JP5177996B2 - Dna複製活性を有するタンパク質 - Google Patents

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Description

本発明は、DNA複製活性を有するタンパク質に関し、詳しくは、核酸増幅、核酸合成、突然変異誘導、標識検出等に好適なDNAポリメラーゼに関する。
PCRは、2つのプライマーに挟まれたDNA領域を大量に増幅させる技術であり、1983年K.B.Mullisによってその基本原理が考案された。PCRは、バイオテクノロジーの急速な発展に大きく寄与した技術であり、現在においても欠かせない技術である。PCRの基本的な原理は、i)一本鎖DNAへの変性、ii)一本鎖へのプライマーの結合、iii)DNAポリメラーゼによる相補鎖合成、そして再び、i)一本鎖DNAへの変性へと戻るサイクルを繰り返すというものである。なお、本明細書においては、DNA複製活性を有するタンパク質のことをDNAポリメラーゼ(DNA複製酵素)という。また、DNA複製活性とは、一本鎖DNAと相補配列を持つプライマーがアニーリングした複合体を基質とし、プライマーの3′端に鋳型に相補的な塩基を付加し、合成する活性をいう。
PCRが実用的に大きな成功を納めた1つの要因として、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ、以下、「Taq pol」とも表記する)というPCRに好適なDNAポリメラーゼが見出された点があったことはよく知られている。現在においても、DNAポリメラーゼはPCRにおける重要な構成要素の1つである。そのため、PCRの改良のための一つの着眼点として、より優れたDNAポリメラーゼの開発が挙げられる。
PCR用のDNAポリメラーゼには様々な特性が求められるが、その中でも伸長性、忠実性(fidelityとも記す)、および増幅性などの特性に優れるものが強く求められている。本明細書において伸長性とは、より長い標的断片を増幅可能な性質のことである。伸長性が低いDNAポリメラーゼを用いてPCRを行う場合は、短いDNA断片の増幅しかできず、長い配列を標的とするのは不向きである。また、本明細書において忠実性とは、鋳型に対し相補的な配列を正確に合成する性質のことである。一般的な傾向としては、伸長性に優れたDNAポリメラーゼは忠実性に劣り、忠実性に優れたものは伸長性に劣るという傾向がある。また、増幅性とは、広義には増幅に関する特性のことであるが、本明細書においては、増幅に関する特性のうち、主として、少ない試料(鋳型)から所望のDNA断片を増幅できる特性のことをいう。すなわち、増幅性に優れるということは、ごくわずかな鋳型からでも所望のDNA断片を増幅できるということであり、生物由来の物質によくあることであるが、試料をごくわずかしか入手できないような場合に重要な特性である。
市販のPCR用DNAポリメラーゼは、その由来および性質より大きく3種に分類が可能である。1番目はTaq DNAポリメラーゼ(非特許文献1)やTth DNAポリメラーゼ(非特許文献2)を代表とする好熱性真性細菌からとられたPolI型DNAポリメラーゼ(Family Aポリメラーゼとも呼ばれることもある)、2番目はPfu DNAポリメラーゼ(非特許文献3)やKOD DNAポリメラーゼ(非特許文献4)を代表とする主として好熱性古細菌由来のα型DNAポリメラーゼ(最近はFamily Bポリメラーゼとも呼ばれることもある)、3番目はPolI型DNAポリメラーゼとα型DNAポリメラーゼと混合したブレンド型DNAポリメラーゼ(非特許文献5)である。
なお、本発明者らは、伸長性に優れた改変型Pfu DNAポリメラーゼ(野生型Pfu DNAポリメラーゼの第2番目、第533番目、第538番目、第540番目、第545番目、第546番目をそれぞれバリン、チロシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、フェニルアラニンに変異させた改良型)を発明し、特許出願している(特許文献1)。また本発明者らは、増幅性に優れた改変型Pfu DNAポリメラーゼ(野生型Pfu DNAポリメラーゼの第2番目、第717番目アミノ酸残基をそれぞれバリン、プロリンに変異させた改良型;第2番目、第710番目、第712番目、第713番目、第717番目をそれぞれバリン、アルギニン、アルギニン、アスパラギン酸、プロリンに変異させた改良型)を発明し、特許出願している(特許文献2)。
特開平10-210979号公報 特開平11-155578号公報 Saiki RK,Gelfand DH,Stoffel S,Scharf SJ,Higuchi R,Horn GT,Mullis KB,Erlich HA.Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase.Science.1988 Jan 29;239(4839):487-91. Myers TW,Gelfand DH.Reverse transcription and DNA amplification by a Thermus thermophilus DNA polymerase.Biochemistry.1991 Aug 6;30(31):7661-6. Lundberg KS,Shoemaker DD,Adams MW,Short JM,Sorge JA,Mathur EJ.High-fidelity amplification using a thermostable DNA polymerase isolated from Pyrococcus furiosus.Gene.1991 Dec 1;108(1):1-6. Takagi M,Nishioka M,Kakihara H,Kitabayashi M,Inoue H,Kawakami B,Oka M,Imanaka T.Characterization of DNA polymerase from Pyrococcus sp.strain KOD1 and its application to PCR.Appl Environ Microbiol.1997 Nov;63(11):4504-10. Barnes WM.PCR amplification of up to 35-kb DNA with high fidelity and high yield from lambda bacteriophage templates.Proc Natl Acad Sci U S A.1994 Mar 15;91(6):2216-20.
一般的に、I型DNAポリメラーゼ(以下、「polI」とも記載する)は、5’→3’ポリメラーゼ活性を持ち、伸長性に優れるものの、忠実性に劣る傾向がある。逆に、α型DNAポリメラーゼ(以下、「polα」とも記載する)は、5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング活性)を持ち、伸長性に劣るものの、忠実性に優れるという傾向にある。また、市販のDNAポリメラーゼの中には伸長性、忠実性、増幅性などの点で優れた特性を有しながらも、厳格な条件設定が要求される、再現性の点で不安定であるなどの点で実用上汎用性の低いものもある。このように、実用上あらゆる特性に優れたDNAポリメラーゼというのはなく、PCRの条件、標的の種類、長さ等に応じ、適切なDNAポリメラーゼを選択して用いるというのが実情である。また、本発明者らによる改良型Pfu DNAポリメラーゼ(特許文献1、2)は、それぞれに優れた伸長性、増幅性を有するものであるが、実用上の観点からは伸長性および忠実性のバランスについてさらに改良の余地が存在した。
上記のような状況の下、本発明は、伸長性および忠実性の双方のバランスが良く、汎用性の高いDNAポリメラーゼを提供することを課題とする。
本発明者らは、忠実性の良いα型のDNAポリメラーゼであるPfu DNAポリメラーゼ(以下、「Pfu pol」ともいう)に着目した。Pfu polは、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング活性)を有するため、一般的な傾向として、I型のDNAポリメラーゼよりも伸長性が劣る一方で、忠実性には優れている。本発明者らは、Pfu polの優れた性質を生かしつつ、より伸長性が優れたものに改良すべく、鋭意研究を進めたところ、全長アミノ酸配列が775残基である野生型Pfu polにおいて、特許文献1、2とは異なる複数の特定アミノ酸残基を改変することにより、優れた忠実性を維持ししつ、伸長性を大幅に向上させて汎用性に優れたDNAポリメラーゼを得ることに成功し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記DNAポリメラーゼおよびその用途を提供するものである。
[1] DNA複製活性を有する下記(A)または(B)のタンパク質。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[2] DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[3] DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[4] DNA複製活性を有する下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[5] DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[6] DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[7] 下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(b)塩基配列が配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[8] 下記(c)または(d)のポリヌクレオチド。
(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(d)塩基配列が配列表の配列番号3に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[9] 下記(e)または(f)のポリヌクレオチド。
(e)配列表の配列番号42に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(f)塩基配列が配列表の配列番号42に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[10] 前記[4]〜[9]のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
[11] 前記[10]に記載の組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
[12] 前記[11]に記載の形質転換体を培地中で培養し、DNA複製活性を有するタンパク質を発現させる、DNA複製活性を有するタンパク質の製造方法。
[13] DNAポリメラーゼとして前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸増幅方法。
[14] DNAポリメラーゼとして前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸の合成、突然変異誘導又は標識・検出方法。
[15] 前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のタンパク質、前記[10]に記載の組換えポリヌクレオチド並びに前記[11]に記載の形質転換体からなる群から選ばれる少なくとも1種を備えた試薬キット。
なお、以下本明細書においては、特に断らない限り、配列番号は配列表中の配列番号に対応する。
本発明により、伸長性および忠実性のバランスに優れ、汎用性の高いDNAポリメラーゼが提供される。
本発明のDNAポリメラーゼは、上記特性を利用して、PCRをはじめとする各種の核酸増幅に利用することができ、さらに核酸の合成、突然変異誘導、標識・検出等に応用することができる。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。なお、本発明における生物化学的なあるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning:A LABORATORY MANUAL,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,New York(2001)、新遺伝子工学ハンドブック(村松正實ら編、羊土社、実験医学別冊、改定第4版、2003年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)、タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、改定第3版、2004年)、タンパク質実験ハンドブック(竹縄忠臣編集、実験医学別冊、初版、2003年8月15日)、PCR実験ノート(谷口武俊編集、羊土社、第1版、1997年)などの種々の実験マニュアルの記載が参照される。
1.DNAポリメラーゼ
本発明のタンパク質は下記、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)または(F)に示すタンパク質である。本発明のタンパク質はDNA複製活性を有するタンパク質(DNAポリメラーゼ)である。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
本発明のDNAポリメラーゼは、Pfu polを改変することにより得られる。Pfu polについて説明すると、Pfu polは、好熱性古細菌テルモコックス科Pyrococcus furiosusより得られた耐熱性α型DNAポリメラーゼである。Pfu polは、5’→3’DNAポリメラーゼ活性および3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(プルーフリーディング活性)を有する。この3'→5'エキソヌクレアーゼ活性があるために、Taqポリメラーゼ等のPol I型DNAポリメラーゼよりDNA合成の忠実性が高い。その反面、伸長性ではPol I型ポリメラーゼより劣る傾向があるため、一般的には、比較的長さの短いPCR産物のクローニングなど高い忠実性を必要とされる用途に使用される。Pfu polは、775アミノ酸残基を有し、その分子質量は90.1kDaである。
本発明のDNAポリメラーゼの1つ(59a pol)は、Pfu polのアミノ酸配列における第502番目のリシンをアルギニンに、さらに第717番目のロイシンをプロリンに置換して得られた。その配列が配列番号2のアミノ酸配列である。本発明のDNAポリメラーゼのもう1つ(6c pol)は、Pfu polのアミノ酸配列における第477番目のリシンをアルギニンに、第478番目のイソロイシンをリシンに、さらに第485番目のリシンをアルギニンに置換して得られた。その配列が配列番号4のアミノ酸配列である。更に、本発明のDNAポリメラーゼの更にもう1つ(6d pol)は、Pfu polのアミノ酸配列における第477番目のリシンをアルギニンに、第478番目のイソロイシンを6c polの場合のリシンと同様に塩基性残基であるアルギニンに、さらに第485番目のリシンをアルギニンに置換して得ることができる。そのアミノ酸配列が配列番号43のアミノ酸配列である。
なお、以下本明細書においては、アミノ酸の置換に関して、例えば、第502番目のリシンをアルギニンに置換することを「K502R」、第717番目のロイシンをプロリンに置換することを「L717P」のように、「置換前のアミノ酸残基の一文字略号、アミノ酸残基番号、置換後のアミノ酸残基の一文字略号」として記載する場合がある。
所定の2箇所のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有する本発明のDNAポリメラーゼ59a polと、所定の3箇所のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有する本発明のDNAポリメラーゼ6c polは、忠実性を保持しつつ、Pfu polと比べて伸長性に優れている。また、6d polも、478番目のイソロイシンが塩基性残基に置換されている点で6c polと同様であることから、6c polと同等或いはそれ以上の活性を持つものと推測される。PCRでは、一般に、増幅の標的とするDNA断片の長さなどの諸条件に応じて、用いるDNAポリメラーゼを適宜選択する。本発明のDNAポリメラーゼは忠実性及び伸長性の点でバランスが良く、PCRで用いられるDNAポリメラーゼの1つとして極めて有用である。また、本発明のDNAポリメラーゼは、実験条件などに対して過度に鋭敏ということもなく、再現性の点でも良好であり、汎用性の点でも良好な部類に入る。このように、本発明によりPCRにおいて使い勝手の良いDNAポリメラーゼが提供される。
本発明のDNAポリメラーゼ59a polは、Pfu polのアミノ酸配列における第502番目および第717番目においてアミノ酸残基の置換を行うことにより得ることができる。また、本発明のDNAポリメラーゼ6c polおよび6d polは、Pfu polのアミノ酸配列における第477番目、第478番目および第485番目においてアミノ酸残基の置換を行うことにより得ることができる。特定位置のアミノ酸残基を置換する方法は特に限定されず、公知の方法を用いてよい。例えば、Pfu polのアミノ酸配列における第502番目のリシンをアルギニンに置換する変異の導入は、例えば部位特異的変異法によって、本タンパク質(Pfu pol)をコードする塩基配列を備えるDNAにおいて第502番目のアミノ酸残基をコードする部位がリシンではなくアルギニンをコードするように塩基配列を改変することなどによって得られる。また、既に、特定部位のアミノ酸残基の置換するためのキットも市販されており、これを用いてもよい。Pfu polをコードするDNAは、例えば、Pyrococcus属に属する細菌、より好ましくはPyrococcus furiosus、より具体的にはPyrococcus furiosus ATCC43587株(DSM3638株)などから入手できる。ATCC番号が記載されている菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O.Box 1549 Manassas,VA 20110,the United States of America)に寄託されており、各番号を参照して分譲を受けることができる。一方、DSM番号が記載されている菌株は、ドイツ細胞バンク〔Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH〕(Mascheroder Weg 1b 38124 Braunschweig GERMANY)に寄託されており、各番号を参照して分譲を受けることができる。また、Pfu polの市販品としては、例えば、Pfu DNA Polymerase(Stratagene社製)などがあり、またPyrococcus属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrobest DNA Polymerase(「Pyrobest」は登録商標、TaKaRa社製)やPwo DNAポリメラーゼ(ロッシュ・アプライド・サイエンス社)などがある。なお、本発明のDNAポリメラーゼは、元々Pfu polを改変して得られたが、本発明のDNAポリメラーゼはその作製法に限定されるものではない。
また、本発明は、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、および(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のそれぞれと実質的に同一のタンパク質をも提供するものである。実質的に同一とは、(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が有するアミノ酸配列、(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、および(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のいずれかと高い相同性を有し、かつ、Pfu polに比べて優れた伸長性を示すDNA複製活性を有するタンパク質である。例えば、一つの実施形態としては、
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質、
(D)配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
が示される。
「数個」とは、2個以上の数を意味し、一般には数十個以下であり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
ここで、例えば(B)のタンパク質においても、配列番号2に示すアミノ酸配列における、N末端のアミノ酸残基を第1番目としたときの第502番目のアミノ酸残基はアルギニンであり、第717番目のアミノ酸残基はプロリンである。すなわち、(B)のタンパク質における変異は、第502番目のアミノ酸残基(アルギニン)および第717番目のアミノ酸残基(プロリン)以外の領域中の1または数個の部位において導入される。なお、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基(アルギニン)および第717番目のアミノ酸残基(プロリン)以外の部位に欠失、挿入などの変異が導入された場合、変異導入前の第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリンからのN末端またはC末端までのアミノ酸残基数は、変異導入前の状態とは異なることがあり得る。
配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に1若しくは数個のアミノ酸の変異を有する配列は、変異を有さない配列に対して、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上のホモロジーを有するものとすることができる。
また、変異を含み得る領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の立体構造を大きく変更しないものが好ましい。
一方、(D)のタンパク質においても、配列番号4に示すアミノ酸配列における、N末端のアミノ酸残基を第1番目としたときの第477番目のアミノ酸残基はアルギニンであり、第478番目のアミノ酸残基はリシンであり、第485番目のアミノ酸残基はアルギニンである。すなわち、(D)のタンパク質における変異は、第477番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第478番目のアミノ酸残基(リシン)、第485番目のアミノ酸残基(アルギニン)以外の領域中の1または数個の部位において導入される。なお、配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第478番目のアミノ酸残基(リシン)、第485番目のアミノ酸残基(アルギニン)以外の部位に欠失、挿入などの変異が導入された場合、変異導入前の第477番目のアルギニン、第478番目のリシン、第485番目のアルギニンからのN末端またはC末端までのアミノ酸残基数は、変異導入前の状態とは異なることがあり得る。
配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において第477番目のアルギニン、第478番目のリシン、第485番目のアルギニン以外の領域に1若しくは数個のアミノ酸の変異を有する配列は、変異を有さない配列に対して、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上のホモロジーを有するものとすることができる。
また、変異を含み得る領域は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の立体構造を大きく変更しないものが好ましい。
一方、(F)のタンパク質においても、配列番号43に示すアミノ酸配列における、N末端のアミノ酸残基を第1番目としたときの第477番目のアミノ酸残基はアルギニンであり、第478番目のアミノ酸残基はアルギニンであり、第485番目のアミノ酸残基はアルギニンである。すなわち、(F)のタンパク質における変異は、第477番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第478番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第485番目のアミノ酸残基(アルギニン)以外の領域中の1または数個の部位において導入される。なお、配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第478番目のアミノ酸残基(アルギニン)、第485番目のアミノ酸残基(アルギニン)以外の部位に欠失、挿入などの変異が導入された場合、変異導入前の第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニン、第485番目のアルギニンからのN末端またはC末端までのアミノ酸残基数は、変異導入前の状態とは異なることがあり得る。
配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列において第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニン、第485番目のアルギニン以外の領域に1若しくは数個のアミノ酸の変異を有する配列は、変異を有さない配列に対して、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上のホモロジーを有するものとすることができる。
また、変異を含み得る領域は、配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の立体構造を大きく変更しないものが好ましい。
また、本発明は、上記本発明のDNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。すなわち、上記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)または(F)に示すタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。コドンの縮合により1つのアミノ酸配列は複数の塩基配列種によりコードされ得る。アミノ酸配列は、コドン表により演繹される。配列番号2に記載のアミノ酸配列は、例えば配列番号1に記載の塩基配列によりコードされる。配列番号4に記載のアミノ酸配列は、例えば配列番号3に記載の塩基配列によりコードされる。なお、本明細書でいうポリヌクレオチドには、DNA、RNAが含まれ、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、さらにDNAおよびRNAのキメラ体、あるいはDNAおよびRNAのハイブリッド等が含まれる。
また、本発明により、(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド、(c)配列番号3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドおよび(e)配列番号42に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド、またはそれらと実質的に同一のポリヌクレオチドも提供される。例えば、実質的に同一のポリヌクレオチドの一形態としては、下記(b)、(d)および(f)に示すポリヌクレオチドが例示される。
(b)塩基配列が配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(d)塩基配列が配列表の配列番号3に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(f)塩基配列が配列表の配列番号42に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
例えば、(b)のポリヌクレオチドにおいて、配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンを、また配列番号2に記載のアミノ酸配列における第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしている。上記のように、本発明のタンパク質においては、所定の活性を有する範囲で、配列番号2のアミノ酸配列において第502番目および第717番目のアミノ酸残基以外の部位に変異が導入されていてもよい。同様に、本発明のポリヌクレオチドにおいては、配列番号2のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリンをコードする領域以外の部位において、(b)に記載の他の要件を満たす範囲で、配列番号1の塩基配列に変異が含まれていてもよい。
一方、(d)のポリヌクレオチドにおいて、配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンを、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンを、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしている。上記のように、本発明のタンパク質においては、所定の活性を有する範囲で、配列番号4に記載のアミノ酸配列において第477番目、第478番目および第485番目のアミノ酸残基以外の部位に変異が導入されていてもよい。同様に、本発明のポリヌクレオチドにおいては、配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニンをコードする領域以外の部位において、(d)に記載の他の要件を満たす範囲で、配列番号3の塩基配列に変異が含まれていてもよい。
一方、(f)のポリヌクレオチドにおいて、配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンを、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンを、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしている。上記のように、本発明のタンパク質においては、所定の活性を有する範囲で、配列番号4に記載のアミノ酸配列において第477番目、第478番目および第485番目のアミノ酸残基以外の部位に変異が導入されていてもよい。同様に、本発明のポリヌクレオチドにおいては、配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニンをコードする領域以外の部位において、(f)に記載の他の要件を満たす範囲で、配列番号42の塩基配列に変異が含まれていてもよい。
ポリヌクレオチドにおいても、変異を含み得る塩基配列領域は、配列番号2、配列番号4または配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の立体構造を大きく変更しないものが好ましい。また、同様に、上記のように配列番号2、配列番号4または配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同等の活性を備えるためには、機能ドメインではない部分をコードする塩基配列領域に変異が含まれていることが好ましい。
ハイブリダイズする遺伝子を得るために用いることができるプローブは、例えば配列番号1、配列番号3または配列番号42に記載の塩基配列に基づいて定法により作製することができる。また、プローブを用いてこれとハイブリダイズするポリヌクレオチドをつり上げ、目的とするポリヌクレオチドを単離する方法も、定法に従って行えばよい。例えば、DNAプローブはプラスミドやファージベクターにクローニングされた塩基配列を増幅し、プローブとして用いたい塩基配列を制限酵素により切り出し、抽出して調製することができる。切り出す箇所は、目的とするDNAに応じて調節することができる。
また、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
上記(b)、(d)または(f)に示すポリヌクレオチドは、その塩基配列が翻訳されたアミノ酸配列を備えるタンパク質が、DNA複製活性を有する。より具体的には、上記本発明のタンパク質について説明したのと同様に、Pfu polに比べて優れた伸長性を示すDNA複製活性を有するタンパク質である。
上記本発明のポリヌクレオチドは、適当なベクターに組み込み、組換えポリヌクレオチドとして用いることができる。本明細書において組換えポリヌクレオチドとは、2種以上のポリヌクレオチド同士が連結されたハイブリッド分子のことである。本発明の組換えポリヌクレオチドの好ましい形態としては発現ベクターが挙げられる。発現ベクターは様々な形態のものが既に知られており、また市販されているものもある。本発明では組換えポリヌクレオチドの形態は、用途などに応じて適宜選択してよく、市販の発現ベクターなど公知の発現ベクターを用いることができる。下記に限定されるものではないが発現ベクターに関連する具体例を示す。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13など)、酵母由来プラスミド(例、YEp24、YCp50など)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス、枯草菌に好適に用いられるプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194など)などの他、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主細胞が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが挙げられる。宿主細胞が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。また、動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。
発現ベクターは、組換え操作についての扱いやすさの観点からマルチクローニングサイトを有することが好ましい。また、以上の他に、発現ベクターには、所望により選択マーカー、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)、ターミネーターなどを組み込むことができる。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子(カルベニシリン耐性遺伝子ともいわれる。以下、AmpRと略称する場合がある)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(以下、CamRと略称する場合がある)、テトラサイクリン耐性遺伝子(以下、TetRと略称する場合がある)、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、NeoRと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。また、必要に応じて、宿主細胞に合ったシグナル配列を、本発明のランダムオリゴヌクレオチドまたはカセットのN端末側に付加する。宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主細胞が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主細胞が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、Rasファルネシル化・シグナル配列などをそれぞれ利用できる。
上記のように本発明のポリヌクレオチドを含む発現プラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入し、本発明のDNAポリメラーゼを発現する形質転換体を作製することができる。
宿主細胞としては、例えば、連鎖球菌(Streptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia coli)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌細胞;酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)などの真菌細胞;ドロソフィラS2(Drosophila S2)およびスポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、ボウズ(Bows)黒色腫細胞および血球系細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。
発現プラスミドの宿主細胞への導入は、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986); Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される方法により行うことができる。より具体的には、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、バイオリスティック導入(biolistics法)または感染等がある。
形質転換体の培養は、宿主の種類等に応じて調節して行えばよい。宿主の種類は多数に上るが、いくつかの具体例を挙げると次の通りである。例えば、宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地は液体培地でも寒天培地でもよく、その中には形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を配合する。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の好適な培地として具体的には、酵母エキス、トリプトン、塩(NaCl)を含むLB培地などが例示される。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)のような誘導剤を添加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、Burkholder最小培地、0.5%カザミノ酸を含有するSD培地などが挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
また、宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium (Grace,T.C.C.,Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地(The Journal of the American Medical Association、199巻、519(1967))、199培地(Proceeding of the Society for the Biological Medicine、73巻、1(1950))などが用いられる。pHは約6〜8であることが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。また必要に応じて、CO2濃度の調節を行う。
形質転換体に生成させた本発明のタンパク質は、必要に応じて、タンパク質精製の定法により、精製、単離することができる。以上のようにして、形質転換体を用いて、本発明のタンパク質を得ることができる。
2.DNAポリメラーゼの利用
本発明のDNAポリメラーゼは、核酸の増幅に利用することができる。本発明において増幅対象としうる核酸は、ヌクレオチドが重合してなるポリヌクレオチドであればいずれであっても良く、RNAかDNAかの別、その塩基長、一本鎖か二本鎖の別、環状か線状の別、などについては特に限定されない。また、DNAの場合、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAの別を問わない。さらに、RNAの場合、全RNA、mRNA、rRNA、および合成RNAの別も問わない。さらにまた、一本鎖の場合は、センス鎖であっても、アンチセンス鎖であっても良く、二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでも良い。そして、機能領域の別を問うものでもなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むものであっても良い。
本発明のDNAポリメラーゼを用いる核酸の増幅には、代表的な核酸増幅法であるPCRによることができる。PCRの基本原理については、本明細書の背景技術の項にて説明したとおりである。PCRの操作条件、例えばプライマーの設計、反応液組成、温度条件と反応時間・サイクル数などについては、特に限定されず、文献に従うことができる。
また、特殊なPCRに従って核酸増幅を行うこともできる。特殊なPCRとしては、例えば、RT-PCR、定温性PCR、nested PCR、ホットスタートPCR、マルチプレックスPCR、ロングPCR、RACE法(rapid amplification of DNA ends)、differential display RT-PCR(DDRT-PCR)、panhandle PCR、single-nucleotide primer extension assay等の特殊なPCRを挙げることができる。これらの特殊なPCRの操作条件は、DNAポリメラーゼとして本発明のタンパク質を用いること以外は特に限定されず、それぞれに関連する文献の記載等に従って行うことができる。
本発明のDNAポリメラーゼは、核酸の合成、突然変異誘導、又は標識・検出に利用することもできる。核酸の合成、突然変異誘導、又は標識・検出の対象となる核酸については、上記核酸増幅の説明において述べたのと同様、特に限定されない。
本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとした核酸の合成方法、核酸の突然変異誘導方法、及び核酸の標識・検出方法の具体的な条件や手法は、特に限定されないが、いずれも、上述した核酸増幅を利用して行うことが望ましい。
核酸の合成をPCRによって行う場合の一例を挙げると以下の通りである。まず、最初に目的とするDNA等の核酸の塩基配列を設計する。プライマーペアとして、お互いに相補鎖又はオーバーラップを3´末端に持つ長いオリゴヌクレオチド2本を用いて、お互いのプライマーを鋳型としてPCRを行う。続いて、増幅産物である核酸を適当なクローニングベクターに導入し、得られたクローンの配列をDNAシーケンサーで確認する。目的とする核酸が長鎖にわたる場合は、これを数個のセグメントに分け、各セグメントについて増幅を行い、配列確認後、制限酵素等を利用して接合しても良い。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる核酸合成は、遺伝子の合成の際利用することができる。
一方、核酸の突然変異誘導をPCRを利用して行う場合、例えば、変異誘導の対象となるDNA等の核酸に対し、目的の変異を持つプライマーを用いてPCRを行うことにより、目的の変異が導入されたPCR産物を得ることができる。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる突然変異誘導によれば、目的の部位に変異を正確且つ簡易に導入することができる。
さらに、核酸の標識・検出をPCRを利用して行う場合の一例を挙げると、次の通りである。まず、標識物質を含むプライマーを核酸配列鋳型と混合して本発明のDNAポリメラーゼを用いるPCRによって増幅するか、或いは、PCR反応液中に標識物質を含むdNTPを加えて増幅することにより、増幅産物として、標識された核酸配列が得られるので、これを電気泳動等の手法で検出する。標識物質(マーカー)とは、標識の有無を検出可能とする物質を意味し、例えば、放射性ヌクレオチド、蛍光物質、色素、ペプチド、抗体、抗原、レクチン、ビタミン、ステロイド等を挙げることができ、標識物質のプライマーへの導入は常法に従い行うことができる。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる核酸標識・検出によれば、遺伝子発現の解析、生物種、品種、多型もしくは1塩基置換の識別を正確且つ簡易に行うことができる。
3.試薬キット
本発明の試薬キットは、上記本発明のDNAポリメラーゼおよび必要に応じその他の試薬類を含む試薬キットである。
本発明の試薬キットに備えられるDNAポリメラーゼは、どのような形態であってもよく、精製タンパク質、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが組み込まれた組換えポリヌクレオチド、あるいはこの組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体などの形態が例示される。組換えポリヌクレオチドや形質転換体の好ましい形態については、上記で説明したとおりである。また、本発明のDNAポリメラーゼと他のDNAポリメラーゼを組み合わせてもよい。この場合、他のDNAポリメラーゼは、本発明のDNAポリメラーゼとは特性の異なるものを組み合わせ、より広範な条件に対応し得るキットとすることもできる。また、本発明のDNAポリメラーゼが、組換えDNAまたは形質転換体の形態で提供される場合には、本発明のDNAポリメラーゼを発現させるために用いられる試薬類等を備えてもよい。
また、本発明の試薬キットには、PCRに用いられる他の試薬類および試薬類を納める容器、試験に用いる容器等を備えてもよい。
本発明の試薬キットは、本発明のDNAポリメラーゼの優れた特質を生かして、核酸増幅用試薬キットとすることができる。本発明の試薬キットを、核酸増幅用試薬キットとする場合は、本発明のDNAポリメラーゼの他、核酸増幅に用いられる他の試薬類を含めることができる。核酸増幅に用いられる他の試薬類としては、例えばPCRの場合は、DNA合成の材料であるdNTP、PCR反応バッファー、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などの界面活性剤、プライマー、コントロールテンプレート、MgCl2、KCl、BSA(ウシ血清アルブミン)、RT-PCRを行うための逆転写酵素、RNase Inhibitorなどを挙げることができる。また、本発明のDNAポリメラーゼをその他のDNAポリメラーゼと併用する場合には、そのDNAポリメラーゼを含めることもできる。
また、本発明の試薬キットは、核酸合成用とすることができ、この場合は、本発明のDNAポリメラーゼの他、核酸合成に用いられる他の試薬類を含めることができる。核酸合成に用いられる他の試薬類としては、核酸増幅を利用して核酸合成を行う場合を例にとると、上記核酸増幅に用いられる他の試薬類に加えて、核酸合成試薬、シーケンスキット、核酸精製用アガロース、クローニングベクター、DNAリガーゼ、コンピテントセル等をさらに備えるものとすることができる。
さらに、本発明の試薬キットは、突然変異導入用とすることができ、この場合は、本発明のDNAポリメラーゼの他、突然変異導入に用いられる他の試薬類を含めることができる。突然変異導入に用いられる他の試薬類としては、核酸増幅を利用して突然変異導入を行う場合を例にとると、上記核酸増幅に用いられる他の試薬類において、プライマーとして標識物質を導入したプライマーを含有させれば良い。
本発明の試薬キットは、試薬類を収める容器や、本発明のDNAポリメラーゼを各種試薬と反応させるための反応容器を含むものとすることができる。
以下、実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1 Pfuポリメラーゼ変異体の作製
Pfuポリメラーゼ変異体His-tagged 59a pol(以下、「His-59a pol」と表記する)およびHis-tagged 6c pol(以下、「His-6c pol」と表記する)は、これをコードする遺伝子をクローニングし、変異を導入した上で、大腸菌宿主中で発現し、そのタンパク質を精製することにより得た。図1にその概略を示した。まず、Pyrococcus furiosus菌体よりゲノムDNAを調製し(S11)、ポリメラーゼ遺伝子断片をPCR法により調製し(S12)、この遺伝子断片を発現ベクターへ挿入した(S13)。次いで挿入されたポリメラーゼ遺伝子の目的部位へ置換変異を導入し(S14)、この発現プラスミドを大腸菌宿主へ導入し、発現株とした(S15)。発現株を培養しポリメラーゼ遺伝子の発現誘導を行い(S16)、培養菌体より目的タンパク質を精製した(S17)。
1.ゲノムDNAの調製(S11)
Pyrococcus furiosus DSM3638(単にPfuとも記す)は、ドイツ細胞バンク(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbH)より入手し、Uemori T,Ishino Y,Toh H,Asada K,Kato I.Organization and nucleotide sequence of the DNA polymerase gene from the archaeon Pyrococcus furiosus.Nucleic Acids Res.1993 Jan 25;21(2):259-65.に記載の方法に従って培養した。培養液をバッファー(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA, 100mM NaCl)10mLにけん濁し、10%SDSを1mL加えた。撹拌後、プレテイナーゼK(20mg/mL)を50μL加えて、55℃で60分静置した。その後反応液を順次フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出に供した後、エタノールを加えてDNAを不溶化した。
回収したDNAを1mLのTEバッファー(10mM Tris-HCl, pH8.0, 1mM EDTA)に溶解し、0.75mgのRNaseAを加えて37℃で60分反応させた。その後、反応液をもう一度フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出した後、エタノールを加えてDNAを回収した。こうして、Pyrococcus furiosus DSM3638のゲノムDNAを得た。
2.ポリメラーゼ遺伝子のPCR増幅(S12)
2.1 ポリメラーゼ遺伝子クローニング
Pyrococcus furiosusポリメラーゼ(Pfu polとも記す)の遺伝子は上記工程で調製したゲノムDNAを鋳型として、Pfu pol遺伝子の開始メチオニンから終止コドンを越える配列(NCBI accession No.AE010147の8,163-5,651に相当)をPCRを利用したクローニングを行うことによって獲得した。以下に詳細を説明する。
2.2 PCRプライマー
PCR用プライマーとしては、PFUPOL-FとPFUPOL-Rを使用した。PFUPOL-F(表1・配列番号5)は、制限酵素NheI認識配列、続いてPfu polの開始メチオニン以降に特異的にアニーリングするように設計されている。また、PFUPOL-R(表1・配列番号6)には制限酵素XhoI認識配列を5’端に付加した。
2.3 PCR反応液組成
PCR反応液は、次の組成とした(50μL反応液系への添加量として示す。)。
ゲノムDNA:100 ng
プライマー:各10 pmol
dNTP:各10 nmol
Ex Taq:1.25 U(タカラバイオ社製)
10 x Ex Taqバッファー:5μL
以上に滅菌水を添加して50μLとした。
2.4 PCRプログラム
上記で調製した反応液をPCR装置を利用して、95℃・30sec→55℃・30sec→72℃・1minを30サイクル繰り返すプログラムでPCR反応を行った。
2.5 PCR反応産物の精製
上記PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色を行った後、紫外線照射下で2500bp付近のバンドを含むゲルを切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用して同操作マニュアルに従いゲル中のPCR産物の精製を行った。
3.発現ベクターへの組み込み(S13)
3.1 PCR反応産物の制限酵素切断
上記で調製したPCR産物を制限酵素NheIとXhoIにより下記の通り二重切断した。
精製PCR産物:0.5μg
10X制限酵素バッファー:5μL
制限酵素NheI:5ユニット
制限酵素XhoI:5ユニット
以上の組成に滅菌水を添加して50μLとし、37℃で2時間制限酵素切断を行った。反応終了後1%アガロースゲル電気泳動を行った。Pfu pol遺伝子に相当するバンド(約2500bp付近)を切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用し、同操作マニュアルに従いゲルから精製を行った。
3.2 発現プラスミドの調製
発現ベクターとしてpRSET-A(インビトロジェン社)を使用した。
同ベクターDNAを制限酵素NheIとXhoIにより下記の通り二重切断した。
pRSET-A DNA:2μg
10X制限酵素バッファー:5μL
制限酵素NheI:5ユニット
制限酵素XhoI:5ユニット
以上の組成に滅菌水を添加して50μLとし、37℃で2時間静置した。反応終了後、1%アガロースゲル電気泳動を行った。pRSET-AベクターDNAの直線フォームに相当するバンド(約2.9kbp付近)を切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用し、同操作マニュアルに従いゲルからpRSET-A DNAの切断断片の精製を行った。
3.3 ライゲーション反応と形質転換
上記で得たポリメラーゼ遺伝子断片(50ng)とpRSET-A断片(50ng)をDNA LIGATION KIT V2(タカラバイオ社)を利用して以下の様に反応した。
ポリメラーゼ遺伝子断片:50ng
pRSET-A断片:50ng
DNA Ligation kit V2酵素液:5μL
以上の組成に滅菌水を加えて10μLとし、16℃で30分間反応した。
このライゲーション産物(3μL)により100μLの大腸菌E.coli BL21(DE3)(ノバジェン社)を形質転換し、大腸菌液をLB寒天プレート(100μg/mLアンピシリン含有)上に播種し37℃で一晩静置培養した。寒天プレート上に形成された大腸菌コロニーのうち5個をLB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)3mL、37℃にて終夜振とう培養し、常法に従いプラスミドDNAを調製した。
3.4 DNAシーケンシングによる配列確認
上記組換えプラスミドにつき、DNAシーケンサーを使用してプラスミドベクターpRSET-Aに挿入されたDNA配列と挿入部位近傍の配列を調べた。その結果、マルチクローニング部位のNheIとXhoI部分にポリメラーゼ遺伝子のオープンリーディングフレームが完全に挿入されていた。また、本プラスミドではpRSET-Aが保持するT7プロモーターの下流にrbs(リボソーム結合部位)、翻訳開始メチオニン、6xHisタグ、ポリメラーゼ遺伝子、T7ターミネーターの順に並んでいる事が確認された(本プラスミドをpHis-Pfuと呼ぶ)。
本プラスミドより産生されるポリメラーゼタンパク質はPfu polに対してN末端にHisタグを含む14アミノ酸残基が付加された融合タンパク質で、このポリメラーゼをHis-Pfu polと呼ぶこととした。
タンパク質のN末端もしくはC末端にタグを付加する方法は、目的タンパク質の本体の性質を変えることなく、目的タンパク質精製を簡便にする目的で、本分野では頻繁に利用される技術である。
配列番号7に融合タンパク質をコードする塩基配列を、配列番号8に塩基配列により推定されるアミノ酸配列を示した。配列番号7の塩基番号1〜42の部分(ATGCGGGGTT CTCATCATCA TCATCATCAT GGTATGGCTA GC)、及び配列番号8のアミノ酸残基番号1〜14番目の部分(MRGSHHHHHH GMAS)は発現ベクターpRSET-A由来の配列で主に6xHisタグ部に対応する。
4 ポリメラーゼ遺伝子への置換変異導入(S14)
より高機能なポリメラーゼを作成する目的で、His-Pfu polに対してアミノ酸置換を行った。アミノ酸置換は当該アミノ酸をコードする塩基を置換することにより行った。
ポリメラーゼ遺伝子への変異導入は変異を導入するプラスミドと変異導入用オリゴ(表2、配列番号9〜16)、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)を利用し、同操作マニュアルに従って行った。
変異導入後にはシーケンシングによりDNA配列を確認し、目的部位に変異が導入され、かつ目的以外の部位には変異がない点を確認した。
4.1 His-59a polの発現プラスミド作製
His-Pfu pol遺伝子に対して置換変異導入を行い、His-59a polの発現プラスミドを作製した。
まず、第一段階では、pHis-Pfuを鋳型プラスミドとして、表2に示すオリゴPF5c-F及びPF5c-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号9及び10記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、His-Pfu polの第731番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第717番目に相当)のアミノ酸であるロイシンがプロリンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu5cが得られた。
続く第二段階では、上記第一段階で作製したプラスミドpHis-Pfu5cを鋳型として、表2に示すオリゴPF9-F及びPF9-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号15及び16記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、先の変異に加え、His-Pfu polの第516番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第502番目に相当)のアミノ酸がリシンからアルギニンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu59aが得られた。
pHis-Pfu59aの変異型ポリメラーゼ遺伝子から発現ベクターpRSET-A由来の融合部分を取り除いたHisタグなしポリメラーゼの塩基配列を配列番号1に、また該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号2に示した。
4.2 His-6c polの発現プラスミド作製
His-Pfu pol遺伝子に対して置換変異導入を行い、His-6c polの発現プラスミドを作製した。
まず、第一段階では、pHis-Pfuを鋳型プラスミドとして、表2に示すオリゴPF6b-F及びPF6b-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号13及び14記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、His-Pfu polの第491番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第477番目に相当)のアミノ酸であるリシンがアルギニンに、His-Pfu polの第492番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第478番目に相当)のアミノ酸であるイソロイシンがリシンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu6bが得られた。
続く第二段階では、上記第一段階で作製したプラスミドpHis-Pfu6bを鋳型として、表2に示すオリゴPF6a-F及びPF6a-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号11及び12記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、先の変異に加え、His-Pfu polの第499番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第485番目に相当)のアミノ酸がリシンからアルギニンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu6cが得られた。
pHis-Pfu6cの変異型ポリメラーゼ遺伝子から発現ベクターpRSET-A由来の融合部分を取り除いたHisタグなしポリメラーゼの塩基配列を配列番号3に、また該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号4に示した。
5 発現株の作製(S15)
以上のように取得した、発現プラスミドpHis-Pfu、pHis-Pfu59a、及びpHis-Pfu6cにより大腸菌BL21(DE3)pLysS(ノバジェン社)を形質転換してHis-Pfu pol、His-59a pol及びHis-6c polの発現株とした。
6 発現株培養と遺伝子の発現誘導(S16)
発現株の培養を25℃で4日間行い、最終的にLB培地(50μg/mLアンピシリン含有)1,640mLのスケールで培養した。OD550値が約0.5になったところでIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度0.1mMになるように添加し、さらに4時間培養した。培養終了後、遠心操作により菌体を回収した。
7 タンパク質精製(S17)
7.1 菌体破砕・加熱処理
菌体破砕はB-PER Reagent(PIERCE社)25mL、DNAse I(タカラバイオ社)10μL、14.3M 2-ME(2−メルカプトエタノール)2μL,0.25M PMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride) 100μLを加えて行った。菌体破砕液を4分間煮沸してから、氷上で20分間静置した後、遠心して上清を回収した。
7.2 タンパク質精製
回収した菌体破砕液上清を,Ni2+をキレートしたHiTrap Chelating HPカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に吸着・溶出させた。目的タンパク質の溶出画分を分取し、透析により50mM Tris-HCl pH8.0、20mM NaClを含む緩衝液に置換した。これをRESOURCE Sカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に吸着・溶出させた。目的タンパク質の溶出画分を分取し、硫安沈殿した後、Storage Buffer(50mM Tris-HCl pH8.0, 0.1mM EDTA, 1mM DTT(シ゛チオスレイトール), 0.1% Tween20, 0.1% Nonidet P-40, 50% Glycerol)で溶解したものを精製標品とした。目的タンパク質(His-Pfu pol、His-59a pol、及びHis-6c pol)の標品の純度はいずれも90%以上であることをSDS-PAGEにより確認した(図2)。
実施例2 His-59a polとHis-6c polの伸長能の検定
各種酵素によりPCR反応を実施し、その産物(増幅断片)をアガロースゲル電気泳動により調べた。これにより各種酵素とHis-59a pol及びHis-6c polの伸長能を比較検定した。
以下においては、まず、PCR反応の条件、アガロースゲル電気泳動の条件及び電気泳動の結果と増幅量との関係を説明した後に、試験(1)〜(4)のそれぞれに固有の実施条件及び結果を示すこととする。
1.PCR反応の条件
1.1 PCR用酵素
本実施例では以下の6種の酵素を使用した。
1)His-Pfu polの野生型(以下、単に「WT」と略記することがある。)
2)上記の変異体であり、上記実施例1で得られたHis-59a pol(以下、単に「59a」と略記することがある。)
3)Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社、以下、単に「Pyr」と略記することがある。)Pyrobest DNA PolymeraseはPyrococcusより得られたα型DNAポリメラーゼで、高い忠実性を有するものの、伸長能ではPol I型DNAポリメラーゼに劣るとされている。
4)TaKaRa Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Taq」と略記することがある。)TaKaRa TaqはThermus aquaticus DNAポリメラーゼ遺伝子をクローニングし大腸菌にて発現させ精製した耐熱性DNAポリメラーゼである。本酵素はPol I型DNAポリメラーゼで、高い伸長性を有するものの忠実性が低い傾向がある。
5)TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Ex」と略記することがある。)は3’→5’ exonuclease活性(proof reading活性)を持つ耐熱性DNA Polymeraseである。通常のPCR条件下において、従来のTaq DNA Polymeraseと比べて、高い増幅効率、低いエラー率で高感度のPCRを実現できる。
6)His-Pfu pol(WT)の変異体であり、上記実施例1で得られたHis-6c pol(以下、単に「6c」と略記することがある。)
1.2 鋳型DNA
鋳型としては、ラムダDNA(Genbank accession 02459)とヒトゲノムDNAを用いた。ヒトゲノムDNAは、Promega社より販売されている製品(Promega G3041, Source:Human whole blood)を使用した。
1.3 PCRプログラム
PCRプログラムとして、「PYX」を使用した。これは、(i)98℃で10秒、(ii)68℃でX分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。以下の試験では、増幅される断片のサイズ(増幅サイズ)の大きさに合わせて伸長時間Xを適宜設定し、PY2、PY7、PY20、及びPY22のいずれかを使用した。
1.4 PCRバッファー
PCR反応においては、標的とする領域の鎖長や、GC含量、配列等により至適なPCRバッファーが異なることがある。市販PCR酵素にはメーカーにより至適化されたPCRバッファーが添付されている場合もある。本アッセイにおいては主に上記を考慮した自製PCRバッファーと製品添付バッファーを使用した(表3)。表3中、10×PCR Buffer(単に「PCB」と略記することがある)はTaKaRa Taqに添付されているバッファーであり、10×Ex Taq Buffer(単に「ExB」と略記することがある)はTaKaRa Ex Taqに添付されているバッファーである。自製バッファーにおいては、ラムダDNAを鋳型としたPCR反応の場合、標的鎖長が比較的短く、伸長時間が短い場合にはB#1が良好であり、標的鎖長が比較的長く、伸長時間が長い場合にはB#2が良好であることが予備的な実験により判明していたので、アッセイにおいてはこれらを使い分けた。また、ヒトゲノムを鋳型とした場合には、Mg2+の終濃度が1.5mMの場合(B#3)が2mMの場合(B#2)より優れていたのでB#3を使用した。酵素Pyrobestには、10xPyrobest Buffer IIが添付されているが、これより自製バッファーB#1、B#2及びB#3のいずれかとの組合せの方が良好であることを確認したので、以下の試験では上記自製バッファー3種類のいずれかを用いた。
1.5 PCRプライマー
プライマーは、表4(ラムダDNA用)と表5(ヒトゲノムDNA用)に示したものの中から適宜選択して利用した。
ラムダDNAの増幅に使用したプライマーは、F09、F10、F11、F13、F14、F16、F19、F23、F24、F25、R04、R11、R14、R15、R17、R18、R21、R22、R25、及びR27の20種類であり、それぞれの塩基配列は、表4および配列表の配列番号17〜36に示す通りである。
ヒトゲノムDNAについては、Human tissue plasminogen activator(PLAT)領域(Genbank accession No.K03021,36,594bp)を増幅の対象とした。増幅に使用したプライマーは、pf07、pf09、pf29、pr14及びpr34の5種類であり、それぞれの塩基配列は、表5および配列表の配列番号37〜41に示す通りである。
1.6 PCR反応液
DNA増幅部位と対応する使用プライマーの関係を表6,7に、PCR反応液の組成を表8,9に示す。ヒトゲノムDNA鋳型の場合とラムダDNA鋳型の場合とで異なる組み合わせのプライマーを使用すると共に、異なる鋳型量とした。
2.電気泳動
2.1 アガロースゲル電気泳動の条件
アガロースゲル電気泳動は、1%のアガロースゲルを使用して行った。また、マーカーとしてラムダ/Sty I digest(東洋紡)80ngをアプライした。伸長実験のサンプルは、50μL反応系のPCR反応液10μLをアプライした。
2.2 電気泳動の結果と増幅量との関連
本実験系では、PCR反応における増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行った結果、得られるゲル上のバンドのボリュームにより、PCR増幅産物の量を知ることができる。例えば、アガロースゲル電気泳動において、分子量マーカーのうち大きいサイズから3つ(19,330bp、7,740bp、6,220bp:図3参照)に相当するバンドと同等の量のバンドが観察された場合は,それぞれ、100μL反応系のPCR増幅産物として319ng、128ng、103ngの断片が得られたことに相当する。
3.伸長能検定
3.1(1)ラムダDNA 8.4kbp断片の増幅における各酵素の伸長能(図3)
ラムダDNA(Genbank accession 02459)の18,483-26,914塩基部分に相当する8,432bp断片をターゲットとした試験を行い、各種ポリメラーゼの伸長能を調べた。
増幅用プライマーは、表6に示すF24とR14の組み合わせを使用し、PCRプログラムは、PY2とし、PCR反応液組成は表8のようにした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#1を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。なお、Pyrobestには、前記したように、添付10xPyrobest Buffer IIよりバッファーB#1との組合せの方が反応が良好であることを確認した上でバッファーを選択している。
図3に、各PCR産物のアガロースゲル電気泳動像を示す。上下2つの画像は、同じゲルを露光を変えて表示したものである。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、Taqとほぼ同等であり、WTとPyrobestがまったく増幅できない条件で良好な増幅が得られている。His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polは、この条件ではHis-59a polよりも増幅量で劣っているが、WTとPyrobestよりも伸長能で明確に優れていることが確認された。
3.2(2)ラムダDNA 17.9kbp断片の増幅における各酵素の伸長能(図4)
増幅用プライマーは、表6に示すF10とR18の組み合わせを使用し、PCRプログラムは、PY7とし、PCR反応液組成は表8のようにした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#1を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。
図4に、各PCR産物のアガロースゲル電気泳動像を示す。上下2つの画像は、同じゲルを露光を変えて表示したものである。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、Exと6cを除くその他の酵素よりは良好であり、His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polは、この条件ではHis-59a polよりも増幅量で優れており、TaKaRa Ex Taqと比べて明確に劣ることは否めないが、高い伸長能を有することが確認された。
3.3 (3)ラムダDNA 20.6kbp断片の増幅における各酵素の伸長能(図5)
増幅用プライマーは、表6に示すF10とR22の組み合わせを使用し、PCRプログラムは、PY20、PCR反応液組成は表8のようにした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#2を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。
図5に、各PCR産物のアガロースゲル電気泳動像を示す。上下2つの画像は、同じゲルを露光を変えて表示したものである。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、その他の酵素よりは良好であり、His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polに関しては、この条件ではHis-59a polとほぼ同等の増幅量が得られており、TaKaRa Ex Taqと比べて明確に劣ることは否めないが、高い伸長能を有することが確認された。
3.4 (4)ヒトゲノムDNAを鋳型とした8.2-9.2kbp断片の増幅における各酵素の伸長能(図6及び図7)
ヒトゲノムDNAのうち、Human tissue plasminogen activator(PLAT)gene(Gen Bank Accession No.K03021,36,594bp)の3,960-12,126塩基部分に相当する8,167bp断片、24,869-33,370塩基部分に相当する8,502bp断片、及び3,010-12,126塩基部分に相当する9,117bp断片をターゲットとした試験を行い、各酵素の伸長能を調べた。
PCR反応液の組成を表9に示した。鋳型としては、ヒトゲノムDNA(Promega G3041,Source:Human whole blood)を利用した。
プライマーは、表7に示す3種類のプライマーの組み合わせを用いた。
PCRプログラムは、PY22とした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#3を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。なお、前者4種の酵素についてB#3を選択したのは、この条件での増幅では,バッファーのMgCl2濃度が終濃度2mMより低い方が良好であることに基づくものである。
図6及び図7に、ヒトゲノムDNAを鋳型としたPCR反応におけるアガロースゲル電気泳動の結果を示す。上下2つの画像は、同じゲルを露光を変えて表示したものである。
図6は、His‐59a pol、WT、Pyrobest、TaKaRa Taq、TaKaRa Ex Taqの5種の比較であり、図7は、TaKaRa Taqの代わりにHis-6c polを加えた5種の比較である。TaKaRa TaqとHis-6c pol以外の4種に関しては、同じプロトコルで2度反応を行い、再現性を調べた形になっている。
TaKaRa Ex Taqの場合、スメアに近くなっているが、これは大きい伸長能を有するTaKaRa Ex Taqには、このサイズの断片の増幅には伸長時間が長過ぎたために過剰に反応したのが原因と考えられる。8,167bp断片と9,117bp断片の増幅では目的バンドもきちんと増幅できているが、8,502bp断片では目的バンドの増幅量が少ない。この現象は伸長時間を短くしてスメアを起こらないようにしても同じであり、TaKaRa Ex Taqは24,869‐33,370塩基部分に相当する8,502bpの配列を増幅するのが困難であることが示された。これは標的とする鋳型配列が原因と考えられる。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polは、TaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣るようだが、その他の酵素よりは良好であり、また、TaKaRa Ex Taqでは増幅困難である24,869-33,370塩基部分に相当する8,502bpの配列の増幅では、むしろTaKaRa Ex Taqよりも良好な増幅が得られている。His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polに関しては、この条件ではHis-59a polとほぼ同等の増幅量が得られており、高い伸長能を有することが確認された。
以上の伸長能試験(1)〜(4)の結果、His-59a pol及びHis-6c polは、変異改良により野生型Pfu polよりも伸長能が向上したことが示された。TaKaRa Ex Taqよりは劣るものの、高い伸長能を有したPCR用酵素であると考えられる。
実施例3.His-59a polとHis-6c polの忠実性(fidelity)
His-59a polとHis-6c polを含む6種の酵素についてPCR反応時の鋳型忠実性を調べた。概略を図8に示した。まず、各酵素でPCR反応を行い(S61)、増幅されたDNA断片の末端を平滑化し(S62)、この断片をプラスミドベクターにクローニングし(S63)、大腸菌に導入しコロニーを単離、プラスミドを抽出する(S64、S65)。その後、各プラスミドの挿入配列をDNAシーケンサーで調べ(S66)、結果を比較し各酵素のエラー発生頻度を調べた(S67)。
1.PCR反応(S61)
1.1 PCR酵素
本実施例で使用した酵素は、Pfu polの野生型であるHis-Pfu pol(以下、単に「WT」と略記することがある。)、その変異体であり上記実施例1で得られたHis-59a pol(以下、単に「59a」と略記することがある。)とHis-6c pol(以下、単に「6c」と略記することがある。)、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製、以下、単に「Pyr」と略記することがある。)、TaKaRa Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Taq」と略記することがある。)、及びTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Ex」と略記することがある。)の6種である。
1.2 鋳型・標的領域
PCR反応の鋳型として、ラムダDNAを用い、8種の増幅断片について調べた。8種類の増幅断片のラムダDNA上の位置、サイズ(bp)、各断片を増幅するために用いたプライマーの組み合わせを、表10に示す。なお、プライマーの組み合わせは、表4に列挙されるラムダDNAの増幅用プライマーの中から、上記断片部分のそれぞれを増幅できるものを適宜選択したものである。
1.3 PCR反応液組成
表11には、PCR反応に使用する酵素、PCR用バッファー、PCRプログラムの組合せを示した。PCR反応液組成は、ラムダDNAが鋳型の場合の組成(表8)を用いた。
上記に説明した条件で、各酵素について表10に示した8種の断片をPCR反応により増幅した。
1.4 PCRプログラム
各酵素について採用したPCRプログラムを、表11に示した。PCRプログラムとして、LAX、PY2.5及びTAQ1.5を使用した。ここで、「LAX」とは、(i)94℃で30秒、(ii)68℃でX分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムであり、Xは増幅される断片のサイズ(増幅サイズ)の大きさに合わせて伸長時間Xを適宜設定し、下記の試験ではLA1.5またはLA2を選択して使用した。
「PY2.5」とは、(i)98℃で10秒、(ii)68℃で2.5分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。
「TAQ1.5」とは、(i)94℃で30秒、(ii)55℃で30秒、(iii)72℃で1.5分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。
2.PCR産物の精製・末端平滑化反応(S62)
上記PCR反応により得られた各種ポリメラーゼのPCR産物を1%アガロースゲル電気泳動に供しエチジウムブロマイド染色を行った後、目的サイズのDNA断片を含むゲルを切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用して同操作マニュアルに従いゲル中のPCR産物の精製を行った。生成したPCR産物はTaKaRa BKL Kit(Blunting Kination Ligation Kit)(タカラバイオ社製)を利用し、同キットマニュアルに従い、末端平滑化リン酸化反応に供した。
3.クローニングベクターへ挿入(S63)
末端平滑化リン酸化処理したPCR産物(50ng)と制限酵素HincII切断BAP処理済みDNA(pUC118 Hinc II/BAP・タカラバイオ社製)(50ng)について、以下の通りライゲーション反応を行った。
末端平滑化リン酸化処理したPCR産物:50ng
pUC118 Hinc II/BAP:50ng
DNA LIGATION KIT V2 酵素液:5mL
以上に滅菌水を加えて10μLとし、16℃で60分間反応した。
4.大腸菌コロニー単離・プラスミドの抽出精製(S64、S65)
上記ライゲーション産物(3μL)により100μLの大腸菌E.coli JM109(タカラバイオ社)を形質転換し、大腸菌液をLB寒天プレート(100μg/mLアンピシリン、IPTG、X-GAL各40μg/mL含有)上に播種し37℃で一晩静置培養した。寒天プレート上の白色を呈する大腸菌コロニーをTB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)1.5mL、37℃にて終夜振とう培養し、常法に従いプラスミドDNAを調製した。
5.挿入配列のシーケンシング(S66)
抽出したプラスミドを鋳型とし,DNAシーケンサーを使用してDNA配列を解析した。
PCR増幅断片のうちの500bpの配列を解析対象とした。
6.オリジナル配列との比較(S67)
結果を表12及び13に示した。表中の各用語は以下の通りである。
「Enzyme」;PCR反応時の酵素。
「ラムダDNA Position」;8種の増幅断片のうち解析対象となった塩基配列の位置を示す。
「Sample」;解析対象となったプラスミド数(コロニー数)を表す。
「Base」;シーケンス解析の対象となった塩基数。
「ND」;シーケンシングの乱れ等で解読不可能であった塩基数。
「All」;「ND」を除いて解読可能であった総塩基数。
「Error」;総塩基数「All」のうち複製エラーが確認された塩基数。
「Error rates」;解読できた総塩基数「All」に対する複製エラーが確認された塩基数「Error」の割合。
表12及び13に示すように、His-59a polの場合、618断片を解析したところ、総計308,889 basesに対して複製エラーは5 basesという結果(Error ratesは62kbに1個)が得られた。His-6c polの場合、712サンプルを解析したところ、総計355,540 basesに対して複製エラーは5 basesという結果(Error ratesは71kbに1個)が得られた。His-Pfu pol(WT)の場合、658サンプルを解析したところ、総計328,867 basesに対して複製エラーは3 basesという結果(Error ratesは110kbに1個)が得られた。Pyrobestの場合、665サンプルを解析したところ、総計332,391 basesに対して複製エラーは4 basesという結果(Error ratesは83kbに1個)が得られた。TaKaRa Ex Taqの場合、626サンプルを解析したところ総計312,921 basesに対して複製エラーは93 basesという結果(Error ratesは3.4kbに1個)が得られた。TaKaRa Taqの場合、622サンプルを解析したところ、総計310,827 basesに対して複製エラーは144 basesという結果(Error ratesは2.2kbに1個)が得られた。
酵素間で比較すると、TaKaRa Ex TaqとTaKaRa Taqの2種に比べて、His-59a pol、His-6c pol、His-Pfu pol(WT)、Pyrobestの4種はError ratesが1桁低く、両グループ間の複製忠実度に明確な差があることが観察された。
後者の4種の酵素(His-59a pol、His-6c pol、His-Pfu pol(WT)、Pyrobest)の間での比較に関しては,Error ratesに差はあるものの、複製エラー数が3〜5の少数であり、有意な差は検出されなかった。
上記の忠実度測定の結果、His-59a pol及びHis-6c polは高忠実度を有したPCR用酵素であると考えられる。
図1は、実施例におけるPfuポリメラーゼ変異体作製フローを概略的に示す図である。 図2は、実施例で得られた各種タンパク質標品の純度を示す図である。 図3は、各種酵素のラムダDNA(8.4kbp)に対する伸長能を示す図である。 図4は、各種酵素のラムダDNA(17.9kbp)に対する伸長能を示す図である。 図5は、各種酵素のラムダDNA(20.6kbp)に対する伸長能を示す図である。 図6は、各種酵素のヒトPLAT領域(8.2-9.2kb)に対する伸長能を示す図である。 図7は、各種酵素のヒトPLAT領域(8.2-9.2kb)に対する伸長能を示す図である。 図8は、実施例における忠実度測定フローを概略的に示す図である。

Claims (12)

  1. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる、DNA複製活性を有するタンパク質。
  2. 配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる、DNA複製活性を有するタンパク質。
  3. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  4. 配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  5. 配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
  6. 配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
  7. 請求項4〜のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
  8. 請求項に記載の組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
  9. 請求項に記載の形質転換体を培地中で培養し、DNA複製活性を有するタンパク質を発現させる、DNA複製活性を有するタンパク質の製造方法。
  10. DNAポリメラーゼとして請求項1または2に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸増幅方法。
  11. DNAポリメラーゼとして請求項1または2に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸の合成、突然変異誘導又は標識・検出方法。
  12. 請求項1または2に記載のタンパク質、請求項に記載の組換えポリヌクレオチド並びに請求項に記載の形質転換体からなる群から選ばれる1種を備えた試薬キット。
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