成分の皮膚透過速度(表4)は、粘着剤層の厚さが50μmの経皮吸収型製剤の場合、実施例1及び2においては12〜14時間経過時点で最も大きい値を示し、それ以降徐々に低下し、18時間経過を過ぎて皮膚透過速度の大きな低下が起きているとする結果が得られ、また比較例1及び比較例2においては、18時間経過時点で皮膚透過速度は最も大きいものとなり、以降、徐々に速度が低下するという結果が得られた。一方、粘着剤層の厚さが100μmの場合、時間の経過とともに薬効成分の透過速度が増加したとする結果が得られた。
上述の皮膚透過試験の24時間後のサンプリング終了後、速やかに試験皮膚から経皮吸収型製剤を除去した。次に、試験皮膚を拡散セルから外して、真皮側の試験皮膚を精製水でよくリンスした後、水分を除去し、別の拡散セルに装着した。
以下、透過試験と同様の操作を行い、上記と同様にHPLC(東ソー、SC−8020システム)にてロキソプロフェンを定量し、ロキソプロフェンの放出量及び累積放出量を算出した。また下記表5に示す通り、放出試験開始後6時間以内に試験皮膚内の薬効成分量の80%以上が放出されたか否かを判定することにより、皮膚放出性を評価した。
図4及び図5に示す通り、実施例1及び実施例2の経皮吸収型製剤のロキソプロフェンの累積放出量は、皮膚放出試験開始から6時間以内に、24時間経過後の累積放出量の80%以上が放出され、18時間経過後にはほぼ一定の値となったが、比較例1乃至6は24時間経過後まで増加し続けた。
モルモット(日本チャールス・リバー(株)、Crj:Hartley、♂、6週令)の腹部を剃毛し、20mmφに打ち抜いた実施例1又は2、或いは比較例1乃至6の経皮吸収型製剤を該腹部に貼付した。貼付後24時間経過した後、経皮吸収型製剤を除去してから1時間、24時間及び48時間経過後の無貼付部位と貼付部位の赤色度を色彩色差計(ミノルタ、CR−300)を用いてそれぞれ3回測定し、その平均値aを測定結果とした。得られた貼付部位のa値から、無貼付部位のa値の差分Δa値を求め、下記表6に示す
判定基準にて皮膚刺激性を判定した。判定結果を表7に、また、24時間経過後のΔa値のIPP濃度依存性を図6(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2)及び図7(比較例3乃至6)に示す。
の低下割合が大きく、皮膚放出性に優れ、皮膚刺激が少ないとする結果が得られた。
一方、IPP/LP比が1である比較例2は、皮膚透過速度の低下はみられたものの、薬効成分の皮膚放出が速やかでなく、皮膚刺激が若干生ずる結果となった。なお、比較例1は皮膚刺激が少ないとする結果は得られたものの、経皮吸収促進剤の添加がないため皮膚透過量が非常に少ないことから、実際の製剤として使用した場合に所望の薬理効果を得られない。
また、粘着剤層の厚さを100μmとした比較例は、IPP/LP比が2〜3である比較例5又は6の場合においても、皮膚透過速度の低下が起こらず、皮内の薬効成分が試験開始24時間経過後まで依然残留して放出されている様子が認められ、皮膚刺激を生ずる結果となった。
ロキソプロフェンをメタノールで溶解せずに他の成分と混合した以外は前出の経皮吸収型製剤の作製と同様に製剤を作製し(実施例3)、この製剤を前出の皮膚刺激性試験にて評価した。なお、粘着剤層厚さは50μmにて作製した。
表8に実施例1(再掲)、実施例3の経皮吸収型製剤の各成分の配合割合と、皮膚刺激性の判定結果を示す。
またこのとき、粘着剤層に存在する薬効成分(ロキソプロフェン)の形態が結晶状態、又は溶解剤によって溶解された状態のいずれであっても、皮膚刺激の低減には影響を与えなかった。
また、粘着剤層厚100μm経皮吸収型製剤においては、薬効成分の皮膚透過速度が貼付時間の経過によらず高く保たれるため、製剤剥離直後の皮内の経皮吸収促進剤と薬効成分の濃度比が製剤貼付時とほぼ変わることがなく、その結果、皮内の薬効成分濃度が高い状態で維持され、高い皮膚刺激が発現するというメカニズムを裏付けるものであった。
このように、経皮吸収促進剤を含有する本発明の経皮吸収型製剤において、経皮吸収促進剤の含有量を薬効成分の含有量と比して2〜3倍とし、薬効成分の皮膚透過速度が徐々に低下する製剤設計を為すことにより、薬効成分による皮膚刺激の低減を達成することができた。
Claims (6)
- 支持体とその上に
スチレン系熱可塑性エラストマーである粘着基剤、
ロジン系樹脂である粘着付与樹脂、
脂肪酸エステルである経皮吸収促進剤及び
薬効成分としてロキソプロフェンおよびその薬学的に許容出来る塩からなる群から選択される抗炎症剤
を含有する粘着剤層を設けてなる経皮吸収型製剤であって、
該経皮吸収促進剤の含有量が該抗炎症剤の含有量の2乃至3倍量(質量)であり、さらに、該粘着剤層の厚さが30乃至70μmであり、
製剤適用期間終了時の薬効成分の皮膚への透過速度が、製剤適用期間における皮膚への透過速度の最高値と比べて20%以上低下しており、そして
該粘着剤層において、該粘着剤層の総質量に対して、粘着基剤25乃至60質量%、粘着付与樹脂15乃至60質量%、経皮吸収促進剤2乃至30質量%及び抗炎症剤1乃至15質量%を含有することを特徴とする、経皮吸収型製剤。 - 前記粘着剤層において、抗炎症剤を5乃至15質量%を含有することを特徴とする、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記経皮吸収促進剤がパルミチン酸イソプロピルである、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記薬効成分が前記粘着剤層内で溶解された状態にある、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記薬効成分が前記粘着剤層内で結晶状態にあり、該結晶が経皮吸収型製剤の適用期間内に消失する、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
- モルモット腹部摘出皮膚(Hrtley、オス、6週令)を用いたin vitroの
24時間皮膚透過性試験後の、該モルモット腹部摘出皮膚の皮膚放出性試験において、試験開始後6時間以内に、24時間経過後の累積放出量の薬効成分量の80%以上が該皮膚から放出されることを特徴とする、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
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