JP5177296B2 - 液圧ブレーキシステム - Google Patents
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Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備される液圧ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される液圧ブレーキシステムの中には、例えば、下記特許文献に記載されているようなシステム、つまり、運転者によるブレーキ操作部材の操作力に基づかずに、液圧ポンプ等によって構成される高圧源装置によって発生させられたブレーキ液の圧力によって液圧制動力を発生させるシステムが存在する。
【特許文献1】
特開2008−24098号公報
【発明の開示】
【0003】
(A)発明の概要
上記特許文献に記載のシステムを始め、高圧源装置が発生させる液圧(以下、「高圧源圧」という場合がある)に基づいて制動力を発生させるシステムでは、一般的に、発生可能な制動力は、その高圧源圧の高さに依存する。したがって、より大きな制動力を得ようとする場合、より大きな能力の高圧源装置を必要とする。このことは、高圧源装置の大型化,コストアップに繋がる一因となっている。このことはほんの一例に過ぎないが、液圧ブレーキシステムには、充分なる改良の余地が残されており、改良を施すことによって、更なる実用性の向上が期待できる。そのような実情に鑑み、本発明は、実用性の高い液圧ブレーキシステムを提供することを課題とする。
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の液圧ブレーキシステムは、(a)高圧源装置からのブレーキ液の圧力に依存した大きさの制動力を発生させる高圧源圧依存制動状態と、(b)その高圧源装置からの液圧と、ブレーキ操作部材に加えられた運転者の操作力との両方に依存して、その高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力よりも大きな制動力を発生させることができる操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるための制動力発生状態切換装置を備えたことを特徴とする。
【0005】
本発明の液圧ブレーキシステムによれば、高圧源装置からのブレーキ液の圧力で発生可能な制動力より大きな制動力が得られるため、比較的小さな能力の高圧源装置を装備すればよく、高圧源装置の小型化、低コスト化が図られることになる。その意味において、本発明の液圧ブレーキシステムは、実用的なシステムとなる。
【0006】
(B)発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(11)項が請求項2に、(12)項が請求項3に、(13)項が請求項4に、(14)項が請求項5に、(15)項が請求項6に、(21)項が請求項7に、(22)項が請求項8に、(41)項が請求項9に、(42)項が請求項10に、(61)項が請求項11に、(62)項が請求項12に、(81)項が請求項13に、(82)項が請求項14に、(84)項が請求項15に、それぞれ相当する。
【0008】
≪A:基本態様≫
(1)車輪に設けられたブレーキ装置と、
加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能なシリンダ装置と、
運転者によるブレーキ操作が行われるブレーキ操作部材と、
高圧のブレーキ液を供給する高圧源装置と、
その高圧源装置からのブレーキ液の圧力を前記ブレーキ操作部材の操作に基づいて制御する高圧源圧制御装置と、
(a)その高圧源圧制御装置によって制御された前記高圧源装置からのブレーキ液の圧力である制御高圧源圧に依存した大きさの制動力を発生させる高圧源圧依存制動状態と、(b)前記制御高圧源圧と、前記ブレーキ操作部材に加えられた運転者の力であるブレーキ操作力との両方に依存して、前記高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力である高圧源依存最大制動力より大きな制動力を発生可能な操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させる制動力発生状態切換装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
【0009】
本項の態様の液圧ブレーキシステムは、運転者によるブレーキ操作力を利用することで、高圧源装置からの液圧に依拠して発生可能な最大の液圧制動力よりも大きな制動力を得ることが可能である。例えば、通常の制動力しか必要でない場合には液圧源装置が発生させる液圧にのみ依存した制動力を発生させ、フェード時、急ブレーキ等の大きな制動力を必要とする場合に、液圧源装置が発生させる液圧に加え、ブレーキ操作力に依存して、大きな制動力を得ることが可能である。大きな制動力を必要とする場合にまでも、高圧源装置が発生させる液圧のみに依存して制動力を得ようとすれば、高圧源装置に高い能力が要求され、高圧源装置の大型化、高コスト化を招く結果となる。本項の態様のシステムによれば、比較的能力の低い高圧源装置であっても、ブレーキ操作力を利用して、その高圧源装置による液圧のみによっては得ることができない大きさの制動力を得ることができるため、高圧源装置のコンパクト化、低コスト化が図れることになる。このことは、液圧ブレーキシステムのコンパクト化、低コスト化に貢献し、本項の態様によれば、実用性の高い液圧ブレーキシステムが実現する。
【0010】
≪B:シリンダ装置の構造に依拠して制動力発生状態を切換える態様≫
(11)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
その加圧ピストンの後方に配設され、後端部において前記ブレーキ操作部材に連結される入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
前記制動力発生状態切換装置として機能し、(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を禁止して、前記制御高圧源圧に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容しつつ、そのブレーキ操作力と前記制御高圧源圧との両方に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるシリンダ作動状態切換機構と
を備えた(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0011】
本項の態様におけるシリンダ装置は、いわゆる液圧ブースト機能付きマスタシリンダと呼ぶことができるシリンダ装置である。高圧源圧依存加圧状態では、運転者のブレーキ操作に直接的には依存しない制動力が発生可能であるため、本項の態様におけるシリンダ装置は、回生制動力が得られるハイブリッド車等に好適なシリンダ装置である。本項の液圧ブレーキシステムは、そのシリンダ装置自体の構造に依拠して、上記高圧源圧依存制動状態と上記操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるシステムである。
【0012】
(12)シリンダ作動状態切換機構が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0013】
(13)シリンダ作動状態切換機構が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0014】
(14)シリンダ作動状態切換機構が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0015】
(15)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0016】
上記4つの態様は、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換の条件に関する限定を加えた態様である。いずれの項に記載の態様も、液圧制動力がある程度大きくなった場合、つまり、液圧制動力が上記高圧源依存最大制動力となった場合あるいはそれに近づいた場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態を効果的に行うことが可能である。
【0017】
上記4つの項のうちの最初の項における「操作力指標パラメータ」は、特に限定されない。ブレーキ操作力に基づいて液圧制動力,上記制御高圧源圧等が決定されるように構成されたシステムでは、上記出力圧,制御高圧源圧,上記入力室内の圧力等が操作力指標パラメータとなり得る。また、上記高圧源圧がある範囲に設定されており制御高圧源圧がブレーキ操作力に基づいて決定される場合にあっては、高圧源圧と制御高圧源圧との差も、操作力指標パラメータとなり得る。さらに、ブレーキ操作部材の操作量がブレーキ操作力に関連している場合には、その操作量も操作力指標パラメータとなり得る。特に、後に説明するように、シリンダ装置が、いわゆるストロークシミュレータの動作限界によって、ブレーキ操作力がある値となった場合においてブレーキ操作部材の操作が限界となるように構成されている場合において、その操作限界であるという事象も、操作力指標パラメータとなり得る。
【0018】
上記4つの項のうち2番目の項における制御高圧源圧,出力圧は、、高圧源圧依存加圧状態における液圧制動力を指標するものであることから、当該項の態様は、液圧制動力に基づいて高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われる態様と考えることができる。当該項の態様は、制御高圧源と出力圧との一方をパラメータとするものであり、切換の閾値となる設定圧は、制御高圧源と出力圧とのいずれをパラメータとするかによって、異なる値に設定すればよい。
【0019】
一般的に、高圧源圧制御装置は、高圧源装置によって発生させられている高圧源圧を、それ以下に減圧して出力するように構成される。したがって、上記4つの項のうちの3番目の項の態様は、制御高圧源圧がその時点の実際の高圧源圧にある程度近づいた場合にシリンダ装置の作動状態を切換える態様と考えることができる。当該態様の液圧ブレーキシステムによれば、制御高圧源圧がその時点での限界となる付近で、確実に、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換を行うことが可能となる。
【0020】
上記4つの項のうち、最後の項に記載の態様は、シリンダ装置がいわゆるストロークシミュレータを有している場合に有効な態様である。上記入力ピストン前進許容機構が、ストロークシミュレータとして機能する。高圧源圧依存加圧状態において、そのストロークシミュレータを、あるブレーキ操作部材の操作量が設定された操作量となった場合に、つまり、ブレーキ操作力が設定された大きさとなった場合に、機械的なストッパ等によって、入力ピストンの前進が禁止されるように構成することが可能である。つまり、ブレーキ操作に対する操作限界を設けるようにストロークシミュレータを構成することが可能である。当該項に記載の態様は、簡単に言えば、そのようなストロークシミュレータを有するシリンダ装置において、その限界において、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われる態様である。その態様によれば、切換時におけるブレーキ操作の操作感が良好なものとなる。なお、入力ピストンの前進が禁止されるに至ったこと、つまり、上記操作限界となったことは、例えば、ブレーキ操作部材の操作量を検出する操作量センサと、ブレーキ操作力を検出する操作力センサとを設け、操作量センサによって検出された操作量に変化がないにも拘わらず、操作力センサによって検出された操作力に変化があることをもってして判定すればよい。
【0021】
(16)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、そのブレーキ操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(11)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0022】
本項に記載の態様は、高圧源装置の故障,システムの電気的失陥といった状況下でも、ブレーキ操作部材に加えられた運転者の力だけで、液圧制動力を発生可能とした態様である。本項の態様では、シリンダ装置自体の構造に依拠して、高圧源圧依存加圧状態から操作力依存加圧状態への切換が行われる。本項の態様によれば、フェールセーフの観点において優れたシステムが実現される。
【0023】
<B−1:中間ピストンロック型シリンダ装置に関する態様>
(21)前記シリンダ装置が、
本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された中間ピストンを備え、
前記入力ピストンがその中間ピストンの後方から前記ブレーキ操作力をその中間ピストンに伝達するようにされており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記中間ピストンの前進を禁止するとともに、前記第1入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進を許容するとともに、前記第1入力室を密閉し、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0024】
本項の態様は、シリンダ装置の基本的構造に限定を加えた態様である。上記構造のシリンダ装置は、2つの前記入力室が前方と後方とに区画されるように配設されるとともに入力ピストン後方から連結される中間ピストンを備えている。中間ピストンの前進が禁止された状態で高圧源依拠加圧状態が実現される。そのことに鑑み、上記基本構造を有するシリンダ装置を、以下、便宜的に、「中間ピストンロック型」のシリンダ装置と呼ぶこととする。本項の態様のシリンダ装置によれば、操作力・高圧源依拠加圧状態において、第1入力室は密閉された状態とされるとともに中間ピストンの前進が許容されることで、第1入力室のブレーキ液は、中間ピストンを介して、第2入力室に入力される制御高圧源圧と、入力ピストンに加わるブレーキ操作力とによって加圧され、その加圧された第1入力室内のブレーキ液の圧力に依拠して、加圧室のブレーキ液が加圧される。なお、高圧源依拠加圧状態において、上記第1入力室と上記第2入力室が連通されていてもよく、その場合には、中間ピストンの第1入力室に対する受圧面積と、第2入力室に対する受圧面積とが略等しいことが望ましい。つまり、中間ピストンの本体部の前端の面積と鍔部の後端の面積とが略等しいことが望ましい。
【0025】
(22)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(21)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0026】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記中間ピストンロック型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0027】
(23)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0028】
(24)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0029】
(25)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0030】
(26)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0031】
(27)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0032】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0033】
(28)前記弁制御装置が、
前記操作力・高圧源圧依存加圧状態から前記高圧源圧依存加圧状態への切換りにおいて、前記中間ピストンが、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換る前の位置に復帰したことを条件として、前記対向室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるように構成された(23)項ないし(27)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0034】
本項に記載の態様は、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存加圧状態への切換に関する手法に関する限定を加えた態様である。操作力・高圧源圧依存加圧状態において第1入力室が密閉されている場合、ブレーキ操作を解除しても、例えば、中間ピストンが初期位置において後退が停止させられたときには、その後に第1入力室の圧力が減少せず、液圧制動力がブレーキ操作に応じて減少しないという現象が生じる。上記最後の態様では、その現象を、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存加圧状態への切換の条件としており、その態様によれば、高圧源圧依存加圧状態への移行が、確実に、かつ、スムーズに行われることになる。具体的には、例えば、上記出力圧、第1入力室の圧力等が、ブレーキ操作力等のブレーキ操作を指標するパラメータが変化するにも関わらず変化しないことによって、中間ピストンが初期位置に復帰したことを判定すればよい。
【0035】
(29)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、そのパイロット圧とされた前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0036】
(30)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧減圧と前記制御高圧源圧と差が設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0037】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0038】
(31)前記対向室開閉弁と前記第1入力室開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(22)項ないし(30)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0039】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルものとすることができる。
【0040】
(32)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進を許容するとともに、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前記加圧ピストンへの当接を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(21)項ないし(31)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0041】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、第1入力室の容積の減少が許容されるため、中間ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。本項に記載のシリンダ装置では、未動作状態、つまり、操作部材が操作されていない状態において、加圧ピストンと中間ピストンとが当接する程に入力室の容積を小さくできる。このことにより、失陥時において、操作部材が動き始めた直後から、操作部材に加えられる操作力によって、加圧室のブレーキ液を加圧することが可能となる。したがって、当該シリンダ装置によれば、失陥時において、ブレーキ操作部材の操作範囲、つまり、操作ストロークを充分に確保することが可能となる。
【0042】
シリンダ作動状態切換機構についてより具体的に説明すれば、例えば、電気的失陥時等において高圧源圧制御装置がリザーバと連通するような構造である場合には、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記第1入力室開閉弁が利用できる。また、前記対向室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記対向室開閉弁を利用することができる。ちなみに、ブレーキ操作力に応じて対向室内の圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その対向室内の圧力が設定圧を超えた場合に、その対向室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、対向室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、中間ピストンが設定量前進した場合に、反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、対向室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0043】
(33)前記入力ピストンが、その中間ピストンとの相対移動に伴って容積が変化する内部室が区画されるようにして、その中間ピストンの後端部に嵌め合わされており、
当該シリンダ装置が、
前記内部室の容積が減少する向きの前記入力ピストンと前記中間ピストンとの相対移動に伴って、その相対移動に対抗する方向の弾性力を前記入力ピストンと前記中間ピストンとに付与する弾性力付与機構を有する(21)項ないし(32)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0044】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。上記弾性力付与機構は、例えば、内部室内にスプリングを配設し、そのスプリングの弾性力を内部室の容積が増大する方向に入力ピストンと中間ピストンとに作用させるように構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが内部室というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンと中間ピストンとが相対移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
【0045】
(34)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記中間ピストンの前進が許容されない際に、前記内部室と前記リザーバとが連通する状態を実現させ、その中間ピストンの前進が許容された際に、前記内部室と前記リザーバとが連通しない状態を実現させる内部室連通状態切換機構を有する(33)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0046】
上記内部室連通状態切換機構によって、内部室とリザーバとの連通を断てば、内部室は密閉され、入力ピストンと中間ピストンとの相対移動が禁止されることで、入力ピストンと中間ピストンとが一体となった前進が許容される。本項の態様によれば、中間ピストンの前進が許容された後早い段階で内部室を密閉させることで、操作力依存加圧状態、および、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、操作ストロークが有効に利用されることになる。
【0047】
なお、本項の態様では、シリンダ装置が、入力ピストンと中間ピストンとが嵌め合わされた構造を有しているため、入力ピストンと係合させる必要のある高圧シールを少なくすることが可能である。具体的には、中間ピストンと入力ピストンとの間、および、入力ピストンとハウジングの間に、それぞれ、1つずつ高圧シールを配設すればよい。そのため、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストンの移動に対する摩擦抵抗が比較的少なく、摩擦抵抗がブレーキ操作の操作感にに与える影響を小さくすることが可能である。
【0048】
(35)前記第1入力室を区画する前記中間ピストンの受圧面積が、前記第1入力室を区画する前記加圧ピストンの受圧断面積に比べて大きくされている(21)項ないし(34)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0049】
本項の態様は、簡単に言えば、中間ピストンの前端の面積が、加圧ピストンの後端の面積に比べて大きくされた態様である。高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換られた際には、第1入力室にブレーキ液が導入された後にその第1入力室が密閉される。その状態においてブレーキ操作部材を操作すれば、中間ピストンの前進量に対して加圧ピストンの前進量が大きくなる。本項の態様によれば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキ操作部材の操作量の変化に対する出力圧の変化を比較的大きくすることが可能となる。裏を返せば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、より大きな操作ストロークを確保することが可能となる。
【0050】
<B−2:入力ピストンフリー型シリンダ装置に関する態様>
(41)前記加圧ピストンが、後端に開口する有底穴を有するとともに、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記加圧室が前記本体部の前方に、前記入力室が前記鍔部の後方に、それぞれ区画されるとともに、前記鍔部を挟んでそれの前方に、前記入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記入力ピストンが、それの前方に前記加圧ピストンとによってピストン間室が区画されるようにして、前記加圧ピストンの有底穴に嵌入されており、
前記シリンダ装置が、前記加圧ピストンの進退に伴う前記対向室の容積変化と前記ピストン間室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それら対向室とピストン間室とを連通させるための室間連通路を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記室間連通路を開通させて前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を許容するとともに、前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容し、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するとともに前記対向室と前記リザーバとを連通させて、前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を制限しつつそれらの前進を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0051】
本項の態様は、シリンダ装置が先に説明した基本構造とは異なる基本構造を有する態様である。本項に記載のシリンダ装置では、室間連通路が開通している状態では、上記対向室と上記ピストン間室とによって1つの反力室が形成されると考えることができる。それら対向室とピストン室とが連通した状態では、加圧ピストンの前進に伴って、ピストン間室の容積が拡大するとともにその分対向室の容積が減少し、一方、加圧ピストンの後退に伴って、対向室の容積が減少するとともにその分ピストン間室の容積が増大するようにされている。つまり、それら2つの液室の一方のブレーキ液の吸排と他方のブレーキ液の吸排とが、バランスするようにされており、加圧ピストンに対する入力ピストンの自由な動作が可能とされている。このような機能を有することに鑑み、以下、上記基本構造を有するシリンダ装置を、「入力ピストンフリー型」のシリンダ装置と呼ぶこととする。
【0052】
上記構造のシリンダ装置では、入力ピストンが加圧ピストンとは当接しない状態での入力ピストンと加圧ピストンとの相対移動が許容された状態とされ、その状態で入力室に圧力を導入することで、高圧源圧依存加圧状態が実現されるのである。一方、操作力・高圧源圧依存加圧状態では、ピストン間室を密閉することで、加圧ピストンと入力ピストンとの相対移動を制限して、ブレーキ操作力の入力ピストンから加圧ピストンへの伝達を許容し、その状態で対向室が解放し、加圧ピストンと入力ピストンと前進を許容することで、操作力・高圧源圧依拠加圧状態が実現される。ここで、「相対移動の制限」とは、相対移動が禁止されることだけを意味しない。ピストン間室が弾性力によって加圧されているような場合には、言い換えれば、入力ピストンと加圧ピストンとが、ピストン間室を介して弾性的に相互に支持し合っている場合には、その弾性力に応じた分の相対移動が許容される。本項の態様においては、このような場合も相対移動が制限されていると解釈することとする。
【0053】
本項の態様におけるシリンダ装置は、入力ピストンが、加圧ピストンに設けられた有底穴に挿入されている。そのため、上記各液室を区画するために入力ピストンと係合させる必要のある高圧シールは、加圧ピストンの有底穴の内周面と入力ピストンの外周面との間と、入力ピストンの外周面と入力ピストンを摺動可能に保持するハウジングの部分との間とに、それぞれ、1つずつ配設すればよい。そのため、高圧源圧加圧状態において、入力ピストンの移動に対する摩擦抵抗が比較的小さく、摩擦抵抗が操作部材の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感に与える影響を小さくすることが可能である。
【0054】
(42)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記室間連通路に設けられた室間開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および室間開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(41)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0055】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記入力ピストンフリー型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0056】
(43)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および室間開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0057】
(44)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0058】
(45)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0059】
(46)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0060】
(47)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0061】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0062】
(48)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記室間開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0063】
(49)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換るとともに、前記室間開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0064】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0065】
(50)前記対向室開閉弁と前記室間開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(42)項ないし(49)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0066】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルなものとすることができる。
【0067】
(51)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記ピストン間室とが連通している状態においてそれらと前記リザーバとを連通させて、前記入力ピストンが前記加圧ピストンに当接した状態でのそれらの前進を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(41)項ないし(50)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0068】
本項の態様は、入力ピストンフリー型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、ピストン間室の容積の減少が許容されるため、中間ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。なお、本項において、「入力ピストンの加圧ピストンへの当接」は、入力ピストンが直接加圧ピストンに接触することだけに限定されない。入力ピストンが、なんらかの剛体を介して、間接的に接触することをも意味する。
【0069】
また、本項に記載のシリンダ装置では、室間連通路によってピストン間室と対向室とが連通する状態では1つの反力室が形成されており、そのことによって、ピストン間室を比較的小さな容積に設定できる。つまり、入力ピストンの前端と加圧ピストンの有底穴の底との距離を、比較的小さくすることができる。したがって、操作力依存加圧状態において、入力ピストンが加圧ピストンに当接するまでの前進距離を小さくすることが可能となる。そのことによって、本項の態様では、失陥時等のブレーキ操作におけるガタ感を少なくして、そのブレーキ操作の操作感を良好なものとすることが可能とされているのである。
【0070】
シリンダ作動状態切換機構について、より具体的に説明すれば、例えば、上記室間開閉弁,上記対向室開閉弁を備えている場合には、室間開閉弁を開弁状態としたままで、対向室開閉弁を開弁状態とすることにより、操作力依存加圧状態を実現させることができる。ちなみに、対向室とピストン間室とが連通している状態では、それらによって1つの反力室が形成されていると擬制することができる。その反力室内は、ブレーキ操作力に応じて圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その反力室内の圧力が設定圧を超えた場合に、対向室およびピストン間室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、ピストン間室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、入力ピストンが加圧ピストンに対して設定量前進した場合に、上記反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、上記反力室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0071】
(52)前記シリンダ装置が、前記ピストン間室内と前記対向室内との少なくとも一方を弾性力に依拠して加圧する弾性力依拠加圧機構を備えた(41)項ないし(51)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0072】
本項の態様は、入力ピストンフリー型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。上記弾性力依拠加圧機構によれば、高圧源圧依存加圧状態において、操作部材の操作感を運転者に実感させるために、上記弾性力依拠加圧機構によって、入力ピストンの前進量、すなわち、操作部材の操作量に応じた操作反力を付与することが可能である。言い換えれば、弾性力依拠加圧機構は、入力ピストンの前進量が増加するにつれて弾性変形量が大きくなるような弾性部材を有し、操作部材の操作量が大きくなるにつれて操作反力が大きくなるようにするための機構と考えることができる。裏を返せば、操作反力に応じた入力ピストンの前進を許容する機能、つまり、操作反力に応じた操作量となる操作部材の操作を許容する機構と考えることができる。本項に記載のシリンダ装置では、ストロークシミュレータを構成するばね等の弾性部材を、シリンダ装置の外部に配設する必要がなく、本項の態様によれば、ストロークシミュレータを当該シリンダ装置の内部に配設することができるため、シリンダ装置のコンパクト化が図れる。
[0073]
なお、弾性力依拠加圧機構は、ハウジング側,加圧ピストン側,入力ピストン側との少なくともいずれかの側から反力室を加圧するように構成することができる。つまり、対向室をハウジングの側から加圧する構成と、ピストン間室を加圧ピストンの側から加圧する構成と、ピストン間室を入力ピストンの側から加圧する構成とのいずれか1つの構成を採用することができる。前2つの構成のいずれか1つの採用する態様は、ストロークシミュレータがハウジング内に配設された態様と考えることができ、後の1つの構成を採用する態様は、ストロークシミュレータが入力ピストン内に配設された態様と考えることができる。
[0074]
また、弾性力依拠加圧機構は、スプリングの弾撥力によって上記反力室を加圧するように構成することができる。その場合、2つのスプリングを用い、入力ピストンが加圧ピストンに対して前進するする過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
[0075]
<B−3:入力ピストン前方加圧型シリンダ装置に関する態様>
(61)前記入力ピストンが、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記入力ピストンの前進を制限するとともに、前記第1入力室および第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記入力ピストンの前進の制限を解除するとともに、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容したままで前記第1入力室を密閉することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0076】
本項の態様は、シリンダ装置が先に説明した2種の基本構造のいずれとも異なる基本構造を有する態様である。本項に記載のシリンダ装置では、高圧源圧加圧状態において、上記対向室を密閉して入力ピストンの前進を制限し、入力ピストンの前方に設けられた入力室に高圧源装置からの圧力を入力させることで、その圧力によって加圧ピストンが加圧室のブレーキ液を加圧する。そのような基本構造であることに鑑み、その基本構造を有する本項に記載のシリンダ装置を、以下、便宜的に、「入力ピストン前方加圧型」のシリンダ装置と呼ぶことにする。なお、対向室を密閉した場合における「入力ピストンの前進の制限」は、入力ピストンの前進を禁止することを意味するだけでなく、対向室の圧力に抗してある程度前進する状態をも意味する。例えば、後に説明するが、ストロークシミュレータ機能を有して、その機能によって入力ピストンの前進が許容された状態も、入力ピストンの前進が制限されていると解釈されるべきである。ただし、入力ピストンによって伝達されるブレーキ操作力が、高圧源圧加圧状態において、前記対向室の圧力による反力によって打ち消され、第1入力室内を加圧する力として作用しないことを要する。なお、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストンの第1入力室に対しての受圧面積と、第2入力室に対しての受圧面積とが等しいことが望ましい。言い換えれば、入力ピストンの本体部の前端の面積と、鍔部の後端の面積とが等しいことが望まれる。そのような構成により、高圧源圧依存加圧状態において、制御高圧源圧によっては入力ピストンが進退させられないようにすることが可能である。
【0077】
上記シリンダ装置では、操作力・高圧源依拠加圧状態において、第1入力室は密閉された状態とされるとともに入力ピストンの前進が許容されることで、第1入力室のブレーキ液は、第2入力室に入力される制御高圧源圧と、入力ピストンに加わるブレーキ操作力とによって加圧され、その加圧された第1入力室内のブレーキ液の圧力に依拠して、加圧室のブレーキ液が加圧される。
【0078】
(62)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(61)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0079】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記中間ピストンロック型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0080】
(63)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0081】
(64)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0082】
(65)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0083】
(66)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0084】
(67)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0085】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0086】
(68)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0087】
(69)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧減圧と前記制御高圧源圧と差が設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0088】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0089】
(70)前記対向室開閉弁と前記第1入力室開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(62)項ないし(69)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0090】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルものとすることができる。
【0091】
(71)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進の制限を解除するとともに、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させて前記入力ピストンの前記加圧ピストンへの当接を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(61)項ないし(70)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0092】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、第1入力室の容積の減少が許容されるため、入力ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。
【0093】
シリンダ作動状態切換機構についてより具体的に説明すれば、例えば、電気的失陥時等において高圧源圧制御装置がリザーバと連通するような構造である場合には、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記第1入力室開閉弁が利用できる。また、前記対向室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記対向室開閉弁を利用することができる。ちなみに、ブレーキ操作力に応じて対向室内の圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その対向室内の圧力が設定圧を超えた場合に、その対向室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、対向室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、入力ピストンが設定量前進した場合に、反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、対向室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0094】
(72)前記入力ピストンが、前記本体内部に設けられて前記対向室と連通する内部室と、その内部室内を弾性力に依拠して加圧する弾性力依拠加圧機構とを備えた(61)項ないし(71)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0095】
本項の態様は、入力ピストン前方加圧型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。具体的には、入力ピストンの内部に円筒形状の空間を設け、その空間に補助ピストンを配設して、上記内部室を区画し、その空間内にその補助ピストンを付勢するスプリングを配設することによって上記弾性力依拠加圧機構を構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが入力ピストンの内部というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンが移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
【0096】
(73)前記第1入力室を区画する前記入力ピストンの受圧面積が、前記第1入力室を区画する前記加圧ピストンの受圧断面積に比べて大きくされている(61)項ないし(72)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0097】
本項の態様は、簡単に言えば、入力ピストンの前端の面積が、加圧ピストンの後端の面積に比べて大きくされた態様である。高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換られた際に第1入力室が密閉される。その状態においてブレーキ操作部材を操作すれば、入力ピストンの前進量に対して加圧ピストンの前進量が大きくなる。本項の態様によれば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキ操作部材の操作量の変化に対する出力圧の変化を比較的大きくすることが可能となる。裏を返せば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、より大きな操作ストロークを確保することが可能となる。
【0098】
≪C:ブレーキ装置へのブレーキ液の供給元を変更して制動力発生状態を切換える態様≫ (81)前記シリンダ装置が、常時、前記ブレーキ操作力と自身に入力された前記制御高圧源圧との両方に応じて加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能に構成され、かつ、当該液圧ブレーキシステムが、前記高圧源装置からのブレーキ液が前記高圧源圧制御装置を介しかつ前記シリンダ装置を経ずに前記ブレーキ装置へ供給可能とされ、
前記制動力発生状態切換装置が、
(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が遮断されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容される高圧源装置供給状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が禁止されるシリンダ装置供給状態を実現させる切換弁装置を有する(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0099】
本項の態様の液圧ブレーキシステムは、シリンダ装置を、上述の操作力・高圧源圧依存加圧状態が常時実現されるように構成し、ブレーキ装置へのブレーキ液の供給元を高圧源装置とするかシリンダ装置とするかによって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるように構成されたシステムである。本項の態様のシステムでは、高圧源圧依存制動状態においては、マスターシリンダとして機能する上記シリンダ装置とブレーキ装置との接続が断たれており、その状態で、高圧源圧制御装置を介して高圧源装置からのブレーキ液圧がブレーキ装置に入力され、ブレーキ操作部材の操作に基づいた液圧制動力が発生させられる。そのことに鑑み、以下、本項の態様のシステムを、マスタカット型ブレーキバイワイヤシステムと呼ぶこととする。
【0100】
(82)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
自身の後端部において前記ブレーキ操作部材に連結され、前記ブレーキ操作力を常時伝達可能に前記加圧ピストンと連結された入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
を有する(81)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0101】
本項の態様は、上記マスタカット型ブレーキバイワイヤシステムにおいて採用可能なシリンダ装置に関する限定を加えた態様である。本項に記載のシリンダ装置によれば、比較的簡単な構造にて、常時、前述の操作力・高圧源圧依拠加圧状態を実現させることが可能である。また、本項に記載のシリンダ装置では、高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下においては、特別なシリンダ作動状態切換機構を前述の操作力依拠加圧状態が実現される。したがって、本項の態様の液圧ブレーキシステムは、比較的簡単な構成のシステムとなる。
【0102】
(83)前記シリンダ装置が、
後端が開口する有底円筒形状をなし、前端が前記加圧ピストンに当接するとともに自身の後方に前記入力室が区画されるようにして前記ハウジング内に配設され、自身の内部に内部室が区画されるようにして前記入力ピストンが後方から嵌め入れられた中間ピストンと、
前記内部室の容積が減少する向きの前記入力ピストンと前記中間ピストンとの相対移動に伴って、その相対移動に対抗する方向の弾性力を前記入力ピストンと前記中間ピストンとに付与する弾性力付与機構と
を有する(82)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0103】
本項の態様は、シリンダ装置がいわゆるストロークシミュレータを有する態様である。本項の態様では、上記弾性力付与機構を介して、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達される。上記弾性力付与機構は、例えば、内部室内にスプリングを配設し、そのスプリングの弾性力を内部室の容積が増大する方向に入力ピストンと中間ピストンとに作用させるように構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが内部室というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンと中間ピストンとが相対移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。ちなみに、本項に記載の態様は、シリンダ装置が入力ピストン前進許容機構(後に言及する)を有する態様と考えることができる。
【0104】
(84)前記シリンダ装置が、
前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧が、常時、前記制御高圧源圧以上となるように構成された(82)項または(83)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0105】
本項の態様によれば、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換ったとしても、その時点での液圧制動力の低下がない。したがって、切換り時点での充分な制動力が確保されることになる。ちなみに、シリンダ装置を、高圧源圧依存制動状態における上記出力圧が制御高圧源圧と等しくなるように構成すれば、切換り時点での液圧制動力の急変が防止され、スムーズな切換りが実現されることになる。つまり、ブレーキ操作における切換り時の違和感を可及的に小さくすることが可能となる。
【0106】
(85)前記切換弁装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0107】
(86)前記切換弁装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0108】
(87)前記切換弁装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0109】
(88)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
自身の後端部において前記ブレーキ操作部材に連結され、前記ブレーキ操作力を常時伝達可能に前記加圧ピストンと連結された入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と、
弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記切換弁装置が、
前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0110】
上記4つの態様は、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換りのタイミングに関する限定を加えた態様である。詳しく言えば、切換弁装置によって、ブレーキ液の供給状態を、高圧源装置供給状態からシリンダ装置供給状態に変更する条件についての限定を加えた態様である。上記切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0111】
なお、切換弁装置は、電磁式の開閉弁を主体として構成され、それら開閉弁が制御装置によって制御されるものであってもよい。また、上記出力圧、制御高圧源圧、高圧源圧等をパイロット圧として作動する機械式の開閉弁を主体として構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1実施例の液圧ブレーキシステムが装備されたハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを表す模式図である。
【図2】第1実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図3】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおける、シリンダ装置に連結された操作部材の操作量と、シリンダ装置から操作部材に付与される操作反力との関係を示すグラフである。
【図4】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおける、ブレーキ操作力の変化に対するシリンダ装置からの出力圧の変化を模式的に示すグラフである。
【図5】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【図6】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第1変形例を示す図である。
【図7】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第2変形例を示す図である。
【図8】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第3変形例を示す図である。
【図9】第2実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図10】第2実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【図11】第2実施例の液圧ブレーキシステムの変形例を示す図である。
【図12】第3実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図13】第4実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図14】第4実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0114】
≪車両の構成≫
図1に、第1実施例の液圧ブレーキシステムを搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを模式的に示す。車両には、動力源として、エンジン10と電気モータ12とが搭載されており、また、エンジン10の出力により発電を行う発電機14も搭載されている。これらエンジン10、電気モータ12、発電機14は、動力分割機構16によって互いに接続されている。この動力分割機構16を制御することで、エンジン10の出力を発電機14を作動させるための出力と、4つの車輪18のうちの駆動輪となるものを回転させるための出力とに振り分けたり、電気モータ12からの出力を駆動輪に伝達させることができる。つまり、動力分割機構16は、減速機20および駆動軸22を介して駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として、機能するのである。なお、「車輪18」等のいくつかの構成要素は、総称として使用するが、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付すこととする。この表記に従えば、本車両における駆動輪は、車輪18RL,および車輪18RRである。
【0115】
電気モータ12は、交流同期電動機であり、交流電力によって駆動される。車両にはインバータ24が備えられており、インバータ24は、電力を、直流から交流、あるいは、交流から直流に変換することができる。したがって、インバータ24を制御することで、発電機14によって出力される交流の電力を、バッテリー26に蓄えるための直流の電力に変換させたり、バッテリ26に蓄えられている直流の電力を、電気モータ12を駆動するための交流の電力に変換させることができる。発電機14は、電気モータ12と同様に、交流同期電動機としての構成を有している。つまり、本実施例の車両では、交流同期電動機が2つ搭載されていると考えることがき、一方が、電気モータ12として、主に駆動力を出力するために使用され、他方が、発電機14として、主にエンジン10の出力により発電するために使用されている。
【0116】
また、電気モータ12は、車両の走行に伴う車輪18RL、18RRの回転を利用して、発電(回生発電)を行うことも可能である。このとき、車輪18RL、18RRに連結される電気モータ12では、電力が発生させられるとともに、電気モータ12の回転を制止するための抵抗力が発生する。したがって、その抵抗力を、車両を制動する制動力として利用することができる。つまり、電気モータ12は、電力を発生させつつ車両を制動するための回生ブレーキの手段として利用される。したがって、本車両は、回生ブレーキをエンジンブレーキや後述する液圧ブレーキとともに制御することで、制動されるのである。一方、発電機14は主にエンジン10の出力により発電をするが、インバータ24を介してバッテリ26から電力が供給されることで、電気モータとしても機能する。
【0117】
本車両において、上記のブレーキの制御や、その他の車両に関する各種の制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって行われる。複数のECUのうち、メインECU40は、それらの制御を統括する機能を有している。例えば、ハイブリッド車両は、エンジン10の駆動および電気モータ12の駆動によって走行することが可能とされているが、それらエンジン10の駆動と電気モータ12の駆動は、メインECU40によって総合的に制御される。具体的に言えば、メインECU40によって、エンジン10の出力と電気モータ12による出力の配分が決定され、その配分に基づき、エンジン10を制御するエンジンECU42、電気モータ12及び発電機14を制御するモータECU44に各制御についての指令が出力される。
【0118】
メインECU40には、バッテリ26を制御するバッテリECU46も接続されている。バッテリECU46は、バッテリ26の充電状態を監視しており、充電量が不足している場合には、メインECU40に対して充電要求指令を出力する。充電要求指令を受けたメインECU40は、バッテリ26を充電させるために、発電機14による発電の指令をモータECU44に出力する。
【0119】
また、メインECU40には、ブレーキを制御するブレーキECU48も接続されている。当該車両には、運転者によって操作されるブレーキ操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)が設けられており、ブレーキECU48は、その操作部材の操作量であるブレーキ操作量(以下、単に「操作量」という場合がある)と、その操作部材に加えられる運転者の力であるブレーキ操作力(以下、単に「操作力」という場合がある)との少なくとも一方に基づいて目標制動力を決定し、メインECU40に対してこの目標制動力を出力する。メインECU40は、モータECU44にこの目標制動力を出力し、モータECU44は、その目標制動力に基づいて回生ブレーキを制御するとともに、それの実行値、つまり、発生させている回生制動力をメインECU40に出力する。メインECU40では、目標制動力から回生制動力が減算され、その減算された値によって、車両に搭載される液圧ブレーキシステム100において発生すべき目標液圧制動力が決定される。メインECU40は、目標液圧制動力をブレーキECU48に出力し、ブレーキECU48は、通常時において、液圧ブレーキシステム100が発生させる液圧制動力が目標液圧制動力となるように制御するのである。
【0120】
≪液圧ブレーキシステムの構成≫
このように構成された本ハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステム100について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、「前方」は図2における左方、「後方」は図2における右方をそれぞれ表している。また、「前側」、「前端」、「前進」や、「後側」、「後端」、「後進」等も同様に表すものとされている。以下の説明において[ ]の文字は、センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
【0121】
図2に、車両が備える液圧ブレーキシステム100を、模式的に示す。液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液を加圧するためのシリンダ装置110を有している。車両の運転者は、シリンダ装置110に連結された操作装置112を操作することでシリンダ装置110を作動させことができ、シリンダ装置110は、自身の作動によってブレーキ液を加圧する。その加圧されたブレーキ液は、シリンダ装置110に接続されるアンチロック装置114を介して、各車輪に設けられたブレーキ装置116に供給される。ブレーキ装置116は、加圧されたブレーキ液の圧力(以下、「出力圧」と呼ぶ)に依拠して、車輪18の回転を制止するための力、すなわち、液圧制動力を発生させる。
【0122】
液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液の圧力を高圧にするための高圧源装置118を有している。その外部高圧源装置118は、増減圧装置120を介して、シリンダ装置110に接続されている。増減圧装置120は、外部高圧源装置118によって高圧とされたブレーキ液の圧力(以下、「高圧源圧」という場合がある)を、シリンダ装置10に入力すべき圧力に降圧する。つまり、増減圧装置120は、ブレーキECU48によって制御され、シリンダ装置110に入力される圧力(以下、「制御高圧源圧」という場合がある)を増減するように制御する。その増減圧装置120と、それを制御するブレーキECU48の一部分とによって、高圧源装置118からのブレーキ液の圧力を操作部材の操作に基づいて制御する高圧源圧制御装置が構成されているのである。また、液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液を大気圧下で貯留するリザーバ122を有している。リザーバ122は、シリンダ装置110、増減圧装置120、外部高圧源装置118の各々に接続されている。
【0123】
操作装置112は、上記操作部材としてのブレーキペダル150と、ブレーキペダル150に連結されるオペレーションロッド152とを含んで構成されている。ブレーキペダル150は、車体に回動可能に保持されている。オペレーションロッド120は、後端部においてブレーキペダル150に連結され、前端部においてシリンダ装置110に連結されている。また、操作装置112は、ブレーキペダル150の操作量を検出するための操作量センサ[SP]156と、操作力を検出するための操作力センサ[FP]158とを有している。操作量センサ156および操作力センサ158は、ブレーキECU48に接続されており、ブレーキECU48は、それらのセンサの検出値を基にして、目標制動力を決定する。
【0124】
ブレーキ装置116は、液通路200、202を介してシリンダ装置110に接続されている。それら液通路200、202は、シリンダ装置110によって出力圧に加圧されたブレーキ液をブレーキ装置116に供給するための液通路である。液通路202には出力圧センサ[PO]204が設けられている。詳しい説明は省略するが、各ブレーキ装置116は、ブレーキキャリパと、そのブレーキキャリパに取り付けられたホイールシリンダ(ブレーキシリンダ)およびブレーキパッドと、各車輪とともに回転するブレーキディスクとを含んで構成されている。液通路200、202は、アンチロック装置114を介して、各ブレーキ装置116のブレーキシリンダに接続されている。ちなみに、液通路200が、前輪側のブレーキ装置116FL,116FRに繋がるようにされており、また、液通路202が、後輪側のブレーキ装置116RL、116RRに繋がるようにされている。ブレーキシリンダは、シリンダ装置110によって加圧されたブレーキ液の出力圧に依拠して、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける。その押し付けによって発生する摩擦によって、各ブレーキ装置116では、車輪の回転を制止する液圧制動力が発生し、車両は制動されるのである。
【0125】
アンチロック装置114は、一般的な装置であり、簡単に説明すれば、各車輪に対応する4対の開閉弁を有している。各対の開閉弁のうちの1つは増圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、開弁状態とされており、また、もう1つは減圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、閉弁状態とされている。車輪がロックした場合に、増圧用開閉弁が、シリンダ装置110からブレーキ装置116へのブレーキ液の流れを遮断するとともに、減圧用開閉弁が、ブレーキ装置116からリザーバへのブレーキ液の流れを許容して、車輪のロックを解除するように構成されている。
【0126】
高圧源装置118は、リザーバ122から増減圧装置120に至る液通路に設けられている。その高圧源装置118は、ブレーキ液の液圧を増加させる液圧ポンプ300と、増圧されたブレーキ液が溜められるアキュムレータ302とを含んで構成されている。ちなみに、液圧ポンプ300はモータ304によって駆動される。また、高圧源装置118は、上述の高圧源圧を検出するための高圧源圧センサ[PH]306を有している。ブレーキECU48は、高圧源圧センサ306の検出値を監視しており、その検出値に基づいて、液圧ポンプ300は制御駆動される。この制御駆動によって、高圧源装置118は、常時、設定された圧力以上のブレーキ液を増減圧装置120に供給する。
【0127】
増減圧装置120は、制御高圧源圧を増加させる電磁式の増圧リニア弁250と、制御高圧源圧を低減させる電磁式の減圧リニア弁252とを含んで構成されている。増圧リニア弁250は、高圧源装置118からシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。一方、減圧リニア弁252は、リザーバ122からシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。なお、増圧リニア弁250および減圧リニア弁252のシリンダ装置110に接続される各々の液通路は、1つの液通路とされて、シリンダ装置110に接続されている。また、その液通路には、制御高圧源圧を検出するための制御高圧源圧センサ[PC]256が設けられている。ブレーキECU48は、制御高圧源圧センサ256の検出値に基づいて、増減圧装置120を制御する。
【0128】
上記増圧リニア弁250は、電流が供給されていない状態では、つまり、非励磁状態では、閉弁状態とされており、それに電流を供給することによって、つまり、励磁状態とすることで、その供給された電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、供給される電流が大きい程、開弁圧が高くなるように構成されている。一方、減圧リニア弁252は、電流が供給されていない状態では、開弁状態となり、通常時、つまり、当該システムへの電力の供給が可能である時には、設定された範囲における最大電流が供給されて閉弁状態とされ、供給される電流が減少させられることで、その電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、電流が小さくなるほど開弁圧が低くなるように構成されている。
【0129】
≪シリンダ装置の構成≫
図2に示すように、シリンダ装置110は、シリンダ装置110の筐体であるハウジング400と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン402および第2加圧ピストン404と、高圧源装置118から入力される圧力によって前進する中間ピストン406と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン408とを含んで構成されている。なお、図2は、シリンダ装置110が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。ちなみに、一般的なシリンダ装置がそうであるように、本シリンダ装置110も、内部にブレーキ液が収容されるいくつかの液室、それらの液室間,それらの液室と外部とを連通させるいくつかの連通路が形成されており、それらの液密を担保するため、構成部材間には、いくつかのシールが配設されている。それらのシールは一般的なものであり、明細書の記載の簡略化に配慮し、特に説明すべきものでない限り、それの説明は省略するものとする。
【0130】
ハウジング400は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材410、第2ハウジング部材412から構成されている。第1ハウジング部材410は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ420が形成されており、そのフランジ420において車体に固定される。第1ハウジング部材410は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部422、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部424に区分けされている。
【0131】
第2ハウジング部材412は、前方側に位置して外径の大きい前方大径部430、後方側に位置して外径の小さい後方小径部432とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材412は、前方大径部430の前端部が第1ハウジング部材410の前方小径部422と後方大径部424との段差面に接する状態で、その後方大径部424に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材410,第2ハウジング部材412は、第1ハウジング部材410の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環434によって、互いに締結されている。
【0132】
第1加圧ピストン402および第2加圧ピストン404は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材410の前方小径部422に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン402は、第2加圧ピストン404の後方に配設されている。第1加圧ピストン402と第2加圧ピストン404との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R1が区画形成されており、また、第2加圧ピストン404の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R2が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン402と第2加圧ピストン404とは、第1加圧ピストン402の後端部に立設された有頭ピン460と、第2加圧ピストン404の後端面に固設されたピン保持筒462とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R1内,第2加圧室R2内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)464、466が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第2加圧ピストン404は後方に向かって付勢されている。
【0133】
中間ピストン406は、前端部が塞がれて後端部が開口された有底円筒形状をなす本体部470と、その本体部470の後端部に設けられた鍔部472とを有する形状とされている。中間ピストン406は、第1加圧ピストン402の後方に配設され、本体部470の前方の部分が第1ハウジング部材410の前方小径部422の内周面の後部側に、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430の内周面に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。
【0134】
中間ピストン406の前方において、第1加圧ピストン402の後端部との間には、高圧源装置118からのブレーキ液の供給が可能とされている液室、つまり、高圧源装置118からの圧力の入力が可能とされている液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R3が区画形成されている。ちなみに、図2では、殆ど潰れた状態で示されている。また、ハウジング400の内部には、第2ハウジング部材412の内周面と中間ピストン406の本体部470の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、中間ピストン406の鍔部472の前端面と、第1ハウジング部材410の前方小径部422と後方大径部424との段差面とによって区画されることで、環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R4が形成されている。また、鍔部472の後方には、第2ハウジング部材412の前端部との間に、中間ピストン406の前進に伴って容積が増大するとともに、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R5が区画形成されている。ちなみに、図2では、殆ど潰れた状態で示されている。ちなみに、上記対向室R4は、中間ピストン406の鍔部472を挟んで第2入力室R5と対向している液室である。
【0135】
入力ピストン408は、前端部が開口して後方の部分が塞がった円筒形状をなしている。入力ピストン408は、ハウジング400の後端側から、第2ハウジング部材412の内周面に摺接する状態でハウジング400内に挿し込まれるとともに、中間ピストン406に挿し込まれており、中間ピストン406の内周面に摺接しつつ、中間ピストン406に対して進退可能とされている。このように構成された入力ピストン408および中間ピストン406の内部には、中間ピストン406と入力ピストン408との相対移動によって自身の容積が変化する液室(以下、「内部室」という場合がある)R6が区画形成されている。ちなみに、中間ピストン406の後退は、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430と後方小径部432との段差面に当接することで制限されている。
【0136】
内部室R6には、中間ピストン406の内底面と入力ピストン408の内底面との間に、2つの圧縮コイルスプリングである第1反力スプリング480および第2反力スプリング482が配設されている。第1反力スプリング480は、第2反力スプリング482の後方に直列に配設されており、鍔付ロッド形状の浮動座484が、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持されている。第1反力スプリング480は、それの前端部が浮動座484の後方側のシート面に支持され、後端部が入力ピストン408の後端部に支持されている。第2反力スプリング482は、それの前端部が中間ピストン406の後端部に支持され、後端部が浮動座484の前方側のシート面に支持されている。このように配設された第1反力スプリング480および第2反力スプリング482は、入力ピストン408と中間ピストン406とを、それらが互いに離間する方向に、つまり、内部室R6の容積が拡大する方向に付勢している。シリンダ装置110は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって構成される弾性力付与機構、つまり、それらのばね反力によって、入力ピストン408と中間ピストン406とが互いに接近する方向、つまり、内部室R6の容積が減少する向きの入力ピストン408と中間ピストン406との相対移動に対抗する弾性力を、入力ピストン408と中間ピストン406とに付与する機構を備えている。また、浮動座484の後端部には、緩衝ゴム486が嵌め込まれており、その緩衝ゴム486が入力ピストン408の後端面に当接することで、浮動座484と入力ピストン408の接近は、ある範囲に制限されている。
【0137】
入力ピストン408の後端部には、ブレーキペダル150に加えられた操作力を入力ピストン408に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン408を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン608の後端部は、第2ハウジング部材612の後方小径部632の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円形の支持板492が付設されており、この支持板492とハウジング400との間にはブーツ494が渡されており、シリンダ装置110の後部の防塵が図られている。
【0138】
第1加圧室R1は、開口が出力ポートとなる連通孔500を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン402に設けられた連通孔502および開口がドレインポートとなる連通孔504を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R2は、開口が出力ポートとなる連通孔506を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン404に設けられた連通孔508および開口がドレインポートとなる連通孔510を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0139】
第1加圧ピストン402は、第1ハウジング部材410の前方小径部422の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路512が形成されている。入力室R3は、その液通路512および開口が連結ポートとなる連通孔516を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔516は、外部連通路518を介して増減圧装置120に繋げられている。また、外部連通路518には、電磁式の第1入力室開閉弁520とチェック弁522が設けられている。また、外部連通路518には、入力室R3の圧力(以下、「入力圧」という場合がある)を検出するための圧力センサ[PI]524が設けられている。
【0140】
第1ハウジング部材410には、開口がドレインポートとなる連通孔526が設けられており、リザーバ122に繋げられている。開口が連結ポートとされている連通孔528は、第1ハウジング部材410の内部でその連通孔526に繋がれている。また、その連通孔528の連結ポートには、外部連通路530の一端部が接続されており、外部連通路530の他端部は、増減圧装置120の減圧リニア弁252に連結されている。
【0141】
対向室R4は、開口が連結ポートとなる連通孔532によって、外部に連通可能となっている。その連結ポートには、外部連通路534の一端部が連結されており、他端部は、外部連通路530に連結されている。つまり、外部連通路534は、リザーバ122へと連通されているのである。また、外部連通路534には、電磁式の対向室開閉弁536が設けられており、この対向室開閉弁536によって、外部連通路534が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置110は、外部連通路534および対向室開閉弁536を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。また、外部連通路534には、対向室R4のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁538も設けられている。
【0142】
中間ピストン406には、それの外周面に設けられた開口がピストン側ポートP1となる連通孔540が設けられている。連通孔540は内部室R6に繋がっており、連通孔540によって1つの連通路(以下、「第1連通路」という場合がある)が形成されている。また、中間ピストン406の外周面であって連通孔540の前後には、環状のシール542F、542Rが、比較的小さな間隔を置いて、それぞれ嵌め込まれている。また、第1ハウジング部材410の壁内に、連通路544が形成されており、この連通路544は、一端が連通孔526につながるとともに、他端が前方小径部422の後端部の内周面に開口している。この開口は、ハウジング側ポートP2とされている。これら連通孔526、連通孔544によって1つの連通路(以下、「第2連通路」という場合がある)が形成されている。
【0143】
なお、高圧源装置118から、増減圧装置120を介して高圧のブレーキ液が入力室R3および第2入力室R5に供給される場合であっても、中間ピストン406は前進・後退させられない。詳しく説明すると、入力室R3を区画する本体部470前端の受圧面積と、第2入力室R5を区画するの鍔部472の後端の受圧面積とが略等しくされており、入力室R3の圧力によって中間ピストン406を後退させる力と、第2入力室R5の圧力によって中間ピストン406を前進させる力とが均衡することによって、中間ピストン406が進退しないようになっている。
【0144】
≪シリンダ装置の作動≫
以下にシリンダ装置110の作動について説明するが、便宜上、通常時の作動を説明する前に、電気的失陥の場合、つまり、当該液圧ブレーキシステム100への電力供給が断たれた場合における作動を説明する。なお、失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、第1入力室開閉弁520は開弁状態となっており、入力室R3は、減圧リニア弁252、連通孔526、連通孔528、外部連通路530を介して、リザーバ122に連通されている。また、対向室開閉弁536も開弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。
【0145】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン408は前進を開始する。踏込操作開始時には、未だ、中間ピストン406が前進されていない状態であり、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2とは、シール部材542Fと542Rとの間において向かい合っている。つまり、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2とは、互いに連通されており、内部室R6とリザーバ122とが連通される内部室連通状態が実現されている。この状態で、入力ピストン408は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482を縮めつつ、中間ピストン406に対して前進し、その際、内部室R6の容積は、内部室R6のブレーキ液がリザーバ122へ流出されて減少する。
【0146】
入力ピストン408が前進をして間もなく、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482のばね反力によって中間ピストン406が前進させられる。中間ピストン406の前進によって、シール542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれ、内部室非連通状態が実現される。したがって、内部室R6の容積変化が禁止され、入力ピストン408と中間ピストン406との相対移動が禁止されて、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体となって前進させられる。このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1連通路、第2連通路、ピストン側ポートP1、ハウジング側ポートP2、シール部材542F、542Rを含んで構成された機構、つまり、内部室R6とリザーバ122とが連通する内部室連通状態と連通しない内部室非連通状態とを選択的に実現する第2連通状態切換機構、言い換えれば、内部室連通状態切換機構を備えているのである。
【0147】
中間ピストン406が前進することで、中間ピストン406は、第1加圧ピストン402に当接したままで第1加圧ピストン402を前進させる。また、内部室非連通状態が実現されているため、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされており、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン402に直接伝達されることになる。したがって、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン402を押すことができるのである。それにより、第1加圧ピストン402は前進し、第1加圧室R1とリザーバ122の伝達が断たれ、第1加圧室R1のブレーキ液は、ブレーキペダル150に加えられた操作力によって加圧されるのである。ちなみに、第1加圧室R1の加圧に伴って、第2加圧ピストン404も前進し、第1加圧室R1と同様、第2加圧室R2とリザーバ122との連通が断たれ、第2加圧室R2内のブレーキ液も加圧されることになる。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0148】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404、中間ピストン406は、リターンスプリング464、466によって、それぞれ、初期位置(図2に示す位置であり、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430と後方小径部432との段差面に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン408は、オペレーションロッド152とともに、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置(図2に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材412の後方小径部432の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0149】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、対向室開閉弁536は励磁されて閉弁状態とされるため、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通しない対向室非連通状態が実現され、対向室R4が密閉されて中間ピストン406の前進が禁止されている。この状態で、ブレーキ操作が行われて入力ピストン408が前進されたとしても、中間ピストン406の前進が禁止されているため、第2連通状態切換機構によって、内部室R6とリザーバ122とが連通される内部室連通状態が維持される。通常時は、上述した失陥時の場合と異なり、入力ピストン408の中間ピストン406に対する前進は、許容される。入力ピストン408が前進する際、入力ピストン408には、弾性力付与機構、つまり、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482による弾性力が、抵抗力として作用する。その弾性力は、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになる。
【0150】
図3は、入力ピストン408の前進量、つまり、ブレーキぺダル150の操作量に対する操作反力の変化(以下、「操作反力勾配」という場合がある)を示すグラフである。言い換えれば、本シリンダ装置110の操作反力特性を示すグラフである。この図から解るように、ブレーキペダル150の操作量が増加するとそれにつれて操作反力は増加する。そして、設定量(以下、「反力勾配変化操作量」という場合がある)を超えてブレーキペダル150の操作量が増加すると、操作量の変化に対する操作反力の変化は大きくなる。すなわち、操作反力の増加勾配が大きくなるようにされているのである
【0151】
図3に示す特性を有する操作反力の変化は、ブレーキペダル150の操作量が反力勾配変化操作量を超えた場合に、つまり、入力ピストン408の前進量が設定量を超えた場合に、2つの反力スプリング480,482の一方である第1反力スプリング480による加圧力が増加しないようにされていることで、実現されている。本シリンダ装置110では、第1反力スプリング480のばね定数が第2反力スプリング482のばね定数より相当小さくされている。そのため、比較的操作量が小さい範囲では、操作量の変化に対する操作反力の変化は相当に小さくなっている。詳しく説明すると、比較的操作量の小さい範囲では、第1反力スプリング480,第2反力スプリング482はともに圧縮変形するようにされている。それに対して、操作量が反力勾配変化操作量を超えると、緩衝ゴム486が入力ピストン408の後端部に当接して、第1反力スプリング480が弾性変形しなくなり、第2反力スプリング482のみが弾性変形する。このような機構により、設定量を超えたブレーキペダル150の操作を行った場合に、操作反力の増加勾配が大きくなるのである。このような操作反力特性により、ブレーキペダル150の操作感は良好なものとされる。
【0152】
なお、ブレーキペダル150をさらに操作した場合、浮動座484の前端部が、中間ピストン406の前端面に当接し、第2反力スプリング482が弾性変形しなくなる。つまり、シリンダ装置110には、入力ピストン408の前進が禁止される設定前進量が設けられており、ブレーキの操作には、その設定前進量によって決められる操作限界が設けられている。このように、シリンダ装置110は、第1反力スプリング480、第2反力スプリング482、浮動座484、緩衝ゴム486を含んで構成される機構、つまり、弾性力に抗する状態での入力ピストン408の前進が設定前進量だけ許容される入力ピストン前進許容機構を有している。
【0153】
先に説明したように、本車両では、液圧ブレーキシステム100は、目標制動力のうちの回生制動力を超える分だけ液圧制動力を発生させればよい。極端に言えば、目標制動力を回生制動力で賄える限り、液圧ブレーキシステム100による液圧制動力を必要としない。本シリンダ装置110では、通常時において、発生させる液圧制動力に依存せずに、ブレーキペダル150の操作量に応じた操作反力が発生する構造とされている。極端に言えば、本シリンダ装置110は、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404によるブレーキ液の加圧を行わない状態でのブレーキペダル150の操作を許容する機能を有している。つまり、本シリンダ装置110は、ハイブリッド車両に好適なストロークシミュレータを有しているのである。
【0154】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404によって第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R3に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された制御高圧源圧を入力室R3に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダルの操作量は、概して、図3における最大回生時液圧制動開始操作量となる。液圧ブレーキシステム100では、この最大回生時液圧制動開始操作量は、前述の反力勾配変化操作量よりもやや大きく設定されている。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R3に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0155】
入力室R3に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。それに従って、第2加圧ピストン404によって第2加圧室R2のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置110による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R3に入力される。
【0156】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404は、リターンスプリング464,466によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン408は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置に戻される。
【0157】
なお、通常時において、ブレーキフェード時、急ブレーキ時等、大きな制動力を必要とする場合も存在する。このとき(以下「大制動力必要時」という場合がある)、本液圧ブレーキシステム100では、上記高圧源圧依存制動状態において発生可能な最大の制動力(以下、「高圧源依存最大制動力」という場合がある)よりも大きな制動力を発生可能とされている。言い換えれば、高圧源圧依存制動状態において高圧源装置118による高圧源圧が第1入力室R3に入力された状態で得られる制動力よりも大きな制動力を発生させることが可能とされている。以下に、大制動力必要時の作動について説明する。
【0158】
大制動力必要時には、第1入力室開閉弁520が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁536が開弁状態とされる。つまり、第1入力室R3が密閉状態とさせられるとともに、第1連通状態切換機構によって対向室連通状態が実現されて対向室R4とリザーバ122とが連通させられる。それによって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。この中間ピストン406の前進により、第1入力室R3内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧可能とされているのである。この加圧によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が第1入力室R3に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得られることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1入力室開閉弁520と対向室開閉弁536とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0159】
≪制動状態切換の具体的方法≫
図4は、通常時において、運転者によるブレーキペダル150の操作力Fの変化に対する出力圧POの変化を模式的に示したグラフである。説明を簡単にするため、以下の説明は、回生制動力が存在しないことを前提とし、また、目標液圧制動力PTARが運転者操作力Fに応じて決定され、その目標制動力PTARを基に制御高圧源圧PCが決定されることを前提として行う。図4のグラフも、その前提に従ったものである。なお、グラフの中の一点鎖線は、高圧源圧依存制動状態における理論的な特性を示している。
【0160】
本液圧ブレーキシステム100では、第1入力室R3の圧力である入力圧PIによって第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。一方、制御高圧源圧PCは操作力Fに応じて決定され、その制御高圧源圧PCが第1入力室R3に入力されるため、高圧源圧依存制動状態、つまり、高圧源圧依存加圧状態では、出力圧POは、図4のグラフに示すように、操作力Fに概ね比例する。また、高圧源圧依存加圧状態では、入力圧PIは制御高圧源圧PCに等しく、制御高圧源圧PCが高圧源圧PHより高くなることはない。そのため、制御高圧源圧PCが高圧源圧PH と等しくなった場合に、出力圧POが頭打ちとなり、液圧制動力も頭打ちとなる。このときの制動力が高圧源依存最大制動力である。
【0161】
本液圧ブレーキシステム100では、高圧源圧依存制動状態においては、入力圧PIが、制御高圧源圧PCと等しく、また、操作力Fを指標する操作力指標パラメータであると考えることができるため、入力圧PIが高圧源圧PHに近づいた際に、制動力の発生状態を、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態へと移行させる。具体的に説明すれば、制動力発生状態の切換を滑らかに行うためのマージン圧αHが設定されており、高圧源圧PHと入力圧PIとの差が、設定差としてのマージン圧αHを超えて小さくなった場合に、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0162】
操作力・高圧源圧依存制動状態では、先に説明したように、第1入力室R3は密閉され、第2入力室R5に入力された制御高圧源圧PCと操作力Fとによって、中間ピストン406が前進させられ、その前進に伴って第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。このとき、制御高圧源圧PCが高圧源圧PHとなった後は、図4のグラフに示すように、操作力Fの増加に応じて、出力圧POが増加し、液圧制動力が増加する。なお、操作力・高圧源圧依存制動状態において検出される入力圧PI、すなわち、第1入力室R3内の圧力は、出力圧POの増加に応じて増加する。
【0163】
操作力・高圧源圧依存制動状態において操作力Fが減少した場合には、その操作力Fの減少に応じて出力圧POが減少する。このとき、中間ピストン406は後退する。中間ピストン406が、上述の初期位置に位置した後は、中間ピストン406の後退が禁止されることになる。第1入力室R3が密閉されているため、中間ピストン406の後退が禁止された後は、入力圧PIが一定となり、出力圧POが一定となる(図4に示す出力圧定常状態)。つまり、液圧制動力は減少しないこととなる。
【0164】
上記のことに鑑み、本液圧ブレーキシステム100では、中間ピストン406が、初期位置、すなわち、操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換わる前の位置に復帰したことを条件に、操作力・高圧源圧依存制動状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。先に説明したように操作力Fに応じて目標油圧制動力PTARが決定されるため、具体的には、目標油圧制動力PTARの変化速度dPTARに対する入力圧PIの変化速度dPIの割合が、設定閾値αTHより小さいことを条件に、切換動作が行われる。なお、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換りの場合と同程度の出力圧POにおいて切換が行われるように、入力圧PIが、高圧源圧PHよりαC(≒αH)だけ低い圧力よりも高いことをも条件とし、それらの条件が設定時間t(例えば、30msec)継続した場合に、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0165】
ブレーキECU48は、図5にフローチャート示す制動力発生状態切換プログラムを比較的短い周期(例えば、数msec〜数十msec)で繰り返し実行しており、制動力発生状態の切換は、そのプログラムに従う処理に基づいて行われる。そのプログラムに従う処理では、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、操作力Fの変化速度dF/dTに基づいて、ブレーキペダル150が、操作力Fが増加方向に操作されているか否か、つまり、踏込操作中であるか否かが判定される。踏込操作されている場合には、S2において、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるための上記条件を充足しているか否かが判断される。その条件を充足している場合には、S3において、操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、第1入力室開閉弁520は閉弁状態とされ、対向室開閉弁536は開弁状態とされる。また、S3では、制動力発生状態を判定するためのフラグFLが、操作力・高圧源圧依存制動状態を示す“1”とされる。一方、上記条件を充足していない場合は、S4において、高圧源圧依存制動状態を維持すべく、第1入力室開閉弁520は開弁状態とされ、対向室開閉弁536が閉弁状態とされる。また、上記フラグFLが、高圧源圧依存制動状態を示す“0”とされる。
【0166】
S1においてブレーキペダル150の操作が踏込操作中でないと判定された場合は、S5において、今の制動力発生状態が判定され、高圧源圧依存制動状態であれば、その状態が維持され、操作力・高圧源圧依存制動状態であれば、S6において、その状態から高圧源圧依存制動状態への切換の条件を充足しているか否かが判断される。その条件が充足された場合には、S4おいて、高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、第1入力室開閉弁520は開弁状態とされ、対向室開閉弁536が閉弁状態とされ、それに伴って、フラグFLが、“0”とされる。上記条件を充足していない場合には、現在の状態が維持される。
【0167】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム100は、高圧源圧依存加圧状態における入力圧PI、つまり、制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の高圧源圧PHにある程度近づいた場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換える。したがって、シリンダ装置の作動状態を、制御高圧源圧PCがその時点での限界となる付近で、効果的に行うことが可能とされている。
【0168】
本液圧ブレーキシステム100が有するシリンダ装置110は、図2では理解し難いが、第1入力室R3を区画する中間ピストン406の受圧面積が、第1入力室R3を区画する第1加圧ピストン402の受圧面積に比べて大きくされている。言い換えれば、中間ピストン406の前端の面積が、第1加圧ピストン402の後端の面積に比べて大きくされている。そのため、操作力・高圧源圧依存加圧状態においてブレーキペダル150を操作した際、中間ピストン406の前進量に対して第1加圧ピストン402の前進量が大きくなっている。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキペダル150の操作量の変化に対する出力圧POの変化が比較的大きくされており、より大きな操作ストロークが確保されている。
【0169】
また、シリンダ装置110は、入力ピストン408と中間ピストン406とが嵌め合わされた構造となっているため、入力ピストン408と係合させる必要のある高圧シールが少なくなっている。具体的には、図2に示すシール540とシール542の2つだけが入力ピストン408と係合する高圧シールである。そのため、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストン408の移動に対する摩擦抵抗が比較的少なく、摩擦抵抗がブレーキペダル150の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感にに与える影響が小さくされている。
【0170】
さらに、本シリンダ装置110では、ブレーキペダル150が操作されていない状態において、第1加圧ピストン402と中間ピストン406とが当接する程に第1入力室R3の容積が小さくされている、したがって、失陥時において、ブレーキペダル150の操作が開始された直後から、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、失陥時において、ブレーキペダル150の操作範囲、つまり、操作ストロークが充分に確保されているのである。
【0171】
また、本シリンダ装置110では、内部室非連通状態を実現させる機構として、上述の機構を採用している。つまり、中間ピストン406に2つのシール部材542F、542Rを嵌め、その間にピストン側ポートP1を設けるとともに、中間ピストン406の移動に伴って、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれるよう構成されている。このような構成によって、中間ピストン406が、それの前進範囲のいずれの位置に位置している場合でも、第1ハウジング部材410の内周面と2つのシール部材542F、542Rとによって区画される小さな空間によって、内部室R6が密閉される。したがって、シリンダ装置110の中間ピストン406の移動方向における寸法が小さくされており、コンパクト化が図られている。
【0172】
さらに、本シリンダ装置110では、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482が、入力ピストン408と中間ピストン406とによって区画形成される内部室R6内に配設されている。したがって、シリンダ装置110内にストロークシミュレータが組み込まれており、しかも、内部室R6というデッドスペースに、ストロークシミュレータが組み込まれているため、コンパクトなシリンダ装置が実現されている。
【0173】
≪変形例1≫
図6に示す液圧ブレーキシステム560は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100におけるシリンダ装置110に代えて、シリンダ装置570を採用している。シリンダ装置570は、大まかには第1実施例のシリンダ装置110と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0174】
シリンダ装置570では、第1実施例のシリンダ装置110における第1入力室開閉弁520および対向室開閉弁536に代えて、機械式の弁装置572が採用されている。この弁装置572は、外部連通路518を開閉する第1入力室開閉弁520と外部連通路534を開閉する対向室開閉弁536とが一体化されたものと考えることができる。なお、弁装置572は、アンチロック装置114からリザーバ122の連通路530の一部分をも構成している。また、外部連通路534から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁574が設けられている。
【0175】
弁装置572は、内部が中空とされた円筒形状のハウジング580と、そのハウジング580の内部に収容される円柱形状のピストン582と、ピストン582を後退させる方向に付勢する付勢スプリング584とを含んで構成されている。ハウジング580は、内径の異なる3つの部分から構成されており、前方部における内径が小さく、中間部における内径が大きく、後方部における内径が中間部より若干小さくなっている。ピストン582は、外径の異なる3つの部分から構成されており、それぞれの部分が、ハウジング580の内周に摺接するように形成されている。つまり、ピストン582は、前方部の外径が小さく、中間部の外径が大きく、後方部の外径が中間部より若干小さくされており、各々の部位が、ハウジング580の前方部、中間部、後方部の各内周に摺接する。このように形成されたピストン582がハウジング580に収容された状態で、ハウジング580の中間部の内周面と、ピストン582の前方部の外周面との間には、液室が形成されており、付勢スプリング584が収容されている。付勢スプリング584の前端部はハウジング580の前方部と中間部との段差面に当接し、後端部はピストン582の前方部と後方部との段差面に当接してピストン582を後方に付勢している。また、ピストン582の前端部と後端部は、それぞれ、突起を有している。それらの突起は、弁座として機能する後述の連通孔を塞ぐための弁子として、機能する。また、ピストン582の内部には、自身の前端部と中間部とを連通する連通路が設けられている。
【0176】
ハウジング580の前端には、ピストン582の前端部とハウジング580の内周面とによって液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔586および連通孔588によって、外部に連通可能とされており、それらの連結ポートの各々は、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、これらの連通孔とその液室とを含んで構成されている。
【0177】
ハウジング580の中間には、内部に付勢スプリング584が配設された液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられてそれぞれの開口がドレインポートとなる連通孔590および連通孔592によって、外部に連通可能とされており、それらドレインポートの各々は、外部連通路530に接続されている。つまり、外部連通路530は、これらの連通孔と上記液室とを含んで構成されており、その液室は、常時、大気圧とされている。
【0178】
また、ハウジング580の後端には、ピストン582の後端とハウジング580とによって液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられて開口が連結ポートとなる連通孔594によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートは、外部連通路534に接続されている。また、この液室は、ピストン582の内部の連通路を介して、上述の中間部に設けられた液室を介して、外部連通路530に繋がれている。このように、外部連通路534は、これら連通孔、連通路を含んで構成されており、弁装置572を介して外部連通路530に接続されている。
【0179】
さらに、ピストン582の後方部とハウジング580の中間部との間には、各々の外径と内径とが若干異なるために、ある程度の断面積を有する液室が形成されている。また、その液室には、開口が連結ポートとなる連通孔596によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートには、外部連通路518から分岐する連通路が接続されている。つまり、この液室には、常時、制御高圧源圧が導入される。
【0180】
このように構成された液圧ブレーキシステム560において、電気的失陥時におけるシリンダ装置570の作動について説明する。失陥時においては、弁装置572のピストン582は、付勢スプリング584のばね反力によって、後方側に位置されている。ピストン582この位置に位置する状態では、連通孔586は、ピストン582の前端部に形成される突起によって塞がれておらず、連通孔594は、ピストン582の後端部に形成される突起によって塞がれている。つまり、外部連通路518は開通していることで、第1入力室R3はリザーバ122に連通されており、外部連通路534が遮断されていることで、対向室R4とリザーバ122との連通が断たれている。
【0181】
ブレーキペダル150が操作されていない場合には、リリーフ弁574は閉弁されている。つまり、対向室非連通状態が実現されており、対向室R4は密閉されている。運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン408は前進を開始し、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482のばね反力が増加する。これらのばね反力によって、中間ピストン406には前方への力が作用し、中間ピストン406の鍔部472によって、対向室R4におけるブレーキ液が加圧される。その加圧された対向室R4のブレーキ液の圧力がリリーフ弁574の開弁圧に達すると、リリーフ弁574が開弁し、対向室R4のブレーキ液がリザーバ122に流出するとともに、中間ピストン406が前進する。このような構造を有する本シリンダ装置570は、リリーフ弁574を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えている。また、第1連通状態切換機構は、リリーフ弁574の設定圧に依拠して対向室連通状態が実現される圧力依拠連通機構と考えることができる。
【0182】
上記リリーフ弁574の開弁圧は、第1入力室R3への入力圧が大気圧となっている状態において、ブレーキペダル150の操作量が設定操作量となった場合における対向室R4の圧力に設定されている。その設定操作量は、図3における最大回生時液圧制動開始操作量を超えて設定されている。したがって、本シリンダ装置570では、失陥時に、その設定操作量を超えてブレーキペダル150が操作された場合に、リリーフ弁574が開弁して、操作力依拠加圧状態が実現される。
【0183】
リリーフ弁574の開弁によってのみ、対向室連通状態が実現されると仮定した場合、操作力によって中間ピストン406を前進させようとすると、対向室R4にリリーフ弁574の開弁圧に相当する残圧が存在するため、その残圧に応じた操作反力を受けた状態での操作が必要となる。このことは、失陥時において、操作力が、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404による加圧以外に利用されるといったロスを生じさせる。そのことに鑑み、本シリンダ装置570では、中間ピストン406が設定量前進した場合に、つまり、対向室R4の容積が設定容積となった場合に、対向室連通状態を実現するための機構、すなわち、容積依拠連通機構が設けられている。
【0184】
上記容積依拠連通機構について具体的に説明すれば、以下のようである。中間ピストン406の前進によって、シール部材542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれて内部室非連通状態が実現されるのと同時に、対向室R4は、ハウジング側ポートP2を有する連通路544、つまり、第2連通路に、中間ピストン406と第1ハウジング部材410との間に形成される隙間を介して連通される。言い換えれば、中間ピストン406が、ハウジング側ポートP2およびシール部材542Rの各々の位置によって設定される距離だけ前進し、対向室R4の容積がその距離に応じた設定容積より小さくなれば、対向室R4がリザーバ122に連通させられるのである。このように構成された容積依拠連通機構によって実現された対向室連通状態では、対向室R4は大気圧とされるため、対向室R4の圧力による操作反力は発生せず、以降の操作における操作力は、ロスの少ない状態で、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404による加圧に利用されることになる。
【0185】
通常時においては、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力される。つまり、ピストン582は後方側に位置しているため、外部連通路518において、弁装置572は開弁されており、第1入力室R3に高圧源装置118からの圧力が入力されるのである。圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0186】
大制動力必要時において、操作量が増加し、制御高圧源圧が高圧源圧に近づくと、弁装置572において、連通孔596を介して外部連通路518に連通され、高圧源圧とされている空間の圧力が高くなる。弁装置572は、この制御高圧源圧がパイロット圧となって作動するように構成されている。つまり、ピストン582は、制御高圧源圧が比較的高い状態において、付勢スプリング583の反発力に抗して前方側に移動させられるのである。したがって、ピストン582の前端部の突起によって、連通孔586が塞がれ、外部連通路518は遮断される。つまり、第1入力室R3は密閉状態とされる。また、連通孔588は、ピストン582の後端部の突起によって塞がれなくなるため、外部連通路534は開通状態となっている。つまり、対向室R4とリザーバ122とが、リリーフ弁574に依存せずに連通され、中間ピストン406の前進が許容される。したがって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。この中間ピストン406の前進により、第1入力室R3内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して中間ピストン406を前進させることができ、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置570は、弁装置572を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0187】
≪変形例2≫
図7に示す液圧ブレーキシステム600は、第1変形例の液圧ブレーキシステム560におけるシリンダ装置570に代えて、シリンダ装置610を採用している。シリンダ装置610は、大まかには第1変形例のシリンダ装置570と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0188】
シリンダ装置610では、第1変形例のシリンダ装置610におけるリリーフ弁574に代えて、電磁式の開閉弁612およびチェック弁614が採用されている。また、それらの弁612,614が設けられている外部連通路534から分岐する液通路は、外部連通路530に繋げられている。このような構造を有する本シリンダ装置610は、開閉弁612を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えている。
【0189】
まず、本液圧ブレーキシステム600における電気的失陥時のシリンダ装置610の作動について説明する。失陥時には、開閉弁612は非励磁であって開弁状態となっている。つまり、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。この場合、シリンダ装置610は、第1実施例のシリンダ装置110と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の踏込操作に伴って、第2連通状態切換機構が内部室連通状態から内部室非連通状態へと移行することで、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされる。そのため、液圧ブレーキシステム600では、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現される。
【0190】
通常時においては、開閉弁612は励磁されて閉弁状態とされている。つまり、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが非連通とされる対向室非連通状態が実現されている。この場合、シリンダ装置610は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力され、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0191】
大制動力必要時においては、弁装置572において、ピストン582が前方側に移動させられる。つまり、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となり、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置610は、弁装置572および開閉弁612を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0192】
≪変形例3≫
図8に示す液圧ブレーキシステム640は、第1変形例の液圧ブレーキシステム560において採用されているシリンダ装置570に代えて、シリンダ装置650を採用している。シリンダ装置650は、大まかには第1変形例のシリンダ装置570と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。また、本液圧ブレーキシステム640では、第1変形例のシステム560で採用されている弁装置572に代えて、差圧式の弁装置652が採用されている。この弁装置652は、弁装置572と同様、実施例の液圧ブレーキシステム100において採用されている2つの開閉弁、つまり、外部連通路518を開閉する第1入力室開閉弁520と外部連通路534を開閉する対向室開閉弁536とが一体化されたものと考えることができる。さらに、外部連通路534から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁654が設けられている。
【0193】
弁装置652は、内部が中空とされた円筒形状のハウジング660と、そのハウジング660の内部に収容される円柱形状のピストン662と、ピストン662を後退させる方向に付勢する付勢スプリング664とを含んで構成されている。ハウジング660は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材666、第2ハウジング部材668から構成されている。
【0194】
第1ハウジング部材666は、前端部が閉塞された概して円筒状を有している。第1ハウジング部材666は、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部670、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部672、それら前方小径部670と後方大径部672との中間に位置してそれらの内径の中間の内径を有する中間部674に区分けされている。第2ハウジング部材668は、前端が開口して後端が塞がれている円筒形状をなしている。第2ハウジング部材668は、前端面が第1ハウジング部材666の中間部674と後方大径部672との段差面に当接する状態で、その後方大径部672に嵌め込まれている。
【0195】
ピストン662は、外径の異なる3つの部分から構成されており、それぞれの部分が、ハウジング660の内周に摺接するように形成されている。詳しく説明すると、ピストン582は、前方部の外径が小さく、中間部の外径が大きく、後方部の外径が小さくされており、前方部が第1ハウジング部材666の前方小径部670、中間部が第1ハウジング部材666の中間部674、後方部が第2ハウジング部材668の各内周に摺接する。このように形成されたピストン662がハウジング660に収容された状態で、第1ハウジング部材666の中間部674の内周面と、ピストン662の前方部の外周面との間には、空間が形成されており、付勢スプリング664が収容されている。付勢スプリング664の前端部は第1ハウジング部材666の前方部と中間部との段差面に当接し、後端部はピストン662の前方部と中間部との段差面に当接してピストン662を後方に付勢している。また、ピストン662の前端部と後端部には、それぞれ、突起が設けられている。それらの突起は、弁座として機能する後述の連通孔を塞ぐための弁子として機能する。また、ピストン662の内部には、自身の中間部と後方部とを連通する連通路が設けられている。
【0196】
ハウジング660の前端には、ピストン662の前端部と第1ハウジング部材666の内周面とによって液室が区画形成されている。この液室は、第1ハウジング部材666に設けられて、それぞれの開口が連結ポートとなる連通孔676および連通孔678によって、外部に連通可能とされており、それら連結ポートの各々は、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、これらの連通孔と液室とを含んで構成されている。
【0197】
ハウジング660の中間部には、付勢スプリング664が配設された液室が区画形成されている。この液室は、第1ハウジング部材666に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔680によって、外部に連通可能とされている。この連結ポートには、一端が外部増圧源圧装置118に連結されている外部連通路682の他端が連結されている。したがって、この液室は、常時、高圧源圧とされている。
【0198】
また、ピストン582の中間部と後方部との段差面と、第2ハウジング部材668の前端面とによって形成される液室には、開口が連結ポートとなる連通孔684によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートには、外部連通路518から分岐する連通路が接続されている。したがって、この液室は、常時、制御高圧源圧とされている。
【0199】
さらに、ハウジング660の後端には、ピストン662の後端とハウジング660とによって液室が区画形成されている。この空間は、第1ハウジング部材666に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔686によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートは、外部連通路534に接続されている。
【0200】
また、第1ハウジング部材666の後方大径部672の内周面と、第2ハウジング部材668の外周面との間には、各々の内径と外径とが若干異なるために、ある程度の断面積を有する液室が区画形成されている。また、その液室には、それぞれの開口がドレインポートとなる連通孔688と連通孔690とによって、外部に連通可能とされており、それらドレインポートの各々は、外部連通路530に接続されている。つまり、外部連通路530は、これらの連通孔と上記液室とを含んで構成されており、その液室は、常時、大気圧とされている。また、第2ハウジング部材668には、外部連通路530と外部連通路534とを連通することが可能とされている連通孔692が設けられている。
【0201】
失陥時においては、ピストン662は、付勢スプリング664のばね反力によって、後方側に位置されており、連通孔676は、ピストン662の前端部に形成される突起によって塞がれていないが、連通孔686は、ピストン662の後端部に形成される突起によって塞がれている。つまり、外部連通路518は開通状態とされて、第1入力室R3はリザーバ122に連通されており、外部連通路534は遮断されて、対向室R4とリザーバ122との連通は断たれている。
【0202】
失陥時において、シリンダ装置650は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の踏込操作に伴って、対向室R4のブレーキ液の圧力によって、リリーフ弁654が開弁し、対向室R4とリザーバ122との連通状態が、対向室非連通状態から対向室連通状態へと移行する。さらに、シール部材542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、内部室非連通状態が実現されると同時に、容積依拠連通機構によって対向室連通状態が実現される。そのため、液圧ブレーキシステム640では、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされ、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現される。
【0203】
通常時においても、シリンダ装置650は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をする。つまり、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力され、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0204】
大制動力必要時において、操作量が増加し、制御高圧源圧が高くなると、制御高圧源圧と高圧源圧との差圧が小さくなる。ピストン662において、それの中間部の前面には高圧源圧が作用しており、中間部の後面と前端部とには制御高圧源圧が作用している。弁装置652は、高圧源圧と制御高圧源圧との両方がパイロット圧として導入され、それらパイロット圧の差圧によって作動するように構成されている。つまり、ピストン662は、差圧が小さい場合には、後方へと移動され、差圧が大きい場合には、前方へと移動されるのである。したがって、対向室R4とリザーバ122とが、リリーフ弁654に依存せずに連通され、中間ピストン406の前進が許容される。したがって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。つまり、大制動力発生時には、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して中間ピストン406を前進させることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置650は、弁装置652を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0205】
本液圧ブレーキシステム640における弁装置652によれば、制御高圧源圧の絶対圧に依存せず、高圧源圧と制御高圧源圧との相対圧によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とが選択的に実現される。そのため、本液圧ブレーキシステム640は、制御高圧源圧がその時点での限界となる付近で、確実に、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われるようになっている。
【0206】
≪その他の変形例≫
上記第1実施例の液圧ブレーキシステム100では、入力圧PIすなわち制御高圧源圧PCと高圧源圧PH との差が設定差となった場合に高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われるようにされている。そのような切換条件に代え、制御高圧源圧PC(入力圧PI)または出力圧POが設定圧を超えた場合に上記切換が行われるようしてもよい。また、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。その場合、操作量センサ156によって検出されたブレーキペダル150の操作量に変化がないにも拘わらず、操作力センサによって検出された操作力にある程度の変化がある場合に、上記切換を行うようにすればよい。この条件基づいて切換を行えば、ブレーキ操作の操作感が良好なものとなる。なお、変形例の液圧ブレーキシステム560,600,640においても、出力圧POがパイロット圧として導入されその出力圧POに基づいて上記切換が行われる弁装置を採用可能である。
【実施例2】
【0207】
図9に、第2実施例の液圧ブレーキシステム700を示す。この液圧ブレーキシステム700は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100において採用されているシリンダ装置110に代えて、シリンダ装置710を採用している。この液圧ブレーキシステム700に関しては、第1実施例と異なる構成および作動についてのみ説明する。
【0208】
≪シリンダ装置の構成≫
シリンダ装置710は、シリンダ装置710の筐体であるハウジング720と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン722および第2加圧ピストン724と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン726とを含んで構成されている。なお、図9は、シリンダ装置710が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0209】
ハウジング720は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材730、第2ハウジング部材732から構成されている。第1ハウジング部材730は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ740が形成されており、そのフランジ740において車体に固定される。第1ハウジング部材730は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部742、後方側に位置して内径の大きい後方大径部744に区分けされている。
【0210】
第2ハウジング部材732は、前方側に位置して内径の大きい前方大径部750、後方側に位置して内径の小さい後方小径部752とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材732は、前方大径部750の前端部が第1ハウジング部材730の前方小径部742と後方大径部744との段差面に接する状態で、その後方大径部744に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材730,第2ハウジング部材732は、第1ハウジング部材730の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環754によって、互いに締結されている。
【0211】
第2加圧ピストン724は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材730の前方小径部742に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン722は、円筒形状をなす本体部760と、その本体部760の後端部に設けられた鍔部762とを有する形状とされている。第1加圧ピストン722は、第2加圧ピストン724の後方に配設され、本体部760の前方の部分が第1ハウジング部材730の前方小径部742の内周面の後部側に、鍔部762が第2ハウジング部材732の前方大径部750の内周面に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。また、第1加圧ピストン722の本体部760の内部は、前後方向における中間位置に設けられた仕切壁部764によって、2つの部分に区画されている。つまり、第1加圧ピストン722は、前端,後端にそれぞれ開口する2つの有底穴を有する形状とされている。
【0212】
第1加圧ピストン722と第2加圧ピストン724との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R11が区画形成されており、また、第2加圧ピストン724の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R12が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン722と第2加圧ピストン724とは、第1加圧ピストン722の仕切壁部764に螺着立設された有頭ピン770と、第2加圧ピストン724の後端面に固設されたピン保持筒772とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R11内,第2加圧室R12内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)774、776が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724はそれらが互いに離間する方向にされるとともに、第2加圧ピストン724は後方に向かって付勢されている。
【0213】
一方、第1加圧ピストン722の後方、詳しくは、第1加圧ピストン722の鍔部762の後方には、第2ハウジング部材732の後端部との間に、外部高圧源装置118からのブレーキ液が供給される液室、つまり、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R13が区画形成されている。ちなみに、図2では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、ハウジング720の内部には、第2ハウジング部材732の内周面と第1加圧ピストン722の本体部760の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、第1加圧ピストン722の鍔部762の前端面と、第1ハウジング部材730の前方小径部742と後方大径部744との段差面とによって区画されることで、環状の液室が形成されている。この液室は、第1加圧ピストン722の鍔部762を挟んで入力室R13と対向する対向室R14とされている。
【0214】
入力ピストン726は、前端部が開口されて後端部が塞がれている円筒形状の本体部780と、入力ピストン726の前端部材であって、本体部780に対して突出・引込可能とされて有底円筒状をなす補助ピストン782と、補助ピストン782を支持する第1反力スプリング784と、第1反力スプリング784の後方に直列に配設される第2反力スプリング786と、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持される鍔付ロッド形状の浮動座788とを含んで構成されている。ちなみに、第1反力スプリング784,第2反力スプリング786は、ともに圧縮コイルスプリングである。入力ピストン726は、ハウジング720の後端側から、第2ハウジング部材732の後方小径部752の内周面に摺接する状態でハウジング400内に挿し込まれるとともに、第1加圧ピストン722に、それの内周面に摺接する状態で挿し込まれており、入力ピストン726の前方には、第1加圧ピストン722との間に液室(以下「ピストン間室」という場合がある)R15が区画形成されている。また、入力ピストン726の内部に区画形成された液室(以下、「内部室」と言う場合がある)R16は、常時、大気圧とされている。
【0215】
第1反力スプリング784は、それの前端部が補助ピストン782の外筒部材680の前端部に支持され、後端部が浮動座788の前方側のシート面に支持されている。また、第2反力スプリング786は、それの後端部が入力ピストン726の本体部780の後端部に支持され、後端部が浮動座788の後方側のシート面に支持されている。したがって、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786は、補助ピストン782を、入力ピストン726の本体部780から突出する方向に付勢しており、補助ピストン782を弾性的に支持している。ちなみに、補助ピストン782は、それの外筒部材680の後端の外周部に設けられた被係止環部が、入力ピストン726の本体部780の前端の内周部に設けられた段差に係止されることで、本体部780からある程度以上前方に突出することが制限されている。また、浮動座788の前端部には、緩衝ゴム790が嵌め込まれており、その緩衝ゴム790が補助ピストン782の内筒部材682の後端面に当接することで、補助ピストン782と浮動座788との接近はある範囲に制限されている。
【0216】
入力ピストン726の後端部には、ブレーキペダル150の操作力を入力ピストン726に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン726を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン726の後端部は、第2ハウジング部材732の後方小径部752の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円板状のスプリングシート792が付設されており、このスプリングシート792と第2ハウジング部材732との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)794が配設されており、このリターンスプリング794によって、オペレーションロッド152は後方に向かって付勢されている。なお、スプリングシート792とハウジング720との間にはブーツ794が渡されており、シリンダ装置710の後部の防塵が図られている。
【0217】
第1加圧室R11は、開口が出力ポートとなる連通孔800を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン722に設けられた連通孔802および開口がドレインポートとなる連通孔804を介して、リザーバ122に連通可能とされている。一方、第2加圧室R12は、開口が出力ポートとなる連通孔806を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン724に設けられた連通孔808および開口がドレインポートとなる連通孔810を介して、リザーバ122に連通可能とされている。また、入力ピストン726の内部室R16は、第1加圧ピストン722に設けられた連通孔812、第2ハウジング部材732に設けられた連通孔814、第1ハウジング部材730に設けられて開口がドレインポートとなる連通孔818を介して、リザーバ122に連通されている。第2ハウジング部材732の前方側に位置する部分は、第1ハウジング部材730の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材730,732間にはある程度の流路面積を有する液通路820が形成されている。入力室R13は、その液通路820,第2ハウジング部材732に設けられた連通孔822および開口が入力ポートとなる連通孔824を介して、増減圧装置120に繋がっている。
【0218】
対向室R14は、第2ハウジング部材732に設けられた連通孔826および開口が連結ポートとなる連通孔828によって、外部に連通可能となっている。第1加圧ピストン722の本体部760は、第1ハウジング部材730の前方小径部742の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路830が形成されている。ピストン間室R15は、その液通路830,第1加圧ピストン722に設けられた連通孔832および開口が連結ポートとなる連通孔834を介して、外部に連通可能となっている。これら連通孔828の連結ポートと連通孔834の連結ポートとは、外部連通路836によって連通させられており、対向室R14とピストン間室R15とを連通させるための室間連通路が形成されている。つまり、本シリンダ装置710では、その室間連通路によって、対向室R14およびピストン間室R15は、1つの一体的な液室(以下、「反力室」という場合がある)R17とされている。また、その室間連通路には、電磁式の室間開閉弁838およびチェック弁840が設けられている。
【0219】
なお、第1加圧ピストン722と入力ピストン726との相対移動に伴って、ピストン間室R15の容積が増加・減少するとともに、対向室R14の容積が減少・増加する。上記室間連通路は、それら2つの液室の容積変化を互いに吸収し合うようにするための機能を有している。ちなみに、対向室R14の断面積はピストン間室R15の断面積と略等しくされており、入力ピストン726をハウジング720に対して移動させることなく、第1加圧ピストン722だけがハウジング720に対して移動可能とされている。
【0220】
第1ハウジング部材730の内部には、開口が連結ポートとされている連通孔844が設けられており、連通孔844は、第1ハウジング部材730の内部でその連通孔818に繋がれている。また、その連通孔844の連結ポートには、外部連通路846の一端部が接続されており、外部連通路846の他端部は、増減圧装置120の減圧リニア弁252に繋がれている。
【0221】
したがって、外部連通路846から分岐される外部連通路847は、外部連通路836に接続されている。したがって、対向室R14は、外部連通路836、846、847を介して、リザーバ122に連通可能とされている。また、外部連通路847には、電磁式の対向室開閉弁848が設けられており、この対向室開閉弁848によって、外部連通路847が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置710は、外部連通路847および対向室開閉弁848を含んで構成された機構、つまり、対向室R14とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。また、外部連通路847には、対向室R14のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁850も設けられている。
【0222】
≪シリンダ装置の作動≫
まず、電気的失陥時のシリンダ装置710の作動を説明する。失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、室間開閉弁838は開弁状態となっており、室間連通路を介して、対向室R14およびピストン間室R15連通される。また、対向室開閉弁848も開弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室R14とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。したがって、反力室R17はリザーバ122へと連通されて、大気圧とされている。
【0223】
失陥時においては、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、反力室R17が大気圧とされているため、入力ピストン726は、ブレーキペダル150の操作開始時点から、自由な前進が許容され、早い段階で、入力ピストン726の前端が第1加圧ピストン722の仕切壁部764に当接する。さらに、入力ピストン726の本体部780が第1加圧ピストン722に当接すれば、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン722に直接伝達されることになる。したがって、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン722を押すことができるのである。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0224】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724は、リターンスプリング774、776によって、それぞれ、初期位置(図9に示す位置であり、鍔部762が第2ハウジング部材732の前方大径部750と後方小径部752との段差面に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン726は、オペレーションロッド152とともに、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786によって、初期位置(図9に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材732の後方小径部752の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0225】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、減圧リニア弁252には最大電流が供給されており、閉弁状態とされている。また、室間開閉弁838は開弁状態となっており、室間連通路を介して、対向室R14およびピストン間室R15連通される。対向室開閉弁848は閉弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室非連通状態が実現されている。したがって、対向室R14、つまり、反力室R17は密閉されることとなる。
【0226】
運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン726の本体部780は前進を開始する。反力室R17の容積変化は禁止された状態とるため、反力室R17の圧力、つまり、ピストン間室R15の圧力の上昇によって、補助ピストン782は、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786を縮めつつ、本体部780の内部へと押し込まれる、言い換えれば、反力室R17の圧力に応じた量だけ、引き込む状態となる。
【0227】
第1反力スプリング784および第2反力スプリング786の弾性変形量、つまり、圧縮量は、反力室R17の圧力の上昇に依存する。逆に言えば、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786による弾性力に応じて、反力室R17は加圧され、その反力室R17の圧力に応じた操作反力が、入力ピストンを介して操作部材に付与される。つまり、2つのスプリング784,786による加圧力が、入力ピストン726の前進に対する抵抗力、つまり、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになるのである。このような構造を有する本シリンダ装置710は、補助ピストン782,第1反力スプリング784,第2反力スプリング786、浮動座788を含んで構成された機構、つまり、反力室R17内を第1反力スプリング784,第2反力スプリング786の弾性力に依拠して加圧可能な弾性力依拠加圧機構を備えているのである。
【0228】
上記操作反力は、入力ピストン726の前進量、つまり、ブレーキペダル150の操作量に依存する。ブレーキペダルの操作量に対する操作反力の大きさは、本シリンダ装置710においても、図3に示すような特性となる。本シリンダ装置710では、補助ピストン782の後端面が、浮動座788に当接して、第1反力スプリング784が弾性変形しなくなり、第2反力スプリング786のみが弾性変形するようにされている。また、第1反力スプリング784のばね定数が第2反力スプリング786のばね定数より相当小さくされている。そのため、操作反力の変化勾配は、比較的操作量が小さい範囲では小さくされ、操作量が反力勾配変化操作量を超えた場合に相当に大きくなるようになっている。また、ブレーキペダル150をさらに操作した場合、浮動座788後端部が、入力ピストン726の後端部に当接し、第2反力スプリング786が弾性変形しなくなる。つまり、シリンダ装置710には、入力ピストン726の前進が禁止される設定前進量が設けられており、ブレーキの操作には、その設定前進量によって決められる操作限界が設けられている。このように、シリンダ装置710は、第1反力スプリング784、第2反力スプリング786、浮動座788を含んで構成される機構、つまり、弾性力に抗する状態での入力ピストン408の前進が設定前進量だけ許容される入力ピストン前進許容機構を有している。
【0229】
上記ブレーキ操作の途中で対向室開閉弁848を開弁すれば、第1加圧ピストン722の前進が許容される。また、液圧制動力を発生させるべく、高圧源装置118によって発生させられた圧力を入力室R13に入力すれば、その圧力によって、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724が前進させられて、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される。入力室R13に入力される圧力に依存したブレーキ液の加圧の際には、反力室R17が密閉されていることから、上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない操作では、入力ピストン726の前端が、第1加圧ピストン722の仕切壁部764に当接することはない。また、第1加圧ピストン722の鍔部762の前端の受圧面積と、入力ピストン726の前端面の受圧面積とが略等しくされていることから、第1加圧ピストン722が前進したとしても、入力ピストン726の進退には影響を与えない。つまり、ブレーキペダル150の操作量、操作反力が変化しない構造とされているのである。
【0230】
上記のような動作が行われることによって、入力室R13の圧力に依存するブレーキ液の加圧の際には、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存加圧状態が実現される。この場合のシリンダ装置710による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。通常時、制御高圧源圧は増減圧装置120によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R13に入力される。
【0231】
通常時においては、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された圧力を入力室R13に入力すればよい。多くの場合、目標制動力が上記利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させるようにすればよい。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R13に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0232】
先に説明したように、本車両では、液圧ブレーキシステム700は、目標制動力のうちの回生制動力を超える分だけ液圧制動力を発生させればよい。極端に言えば、目標制動力を回生制動力で賄える限り、液圧ブレーキシステム700による液圧制動力を必要としない。本シリンダ装置710では、通常時において、発生させる液圧制動力に依存せずに、ブレーキペダル150の操作量に応じた操作反力が発生する構造とされている。極端に言えば、本シリンダ装置110は、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724によるブレーキ液の加圧を行わない状態でのブレーキペダル150の操作を許容する機能を有している。つまり、本シリンダ装置710は、ハイブリッド車両に好適なストロークシミュレータを有しているのである。
【0233】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン722,第1加圧ピストン724によって第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R13に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された制御高圧源圧を入力室R13に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダル150の操作量は、概して、図3における最大回生時液圧制動開始操作量となる。液圧ブレーキシステム100では、この最大回生時液圧制動開始操作量は、前述の反力勾配変化操作量よりもやや大きく設定されている。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R13に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0234】
入力室R13に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン722は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11のブレーキ液を加圧する。それに従って、第1加圧ピストン724によって第2加圧室R12のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存加圧状態、すなわち、高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置110による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R13に入力される。
【0235】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン722,第1加圧ピストン724は、リターンスプリング464,466によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン726は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置に戻される。
【0236】
大制動力必要時には、室間開閉弁838が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁848が開弁状態とされる。つまり、ピストン間室R15が密閉状態とされて容積が一定とされるとともに、第1連通状態切換機構において対向室連通状態が実現されて、対向室R14とリザーバ122とが連通させられる。それによって、入力室R13に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、入力ピストン726を前進させることが可能となる。この入力ピストン726の前進により、ピストン間室R15内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるのである。この状態での加圧によって、第1加圧室R11,第12加圧室R12からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が入力室R13に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得らることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置710は、室間開閉弁838と対向室開閉弁848とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0237】
高圧源圧依存制動状態においては、運転者による操作力Fの増加によって、制御高圧源圧PCが増加して第1加圧ピストン722が前進させられるため、出力圧POが増加する。したがって、本液圧ブレーキシステム700では、出力圧POを、操作力Fを指標する操作力指標パラメータと考えることができるため、出力圧POが高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、すなわち、出力圧POが設定閾圧PTHを超えたことを条件として、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。また、本液圧ブレーキシステム700では、逆に、出力圧POが設定閾圧PTH以下となった場合、つまり、上記条件を満さなくなった場合に、操作力・高圧源圧依存制動状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0238】
具体的には、本液圧ブレーキシステム700は、図10にフローチャート示す制動力発生状態切換プログラムが極短い時間ピッチで実行されることにより、出力圧POに基づいた制動力の発生状態の切換が行われる。そのプログラムに従う処理では、S11において、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるための上記条件を充足しているか否かが判断される。その条件を充足している場合には、S12において、操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、開閉弁838は閉弁状態とされ、開閉弁848は開弁状態とされる。一方、上記条件を充足していない場合は、S13において、高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、開閉弁838は開弁状態とされ、開閉弁848が閉弁状態とされる。
【0239】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム700は、高圧源圧依存加圧状態における制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換えるようにされている。
【0240】
本液圧ブレーキシステム700が採用するシリンダ装置710では、入力ピストン726が、第1加圧ピストン722に設けられた有底穴に挿入されている。そのため、上記各液室を区画するために入力ピストン726と係合させる必要のある高圧シールは、第1加圧ピストン722の有底穴の内周面と入力ピストン726の外周面との間と、入力ピストン726の外周面と第2ハウジング部材732との間とに、それぞれ、1つずつしか配設されていない。具体的には、シール750とシール752である。そのため、入力ピストン726の移動に対する摩擦抵抗が比較的小さく、摩擦抵抗が操作部材の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感に与える影響が小さくされている。
【0241】
また、シリンダ装置710では、反力室R17を加圧する弾性力依拠加圧機構を含んでストロークシミュレータが構成されているため、ストロークシミュレータを構成する第1反力スプリング784および第2反力スプリング786が、当該シリンダ装置710の内部に、詳しく言えば、入力ピストン726の内部に配設されているため、コンパクトなシリンダ装置とされている。
【0242】
さらに、シリンダ装置710では、ピストン間室R15と対向室R14とが連通することで1つの反力室R17が形成されており、ピストン間室R15が比較的小さな容積とされている。つまり、入力ピストン726の前端と第1加圧ピストン722の有底穴の底との距離が、比較的小さくされているのである。したがって、入力ピストン726が第1加圧ピストン722に当接するまでの前進距離が小さくされている。そのことによって、シリンダ装置710では、失陥時等のブレーキ操作におけるガタ感を少なく、そのブレーキ操作の操作感が良好なものとされているのである。
【0243】
≪変形例≫
図11に示す液圧ブレーキシステム900は、第2実施例の液圧ブレーキシステム700において採用されているシリンダ装置710に代えて、シリンダ装置910を採用している。シリンダ装置910は、大まかには第2実施例のシリンダ装置710と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第2実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0244】
シリンダ装置910では、第2実施例におけるシリンダ装置910で採用されている補助ピストン782に代えて、補助ピストン920が採用されている。補助ピストン920は、それの前端面に孔が設けられた有底円筒状の外筒部材922と、その孔に固定的に嵌め込まれた筒状の内筒部材924と、内筒部材924の内部に収容されたボール926および付勢スプリング928とを含んで構成されている。内筒部材924の前端面は開口しており、その開口には、圧縮コイルスプリングである付勢スプリング928のばね反力によって、ボール926がその開口を塞ぐようにして前方に押しつけられている。補助ピストン920の前方に位置する仕切壁部764には、内筒部材924の開口に挿し込まれることによってボール926と係合する係合ピン930が設けられている。したがって、補助ピストン920が前進し、補助ピストン920と仕切壁部764との距離が、設定距離以下になると、係合ピン930がボール926を後方に押し、内筒部材924の開口が開けられることになる。このように、補助ピストン920では、ボール926が内筒部材924の孔から離間することによって、ピストン間室R15と内部室R16とを連通させる開閉弁が構成されている。そのため、本シリンダ装置910では、入力ピストン726の内部室R16が、反力室R17からリザーバ122に至る連通路の一部を構成している。この連通路は、前述の補助ピストン782に設けられた開閉弁によって開閉させられる。
【0245】
また、シリンダ装置910では、第2実施例の液圧ブレーキシステム700における室間開閉弁838および対向室開閉弁848に代えて、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第1変形例となる液圧ブレーキシステム560において採用されている機械式の弁装置572が採用されている。この弁装置572は、上記室間開閉弁838と上記対向室開閉弁848とが一体化されたものと考えることができる。なお、弁装置572は、アンチロック装置114からリザーバ122の連通路846の一部分をも構成している。また、外部連通路847から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁942が設けられている。
【0246】
弁装置572の内部に形成されている各液室と、弁装置572に接続される各外部連通路との関係について詳しく説明すれば、弁装置572のハウジング580に形成される連通孔586および連通孔588の各々の連結ポートは、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、ハウジング580の前端において、ピストン582の前端部とハウジング580の内周面とによって区画形成されている液室と、それらの連通孔とを含んで構成されている。連通孔590および連通孔592の各々のドレインポートは、外部連通路846に接続されている。つまり、外部連通路846は、ハウジング580の中間において、内部に付勢スプリング584が配設された液室と、それらの連通孔とを含んで構成されている。また、連通孔594の連結ポートは、外部連通路847に接続されている。つまり、外部連通路847は、ハウジング580の後端において、ピストン582の後端部とハウジング580とによって区画形成されている液室と、連通孔594とを含んで構成されている。また、この液室は、ピストン582の内部の連通路を介して、外部連通路846に繋がれている。つまり、外部連通路847は、この連通路をも含んで構成されており、弁装置572を介して外部連通路846に接続されている。さらに、ピストン582の後方部とハウジング580の中間部との間に形成されている液室は、連通孔596の連結ポートに接続される外部連通路によって増減圧装置120に接続されている。つまり、この液室には、常時、制御高圧源圧が導入される。
【0247】
失陥時および通常時においては、外部連通路836は開通状態とされて、対向室R14とピストン間室R15とが連通されており、外部連通路847は遮断されて、対向室R14とリザーバ122との連通が断たれている。
【0248】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、第2実施例のブレーキシステム700の場合と同様に、入力ピストン726の本体部780は前進し、補助ピストン782は、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786を縮めつつ、本体部780の内部へと押し込まれ、反力室R17の圧力の上昇に依存する。ブレーキペダル150の操作量が増加し、ブレーキペダル150に加えられる操作力が設定閾操作力となった場合に、リリーフ弁738は開弁し、反力室R17が、開弁状態となっている減圧リニア弁252を介してリザーバ122と連通する反力室連通状態が実現される。つまり、本シリンダ装置910は、リリーフ弁738の開弁圧に基づいて、反力室R17とリザーバ122とを連通させる機構、すなわち、圧力依拠連通機構を備えているのである。
【0249】
その状態でブレーキペダル150の操作が進行すると、補助ピストン782が入力ピストン726とともにある程度まで前進する。そして、補助ピストン782と仕切壁部764との距離が設定距離以下となった場合に、仕切壁部764に設けられた係合ピン930が、補助ピストン782に設けられた開閉弁を構成するボール926を後方に押し込む。それにより、反力室R17は、入力ピストン726の内部室R16を介して、リザーバ122と連通することになる。このような構造を有する本シリンダ装置910は、反力室R17からリザーバ122に連通される連通路および補助ピストン782とを含んで構成された機構、つまり、反力室R17とリザーバ122とが連通する反力室連通状態と連通しない反力室非連通状態とを、反力室の容積に依拠して、選択的に実現する容積依拠連通機構を備えているのである。また、この連通路は、反力室R17をリザーバ122に連通する容積依拠連通機構用連通路とされているのである。
【0250】
上記容積依拠連通機構によって反力室連通状態が実現されることで、反力室R17は大気圧とされ、入力ピストン726は、比較的自由な前進が許容されて、仕切壁部764に当接し、第1加圧ピストン722を直接押すことなる。したがって、その状態では、ブレーキペダル150に加えられた運転者の操作力は、直接、第1加圧ピストン722に伝達される。つまり、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R11,第2加圧室R12においてブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0251】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与をやめると、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン606は、リターンスプリング664、666によって、それぞれ、初期位置(図11に示す位置であり、第1加圧ピストン722の後端が第2ハウジング部材の後端部に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン726は、オペレーションロッド152とともに、リターンスプリング694によって、初期位置(図11に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材732の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0252】
通常時においては、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、入力室R13に、高圧源装置118からの圧力が入力される。このときも、弁装置572によって、対向室R14とピストン間室R15とは連通されている。また、リリーフ弁942は閉弁状態となっており、対抗室非連通状態が実現されている。したがって、高圧源装置118から圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン722は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0253】
大制動力必要時の場合、つまり、操作量が増加して制御高圧源圧が設定圧を超えた場合、弁装置572によってピストン間室R15が密閉状態とされ、対向室R14とリザーバ122とが、リリーフ弁942に依存せずに、連通される。この状態において、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して第1加圧ピストン722を前進させることができ、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、本液圧ブレーキシステム900は、弁装置572を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0254】
なお、本変形例の液圧ブレーキシステム900が採用するシリンダ装置910は、反力室R17とリザーバ122とを連通させる機構として、上記圧力依拠連通機構に加え、上記容積依拠連通機構を備えている。そのため、本液圧ブレーキシステム900は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第1変形例である液圧ブレーキシステム560と同様、操作力依存加圧状態において、反力室R17の残圧に起因するブレーキ操作力のロスが小さくされている。
【0255】
他の変形例として、液圧ブレーキキシステムを以下のように構成することも可能である。上記第2実施例の液圧ブレーキシステム700では、出力圧POに基づいて、高圧源圧依拠加圧状態から操作力・高圧源圧依拠加圧状態への切換が行われるように構成されているが、それに代え、制御高圧源圧PCが設定圧を超えた場合に上記切換を行うように液圧ブレーキシステムを構成することが可能である。また、高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの差が設定圧を超えて小さくなった場合に、上記切換を行うようにすることも可能である。さらに、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。
【0256】
上記変形例の液圧ブレーキシステム900では、制御高圧源圧PCをパイロット圧とする弁装置572が採用されていたが、それに換え、出力圧POをパイロット圧とする弁装置を採用することも可能である。さらには、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第3変形例である液圧ブレーキシステム640において採用されている弁装置652を採用することも可能である。つまり。高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの両方をパイロット圧として導入し、それらの差圧に基づいて作動する機械式の弁装置を採用することも可能である。
【実施例3】
【0257】
図12に、第3実施例の液圧ブレーキシステム1000を示す。なお、この液圧ブレーキシステム1000は、シリンダ装置1010を採用しており、そのシリンダ装置1010を除いて、第1実施例のシリンダ装置1010を採用した液圧ブレーキシステム100と略同じ構成となっている。したがって、以下の液圧ブレーキシステム1000の説明は、シリンダ装置1010についてのみ行うとこととする。
【0258】
≪シリンダ装置の構成≫
シリンダ装置1010は、シリンダ装置1010の筐体であるハウジング1020と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン1022および第2加圧ピストン1024と、外部高圧源装置118から入力される圧力によって前進するともに、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン1026とを含んで構成されている。なお、図12は、シリンダ装置1010が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0259】
ハウジング1020は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ1040が形成されており、そのフランジ1040において車体に固定される。ハウジング1020は、3つの部分、具体的には、前方側に位置する前方部1042、後方側に位置する後方部1044、それら前方部1042と後方部1044との中間に位置する中間部1046に区分けされている。これら3つの部分は、内径が互いに異なっており、後方部1044の内径は最も小さく、中間部1046の内径は最も大きく、前方部1042の内径は、それら後方部1044の内径と中間部1046の内径との中間の大きさとなっている。
【0260】
第1加圧ピストン1022および第2加圧ピストン1024は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、ハウジング1020の前方部1042に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン1022は、第2加圧ピストン1024の後方に配設されている。第1加圧ピストン1022と第2加圧ピストン1024との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R21が区画形成されており、また、第2加圧ピストン1024の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R22が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン1022と第2加圧ピストン1024とは、第1加圧ピストン1022の後端部に立設された有頭ピン1050と、第2加圧ピストン1024の後端面に固設されたピン保持筒1052とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R21内,第2加圧室R22内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1054、1056が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第2加圧ピストン1024は後方に向かって付勢されている。
【0261】
入力ピストン1026は、第1ピストン部材1058と、その第1ピストン部材1058の後端に嵌め合わされた第2ピストン部材1059とを有し、それら2つの部材1058,1059が一体化されて構成されている。入力ピストン1026は、概して円筒形状をなす本体部1060と、その本体部1060の外周に設けられた鍔部1062とを有する形状とされている。入力ピストン1026は、第1加圧ピストン1022の後方に配設され、本体部1060の前方の部分がハウジング1020の前方部1042の内周面の後部側に、鍔部1062がハウジング1020の中間部1046の内周面に、本体部1060の後方の部分がハウジング1020の後方部に1044に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。ちなみに、入力ピストン1026は、ハウジング1040の後方部1044と中間部1046との段差面に当接することで、後退が制限されている。
【0262】
入力ピストン1026の前方において、第1加圧ピストン1022の後端部との間には、高圧源装置118からのブレーキ液の供給が可能とされている液室、つまり、高圧源装置118からの圧力の入力が可能とされている液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R23が区画形成されている。鍔部1062の後端面と、ハウジング1020の後方部1044と中間部1046との段差面との間に、入力ピストン1026の前進に伴って容積が増大するとともに、高圧源装置118からの圧力が入力されるもう1つの液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R24が区画形成されている。さらに、鍔部1062の前端面と、ハウジング1020の前方部1042と中間部1046との段差面との間に、鍔部1062を挟んで第2入力室と対向する液室(以下、「対向室」という場合がある)R25が区画形成されている。ちなみに、第2入力室R24は、図12では、殆ど潰れた状態で示されている。
【0263】
入力ピストン1026の本体部1060の内部には空間が形成されており、その空間には、補助ピストン1064が、その空間内を入力ピストン1026に摺接しつつ、入力ピストン1026に対して相対移動可能に配設されている。補助ピストン1064によって区切られた補助ピストン1064の前方の部屋は、常時、大気圧とされる液室(以下、「大気圧室」という場合がある)R26とされ、後方の部屋は、上記対向室R25と連通する液室(以下、「内部室」という場合がある)R27が区画形成されている。ちなみに、図12では、内部室R27は殆ど潰れた状態で示されている。
【0264】
大気圧室R26の内部には圧縮コイルスプリングである反力スプリング1066が配設されており、補助ピストン1064は、その反力スプリング1066によって浮動支持されるとともに後方に向かって付勢されている。シリンダ装置1010は、反力スプリング1066によって構成される弾性力依拠加圧機構、つまり、内部室R27の容積が減少する向きの力を補助ピストン1064に付与して内部室R27を加圧する機構を備えているのである。
【0265】
入力ピストン1026の後端部、詳しく言えば、本体部1060の後端部にはオペレーションロッド152の前端部が連結されている。オペレーションロッド152には、円形のスプリングシート1070が付設されており、このスプリングシート1070とハウジング1020との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1072が配設されており、このリターンスプリング1072によって、オペレーションロッド152は後方に向かって付勢されている。
【0266】
第1加圧室R21は、開口が出力ポートとなる連通孔1100を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン1022に設けられた連通孔1102および開口がドレインポートとなる連通孔1104を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R22は、開口が出力ポートとなる連通孔1106を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン1024に設けられた連通孔1108および開口がドレインポートとなる連通孔1110を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0267】
第1入力室R23は、開口が連結ポートとなる連通孔1112を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔1112は、外部連通路1114を介して増減圧装置120に繋げられている。また、外部連通路1114には、電磁式の第1入力室開閉弁1116とチェック弁1118が設けられている。また、外部連通路1114には、第1入力室R23の圧力(以下、「入力圧」という場合がある)を検出するための圧力センサ[PI]1120が設けられている。
【0268】
入力ピストン1026の本体部のうち鍔部1062より前方の部分は、ハウジング1020の前方部1042の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1122が形成されている。ハウジング1020には、一方の開口がドレインポートとなる連通孔1124が設けられており、その開口は、リザーバ122に繋げられている。その連通孔1124は、他方の開口において、液通路1122に連通されてる。また、ハウジング1020には、開口が連結ポートとなる連通孔1126が設けられている。その連通孔1126も、他方の開口において、液通路1122に連通されてる。したがって、連通孔1126は、液通路1122、連通孔1124を介して、リザーバ122へと連通されている。
【0269】
対向室R25は、開口が連結ポートとなる連通孔1128によって、外部に連通可能となっている。その連結ポートには、外部連通路1130の一端部が連結されており、他端部は、連通孔1126の連結ポートに連結されている。つまり、外部連通路1130は、リザーバ122へと連通可能とされているのである。また、外部連通路1130には、電磁式の対向室開閉弁1132が設けられており、この対向室開閉弁1132によって、外部連通路1130が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置1010は、外部連通路1130および対向室開閉弁1132を含んで構成された機構、つまり、対向室R25とリザーバ122との連通と非連通とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。なお、外部連通路1130には、対向室R25のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁1134も設けられている。
【0270】
入力ピストン1026の本体部1060には、大気圧室R26と液通路1122とを連通する連通孔1136が設けられており、大気圧室R26は、リザーバ122に連通されることで、常時、大気圧とされている。また、入力ピストン1026の本体部1060と鍔部1062との境界には、対向室R25と内部室R27とを連通する連通孔1138が設けられている。つまり、その連通孔1138によって室間連通路L1が形成されており、その室間連通路L1によって、対向室R25と内部室R27とは、1つの一体的な液室(以下、「反力室」という場合がある)とされている。なお、反力室が密閉されている状態では、入力ピストン1026の前進は、制限される。詳しく言えば、反力室は、上記弾性力依拠加圧機構によって加圧されているため、反力室の圧力に抗した前進が許容されることになる。
【0271】
第2入力室R25は、開口が連結ポートとなる連通孔1140によって、外部に連通可能となっている。その連通孔1140の連結ポートには、外部連通路の一端が繋げられており、他端は増減圧装置120に繋げられている。
【0272】
なお、外部高圧源装置118から、増減圧装置120を介して高圧のブレーキ液が第1入力室R23および第2入力室R25に供給される場合であっても、入力ピストン1026は前進・後退させられない。詳しく説明すると、図12では正確に表していないが、第1入力室R23を区画する本体部1060前端の受圧面積と、第2入力室R25を区画するの鍔部1062の後端の受圧面積とが略等しくされており、第1入力室R23の圧力によって入力ピストン1026を後退させる力と、第2入力室R25の圧力によって入力ピストン1026を前進させる力とが均衡することによって、入力ピストン1026が進退しないようになっている。
【0273】
≪シリンダ装置の作動≫
以下にシリンダ装置1010の作動について説明するが、便宜上、通常時の作動を説明する前に、電気的失陥の場合、つまり、当該液圧ブレーキシステム100への電力供給が断たれた場合における作動を説明する。なお、失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、第1入力室開閉弁1116は開弁状態となっており、第1入力室R23は、外部連通路1114および減圧リニア弁252を介して、リザーバ122に連通されている。また、対向室開閉弁1132も開弁状態となっており、対向室R25とリザーバ122とが連通されている。さらに、第2入力室R24も、減圧リニア弁252を介して、リザーバ122に連通されている。
【0274】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン1026が前進を開始する。第1入力室R23および対向室R25の各々のブレーキ液は、リザーバ122へ流出されて減少する。入力ピストン1026が第1加圧ピストン1022に当接すると、入力ピストン1026は、第1加圧ピストン1022に当接したままで第1加圧ピストン1022を前進させる。したがって、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン1022に直接伝達されることになり、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン1022を押すことができる。それにより、第1加圧ピストン1022は前進し、第1加圧室R21とリザーバ122の伝達が断たれ、第1加圧室R21のブレーキ液は、ブレーキペダル150に加えられた操作力によって加圧されるのである。ちなみに、第1加圧室R21の加圧に伴って、第2加圧ピストン1024も前進し、第1加圧室R21と同様、第2加圧室R22とリザーバ122との連通が断たれ、第2加圧室R22内のブレーキ液も加圧されることになる。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0275】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024は、リターンスプリング1054、1056によって、それぞれ、初期位置(図12に示す位置)に戻される。また、入力ピストン1026は、オペレーションロッド152とともに、リターンスプリング1070によって、初期位置(図12に示す位置)に戻される。なお、第1加圧ピストン1022は、図に示されていないストッパによって、初期位置を越えて後退しないようにされている。
【0276】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、対向室開閉弁1132は励磁されて閉弁状態とされるため、対向室R25とリザーバ122とが非連通とされ、対向室R25および内部室R27すなわち反力室は密閉状態とされる。したがって、入力ピストン1026が前進すると、対向室R25の容積が減少するとともに、内部室R27の容積が増加する。内部室R27の容積の増加により、補助ピストン1064は、反力スプリング1066を縮めつつ、入力ピストン1026内を前進する。したがって、弾性力依拠加圧機構、つまり、反力スプリング1066による弾性力が、反力室のブレーキ液に作用し、入力ピストン1026には、その弾性力による反力室の液圧が、前進に対する抵抗力として作用する。その弾性力は、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになる。なお、弾性力依拠加圧機構が単一の反力スプリングによって構成されているため、図3に示すような操作反力特性とはならず、操作反力勾配は操作量に略一定となる。
【0277】
上記のような作動から、入力ピストン1026は、反力室の圧力による制限を受けた状態で前進が許容されていると考えることができ、そして、上記弾性力依拠加圧機構はストロークシミュレータとしての機能を有することになる。なお、図12では明確には示していないが、内部室R27の容積の増大によって反力スプリング1066の圧縮限界(コイルの線間距離がなくなる状態)に達したとき、内部室R27のそれ以上の容積の拡大は禁止され、入力ピストン1026はそれ以上の前進が禁止される。この状態がブレーキペダル150の操作量を増加させることのできない操作限界である。このような入力ピストン1026の前進が許容されていることから、シリンダ装置1010は、弾性力に抗する状態での入力ピストン1026の前進を設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有していると考えることができる。
【0278】
また、通常時においては、第1入力室開閉弁1116は励磁されて開弁状態とされているため、入力ピストン1026の前進によって、第1入力室R23の容積が減少され、第1入力室R23のブレーキ液は第2入力室R24へと流入し、第2入力室R24の容積が増加する。ただし、第1入力室R23を区画する本体部1060前端の受圧面積と、第2入力室R25を区画するの鍔部1062の後端の受圧面積とが略等しくされていることから、ブレーキぺダル150に加えられた操作力は、第1入力室R23を加圧する力として作用せず、操作力によっては、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024による第1加圧室R21,第2加圧室R22の加圧は行われない。
【0279】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024によって第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、第1入力室R23および第2入力室R24に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された圧力を第1入力室R23に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダル150の操作量は、最大回生時液圧制動開始操作量となる。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、第1入力室R23および第2入力室R24に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0280】
第1入力室R23および第2入力室R24に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン1022は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R21のブレーキ液を加圧する。それに従って、第2加圧ピストン1024によって第2加圧室R22のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン1026の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R21,第2加圧室R22におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置1010による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、先に説明した高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が第1入力室R23に入力される。
【0281】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024は、リターンスプリング1054,1056によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン1026は、リターンスプリング1072によって、初期位置に戻される。
【0282】
大制動力必要時には、第1入力室開閉弁1116が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁1132が開弁状態とされる。つまり、第1入力室R23が密閉状態とさせられるとともに、第1連通状態切換機構によって対向室連通状態が実現されて対向室R25とリザーバ122とが連通させられる。それによって、第2入力室R24に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、入力ピストン1026を前進させることが可能となる。この入力ピストン1026の前進により、第1入力室R23内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R21,第2加圧室R22におけるブレーキ液が加圧可能とされているのである。この加圧によって、第1加圧室R21,第2加圧室R22からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が第1入力室R23に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得らることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1入力室開閉弁1116と対向室開閉弁1132とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0283】
このように作動するシリンダ装置1010を有する液圧ブレーキシステム1000は、第2実施例の液圧ブレーキシステム700と同様の方法によって制動状態が切り換えられ、つまり、図10に示す制動力発生状態切換プログラムと同様のプログラムに従った処理によって切換が実施される。ただし、本液圧ブレーキシステム1000では、液圧ブレーキシステム700が、シリンダ装置710から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧POに基づいて切換が行われるのに対し、制御高圧源圧PCに基づいて、切換を行うようにされている。
【0284】
≪液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム1000は、操作力指標パラメータの一種である制御高圧源圧PCに基づき、高圧源圧依存加圧状態においてその制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の圧力である高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換える。したがって、シリンダ装置の作動状態の切換を、制御高圧源圧PCが上限となる付近で、効果的に行うことが可能とされている。
【0285】
本液圧ブレーキシステム1000が有するシリンダ装置1010は、図12では理解し難いが、第1入力室R23を区画する入力ピストン1026の受圧面積が、第1入力室R23を区画する第1加圧ピストン1022の受圧面積に比べて大きくされている。言い換えれば、入力ピストン1026の前端の面積が、第1加圧ピストン1022の後端の面積に比べて大きくされている。そのため、操作力・高圧源圧依存加圧状態においてブレーキペダル150を操作した際、入力ピストン1026の前進量に対して第1加圧ピストン1022の前進量が大きくなっている。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキペダル150の操作量の変化に対する出力圧POの変化が比較的大きくされており、より大きな操作ストロークが確保されている。
【0286】
≪変形例≫
また、本液圧ブレーキシステム1000においても、第1実施例のブレーキシステム100の変形例において用いられているような弁装置、上記第1入力室開閉弁1116と上記対向室開閉弁1132とが一体化されたような機械式の弁装置を採用することが可能である。その場合、制御高圧源圧PC若しくは出力圧POをパイロット圧とする弁装置を採用することも可能であり、高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの両方をパイロット圧として導入し、それらの差圧に基づいて作動する弁装置を採用することも可能である。
【実施例4】
【0287】
図13に、第4実施例の液圧ブレーキシステム1200を示す。なお、この液圧ブレーキシステム1200において採用されているシリンダ装置1210は、右前輪に設けられたブレーキ装置116FRと左前輪に設けられたブレーキ装置116FLとにだけブレーキ液を供給可能となっている。左右の後輪の各々に設けられたブレーキ装置116RR,RLには、高圧源装置118からのみブレーキ液が供給される。液圧ブレーキシステム1200は、シリンダ装置1210およびそれに関係する液通路の構成を除き、第1実施例の液圧ブレーキシステム1200と類似の構成となっている。そのことを考慮し、以下の液圧ブレーキシステム1200の説明は、シリンダ装置1210を中心に行うとこととする。
【0288】
≪シリンダ装置およびそれに関係する液通路の構成≫
シリンダ装置1210は、それの筐体であるハウジング1220と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン1222および第2加圧ピストン1224と、運転者の操作力および外部高圧源装置118から入力される圧力によって前進する中間ピストン1226と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン1228とを含んで構成されている。なお、図13は、シリンダ装置1210が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0289】
ハウジング1220は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材1230、第2ハウジング部材1232から構成されている。第1ハウジング部材1230は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ1240が形成されており、そのフランジ1240において車体に固定される。第1ハウジング部材1230は、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部1242、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部1244、それら前方小径部1242と後方大径部1244との中間に位置しそれらの内径の中間の内径を有する中間部1246に区分けされている。
【0290】
第2ハウジング部材1232は、前方側に位置して外径の大きい前方大径部1250、後方側に位置して外径の小さい後方小径部1252とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材1232は、前方大径部1250の前端部が第1ハウジング部材1230の中間部1246と後方大径部1244との段差面に接する状態で、その後方大径部1244に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材1230,第2ハウジング部材1232は、第1ハウジング部材1230の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環1254によって、互いに締結されている。
【0291】
第1加圧ピストン1222および第2加圧ピストン1224は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材1230の前方小径部1242に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン1222は、第2加圧ピストン1224の後方に配設されている。第1加圧ピストン1222と第2加圧ピストン1224との間には、右前輪のブレーキ装置116FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R31が区画形成されており、また、第2加圧ピストン1224の前方には、左前輪に設けられたブレーキ装置116FLに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R32が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン1222と第2加圧ピストン1224とは、第1加圧ピストン1222の後端部に立設された有頭ピン1260と、第2加圧ピストン1224の後端面に固設されたピン保持筒1262とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R31内,第2加圧室R32内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1264、1266が配設されており、それらスプリング1264、1266によって、第1加圧ピストン1222,第2加圧ピストン1224はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第1加圧ピストン1222、第2加圧ピストン1224は後方に向かって付勢されており、第1加圧ピストン1222は、後述する中間ピストン1226の前端面に当接されている。
【0292】
中間ピストン1226は、両端部が開口された円筒形状の本体部1270と、本体部1270の前端部を塞ぐ蓋部1272とから構成されている。中間ピストン1226は、前端が第1加圧ピストン1222の後端に当接した状態で、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内周面に、摺動可能に嵌め合わされている。中間ピストン1226の後方には、第2ハウジング部材1232の前端部との間に、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R33が区画形成されている。ちなみに、図13では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、ハウジング1220の内部には、第1ハウジング部材1230の内周面と第1加圧ピストン1222の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、中間ピストン1226の前端面と、第1ハウジング部材1230の前方小径部1242と中間部1246との段差面とによって区画されることで、常時大気圧とされる環状の液室(以下、「大気圧室」という場合がある)R34が形成されている。
【0293】
入力ピストン1228は、前方が塞がれて後端部の開口する円筒形状をなす外筒部材1280と、概して円柱形状のロッド部材1282とを主体として構成されている。入力ピストン1228は、ロッド部材1282が、外筒部材1280に、それの後端側から挿し込まれている。入力ピストン1228は、第2ハウジング部材1232に保持された状態で、中間ピストン1226の本体部1270の前端部から挿し込まれるとともに、中間ピストン1226に対して進退可能とされている。このように構成された入力ピストン1228および中間ピストン1226の内部には、中間ピストン1226と入力ピストン1228との相対移動によって自身の容積が変化する液室(以下、「内部室」という場合がある)R35が区画形成されている。ちなみに、入力ピストン1228の後退は、第1入力ピストン部材1280の前端部に形成される鍔部が、中間ピストン1226の本体部1270の後端部に当接することで制限されている。
【0294】
内部室R35には、中間ピストン1226の内底面と入力ピストン1228の前端面との間に、2つの圧縮コイルスプリングである第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292が配設されている。第1反力スプリング1290は、第2反力スプリング1292の後方に直列に配設されており、鍔付ロッド形状の浮動座1294が、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持されている。第1反力スプリング1290は、それの前端部が中間ピストン1226の前端部に支持され、後端部が浮動座1294の前方側のシート面に支持されている。一方、第2反力スプリング1292は、それの前端部が浮動座1294の後方側のシート面に支持され、後端部が入力ピストン1228の前端部に支持されている。このように配設された第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292は、入力ピストン1228と中間ピストン1226とを、それらが互いに離間する方向に、つまり、内部室R35の容積が拡大する方向に付勢している。シリンダ装置1210は、第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292によって構成される弾性力付与機構、つまり、それらのばね反力によって、入力ピストン1228と中間ピストン1226とが互いに接近する方向、つまり、内部室R35の容積が減少する向きの入力ピストン1228と中間ピストン1226との相対移動に対抗する弾性力を、入力ピストン1228と中間ピストン1226とに付与する機構を備えている。また、浮動座1294の前端部には第1緩衝ゴム1296、後端部には第2緩衝ゴム1298がそれぞれ嵌め込まれており、その第1緩衝ゴム1296が中間ピストン1226の前端面に当接し、第2緩衝ゴム1298が入力ピストン1228の前端面に当接することで、浮動座1294と中間ピストン1226との接近、および、浮動座1294と入力ピストン1228との接近は、ある範囲に制限されている。
【0295】
入力ピストン1228のロッド部材1282の後端部には、ブレーキペダル150に加えられた操作力を入力ピストン1228に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン1228を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン1228は、ロッド部材1282の後端部が第2ハウジング部材1232の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円形の支持板1300が付設されており、この支持板1300とハウジング1220との間にはブーツ1302が渡されており、シリンダ装置1210の後部の防塵が図られている。
【0296】
第1加圧室R31は、開口が出力ポートとなる連通孔1310を介して、右前輪のブレーキ装置116FLに繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン1222に設けられた連通孔1312および開口がドレインポートとなる連通孔1314を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R32は、開口が出力ポートとなる連通孔1316を介して、左前輪のブレーキ装置116FLに繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン1224に設けられた連通孔1318および開口がドレインポートとなる連通孔1320を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0297】
中間ピストン1226は、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1322が形成されている。入力室R33は、その液通路1322および開口が連結ポートとなる連通孔1324を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔1324は、連通路1326を介して増減圧装置120に繋げられている。
【0298】
中間ピストン1226には、蓋部1272において、大気圧室R34と内部室R35とを連通する連通孔1330が設けられている。また、第1加圧ピストン1222は、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1332が形成されている。大気圧室R34は、その液通路1332および連通孔1314を介して、リザーバ122に連通されている。したがって、環状室R34および内部室R35は、常時、大気圧とされており、それらのブレーキ液は、リザーバ122に対して流出入可能とされている
【0299】
液通路200および液通路202には、それぞれ、非励磁状態で開弁し、励磁状態で閉弁する電磁式の開閉弁(以下、「シリンダ装置カット弁」という場合がある)1334、1336が設けられており、それらの開閉によって、シリンダ装置1210によって加圧されたブレーキ液のブレーキ装置116FL,FRへの供給を許容する状態と供給を禁止する状態とが選択的に実現される。
【0300】
増減圧装置120には、高圧源圧とされたブレーキ液を供給するための増圧連通路1340の一端が繋げられており、増圧連通路1340の他端は、アンチロック装置114に繋げられている。アンチロック装置114の内部では、増圧連通路1340は4つに分岐されており、それら分岐された部分の各々は、4つの車輪に対応して設けられたブレーキ装置116のうちの対応するものに、4つの増圧開閉弁1342のうちの対応するものを介して、繋げられている。また、アンチロック装置114には、リザーバ122に連通する減圧連通路1344も繋げられている。アンチロック装置114の内部において、その減圧連通路1344も4つに分岐されており、それら分岐された部分の各々は、4つの車輪に対応して設けられたブレーキ装置116のうちの対応するものに、4つの減圧開閉弁1346のうちの対応するものを介して、繋げられている。なお、4つの増圧開閉弁1342,4つの減圧開閉弁1346は、いずれも、非励磁状態において開弁し、励磁状態において閉弁する電磁弁である。
【0301】
≪シリンダ装置の作動≫
ブレーキペダル150が運転者によって操作された場合、そのブレーキペダル150に加えられた操作力により、入力ピストン1228は前進し、2つの反力スプリング1290,1292を圧縮する。これらの反力スプリング1290,1292の弾性反力により中間ピストン1226は前進し、第1加圧ピストン1222は前進する。この第1加圧ピストン1222の前進に伴って第2加圧ピストン1224は前進し、第1加圧室R31,第2加圧室R32のブレーキ液が加圧される。一方、高圧源装置118からの制御高圧源圧が入力室R33に入力された場合、その制御高圧源圧によって中間ピストン1226は前進させられ、同様にして、第1加圧室R31,第2加圧室R32のブレーキ液が加圧される。本シリンダ装置1210は、操作力と制御高圧源圧とのいずれによってもブレーキ液の加圧がなされ、それらの両方が入力された場合には、それらの両方に依拠して加圧されたブレーキ液が出力される。つまり、本シリンダ装置1210は、常時、ブレーキ操作力と制御高圧源圧との両方に応じて加圧されたブレーキ液をブレーキ装置116に供給可能に構成されているのである。
【0302】
ブレーキペダル150の操作に対する反力、つまり、操作反力は、上述した弾性力付与機構の作用により付与され、先に説明した図3のような特性を示すことになる。詳しく言えば、浮動座1294の中間ピストン1226への当接によって反力スプリング1290の弾性変形が禁止された段階で、操作反力勾配が増加する。さらにブレーキペダル150の操作が進んで、浮動座1294が入力ピストン1228に当接した時点で、入力ピストン1228と中間ピストン1226との相対移動が禁止され、それ以上操作量の増加を伴うブレーキペダル150の操作はできなくなる。弾性力付与機構は、ストロークシミュレータとして機能するものであり、弾性力に抗する状態での入力ピストン1228の前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構として機能する。
【0303】
このシリンダ装置1210の出力圧POは、操作力Fと制御高圧源圧PCとの両方に依存し、中間ピストン1226の入力室R33に対する受圧面積(概して後端面の面積に等しい)をAIと、第1加圧ピストン1222,第2加圧ピストン1224の第1加圧室R31,第2加圧室R32に対する受圧面積(概してそれぞれのピストン1222,1224の断面積は等しい)をAOとすれば、下記式で表すことができる。
PO=(F+AI・PC)/AO
ここで、説明を簡単にするために、回生制動力を除外するとともに制御高圧源圧PCが操作力Fによって決定されると考えると、制御高圧源圧PCは操作力Fに対する関数と考えることができ、出力圧POは下記式で表すことができる。
PO={F+AI・PC(F)}/AO
後に説明するように、大制動力必要時に高圧源圧と操作力との両方に依存した高い制動力が得られるように、本シリンダ装置1210は、常に、PO≧PC(F)となるように、受圧面積AI,AOが設定されている。
【0304】
≪本液圧ブレーキシステムの作動≫
失陥時には、シリンダ装置カット弁1334,1336は開弁状態とされており、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342,4つの減圧開閉弁1346はともに閉弁状態とされている。そのため、シリンダ装置1210からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が許容されるとともに、高圧源装置118からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が禁止されるシリンダ装置供給状態が実現される。また、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっており、高圧源装置118は機能していない。この状態では、結果的に、シリンダ装置1210において、操作力に依存してブレーキ液を加圧する状態、つまり、操作力依存加圧状態が実現されることになる。そのため、シリンダ装置1210から操作力によって加圧されたブレーキ液がシリンダ装置1210に供給されブレーキ装置116FL,FRは、操作力に依存して制動力を発生させる状態、つまり、制動力依存制動状態が実現される。
【0305】
通常時は、シリンダ装置カット弁1334,1336は、励磁されて閉弁状態となり、また、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342も、励磁されて開弁状態となる。ちなみに、4つの減圧開閉弁1346は、基本的には、励磁されず、閉弁状態とされたままである。そのため、通常時は、シリンダ装置1210からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が遮断されるとともに、高圧源装置118から4つのブレーキ装置116へのブレーキ液の供給が許容される状態、つまり、高圧源装置供給状態が実現される。この状態では、4つのブレーキ装置116には、増減圧装置120を介して、高圧源装置118からのブレーキ液が供給される。その結果、高圧源装置118から、制御高圧源圧がブレーキ装置に入力され、ブレーキ装置116は、制御液圧源圧に依存して制動力を発生させる状態、つまり、高圧源圧依存制動状態が実現される。なお、その状態において、シリンダ装置1210は、上述したように、ブレーキペダル150の操作に応じて、操作力と制御高圧源圧との両方に依存してブレーキ液を加圧する状態、つまり、操作力・高圧源圧依存加圧状態となっており、ブレーキ装置116FL,FRにはブレーキ液が供給されないものの、上述の出力圧を出力する状態となっている。
【0306】
大制動力必要時には、シリンダ装置カット弁1334,1336は、開弁状態とされ、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342のうち前輪に対応した2つの増圧開閉弁1342FL,FRは、閉弁状態とされる。その結果、前輪側の2つのブレーキ装置116FL,FRに対して、上記シリンダ装置供給状態が実現される。この状態では、操作力・高圧源圧依存加圧状態となっているシリンダ装置1210からブレーキ液がブレーキ装置116FL,FRに供給され、ブレーキ装置116FL,FRには、上述の出力圧が入力される。したがって、ブレーキ装置116FL,FRに対しては、操作力と制御高圧源圧との両方に依存した大きさの制動力を発生させる状態、つまり、操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されることになる。
【0307】
上記操作力・高圧源圧依存制動状態において、シリンダ装置1210から供給される出力圧は、上述のように、その時点での制御高圧源圧よりも高くされている。そのため、制御高圧源圧が限界圧となった場合、つまり、高圧源装置118が発生している圧力となった場合でも、ブレーキ装置116FL,FRは高圧源圧によって発生可能な制動力以上の制動力を発生させることができるのである。言い換えれば、操作力・高圧源圧依存制動状態では、制御高圧源圧に依拠する力に対して、ブレーキペダルに加えられた操作力が付加されることで、高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力である高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を発生させることができるのである。ちなみに、この制動力は、操作力を増加させればさせる程大きくなる。
【0308】
以上のように作動する本液圧ブレーキシステム1200では、シリンダ装置カット弁1334,1336、アンチロック装置114の2つの増圧開閉弁1342FL,FRの開閉によって、ブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給元が切換られる。したがって、それらの電磁式開閉弁1334,1336,1342FL,FRによって、高圧源圧依存制動状態において高圧源装置供給状態を実現させ、操作力・高圧源圧依存制動状態においてシリンダ装置供給状態を実現させる切換弁装置が構成されていると考えることができるのである。
【0309】
上記高圧源圧依存制動状態から上記操作力・高圧源圧依存制動状態への切換は、図14にフローチャートを示す制動力発生状態切換プログラムが、ブレーキECU48によって、極短い時間ピッチで実行されることによって行われる。このプログラムは図10のプログラムと類似するため、ここでは、詳しい説明を省略する。なお、本制動力発生状態切換プログラムに従えば、操作力指標パラメータの一種である制御高圧源圧に基づき、その制御高圧源圧が設定閾圧を超えた場合に、上記切換が行われる。
【0310】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム1200では、ブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給元を高圧源装置とシリンダ装置との間で変更するという簡単な手段によって、ブレーキ装置116FL,FRについては、高圧源装置118からの液圧に依拠して発生可能な最大の液圧制動力よりも大きな制動力が得られる。また、加圧室R31,R32から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧が、常時、制御高圧源圧以上となるように、シリンダ装置1210が構成されているため、ブレーキ装置116FL,FRについては、制動力の発生状態が高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換った時点で、液圧制動力の低下がなく、その時点での充分な制動力が確保されている。なお、出力圧が制御高圧源圧と等しくなるようにシリンダ装置を構成すれば、上記切換時の制動力変化が極めて小さく、スムーズに切換えることが可能である。
【0311】
≪変形例≫
上記第4実施例の液圧ブレーキシステム1200では、制御高圧源圧に基づいて、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成されているが、それに代え、出力圧が設定閾圧を超えた場合に上記切換を行うように液圧ブレーキシステムを構成することが可能である。また、高圧源圧と制御高圧源圧との差が設定圧を超えて小さくなった場合に、上記切換を行うようにすることも可能である。さらに、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。
【0312】
また、上記第4実施例の液圧ブレーキシステム1200では、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRについてだけ、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成されているが、そのような構成に代え、液通路,開閉弁等を変更することにより、前後4つの車輪に設けられた4つのブレーキ装置116のすべてについて、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0313】
100:液圧ブレーキシステム 110:シリンダ装置 116:ブレーキ装置 118:外部高圧源装置 122:リザーバ 150:ブレーキペダル(操作部材) 400:ハウジング 402:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 406:中間ピストン 408:入力ピストン 480:第1反力スプリング(弾性力付与機構) 482:第2反力スプリング(弾性力付与機構) 520:第1入力室開閉弁 536:対向室開閉弁 R1:第1加圧室(加圧室) R2:第2加圧室 R3:第1入力室 R4:対向室 R5:第2入力室 R6:内部室 560:液圧ブレーキシステム 570:シリンダ装置 572:弁装置 574:リリーフ弁 600:液圧ブレーキシステム 610:シリンダ装置 612:開閉弁 640:液圧ブレーキシステム 650:シリンダ装置 652:弁装置 654:リリーフ弁 700:液圧ブレーキシステム 710:シリンダ装置 720:ハウジング 722:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 726:入力ピストン 780:本体部(本体部材) 782:補助ピストン(前端部材) 784:第1反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 786:第2反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 788:浮動座 836:外部連通路(室間連通路) 838:室間開閉弁 847:外部連通路 848:対向室開閉弁 R11:第1加圧室 R12:第2加圧室 R13:入力室 R14:対向室 R15:ピストン間室 R16:内部室 R17:反力室 900:液圧ブレーキシステム 910:シリンダ装置 920:補助ピストン(前端部材) 922:外筒部材 924:内筒部材 926:ボール 928:付勢スプリング 930:係合ピン 1000:液圧ブレーキシステム 1010:シリンダ装置 1020:ハウジング 1022:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 1026:入力ピストン 1066:反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 1116:第1入力室開閉弁 1132:対向室開閉弁 R21:第1加圧室 R22:第2加圧室 R23:第1入力室 R24:第2入力室 R25:対向室 R26:大気圧室 R27:内部室 1200:液圧ブレーキシステム 1210:シリンダ装置 1220:ハウジング 1222:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 1226:中間ピストン 1228:入力ピストン 1290:第1反力スプリング(弾性力付与機構) 1292:第2反力スプリング(弾性力付与機構) 1334:シリンダ装置カット弁(切換弁装置) 1336:シリンダ装置カット弁(切換弁装置) 1342:増圧開閉弁(切換弁装置) R31:第1加圧室 R32:第2加圧室 R33:入力室 R34:環状室 R35:内部室
【0001】
本発明は、車両に装備される液圧ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される液圧ブレーキシステムの中には、例えば、下記特許文献に記載されているようなシステム、つまり、運転者によるブレーキ操作部材の操作力に基づかずに、液圧ポンプ等によって構成される高圧源装置によって発生させられたブレーキ液の圧力によって液圧制動力を発生させるシステムが存在する。
【特許文献1】
特開2008−24098号公報
【発明の開示】
【0003】
(A)発明の概要
上記特許文献に記載のシステムを始め、高圧源装置が発生させる液圧(以下、「高圧源圧」という場合がある)に基づいて制動力を発生させるシステムでは、一般的に、発生可能な制動力は、その高圧源圧の高さに依存する。したがって、より大きな制動力を得ようとする場合、より大きな能力の高圧源装置を必要とする。このことは、高圧源装置の大型化,コストアップに繋がる一因となっている。このことはほんの一例に過ぎないが、液圧ブレーキシステムには、充分なる改良の余地が残されており、改良を施すことによって、更なる実用性の向上が期待できる。そのような実情に鑑み、本発明は、実用性の高い液圧ブレーキシステムを提供することを課題とする。
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の液圧ブレーキシステムは、(a)高圧源装置からのブレーキ液の圧力に依存した大きさの制動力を発生させる高圧源圧依存制動状態と、(b)その高圧源装置からの液圧と、ブレーキ操作部材に加えられた運転者の操作力との両方に依存して、その高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力よりも大きな制動力を発生させることができる操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるための制動力発生状態切換装置を備えたことを特徴とする。
【0005】
本発明の液圧ブレーキシステムによれば、高圧源装置からのブレーキ液の圧力で発生可能な制動力より大きな制動力が得られるため、比較的小さな能力の高圧源装置を装備すればよく、高圧源装置の小型化、低コスト化が図られることになる。その意味において、本発明の液圧ブレーキシステムは、実用的なシステムとなる。
【0006】
(B)発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(11)項が請求項2に、(12)項が請求項3に、(13)項が請求項4に、(14)項が請求項5に、(15)項が請求項6に、(21)項が請求項7に、(22)項が請求項8に、(41)項が請求項9に、(42)項が請求項10に、(61)項が請求項11に、(62)項が請求項12に、(81)項が請求項13に、(82)項が請求項14に、(84)項が請求項15に、それぞれ相当する。
【0008】
≪A:基本態様≫
(1)車輪に設けられたブレーキ装置と、
加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能なシリンダ装置と、
運転者によるブレーキ操作が行われるブレーキ操作部材と、
高圧のブレーキ液を供給する高圧源装置と、
その高圧源装置からのブレーキ液の圧力を前記ブレーキ操作部材の操作に基づいて制御する高圧源圧制御装置と、
(a)その高圧源圧制御装置によって制御された前記高圧源装置からのブレーキ液の圧力である制御高圧源圧に依存した大きさの制動力を発生させる高圧源圧依存制動状態と、(b)前記制御高圧源圧と、前記ブレーキ操作部材に加えられた運転者の力であるブレーキ操作力との両方に依存して、前記高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力である高圧源依存最大制動力より大きな制動力を発生可能な操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させる制動力発生状態切換装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
【0009】
本項の態様の液圧ブレーキシステムは、運転者によるブレーキ操作力を利用することで、高圧源装置からの液圧に依拠して発生可能な最大の液圧制動力よりも大きな制動力を得ることが可能である。例えば、通常の制動力しか必要でない場合には液圧源装置が発生させる液圧にのみ依存した制動力を発生させ、フェード時、急ブレーキ等の大きな制動力を必要とする場合に、液圧源装置が発生させる液圧に加え、ブレーキ操作力に依存して、大きな制動力を得ることが可能である。大きな制動力を必要とする場合にまでも、高圧源装置が発生させる液圧のみに依存して制動力を得ようとすれば、高圧源装置に高い能力が要求され、高圧源装置の大型化、高コスト化を招く結果となる。本項の態様のシステムによれば、比較的能力の低い高圧源装置であっても、ブレーキ操作力を利用して、その高圧源装置による液圧のみによっては得ることができない大きさの制動力を得ることができるため、高圧源装置のコンパクト化、低コスト化が図れることになる。このことは、液圧ブレーキシステムのコンパクト化、低コスト化に貢献し、本項の態様によれば、実用性の高い液圧ブレーキシステムが実現する。
【0010】
≪B:シリンダ装置の構造に依拠して制動力発生状態を切換える態様≫
(11)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
その加圧ピストンの後方に配設され、後端部において前記ブレーキ操作部材に連結される入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
前記制動力発生状態切換装置として機能し、(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を禁止して、前記制御高圧源圧に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容しつつ、そのブレーキ操作力と前記制御高圧源圧との両方に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるシリンダ作動状態切換機構と
を備えた(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0011】
本項の態様におけるシリンダ装置は、いわゆる液圧ブースト機能付きマスタシリンダと呼ぶことができるシリンダ装置である。高圧源圧依存加圧状態では、運転者のブレーキ操作に直接的には依存しない制動力が発生可能であるため、本項の態様におけるシリンダ装置は、回生制動力が得られるハイブリッド車等に好適なシリンダ装置である。本項の液圧ブレーキシステムは、そのシリンダ装置自体の構造に依拠して、上記高圧源圧依存制動状態と上記操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるシステムである。
【0012】
(12)シリンダ作動状態切換機構が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0013】
(13)シリンダ作動状態切換機構が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0014】
(14)シリンダ作動状態切換機構が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0015】
(15)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0016】
上記4つの態様は、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換の条件に関する限定を加えた態様である。いずれの項に記載の態様も、液圧制動力がある程度大きくなった場合、つまり、液圧制動力が上記高圧源依存最大制動力となった場合あるいはそれに近づいた場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態を効果的に行うことが可能である。
【0017】
上記4つの項のうちの最初の項における「操作力指標パラメータ」は、特に限定されない。ブレーキ操作力に基づいて液圧制動力,上記制御高圧源圧等が決定されるように構成されたシステムでは、上記出力圧,制御高圧源圧,上記入力室内の圧力等が操作力指標パラメータとなり得る。また、上記高圧源圧がある範囲に設定されており制御高圧源圧がブレーキ操作力に基づいて決定される場合にあっては、高圧源圧と制御高圧源圧との差も、操作力指標パラメータとなり得る。さらに、ブレーキ操作部材の操作量がブレーキ操作力に関連している場合には、その操作量も操作力指標パラメータとなり得る。特に、後に説明するように、シリンダ装置が、いわゆるストロークシミュレータの動作限界によって、ブレーキ操作力がある値となった場合においてブレーキ操作部材の操作が限界となるように構成されている場合において、その操作限界であるという事象も、操作力指標パラメータとなり得る。
【0018】
上記4つの項のうち2番目の項における制御高圧源圧,出力圧は、、高圧源圧依存加圧状態における液圧制動力を指標するものであることから、当該項の態様は、液圧制動力に基づいて高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われる態様と考えることができる。当該項の態様は、制御高圧源と出力圧との一方をパラメータとするものであり、切換の閾値となる設定圧は、制御高圧源と出力圧とのいずれをパラメータとするかによって、異なる値に設定すればよい。
【0019】
一般的に、高圧源圧制御装置は、高圧源装置によって発生させられている高圧源圧を、それ以下に減圧して出力するように構成される。したがって、上記4つの項のうちの3番目の項の態様は、制御高圧源圧がその時点の実際の高圧源圧にある程度近づいた場合にシリンダ装置の作動状態を切換える態様と考えることができる。当該態様の液圧ブレーキシステムによれば、制御高圧源圧がその時点での限界となる付近で、確実に、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換を行うことが可能となる。
【0020】
上記4つの項のうち、最後の項に記載の態様は、シリンダ装置がいわゆるストロークシミュレータを有している場合に有効な態様である。上記入力ピストン前進許容機構が、ストロークシミュレータとして機能する。高圧源圧依存加圧状態において、そのストロークシミュレータを、あるブレーキ操作部材の操作量が設定された操作量となった場合に、つまり、ブレーキ操作力が設定された大きさとなった場合に、機械的なストッパ等によって、入力ピストンの前進が禁止されるように構成することが可能である。つまり、ブレーキ操作に対する操作限界を設けるようにストロークシミュレータを構成することが可能である。当該項に記載の態様は、簡単に言えば、そのようなストロークシミュレータを有するシリンダ装置において、その限界において、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われる態様である。その態様によれば、切換時におけるブレーキ操作の操作感が良好なものとなる。なお、入力ピストンの前進が禁止されるに至ったこと、つまり、上記操作限界となったことは、例えば、ブレーキ操作部材の操作量を検出する操作量センサと、ブレーキ操作力を検出する操作力センサとを設け、操作量センサによって検出された操作量に変化がないにも拘わらず、操作力センサによって検出された操作力に変化があることをもってして判定すればよい。
【0021】
(16)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、そのブレーキ操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(11)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0022】
本項に記載の態様は、高圧源装置の故障,システムの電気的失陥といった状況下でも、ブレーキ操作部材に加えられた運転者の力だけで、液圧制動力を発生可能とした態様である。本項の態様では、シリンダ装置自体の構造に依拠して、高圧源圧依存加圧状態から操作力依存加圧状態への切換が行われる。本項の態様によれば、フェールセーフの観点において優れたシステムが実現される。
【0023】
<B−1:中間ピストンロック型シリンダ装置に関する態様>
(21)前記シリンダ装置が、
本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された中間ピストンを備え、
前記入力ピストンがその中間ピストンの後方から前記ブレーキ操作力をその中間ピストンに伝達するようにされており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記中間ピストンの前進を禁止するとともに、前記第1入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進を許容するとともに、前記第1入力室を密閉し、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0024】
本項の態様は、シリンダ装置の基本的構造に限定を加えた態様である。上記構造のシリンダ装置は、2つの前記入力室が前方と後方とに区画されるように配設されるとともに入力ピストン後方から連結される中間ピストンを備えている。中間ピストンの前進が禁止された状態で高圧源依拠加圧状態が実現される。そのことに鑑み、上記基本構造を有するシリンダ装置を、以下、便宜的に、「中間ピストンロック型」のシリンダ装置と呼ぶこととする。本項の態様のシリンダ装置によれば、操作力・高圧源依拠加圧状態において、第1入力室は密閉された状態とされるとともに中間ピストンの前進が許容されることで、第1入力室のブレーキ液は、中間ピストンを介して、第2入力室に入力される制御高圧源圧と、入力ピストンに加わるブレーキ操作力とによって加圧され、その加圧された第1入力室内のブレーキ液の圧力に依拠して、加圧室のブレーキ液が加圧される。なお、高圧源依拠加圧状態において、上記第1入力室と上記第2入力室が連通されていてもよく、その場合には、中間ピストンの第1入力室に対する受圧面積と、第2入力室に対する受圧面積とが略等しいことが望ましい。つまり、中間ピストンの本体部の前端の面積と鍔部の後端の面積とが略等しいことが望ましい。
【0025】
(22)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(21)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0026】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記中間ピストンロック型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0027】
(23)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0028】
(24)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0029】
(25)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0030】
(26)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0031】
(27)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(23)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0032】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0033】
(28)前記弁制御装置が、
前記操作力・高圧源圧依存加圧状態から前記高圧源圧依存加圧状態への切換りにおいて、前記中間ピストンが、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換る前の位置に復帰したことを条件として、前記対向室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるように構成された(23)項ないし(27)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0034】
本項に記載の態様は、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存加圧状態への切換に関する手法に関する限定を加えた態様である。操作力・高圧源圧依存加圧状態において第1入力室が密閉されている場合、ブレーキ操作を解除しても、例えば、中間ピストンが初期位置において後退が停止させられたときには、その後に第1入力室の圧力が減少せず、液圧制動力がブレーキ操作に応じて減少しないという現象が生じる。上記最後の態様では、その現象を、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存加圧状態への切換の条件としており、その態様によれば、高圧源圧依存加圧状態への移行が、確実に、かつ、スムーズに行われることになる。具体的には、例えば、上記出力圧、第1入力室の圧力等が、ブレーキ操作力等のブレーキ操作を指標するパラメータが変化するにも関わらず変化しないことによって、中間ピストンが初期位置に復帰したことを判定すればよい。
【0035】
(29)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、そのパイロット圧とされた前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0036】
(30)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧減圧と前記制御高圧源圧と差が設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(22)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0037】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0038】
(31)前記対向室開閉弁と前記第1入力室開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(22)項ないし(30)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0039】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルものとすることができる。
【0040】
(32)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進を許容するとともに、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前記加圧ピストンへの当接を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(21)項ないし(31)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0041】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、第1入力室の容積の減少が許容されるため、中間ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。本項に記載のシリンダ装置では、未動作状態、つまり、操作部材が操作されていない状態において、加圧ピストンと中間ピストンとが当接する程に入力室の容積を小さくできる。このことにより、失陥時において、操作部材が動き始めた直後から、操作部材に加えられる操作力によって、加圧室のブレーキ液を加圧することが可能となる。したがって、当該シリンダ装置によれば、失陥時において、ブレーキ操作部材の操作範囲、つまり、操作ストロークを充分に確保することが可能となる。
【0042】
シリンダ作動状態切換機構についてより具体的に説明すれば、例えば、電気的失陥時等において高圧源圧制御装置がリザーバと連通するような構造である場合には、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記第1入力室開閉弁が利用できる。また、前記対向室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記対向室開閉弁を利用することができる。ちなみに、ブレーキ操作力に応じて対向室内の圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その対向室内の圧力が設定圧を超えた場合に、その対向室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、対向室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、中間ピストンが設定量前進した場合に、反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、対向室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0043】
(33)前記入力ピストンが、その中間ピストンとの相対移動に伴って容積が変化する内部室が区画されるようにして、その中間ピストンの後端部に嵌め合わされており、
当該シリンダ装置が、
前記内部室の容積が減少する向きの前記入力ピストンと前記中間ピストンとの相対移動に伴って、その相対移動に対抗する方向の弾性力を前記入力ピストンと前記中間ピストンとに付与する弾性力付与機構を有する(21)項ないし(32)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0044】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。上記弾性力付与機構は、例えば、内部室内にスプリングを配設し、そのスプリングの弾性力を内部室の容積が増大する方向に入力ピストンと中間ピストンとに作用させるように構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが内部室というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンと中間ピストンとが相対移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
【0045】
(34)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記中間ピストンの前進が許容されない際に、前記内部室と前記リザーバとが連通する状態を実現させ、その中間ピストンの前進が許容された際に、前記内部室と前記リザーバとが連通しない状態を実現させる内部室連通状態切換機構を有する(33)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0046】
上記内部室連通状態切換機構によって、内部室とリザーバとの連通を断てば、内部室は密閉され、入力ピストンと中間ピストンとの相対移動が禁止されることで、入力ピストンと中間ピストンとが一体となった前進が許容される。本項の態様によれば、中間ピストンの前進が許容された後早い段階で内部室を密閉させることで、操作力依存加圧状態、および、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、操作ストロークが有効に利用されることになる。
【0047】
なお、本項の態様では、シリンダ装置が、入力ピストンと中間ピストンとが嵌め合わされた構造を有しているため、入力ピストンと係合させる必要のある高圧シールを少なくすることが可能である。具体的には、中間ピストンと入力ピストンとの間、および、入力ピストンとハウジングの間に、それぞれ、1つずつ高圧シールを配設すればよい。そのため、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストンの移動に対する摩擦抵抗が比較的少なく、摩擦抵抗がブレーキ操作の操作感にに与える影響を小さくすることが可能である。
【0048】
(35)前記第1入力室を区画する前記中間ピストンの受圧面積が、前記第1入力室を区画する前記加圧ピストンの受圧断面積に比べて大きくされている(21)項ないし(34)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0049】
本項の態様は、簡単に言えば、中間ピストンの前端の面積が、加圧ピストンの後端の面積に比べて大きくされた態様である。高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換られた際には、第1入力室にブレーキ液が導入された後にその第1入力室が密閉される。その状態においてブレーキ操作部材を操作すれば、中間ピストンの前進量に対して加圧ピストンの前進量が大きくなる。本項の態様によれば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキ操作部材の操作量の変化に対する出力圧の変化を比較的大きくすることが可能となる。裏を返せば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、より大きな操作ストロークを確保することが可能となる。
【0050】
<B−2:入力ピストンフリー型シリンダ装置に関する態様>
(41)前記加圧ピストンが、後端に開口する有底穴を有するとともに、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記加圧室が前記本体部の前方に、前記入力室が前記鍔部の後方に、それぞれ区画されるとともに、前記鍔部を挟んでそれの前方に、前記入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記入力ピストンが、それの前方に前記加圧ピストンとによってピストン間室が区画されるようにして、前記加圧ピストンの有底穴に嵌入されており、
前記シリンダ装置が、前記加圧ピストンの進退に伴う前記対向室の容積変化と前記ピストン間室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それら対向室とピストン間室とを連通させるための室間連通路を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記室間連通路を開通させて前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を許容するとともに、前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容し、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するとともに前記対向室と前記リザーバとを連通させて、前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を制限しつつそれらの前進を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0051】
本項の態様は、シリンダ装置が先に説明した基本構造とは異なる基本構造を有する態様である。本項に記載のシリンダ装置では、室間連通路が開通している状態では、上記対向室と上記ピストン間室とによって1つの反力室が形成されると考えることができる。それら対向室とピストン室とが連通した状態では、加圧ピストンの前進に伴って、ピストン間室の容積が拡大するとともにその分対向室の容積が減少し、一方、加圧ピストンの後退に伴って、対向室の容積が減少するとともにその分ピストン間室の容積が増大するようにされている。つまり、それら2つの液室の一方のブレーキ液の吸排と他方のブレーキ液の吸排とが、バランスするようにされており、加圧ピストンに対する入力ピストンの自由な動作が可能とされている。このような機能を有することに鑑み、以下、上記基本構造を有するシリンダ装置を、「入力ピストンフリー型」のシリンダ装置と呼ぶこととする。
【0052】
上記構造のシリンダ装置では、入力ピストンが加圧ピストンとは当接しない状態での入力ピストンと加圧ピストンとの相対移動が許容された状態とされ、その状態で入力室に圧力を導入することで、高圧源圧依存加圧状態が実現されるのである。一方、操作力・高圧源圧依存加圧状態では、ピストン間室を密閉することで、加圧ピストンと入力ピストンとの相対移動を制限して、ブレーキ操作力の入力ピストンから加圧ピストンへの伝達を許容し、その状態で対向室が解放し、加圧ピストンと入力ピストンと前進を許容することで、操作力・高圧源圧依拠加圧状態が実現される。ここで、「相対移動の制限」とは、相対移動が禁止されることだけを意味しない。ピストン間室が弾性力によって加圧されているような場合には、言い換えれば、入力ピストンと加圧ピストンとが、ピストン間室を介して弾性的に相互に支持し合っている場合には、その弾性力に応じた分の相対移動が許容される。本項の態様においては、このような場合も相対移動が制限されていると解釈することとする。
【0053】
本項の態様におけるシリンダ装置は、入力ピストンが、加圧ピストンに設けられた有底穴に挿入されている。そのため、上記各液室を区画するために入力ピストンと係合させる必要のある高圧シールは、加圧ピストンの有底穴の内周面と入力ピストンの外周面との間と、入力ピストンの外周面と入力ピストンを摺動可能に保持するハウジングの部分との間とに、それぞれ、1つずつ配設すればよい。そのため、高圧源圧加圧状態において、入力ピストンの移動に対する摩擦抵抗が比較的小さく、摩擦抵抗が操作部材の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感に与える影響を小さくすることが可能である。
【0054】
(42)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記室間連通路に設けられた室間開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および室間開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(41)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0055】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記入力ピストンフリー型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0056】
(43)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および室間開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0057】
(44)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0058】
(45)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0059】
(46)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0060】
(47)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記室間開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(43)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0061】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0062】
(48)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記室間開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0063】
(49)前記対向室開閉弁および前記室間開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換るとともに、前記室間開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(42)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0064】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0065】
(50)前記対向室開閉弁と前記室間開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(42)項ないし(49)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0066】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルなものとすることができる。
【0067】
(51)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記ピストン間室とが連通している状態においてそれらと前記リザーバとを連通させて、前記入力ピストンが前記加圧ピストンに当接した状態でのそれらの前進を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(41)項ないし(50)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0068】
本項の態様は、入力ピストンフリー型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、ピストン間室の容積の減少が許容されるため、中間ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。なお、本項において、「入力ピストンの加圧ピストンへの当接」は、入力ピストンが直接加圧ピストンに接触することだけに限定されない。入力ピストンが、なんらかの剛体を介して、間接的に接触することをも意味する。
【0069】
また、本項に記載のシリンダ装置では、室間連通路によってピストン間室と対向室とが連通する状態では1つの反力室が形成されており、そのことによって、ピストン間室を比較的小さな容積に設定できる。つまり、入力ピストンの前端と加圧ピストンの有底穴の底との距離を、比較的小さくすることができる。したがって、操作力依存加圧状態において、入力ピストンが加圧ピストンに当接するまでの前進距離を小さくすることが可能となる。そのことによって、本項の態様では、失陥時等のブレーキ操作におけるガタ感を少なくして、そのブレーキ操作の操作感を良好なものとすることが可能とされているのである。
【0070】
シリンダ作動状態切換機構について、より具体的に説明すれば、例えば、上記室間開閉弁,上記対向室開閉弁を備えている場合には、室間開閉弁を開弁状態としたままで、対向室開閉弁を開弁状態とすることにより、操作力依存加圧状態を実現させることができる。ちなみに、対向室とピストン間室とが連通している状態では、それらによって1つの反力室が形成されていると擬制することができる。その反力室内は、ブレーキ操作力に応じて圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その反力室内の圧力が設定圧を超えた場合に、対向室およびピストン間室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、ピストン間室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、入力ピストンが加圧ピストンに対して設定量前進した場合に、上記反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、上記反力室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0071】
(52)前記シリンダ装置が、前記ピストン間室内と前記対向室内との少なくとも一方を弾性力に依拠して加圧する弾性力依拠加圧機構を備えた(41)項ないし(51)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0072】
本項の態様は、入力ピストンフリー型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。上記弾性力依拠加圧機構によれば、高圧源圧依存加圧状態において、操作部材の操作感を運転者に実感させるために、上記弾性力依拠加圧機構によって、入力ピストンの前進量、すなわち、操作部材の操作量に応じた操作反力を付与することが可能である。言い換えれば、弾性力依拠加圧機構は、入力ピストンの前進量が増加するにつれて弾性変形量が大きくなるような弾性部材を有し、操作部材の操作量が大きくなるにつれて操作反力が大きくなるようにするための機構と考えることができる。裏を返せば、操作反力に応じた入力ピストンの前進を許容する機能、つまり、操作反力に応じた操作量となる操作部材の操作を許容する機構と考えることができる。本項に記載のシリンダ装置では、ストロークシミュレータを構成するばね等の弾性部材を、シリンダ装置の外部に配設する必要がなく、本項の態様によれば、ストロークシミュレータを当該シリンダ装置の内部に配設することができるため、シリンダ装置のコンパクト化が図れる。
[0073]
なお、弾性力依拠加圧機構は、ハウジング側,加圧ピストン側,入力ピストン側との少なくともいずれかの側から反力室を加圧するように構成することができる。つまり、対向室をハウジングの側から加圧する構成と、ピストン間室を加圧ピストンの側から加圧する構成と、ピストン間室を入力ピストンの側から加圧する構成とのいずれか1つの構成を採用することができる。前2つの構成のいずれか1つの採用する態様は、ストロークシミュレータがハウジング内に配設された態様と考えることができ、後の1つの構成を採用する態様は、ストロークシミュレータが入力ピストン内に配設された態様と考えることができる。
[0074]
また、弾性力依拠加圧機構は、スプリングの弾撥力によって上記反力室を加圧するように構成することができる。その場合、2つのスプリングを用い、入力ピストンが加圧ピストンに対して前進するする過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
[0075]
<B−3:入力ピストン前方加圧型シリンダ装置に関する態様>
(61)前記入力ピストンが、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記入力ピストンの前進を制限するとともに、前記第1入力室および第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記入力ピストンの前進の制限を解除するとともに、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容したままで前記第1入力室を密閉することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0076】
本項の態様は、シリンダ装置が先に説明した2種の基本構造のいずれとも異なる基本構造を有する態様である。本項に記載のシリンダ装置では、高圧源圧加圧状態において、上記対向室を密閉して入力ピストンの前進を制限し、入力ピストンの前方に設けられた入力室に高圧源装置からの圧力を入力させることで、その圧力によって加圧ピストンが加圧室のブレーキ液を加圧する。そのような基本構造であることに鑑み、その基本構造を有する本項に記載のシリンダ装置を、以下、便宜的に、「入力ピストン前方加圧型」のシリンダ装置と呼ぶことにする。なお、対向室を密閉した場合における「入力ピストンの前進の制限」は、入力ピストンの前進を禁止することを意味するだけでなく、対向室の圧力に抗してある程度前進する状態をも意味する。例えば、後に説明するが、ストロークシミュレータ機能を有して、その機能によって入力ピストンの前進が許容された状態も、入力ピストンの前進が制限されていると解釈されるべきである。ただし、入力ピストンによって伝達されるブレーキ操作力が、高圧源圧加圧状態において、前記対向室の圧力による反力によって打ち消され、第1入力室内を加圧する力として作用しないことを要する。なお、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストンの第1入力室に対しての受圧面積と、第2入力室に対しての受圧面積とが等しいことが望ましい。言い換えれば、入力ピストンの本体部の前端の面積と、鍔部の後端の面積とが等しいことが望まれる。そのような構成により、高圧源圧依存加圧状態において、制御高圧源圧によっては入力ピストンが進退させられないようにすることが可能である。
【0077】
上記シリンダ装置では、操作力・高圧源依拠加圧状態において、第1入力室は密閉された状態とされるとともに入力ピストンの前進が許容されることで、第1入力室のブレーキ液は、第2入力室に入力される制御高圧源圧と、入力ピストンに加わるブレーキ操作力とによって加圧され、その加圧された第1入力室内のブレーキ液の圧力に依拠して、加圧室のブレーキ液が加圧される。
【0078】
(62)前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された(61)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0079】
本項の態様は、シリンダ作動状態切換機構の具体的構造、つまり、上記中間ピストンロック型のシリンダ装置によって、高圧源圧依存加圧状態と操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、シリンダ装置の作動状態を切換えることが可能である。
【0080】
(63)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が電磁式開閉弁とされ、前記シリンダ作動切換機構が、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁を制御する弁制御装置を備えた(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0081】
(64)前記弁制御装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0082】
(65)前記弁制御装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0083】
(66)前記弁制御装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0084】
(67)前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記弁制御装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記対向室開閉弁を閉弁状態から開弁状態に切換えるとともに、前記第1入力室開閉弁を開弁状態から閉弁状態に切換えるように構成された(63)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0085】
上記5つの態様は、前述の2つの開閉弁を電磁式の開閉弁で構成し、それを制御装置によって制御させるようにした態様である。開閉弁の開閉の切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0086】
(68)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方がパイロット圧として入力されてそのパイロット圧に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記制御高圧源圧と前記出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0087】
(69)前記対向室開閉弁および前記第1入力室開閉弁の各々が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧および前記制御高圧源圧の各々がパイロット圧として入力されてそれら2つのパイロット圧の差に基づいて作動する機械式開閉弁とされ、前記高圧減圧と前記制御高圧源圧と差が設定差を超えて小さくなった場合に、前記対向室開閉弁が閉弁状態から開弁状態に切換わり、前記第1入力室開閉弁が開弁状態から閉弁状態に切換るように構成された(62)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0088】
上記2つの態様は、上記2つの開閉弁を機械式の開閉弁によって構成した態様である。それらの態様によれば、機械式の開閉弁を採用することで、比較的低コストな液圧ブレーキシステムが実現されることになる。なお、開閉弁の開閉の切換において依拠する各パラメータの意義については、先の説明と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0089】
(70)前記対向室開閉弁と前記第1入力室開閉弁とが一体化されて、1つの弁装置として構成された(62)項ないし(69)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0090】
本項の態様によれば、シリンダ作動切換機構を比較的シンプルものとすることができる。
【0091】
(71)前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記高圧源圧依存加圧状態と、(b)前記操作力・高圧源圧依存加圧状態と、(c)前記高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容し、その操作力による前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成され、
前記対向室と前記リザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進の制限を解除するとともに、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させて前記入力ピストンの前記加圧ピストンへの当接を許容することで、前記操作力依存加圧状態を実現させるように構成された(61)項ないし(70)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0092】
本項の態様は、中間ピストンロック型のシリンダ装置において、シリンダ作動状態切換機構に、上記操作力依存加圧状態を実現させる機能を持たせるための具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、簡便な機構によって、操作力依存加圧状態が実現されることになる。本項の態様では、操作力依存加圧状態においては、第1入力室の容積の減少が許容されるため、入力ピストンが加圧ピストンに当接した状態で、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達されることになる。
【0093】
シリンダ作動状態切換機構についてより具体的に説明すれば、例えば、電気的失陥時等において高圧源圧制御装置がリザーバと連通するような構造である場合には、前記第1入力室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記第1入力室開閉弁が利用できる。また、前記対向室と前記リザーバとを連通させる手段として、上記対向室開閉弁を利用することができる。ちなみに、ブレーキ操作力に応じて対向室内の圧力が上昇するため、上記対向室開閉弁を利用するのではなく、リリーフ弁等を利用した機構、つまり、その対向室内の圧力が設定圧を超えた場合に、その対向室とリザーバとを連通させる圧力依拠連通機構を設けてもよい。なお、圧力依拠連通機構を設ける場合には、対向室の容積が設定容積より小さくなった場合に、つまり、入力ピストンが設定量前進した場合に、反力室とリザーバとを連通させる容積依拠連通機構を併設することが望ましい。その容積依拠連通機構を設けることによって、操作力依存加圧状態において、対向室の残圧に起因するブレーキ操作力のロスをなくすことが可能である。
【0094】
(72)前記入力ピストンが、前記本体内部に設けられて前記対向室と連通する内部室と、その内部室内を弾性力に依拠して加圧する弾性力依拠加圧機構とを備えた(61)項ないし(71)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0095】
本項の態様は、入力ピストン前方加圧型のシリンダ装置が、高圧源圧依存加圧状態において、いわゆるストロークシミュレータの機能を有するように構成された態様である。言い換えれば、上述の入力ピストン前進許容機構を備えた一具体的態様である。具体的には、入力ピストンの内部に円筒形状の空間を設け、その空間に補助ピストンを配設して、上記内部室を区画し、その空間内にその補助ピストンを付勢するスプリングを配設することによって上記弾性力依拠加圧機構を構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが入力ピストンの内部というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンが移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。
【0096】
(73)前記第1入力室を区画する前記入力ピストンの受圧面積が、前記第1入力室を区画する前記加圧ピストンの受圧断面積に比べて大きくされている(61)項ないし(72)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0097】
本項の態様は、簡単に言えば、入力ピストンの前端の面積が、加圧ピストンの後端の面積に比べて大きくされた態様である。高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換られた際に第1入力室が密閉される。その状態においてブレーキ操作部材を操作すれば、入力ピストンの前進量に対して加圧ピストンの前進量が大きくなる。本項の態様によれば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキ操作部材の操作量の変化に対する出力圧の変化を比較的大きくすることが可能となる。裏を返せば、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、より大きな操作ストロークを確保することが可能となる。
【0098】
≪C:ブレーキ装置へのブレーキ液の供給元を変更して制動力発生状態を切換える態様≫ (81)前記シリンダ装置が、常時、前記ブレーキ操作力と自身に入力された前記制御高圧源圧との両方に応じて加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能に構成され、かつ、当該液圧ブレーキシステムが、前記高圧源装置からのブレーキ液が前記高圧源圧制御装置を介しかつ前記シリンダ装置を経ずに前記ブレーキ装置へ供給可能とされ、
前記制動力発生状態切換装置が、
(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が遮断されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容される高圧源装置供給状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が禁止されるシリンダ装置供給状態を実現させる切換弁装置を有する(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0099】
本項の態様の液圧ブレーキシステムは、シリンダ装置を、上述の操作力・高圧源圧依存加圧状態が常時実現されるように構成し、ブレーキ装置へのブレーキ液の供給元を高圧源装置とするかシリンダ装置とするかによって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させるように構成されたシステムである。本項の態様のシステムでは、高圧源圧依存制動状態においては、マスターシリンダとして機能する上記シリンダ装置とブレーキ装置との接続が断たれており、その状態で、高圧源圧制御装置を介して高圧源装置からのブレーキ液圧がブレーキ装置に入力され、ブレーキ操作部材の操作に基づいた液圧制動力が発生させられる。そのことに鑑み、以下、本項の態様のシステムを、マスタカット型ブレーキバイワイヤシステムと呼ぶこととする。
【0100】
(82)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
自身の後端部において前記ブレーキ操作部材に連結され、前記ブレーキ操作力を常時伝達可能に前記加圧ピストンと連結された入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
を有する(81)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0101】
本項の態様は、上記マスタカット型ブレーキバイワイヤシステムにおいて採用可能なシリンダ装置に関する限定を加えた態様である。本項に記載のシリンダ装置によれば、比較的簡単な構造にて、常時、前述の操作力・高圧源圧依拠加圧状態を実現させることが可能である。また、本項に記載のシリンダ装置では、高圧源装置が高圧のブレーキ液を供給不能な状況下においては、特別なシリンダ作動状態切換機構を前述の操作力依拠加圧状態が実現される。したがって、本項の態様の液圧ブレーキシステムは、比較的簡単な構成のシステムとなる。
【0102】
(83)前記シリンダ装置が、
後端が開口する有底円筒形状をなし、前端が前記加圧ピストンに当接するとともに自身の後方に前記入力室が区画されるようにして前記ハウジング内に配設され、自身の内部に内部室が区画されるようにして前記入力ピストンが後方から嵌め入れられた中間ピストンと、
前記内部室の容積が減少する向きの前記入力ピストンと前記中間ピストンとの相対移動に伴って、その相対移動に対抗する方向の弾性力を前記入力ピストンと前記中間ピストンとに付与する弾性力付与機構と
を有する(82)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0103】
本項の態様は、シリンダ装置がいわゆるストロークシミュレータを有する態様である。本項の態様では、上記弾性力付与機構を介して、ブレーキ操作力が加圧ピストンに伝達される。上記弾性力付与機構は、例えば、内部室内にスプリングを配設し、そのスプリングの弾性力を内部室の容積が増大する方向に入力ピストンと中間ピストンとに作用させるように構成すればよい。そのように構成された弾性力付与機構を有するシリンダ装置は、ストロークシミュレータを構成するスプリングが内部室というデッドスペースに配設されているため、コンパクトなシリンダ装置となる。なお、2つのスプリングを直列的に配設して、入力ピストンと中間ピストンとが相対移動する過程において一方のスプリングの弾性変形量が増加しないようにすれば、ブレーキ操作部材の操作の初期において操作反力勾配が小さく、ある程度操作が進んだ段階からは操作反力勾配が大きくなるといった操作反力特性のストロークシミュレータを実現させることが可能となる。ちなみに、本項に記載の態様は、シリンダ装置が入力ピストン前進許容機構(後に言及する)を有する態様と考えることができる。
【0104】
(84)前記シリンダ装置が、
前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧が、常時、前記制御高圧源圧以上となるように構成された(82)項または(83)項に記載の液圧ブレーキシステム。
【0105】
本項の態様によれば、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換ったとしても、その時点での液圧制動力の低下がない。したがって、切換り時点での充分な制動力が確保されることになる。ちなみに、シリンダ装置を、高圧源圧依存制動状態における上記出力圧が制御高圧源圧と等しくなるように構成すれば、切換り時点での液圧制動力の急変が防止され、スムーズな切換りが実現されることになる。つまり、ブレーキ操作における切換り時の違和感を可及的に小さくすることが可能となる。
【0106】
(85)前記切換弁装置が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0107】
(86)前記切換弁装置が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0108】
(87)前記切換弁装置が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0109】
(88)前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
自身の後端部において前記ブレーキ操作部材に連結され、前記ブレーキ操作力を常時伝達可能に前記加圧ピストンと連結された入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と、
弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記切換弁装置が、
前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、前記高圧源装置供給状態に代えて前記シリンダ装置供給状態を実現させるように構成された(81)項ないし(84)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【0110】
上記4つの態様は、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換りのタイミングに関する限定を加えた態様である。詳しく言えば、切換弁装置によって、ブレーキ液の供給状態を、高圧源装置供給状態からシリンダ装置供給状態に変更する条件についての限定を加えた態様である。上記切換条件については、先に詳しく説明されているため、ここでの説明は省略する。
【0111】
なお、切換弁装置は、電磁式の開閉弁を主体として構成され、それら開閉弁が制御装置によって制御されるものであってもよい。また、上記出力圧、制御高圧源圧、高圧源圧等をパイロット圧として作動する機械式の開閉弁を主体として構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1実施例の液圧ブレーキシステムが装備されたハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを表す模式図である。
【図2】第1実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図3】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおける、シリンダ装置に連結された操作部材の操作量と、シリンダ装置から操作部材に付与される操作反力との関係を示すグラフである。
【図4】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおける、ブレーキ操作力の変化に対するシリンダ装置からの出力圧の変化を模式的に示すグラフである。
【図5】第1実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【図6】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第1変形例を示す図である。
【図7】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第2変形例を示す図である。
【図8】第1実施例の液圧ブレーキシステムの第3変形例を示す図である。
【図9】第2実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図10】第2実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【図11】第2実施例の液圧ブレーキシステムの変形例を示す図である。
【図12】第3実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図13】第4実施例の液圧ブレーキシステムを示す図である。
【図14】第4実施例の液圧ブレーキシステムにおいて実行される、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを切り換える制御プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0114】
≪車両の構成≫
図1に、第1実施例の液圧ブレーキシステムを搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを模式的に示す。車両には、動力源として、エンジン10と電気モータ12とが搭載されており、また、エンジン10の出力により発電を行う発電機14も搭載されている。これらエンジン10、電気モータ12、発電機14は、動力分割機構16によって互いに接続されている。この動力分割機構16を制御することで、エンジン10の出力を発電機14を作動させるための出力と、4つの車輪18のうちの駆動輪となるものを回転させるための出力とに振り分けたり、電気モータ12からの出力を駆動輪に伝達させることができる。つまり、動力分割機構16は、減速機20および駆動軸22を介して駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として、機能するのである。なお、「車輪18」等のいくつかの構成要素は、総称として使用するが、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付すこととする。この表記に従えば、本車両における駆動輪は、車輪18RL,および車輪18RRである。
【0115】
電気モータ12は、交流同期電動機であり、交流電力によって駆動される。車両にはインバータ24が備えられており、インバータ24は、電力を、直流から交流、あるいは、交流から直流に変換することができる。したがって、インバータ24を制御することで、発電機14によって出力される交流の電力を、バッテリー26に蓄えるための直流の電力に変換させたり、バッテリ26に蓄えられている直流の電力を、電気モータ12を駆動するための交流の電力に変換させることができる。発電機14は、電気モータ12と同様に、交流同期電動機としての構成を有している。つまり、本実施例の車両では、交流同期電動機が2つ搭載されていると考えることがき、一方が、電気モータ12として、主に駆動力を出力するために使用され、他方が、発電機14として、主にエンジン10の出力により発電するために使用されている。
【0116】
また、電気モータ12は、車両の走行に伴う車輪18RL、18RRの回転を利用して、発電(回生発電)を行うことも可能である。このとき、車輪18RL、18RRに連結される電気モータ12では、電力が発生させられるとともに、電気モータ12の回転を制止するための抵抗力が発生する。したがって、その抵抗力を、車両を制動する制動力として利用することができる。つまり、電気モータ12は、電力を発生させつつ車両を制動するための回生ブレーキの手段として利用される。したがって、本車両は、回生ブレーキをエンジンブレーキや後述する液圧ブレーキとともに制御することで、制動されるのである。一方、発電機14は主にエンジン10の出力により発電をするが、インバータ24を介してバッテリ26から電力が供給されることで、電気モータとしても機能する。
【0117】
本車両において、上記のブレーキの制御や、その他の車両に関する各種の制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって行われる。複数のECUのうち、メインECU40は、それらの制御を統括する機能を有している。例えば、ハイブリッド車両は、エンジン10の駆動および電気モータ12の駆動によって走行することが可能とされているが、それらエンジン10の駆動と電気モータ12の駆動は、メインECU40によって総合的に制御される。具体的に言えば、メインECU40によって、エンジン10の出力と電気モータ12による出力の配分が決定され、その配分に基づき、エンジン10を制御するエンジンECU42、電気モータ12及び発電機14を制御するモータECU44に各制御についての指令が出力される。
【0118】
メインECU40には、バッテリ26を制御するバッテリECU46も接続されている。バッテリECU46は、バッテリ26の充電状態を監視しており、充電量が不足している場合には、メインECU40に対して充電要求指令を出力する。充電要求指令を受けたメインECU40は、バッテリ26を充電させるために、発電機14による発電の指令をモータECU44に出力する。
【0119】
また、メインECU40には、ブレーキを制御するブレーキECU48も接続されている。当該車両には、運転者によって操作されるブレーキ操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)が設けられており、ブレーキECU48は、その操作部材の操作量であるブレーキ操作量(以下、単に「操作量」という場合がある)と、その操作部材に加えられる運転者の力であるブレーキ操作力(以下、単に「操作力」という場合がある)との少なくとも一方に基づいて目標制動力を決定し、メインECU40に対してこの目標制動力を出力する。メインECU40は、モータECU44にこの目標制動力を出力し、モータECU44は、その目標制動力に基づいて回生ブレーキを制御するとともに、それの実行値、つまり、発生させている回生制動力をメインECU40に出力する。メインECU40では、目標制動力から回生制動力が減算され、その減算された値によって、車両に搭載される液圧ブレーキシステム100において発生すべき目標液圧制動力が決定される。メインECU40は、目標液圧制動力をブレーキECU48に出力し、ブレーキECU48は、通常時において、液圧ブレーキシステム100が発生させる液圧制動力が目標液圧制動力となるように制御するのである。
【0120】
≪液圧ブレーキシステムの構成≫
このように構成された本ハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステム100について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、「前方」は図2における左方、「後方」は図2における右方をそれぞれ表している。また、「前側」、「前端」、「前進」や、「後側」、「後端」、「後進」等も同様に表すものとされている。以下の説明において[ ]の文字は、センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
【0121】
図2に、車両が備える液圧ブレーキシステム100を、模式的に示す。液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液を加圧するためのシリンダ装置110を有している。車両の運転者は、シリンダ装置110に連結された操作装置112を操作することでシリンダ装置110を作動させことができ、シリンダ装置110は、自身の作動によってブレーキ液を加圧する。その加圧されたブレーキ液は、シリンダ装置110に接続されるアンチロック装置114を介して、各車輪に設けられたブレーキ装置116に供給される。ブレーキ装置116は、加圧されたブレーキ液の圧力(以下、「出力圧」と呼ぶ)に依拠して、車輪18の回転を制止するための力、すなわち、液圧制動力を発生させる。
【0122】
液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液の圧力を高圧にするための高圧源装置118を有している。その外部高圧源装置118は、増減圧装置120を介して、シリンダ装置110に接続されている。増減圧装置120は、外部高圧源装置118によって高圧とされたブレーキ液の圧力(以下、「高圧源圧」という場合がある)を、シリンダ装置10に入力すべき圧力に降圧する。つまり、増減圧装置120は、ブレーキECU48によって制御され、シリンダ装置110に入力される圧力(以下、「制御高圧源圧」という場合がある)を増減するように制御する。その増減圧装置120と、それを制御するブレーキECU48の一部分とによって、高圧源装置118からのブレーキ液の圧力を操作部材の操作に基づいて制御する高圧源圧制御装置が構成されているのである。また、液圧ブレーキシステム100は、ブレーキ液を大気圧下で貯留するリザーバ122を有している。リザーバ122は、シリンダ装置110、増減圧装置120、外部高圧源装置118の各々に接続されている。
【0123】
操作装置112は、上記操作部材としてのブレーキペダル150と、ブレーキペダル150に連結されるオペレーションロッド152とを含んで構成されている。ブレーキペダル150は、車体に回動可能に保持されている。オペレーションロッド120は、後端部においてブレーキペダル150に連結され、前端部においてシリンダ装置110に連結されている。また、操作装置112は、ブレーキペダル150の操作量を検出するための操作量センサ[SP]156と、操作力を検出するための操作力センサ[FP]158とを有している。操作量センサ156および操作力センサ158は、ブレーキECU48に接続されており、ブレーキECU48は、それらのセンサの検出値を基にして、目標制動力を決定する。
【0124】
ブレーキ装置116は、液通路200、202を介してシリンダ装置110に接続されている。それら液通路200、202は、シリンダ装置110によって出力圧に加圧されたブレーキ液をブレーキ装置116に供給するための液通路である。液通路202には出力圧センサ[PO]204が設けられている。詳しい説明は省略するが、各ブレーキ装置116は、ブレーキキャリパと、そのブレーキキャリパに取り付けられたホイールシリンダ(ブレーキシリンダ)およびブレーキパッドと、各車輪とともに回転するブレーキディスクとを含んで構成されている。液通路200、202は、アンチロック装置114を介して、各ブレーキ装置116のブレーキシリンダに接続されている。ちなみに、液通路200が、前輪側のブレーキ装置116FL,116FRに繋がるようにされており、また、液通路202が、後輪側のブレーキ装置116RL、116RRに繋がるようにされている。ブレーキシリンダは、シリンダ装置110によって加圧されたブレーキ液の出力圧に依拠して、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける。その押し付けによって発生する摩擦によって、各ブレーキ装置116では、車輪の回転を制止する液圧制動力が発生し、車両は制動されるのである。
【0125】
アンチロック装置114は、一般的な装置であり、簡単に説明すれば、各車輪に対応する4対の開閉弁を有している。各対の開閉弁のうちの1つは増圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、開弁状態とされており、また、もう1つは減圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、閉弁状態とされている。車輪がロックした場合に、増圧用開閉弁が、シリンダ装置110からブレーキ装置116へのブレーキ液の流れを遮断するとともに、減圧用開閉弁が、ブレーキ装置116からリザーバへのブレーキ液の流れを許容して、車輪のロックを解除するように構成されている。
【0126】
高圧源装置118は、リザーバ122から増減圧装置120に至る液通路に設けられている。その高圧源装置118は、ブレーキ液の液圧を増加させる液圧ポンプ300と、増圧されたブレーキ液が溜められるアキュムレータ302とを含んで構成されている。ちなみに、液圧ポンプ300はモータ304によって駆動される。また、高圧源装置118は、上述の高圧源圧を検出するための高圧源圧センサ[PH]306を有している。ブレーキECU48は、高圧源圧センサ306の検出値を監視しており、その検出値に基づいて、液圧ポンプ300は制御駆動される。この制御駆動によって、高圧源装置118は、常時、設定された圧力以上のブレーキ液を増減圧装置120に供給する。
【0127】
増減圧装置120は、制御高圧源圧を増加させる電磁式の増圧リニア弁250と、制御高圧源圧を低減させる電磁式の減圧リニア弁252とを含んで構成されている。増圧リニア弁250は、高圧源装置118からシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。一方、減圧リニア弁252は、リザーバ122からシリンダ装置110に至る液通路の途中に設けられている。なお、増圧リニア弁250および減圧リニア弁252のシリンダ装置110に接続される各々の液通路は、1つの液通路とされて、シリンダ装置110に接続されている。また、その液通路には、制御高圧源圧を検出するための制御高圧源圧センサ[PC]256が設けられている。ブレーキECU48は、制御高圧源圧センサ256の検出値に基づいて、増減圧装置120を制御する。
【0128】
上記増圧リニア弁250は、電流が供給されていない状態では、つまり、非励磁状態では、閉弁状態とされており、それに電流を供給することによって、つまり、励磁状態とすることで、その供給された電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、供給される電流が大きい程、開弁圧が高くなるように構成されている。一方、減圧リニア弁252は、電流が供給されていない状態では、開弁状態となり、通常時、つまり、当該システムへの電力の供給が可能である時には、設定された範囲における最大電流が供給されて閉弁状態とされ、供給される電流が減少させられることで、その電流に応じた開弁圧において開弁する。ちなみに、電流が小さくなるほど開弁圧が低くなるように構成されている。
【0129】
≪シリンダ装置の構成≫
図2に示すように、シリンダ装置110は、シリンダ装置110の筐体であるハウジング400と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン402および第2加圧ピストン404と、高圧源装置118から入力される圧力によって前進する中間ピストン406と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン408とを含んで構成されている。なお、図2は、シリンダ装置110が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。ちなみに、一般的なシリンダ装置がそうであるように、本シリンダ装置110も、内部にブレーキ液が収容されるいくつかの液室、それらの液室間,それらの液室と外部とを連通させるいくつかの連通路が形成されており、それらの液密を担保するため、構成部材間には、いくつかのシールが配設されている。それらのシールは一般的なものであり、明細書の記載の簡略化に配慮し、特に説明すべきものでない限り、それの説明は省略するものとする。
【0130】
ハウジング400は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材410、第2ハウジング部材412から構成されている。第1ハウジング部材410は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ420が形成されており、そのフランジ420において車体に固定される。第1ハウジング部材410は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部422、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部424に区分けされている。
【0131】
第2ハウジング部材412は、前方側に位置して外径の大きい前方大径部430、後方側に位置して外径の小さい後方小径部432とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材412は、前方大径部430の前端部が第1ハウジング部材410の前方小径部422と後方大径部424との段差面に接する状態で、その後方大径部424に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材410,第2ハウジング部材412は、第1ハウジング部材410の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環434によって、互いに締結されている。
【0132】
第1加圧ピストン402および第2加圧ピストン404は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材410の前方小径部422に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン402は、第2加圧ピストン404の後方に配設されている。第1加圧ピストン402と第2加圧ピストン404との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R1が区画形成されており、また、第2加圧ピストン404の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R2が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン402と第2加圧ピストン404とは、第1加圧ピストン402の後端部に立設された有頭ピン460と、第2加圧ピストン404の後端面に固設されたピン保持筒462とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R1内,第2加圧室R2内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)464、466が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第2加圧ピストン404は後方に向かって付勢されている。
【0133】
中間ピストン406は、前端部が塞がれて後端部が開口された有底円筒形状をなす本体部470と、その本体部470の後端部に設けられた鍔部472とを有する形状とされている。中間ピストン406は、第1加圧ピストン402の後方に配設され、本体部470の前方の部分が第1ハウジング部材410の前方小径部422の内周面の後部側に、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430の内周面に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。
【0134】
中間ピストン406の前方において、第1加圧ピストン402の後端部との間には、高圧源装置118からのブレーキ液の供給が可能とされている液室、つまり、高圧源装置118からの圧力の入力が可能とされている液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R3が区画形成されている。ちなみに、図2では、殆ど潰れた状態で示されている。また、ハウジング400の内部には、第2ハウジング部材412の内周面と中間ピストン406の本体部470の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、中間ピストン406の鍔部472の前端面と、第1ハウジング部材410の前方小径部422と後方大径部424との段差面とによって区画されることで、環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R4が形成されている。また、鍔部472の後方には、第2ハウジング部材412の前端部との間に、中間ピストン406の前進に伴って容積が増大するとともに、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R5が区画形成されている。ちなみに、図2では、殆ど潰れた状態で示されている。ちなみに、上記対向室R4は、中間ピストン406の鍔部472を挟んで第2入力室R5と対向している液室である。
【0135】
入力ピストン408は、前端部が開口して後方の部分が塞がった円筒形状をなしている。入力ピストン408は、ハウジング400の後端側から、第2ハウジング部材412の内周面に摺接する状態でハウジング400内に挿し込まれるとともに、中間ピストン406に挿し込まれており、中間ピストン406の内周面に摺接しつつ、中間ピストン406に対して進退可能とされている。このように構成された入力ピストン408および中間ピストン406の内部には、中間ピストン406と入力ピストン408との相対移動によって自身の容積が変化する液室(以下、「内部室」という場合がある)R6が区画形成されている。ちなみに、中間ピストン406の後退は、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430と後方小径部432との段差面に当接することで制限されている。
【0136】
内部室R6には、中間ピストン406の内底面と入力ピストン408の内底面との間に、2つの圧縮コイルスプリングである第1反力スプリング480および第2反力スプリング482が配設されている。第1反力スプリング480は、第2反力スプリング482の後方に直列に配設されており、鍔付ロッド形状の浮動座484が、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持されている。第1反力スプリング480は、それの前端部が浮動座484の後方側のシート面に支持され、後端部が入力ピストン408の後端部に支持されている。第2反力スプリング482は、それの前端部が中間ピストン406の後端部に支持され、後端部が浮動座484の前方側のシート面に支持されている。このように配設された第1反力スプリング480および第2反力スプリング482は、入力ピストン408と中間ピストン406とを、それらが互いに離間する方向に、つまり、内部室R6の容積が拡大する方向に付勢している。シリンダ装置110は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって構成される弾性力付与機構、つまり、それらのばね反力によって、入力ピストン408と中間ピストン406とが互いに接近する方向、つまり、内部室R6の容積が減少する向きの入力ピストン408と中間ピストン406との相対移動に対抗する弾性力を、入力ピストン408と中間ピストン406とに付与する機構を備えている。また、浮動座484の後端部には、緩衝ゴム486が嵌め込まれており、その緩衝ゴム486が入力ピストン408の後端面に当接することで、浮動座484と入力ピストン408の接近は、ある範囲に制限されている。
【0137】
入力ピストン408の後端部には、ブレーキペダル150に加えられた操作力を入力ピストン408に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン408を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン608の後端部は、第2ハウジング部材612の後方小径部632の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円形の支持板492が付設されており、この支持板492とハウジング400との間にはブーツ494が渡されており、シリンダ装置110の後部の防塵が図られている。
【0138】
第1加圧室R1は、開口が出力ポートとなる連通孔500を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン402に設けられた連通孔502および開口がドレインポートとなる連通孔504を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R2は、開口が出力ポートとなる連通孔506を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン404に設けられた連通孔508および開口がドレインポートとなる連通孔510を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0139】
第1加圧ピストン402は、第1ハウジング部材410の前方小径部422の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路512が形成されている。入力室R3は、その液通路512および開口が連結ポートとなる連通孔516を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔516は、外部連通路518を介して増減圧装置120に繋げられている。また、外部連通路518には、電磁式の第1入力室開閉弁520とチェック弁522が設けられている。また、外部連通路518には、入力室R3の圧力(以下、「入力圧」という場合がある)を検出するための圧力センサ[PI]524が設けられている。
【0140】
第1ハウジング部材410には、開口がドレインポートとなる連通孔526が設けられており、リザーバ122に繋げられている。開口が連結ポートとされている連通孔528は、第1ハウジング部材410の内部でその連通孔526に繋がれている。また、その連通孔528の連結ポートには、外部連通路530の一端部が接続されており、外部連通路530の他端部は、増減圧装置120の減圧リニア弁252に連結されている。
【0141】
対向室R4は、開口が連結ポートとなる連通孔532によって、外部に連通可能となっている。その連結ポートには、外部連通路534の一端部が連結されており、他端部は、外部連通路530に連結されている。つまり、外部連通路534は、リザーバ122へと連通されているのである。また、外部連通路534には、電磁式の対向室開閉弁536が設けられており、この対向室開閉弁536によって、外部連通路534が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置110は、外部連通路534および対向室開閉弁536を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。また、外部連通路534には、対向室R4のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁538も設けられている。
【0142】
中間ピストン406には、それの外周面に設けられた開口がピストン側ポートP1となる連通孔540が設けられている。連通孔540は内部室R6に繋がっており、連通孔540によって1つの連通路(以下、「第1連通路」という場合がある)が形成されている。また、中間ピストン406の外周面であって連通孔540の前後には、環状のシール542F、542Rが、比較的小さな間隔を置いて、それぞれ嵌め込まれている。また、第1ハウジング部材410の壁内に、連通路544が形成されており、この連通路544は、一端が連通孔526につながるとともに、他端が前方小径部422の後端部の内周面に開口している。この開口は、ハウジング側ポートP2とされている。これら連通孔526、連通孔544によって1つの連通路(以下、「第2連通路」という場合がある)が形成されている。
【0143】
なお、高圧源装置118から、増減圧装置120を介して高圧のブレーキ液が入力室R3および第2入力室R5に供給される場合であっても、中間ピストン406は前進・後退させられない。詳しく説明すると、入力室R3を区画する本体部470前端の受圧面積と、第2入力室R5を区画するの鍔部472の後端の受圧面積とが略等しくされており、入力室R3の圧力によって中間ピストン406を後退させる力と、第2入力室R5の圧力によって中間ピストン406を前進させる力とが均衡することによって、中間ピストン406が進退しないようになっている。
【0144】
≪シリンダ装置の作動≫
以下にシリンダ装置110の作動について説明するが、便宜上、通常時の作動を説明する前に、電気的失陥の場合、つまり、当該液圧ブレーキシステム100への電力供給が断たれた場合における作動を説明する。なお、失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、第1入力室開閉弁520は開弁状態となっており、入力室R3は、減圧リニア弁252、連通孔526、連通孔528、外部連通路530を介して、リザーバ122に連通されている。また、対向室開閉弁536も開弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。
【0145】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン408は前進を開始する。踏込操作開始時には、未だ、中間ピストン406が前進されていない状態であり、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2とは、シール部材542Fと542Rとの間において向かい合っている。つまり、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2とは、互いに連通されており、内部室R6とリザーバ122とが連通される内部室連通状態が実現されている。この状態で、入力ピストン408は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482を縮めつつ、中間ピストン406に対して前進し、その際、内部室R6の容積は、内部室R6のブレーキ液がリザーバ122へ流出されて減少する。
【0146】
入力ピストン408が前進をして間もなく、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482のばね反力によって中間ピストン406が前進させられる。中間ピストン406の前進によって、シール542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれ、内部室非連通状態が実現される。したがって、内部室R6の容積変化が禁止され、入力ピストン408と中間ピストン406との相対移動が禁止されて、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体となって前進させられる。このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1連通路、第2連通路、ピストン側ポートP1、ハウジング側ポートP2、シール部材542F、542Rを含んで構成された機構、つまり、内部室R6とリザーバ122とが連通する内部室連通状態と連通しない内部室非連通状態とを選択的に実現する第2連通状態切換機構、言い換えれば、内部室連通状態切換機構を備えているのである。
【0147】
中間ピストン406が前進することで、中間ピストン406は、第1加圧ピストン402に当接したままで第1加圧ピストン402を前進させる。また、内部室非連通状態が実現されているため、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされており、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン402に直接伝達されることになる。したがって、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン402を押すことができるのである。それにより、第1加圧ピストン402は前進し、第1加圧室R1とリザーバ122の伝達が断たれ、第1加圧室R1のブレーキ液は、ブレーキペダル150に加えられた操作力によって加圧されるのである。ちなみに、第1加圧室R1の加圧に伴って、第2加圧ピストン404も前進し、第1加圧室R1と同様、第2加圧室R2とリザーバ122との連通が断たれ、第2加圧室R2内のブレーキ液も加圧されることになる。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0148】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404、中間ピストン406は、リターンスプリング464、466によって、それぞれ、初期位置(図2に示す位置であり、鍔部472が第2ハウジング部材412の前方大径部430と後方小径部432との段差面に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン408は、オペレーションロッド152とともに、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置(図2に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材412の後方小径部432の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0149】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、対向室開閉弁536は励磁されて閉弁状態とされるため、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通しない対向室非連通状態が実現され、対向室R4が密閉されて中間ピストン406の前進が禁止されている。この状態で、ブレーキ操作が行われて入力ピストン408が前進されたとしても、中間ピストン406の前進が禁止されているため、第2連通状態切換機構によって、内部室R6とリザーバ122とが連通される内部室連通状態が維持される。通常時は、上述した失陥時の場合と異なり、入力ピストン408の中間ピストン406に対する前進は、許容される。入力ピストン408が前進する際、入力ピストン408には、弾性力付与機構、つまり、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482による弾性力が、抵抗力として作用する。その弾性力は、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになる。
【0150】
図3は、入力ピストン408の前進量、つまり、ブレーキぺダル150の操作量に対する操作反力の変化(以下、「操作反力勾配」という場合がある)を示すグラフである。言い換えれば、本シリンダ装置110の操作反力特性を示すグラフである。この図から解るように、ブレーキペダル150の操作量が増加するとそれにつれて操作反力は増加する。そして、設定量(以下、「反力勾配変化操作量」という場合がある)を超えてブレーキペダル150の操作量が増加すると、操作量の変化に対する操作反力の変化は大きくなる。すなわち、操作反力の増加勾配が大きくなるようにされているのである
【0151】
図3に示す特性を有する操作反力の変化は、ブレーキペダル150の操作量が反力勾配変化操作量を超えた場合に、つまり、入力ピストン408の前進量が設定量を超えた場合に、2つの反力スプリング480,482の一方である第1反力スプリング480による加圧力が増加しないようにされていることで、実現されている。本シリンダ装置110では、第1反力スプリング480のばね定数が第2反力スプリング482のばね定数より相当小さくされている。そのため、比較的操作量が小さい範囲では、操作量の変化に対する操作反力の変化は相当に小さくなっている。詳しく説明すると、比較的操作量の小さい範囲では、第1反力スプリング480,第2反力スプリング482はともに圧縮変形するようにされている。それに対して、操作量が反力勾配変化操作量を超えると、緩衝ゴム486が入力ピストン408の後端部に当接して、第1反力スプリング480が弾性変形しなくなり、第2反力スプリング482のみが弾性変形する。このような機構により、設定量を超えたブレーキペダル150の操作を行った場合に、操作反力の増加勾配が大きくなるのである。このような操作反力特性により、ブレーキペダル150の操作感は良好なものとされる。
【0152】
なお、ブレーキペダル150をさらに操作した場合、浮動座484の前端部が、中間ピストン406の前端面に当接し、第2反力スプリング482が弾性変形しなくなる。つまり、シリンダ装置110には、入力ピストン408の前進が禁止される設定前進量が設けられており、ブレーキの操作には、その設定前進量によって決められる操作限界が設けられている。このように、シリンダ装置110は、第1反力スプリング480、第2反力スプリング482、浮動座484、緩衝ゴム486を含んで構成される機構、つまり、弾性力に抗する状態での入力ピストン408の前進が設定前進量だけ許容される入力ピストン前進許容機構を有している。
【0153】
先に説明したように、本車両では、液圧ブレーキシステム100は、目標制動力のうちの回生制動力を超える分だけ液圧制動力を発生させればよい。極端に言えば、目標制動力を回生制動力で賄える限り、液圧ブレーキシステム100による液圧制動力を必要としない。本シリンダ装置110では、通常時において、発生させる液圧制動力に依存せずに、ブレーキペダル150の操作量に応じた操作反力が発生する構造とされている。極端に言えば、本シリンダ装置110は、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404によるブレーキ液の加圧を行わない状態でのブレーキペダル150の操作を許容する機能を有している。つまり、本シリンダ装置110は、ハイブリッド車両に好適なストロークシミュレータを有しているのである。
【0154】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404によって第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R3に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された制御高圧源圧を入力室R3に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダルの操作量は、概して、図3における最大回生時液圧制動開始操作量となる。液圧ブレーキシステム100では、この最大回生時液圧制動開始操作量は、前述の反力勾配変化操作量よりもやや大きく設定されている。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R3に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0155】
入力室R3に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。それに従って、第2加圧ピストン404によって第2加圧室R2のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置110による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R3に入力される。
【0156】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404は、リターンスプリング464,466によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン408は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置に戻される。
【0157】
なお、通常時において、ブレーキフェード時、急ブレーキ時等、大きな制動力を必要とする場合も存在する。このとき(以下「大制動力必要時」という場合がある)、本液圧ブレーキシステム100では、上記高圧源圧依存制動状態において発生可能な最大の制動力(以下、「高圧源依存最大制動力」という場合がある)よりも大きな制動力を発生可能とされている。言い換えれば、高圧源圧依存制動状態において高圧源装置118による高圧源圧が第1入力室R3に入力された状態で得られる制動力よりも大きな制動力を発生させることが可能とされている。以下に、大制動力必要時の作動について説明する。
【0158】
大制動力必要時には、第1入力室開閉弁520が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁536が開弁状態とされる。つまり、第1入力室R3が密閉状態とさせられるとともに、第1連通状態切換機構によって対向室連通状態が実現されて対向室R4とリザーバ122とが連通させられる。それによって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。この中間ピストン406の前進により、第1入力室R3内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧可能とされているのである。この加圧によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が第1入力室R3に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得られることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1入力室開閉弁520と対向室開閉弁536とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0159】
≪制動状態切換の具体的方法≫
図4は、通常時において、運転者によるブレーキペダル150の操作力Fの変化に対する出力圧POの変化を模式的に示したグラフである。説明を簡単にするため、以下の説明は、回生制動力が存在しないことを前提とし、また、目標液圧制動力PTARが運転者操作力Fに応じて決定され、その目標制動力PTARを基に制御高圧源圧PCが決定されることを前提として行う。図4のグラフも、その前提に従ったものである。なお、グラフの中の一点鎖線は、高圧源圧依存制動状態における理論的な特性を示している。
【0160】
本液圧ブレーキシステム100では、第1入力室R3の圧力である入力圧PIによって第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。一方、制御高圧源圧PCは操作力Fに応じて決定され、その制御高圧源圧PCが第1入力室R3に入力されるため、高圧源圧依存制動状態、つまり、高圧源圧依存加圧状態では、出力圧POは、図4のグラフに示すように、操作力Fに概ね比例する。また、高圧源圧依存加圧状態では、入力圧PIは制御高圧源圧PCに等しく、制御高圧源圧PCが高圧源圧PHより高くなることはない。そのため、制御高圧源圧PCが高圧源圧PH と等しくなった場合に、出力圧POが頭打ちとなり、液圧制動力も頭打ちとなる。このときの制動力が高圧源依存最大制動力である。
【0161】
本液圧ブレーキシステム100では、高圧源圧依存制動状態においては、入力圧PIが、制御高圧源圧PCと等しく、また、操作力Fを指標する操作力指標パラメータであると考えることができるため、入力圧PIが高圧源圧PHに近づいた際に、制動力の発生状態を、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態へと移行させる。具体的に説明すれば、制動力発生状態の切換を滑らかに行うためのマージン圧αHが設定されており、高圧源圧PHと入力圧PIとの差が、設定差としてのマージン圧αHを超えて小さくなった場合に、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0162】
操作力・高圧源圧依存制動状態では、先に説明したように、第1入力室R3は密閉され、第2入力室R5に入力された制御高圧源圧PCと操作力Fとによって、中間ピストン406が前進させられ、その前進に伴って第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。このとき、制御高圧源圧PCが高圧源圧PHとなった後は、図4のグラフに示すように、操作力Fの増加に応じて、出力圧POが増加し、液圧制動力が増加する。なお、操作力・高圧源圧依存制動状態において検出される入力圧PI、すなわち、第1入力室R3内の圧力は、出力圧POの増加に応じて増加する。
【0163】
操作力・高圧源圧依存制動状態において操作力Fが減少した場合には、その操作力Fの減少に応じて出力圧POが減少する。このとき、中間ピストン406は後退する。中間ピストン406が、上述の初期位置に位置した後は、中間ピストン406の後退が禁止されることになる。第1入力室R3が密閉されているため、中間ピストン406の後退が禁止された後は、入力圧PIが一定となり、出力圧POが一定となる(図4に示す出力圧定常状態)。つまり、液圧制動力は減少しないこととなる。
【0164】
上記のことに鑑み、本液圧ブレーキシステム100では、中間ピストン406が、初期位置、すなわち、操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換わる前の位置に復帰したことを条件に、操作力・高圧源圧依存制動状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。先に説明したように操作力Fに応じて目標油圧制動力PTARが決定されるため、具体的には、目標油圧制動力PTARの変化速度dPTARに対する入力圧PIの変化速度dPIの割合が、設定閾値αTHより小さいことを条件に、切換動作が行われる。なお、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換りの場合と同程度の出力圧POにおいて切換が行われるように、入力圧PIが、高圧源圧PHよりαC(≒αH)だけ低い圧力よりも高いことをも条件とし、それらの条件が設定時間t(例えば、30msec)継続した場合に、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0165】
ブレーキECU48は、図5にフローチャート示す制動力発生状態切換プログラムを比較的短い周期(例えば、数msec〜数十msec)で繰り返し実行しており、制動力発生状態の切換は、そのプログラムに従う処理に基づいて行われる。そのプログラムに従う処理では、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、操作力Fの変化速度dF/dTに基づいて、ブレーキペダル150が、操作力Fが増加方向に操作されているか否か、つまり、踏込操作中であるか否かが判定される。踏込操作されている場合には、S2において、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるための上記条件を充足しているか否かが判断される。その条件を充足している場合には、S3において、操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、第1入力室開閉弁520は閉弁状態とされ、対向室開閉弁536は開弁状態とされる。また、S3では、制動力発生状態を判定するためのフラグFLが、操作力・高圧源圧依存制動状態を示す“1”とされる。一方、上記条件を充足していない場合は、S4において、高圧源圧依存制動状態を維持すべく、第1入力室開閉弁520は開弁状態とされ、対向室開閉弁536が閉弁状態とされる。また、上記フラグFLが、高圧源圧依存制動状態を示す“0”とされる。
【0166】
S1においてブレーキペダル150の操作が踏込操作中でないと判定された場合は、S5において、今の制動力発生状態が判定され、高圧源圧依存制動状態であれば、その状態が維持され、操作力・高圧源圧依存制動状態であれば、S6において、その状態から高圧源圧依存制動状態への切換の条件を充足しているか否かが判断される。その条件が充足された場合には、S4おいて、高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、第1入力室開閉弁520は開弁状態とされ、対向室開閉弁536が閉弁状態とされ、それに伴って、フラグFLが、“0”とされる。上記条件を充足していない場合には、現在の状態が維持される。
【0167】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム100は、高圧源圧依存加圧状態における入力圧PI、つまり、制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の高圧源圧PHにある程度近づいた場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換える。したがって、シリンダ装置の作動状態を、制御高圧源圧PCがその時点での限界となる付近で、効果的に行うことが可能とされている。
【0168】
本液圧ブレーキシステム100が有するシリンダ装置110は、図2では理解し難いが、第1入力室R3を区画する中間ピストン406の受圧面積が、第1入力室R3を区画する第1加圧ピストン402の受圧面積に比べて大きくされている。言い換えれば、中間ピストン406の前端の面積が、第1加圧ピストン402の後端の面積に比べて大きくされている。そのため、操作力・高圧源圧依存加圧状態においてブレーキペダル150を操作した際、中間ピストン406の前進量に対して第1加圧ピストン402の前進量が大きくなっている。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキペダル150の操作量の変化に対する出力圧POの変化が比較的大きくされており、より大きな操作ストロークが確保されている。
【0169】
また、シリンダ装置110は、入力ピストン408と中間ピストン406とが嵌め合わされた構造となっているため、入力ピストン408と係合させる必要のある高圧シールが少なくなっている。具体的には、図2に示すシール540とシール542の2つだけが入力ピストン408と係合する高圧シールである。そのため、高圧源圧依存加圧状態において、入力ピストン408の移動に対する摩擦抵抗が比較的少なく、摩擦抵抗がブレーキペダル150の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感にに与える影響が小さくされている。
【0170】
さらに、本シリンダ装置110では、ブレーキペダル150が操作されていない状態において、第1加圧ピストン402と中間ピストン406とが当接する程に第1入力室R3の容積が小さくされている、したがって、失陥時において、ブレーキペダル150の操作が開始された直後から、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、失陥時において、ブレーキペダル150の操作範囲、つまり、操作ストロークが充分に確保されているのである。
【0171】
また、本シリンダ装置110では、内部室非連通状態を実現させる機構として、上述の機構を採用している。つまり、中間ピストン406に2つのシール部材542F、542Rを嵌め、その間にピストン側ポートP1を設けるとともに、中間ピストン406の移動に伴って、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれるよう構成されている。このような構成によって、中間ピストン406が、それの前進範囲のいずれの位置に位置している場合でも、第1ハウジング部材410の内周面と2つのシール部材542F、542Rとによって区画される小さな空間によって、内部室R6が密閉される。したがって、シリンダ装置110の中間ピストン406の移動方向における寸法が小さくされており、コンパクト化が図られている。
【0172】
さらに、本シリンダ装置110では、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482が、入力ピストン408と中間ピストン406とによって区画形成される内部室R6内に配設されている。したがって、シリンダ装置110内にストロークシミュレータが組み込まれており、しかも、内部室R6というデッドスペースに、ストロークシミュレータが組み込まれているため、コンパクトなシリンダ装置が実現されている。
【0173】
≪変形例1≫
図6に示す液圧ブレーキシステム560は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100におけるシリンダ装置110に代えて、シリンダ装置570を採用している。シリンダ装置570は、大まかには第1実施例のシリンダ装置110と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0174】
シリンダ装置570では、第1実施例のシリンダ装置110における第1入力室開閉弁520および対向室開閉弁536に代えて、機械式の弁装置572が採用されている。この弁装置572は、外部連通路518を開閉する第1入力室開閉弁520と外部連通路534を開閉する対向室開閉弁536とが一体化されたものと考えることができる。なお、弁装置572は、アンチロック装置114からリザーバ122の連通路530の一部分をも構成している。また、外部連通路534から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁574が設けられている。
【0175】
弁装置572は、内部が中空とされた円筒形状のハウジング580と、そのハウジング580の内部に収容される円柱形状のピストン582と、ピストン582を後退させる方向に付勢する付勢スプリング584とを含んで構成されている。ハウジング580は、内径の異なる3つの部分から構成されており、前方部における内径が小さく、中間部における内径が大きく、後方部における内径が中間部より若干小さくなっている。ピストン582は、外径の異なる3つの部分から構成されており、それぞれの部分が、ハウジング580の内周に摺接するように形成されている。つまり、ピストン582は、前方部の外径が小さく、中間部の外径が大きく、後方部の外径が中間部より若干小さくされており、各々の部位が、ハウジング580の前方部、中間部、後方部の各内周に摺接する。このように形成されたピストン582がハウジング580に収容された状態で、ハウジング580の中間部の内周面と、ピストン582の前方部の外周面との間には、液室が形成されており、付勢スプリング584が収容されている。付勢スプリング584の前端部はハウジング580の前方部と中間部との段差面に当接し、後端部はピストン582の前方部と後方部との段差面に当接してピストン582を後方に付勢している。また、ピストン582の前端部と後端部は、それぞれ、突起を有している。それらの突起は、弁座として機能する後述の連通孔を塞ぐための弁子として、機能する。また、ピストン582の内部には、自身の前端部と中間部とを連通する連通路が設けられている。
【0176】
ハウジング580の前端には、ピストン582の前端部とハウジング580の内周面とによって液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔586および連通孔588によって、外部に連通可能とされており、それらの連結ポートの各々は、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、これらの連通孔とその液室とを含んで構成されている。
【0177】
ハウジング580の中間には、内部に付勢スプリング584が配設された液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられてそれぞれの開口がドレインポートとなる連通孔590および連通孔592によって、外部に連通可能とされており、それらドレインポートの各々は、外部連通路530に接続されている。つまり、外部連通路530は、これらの連通孔と上記液室とを含んで構成されており、その液室は、常時、大気圧とされている。
【0178】
また、ハウジング580の後端には、ピストン582の後端とハウジング580とによって液室が区画形成されている。この液室は、ハウジング580に設けられて開口が連結ポートとなる連通孔594によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートは、外部連通路534に接続されている。また、この液室は、ピストン582の内部の連通路を介して、上述の中間部に設けられた液室を介して、外部連通路530に繋がれている。このように、外部連通路534は、これら連通孔、連通路を含んで構成されており、弁装置572を介して外部連通路530に接続されている。
【0179】
さらに、ピストン582の後方部とハウジング580の中間部との間には、各々の外径と内径とが若干異なるために、ある程度の断面積を有する液室が形成されている。また、その液室には、開口が連結ポートとなる連通孔596によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートには、外部連通路518から分岐する連通路が接続されている。つまり、この液室には、常時、制御高圧源圧が導入される。
【0180】
このように構成された液圧ブレーキシステム560において、電気的失陥時におけるシリンダ装置570の作動について説明する。失陥時においては、弁装置572のピストン582は、付勢スプリング584のばね反力によって、後方側に位置されている。ピストン582この位置に位置する状態では、連通孔586は、ピストン582の前端部に形成される突起によって塞がれておらず、連通孔594は、ピストン582の後端部に形成される突起によって塞がれている。つまり、外部連通路518は開通していることで、第1入力室R3はリザーバ122に連通されており、外部連通路534が遮断されていることで、対向室R4とリザーバ122との連通が断たれている。
【0181】
ブレーキペダル150が操作されていない場合には、リリーフ弁574は閉弁されている。つまり、対向室非連通状態が実現されており、対向室R4は密閉されている。運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン408は前進を開始し、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482のばね反力が増加する。これらのばね反力によって、中間ピストン406には前方への力が作用し、中間ピストン406の鍔部472によって、対向室R4におけるブレーキ液が加圧される。その加圧された対向室R4のブレーキ液の圧力がリリーフ弁574の開弁圧に達すると、リリーフ弁574が開弁し、対向室R4のブレーキ液がリザーバ122に流出するとともに、中間ピストン406が前進する。このような構造を有する本シリンダ装置570は、リリーフ弁574を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えている。また、第1連通状態切換機構は、リリーフ弁574の設定圧に依拠して対向室連通状態が実現される圧力依拠連通機構と考えることができる。
【0182】
上記リリーフ弁574の開弁圧は、第1入力室R3への入力圧が大気圧となっている状態において、ブレーキペダル150の操作量が設定操作量となった場合における対向室R4の圧力に設定されている。その設定操作量は、図3における最大回生時液圧制動開始操作量を超えて設定されている。したがって、本シリンダ装置570では、失陥時に、その設定操作量を超えてブレーキペダル150が操作された場合に、リリーフ弁574が開弁して、操作力依拠加圧状態が実現される。
【0183】
リリーフ弁574の開弁によってのみ、対向室連通状態が実現されると仮定した場合、操作力によって中間ピストン406を前進させようとすると、対向室R4にリリーフ弁574の開弁圧に相当する残圧が存在するため、その残圧に応じた操作反力を受けた状態での操作が必要となる。このことは、失陥時において、操作力が、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404による加圧以外に利用されるといったロスを生じさせる。そのことに鑑み、本シリンダ装置570では、中間ピストン406が設定量前進した場合に、つまり、対向室R4の容積が設定容積となった場合に、対向室連通状態を実現するための機構、すなわち、容積依拠連通機構が設けられている。
【0184】
上記容積依拠連通機構について具体的に説明すれば、以下のようである。中間ピストン406の前進によって、シール部材542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、ピストン側ポートP1とハウジング側ポートP2との連通が断たれて内部室非連通状態が実現されるのと同時に、対向室R4は、ハウジング側ポートP2を有する連通路544、つまり、第2連通路に、中間ピストン406と第1ハウジング部材410との間に形成される隙間を介して連通される。言い換えれば、中間ピストン406が、ハウジング側ポートP2およびシール部材542Rの各々の位置によって設定される距離だけ前進し、対向室R4の容積がその距離に応じた設定容積より小さくなれば、対向室R4がリザーバ122に連通させられるのである。このように構成された容積依拠連通機構によって実現された対向室連通状態では、対向室R4は大気圧とされるため、対向室R4の圧力による操作反力は発生せず、以降の操作における操作力は、ロスの少ない状態で、第1加圧ピストン402,第2加圧ピストン404による加圧に利用されることになる。
【0185】
通常時においては、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力される。つまり、ピストン582は後方側に位置しているため、外部連通路518において、弁装置572は開弁されており、第1入力室R3に高圧源装置118からの圧力が入力されるのである。圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0186】
大制動力必要時において、操作量が増加し、制御高圧源圧が高圧源圧に近づくと、弁装置572において、連通孔596を介して外部連通路518に連通され、高圧源圧とされている空間の圧力が高くなる。弁装置572は、この制御高圧源圧がパイロット圧となって作動するように構成されている。つまり、ピストン582は、制御高圧源圧が比較的高い状態において、付勢スプリング583の反発力に抗して前方側に移動させられるのである。したがって、ピストン582の前端部の突起によって、連通孔586が塞がれ、外部連通路518は遮断される。つまり、第1入力室R3は密閉状態とされる。また、連通孔588は、ピストン582の後端部の突起によって塞がれなくなるため、外部連通路534は開通状態となっている。つまり、対向室R4とリザーバ122とが、リリーフ弁574に依存せずに連通され、中間ピストン406の前進が許容される。したがって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。この中間ピストン406の前進により、第1入力室R3内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して中間ピストン406を前進させることができ、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置570は、弁装置572を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0187】
≪変形例2≫
図7に示す液圧ブレーキシステム600は、第1変形例の液圧ブレーキシステム560におけるシリンダ装置570に代えて、シリンダ装置610を採用している。シリンダ装置610は、大まかには第1変形例のシリンダ装置570と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0188】
シリンダ装置610では、第1変形例のシリンダ装置610におけるリリーフ弁574に代えて、電磁式の開閉弁612およびチェック弁614が採用されている。また、それらの弁612,614が設けられている外部連通路534から分岐する液通路は、外部連通路530に繋げられている。このような構造を有する本シリンダ装置610は、開閉弁612を含んで構成された機構、つまり、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えている。
【0189】
まず、本液圧ブレーキシステム600における電気的失陥時のシリンダ装置610の作動について説明する。失陥時には、開閉弁612は非励磁であって開弁状態となっている。つまり、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。この場合、シリンダ装置610は、第1実施例のシリンダ装置110と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の踏込操作に伴って、第2連通状態切換機構が内部室連通状態から内部室非連通状態へと移行することで、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされる。そのため、液圧ブレーキシステム600では、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現される。
【0190】
通常時においては、開閉弁612は励磁されて閉弁状態とされている。つまり、第1連通状態切換機構によって、対向室R4とリザーバ122とが非連通とされる対向室非連通状態が実現されている。この場合、シリンダ装置610は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力され、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0191】
大制動力必要時においては、弁装置572において、ピストン582が前方側に移動させられる。つまり、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となり、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置610は、弁装置572および開閉弁612を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0192】
≪変形例3≫
図8に示す液圧ブレーキシステム640は、第1変形例の液圧ブレーキシステム560において採用されているシリンダ装置570に代えて、シリンダ装置650を採用している。シリンダ装置650は、大まかには第1変形例のシリンダ装置570と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第1実施例と異なる構成および作動について説明する。また、本液圧ブレーキシステム640では、第1変形例のシステム560で採用されている弁装置572に代えて、差圧式の弁装置652が採用されている。この弁装置652は、弁装置572と同様、実施例の液圧ブレーキシステム100において採用されている2つの開閉弁、つまり、外部連通路518を開閉する第1入力室開閉弁520と外部連通路534を開閉する対向室開閉弁536とが一体化されたものと考えることができる。さらに、外部連通路534から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁654が設けられている。
【0193】
弁装置652は、内部が中空とされた円筒形状のハウジング660と、そのハウジング660の内部に収容される円柱形状のピストン662と、ピストン662を後退させる方向に付勢する付勢スプリング664とを含んで構成されている。ハウジング660は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材666、第2ハウジング部材668から構成されている。
【0194】
第1ハウジング部材666は、前端部が閉塞された概して円筒状を有している。第1ハウジング部材666は、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部670、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部672、それら前方小径部670と後方大径部672との中間に位置してそれらの内径の中間の内径を有する中間部674に区分けされている。第2ハウジング部材668は、前端が開口して後端が塞がれている円筒形状をなしている。第2ハウジング部材668は、前端面が第1ハウジング部材666の中間部674と後方大径部672との段差面に当接する状態で、その後方大径部672に嵌め込まれている。
【0195】
ピストン662は、外径の異なる3つの部分から構成されており、それぞれの部分が、ハウジング660の内周に摺接するように形成されている。詳しく説明すると、ピストン582は、前方部の外径が小さく、中間部の外径が大きく、後方部の外径が小さくされており、前方部が第1ハウジング部材666の前方小径部670、中間部が第1ハウジング部材666の中間部674、後方部が第2ハウジング部材668の各内周に摺接する。このように形成されたピストン662がハウジング660に収容された状態で、第1ハウジング部材666の中間部674の内周面と、ピストン662の前方部の外周面との間には、空間が形成されており、付勢スプリング664が収容されている。付勢スプリング664の前端部は第1ハウジング部材666の前方部と中間部との段差面に当接し、後端部はピストン662の前方部と中間部との段差面に当接してピストン662を後方に付勢している。また、ピストン662の前端部と後端部には、それぞれ、突起が設けられている。それらの突起は、弁座として機能する後述の連通孔を塞ぐための弁子として機能する。また、ピストン662の内部には、自身の中間部と後方部とを連通する連通路が設けられている。
【0196】
ハウジング660の前端には、ピストン662の前端部と第1ハウジング部材666の内周面とによって液室が区画形成されている。この液室は、第1ハウジング部材666に設けられて、それぞれの開口が連結ポートとなる連通孔676および連通孔678によって、外部に連通可能とされており、それら連結ポートの各々は、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、これらの連通孔と液室とを含んで構成されている。
【0197】
ハウジング660の中間部には、付勢スプリング664が配設された液室が区画形成されている。この液室は、第1ハウジング部材666に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔680によって、外部に連通可能とされている。この連結ポートには、一端が外部増圧源圧装置118に連結されている外部連通路682の他端が連結されている。したがって、この液室は、常時、高圧源圧とされている。
【0198】
また、ピストン582の中間部と後方部との段差面と、第2ハウジング部材668の前端面とによって形成される液室には、開口が連結ポートとなる連通孔684によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートには、外部連通路518から分岐する連通路が接続されている。したがって、この液室は、常時、制御高圧源圧とされている。
【0199】
さらに、ハウジング660の後端には、ピストン662の後端とハウジング660とによって液室が区画形成されている。この空間は、第1ハウジング部材666に設けられて、開口が連結ポートとなる連通孔686によって、外部に連通可能とされており、この連結ポートは、外部連通路534に接続されている。
【0200】
また、第1ハウジング部材666の後方大径部672の内周面と、第2ハウジング部材668の外周面との間には、各々の内径と外径とが若干異なるために、ある程度の断面積を有する液室が区画形成されている。また、その液室には、それぞれの開口がドレインポートとなる連通孔688と連通孔690とによって、外部に連通可能とされており、それらドレインポートの各々は、外部連通路530に接続されている。つまり、外部連通路530は、これらの連通孔と上記液室とを含んで構成されており、その液室は、常時、大気圧とされている。また、第2ハウジング部材668には、外部連通路530と外部連通路534とを連通することが可能とされている連通孔692が設けられている。
【0201】
失陥時においては、ピストン662は、付勢スプリング664のばね反力によって、後方側に位置されており、連通孔676は、ピストン662の前端部に形成される突起によって塞がれていないが、連通孔686は、ピストン662の後端部に形成される突起によって塞がれている。つまり、外部連通路518は開通状態とされて、第1入力室R3はリザーバ122に連通されており、外部連通路534は遮断されて、対向室R4とリザーバ122との連通は断たれている。
【0202】
失陥時において、シリンダ装置650は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をすることとなる。つまり、ブレーキペダル150の踏込操作に伴って、対向室R4のブレーキ液の圧力によって、リリーフ弁654が開弁し、対向室R4とリザーバ122との連通状態が、対向室非連通状態から対向室連通状態へと移行する。さらに、シール部材542Rがハウジング側ポートP2を通過すると、内部室非連通状態が実現されると同時に、容積依拠連通機構によって対向室連通状態が実現される。そのため、液圧ブレーキシステム640では、入力ピストン408と中間ピストン406とが一体とされ、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R1,第2加圧室R2のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現される。
【0203】
通常時においても、シリンダ装置650は、第1変形例のシリンダ装置570と同様の作動をする。つまり、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、第1入力室R3に、高圧源装置118からの圧力が入力され、その圧力によって第1加圧ピストン402は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R1のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン408の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R1,第2加圧室R2におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0204】
大制動力必要時において、操作量が増加し、制御高圧源圧が高くなると、制御高圧源圧と高圧源圧との差圧が小さくなる。ピストン662において、それの中間部の前面には高圧源圧が作用しており、中間部の後面と前端部とには制御高圧源圧が作用している。弁装置652は、高圧源圧と制御高圧源圧との両方がパイロット圧として導入され、それらパイロット圧の差圧によって作動するように構成されている。つまり、ピストン662は、差圧が小さい場合には、後方へと移動され、差圧が大きい場合には、前方へと移動されるのである。したがって、対向室R4とリザーバ122とが、リリーフ弁654に依存せずに連通され、中間ピストン406の前進が許容される。したがって、第2入力室R5に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、中間ピストン406を前進させることが可能となる。つまり、大制動力発生時には、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して中間ピストン406を前進させることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、このような構造を有する本シリンダ装置650は、弁装置652を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0205】
本液圧ブレーキシステム640における弁装置652によれば、制御高圧源圧の絶対圧に依存せず、高圧源圧と制御高圧源圧との相対圧によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とが選択的に実現される。そのため、本液圧ブレーキシステム640は、制御高圧源圧がその時点での限界となる付近で、確実に、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われるようになっている。
【0206】
≪その他の変形例≫
上記第1実施例の液圧ブレーキシステム100では、入力圧PIすなわち制御高圧源圧PCと高圧源圧PH との差が設定差となった場合に高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われるようにされている。そのような切換条件に代え、制御高圧源圧PC(入力圧PI)または出力圧POが設定圧を超えた場合に上記切換が行われるようしてもよい。また、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。その場合、操作量センサ156によって検出されたブレーキペダル150の操作量に変化がないにも拘わらず、操作力センサによって検出された操作力にある程度の変化がある場合に、上記切換を行うようにすればよい。この条件基づいて切換を行えば、ブレーキ操作の操作感が良好なものとなる。なお、変形例の液圧ブレーキシステム560,600,640においても、出力圧POがパイロット圧として導入されその出力圧POに基づいて上記切換が行われる弁装置を採用可能である。
【実施例2】
【0207】
図9に、第2実施例の液圧ブレーキシステム700を示す。この液圧ブレーキシステム700は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100において採用されているシリンダ装置110に代えて、シリンダ装置710を採用している。この液圧ブレーキシステム700に関しては、第1実施例と異なる構成および作動についてのみ説明する。
【0208】
≪シリンダ装置の構成≫
シリンダ装置710は、シリンダ装置710の筐体であるハウジング720と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン722および第2加圧ピストン724と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン726とを含んで構成されている。なお、図9は、シリンダ装置710が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0209】
ハウジング720は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材730、第2ハウジング部材732から構成されている。第1ハウジング部材730は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ740が形成されており、そのフランジ740において車体に固定される。第1ハウジング部材730は、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部742、後方側に位置して内径の大きい後方大径部744に区分けされている。
【0210】
第2ハウジング部材732は、前方側に位置して内径の大きい前方大径部750、後方側に位置して内径の小さい後方小径部752とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材732は、前方大径部750の前端部が第1ハウジング部材730の前方小径部742と後方大径部744との段差面に接する状態で、その後方大径部744に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材730,第2ハウジング部材732は、第1ハウジング部材730の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環754によって、互いに締結されている。
【0211】
第2加圧ピストン724は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材730の前方小径部742に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン722は、円筒形状をなす本体部760と、その本体部760の後端部に設けられた鍔部762とを有する形状とされている。第1加圧ピストン722は、第2加圧ピストン724の後方に配設され、本体部760の前方の部分が第1ハウジング部材730の前方小径部742の内周面の後部側に、鍔部762が第2ハウジング部材732の前方大径部750の内周面に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。また、第1加圧ピストン722の本体部760の内部は、前後方向における中間位置に設けられた仕切壁部764によって、2つの部分に区画されている。つまり、第1加圧ピストン722は、前端,後端にそれぞれ開口する2つの有底穴を有する形状とされている。
【0212】
第1加圧ピストン722と第2加圧ピストン724との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R11が区画形成されており、また、第2加圧ピストン724の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R12が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン722と第2加圧ピストン724とは、第1加圧ピストン722の仕切壁部764に螺着立設された有頭ピン770と、第2加圧ピストン724の後端面に固設されたピン保持筒772とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R11内,第2加圧室R12内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)774、776が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724はそれらが互いに離間する方向にされるとともに、第2加圧ピストン724は後方に向かって付勢されている。
【0213】
一方、第1加圧ピストン722の後方、詳しくは、第1加圧ピストン722の鍔部762の後方には、第2ハウジング部材732の後端部との間に、外部高圧源装置118からのブレーキ液が供給される液室、つまり、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R13が区画形成されている。ちなみに、図2では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、ハウジング720の内部には、第2ハウジング部材732の内周面と第1加圧ピストン722の本体部760の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、第1加圧ピストン722の鍔部762の前端面と、第1ハウジング部材730の前方小径部742と後方大径部744との段差面とによって区画されることで、環状の液室が形成されている。この液室は、第1加圧ピストン722の鍔部762を挟んで入力室R13と対向する対向室R14とされている。
【0214】
入力ピストン726は、前端部が開口されて後端部が塞がれている円筒形状の本体部780と、入力ピストン726の前端部材であって、本体部780に対して突出・引込可能とされて有底円筒状をなす補助ピストン782と、補助ピストン782を支持する第1反力スプリング784と、第1反力スプリング784の後方に直列に配設される第2反力スプリング786と、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持される鍔付ロッド形状の浮動座788とを含んで構成されている。ちなみに、第1反力スプリング784,第2反力スプリング786は、ともに圧縮コイルスプリングである。入力ピストン726は、ハウジング720の後端側から、第2ハウジング部材732の後方小径部752の内周面に摺接する状態でハウジング400内に挿し込まれるとともに、第1加圧ピストン722に、それの内周面に摺接する状態で挿し込まれており、入力ピストン726の前方には、第1加圧ピストン722との間に液室(以下「ピストン間室」という場合がある)R15が区画形成されている。また、入力ピストン726の内部に区画形成された液室(以下、「内部室」と言う場合がある)R16は、常時、大気圧とされている。
【0215】
第1反力スプリング784は、それの前端部が補助ピストン782の外筒部材680の前端部に支持され、後端部が浮動座788の前方側のシート面に支持されている。また、第2反力スプリング786は、それの後端部が入力ピストン726の本体部780の後端部に支持され、後端部が浮動座788の後方側のシート面に支持されている。したがって、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786は、補助ピストン782を、入力ピストン726の本体部780から突出する方向に付勢しており、補助ピストン782を弾性的に支持している。ちなみに、補助ピストン782は、それの外筒部材680の後端の外周部に設けられた被係止環部が、入力ピストン726の本体部780の前端の内周部に設けられた段差に係止されることで、本体部780からある程度以上前方に突出することが制限されている。また、浮動座788の前端部には、緩衝ゴム790が嵌め込まれており、その緩衝ゴム790が補助ピストン782の内筒部材682の後端面に当接することで、補助ピストン782と浮動座788との接近はある範囲に制限されている。
【0216】
入力ピストン726の後端部には、ブレーキペダル150の操作力を入力ピストン726に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン726を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン726の後端部は、第2ハウジング部材732の後方小径部752の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円板状のスプリングシート792が付設されており、このスプリングシート792と第2ハウジング部材732との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)794が配設されており、このリターンスプリング794によって、オペレーションロッド152は後方に向かって付勢されている。なお、スプリングシート792とハウジング720との間にはブーツ794が渡されており、シリンダ装置710の後部の防塵が図られている。
【0217】
第1加圧室R11は、開口が出力ポートとなる連通孔800を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン722に設けられた連通孔802および開口がドレインポートとなる連通孔804を介して、リザーバ122に連通可能とされている。一方、第2加圧室R12は、開口が出力ポートとなる連通孔806を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン724に設けられた連通孔808および開口がドレインポートとなる連通孔810を介して、リザーバ122に連通可能とされている。また、入力ピストン726の内部室R16は、第1加圧ピストン722に設けられた連通孔812、第2ハウジング部材732に設けられた連通孔814、第1ハウジング部材730に設けられて開口がドレインポートとなる連通孔818を介して、リザーバ122に連通されている。第2ハウジング部材732の前方側に位置する部分は、第1ハウジング部材730の内径よりある程度小さい外径とされており、それらハウジング部材730,732間にはある程度の流路面積を有する液通路820が形成されている。入力室R13は、その液通路820,第2ハウジング部材732に設けられた連通孔822および開口が入力ポートとなる連通孔824を介して、増減圧装置120に繋がっている。
【0218】
対向室R14は、第2ハウジング部材732に設けられた連通孔826および開口が連結ポートとなる連通孔828によって、外部に連通可能となっている。第1加圧ピストン722の本体部760は、第1ハウジング部材730の前方小径部742の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路830が形成されている。ピストン間室R15は、その液通路830,第1加圧ピストン722に設けられた連通孔832および開口が連結ポートとなる連通孔834を介して、外部に連通可能となっている。これら連通孔828の連結ポートと連通孔834の連結ポートとは、外部連通路836によって連通させられており、対向室R14とピストン間室R15とを連通させるための室間連通路が形成されている。つまり、本シリンダ装置710では、その室間連通路によって、対向室R14およびピストン間室R15は、1つの一体的な液室(以下、「反力室」という場合がある)R17とされている。また、その室間連通路には、電磁式の室間開閉弁838およびチェック弁840が設けられている。
【0219】
なお、第1加圧ピストン722と入力ピストン726との相対移動に伴って、ピストン間室R15の容積が増加・減少するとともに、対向室R14の容積が減少・増加する。上記室間連通路は、それら2つの液室の容積変化を互いに吸収し合うようにするための機能を有している。ちなみに、対向室R14の断面積はピストン間室R15の断面積と略等しくされており、入力ピストン726をハウジング720に対して移動させることなく、第1加圧ピストン722だけがハウジング720に対して移動可能とされている。
【0220】
第1ハウジング部材730の内部には、開口が連結ポートとされている連通孔844が設けられており、連通孔844は、第1ハウジング部材730の内部でその連通孔818に繋がれている。また、その連通孔844の連結ポートには、外部連通路846の一端部が接続されており、外部連通路846の他端部は、増減圧装置120の減圧リニア弁252に繋がれている。
【0221】
したがって、外部連通路846から分岐される外部連通路847は、外部連通路836に接続されている。したがって、対向室R14は、外部連通路836、846、847を介して、リザーバ122に連通可能とされている。また、外部連通路847には、電磁式の対向室開閉弁848が設けられており、この対向室開閉弁848によって、外部連通路847が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置710は、外部連通路847および対向室開閉弁848を含んで構成された機構、つまり、対向室R14とリザーバ122とが連通する対向室連通状態と連通しない対向室非連通状態とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。また、外部連通路847には、対向室R14のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁850も設けられている。
【0222】
≪シリンダ装置の作動≫
まず、電気的失陥時のシリンダ装置710の作動を説明する。失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、室間開閉弁838は開弁状態となっており、室間連通路を介して、対向室R14およびピストン間室R15連通される。また、対向室開閉弁848も開弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室R14とリザーバ122とが連通する対向室連通状態が実現されている。したがって、反力室R17はリザーバ122へと連通されて、大気圧とされている。
【0223】
失陥時においては、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、反力室R17が大気圧とされているため、入力ピストン726は、ブレーキペダル150の操作開始時点から、自由な前進が許容され、早い段階で、入力ピストン726の前端が第1加圧ピストン722の仕切壁部764に当接する。さらに、入力ピストン726の本体部780が第1加圧ピストン722に当接すれば、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン722に直接伝達されることになる。したがって、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン722を押すことができるのである。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0224】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724は、リターンスプリング774、776によって、それぞれ、初期位置(図9に示す位置であり、鍔部762が第2ハウジング部材732の前方大径部750と後方小径部752との段差面に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン726は、オペレーションロッド152とともに、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786によって、初期位置(図9に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材732の後方小径部752の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0225】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、減圧リニア弁252には最大電流が供給されており、閉弁状態とされている。また、室間開閉弁838は開弁状態となっており、室間連通路を介して、対向室R14およびピストン間室R15連通される。対向室開閉弁848は閉弁状態となっており、第1連通状態切換機構によって、対向室非連通状態が実現されている。したがって、対向室R14、つまり、反力室R17は密閉されることとなる。
【0226】
運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン726の本体部780は前進を開始する。反力室R17の容積変化は禁止された状態とるため、反力室R17の圧力、つまり、ピストン間室R15の圧力の上昇によって、補助ピストン782は、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786を縮めつつ、本体部780の内部へと押し込まれる、言い換えれば、反力室R17の圧力に応じた量だけ、引き込む状態となる。
【0227】
第1反力スプリング784および第2反力スプリング786の弾性変形量、つまり、圧縮量は、反力室R17の圧力の上昇に依存する。逆に言えば、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786による弾性力に応じて、反力室R17は加圧され、その反力室R17の圧力に応じた操作反力が、入力ピストンを介して操作部材に付与される。つまり、2つのスプリング784,786による加圧力が、入力ピストン726の前進に対する抵抗力、つまり、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになるのである。このような構造を有する本シリンダ装置710は、補助ピストン782,第1反力スプリング784,第2反力スプリング786、浮動座788を含んで構成された機構、つまり、反力室R17内を第1反力スプリング784,第2反力スプリング786の弾性力に依拠して加圧可能な弾性力依拠加圧機構を備えているのである。
【0228】
上記操作反力は、入力ピストン726の前進量、つまり、ブレーキペダル150の操作量に依存する。ブレーキペダルの操作量に対する操作反力の大きさは、本シリンダ装置710においても、図3に示すような特性となる。本シリンダ装置710では、補助ピストン782の後端面が、浮動座788に当接して、第1反力スプリング784が弾性変形しなくなり、第2反力スプリング786のみが弾性変形するようにされている。また、第1反力スプリング784のばね定数が第2反力スプリング786のばね定数より相当小さくされている。そのため、操作反力の変化勾配は、比較的操作量が小さい範囲では小さくされ、操作量が反力勾配変化操作量を超えた場合に相当に大きくなるようになっている。また、ブレーキペダル150をさらに操作した場合、浮動座788後端部が、入力ピストン726の後端部に当接し、第2反力スプリング786が弾性変形しなくなる。つまり、シリンダ装置710には、入力ピストン726の前進が禁止される設定前進量が設けられており、ブレーキの操作には、その設定前進量によって決められる操作限界が設けられている。このように、シリンダ装置710は、第1反力スプリング784、第2反力スプリング786、浮動座788を含んで構成される機構、つまり、弾性力に抗する状態での入力ピストン408の前進が設定前進量だけ許容される入力ピストン前進許容機構を有している。
【0229】
上記ブレーキ操作の途中で対向室開閉弁848を開弁すれば、第1加圧ピストン722の前進が許容される。また、液圧制動力を発生させるべく、高圧源装置118によって発生させられた圧力を入力室R13に入力すれば、その圧力によって、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724が前進させられて、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される。入力室R13に入力される圧力に依存したブレーキ液の加圧の際には、反力室R17が密閉されていることから、上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない操作では、入力ピストン726の前端が、第1加圧ピストン722の仕切壁部764に当接することはない。また、第1加圧ピストン722の鍔部762の前端の受圧面積と、入力ピストン726の前端面の受圧面積とが略等しくされていることから、第1加圧ピストン722が前進したとしても、入力ピストン726の進退には影響を与えない。つまり、ブレーキペダル150の操作量、操作反力が変化しない構造とされているのである。
【0230】
上記のような動作が行われることによって、入力室R13の圧力に依存するブレーキ液の加圧の際には、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存加圧状態が実現される。この場合のシリンダ装置710による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。通常時、制御高圧源圧は増減圧装置120によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R13に入力される。
【0231】
通常時においては、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された圧力を入力室R13に入力すればよい。多くの場合、目標制動力が上記利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させるようにすればよい。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R13に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0232】
先に説明したように、本車両では、液圧ブレーキシステム700は、目標制動力のうちの回生制動力を超える分だけ液圧制動力を発生させればよい。極端に言えば、目標制動力を回生制動力で賄える限り、液圧ブレーキシステム700による液圧制動力を必要としない。本シリンダ装置710では、通常時において、発生させる液圧制動力に依存せずに、ブレーキペダル150の操作量に応じた操作反力が発生する構造とされている。極端に言えば、本シリンダ装置110は、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン724によるブレーキ液の加圧を行わない状態でのブレーキペダル150の操作を許容する機能を有している。つまり、本シリンダ装置710は、ハイブリッド車両に好適なストロークシミュレータを有しているのである。
【0233】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン722,第1加圧ピストン724によって第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、入力室R13に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された制御高圧源圧を入力室R13に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダル150の操作量は、概して、図3における最大回生時液圧制動開始操作量となる。液圧ブレーキシステム100では、この最大回生時液圧制動開始操作量は、前述の反力勾配変化操作量よりもやや大きく設定されている。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、入力室R13に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0234】
入力室R13に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン722は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11のブレーキ液を加圧する。それに従って、第1加圧ピストン724によって第2加圧室R12のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存加圧状態、すなわち、高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置110による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が入力室R13に入力される。
【0235】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン722,第1加圧ピストン724は、リターンスプリング464,466によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン726は、第1反力スプリング480および第2反力スプリング482によって、初期位置に戻される。
【0236】
大制動力必要時には、室間開閉弁838が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁848が開弁状態とされる。つまり、ピストン間室R15が密閉状態とされて容積が一定とされるとともに、第1連通状態切換機構において対向室連通状態が実現されて、対向室R14とリザーバ122とが連通させられる。それによって、入力室R13に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、入力ピストン726を前進させることが可能となる。この入力ピストン726の前進により、ピストン間室R15内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R11,第2加圧室R12のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるのである。この状態での加圧によって、第1加圧室R11,第12加圧室R12からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が入力室R13に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得らることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置710は、室間開閉弁838と対向室開閉弁848とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0237】
高圧源圧依存制動状態においては、運転者による操作力Fの増加によって、制御高圧源圧PCが増加して第1加圧ピストン722が前進させられるため、出力圧POが増加する。したがって、本液圧ブレーキシステム700では、出力圧POを、操作力Fを指標する操作力指標パラメータと考えることができるため、出力圧POが高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、すなわち、出力圧POが設定閾圧PTHを超えたことを条件として、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。また、本液圧ブレーキシステム700では、逆に、出力圧POが設定閾圧PTH以下となった場合、つまり、上記条件を満さなくなった場合に、操作力・高圧源圧依存制動状態から高圧源圧依存制動状態への切換動作が行われる。
【0238】
具体的には、本液圧ブレーキシステム700は、図10にフローチャート示す制動力発生状態切換プログラムが極短い時間ピッチで実行されることにより、出力圧POに基づいた制動力の発生状態の切換が行われる。そのプログラムに従う処理では、S11において、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるための上記条件を充足しているか否かが判断される。その条件を充足している場合には、S12において、操作力・高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、開閉弁838は閉弁状態とされ、開閉弁848は開弁状態とされる。一方、上記条件を充足していない場合は、S13において、高圧源圧依存制動状態に切換えるべく、また、その状態を維持すべく、開閉弁838は開弁状態とされ、開閉弁848が閉弁状態とされる。
【0239】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム700は、高圧源圧依存加圧状態における制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換えるようにされている。
【0240】
本液圧ブレーキシステム700が採用するシリンダ装置710では、入力ピストン726が、第1加圧ピストン722に設けられた有底穴に挿入されている。そのため、上記各液室を区画するために入力ピストン726と係合させる必要のある高圧シールは、第1加圧ピストン722の有底穴の内周面と入力ピストン726の外周面との間と、入力ピストン726の外周面と第2ハウジング部材732との間とに、それぞれ、1つずつしか配設されていない。具体的には、シール750とシール752である。そのため、入力ピストン726の移動に対する摩擦抵抗が比較的小さく、摩擦抵抗が操作部材の操作感に与える影響、つまり、ブレーキ操作の操作感に与える影響が小さくされている。
【0241】
また、シリンダ装置710では、反力室R17を加圧する弾性力依拠加圧機構を含んでストロークシミュレータが構成されているため、ストロークシミュレータを構成する第1反力スプリング784および第2反力スプリング786が、当該シリンダ装置710の内部に、詳しく言えば、入力ピストン726の内部に配設されているため、コンパクトなシリンダ装置とされている。
【0242】
さらに、シリンダ装置710では、ピストン間室R15と対向室R14とが連通することで1つの反力室R17が形成されており、ピストン間室R15が比較的小さな容積とされている。つまり、入力ピストン726の前端と第1加圧ピストン722の有底穴の底との距離が、比較的小さくされているのである。したがって、入力ピストン726が第1加圧ピストン722に当接するまでの前進距離が小さくされている。そのことによって、シリンダ装置710では、失陥時等のブレーキ操作におけるガタ感を少なく、そのブレーキ操作の操作感が良好なものとされているのである。
【0243】
≪変形例≫
図11に示す液圧ブレーキシステム900は、第2実施例の液圧ブレーキシステム700において採用されているシリンダ装置710に代えて、シリンダ装置910を採用している。シリンダ装置910は、大まかには第2実施例のシリンダ装置710と同じ構成とされている。以下の変形例の説明においては、第2実施例と異なる構成および作動について説明する。
【0244】
シリンダ装置910では、第2実施例におけるシリンダ装置910で採用されている補助ピストン782に代えて、補助ピストン920が採用されている。補助ピストン920は、それの前端面に孔が設けられた有底円筒状の外筒部材922と、その孔に固定的に嵌め込まれた筒状の内筒部材924と、内筒部材924の内部に収容されたボール926および付勢スプリング928とを含んで構成されている。内筒部材924の前端面は開口しており、その開口には、圧縮コイルスプリングである付勢スプリング928のばね反力によって、ボール926がその開口を塞ぐようにして前方に押しつけられている。補助ピストン920の前方に位置する仕切壁部764には、内筒部材924の開口に挿し込まれることによってボール926と係合する係合ピン930が設けられている。したがって、補助ピストン920が前進し、補助ピストン920と仕切壁部764との距離が、設定距離以下になると、係合ピン930がボール926を後方に押し、内筒部材924の開口が開けられることになる。このように、補助ピストン920では、ボール926が内筒部材924の孔から離間することによって、ピストン間室R15と内部室R16とを連通させる開閉弁が構成されている。そのため、本シリンダ装置910では、入力ピストン726の内部室R16が、反力室R17からリザーバ122に至る連通路の一部を構成している。この連通路は、前述の補助ピストン782に設けられた開閉弁によって開閉させられる。
【0245】
また、シリンダ装置910では、第2実施例の液圧ブレーキシステム700における室間開閉弁838および対向室開閉弁848に代えて、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第1変形例となる液圧ブレーキシステム560において採用されている機械式の弁装置572が採用されている。この弁装置572は、上記室間開閉弁838と上記対向室開閉弁848とが一体化されたものと考えることができる。なお、弁装置572は、アンチロック装置114からリザーバ122の連通路846の一部分をも構成している。また、外部連通路847から分岐して増減圧装置120に繋がれる外部連通路には、リリーフ弁942が設けられている。
【0246】
弁装置572の内部に形成されている各液室と、弁装置572に接続される各外部連通路との関係について詳しく説明すれば、弁装置572のハウジング580に形成される連通孔586および連通孔588の各々の連結ポートは、外部連通路518に接続されている。つまり、外部連通路518は、ハウジング580の前端において、ピストン582の前端部とハウジング580の内周面とによって区画形成されている液室と、それらの連通孔とを含んで構成されている。連通孔590および連通孔592の各々のドレインポートは、外部連通路846に接続されている。つまり、外部連通路846は、ハウジング580の中間において、内部に付勢スプリング584が配設された液室と、それらの連通孔とを含んで構成されている。また、連通孔594の連結ポートは、外部連通路847に接続されている。つまり、外部連通路847は、ハウジング580の後端において、ピストン582の後端部とハウジング580とによって区画形成されている液室と、連通孔594とを含んで構成されている。また、この液室は、ピストン582の内部の連通路を介して、外部連通路846に繋がれている。つまり、外部連通路847は、この連通路をも含んで構成されており、弁装置572を介して外部連通路846に接続されている。さらに、ピストン582の後方部とハウジング580の中間部との間に形成されている液室は、連通孔596の連結ポートに接続される外部連通路によって増減圧装置120に接続されている。つまり、この液室には、常時、制御高圧源圧が導入される。
【0247】
失陥時および通常時においては、外部連通路836は開通状態とされて、対向室R14とピストン間室R15とが連通されており、外部連通路847は遮断されて、対向室R14とリザーバ122との連通が断たれている。
【0248】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、第2実施例のブレーキシステム700の場合と同様に、入力ピストン726の本体部780は前進し、補助ピストン782は、第1反力スプリング784および第2反力スプリング786を縮めつつ、本体部780の内部へと押し込まれ、反力室R17の圧力の上昇に依存する。ブレーキペダル150の操作量が増加し、ブレーキペダル150に加えられる操作力が設定閾操作力となった場合に、リリーフ弁738は開弁し、反力室R17が、開弁状態となっている減圧リニア弁252を介してリザーバ122と連通する反力室連通状態が実現される。つまり、本シリンダ装置910は、リリーフ弁738の開弁圧に基づいて、反力室R17とリザーバ122とを連通させる機構、すなわち、圧力依拠連通機構を備えているのである。
【0249】
その状態でブレーキペダル150の操作が進行すると、補助ピストン782が入力ピストン726とともにある程度まで前進する。そして、補助ピストン782と仕切壁部764との距離が設定距離以下となった場合に、仕切壁部764に設けられた係合ピン930が、補助ピストン782に設けられた開閉弁を構成するボール926を後方に押し込む。それにより、反力室R17は、入力ピストン726の内部室R16を介して、リザーバ122と連通することになる。このような構造を有する本シリンダ装置910は、反力室R17からリザーバ122に連通される連通路および補助ピストン782とを含んで構成された機構、つまり、反力室R17とリザーバ122とが連通する反力室連通状態と連通しない反力室非連通状態とを、反力室の容積に依拠して、選択的に実現する容積依拠連通機構を備えているのである。また、この連通路は、反力室R17をリザーバ122に連通する容積依拠連通機構用連通路とされているのである。
【0250】
上記容積依拠連通機構によって反力室連通状態が実現されることで、反力室R17は大気圧とされ、入力ピストン726は、比較的自由な前進が許容されて、仕切壁部764に当接し、第1加圧ピストン722を直接押すことなる。したがって、その状態では、ブレーキペダル150に加えられた運転者の操作力は、直接、第1加圧ピストン722に伝達される。つまり、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R11,第2加圧室R12においてブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0251】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与をやめると、第1加圧ピストン722,第2加圧ピストン606は、リターンスプリング664、666によって、それぞれ、初期位置(図11に示す位置であり、第1加圧ピストン722の後端が第2ハウジング部材の後端部に当接する状態となる位置)に戻される。また、入力ピストン726は、オペレーションロッド152とともに、リターンスプリング694によって、初期位置(図11に示す位置であり、後端が、第2ハウジング部材732の後端部によって係止される位置)に戻される。
【0252】
通常時においては、ブレーキペダル150の操作量が上記最大回生時液圧制動開始操作量を超えない段階で、入力室R13に、高圧源装置118からの圧力が入力される。このときも、弁装置572によって、対向室R14とピストン間室R15とは連通されている。また、リリーフ弁942は閉弁状態となっており、対抗室非連通状態が実現されている。したがって、高圧源装置118から圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン722は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R11のブレーキ液を加圧する。つまり、入力ピストン726の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R11,第2加圧室R12におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。
【0253】
大制動力必要時の場合、つまり、操作量が増加して制御高圧源圧が設定圧を超えた場合、弁装置572によってピストン間室R15が密閉状態とされ、対向室R14とリザーバ122とが、リリーフ弁942に依存せずに、連通される。この状態において、運転者の操作力と、高圧源装置118からの圧力との両方に依存して第1加圧ピストン722を前進させることができ、高圧源圧依存制動状態における最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現される。したがって、本液圧ブレーキシステム900は、弁装置572を含んで構成された機構、つまり、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0254】
なお、本変形例の液圧ブレーキシステム900が採用するシリンダ装置910は、反力室R17とリザーバ122とを連通させる機構として、上記圧力依拠連通機構に加え、上記容積依拠連通機構を備えている。そのため、本液圧ブレーキシステム900は、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第1変形例である液圧ブレーキシステム560と同様、操作力依存加圧状態において、反力室R17の残圧に起因するブレーキ操作力のロスが小さくされている。
【0255】
他の変形例として、液圧ブレーキキシステムを以下のように構成することも可能である。上記第2実施例の液圧ブレーキシステム700では、出力圧POに基づいて、高圧源圧依拠加圧状態から操作力・高圧源圧依拠加圧状態への切換が行われるように構成されているが、それに代え、制御高圧源圧PCが設定圧を超えた場合に上記切換を行うように液圧ブレーキシステムを構成することが可能である。また、高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの差が設定圧を超えて小さくなった場合に、上記切換を行うようにすることも可能である。さらに、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。
【0256】
上記変形例の液圧ブレーキシステム900では、制御高圧源圧PCをパイロット圧とする弁装置572が採用されていたが、それに換え、出力圧POをパイロット圧とする弁装置を採用することも可能である。さらには、第1実施例の液圧ブレーキシステム100の第3変形例である液圧ブレーキシステム640において採用されている弁装置652を採用することも可能である。つまり。高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの両方をパイロット圧として導入し、それらの差圧に基づいて作動する機械式の弁装置を採用することも可能である。
【実施例3】
【0257】
図12に、第3実施例の液圧ブレーキシステム1000を示す。なお、この液圧ブレーキシステム1000は、シリンダ装置1010を採用しており、そのシリンダ装置1010を除いて、第1実施例のシリンダ装置1010を採用した液圧ブレーキシステム100と略同じ構成となっている。したがって、以下の液圧ブレーキシステム1000の説明は、シリンダ装置1010についてのみ行うとこととする。
【0258】
≪シリンダ装置の構成≫
シリンダ装置1010は、シリンダ装置1010の筐体であるハウジング1020と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン1022および第2加圧ピストン1024と、外部高圧源装置118から入力される圧力によって前進するともに、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン1026とを含んで構成されている。なお、図12は、シリンダ装置1010が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0259】
ハウジング1020は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ1040が形成されており、そのフランジ1040において車体に固定される。ハウジング1020は、3つの部分、具体的には、前方側に位置する前方部1042、後方側に位置する後方部1044、それら前方部1042と後方部1044との中間に位置する中間部1046に区分けされている。これら3つの部分は、内径が互いに異なっており、後方部1044の内径は最も小さく、中間部1046の内径は最も大きく、前方部1042の内径は、それら後方部1044の内径と中間部1046の内径との中間の大きさとなっている。
【0260】
第1加圧ピストン1022および第2加圧ピストン1024は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、ハウジング1020の前方部1042に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン1022は、第2加圧ピストン1024の後方に配設されている。第1加圧ピストン1022と第2加圧ピストン1024との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置116RL,RRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R21が区画形成されており、また、第2加圧ピストン1024の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R22が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン1022と第2加圧ピストン1024とは、第1加圧ピストン1022の後端部に立設された有頭ピン1050と、第2加圧ピストン1024の後端面に固設されたピン保持筒1052とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R21内,第2加圧室R22内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1054、1056が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第2加圧ピストン1024は後方に向かって付勢されている。
【0261】
入力ピストン1026は、第1ピストン部材1058と、その第1ピストン部材1058の後端に嵌め合わされた第2ピストン部材1059とを有し、それら2つの部材1058,1059が一体化されて構成されている。入力ピストン1026は、概して円筒形状をなす本体部1060と、その本体部1060の外周に設けられた鍔部1062とを有する形状とされている。入力ピストン1026は、第1加圧ピストン1022の後方に配設され、本体部1060の前方の部分がハウジング1020の前方部1042の内周面の後部側に、鍔部1062がハウジング1020の中間部1046の内周面に、本体部1060の後方の部分がハウジング1020の後方部に1044に、それぞれ、摺動可能に嵌め合わされている。ちなみに、入力ピストン1026は、ハウジング1040の後方部1044と中間部1046との段差面に当接することで、後退が制限されている。
【0262】
入力ピストン1026の前方において、第1加圧ピストン1022の後端部との間には、高圧源装置118からのブレーキ液の供給が可能とされている液室、つまり、高圧源装置118からの圧力の入力が可能とされている液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R23が区画形成されている。鍔部1062の後端面と、ハウジング1020の後方部1044と中間部1046との段差面との間に、入力ピストン1026の前進に伴って容積が増大するとともに、高圧源装置118からの圧力が入力されるもう1つの液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R24が区画形成されている。さらに、鍔部1062の前端面と、ハウジング1020の前方部1042と中間部1046との段差面との間に、鍔部1062を挟んで第2入力室と対向する液室(以下、「対向室」という場合がある)R25が区画形成されている。ちなみに、第2入力室R24は、図12では、殆ど潰れた状態で示されている。
【0263】
入力ピストン1026の本体部1060の内部には空間が形成されており、その空間には、補助ピストン1064が、その空間内を入力ピストン1026に摺接しつつ、入力ピストン1026に対して相対移動可能に配設されている。補助ピストン1064によって区切られた補助ピストン1064の前方の部屋は、常時、大気圧とされる液室(以下、「大気圧室」という場合がある)R26とされ、後方の部屋は、上記対向室R25と連通する液室(以下、「内部室」という場合がある)R27が区画形成されている。ちなみに、図12では、内部室R27は殆ど潰れた状態で示されている。
【0264】
大気圧室R26の内部には圧縮コイルスプリングである反力スプリング1066が配設されており、補助ピストン1064は、その反力スプリング1066によって浮動支持されるとともに後方に向かって付勢されている。シリンダ装置1010は、反力スプリング1066によって構成される弾性力依拠加圧機構、つまり、内部室R27の容積が減少する向きの力を補助ピストン1064に付与して内部室R27を加圧する機構を備えているのである。
【0265】
入力ピストン1026の後端部、詳しく言えば、本体部1060の後端部にはオペレーションロッド152の前端部が連結されている。オペレーションロッド152には、円形のスプリングシート1070が付設されており、このスプリングシート1070とハウジング1020との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1072が配設されており、このリターンスプリング1072によって、オペレーションロッド152は後方に向かって付勢されている。
【0266】
第1加圧室R21は、開口が出力ポートとなる連通孔1100を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン1022に設けられた連通孔1102および開口がドレインポートとなる連通孔1104を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R22は、開口が出力ポートとなる連通孔1106を介して、アンチロック装置114に繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン1024に設けられた連通孔1108および開口がドレインポートとなる連通孔1110を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0267】
第1入力室R23は、開口が連結ポートとなる連通孔1112を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔1112は、外部連通路1114を介して増減圧装置120に繋げられている。また、外部連通路1114には、電磁式の第1入力室開閉弁1116とチェック弁1118が設けられている。また、外部連通路1114には、第1入力室R23の圧力(以下、「入力圧」という場合がある)を検出するための圧力センサ[PI]1120が設けられている。
【0268】
入力ピストン1026の本体部のうち鍔部1062より前方の部分は、ハウジング1020の前方部1042の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1122が形成されている。ハウジング1020には、一方の開口がドレインポートとなる連通孔1124が設けられており、その開口は、リザーバ122に繋げられている。その連通孔1124は、他方の開口において、液通路1122に連通されてる。また、ハウジング1020には、開口が連結ポートとなる連通孔1126が設けられている。その連通孔1126も、他方の開口において、液通路1122に連通されてる。したがって、連通孔1126は、液通路1122、連通孔1124を介して、リザーバ122へと連通されている。
【0269】
対向室R25は、開口が連結ポートとなる連通孔1128によって、外部に連通可能となっている。その連結ポートには、外部連通路1130の一端部が連結されており、他端部は、連通孔1126の連結ポートに連結されている。つまり、外部連通路1130は、リザーバ122へと連通可能とされているのである。また、外部連通路1130には、電磁式の対向室開閉弁1132が設けられており、この対向室開閉弁1132によって、外部連通路1130が開閉される。このような構造を有する本シリンダ装置1010は、外部連通路1130および対向室開閉弁1132を含んで構成された機構、つまり、対向室R25とリザーバ122との連通と非連通とを選択的に実現する第1連通状態切換機構を備えているのである。なお、外部連通路1130には、対向室R25のブレーキ液の圧力が大気圧未満となるのを防止するためのチェック弁1134も設けられている。
【0270】
入力ピストン1026の本体部1060には、大気圧室R26と液通路1122とを連通する連通孔1136が設けられており、大気圧室R26は、リザーバ122に連通されることで、常時、大気圧とされている。また、入力ピストン1026の本体部1060と鍔部1062との境界には、対向室R25と内部室R27とを連通する連通孔1138が設けられている。つまり、その連通孔1138によって室間連通路L1が形成されており、その室間連通路L1によって、対向室R25と内部室R27とは、1つの一体的な液室(以下、「反力室」という場合がある)とされている。なお、反力室が密閉されている状態では、入力ピストン1026の前進は、制限される。詳しく言えば、反力室は、上記弾性力依拠加圧機構によって加圧されているため、反力室の圧力に抗した前進が許容されることになる。
【0271】
第2入力室R25は、開口が連結ポートとなる連通孔1140によって、外部に連通可能となっている。その連通孔1140の連結ポートには、外部連通路の一端が繋げられており、他端は増減圧装置120に繋げられている。
【0272】
なお、外部高圧源装置118から、増減圧装置120を介して高圧のブレーキ液が第1入力室R23および第2入力室R25に供給される場合であっても、入力ピストン1026は前進・後退させられない。詳しく説明すると、図12では正確に表していないが、第1入力室R23を区画する本体部1060前端の受圧面積と、第2入力室R25を区画するの鍔部1062の後端の受圧面積とが略等しくされており、第1入力室R23の圧力によって入力ピストン1026を後退させる力と、第2入力室R25の圧力によって入力ピストン1026を前進させる力とが均衡することによって、入力ピストン1026が進退しないようになっている。
【0273】
≪シリンダ装置の作動≫
以下にシリンダ装置1010の作動について説明するが、便宜上、通常時の作動を説明する前に、電気的失陥の場合、つまり、当該液圧ブレーキシステム100への電力供給が断たれた場合における作動を説明する。なお、失陥時には、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっている。また、第1入力室開閉弁1116は開弁状態となっており、第1入力室R23は、外部連通路1114および減圧リニア弁252を介して、リザーバ122に連通されている。また、対向室開閉弁1132も開弁状態となっており、対向室R25とリザーバ122とが連通されている。さらに、第2入力室R24も、減圧リニア弁252を介して、リザーバ122に連通されている。
【0274】
失陥時において、運転者によってブレーキペダル150の踏込操作が開始されると、入力ピストン1026が前進を開始する。第1入力室R23および対向室R25の各々のブレーキ液は、リザーバ122へ流出されて減少する。入力ピストン1026が第1加圧ピストン1022に当接すると、入力ピストン1026は、第1加圧ピストン1022に当接したままで第1加圧ピストン1022を前進させる。したがって、ブレーキペダル150に加えられた操作力は、第1加圧ピストン1022に直接伝達されることになり、運転者は、自身の力で、第1加圧ピストン1022を押すことができる。それにより、第1加圧ピストン1022は前進し、第1加圧室R21とリザーバ122の伝達が断たれ、第1加圧室R21のブレーキ液は、ブレーキペダル150に加えられた操作力によって加圧されるのである。ちなみに、第1加圧室R21の加圧に伴って、第2加圧ピストン1024も前進し、第1加圧室R21と同様、第2加圧室R22とリザーバ122との連通が断たれ、第2加圧室R22内のブレーキ液も加圧されることになる。このようにして、ブレーキペダル150に加えられる操作力によって、第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液が加圧される操作力依存加圧状態が実現され、ブレーキ装置116に、運転者の操作力に応じた液圧が入力されることになる。
【0275】
運転者がブレーキ操作を終了させると、つまり、操作力のブレーキペダル150への付与が解除されると、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024は、リターンスプリング1054、1056によって、それぞれ、初期位置(図12に示す位置)に戻される。また、入力ピストン1026は、オペレーションロッド152とともに、リターンスプリング1070によって、初期位置(図12に示す位置)に戻される。なお、第1加圧ピストン1022は、図に示されていないストッパによって、初期位置を越えて後退しないようにされている。
【0276】
次に、通常時の作動について説明する。通常時においては、対向室開閉弁1132は励磁されて閉弁状態とされるため、対向室R25とリザーバ122とが非連通とされ、対向室R25および内部室R27すなわち反力室は密閉状態とされる。したがって、入力ピストン1026が前進すると、対向室R25の容積が減少するとともに、内部室R27の容積が増加する。内部室R27の容積の増加により、補助ピストン1064は、反力スプリング1066を縮めつつ、入力ピストン1026内を前進する。したがって、弾性力依拠加圧機構、つまり、反力スプリング1066による弾性力が、反力室のブレーキ液に作用し、入力ピストン1026には、その弾性力による反力室の液圧が、前進に対する抵抗力として作用する。その弾性力は、ブレーキペダル150の操作に対する操作反力として作用することになる。なお、弾性力依拠加圧機構が単一の反力スプリングによって構成されているため、図3に示すような操作反力特性とはならず、操作反力勾配は操作量に略一定となる。
【0277】
上記のような作動から、入力ピストン1026は、反力室の圧力による制限を受けた状態で前進が許容されていると考えることができ、そして、上記弾性力依拠加圧機構はストロークシミュレータとしての機能を有することになる。なお、図12では明確には示していないが、内部室R27の容積の増大によって反力スプリング1066の圧縮限界(コイルの線間距離がなくなる状態)に達したとき、内部室R27のそれ以上の容積の拡大は禁止され、入力ピストン1026はそれ以上の前進が禁止される。この状態がブレーキペダル150の操作量を増加させることのできない操作限界である。このような入力ピストン1026の前進が許容されていることから、シリンダ装置1010は、弾性力に抗する状態での入力ピストン1026の前進を設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有していると考えることができる。
【0278】
また、通常時においては、第1入力室開閉弁1116は励磁されて開弁状態とされているため、入力ピストン1026の前進によって、第1入力室R23の容積が減少され、第1入力室R23のブレーキ液は第2入力室R24へと流入し、第2入力室R24の容積が増加する。ただし、第1入力室R23を区画する本体部1060前端の受圧面積と、第2入力室R25を区画するの鍔部1062の後端の受圧面積とが略等しくされていることから、ブレーキぺダル150に加えられた操作力は、第1入力室R23を加圧する力として作用せず、操作力によっては、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024による第1加圧室R21,第2加圧室R22の加圧は行われない。
【0279】
上記ブレーキ操作の途中で液圧制動力を発生させるべく、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024によって第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液を加圧する場合には、高圧源装置118によって発生させられた圧力を、第1入力室R23および第2入力室R24に入力すればよい。具体的には、回生制動力を超える分の液圧制動力が得られるように、増減圧装置120によって制御された圧力を第1入力室R23に入力させればよい。本車両において回生ブレーキで得られる最大の回生制動力を利用可能最大回生制動力と定義すれば、目標制動力がその利用可能最大回生制動力を超えた時点から液圧制動力を発生させると仮定した場合において、その液圧制動力の発生が開始される時点のブレーキペダル150の操作量は、最大回生時液圧制動開始操作量となる。ちなみに、バッテリ26の充電量等の関係で、目標制動力が利用可能最大回生制動力を超えない場合であっても、液圧制動力が必要となる場合があるため、その場合には、最大回生時液圧制動開始操作量に至らぬ段階で、第1入力室R23および第2入力室R24に高圧源装置118からの圧力を入力させればよい。
【0280】
第1入力室R23および第2入力室R24に圧力が入力された場合、その圧力によって第1加圧ピストン1022は、ブレーキペダル150に加えられた操作力に依存せずに、また、操作量に依存せずに前進して、第1加圧室R21のブレーキ液を加圧する。それに従って、第2加圧ピストン1024によって第2加圧室R22のブレーキ液も加圧される。つまり、入力ピストン1026の前進とは関係なく、高圧源からの圧力に依存して第1加圧室R21,第2加圧室R22におけるブレーキ液が加圧される高圧源圧依存制動状態が実現される。このシリンダ装置1010による制動力、すなわち、液圧制動力は、入力されたブレーキ液の圧力によって決まる。制御高圧源圧は、先に説明した高圧源圧制御装置によって制御され、必要な大きさの圧力が第1入力室R23に入力される。
【0281】
通常時においても、ブレーキペダル150の操作を終了させれば、減圧リニア弁252が開弁状態とされ、第1加圧ピストン1022,第2加圧ピストン1024は、リターンスプリング1054,1056によって、それぞれ、初期位置に戻され、また、入力ピストン1026は、リターンスプリング1072によって、初期位置に戻される。
【0282】
大制動力必要時には、第1入力室開閉弁1116が閉弁状態とされるとともに、対向室開閉弁1132が開弁状態とされる。つまり、第1入力室R23が密閉状態とさせられるとともに、第1連通状態切換機構によって対向室連通状態が実現されて対向室R25とリザーバ122とが連通させられる。それによって、第2入力室R24に入力されている制御高圧源圧による力に加え、運転者の操作力によって、入力ピストン1026を前進させることが可能となる。この入力ピストン1026の前進により、第1入力室R23内に密閉されたブレーキ液を介して、第1加圧室R21,第2加圧室R22のブレーキ液が加圧される。つまり、大制動力発生時には、制御高圧源圧とブレーキペダル150に加えられた操作力との両方に依存して、第1加圧室R21,第2加圧室R22におけるブレーキ液が加圧可能とされているのである。この加圧によって、第1加圧室R21,第2加圧室R22からの出力圧は、上記高圧源圧依存制動状態において、高圧源装置118が発生可能な入力圧が第1入力室R23に入力された状態での出力圧よりも高い出力圧が得らることになる。つまり、高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を得ることができる操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されるのである。さらに言えば、このような構造を有する本シリンダ装置110は、第1入力室開閉弁1116と対向室開閉弁1132とを含んで構成された弁制御装置によって、高圧源圧依存制動状態と操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現するシリンダ作動状態切換機構を備えているのである。
【0283】
このように作動するシリンダ装置1010を有する液圧ブレーキシステム1000は、第2実施例の液圧ブレーキシステム700と同様の方法によって制動状態が切り換えられ、つまり、図10に示す制動力発生状態切換プログラムと同様のプログラムに従った処理によって切換が実施される。ただし、本液圧ブレーキシステム1000では、液圧ブレーキシステム700が、シリンダ装置710から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧POに基づいて切換が行われるのに対し、制御高圧源圧PCに基づいて、切換を行うようにされている。
【0284】
≪液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム1000は、操作力指標パラメータの一種である制御高圧源圧PCに基づき、高圧源圧依存加圧状態においてその制御高圧源圧PCが、高圧源依存最大制動力が発生される場合の圧力である高圧源圧PHに近づいたと擬制できる場合に、シリンダ装置の作動状態を、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態に切り換える。したがって、シリンダ装置の作動状態の切換を、制御高圧源圧PCが上限となる付近で、効果的に行うことが可能とされている。
【0285】
本液圧ブレーキシステム1000が有するシリンダ装置1010は、図12では理解し難いが、第1入力室R23を区画する入力ピストン1026の受圧面積が、第1入力室R23を区画する第1加圧ピストン1022の受圧面積に比べて大きくされている。言い換えれば、入力ピストン1026の前端の面積が、第1加圧ピストン1022の後端の面積に比べて大きくされている。そのため、操作力・高圧源圧依存加圧状態においてブレーキペダル150を操作した際、入力ピストン1026の前進量に対して第1加圧ピストン1022の前進量が大きくなっている。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態において、ブレーキペダル150の操作量の変化に対する出力圧POの変化が比較的大きくされており、より大きな操作ストロークが確保されている。
【0286】
≪変形例≫
また、本液圧ブレーキシステム1000においても、第1実施例のブレーキシステム100の変形例において用いられているような弁装置、上記第1入力室開閉弁1116と上記対向室開閉弁1132とが一体化されたような機械式の弁装置を採用することが可能である。その場合、制御高圧源圧PC若しくは出力圧POをパイロット圧とする弁装置を採用することも可能であり、高圧源圧PHと制御高圧源圧PCとの両方をパイロット圧として導入し、それらの差圧に基づいて作動する弁装置を採用することも可能である。
【実施例4】
【0287】
図13に、第4実施例の液圧ブレーキシステム1200を示す。なお、この液圧ブレーキシステム1200において採用されているシリンダ装置1210は、右前輪に設けられたブレーキ装置116FRと左前輪に設けられたブレーキ装置116FLとにだけブレーキ液を供給可能となっている。左右の後輪の各々に設けられたブレーキ装置116RR,RLには、高圧源装置118からのみブレーキ液が供給される。液圧ブレーキシステム1200は、シリンダ装置1210およびそれに関係する液通路の構成を除き、第1実施例の液圧ブレーキシステム1200と類似の構成となっている。そのことを考慮し、以下の液圧ブレーキシステム1200の説明は、シリンダ装置1210を中心に行うとこととする。
【0288】
≪シリンダ装置およびそれに関係する液通路の構成≫
シリンダ装置1210は、それの筐体であるハウジング1220と、ブレーキ装置116に供給するブレーキ液を加圧する第1加圧ピストン1222および第2加圧ピストン1224と、運転者の操作力および外部高圧源装置118から入力される圧力によって前進する中間ピストン1226と、運転者の操作が操作装置112を通じて入力される入力ピストン1228とを含んで構成されている。なお、図13は、シリンダ装置1210が動作していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
【0289】
ハウジング1220は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材1230、第2ハウジング部材1232から構成されている。第1ハウジング部材1230は、前端部が閉塞された概して円筒状を有し、後端部の外周にフランジ1240が形成されており、そのフランジ1240において車体に固定される。第1ハウジング部材1230は、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の最も小さい前方小径部1242、後方側に位置して内径の最も大きい後方大径部1244、それら前方小径部1242と後方大径部1244との中間に位置しそれらの内径の中間の内径を有する中間部1246に区分けされている。
【0290】
第2ハウジング部材1232は、前方側に位置して外径の大きい前方大径部1250、後方側に位置して外径の小さい後方小径部1252とを有する円筒形状をなしている。第2ハウジング部材1232は、前方大径部1250の前端部が第1ハウジング部材1230の中間部1246と後方大径部1244との段差面に接する状態で、その後方大径部1244に嵌め込まれている。それら第1ハウジング部材1230,第2ハウジング部材1232は、第1ハウジング部材1230の後端部の内周面に嵌め込まれたロック環1254によって、互いに締結されている。
【0291】
第1加圧ピストン1222および第2加圧ピストン1224は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、第1ハウジング部材1230の前方小径部1242に摺動可能に嵌め合わされている。第1加圧ピストン1222は、第2加圧ピストン1224の後方に配設されている。第1加圧ピストン1222と第2加圧ピストン1224との間には、右前輪のブレーキ装置116FRに供給されるブレーキ液を加圧するための第1加圧室R31が区画形成されており、また、第2加圧ピストン1224の前方には、左前輪に設けられたブレーキ装置116FLに供給されるブレーキ液を加圧するための第2加圧室R32が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン1222と第2加圧ピストン1224とは、第1加圧ピストン1222の後端部に立設された有頭ピン1260と、第2加圧ピストン1224の後端面に固設されたピン保持筒1262とによって、離間距離が設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R31内,第2加圧室R32内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)1264、1266が配設されており、それらスプリング1264、1266によって、第1加圧ピストン1222,第2加圧ピストン1224はそれらが互いに離間する方向に付勢されるとともに、第1加圧ピストン1222、第2加圧ピストン1224は後方に向かって付勢されており、第1加圧ピストン1222は、後述する中間ピストン1226の前端面に当接されている。
【0292】
中間ピストン1226は、両端部が開口された円筒形状の本体部1270と、本体部1270の前端部を塞ぐ蓋部1272とから構成されている。中間ピストン1226は、前端が第1加圧ピストン1222の後端に当接した状態で、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内周面に、摺動可能に嵌め合わされている。中間ピストン1226の後方には、第2ハウジング部材1232の前端部との間に、高圧源装置118からの圧力が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R33が区画形成されている。ちなみに、図13では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、ハウジング1220の内部には、第1ハウジング部材1230の内周面と第1加圧ピストン1222の外周面との間に形成された空間が存在する。その空間が、中間ピストン1226の前端面と、第1ハウジング部材1230の前方小径部1242と中間部1246との段差面とによって区画されることで、常時大気圧とされる環状の液室(以下、「大気圧室」という場合がある)R34が形成されている。
【0293】
入力ピストン1228は、前方が塞がれて後端部の開口する円筒形状をなす外筒部材1280と、概して円柱形状のロッド部材1282とを主体として構成されている。入力ピストン1228は、ロッド部材1282が、外筒部材1280に、それの後端側から挿し込まれている。入力ピストン1228は、第2ハウジング部材1232に保持された状態で、中間ピストン1226の本体部1270の前端部から挿し込まれるとともに、中間ピストン1226に対して進退可能とされている。このように構成された入力ピストン1228および中間ピストン1226の内部には、中間ピストン1226と入力ピストン1228との相対移動によって自身の容積が変化する液室(以下、「内部室」という場合がある)R35が区画形成されている。ちなみに、入力ピストン1228の後退は、第1入力ピストン部材1280の前端部に形成される鍔部が、中間ピストン1226の本体部1270の後端部に当接することで制限されている。
【0294】
内部室R35には、中間ピストン1226の内底面と入力ピストン1228の前端面との間に、2つの圧縮コイルスプリングである第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292が配設されている。第1反力スプリング1290は、第2反力スプリング1292の後方に直列に配設されており、鍔付ロッド形状の浮動座1294が、それらの反力スプリングに挟まれて浮動支持されている。第1反力スプリング1290は、それの前端部が中間ピストン1226の前端部に支持され、後端部が浮動座1294の前方側のシート面に支持されている。一方、第2反力スプリング1292は、それの前端部が浮動座1294の後方側のシート面に支持され、後端部が入力ピストン1228の前端部に支持されている。このように配設された第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292は、入力ピストン1228と中間ピストン1226とを、それらが互いに離間する方向に、つまり、内部室R35の容積が拡大する方向に付勢している。シリンダ装置1210は、第1反力スプリング1290および第2反力スプリング1292によって構成される弾性力付与機構、つまり、それらのばね反力によって、入力ピストン1228と中間ピストン1226とが互いに接近する方向、つまり、内部室R35の容積が減少する向きの入力ピストン1228と中間ピストン1226との相対移動に対抗する弾性力を、入力ピストン1228と中間ピストン1226とに付与する機構を備えている。また、浮動座1294の前端部には第1緩衝ゴム1296、後端部には第2緩衝ゴム1298がそれぞれ嵌め込まれており、その第1緩衝ゴム1296が中間ピストン1226の前端面に当接し、第2緩衝ゴム1298が入力ピストン1228の前端面に当接することで、浮動座1294と中間ピストン1226との接近、および、浮動座1294と入力ピストン1228との接近は、ある範囲に制限されている。
【0295】
入力ピストン1228のロッド部材1282の後端部には、ブレーキペダル150に加えられた操作力を入力ピストン1228に伝達すべく、また、ブレーキペダル150の操作量に応じて入力ピストン1228を進退させるべく、オペレーションロッド152の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン1228は、ロッド部材1282の後端部が第2ハウジング部材1232の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド152には、円形の支持板1300が付設されており、この支持板1300とハウジング1220との間にはブーツ1302が渡されており、シリンダ装置1210の後部の防塵が図られている。
【0296】
第1加圧室R31は、開口が出力ポートとなる連通孔1310を介して、右前輪のブレーキ装置116FLに繋がる液通路202と連通しており、第1加圧ピストン1222に設けられた連通孔1312および開口がドレインポートとなる連通孔1314を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。一方、第2加圧室R32は、開口が出力ポートとなる連通孔1316を介して、左前輪のブレーキ装置116FLに繋がる液通路200と連通しており、第2加圧ピストン1224に設けられた連通孔1318および開口がドレインポートとなる連通孔1320を介して、リザーバ122に、非連通となることが許容された状態で連通している。
【0297】
中間ピストン1226は、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1322が形成されている。入力室R33は、その液通路1322および開口が連結ポートとなる連通孔1324を介して、外部に連通可能となっている。その連通孔1324は、連通路1326を介して増減圧装置120に繋げられている。
【0298】
中間ピストン1226には、蓋部1272において、大気圧室R34と内部室R35とを連通する連通孔1330が設けられている。また、第1加圧ピストン1222は、第1ハウジング部材1230の中間部1246の内径よりある程度小さい外径とされており、それらの間にはある程度の流路面積を有する液通路1332が形成されている。大気圧室R34は、その液通路1332および連通孔1314を介して、リザーバ122に連通されている。したがって、環状室R34および内部室R35は、常時、大気圧とされており、それらのブレーキ液は、リザーバ122に対して流出入可能とされている
【0299】
液通路200および液通路202には、それぞれ、非励磁状態で開弁し、励磁状態で閉弁する電磁式の開閉弁(以下、「シリンダ装置カット弁」という場合がある)1334、1336が設けられており、それらの開閉によって、シリンダ装置1210によって加圧されたブレーキ液のブレーキ装置116FL,FRへの供給を許容する状態と供給を禁止する状態とが選択的に実現される。
【0300】
増減圧装置120には、高圧源圧とされたブレーキ液を供給するための増圧連通路1340の一端が繋げられており、増圧連通路1340の他端は、アンチロック装置114に繋げられている。アンチロック装置114の内部では、増圧連通路1340は4つに分岐されており、それら分岐された部分の各々は、4つの車輪に対応して設けられたブレーキ装置116のうちの対応するものに、4つの増圧開閉弁1342のうちの対応するものを介して、繋げられている。また、アンチロック装置114には、リザーバ122に連通する減圧連通路1344も繋げられている。アンチロック装置114の内部において、その減圧連通路1344も4つに分岐されており、それら分岐された部分の各々は、4つの車輪に対応して設けられたブレーキ装置116のうちの対応するものに、4つの減圧開閉弁1346のうちの対応するものを介して、繋げられている。なお、4つの増圧開閉弁1342,4つの減圧開閉弁1346は、いずれも、非励磁状態において開弁し、励磁状態において閉弁する電磁弁である。
【0301】
≪シリンダ装置の作動≫
ブレーキペダル150が運転者によって操作された場合、そのブレーキペダル150に加えられた操作力により、入力ピストン1228は前進し、2つの反力スプリング1290,1292を圧縮する。これらの反力スプリング1290,1292の弾性反力により中間ピストン1226は前進し、第1加圧ピストン1222は前進する。この第1加圧ピストン1222の前進に伴って第2加圧ピストン1224は前進し、第1加圧室R31,第2加圧室R32のブレーキ液が加圧される。一方、高圧源装置118からの制御高圧源圧が入力室R33に入力された場合、その制御高圧源圧によって中間ピストン1226は前進させられ、同様にして、第1加圧室R31,第2加圧室R32のブレーキ液が加圧される。本シリンダ装置1210は、操作力と制御高圧源圧とのいずれによってもブレーキ液の加圧がなされ、それらの両方が入力された場合には、それらの両方に依拠して加圧されたブレーキ液が出力される。つまり、本シリンダ装置1210は、常時、ブレーキ操作力と制御高圧源圧との両方に応じて加圧されたブレーキ液をブレーキ装置116に供給可能に構成されているのである。
【0302】
ブレーキペダル150の操作に対する反力、つまり、操作反力は、上述した弾性力付与機構の作用により付与され、先に説明した図3のような特性を示すことになる。詳しく言えば、浮動座1294の中間ピストン1226への当接によって反力スプリング1290の弾性変形が禁止された段階で、操作反力勾配が増加する。さらにブレーキペダル150の操作が進んで、浮動座1294が入力ピストン1228に当接した時点で、入力ピストン1228と中間ピストン1226との相対移動が禁止され、それ以上操作量の増加を伴うブレーキペダル150の操作はできなくなる。弾性力付与機構は、ストロークシミュレータとして機能するものであり、弾性力に抗する状態での入力ピストン1228の前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構として機能する。
【0303】
このシリンダ装置1210の出力圧POは、操作力Fと制御高圧源圧PCとの両方に依存し、中間ピストン1226の入力室R33に対する受圧面積(概して後端面の面積に等しい)をAIと、第1加圧ピストン1222,第2加圧ピストン1224の第1加圧室R31,第2加圧室R32に対する受圧面積(概してそれぞれのピストン1222,1224の断面積は等しい)をAOとすれば、下記式で表すことができる。
PO=(F+AI・PC)/AO
ここで、説明を簡単にするために、回生制動力を除外するとともに制御高圧源圧PCが操作力Fによって決定されると考えると、制御高圧源圧PCは操作力Fに対する関数と考えることができ、出力圧POは下記式で表すことができる。
PO={F+AI・PC(F)}/AO
後に説明するように、大制動力必要時に高圧源圧と操作力との両方に依存した高い制動力が得られるように、本シリンダ装置1210は、常に、PO≧PC(F)となるように、受圧面積AI,AOが設定されている。
【0304】
≪本液圧ブレーキシステムの作動≫
失陥時には、シリンダ装置カット弁1334,1336は開弁状態とされており、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342,4つの減圧開閉弁1346はともに閉弁状態とされている。そのため、シリンダ装置1210からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が許容されるとともに、高圧源装置118からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が禁止されるシリンダ装置供給状態が実現される。また、増圧リニア弁250,減圧リニア弁252は、それぞれ、閉弁状態,開弁状態となっており、高圧源装置118は機能していない。この状態では、結果的に、シリンダ装置1210において、操作力に依存してブレーキ液を加圧する状態、つまり、操作力依存加圧状態が実現されることになる。そのため、シリンダ装置1210から操作力によって加圧されたブレーキ液がシリンダ装置1210に供給されブレーキ装置116FL,FRは、操作力に依存して制動力を発生させる状態、つまり、制動力依存制動状態が実現される。
【0305】
通常時は、シリンダ装置カット弁1334,1336は、励磁されて閉弁状態となり、また、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342も、励磁されて開弁状態となる。ちなみに、4つの減圧開閉弁1346は、基本的には、励磁されず、閉弁状態とされたままである。そのため、通常時は、シリンダ装置1210からブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給が遮断されるとともに、高圧源装置118から4つのブレーキ装置116へのブレーキ液の供給が許容される状態、つまり、高圧源装置供給状態が実現される。この状態では、4つのブレーキ装置116には、増減圧装置120を介して、高圧源装置118からのブレーキ液が供給される。その結果、高圧源装置118から、制御高圧源圧がブレーキ装置に入力され、ブレーキ装置116は、制御液圧源圧に依存して制動力を発生させる状態、つまり、高圧源圧依存制動状態が実現される。なお、その状態において、シリンダ装置1210は、上述したように、ブレーキペダル150の操作に応じて、操作力と制御高圧源圧との両方に依存してブレーキ液を加圧する状態、つまり、操作力・高圧源圧依存加圧状態となっており、ブレーキ装置116FL,FRにはブレーキ液が供給されないものの、上述の出力圧を出力する状態となっている。
【0306】
大制動力必要時には、シリンダ装置カット弁1334,1336は、開弁状態とされ、アンチロック装置114の4つの増圧開閉弁1342のうち前輪に対応した2つの増圧開閉弁1342FL,FRは、閉弁状態とされる。その結果、前輪側の2つのブレーキ装置116FL,FRに対して、上記シリンダ装置供給状態が実現される。この状態では、操作力・高圧源圧依存加圧状態となっているシリンダ装置1210からブレーキ液がブレーキ装置116FL,FRに供給され、ブレーキ装置116FL,FRには、上述の出力圧が入力される。したがって、ブレーキ装置116FL,FRに対しては、操作力と制御高圧源圧との両方に依存した大きさの制動力を発生させる状態、つまり、操作力・高圧源圧依存制動状態が実現されることになる。
【0307】
上記操作力・高圧源圧依存制動状態において、シリンダ装置1210から供給される出力圧は、上述のように、その時点での制御高圧源圧よりも高くされている。そのため、制御高圧源圧が限界圧となった場合、つまり、高圧源装置118が発生している圧力となった場合でも、ブレーキ装置116FL,FRは高圧源圧によって発生可能な制動力以上の制動力を発生させることができるのである。言い換えれば、操作力・高圧源圧依存制動状態では、制御高圧源圧に依拠する力に対して、ブレーキペダルに加えられた操作力が付加されることで、高圧源圧依存制動状態において発生可能な制動力である高圧源依存最大制動力よりも大きな制動力を発生させることができるのである。ちなみに、この制動力は、操作力を増加させればさせる程大きくなる。
【0308】
以上のように作動する本液圧ブレーキシステム1200では、シリンダ装置カット弁1334,1336、アンチロック装置114の2つの増圧開閉弁1342FL,FRの開閉によって、ブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給元が切換られる。したがって、それらの電磁式開閉弁1334,1336,1342FL,FRによって、高圧源圧依存制動状態において高圧源装置供給状態を実現させ、操作力・高圧源圧依存制動状態においてシリンダ装置供給状態を実現させる切換弁装置が構成されていると考えることができるのである。
【0309】
上記高圧源圧依存制動状態から上記操作力・高圧源圧依存制動状態への切換は、図14にフローチャートを示す制動力発生状態切換プログラムが、ブレーキECU48によって、極短い時間ピッチで実行されることによって行われる。このプログラムは図10のプログラムと類似するため、ここでは、詳しい説明を省略する。なお、本制動力発生状態切換プログラムに従えば、操作力指標パラメータの一種である制御高圧源圧に基づき、その制御高圧源圧が設定閾圧を超えた場合に、上記切換が行われる。
【0310】
≪本液圧ブレーキシステムの特徴≫
本液圧ブレーキシステム1200では、ブレーキ装置116FL,FRへのブレーキ液の供給元を高圧源装置とシリンダ装置との間で変更するという簡単な手段によって、ブレーキ装置116FL,FRについては、高圧源装置118からの液圧に依拠して発生可能な最大の液圧制動力よりも大きな制動力が得られる。また、加圧室R31,R32から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧が、常時、制御高圧源圧以上となるように、シリンダ装置1210が構成されているため、ブレーキ装置116FL,FRについては、制動力の発生状態が高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態に切換った時点で、液圧制動力の低下がなく、その時点での充分な制動力が確保されている。なお、出力圧が制御高圧源圧と等しくなるようにシリンダ装置を構成すれば、上記切換時の制動力変化が極めて小さく、スムーズに切換えることが可能である。
【0311】
≪変形例≫
上記第4実施例の液圧ブレーキシステム1200では、制御高圧源圧に基づいて、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成されているが、それに代え、出力圧が設定閾圧を超えた場合に上記切換を行うように液圧ブレーキシステムを構成することが可能である。また、高圧源圧と制御高圧源圧との差が設定圧を超えて小さくなった場合に、上記切換を行うようにすることも可能である。さらに、上述した入力ピストン前進許容機構、すなわち、ストロークシミュレータにおける上記操作限界となった場合に、上記切換を行うように構成することも可能である。
【0312】
また、上記第4実施例の液圧ブレーキシステム1200では、2つの前輪に設けられたブレーキ装置116FL,FRについてだけ、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成されているが、そのような構成に代え、液通路,開閉弁等を変更することにより、前後4つの車輪に設けられた4つのブレーキ装置116のすべてについて、高圧源圧依存制動状態から操作力・高圧源圧依存制動状態への切換が行われるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0313】
100:液圧ブレーキシステム 110:シリンダ装置 116:ブレーキ装置 118:外部高圧源装置 122:リザーバ 150:ブレーキペダル(操作部材) 400:ハウジング 402:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 406:中間ピストン 408:入力ピストン 480:第1反力スプリング(弾性力付与機構) 482:第2反力スプリング(弾性力付与機構) 520:第1入力室開閉弁 536:対向室開閉弁 R1:第1加圧室(加圧室) R2:第2加圧室 R3:第1入力室 R4:対向室 R5:第2入力室 R6:内部室 560:液圧ブレーキシステム 570:シリンダ装置 572:弁装置 574:リリーフ弁 600:液圧ブレーキシステム 610:シリンダ装置 612:開閉弁 640:液圧ブレーキシステム 650:シリンダ装置 652:弁装置 654:リリーフ弁 700:液圧ブレーキシステム 710:シリンダ装置 720:ハウジング 722:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 726:入力ピストン 780:本体部(本体部材) 782:補助ピストン(前端部材) 784:第1反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 786:第2反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 788:浮動座 836:外部連通路(室間連通路) 838:室間開閉弁 847:外部連通路 848:対向室開閉弁 R11:第1加圧室 R12:第2加圧室 R13:入力室 R14:対向室 R15:ピストン間室 R16:内部室 R17:反力室 900:液圧ブレーキシステム 910:シリンダ装置 920:補助ピストン(前端部材) 922:外筒部材 924:内筒部材 926:ボール 928:付勢スプリング 930:係合ピン 1000:液圧ブレーキシステム 1010:シリンダ装置 1020:ハウジング 1022:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 1026:入力ピストン 1066:反力スプリング(弾性力依拠加圧機構) 1116:第1入力室開閉弁 1132:対向室開閉弁 R21:第1加圧室 R22:第2加圧室 R23:第1入力室 R24:第2入力室 R25:対向室 R26:大気圧室 R27:内部室 1200:液圧ブレーキシステム 1210:シリンダ装置 1220:ハウジング 1222:第1加圧ピストン(加圧ピストン) 1226:中間ピストン 1228:入力ピストン 1290:第1反力スプリング(弾性力付与機構) 1292:第2反力スプリング(弾性力付与機構) 1334:シリンダ装置カット弁(切換弁装置) 1336:シリンダ装置カット弁(切換弁装置) 1342:増圧開閉弁(切換弁装置) R31:第1加圧室 R32:第2加圧室 R33:入力室 R34:環状室 R35:内部室
Claims (15)
- 車輪に設けられたブレーキ装置と、
加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能なシリンダ装置と、
運転者によるブレーキ操作が行われるブレーキ操作部材と、
高圧のブレーキ液を供給する高圧源装置と、
その高圧源装置からのブレーキ液の圧力を前記ブレーキ操作部材の操作に基づいて制御する高圧源圧制御装置と、
(a)その高圧源圧制御装置によって制御された前記高圧源装置からのブレーキ液の圧力である制御高圧源圧に依存した大きさの制動力を発生させる高圧源圧依存制動状態と、(b)前記制御高圧源圧に依存した大きさの制動力に加えて、前記ブレーキ操作部材に加えられた運転者の力であるブレーキ操作力に依存した大きさの制動力を発生させることによって、前記高圧源圧依存制動状態において前記制御高圧源圧が前記高圧源装置から供給されるブレーキ液の圧力と等しくなった場合に発生する高圧源依存最大制動力より大きな制動力を発生可能な操作力・高圧源圧依存制動状態とを選択的に実現させる制動力発生状態切換装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
その加圧ピストンの後方に配設され、後端部において前記ブレーキ操作部材に連結される入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
前記制動力発生状態切換装置として機能し、(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を禁止して、前記制御高圧源圧に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記ブレーキ操作力の前記入力ピストンから前記加圧ピストンへの伝達を許容しつつ、そのブレーキ操作力と前記制御高圧源圧との両方に応じた前記加圧室のブレーキ液の加圧を許容する操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるシリンダ作動状態切換機構と
を備えた請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。 - シリンダ作動状態切換機構が、前記ブレーキ操作力を指標する操作力指標パラメータが設定閾値を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。
- シリンダ作動状態切換機構が、前記制御高圧源圧と前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧との一方が設定圧を超えた場合に、前記シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。
- シリンダ作動状態切換機構が、前記高圧源装置によって供給されるブレーキ液の圧力である高圧源圧と前記制御高圧源圧との差が、設定差を超えて小さくなった場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。
- 前記シリンダ装置が、
前記高圧源圧依存加圧状態において、弾性力に抗する状態での前記入力ピストンの前進を、設定前進量だけ許容する入力ピストン前進許容機構を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記高圧源圧依存加圧状態において前記入力ピストンが前記設定前進量前進した場合に、シリンダ装置の作動状態を、前記高圧源圧依存加圧状態から前記操作力・高圧源圧依存加圧状態に切換えるように構成された請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ装置が、
本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された中間ピストンを備え、
前記入力ピストンがその中間ピストンの後方から前記ブレーキ操作力をその中間ピストンに伝達するようにされており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記中間ピストンの前進を禁止するとともに、前記第1入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記中間ピストンの前進を許容するとともに、前記第1入力室を密閉し、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された請求項2ないし請求項6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された請求項7に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記加圧ピストンが、後端に開口する有底穴を有するとともに、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記加圧室が前記本体部の前方に、前記入力室が前記鍔部の後方に、それぞれ区画されるとともに、前記鍔部を挟んでそれの前方に、前記入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記入力ピストンが、それの前方に前記加圧ピストンとによってピストン間室が区画されるようにして、前記加圧ピストンの有底穴に嵌入されており、
前記シリンダ装置が、前記加圧ピストンの進退に伴う前記対向室の容積変化と前記ピストン間室の容積変化とを相互に吸収可能とすべく、それら対向室とピストン間室とを連通させるための室間連通路を有し、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記室間連通路を開通させて前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を許容するとともに、前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容し、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するとともに前記対向室と前記リザーバとを連通させて、前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの相対移動を制限しつつそれらの前進を許容することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された請求項2ないし請求項6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記室間連通路に設けられた室間開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および室間開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧操作力依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された請求項9に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記入力ピストンが、本体部とその本体部の外周に形成された鍔部とを有し、前記入力室として機能する第1入力室、第2入力室が、それぞれ、前記本体部の前方、前記鍔部の後方に区画されるとともに、前記鍔部の前方にその鍔部を挟んで前記第2入力室と対向する対向室が区画されるようにして配設されており、
前記シリンダ作動状態切換機構が、
(a)前記対向室を密閉して前記入力ピストンの前進を制限するとともに、前記第1入力室および第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容することで、前記高圧源圧依存加圧状態を実現させ、(b)前記対向室とリザーバとを連通させて前記入力ピストンの前進の制限を解除するとともに、前記第2入力室への前記制御高圧源圧の入力を許容したままで前記第1入力室を密閉することで、前記操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるように構成された請求項2ないし請求項6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ作動状態切換機構が、
前記対向室と前記リザーバとを連通する連通路に設けられた対向室開閉弁と、前記第1入力室と前記高圧源装置とを連通する連通路に設けられた第1入力室開閉弁とを有し、それら対向室開閉弁および第1入力室開閉弁の作動によって前記高圧源圧依存加圧状態と前記操作力・高圧源圧依存加圧状態とを選択的に実現させるように構成された請求項11に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ装置が、常時、前記ブレーキ操作力と自身に入力された前記制御高圧源圧との両方に応じて加圧されたブレーキ液を前記ブレーキ装置に供給可能に構成され、かつ、当該液圧ブレーキシステムが、前高圧源装置からのブレーキ液が前記高圧源圧制御装置を介しかつ前記シリンダ装置を経ずに前記ブレーキ装置へ供給可能とされ、
前記制動力発生状態切換装置が、
(a)前記高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が遮断されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容される高圧源装置供給状態を実現させ、(b)前記操作力・高圧源圧依存制動状態において、前記シリンダ装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が許容されるとともに、前記高圧源装置から前記ブレーキ装置へのブレーキ液の供給が禁止されるシリンダ装置供給状態を実現させる切換弁装置を有する請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ装置が、
前端部が閉塞された筒状のハウジングと、
自身の前方において前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液を加圧する加圧室が区画されるようにして、前記ハウジング内に配設された加圧ピストンと、
自身の後端部において前記ブレーキ操作部材に連結され、前記ブレーキ操作力を常時伝達可能に前記加圧ピストンと連結された入力ピストンと、
前記加圧ピストンの後方に設けられ、前記制御高圧源圧が入力される入力室と
を有する請求項13に記載の液圧ブレーキシステム。 - 前記シリンダ装置が、
前記加圧室から出力されるブレーキ液の圧力である出力圧が、常時、前記制御高圧源圧以上となるように構成された請求項14に記載の液圧ブレーキシステム。
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