JP2008113604A - Dna複製活性を有するタンパク質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有し、DNA複製活性を有するタンパク質、または前記タンパク質における置換部位以外の領域に置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドが導入された形質転換体及びこれらの用途。
【選択図】なし
Description
なお、本発明者らは、伸長性に優れた改変型Pfu DNAポリメラーゼ(野生型Pfu DNAポリメラーゼの第2番目、第533番目、第538番目、第540番目、第545番目、第546番目をそれぞれバリン、チロシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、フェニルアラニンに変異させた改良型)を発明し、特許出願している(特許文献1)。また本発明者らは、増幅性に優れた改変型Pfu DNAポリメラーゼ(野生型Pfu DNAポリメラーゼの第2番目、第717番目アミノ酸残基をそれぞれバリン、プロリンに変異させた改良型;第2番目、第710番目、第712番目、第713番目、第717番目をそれぞれバリン、アルギニン、アルギニン、アスパラギン酸、プロリンに変異させた改良型)を発明し、特許出願している(特許文献2)。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[2] DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[3] DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[4] DNA複製活性を有する下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[5] DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[6] DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質
[7] 下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(b)塩基配列が配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[8] 下記(c)または(d)のポリヌクレオチド。
(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(d)塩基配列が配列表の配列番号3に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[9] 下記(e)または(f)のポリヌクレオチド。
(e)配列表の配列番号42に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(f)塩基配列が配列表の配列番号42に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[10] 前記[4]〜[9]のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
[11] 前記[10]に記載の組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
[12] 前記[11]に記載の形質転換体を培地中で培養し、DNA複製活性を有するタンパク質を発現させる、DNA複製活性を有するタンパク質の製造方法。
[13] DNAポリメラーゼとして前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸増幅方法。
[14] DNAポリメラーゼとして前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸の合成、突然変異誘導又は標識・検出方法。
[15] 前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のタンパク質、前記[10]に記載の組換えポリヌクレオチド並びに前記[11]に記載の形質転換体からなる群から選ばれる少なくとも1種を備えた試薬キット。
なお、以下本明細書においては、特に断らない限り、配列番号は配列表中の配列番号に対応する。
本発明のDNAポリメラーゼは、上記特性を利用して、PCRをはじめとする各種の核酸増幅に利用することができ、さらに核酸の合成、突然変異誘導、標識・検出等に応用することができる。
本発明のタンパク質は下記、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)または(F)に示すタンパク質である。本発明のタンパク質はDNA複製活性を有するタンパク質(DNAポリメラーゼ)である。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
なお、以下本明細書においては、アミノ酸の置換に関して、例えば、第502番目のリシンをアルギニンに置換することを「K502R」、第717番目のロイシンをプロリンに置換することを「L717P」のように、「置換前のアミノ酸残基の一文字略号、アミノ酸残基番号、置換後のアミノ酸残基の一文字略号」として記載する場合がある。
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質、
(D)配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質
が示される。
(b)塩基配列が配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(d)塩基配列が配列表の配列番号3に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(f)塩基配列が配列表の配列番号42に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明のDNAポリメラーゼは、核酸の増幅に利用することができる。本発明において増幅対象としうる核酸は、ヌクレオチドが重合してなるポリヌクレオチドであればいずれであっても良く、RNAかDNAかの別、その塩基長、一本鎖か二本鎖の別、環状か線状の別、などについては特に限定されない。また、DNAの場合、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAの別を問わない。さらに、RNAの場合、全RNA、mRNA、rRNA、および合成RNAの別も問わない。さらにまた、一本鎖の場合は、センス鎖であっても、アンチセンス鎖であっても良く、二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでも良い。そして、機能領域の別を問うものでもなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むものであっても良い。
また、特殊なPCRに従って核酸増幅を行うこともできる。特殊なPCRとしては、例えば、RT-PCR、定温性PCR、nested PCR、ホットスタートPCR、マルチプレックスPCR、ロングPCR、RACE法(rapid amplification of DNA ends)、differential display RT-PCR(DDRT-PCR)、panhandle PCR、single-nucleotide primer extension assay等の特殊なPCRを挙げることができる。これらの特殊なPCRの操作条件は、DNAポリメラーゼとして本発明のタンパク質を用いること以外は特に限定されず、それぞれに関連する文献の記載等に従って行うことができる。
核酸の合成をPCRによって行う場合の一例を挙げると以下の通りである。まず、最初に目的とするDNA等の核酸の塩基配列を設計する。プライマーペアとして、お互いに相補鎖又はオーバーラップを3´末端に持つ長いオリゴヌクレオチド2本を用いて、お互いのプライマーを鋳型としてPCRを行う。続いて、増幅産物である核酸を適当なクローニングベクターに導入し、得られたクローンの配列をDNAシーケンサーで確認する。目的とする核酸が長鎖にわたる場合は、これを数個のセグメントに分け、各セグメントについて増幅を行い、配列確認後、制限酵素等を利用して接合しても良い。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる核酸合成は、遺伝子の合成の際利用することができる。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる突然変異誘導によれば、目的の部位に変異を正確且つ簡易に導入することができる。
このような本発明のタンパク質をDNAポリメラーゼとして用いる核酸標識・検出によれば、遺伝子発現の解析、生物種、品種、多型もしくは1塩基置換の識別を正確且つ簡易に行うことができる。
本発明の試薬キットは、上記本発明のDNAポリメラーゼおよび必要に応じその他の試薬類を含む試薬キットである。
本発明の試薬キットに備えられるDNAポリメラーゼは、どのような形態であってもよく、精製タンパク質、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが組み込まれた組換えポリヌクレオチド、あるいはこの組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体などの形態が例示される。組換えポリヌクレオチドや形質転換体の好ましい形態については、上記で説明したとおりである。また、本発明のDNAポリメラーゼと他のDNAポリメラーゼを組み合わせてもよい。この場合、他のDNAポリメラーゼは、本発明のDNAポリメラーゼとは特性の異なるものを組み合わせ、より広範な条件に対応し得るキットとすることもできる。また、本発明のDNAポリメラーゼが、組換えDNAまたは形質転換体の形態で提供される場合には、本発明のDNAポリメラーゼを発現させるために用いられる試薬類等を備えてもよい。
本発明の試薬キットは、本発明のDNAポリメラーゼの優れた特質を生かして、核酸増幅用試薬キットとすることができる。本発明の試薬キットを、核酸増幅用試薬キットとする場合は、本発明のDNAポリメラーゼの他、核酸増幅に用いられる他の試薬類を含めることができる。核酸増幅に用いられる他の試薬類としては、例えばPCRの場合は、DNA合成の材料であるdNTP、PCR反応バッファー、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などの界面活性剤、プライマー、コントロールテンプレート、MgCl2、KCl、BSA(ウシ血清アルブミン)、RT-PCRを行うための逆転写酵素、RNase Inhibitorなどを挙げることができる。また、本発明のDNAポリメラーゼをその他のDNAポリメラーゼと併用する場合には、そのDNAポリメラーゼを含めることもできる。
Pfuポリメラーゼ変異体His-tagged 59a pol(以下、「His-59a pol」と表記する)およびHis-tagged 6c pol(以下、「His-6c pol」と表記する)は、これをコードする遺伝子をクローニングし、変異を導入した上で、大腸菌宿主中で発現し、そのタンパク質を精製することにより得た。図1にその概略を示した。まず、Pyrococcus furiosus菌体よりゲノムDNAを調製し(S11)、ポリメラーゼ遺伝子断片をPCR法により調製し(S12)、この遺伝子断片を発現ベクターへ挿入した(S13)。次いで挿入されたポリメラーゼ遺伝子の目的部位へ置換変異を導入し(S14)、この発現プラスミドを大腸菌宿主へ導入し、発現株とした(S15)。発現株を培養しポリメラーゼ遺伝子の発現誘導を行い(S16)、培養菌体より目的タンパク質を精製した(S17)。
Pyrococcus furiosus DSM3638(単にPfuとも記す)は、ドイツ細胞バンク(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbH)より入手し、Uemori T,Ishino Y,Toh H,Asada K,Kato I.Organization and nucleotide sequence of the DNA polymerase gene from the archaeon Pyrococcus furiosus.Nucleic Acids Res.1993 Jan 25;21(2):259-65.に記載の方法に従って培養した。培養液をバッファー(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA, 100mM NaCl)10mLにけん濁し、10%SDSを1mL加えた。撹拌後、プレテイナーゼK(20mg/mL)を50μL加えて、55℃で60分静置した。その後反応液を順次フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出に供した後、エタノールを加えてDNAを不溶化した。
2.1 ポリメラーゼ遺伝子クローニング
Pyrococcus furiosusポリメラーゼ(Pfu polとも記す)の遺伝子は上記工程で調製したゲノムDNAを鋳型として、Pfu pol遺伝子の開始メチオニンから終止コドンを越える配列(NCBI accession No.AE010147の8,163-5,651に相当)をPCRを利用したクローニングを行うことによって獲得した。以下に詳細を説明する。
PCR用プライマーとしては、PFUPOL-FとPFUPOL-Rを使用した。PFUPOL-F(表1・配列番号5)は、制限酵素NheI認識配列、続いてPfu polの開始メチオニン以降に特異的にアニーリングするように設計されている。また、PFUPOL-R(表1・配列番号6)には制限酵素XhoI認識配列を5’端に付加した。
PCR反応液は、次の組成とした(50μL反応液系への添加量として示す。)。
ゲノムDNA:100 ng
プライマー:各10 pmol
dNTP:各10 nmol
Ex Taq*:1.25 U(*タカラバイオ社製)
10 x Ex Taqバッファー:5μL
以上に滅菌水を添加して50μLとした。
上記で調製した反応液をPCR装置を利用して、95℃・30sec→55℃・30sec→72℃・1minを30サイクル繰り返すプログラムでPCR反応を行った。
上記PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色を行った後、紫外線照射下で2500bp付近のバンドを含むゲルを切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用して同操作マニュアルに従いゲル中のPCR産物の精製を行った。
3.1 PCR反応産物の制限酵素切断
上記で調製したPCR産物を制限酵素NheIとXhoIにより下記の通り二重切断した。
10X制限酵素バッファー:5μL
制限酵素NheI:5ユニット
制限酵素XhoI:5ユニット
以上の組成に滅菌水を添加して50μLとし、37℃で2時間制限酵素切断を行った。反応終了後1%アガロースゲル電気泳動を行った。Pfu pol遺伝子に相当するバンド(約2500bp付近)を切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用し、同操作マニュアルに従いゲルから精製を行った。
発現ベクターとしてpRSET-A(インビトロジェン社)を使用した。
同ベクターDNAを制限酵素NheIとXhoIにより下記の通り二重切断した。
10X制限酵素バッファー:5μL
制限酵素NheI:5ユニット
制限酵素XhoI:5ユニット
以上の組成に滅菌水を添加して50μLとし、37℃で2時間静置した。反応終了後、1%アガロースゲル電気泳動を行った。pRSET-AベクターDNAの直線フォームに相当するバンド(約2.9kbp付近)を切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用し、同操作マニュアルに従いゲルからpRSET-A DNAの切断断片の精製を行った。
上記で得たポリメラーゼ遺伝子断片(50ng)とpRSET-A断片(50ng)をDNA LIGATION KIT V2(タカラバイオ社)を利用して以下の様に反応した。
pRSET-A断片:50ng
DNA Ligation kit V2酵素液:5μL
以上の組成に滅菌水を加えて10μLとし、16℃で30分間反応した。
このライゲーション産物(3μL)により100μLの大腸菌E.coli BL21(DE3)(ノバジェン社)を形質転換し、大腸菌液をLB寒天プレート(100μg/mLアンピシリン含有)上に播種し37℃で一晩静置培養した。寒天プレート上に形成された大腸菌コロニーのうち5個をLB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)3mL、37℃にて終夜振とう培養し、常法に従いプラスミドDNAを調製した。
上記組換えプラスミドにつき、DNAシーケンサーを使用してプラスミドベクターpRSET-Aに挿入されたDNA配列と挿入部位近傍の配列を調べた。その結果、マルチクローニング部位のNheIとXhoI部分にポリメラーゼ遺伝子のオープンリーディングフレームが完全に挿入されていた。また、本プラスミドではpRSET-Aが保持するT7プロモーターの下流にrbs(リボソーム結合部位)、翻訳開始メチオニン、6xHisタグ、ポリメラーゼ遺伝子、T7ターミネーターの順に並んでいる事が確認された(本プラスミドをpHis-Pfuと呼ぶ)。
本プラスミドより産生されるポリメラーゼタンパク質はPfu polに対してN末端にHisタグを含む14アミノ酸残基が付加された融合タンパク質で、このポリメラーゼをHis-Pfu polと呼ぶこととした。
配列番号7に融合タンパク質をコードする塩基配列を、配列番号8に塩基配列により推定されるアミノ酸配列を示した。配列番号7の塩基番号1〜42の部分(ATGCGGGGTT CTCATCATCA TCATCATCAT GGTATGGCTA GC)、及び配列番号8のアミノ酸残基番号1〜14番目の部分(MRGSHHHHHH GMAS)は発現ベクターpRSET-A由来の配列で主に6xHisタグ部に対応する。
より高機能なポリメラーゼを作成する目的で、His-Pfu polに対してアミノ酸置換を行った。アミノ酸置換は当該アミノ酸をコードする塩基を置換することにより行った。
変異導入後にはシーケンシングによりDNA配列を確認し、目的部位に変異が導入され、かつ目的以外の部位には変異がない点を確認した。
His-Pfu pol遺伝子に対して置換変異導入を行い、His-59a polの発現プラスミドを作製した。
まず、第一段階では、pHis-Pfuを鋳型プラスミドとして、表2に示すオリゴPF5c-F及びPF5c-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号9及び10記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、His-Pfu polの第731番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第717番目に相当)のアミノ酸であるロイシンがプロリンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu5cが得られた。
His-Pfu pol遺伝子に対して置換変異導入を行い、His-6c polの発現プラスミドを作製した。
まず、第一段階では、pHis-Pfuを鋳型プラスミドとして、表2に示すオリゴPF6b-F及びPF6b-Rの組み合わせ(それぞれ配列表の配列番号13及び14記載の塩基配列参照)で置換変異を導入した。その結果、His-Pfu polの第491番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第477番目に相当)のアミノ酸であるリシンがアルギニンに、His-Pfu polの第492番目(野生型Pfu polで開始メチオニンから数えて第478番目に相当)のアミノ酸であるイソロイシンがリシンに置換変異されたプラスミドpHis-Pfu6bが得られた。
以上のように取得した、発現プラスミドpHis-Pfu、pHis-Pfu59a、及びpHis-Pfu6cにより大腸菌BL21(DE3)pLysS(ノバジェン社)を形質転換してHis-Pfu pol、His-59a pol及びHis-6c polの発現株とした。
発現株の培養を25℃で4日間行い、最終的にLB培地(50μg/mLアンピシリン含有)1,640mLのスケールで培養した。OD550値が約0.5になったところでIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を終濃度0.1mMになるように添加し、さらに4時間培養した。培養終了後、遠心操作により菌体を回収した。
7.1 菌体破砕・加熱処理
菌体破砕はB-PER Reagent(PIERCE社)25mL、DNAse I(タカラバイオ社)10μL、14.3M 2-ME(2−メルカプトエタノール)2μL,0.25M PMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride) 100μLを加えて行った。菌体破砕液を4分間煮沸してから、氷上で20分間静置した後、遠心して上清を回収した。
回収した菌体破砕液上清を,Ni2+をキレートしたHiTrap Chelating HPカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に吸着・溶出させた。目的タンパク質の溶出画分を分取し、透析により50mM Tris-HCl pH8.0、20mM NaClを含む緩衝液に置換した。これをRESOURCE Sカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に吸着・溶出させた。目的タンパク質の溶出画分を分取し、硫安沈殿した後、Storage Buffer(50mM Tris-HCl pH8.0, 0.1mM EDTA, 1mM DTT(シ゛チオスレイトール), 0.1% Tween20, 0.1% Nonidet P-40, 50% Glycerol)で溶解したものを精製標品とした。目的タンパク質(His-Pfu pol、His-59a pol、及びHis-6c pol)の標品の純度はいずれも90%以上であることをSDS-PAGEにより確認した(図2)。
各種酵素によりPCR反応を実施し、その産物(増幅断片)をアガロースゲル電気泳動により調べた。これにより各種酵素とHis-59a pol及びHis-6c polの伸長能を比較検定した。
以下においては、まず、PCR反応の条件、アガロースゲル電気泳動の条件及び電気泳動の結果と増幅量との関係を説明した後に、試験(1)〜(4)のそれぞれに固有の実施条件及び結果を示すこととする。
1.1 PCR用酵素
本実施例では以下の6種の酵素を使用した。
1)His-Pfu polの野生型(以下、単に「WT」と略記することがある。)
2)上記の変異体であり、上記実施例1で得られたHis-59a pol(以下、単に「59a」と略記することがある。)
3)Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社、以下、単に「Pyr」と略記することがある。)Pyrobest DNA PolymeraseはPyrococcusより得られたα型DNAポリメラーゼで、高い忠実性を有するものの、伸長能ではPol I型DNAポリメラーゼに劣るとされている。
4)TaKaRa Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Taq」と略記することがある。)TaKaRa TaqはThermus aquaticus DNAポリメラーゼ遺伝子をクローニングし大腸菌にて発現させ精製した耐熱性DNAポリメラーゼである。本酵素はPol I型DNAポリメラーゼで、高い伸長性を有するものの忠実性が低い傾向がある。
5)TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Ex」と略記することがある。)は3’→5’ exonuclease活性(proof reading活性)を持つ耐熱性DNA Polymeraseである。通常のPCR条件下において、従来のTaq DNA Polymeraseと比べて、高い増幅効率、低いエラー率で高感度のPCRを実現できる。
6)His-Pfu pol(WT)の変異体であり、上記実施例1で得られたHis-6c pol(以下、単に「6c」と略記することがある。)
鋳型としては、ラムダDNA(Genbank accession 02459)とヒトゲノムDNAを用いた。ヒトゲノムDNAは、Promega社より販売されている製品(Promega G3041, Source:Human whole blood)を使用した。
PCRプログラムとして、「PYX」を使用した。これは、(i)98℃で10秒、(ii)68℃でX分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。以下の試験では、増幅される断片のサイズ(増幅サイズ)の大きさに合わせて伸長時間Xを適宜設定し、PY2、PY7、PY20、及びPY22のいずれかを使用した。
PCR反応においては、標的とする領域の鎖長や、GC含量、配列等により至適なPCRバッファーが異なることがある。市販PCR酵素にはメーカーにより至適化されたPCRバッファーが添付されている場合もある。本アッセイにおいては主に上記を考慮した自製PCRバッファーと製品添付バッファーを使用した(表3)。表3中、10×PCR Buffer(単に「PCB」と略記することがある)はTaKaRa Taqに添付されているバッファーであり、10×Ex Taq Buffer(単に「ExB」と略記することがある)はTaKaRa Ex Taqに添付されているバッファーである。自製バッファーにおいては、ラムダDNAを鋳型としたPCR反応の場合、標的鎖長が比較的短く、伸長時間が短い場合にはB#1が良好であり、標的鎖長が比較的長く、伸長時間が長い場合にはB#2が良好であることが予備的な実験により判明していたので、アッセイにおいてはこれらを使い分けた。また、ヒトゲノムを鋳型とした場合には、Mg2+の終濃度が1.5mMの場合(B#3)が2mMの場合(B#2)より優れていたのでB#3を使用した。酵素Pyrobestには、10xPyrobest Buffer IIが添付されているが、これより自製バッファーB#1、B#2及びB#3のいずれかとの組合せの方が良好であることを確認したので、以下の試験では上記自製バッファー3種類のいずれかを用いた。
プライマーは、表4(ラムダDNA用)と表5(ヒトゲノムDNA用)に示したものの中から適宜選択して利用した。
ラムダDNAの増幅に使用したプライマーは、F09、F10、F11、F13、F14、F16、F19、F23、F24、F25、R04、R11、R14、R15、R17、R18、R21、R22、R25、及びR27の20種類であり、それぞれの塩基配列は、表4および配列表の配列番号17〜36に示す通りである。
DNA増幅部位と対応する使用プライマーの関係を表6,7に、PCR反応液の組成を表8,9に示す。ヒトゲノムDNA鋳型の場合とラムダDNA鋳型の場合とで異なる組み合わせのプライマーを使用すると共に、異なる鋳型量とした。
2.1 アガロースゲル電気泳動の条件
アガロースゲル電気泳動は、1%のアガロースゲルを使用して行った。また、マーカーとしてラムダ/Sty I digest(東洋紡)80ngをアプライした。伸長実験のサンプルは、50μL反応系のPCR反応液10μLをアプライした。
本実験系では、PCR反応における増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行った結果、得られるゲル上のバンドのボリュームにより、PCR増幅産物の量を知ることができる。例えば、アガロースゲル電気泳動において、分子量マーカーのうち大きいサイズから3つ(19,330bp、7,740bp、6,220bp:図3参照)に相当するバンドと同等の量のバンドが観察された場合は,それぞれ、100μL反応系のPCR増幅産物として319ng、128ng、103ngの断片が得られたことに相当する。
3.1(1)ラムダDNA 8.4kbp断片の増幅における各酵素の伸長能(図3)
ラムダDNA(Genbank accession 02459)の18,483-26,914塩基部分に相当する8,432bp断片をターゲットとした試験を行い、各種ポリメラーゼの伸長能を調べた。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#1を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。なお、Pyrobestには、前記したように、添付10xPyrobest Buffer IIよりバッファーB#1との組合せの方が反応が良好であることを確認した上でバッファーを選択している。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、Taqとほぼ同等であり、WTとPyrobestがまったく増幅できない条件で良好な増幅が得られている。His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polは、この条件ではHis-59a polよりも増幅量で劣っているが、WTとPyrobestよりも伸長能で明確に優れていることが確認された。
増幅用プライマーは、表6に示すF10とR18の組み合わせを使用し、PCRプログラムは、PY7とし、PCR反応液組成は表8のようにした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#1を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、Exと6cを除くその他の酵素よりは良好であり、His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polは、この条件ではHis-59a polよりも増幅量で優れており、TaKaRa Ex Taqと比べて明確に劣ることは否めないが、高い伸長能を有することが確認された。
増幅用プライマーは、表6に示すF10とR22の組み合わせを使用し、PCRプログラムは、PY20、PCR反応液組成は表8のようにした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#2を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。
His-59a polと他の酵素とを比較した結果では、His-59a polがTaKaRa Ex Taqと比べて伸長能において劣ることは否めないが、その他の酵素よりは良好であり、His-59a polは高い伸長能を有することが確認された。
His-6c polに関しては、この条件ではHis-59a polとほぼ同等の増幅量が得られており、TaKaRa Ex Taqと比べて明確に劣ることは否めないが、高い伸長能を有することが確認された。
ヒトゲノムDNAのうち、Human tissue plasminogen activator(PLAT)gene(Gen Bank Accession No.K03021,36,594bp)の3,960-12,126塩基部分に相当する8,167bp断片、24,869-33,370塩基部分に相当する8,502bp断片、及び3,010-12,126塩基部分に相当する9,117bp断片をターゲットとした試験を行い、各酵素の伸長能を調べた。
プライマーは、表7に示す3種類のプライマーの組み合わせを用いた。
PCRプログラムは、PY22とした。
PCR用バッファーは、His-59a pol、His-6c pol、WT、及びPyrobestにはB#3を、TaKaRa TaqにはPCBを、TaKaRa Ex TaqにはExBを用いた。なお、前者4種の酵素についてB#3を選択したのは、この条件での増幅では,バッファーのMgCl2濃度が終濃度2mMより低い方が良好であることに基づくものである。
図6は、His‐59a pol、WT、Pyrobest、TaKaRa Taq、TaKaRa Ex Taqの5種の比較であり、図7は、TaKaRa Taqの代わりにHis-6c polを加えた5種の比較である。TaKaRa TaqとHis-6c pol以外の4種に関しては、同じプロトコルで2度反応を行い、再現性を調べた形になっている。
His-6c polに関しては、この条件ではHis-59a polとほぼ同等の増幅量が得られており、高い伸長能を有することが確認された。
His-59a polとHis-6c polを含む6種の酵素についてPCR反応時の鋳型忠実性を調べた。概略を図8に示した。まず、各酵素でPCR反応を行い(S61)、増幅されたDNA断片の末端を平滑化し(S62)、この断片をプラスミドベクターにクローニングし(S63)、大腸菌に導入しコロニーを単離、プラスミドを抽出する(S64、S65)。その後、各プラスミドの挿入配列をDNAシーケンサーで調べ(S66)、結果を比較し各酵素のエラー発生頻度を調べた(S67)。
1.1 PCR酵素
本実施例で使用した酵素は、Pfu polの野生型であるHis-Pfu pol(以下、単に「WT」と略記することがある。)、その変異体であり上記実施例1で得られたHis-59a pol(以下、単に「59a」と略記することがある。)とHis-6c pol(以下、単に「6c」と略記することがある。)、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製、以下、単に「Pyr」と略記することがある。)、TaKaRa Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Taq」と略記することがある。)、及びTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社、以下、単に「Ex」と略記することがある。)の6種である。
PCR反応の鋳型として、ラムダDNAを用い、8種の増幅断片について調べた。8種類の増幅断片のラムダDNA上の位置、サイズ(bp)、各断片を増幅するために用いたプライマーの組み合わせを、表10に示す。なお、プライマーの組み合わせは、表4に列挙されるラムダDNAの増幅用プライマーの中から、上記断片部分のそれぞれを増幅できるものを適宜選択したものである。
表11には、PCR反応に使用する酵素、PCR用バッファー、PCRプログラムの組合せを示した。PCR反応液組成は、ラムダDNAが鋳型の場合の組成(表8)を用いた。
上記に説明した条件で、各酵素について表10に示した8種の断片をPCR反応により増幅した。
各酵素について採用したPCRプログラムを、表11に示した。PCRプログラムとして、LAX、PY2.5及びTAQ1.5を使用した。ここで、「LAX」とは、(i)94℃で30秒、(ii)68℃でX分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムであり、Xは増幅される断片のサイズ(増幅サイズ)の大きさに合わせて伸長時間Xを適宜設定し、下記の試験ではLA1.5またはLA2を選択して使用した。
「PY2.5」とは、(i)98℃で10秒、(ii)68℃で2.5分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。
「TAQ1.5」とは、(i)94℃で30秒、(ii)55℃で30秒、(iii)72℃で1.5分の30サイクルでDNAを増幅するプログラムである。
上記PCR反応により得られた各種ポリメラーゼのPCR産物を1%アガロースゲル電気泳動に供しエチジウムブロマイド染色を行った後、目的サイズのDNA断片を含むゲルを切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purificationキット(アマシャムバイオサイエンス社)を使用して同操作マニュアルに従いゲル中のPCR産物の精製を行った。生成したPCR産物はTaKaRa BKL Kit(Blunting Kination Ligation Kit)(タカラバイオ社製)を利用し、同キットマニュアルに従い、末端平滑化リン酸化反応に供した。
末端平滑化リン酸化処理したPCR産物(50ng)と制限酵素HincII切断BAP処理済みDNA(pUC118 Hinc II/BAP・タカラバイオ社製)(50ng)について、以下の通りライゲーション反応を行った。
末端平滑化リン酸化処理したPCR産物:50ng
pUC118 Hinc II/BAP:50ng
DNA LIGATION KIT V2 酵素液:5mL
以上に滅菌水を加えて10μLとし、16℃で60分間反応した。
上記ライゲーション産物(3μL)により100μLの大腸菌E.coli JM109(タカラバイオ社)を形質転換し、大腸菌液をLB寒天プレート(100μg/mLアンピシリン、IPTG、X-GAL各40μg/mL含有)上に播種し37℃で一晩静置培養した。寒天プレート上の白色を呈する大腸菌コロニーをTB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)1.5mL、37℃にて終夜振とう培養し、常法に従いプラスミドDNAを調製した。
抽出したプラスミドを鋳型とし,DNAシーケンサーを使用してDNA配列を解析した。
PCR増幅断片のうちの500bpの配列を解析対象とした。
結果を表12及び13に示した。表中の各用語は以下の通りである。
「Enzyme」;PCR反応時の酵素。
「ラムダDNA Position」;8種の増幅断片のうち解析対象となった塩基配列の位置を示す。
「Sample」;解析対象となったプラスミド数(コロニー数)を表す。
「Base」;シーケンス解析の対象となった塩基数。
「ND」;シーケンシングの乱れ等で解読不可能であった塩基数。
「All」;「ND」を除いて解読可能であった総塩基数。
「Error」;総塩基数「All」のうち複製エラーが確認された塩基数。
「Error rates」;解読できた総塩基数「All」に対する複製エラーが確認された塩基数「Error」の割合。
後者の4種の酵素(His-59a pol、His-6c pol、His-Pfu pol(WT)、Pyrobest)の間での比較に関しては,Error ratesに差はあるものの、複製エラー数が3〜5の少数であり、有意な差は検出されなかった。
上記の忠実度測定の結果、His-59a pol及びHis-6c polは高忠実度を有したPCR用酵素であると考えられる。
Claims (15)
- DNA複製活性を有する下記(A)または(B)のタンパク質。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - DNA複製活性を有する下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(A)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアルギニンおよび第717番目のプロリン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - DNA複製活性を有する下記(C)または(D)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(C)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(D)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のリシンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - DNA複製活性を有する下記(E)または(F)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(E)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(F)配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアルギニン、第478番目のアルギニンおよび第485番目のアルギニン以外の領域に、置換、欠失、挿入および付加からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有するタンパク質 - 下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(b)塩基配列が配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列における第502番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第717番目のアミノ酸残基に相当する部位がプロリンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド - 下記(c)または(d)のポリヌクレオチド。
(c)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(d)塩基配列が配列表の配列番号3に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がリシンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド - 下記(e)または(f)のポリヌクレオチド。
(e)配列表の配列番号42に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(f)塩基配列が配列表の配列番号42に記載の塩基配列と相補的なポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、配列表の配列番号43に記載のアミノ酸配列における第477番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第478番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードし、第485番目のアミノ酸残基に相当する部位がアルギニンをコードしており、かつ、DNA複製活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド - 請求項4〜9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項10に記載の組換えポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
- 請求項11に記載の形質転換体を培地中で培養し、DNA複製活性を有するタンパク質を発現させる、DNA複製活性を有するタンパク質の製造方法。
- DNAポリメラーゼとして請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸増幅方法。
- DNAポリメラーゼとして請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNA複製活性を有するタンパク質を用いる核酸の合成、突然変異誘導又は標識・検出方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項10に記載の組換えポリヌクレオチド並びに請求項11に記載の形質転換体からなる群から選ばれる少なくとも1種を備えた試薬キット。
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