JP5181169B2 - 金属複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、さらなる熱伝導率に優れた複合材料の開発が望まれている。
本発明は、多孔質体の連続孔内に金属を充填することによって、さらに熱伝導率を向上させた金属複合材料およびその製造方法を提供する。
前記金属がアルミニウム、錫、亜鉛、銅もしくはこれらの合金であることを特徴とする。
また、連続多孔質構造体の壁の厚み内に、壁表面に突出することなく前記カーボンナノファイバーが封止込められていることを特徴とする。
また、前記メソフェーズピッチに、前記カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されていることを特徴とする。
メソフェーズピッチとカーボンナノファイバーとを混合する混合工程;
メソフェーズピッチを固化する時のガス発生量を抑制するために、該混合工程で混合された材料を不活性ガス下370℃〜470℃の温度で加熱し、メソフェーズピッチを溶融してガスを発生させ、余分なガスを除去する前加熱工程;
該前加熱工程で加熱処理された材料を冷却する冷却工程;
該冷却工程で冷却された材料を不活性ガスによる加圧下で加温してメソフェーズピッチを発泡させ、固化させる後加熱工程;
を含む連続多孔質構造体を製造する工程と、該連続多孔質構造体を不活性ガス下1000℃〜3000℃の温度で加熱して炭化または黒鉛化させ、炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体を製造する工程と、該炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体の連続孔内に金属を連続孔の内壁と密着する状態に充填する工程とを含むことを特徴とする。この製造方法によれば、前加熱処理された材料を冷却する工程を経て余分なガスを除去し、発泡しているので気孔径の揃った連続多孔質構造体を製造でき、この連続孔内に金属を充填することによって、熱伝導率を向上させた金属複合材料を製造できる。
また、前記連続孔内に金属を充填する工程において、前記連続多孔質構造体を、不活性ガス雰囲気中で、前記金属の融点以上の温度に予備加熱し、一方で、金型を、前記金属の融点以下の温度に加熱しておき、該金型のキャビティ内に該予備加熱した連続多孔質構造体を収納し、次いで該金型のキャビティ内に、融点以上の温度に加熱して溶融した溶融金属を充填すると共に、キャビティ内の該溶融金属を加圧し、該溶融金属を該連続多孔質構造体の連続孔内に充填することを特徴とする。
また、前記金型の底板を多孔質セラミック板で形成する。
本発明に係る金属複合材料は、上記のように、メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入され、メソフェーズピッチが連続多孔質構造体に形成されると共に、該連続多孔質構造体が不活性ガス下1000℃〜3000℃の温度範囲で加熱されて炭化または黒鉛化され、該炭化もしくは黒鉛化された連続多孔質構造体の連続孔内に金属が充填されていることを特徴とする。
メソフェーズピッチとカーボンナノファイバーとを混合する混合工程;
メソフェーズピッチを固化する時のガス発生量を抑制するために、該混合工程で混合された材料を不活性ガス下370℃〜470℃の温度で加熱し、メソフェーズピッチを溶融してガスを発生させ、余分なガスを除去する前加熱工程;
該前加熱工程で加熱処理された材料を冷却する冷却工程;
該冷却工程で冷却された材料を不活性ガスによる加圧下で加温してメソフェーズピッチを発泡させ、固化させる後加熱工程;
を含む連続多孔質構造体を製造する工程と、
該連続多孔質構造体を不活性ガス下1000℃〜3000℃の温度で加熱して炭化または黒鉛化して炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体を製造する工程と、該炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体の連続孔内に金属を連続孔の内壁と密着する状態に充填する工程とを含むことを特徴とする。
メソフェーズピッチは特に限定されるものではないが、縮合多環式炭化水素またはこれを含有する物質をフッ化水素・三フッ化ホウ素の存在下で重合させて得られたものを用いることができる。
なお、CNFは、昭和電工株式会社製のVGCF(商品名)(平均直径150nm、平均長さ10〜20μm)を好適に用いることができる。
二軸押出機で混合された材料は、冷えてペレット状に固形化する。
この前加熱処理を行うことによって、ARは再溶融し、ガス成分が一部気化して材料中から抜け出る。370℃〜470℃の温度範囲は、ガスが発生し、余分なガスを除去するに好適な温度である。なお、最適には460℃前後がよい。
この前加熱処理を行った材料を粉砕して粉状にし、炉中で不活性ガス下で加圧しながら加熱し(後加熱処理)、発泡、固化させる。
加圧の程度により、気孔の大きさを調整することができる。加圧を強くすれば、気孔は小さくなる。加圧力は特に限定されるものではないが、0.25〜5.0MPa程度が良好である。
なお、例えば600℃の温度までゆっくり加熱するなど、熱が確実に伝わるようにすれば、必ずしも後加熱処理で2段階加熱を行わなくともよい。
固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行った。図1は一連の温度プロファイルを示す。この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融した。
この粉砕した材料12を、図2に示す加熱炉10に収容し、後加熱処理を行った。加熱炉10内にはArガスを導入し、加熱炉10内を3MPaのアルゴンガス雰囲気とした。ヒーター14により加熱炉10内を、図1に示す温度プロファイルにより加熱した。すなわち、炉内温度が290℃となる1次加熱により20分間加熱し、次いで炉内温度が600℃となる2次加熱により20分間加熱し、冷却して連続多孔質構造体を得た。なお、図2において、16は圧力計、18は圧力逃がし弁である。1次加熱の際には加熱炉10内の圧力はわずかしか上昇しないが、2次加熱の際にはARが発泡してガスが発生することにより炉内圧力は上昇する。その際、ガスが圧力逃がし弁18から放出されるので、加熱炉10内は一定の圧力に維持される。
なお、比較例として、ARにVGCFを混入しなかったものとVGCFを10wt%混入したものを共に前加熱処理を行わず後加熱処理のみで作製した多孔質体とARにVGCFを混入しないで前加熱処理と後加熱処理を行った多孔質体のサンプルを作製した。
図5(a)、(b)に示すように、VGCFが混入されていないものは、前加熱処理(460℃)の有無によって、気孔の大きさにそれほど変化はなく、また大きさもほぼ揃っている。なお、SEM写真で、白いリング状の部位は気孔の縁部、灰色の部分は気孔内の壁表面、黒い部分は連続孔部分となっている。
図6(a)、(b)に示すように、VGCFを含まないものは前加熱処理の有無によっても気孔の大きさにそれほどの変化はなく、また大きさも揃っている。また、3000℃で黒鉛化処理を施すことによってC/VGCFフォームは熱収縮に伴い架橋部(壁部)が細く、気孔率が高いものとなっている。
図7(a)、図8(a)は、VGCF0wt%、すなわち、ARのみのもので、460℃前加熱処理、600℃後加熱処理、次いで3000℃で黒鉛化処理を施したものであり、SEM写真から明らかなように、壁部に大きな亀裂が存在する。一方、図7(b)、図8(b)は、ARにVGCFを10wt%混入、460℃前加熱処理、600℃後加熱処理、次いで3000℃で黒鉛化処理を施したものであり、SEM写真から明らかなように、壁部の亀裂は小さく、かつ数も少なくなっている。これはVGCFが混入されたことにより、壁部の強度が増したからと考えられる。
図9から明らかなように、460℃で前加熱処理を施すことによって、嵩密度および圧縮強さが高くなること、また1000℃で炭素化処理を施すことによってその圧縮強度はさらに2倍程度高くなることがわかる。これは前加熱処理によるフォームの高密度化、および炭素化処理(焼成)を施すことでフォームが熱収縮により高密度化したためと考えられる。また、VGCF混入のもので前加熱処理を施したものは、嵩密度および圧縮強度ともにさらに高くなっている。
なお、VGCF混入のもので前加熱処理を施したものは、熱伝導性も向上した。これは、フォームが高密度化し、VGCFがその壁の厚み内に高密度に凝集しているからと考えられる。
また、R値はDバンド1360cm-1のGバンド1580cm-1に対する比から計算される。
なお、X線回折の結果、2000℃以上の熱処理によりフォームのd002は急激に減少し、3000℃の黒鉛化処理により非常に高い黒鉛化構造に変化し、黒鉛に準ずる高い熱伝導率が得られる。
本実施例では、上記のようにして得られた連続多孔質構造体の連続孔内に、溶融アルミニウムを高圧をかけて充填した。
まず、黒鉛化多孔質体20を、別途アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で、例えば充填させる金属をアルミニウムとし、アルミニウムの融点以上の温度、例えば750℃に予備加熱しておく。一方、金型22を、アルミニウムの融点以下の温度、例えば350℃に加熱しておき、この金型22のキャビティ内に上記予備加熱した黒鉛化多孔質体20を素早く収納し、次いで金型22のキャビティ内に、例えば750℃程度の高温で溶融したアルミニウム24を充填すると共に、押圧ピストン26でキャビティ内の溶融アルミニウムを約100MPaの高圧で加圧し、溶融アルミニウムを黒鉛化多孔質体20の連続孔内に充填した。金型22の底板23を多孔質セラミック板で形成することによって、黒鉛化多孔質体20の連続孔内の空気は底板23の孔から下方に逃げ、これにより、黒鉛化多孔質体20の連続孔は溶融アルミニウムにより満たされる。冷却後、底板23と共に金属複合材料を取り出した。
図12に示すように、黒鉛化多孔質体の連続孔内にアルミニウムがきれいに充填された金属複合材料が得られた。連続孔の内壁とアルミニウムとの密着性も良好である(図12(c))。
図13に、アルミニウムを充填した金属複合材料全体に対するCNF(VGCF)の混入量(vol%)と、金属複合材料の熱伝導率との関係を示す。JISAC3Aに規定するアルミニウムの熱伝導率は121W/m・Kである。CNFの混入量により熱伝導率を調整することができる。また、図13からわかるように、CNFを1.5vol%以上混入させることにより金属アルミニウム単体よりも大きな熱伝導率を有する金属複合材料を製造することができる。黒鉛化したARおよびCNF自体も高い熱伝導率を有し、また、上記のように、CNFが黒鉛化したARの壁内に封止こめられていることから、CNFを増加させると、次第にアルミニウム単体の場合よりも高い熱伝導率を示すようになる。
図14に示すように、黒鉛化多孔質体の連続孔内に錫がきれいに充填された金属複合材料が得られた。連続孔の内壁と錫との密着性も良好である(図14(c))。
また、この錫を充填した金属複合材料の熱伝導率を調べたところ、図13のアルミニウムの場合と同様に、良好な熱伝導率が得られた。なお、錫は、JIS−K8580規定の錫を用いた。
上記のようにして得られた金属複合材料は、優れた熱伝導率を有することから、例えば半導体チップの放熱用のヒートシンク材料などとして好適に用いることができる。また、この金属複合材料は、ARを黒鉛化した黒鉛化炭素、CNF(VGCF)、および金属の複合材料であるから、これらの組成を調整することによって、熱伝導率のほか、線膨張率の調整も行うことが可能となる。したがって、半導体チップに接合して用いるヒートシンクの場合、半導体チップの線膨張率とマッチングした線膨張率のものに調整できるので、半導体チップに熱的歪を与えないヒートシンクとすることができる。
12 材料
14 ヒーター
16 圧力計
18 圧力逃がし弁
20 黒鉛化多孔質体
22 金型
23 底板
24 アルミニウム
26 押圧ピストン
Claims (8)
- メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入され、メソフェーズピッチが連続多孔質構造体に形成されると共に、該連続多孔質構造体が不活性ガス下1000℃〜3000℃の温度範囲で加熱されて炭化または黒鉛化され、該炭化もしくは黒鉛化された連続多孔質構造体の連続孔内に金属が連続孔の内壁と密着した状態で充填されていることを特徴とする金属複合材料。
- 前記金属がアルミニウム、錫、亜鉛、銅もしくはこれらの合金であることを特徴とする請求項1記載の金属複合材料。
- 前記連続多孔質構造体の壁の厚み内に、壁表面に突出することなく前記カーボンナノファイバーが封止込められていることを特徴とする請求項1または2記載の金属複合材料。
- 前記メソフェーズピッチが、縮合多環式炭化水素またはこれを含有する物質をフッ化水素・三フッ化ホウ素の存在下で重合させて得られたメソフェーズピッチであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の金属複合材料。
- 前記メソフェーズピッチに、前記カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の金属複合材料。
- メソフェーズピッチとカーボンナノファイバーとを混合する混合工程;
メソフェーズピッチを固化する時のガス発生量を抑制するために、該混合工程で混合された材料を不活性ガス下370℃〜470℃の温度で加熱し、メソフェーズピッチを溶融してガスを発生させ、余分なガスを除去する前加熱工程;
該前加熱工程で加熱処理された材料を冷却する冷却工程;
該冷却工程で冷却された材料を不活性ガスによる加圧下で加温してメソフェーズピッチを発泡させ、固化させる後加熱工程;
を含む連続多孔質構造体を製造する工程と、
該連続多孔質構造体を不活性ガス下1000℃〜3000℃の温度で加熱して炭化または黒鉛化させ、炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体を製造する工程と、
該炭化または黒鉛化した連続多孔質構造体の連続孔内に金属を連続孔の内壁と密着する状態に充填する工程とを含むことを特徴とする金属複合材料の製造方法。 - 前記連続孔内に金属を充填する工程において、前記連続多孔質構造体を、不活性ガス雰囲気中で、前記金属の融点以上の温度に予備加熱し、一方で、金型を、前記金属の融点以下の温度に加熱しておき、該金型のキャビティ内に該予備加熱した連続多孔質構造体を収納し、次いで該金型のキャビティ内に、融点以上の温度に加熱して溶融した溶融金属を充填すると共に、キャビティ内の該溶融金属を加圧し、該溶融金属を該連続多孔質構造体の連続孔内に充填することを特徴とする請求項6記載の金属複合材料の製造方法。
- 前記金型の底板を多孔質セラミック板で形成することを特徴とする請求項7記載の金属複合材料の製造方法。
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