JP5177577B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
ここで、パワーローラ11のスラスト玉軸受24では、ドラッグロスが発生するとともに、回転中の保持器27と玉26の接触点に作用するフリクションロスがある。このフリクションロスは、パワーローラ11の回転速度や玉と保持器との速度差による進みと遅れの影響も受けるが、保持器の重量の影響も無視できない。
トロイダル型無段変速機の保持器27は、内輪軌道と外輪軌道とにより保持された玉に支持された状態となっていることが多い。さらに、トロイダル型無段変速機では、構造上パワーローラの回転軸方向が重力の作用する方向に略直交するように設置される場合が多い。
そこで、スラスト玉軸受24の外輪28に保持器27を案内させる外輪案内方式の保持器27が考えられる。これにより、保持器27と玉26との接触点に作用するフリクションを減少させることができる。
また、スラスト玉軸受24への潤滑油の供給においては、内輪となるパワーローラ11が入力側ディスク2および出力側ディスク3となるトラクション面を有することで、外輪28より温度が高くなることから、保持器27の形状を加工することにより、外輪28より内輪側に潤滑油を多く供給し、効率的に内輪および外輪28を冷却することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、外輪28より内輪(パワーローラ11)側に潤滑油を多く供給するために、保持器27を加工することにより保持器27の製造コストが増加する。そこで、例えば、保持器27において、フリクションロスを低減するための構造と、外輪28より内輪側に潤滑油を多く供給する構造とを共通化することで、保持器7の加工コストの増加を低減することが求められている。
前記スラスト転がり軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪および外輪との間で転動する複数の転動体と、これらの複数の転動体を転動自在に保持するとともに中央に円孔を有する保持器とを備えるトロイダル型無段変速機において、
前記外輪には、前記保持器の前記円孔に挿入されるとともに、この保持器の前記円孔の内周面に沿ってこの保持器を回転自在に案内する案内部が設けられ、
前記保持器の前記内周面には、この保持器の回転に伴って、この保持器の前記内周面側に供給される潤滑油に前記内周面より内側に向う動圧を生じさせる動圧溝が前記保持器の回転軸方向に沿って設けられ、
前記動圧溝は、前記保持器の前記内輪側の面で一方の端が開放された状態に形成され、前記保持器の前記外輪側の面で他方の端が閉塞された状態に形成されていることを特徴とする。
また、内輪側に内輪を十分に冷却可能な量の潤滑油を確実に供給することができる。
なお、本発明の特徴は、スラスト転がり軸受24の保持器27xと外輪28xの構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図6および図7と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1に示すように、この例のスラスト転がり軸受24は、従来と同様に、パワーローラ11によって形成される内輪と、外輪28xと、これらの内輪および外輪28xとの間で転動する複数の転動体26と、これらの複数の転動体26を転動自在に保持するとともに中央に円孔27aを有する保持器27xとを備えている。
なお、この例においては、外輪28xと変位軸23が一体に形成されており、外輪28xが穴の無い円板状に形成され、外輪28xの内輪側の面(内面)に変位軸23の先端部23bが設けられ、外輪28xの内輪の反対側の面(外面)に変位軸23の基端部23cが設けられている。
また、外輪28xの内面の中央部の前記先端部23bの基部となる部分には、先端部23bより少し径の大きな円柱状の案内部28aが形成されている。この案内部28aから先端部23bが延出した状態に形成されるとともに、円柱状の案内部28aと円柱状の先端部23bは同軸上に配置されている。
また、外輪28xには、トラニオン15側から潤滑油が供給される第1油路28cと第2油路28dが設けられている。これら第1油路28cおよび第2油路28dは、パワーローラ11の回転軸方向に沿って設けられており、第1油路28cは、外輪28xの変位軸23の先端部23bの部分を貫通した状態に形成されている。第2油路28dは、外輪28xの案内部28aより外周側で外輪軌道28bより内周側の部分を貫通して形成されている。
また、第2油路28dは、トラニオン15から供給された潤滑油を保持器27xの後述ポケット27bより内周側に向って吐出する。
図2に示すように、保持器27xは、中央に円孔27aを有する円板状(円環状)の部材で、外周面と円孔27aの内周面との間に周方向に沿って間隔をあけて複数のポケット27bが設けられている。ポケット27bは、周方向に等間隔に配置されている。また、ポケット27bは、この例において円形の貫通孔であり、ポケット27bに転動体26が配置されて、転動体26を保持している。なお、図2において、図示されている保持器27xの上側を向く面が内輪側を向く面となっている。
凹溝27cの幅は、ポケット27bの径より小さく、凹溝27cは、ポケット27bで途切れた状態であり、ポケット27bより外周側と内周側に分かれた状態となっている。
動圧溝27eは、保持器27xの回転軸方向、すなわち厚み方向に沿って形成されたものであるが、保持器27xが概略円板状であり、動圧溝27eの長さは極めて短いものとされており、長さより幅の方が長くなっている。
なお、例えば、不等辺三角形状の動圧溝27eを削り加工する場合に、不等辺三角形の頂点となる隅部を二つの線分を突き当てた状態の角状には加工できないので、前記隅部を円弧状としてもよい。また、この際に、前記隅部の形状を半径の異なる複数の円弧を複合して形成した状態としてもよい。但し、動圧溝27eを削り加工ではなく、転造のように何かを押し付けて加工するような場合には、前記隅部を円弧としなくとも動圧溝27eを加工可能である。
この保持器27xの内周面に潤滑油が供給された状態で保持器27xが回転すると、動圧溝27eにより保持器27xの円孔27aの径方向中心側に向う動圧が生じるようになっている。例えば、前記くさび型の動圧溝27eを有する保持器27xにおいて、前記他方向が回転方向で、前記一方向が回転方向の逆方向とした場合に上述の動圧が生じる。
なお、後述のように切欠部27dを設けない構成としてもよいが、その場合でも動圧溝27eの一方の端は、保持器27xの内輪側の面で開放されている必要がある。
言い換えると、動圧溝27eは、保持器27xの内周面の内輪側に形成され、内周面の外輪側の側縁部には、動圧溝27eが形成されていない状態となっている。
したがって、保持器27xを外輪案内方式とすることで、保持器27xと転動体26との接触部におけるフリクションが低減されていることから、さらに保持器27xと外輪28xとのフリクションが低減されることにより、スラスト転がり軸受24全体のフリクションを低減することができる。
また、この例において、保持器27xの内輪側の面の内周部分にだけ形成され、内周面に開放された状態の切欠部27dも、保持器27xの内周面側に供給された潤滑油を保持器27xの外輪28x側の面より保持器27xの内輪側の面に多く誘導するものとなっている。上述のように内輪側の方が外輪28x側より高温となり、内輪側に外輪28x側より多くの潤滑油を供給することにより、潤滑油により効率的に内輪および外輪28xを冷却することが可能となり、潤滑油の供給量の低減を図ることができる。
なお、第1実施形態において、保持器27xに放射状に形成される凹溝27cを形成しないものとしてもよいし、保持器27xの内輪側の面の内周縁部に設けられる切欠部27dを設けないものとしてもよい。
なお、第2実施形態のトロイダル型無段変速機は、第1実施形態に対して、スラスト転がり軸受24の保持器27yの内輪側の面および外輪側28の面の形状を変更したものであり、保持器27yの二つの前記面以外の構成は、第1実施形態と同様となっている。
図3に示すように第2実施形態の保持器27yは、円孔27aを備え、かつ、第1実施形態の保持器27yと同様に、ポケット27bを備えるとともに、保持器27yの内輪側を向く面の内周縁部に切欠部27dが設けられている。さらに、第2実施形態の保持器27yは、第1実施形態の保持器27xと同様に、動圧溝27eを備えており、この動圧溝27eにより第1実施形態と同様の作用効果を奏するものとなっている。
すなわち、保持器27yの前記二つの面には、それぞれ保持器27yの軸方向に膨出した凸部27g,27hが形成されている。
これら凸部27g、27hは、断面円弧状の溝である外輪軌道28bおよび内輪軌道11eに対応したものであり、外輪軌道28bおよび内輪軌道11eに対応した断面円弧状に形成されている。
したがって、各凸部27h、27hの周方向の端部は、円孔状のポケット27bの内周面に繋がる円弧状の凹部となっている。
したがって、この保持器27xの部分への潤滑油が多いと、この保持器27xと外輪軌道28bの内面もしくは内輪軌道11eの内面との間の空間に潤滑油が溜まることになる。
これにより外輪軌道28bおよび内輪軌道11eに沿って移動する転動体26は、潤滑油が溜まった状態の外輪軌道28bおよび内輪軌道11e内を移動することになる。これによりスラスト転がり軸受24で大きなドラッグロスが生じる虞がある。
これにより、転動体26が外輪軌道28bおよび内輪軌道11e内に溜まった潤滑油内を転動する状態となるのを防止し、潤滑油を拡散することによるドラッグロスを低減することができる。
なお、第3実施形態のトロイダル型無段変速機は、第1実施形態および第2実施形態のトロイダル型無段変速機の外輪28xの油路の形状を変更したもので、それ以外の構成については第1実施形態もしくは第2実施形態と同様となっている。
油孔28gは、第1実施形態の第1油路28cと同じ位置に形成されるが、変位軸23の先端部23bの先端面側に貫通せず、外輪28yの外面から案内部28aを超えて先端部23b内に油孔28gの先端部が配置されている。
この二つの油孔28h,28gからなる第3油路28fによれば、トラニオン15に形成された図示しない油路を介して油孔28hの外輪28yの外面側の開口から油孔28gに向って潤滑油が流入し、油孔28gに流入した潤滑油は、案内部28aの外周面に形成された油孔28gの開口から直接、案内部28aの外周面に対向する保持器27x,27yの円孔27aの内周面に吐出される。
また、保持器27x,27yの内周面に直接供給された潤滑油は、その一部が動圧溝27e内に流入する。この際に動圧溝27eは、その一方の端が保持器27x、27yの内輪側を向く面に開放され、他方の端側が保持器27x,27yの外輪側を向く面で閉塞されているので、動圧溝27eに流入した潤滑油は、保持器27x,27yの外輪側を向く面側より内輪側を向く面により多く供給され、外輪28yより内輪をより冷却する状態となる。
また、保持器27x、27y内周面の動圧溝27eをくさび型のものとしたが、動圧溝27eの形状は、くさび型の形状に限られるものではなく、保持器27x,27yの回転により、動圧を生じる形状ならばよく、周知の各種動圧溝を適用可能である。
3 出力側ディスク
11 パワーローラ(内輪)
14 枢軸
15 トラニオン
24 スラスト転がり軸受
26 転動体
27a 円孔
27e 動圧溝
27x 保持器
27y 保持器
28 外輪
28a 案内部
28f 第3油路(油路)
28h 油孔(油路)
Claims (3)
- それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し、かつ、前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、前記パワーローラと前記トラニオンとの間に介在され、かつ、前記パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を受けつつ前記パワーローラを回転自在に支持するスラスト転がり軸受とを備え、
前記スラスト転がり軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪および外輪との間で転動する複数の転動体と、これらの複数の転動体を転動自在に保持するとともに中央に円孔を有する保持器とを備えるトロイダル型無段変速機において、
前記外輪には、前記保持器の前記円孔に挿入されるとともに、この保持器の前記円孔の内周面に沿ってこの保持器を回転自在に案内する案内部が設けられ、
前記保持器の前記内周面には、この保持器の回転に伴って、この保持器の前記内周面側に供給される潤滑油に前記内周面より内側に向う動圧を生じさせる動圧溝が前記保持器の回転軸方向に沿って設けられ、
前記動圧溝は、前記保持器の前記内輪側の面で一方の端が開放された状態に形成され、前記保持器の前記外輪側の面で他方の端が閉塞された状態に形成されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 前記外輪には、前記保持器の内周面に潤滑油を直接供給する油路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
- 前記油路の前記保持器の前記内周面側に向って開口する端部の前記パワーローラの回転中心軸方向に沿った位置が、前記保持器の内周面と同じ位置とされていることを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
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