JP5177119B2 - 熱間プレス用鋼板 - Google Patents
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Description
質量%で、C:0.25〜0.45%、Mn+Cr:0.5〜3.0%、Nb:0.04〜1.0%および下記式(1)を満たす量のTiを含有し、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有する引張強さが1.8GPa以上の熱間プレス鋼板部材用鋼板。
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
ここで、式中のTiおよびNは鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1.0%以下を含有してもよい。
本発明における素地鋼板としての鋼板の化学組成については、以下のように規定する。
Cは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を主に決定する非常に重要な元素である。特に、焼入れ後強度でTS1.8GPa以上を確保するためには、C含有量を少なくとも0.25%とする必要がある。一方で、C含有量が0.45%を超えると、焼入れ後の強度が高くなりすぎるため、靱性劣化が著しくなる。より望ましいC含有量は0.28〜0.33%である。
MnおよびCrは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。しかしMnおよびCrの合計含有量(以下、「(Mn+Cr)含有量」ともいう。)が0.5%未満ではその効果は十分ではなく、一方で(Mn+Cr)含有量が3.0%を超えるとその効果は飽和し、逆に安定した強度確保が困難となる。より望ましい(Mn+Cr)含有量は0.8〜2.0%である。
Bは、任意添加元素であり、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度の安定確保効果をさらに高めるのに有効である。また、粒界に偏析して粒界強度を高め、靱性を向上させる点でも重要な元素である。さらに、加熱時のオーステナイト粒成長抑制効果も高い。しかし、B含有量が0.01%を超えるとその効果は飽和し、かつコスト増を招く。より望ましいB含有量は0.001〜0.0030%である。
これらの元素は、鋼板の焼入れ性を高めかつ焼入れ後強度の安定確保に効果の有る元素である。しかし、上限値以上に含有させてもその効果は小さく、かついたずらにコスト増を招くため、各合金元素の含有量は上述の範囲とする。
Nbは、任意添加元素であり、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、再結晶を抑制しかつ微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。しかし、Nb含有量が1.0%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいNb含有量は0.01〜0.2%であり、さらに望ましくは0.04〜0.15%である。
Moは、任意添加元素であり、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。しかしMo含有量が1.0%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいMo含有量は0.01〜0.2%であり、さらに望ましくは0.04〜0.15%である。
Tiは、任意添加元素であり、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。かかる効果を確実に得るためにTi含有量を(3.42N+0.001)以上とすることが好ましい。一方で、Ti含有量が(3.42N+0.5)超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいTi含有量は3.42N+0.02≦Ti≦3.42N+0.08である。
Caは、任意添加元素であり、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後の靱性を向上させる効果を有する。かかる効果を確実に得るためにCa含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Ca含有量が0.005%を超えるとその効果は飽和する。より望ましいCa含有量は0.002〜0.004%である。
Pは、焼入れ後の靱性を大きく劣化させる元素であるため、0.005%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.003%以下である。
Sは、焼入れ後の靱性を大きく劣化させる元素であるため、0.005%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.003%以下である。
Nは、鋼中にて介在物を形成し、焼入れ後の靱性を劣化させる元素であるため、0.002%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.001%以下である。
熱間プレス工程において焼入れを行い目的とする強度と靱性を得るために、熱間プレスに供する鋼板をAc3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域で5分以下の時間保持する。保持温度の下限は一旦オーステナイト単相として目的とする強度を得るためであり、保持温度の上限および保持時間の上限は、焼入れ後の旧オーステナイト粒径を10μm以下に抑制し、TSが1.8GPa以上の強度下で靱性を確保するためである。保持温度を(Ac3点+100℃)超とするか、あるいは保持時間を5分超とすると、旧オーステナイト粒径は10μm以上となり、靱性が確保できなくなる場合がある。より望ましい保持温度は、Ac3点以上、(Ac3点+50℃)以下で、より望ましい保持時間は2分以下である。なお、旧オーステナイト粒径は細粒であればあるほど好ましいので、保持時間の下限は特に規定しない。
TSが1.8GPa以上の強度下で靱性を少しでも改善するためには、焼入れ後の組織を、完全マルテンサイト組織とするのではなく、自動焼き戻しマルテンサイト組織することが肝要である。この自動焼き戻しマルテンサイト組織にするためには、Ms点までは拡散変態が起きないように上部臨界冷却速度以上で冷却し、そしてMs点から150℃までの温度範囲の平均冷却速度を10〜500℃/sという冷却速度にする。Ms点から150℃までの好ましい平均冷却速度は15〜200℃/sである。
(2)水冷金型の場合、Ms点到達直後に金型中の流水量を変化させて、冷却速度を変える;
(3)Ms点到達直後に、金型と部材の間に水を流し、その水量を変化させることで、冷却速度を変える。
表1に示した化学組成を有する鋼板(板厚:1.6mm)を素地鋼板とした。これらの鋼板は、実験室にて溶製したスラブを、熱間圧延、冷間圧延により製造した鋼板である。さらに、めっきシミュレーターを用いて、鋼種No.1にはAlめっき(片面あたりのめっき付着量は120g/m2)、No.2には溶融亜鉛めっき(片面あたりのめっき付着量は60g/m2)を施した。さらに、No.2には合金化処理(めっき皮膜中のFe含有量は15質量%)を行った。めっきシミュレーターにおける焼鈍温度は、800℃であり、800℃からMs点までの平均冷却速度は5℃/sあった。No.1、No.2以外の鋼板は、冷間圧延まま(フルハード)で以下の試験に供した。
また1.6tの鋼板を6枚積層してネジ止めした後、Vノッチ試験片を作製し、シャルピー衝撃試験に供した。靱性評価としては、−120℃での衝撃値が30J/cm2以上となる場合に合格として○とした。それに達しないのは「×」とした。
鋼種No.1〜13は、引張強さが1.8GPa以上でかつ靱性値も良好であることがわかる。一方、比較例である鋼種No.14及び15は、本発明範囲を満足しないため、靱性値が不芳である。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.25〜0.45%、Mn+Cr:0.5〜3.0%、Nb:0.04〜1.0%および下記式(1)を満たす量のTiを含有し、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有する引張強さが1.8GPa以上の熱間プレス鋼板部材用鋼板。
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
ここで、式中のTiおよびNは鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.01%以下を含有する、請求項1に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1.0%以下を含有する、請求項1または2に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.001〜0.005%を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、不純物であるP、SおよびNの1種または2種以上を、質量%で、P:0.005%以下、S:0.005%以下およびN:0.002%以下の1条件または2条件以上を満足するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板。
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