JP5179449B2 - 自動変速機におけるエア分離構造 - Google Patents
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そのため、連通管内を流れるオイルに含まれている微細な気泡(エア)が、オイルポンプに向けて連通管内を流れている間に徐々に集まって大きなエアのかたまりを形成し、連通管の曲がり部分や上部に滞留することがある。
しかし、オイルポンプの稼働時には、連通管内が僅かに負圧状態になっているため、連通管内の曲がり部分などに、大気圧よりも僅かに圧の低いエアのかたまりが滞留することがあり、このような圧の低いエアの場合には、エアブリーザを設けても外部に排出させることができなかった。
また、排出ポンプで分離室内のエアを排出するので、オイルから分離されて分離室内に集積されたエアは、大気圧よりも圧の低いエアであっても分離室から確実に排出されて、分離室内に留まることがない。
さらに、エンジン回転数が閾値回転数以下であるために、エンジン駆動されるオイルポンプが吸引したオイルの流速が遅く、連通管内にエアのかたまりが滞留しやすい間だけ、排出ポンプが稼働するので、大量のエアが連通管内に溜まることがなくなり、非常にコンパクトなポンプで対応ができ、さらに排出ポンプを効率良く稼働させつつ、エアを除去できる。
図1は、実施形態にかかるエア分離構造を採用した自動変速機1の概略構成図である。図2は、連通管14に設けられた分離室30を説明する図である。
このトルクコンバータ11では、ポンプインペラに入力された回転が、流体などを介してタービンランナに伝達されたのち、このタービンランナにプロペラシャフトを介して連結したリアユニット20の変速機構21に、回転が入力されるようになっている。
オイルポンプ12は、オイルストレーナを介して、オイルパン24内のオイルを吸引し、吸引したオイルを加圧したのち、トルクコンバータ11に作動オイルとして供給すると共に、コントロールバルブボディ23に供給する。
コントロールバルブボディ23に供給されたオイルは、図示しないコントロールバルブにより圧力が調圧されたのち、変速機構21の所定の締結要素に供給される。
変速機構21は、フロントユニット10側から入力される回転を変速し、差動装置は、変速された回転を駆動輪(図示せず)に伝達する。
変速機ケース22の下面には、コントロールバルブボディ23が固定されると共に、このコントロールバルブボディ23を覆うように、オイルパン24が設けられている。
コントロールバルブボディ23の下に付設されたオイルストレーナ(図示せず)の吸入口は、オイルパン24内に位置し、排出口は、コントロールバルブボディ23に連結された連通管14に連絡している。
連通管14aを通って分離室30内に供給されるオイルが、円柱形状の分離室30内の空間Sに対して接線方向から流入するようにして、分離室30内に供給されたオイルが旋回流を形成するようにするためである。
分離室30の上端30aには、電動ポンプ60(図1参照)から延びる吸入管61が接続しており、吸入管61の吸入口61aは、分離室30内でオイルが形成する旋回流の中心(分離室30の中心O)の直上に位置している。
この際、電動ポンプ60は、分離室30内を大気圧よりも若干低い負圧状態にするように設定されており、負圧状態のもとで、オイルに包含された比較的大きなエアのかたまりのみならず、細かな気泡もまたオイルから分離され易くなるようにしている。
負圧状態にすることで細かな気泡も体積が膨張して、分離室30内を流れるオイルから分離され易くなるからである。
さらに、オイルから分離されたエアのかたまりが、大気圧よりも圧が低いエアのかたまりであって、従来のエアブリーザでは排出できないようなものであっても、分離室30に留まることなく、排出されるようにしている。
この制御手段40の機能は、図示しないATCU(自動変速機制御ユニット)が備えるCPUにより実現される。
パワースイッチ42は、車室内の運転者による操作可能な位置に設けられており、オン位置に切り換えられると、エンジン2の駆動指令を図示しないエンジンECUに出力してエンジン2を始動させると共に、操作ノブで選択された操作位置(オン位置/オフ位置)を示す信号を、制御手段40に入力する。
また、パワースイッチ42がオン位置であり、かつエンジン回転数Neが閾値回転数Nthよりも大きい(Ne>Nth)とき、またはパワースイッチ42がオフ位置のときに、電動ポンプ60を非稼働状態にする。
図3は、電動ポンプを活用しないときのエンジン回転数Neと、連通管14内を流れるオイルに含まれるエアの量(管路内のエア蓄積量)との相関図である。
ここで、連通管14内を流れるオイルの流速は、オイルポンプの回転数に応じて決まるので、オイルの流速もまたエンジン回転数に比例する。
そして、連通管14に溜まるエアの量は、エンジン回転数Neが低くなるほど(オイルの流速が遅くなるほど)多くなる。
そうすると、連通管14内の曲がり部分などに滞留していたエアが、オイルの流れに引き込まれて、オイルと共に流れるようになるので、オイルに含まれるエアの量が、図中符号aで示すように、エンジン回転数Neの上昇と共に多くなる。
エンジン回転数Neが低いときに連通管14内の曲がり部分などに溜まったエアのほぼ総てが、オイルの流れに引き込まれて無くなってしまうと共に、オイルの流速が速くて連通管14内の曲がり部分などにエアが新たに溜まることがないからである。
そして、この閾値回転数Nthよりも低回転数側では、制御手段40が、パワースイッチ42がオン位置である条件の下で電動ポンプ60を稼働状態にし、高回転側では、電動ポンプ60を非稼働状態にするように設定している。
連通管14内を流れるオイルにエアが多く含まれる間だけ、電動ポンプ60を稼働させることで、エアのかたまりに起因するショックの発生を十分に抑えることができ、さらに、電動ポンプ60の稼働に消費されるエネルギーを抑えると共に、電動ポンプ60が連続して稼働される場合に比べて、電動ポンプ60の寿命を延ばすことができるからである。
図4は、制御手段40が実施する電動ポンプ60の稼働/非稼働の制御のフローチャートである。
そして、エンジン回転数Neがアイドリング時の回転数Ne1も大きく、エンジンが停止していない場合には、ステップ102の処理に移行する。
そして、オフ位置である場合には、処理を終了し、オフ位置でなくオン位置である場合には、ステップ102の処理に移行する。
連通管14aから分離室30内に接線方向から供給されて分離室30内に旋回流を形成したオイルは、分離室30の内周面を周方向に沿って流れながら、自重により下端30b側に移動してオイルの渦を形成し、下端30b側の連通管14bから排出される。
この際、分離室30内を流れるオイルには遠心力が作用して、オイルが分離室30の内周面側に押しつけられるので、分離室30の中心O側には減圧された空間が形成される。
ここで、オイルに含まれているエアは、オイルに比べて質量が無視できるので、遠心力の影響を受けず分離室30の中心O側に集積される。
そのため、オイルに含まれたエアは、分離室30の中心O側の減圧された空間に接する面でオイルから分離されて、分離室30の上部にある捕捉空間31内に捕捉される。
さらに、オイルから分離されて捕捉空間31内に捕捉されたエアは、電動ポンプ60により吸引されて、変速機ケース22内に排出されるので、連通管14を流れるオイルの流速が速くなっても、オイルポンプに引き込まれることがない。
これにより、連通管14を流れるオイル内のエアのかたまりは、分離室30内でオイルから分離されて、エアのかたまりを含むオイルが、オイルポンプ12を経て変速機構21に供給されないので、エアのかたまりに起因するショックの発生を好適に防止できる。
また、電動ポンプ60により、分離室30に捕捉されたエアを排出するので、捕捉されたエアが、大気圧よりも圧が低いエアであっても分離室30から確実に排出されて、分離室30内に留まることがない。
さらに、連通管14の長さが長くなり、連通管14内の曲がり部分の数が多くなっても、好適にエアを除去できるので、自動変速機における油圧配管のレイアウトの自由度が向上する。
また、エンジン回転数Neが、連通管14内の曲がり部分などにエアのかたまりが滞留できないオイルの流速を実現するエンジン回転数を規定した閾値回転数Nth以下である間、すなわち、エンジン回転数Neが低いためにオイルポンプ12が吸引したオイルの流速が遅く、連通管14内にエアのかたまりが滞留しやすい間だけ、電動ポンプ60が稼働される。
よって、閾値回転数Nthに基づいて電動ポンプの稼働を決めることで、エアの量が多くなっても、エアを確実に除去して変速機ケース側に排出できる。
さらに、電動ポンプ60の稼働/非稼働が適宜切り換えられるので、電動ポンプ60の稼働に消費されるエネルギーを抑えると共に、電動ポンプ60が連続して稼働される場合に比べて、電動ポンプ60の寿命を延ばすことができる。
特に、電動ポンプ60の稼働時間が短くなるので、電動ポンプ60の部品の耐久信頼性が向上すると共に、電動ポンプ60を連続して稼働する場合よりも、部品に要求される耐久性能の要求が緩和されるので、その分だけ部品の作製コストの低減が可能であり、電動ポンプをより安価で提供できる。
また、電動ポンプ60を稼働させると、オイルポンプ12の駆動により負圧状態とされている分離室30内の負圧度が、さらに高くなるので、オイルポンプ12の吸引力が電動ポンプ60によりアシストされた状態となり、効率の良いポンプ吸引が可能となる。
連通管14は、分離室30と、オイルパン24内のオイルを吸引するオイルストレーナが付設されたコントロールバルブボディ23とを接続する連通管14aと、分離室30とオイルポンプ12とを接続する連通管14bと、から構成され、連通管14aは、分離室30の上端30aから下端30b側にオフセットした位置で、分離室30に接続し、連通管14bは、連通管14aよりも下端30b側の位置で分離室30に接続し、分離室30では、連通管14aの接続位置よりも上端30a側を、オイルから分離したエアの捕捉空間31とした。
連通管14aを流れるオイル内のエアのかたまりの多くは、オイルで満たされた連通管14a内の上部側を流れるので、オイルが分離室30内に供給されると、分離室30の上部にはオイルが満たされない捕捉空間31が確保されているので、オイル内のエアのかたまりは、オイルから分離して、捕捉空間31内に捕捉される。よって、オイル内のエアのかたまりが、オイルポンプ12を経てオイルと共に変速機構21に供給されない。
また、電動ポンプ60が分離室30(捕捉空間31)内のエアを吸引して、変速機ケース22内に排出しているので、捕捉空間31の容積以上のエアがオイルから分離しても、捕捉空間31からエアがあふれてオイルポンプ12に供給されることがない。さらに、オイルが分離室30内を上方から下方に向かって流れるので、捕捉空間31内に捕捉されたエアが、オイルポンプ12に引き込まれることがない。
よって、エアのかたまりに起因するショックの発生を好適に防止できる。
これにより、連通管14aを通って分離室30内に導かれたオイルは、分離室30内を、内周面に沿って旋回しながら自重により上端30a側から下端30b側に移動するので、分離室30内にはオイルにより渦巻き状の旋回流が形成される。
この際、分離室30内を流れるオイルは、遠心力により分離室30の内周面側に押しつけられるので、分離室30の中心O側には減圧された空間が形成される。ここで、オイルに含まれているエアは、オイルに比べて質量が無視でき、遠心力の影響を受けず分離室30の中心O側に集積されるので、減圧された空間に接する面でオイルから分離されて、分離室30の上部にある捕捉空間31内に捕捉される。
また、分離室30内にはオイルにより渦巻き状の旋回流が形成されるので、分離室30内でのオイルの滞留時間と移動距離が長くなり、その分だけ、エアがオイルから分離する機会が増加する。
さらに、自動変速機が搭載された車両の傾きに関係なく、分離室30内に渦巻き状の旋回流が形成されるようになるので、車両の傾きに影響をされないで、オイルからエアを確実に分離できるようになる。
また、電動ポンプ60が分離室30内を負圧状態にするので、オイルに含まれる細かな気泡であっても体積が膨張して、オイルから分離され易くなる。
この場合、エンジンの起動・停止を行うボタンがオンされて、エンジン回転数Neが閾値回転数Nth以下である間、電動ポンプ60が稼働状態にされることになる。
また、パワースイッチの代わりにイグニッションスイッチを採用した車両の自動変速機においても好適に適用できる。
2 エンジン
10 フロントユニット
11 トルクコンバータ
12 オイルポンプ
13 コンバータケーシング
14、14a、14b 連通管
20 リアユニット
21 変速機構
22 変速機ケース
23 コントロールバルブボディ
24 オイルパン
30 分離室
30a 上端
30b 下端
31 捕捉空間
40 制御手段
41 エンジン回転数センサ
42 パワースイッチ
60 電動ポンプ(排出ポンプ)
61 吸入管
61a 吸入口
62 排気管
S 空間
Claims (1)
- トルクコンバータと変速機構とが切り離して設けられており、エンジン駆動されるオイルポンプが、前記トルクコンバータ側に設けられて、前記変速機構側のオイルパンから、連通管を介してオイルを吸引する自動変速機において、
前記オイルポンプと前記オイルパンとの間の連通管に設けられて、エアとオイルとを分離させる分離室と、
前記分離室内のエアを排出させる排出ポンプと、
前記排出ポンプを制御する制御手段と、を設け、
前記制御手段は、前記エンジンを起動させるスイッチがオンであってエンジン回転数が閾値回転数以下の間、排出ポンプを稼働させることを特徴とする自動変速機におけるエア分離構造。
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