JP5176085B2 - プロテインs及びプロテインcの活性測定方法並びに活性測定試薬 - Google Patents

プロテインs及びプロテインcの活性測定方法並びに活性測定試薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液凝固反応に係わる成分(因子)の試料中の存在量(濃度)又はその変異により、測定値が影響を受けることがなく、高感度に測定を行うことができる、試料中のプロテインSの活性の測定方法及び測定試薬に関するものである。
また、本発明は、血液凝固反応に係わる成分(因子)の試料中の存在量(濃度)又はその変異により、測定値が影響を受けることがなく、高感度に測定を行うことができる、試料中のプロテインCの活性の測定方法及び測定試薬に関するものである。
本発明は、特に、臨床検査、分子生物学、及び医学などの生命科学分野等において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
プロテインCとプロテインSは、いずれも生体内の血液凝固系の制御機構において中心的に機能する血漿タンパク質である。
このプロテインC及びプロテインSによる血液凝固系の制御機構の模式図を、下に示した。
【0003】
【化3】
Figure 0005176085
【0004】
プロテインCは生体内において、トロンビン・トロンボモジュリン複合体により限定分解され活性化ペプチドが遊離することにより活性化され、活性化プロテインCとなる。
活性化プロテインCは、ヒトおける血液凝固を促進する活性化血液凝固第V因子、及び活性化血液凝固第VIII因子を分解することにより、血液凝固反応を抑制する役割を担ったセリンプロテアーゼである。
プロテインSは、活性化プロテインCの補欠因子(補助因子)であり、プロテインSの存在により、活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応及び活性化血液凝固第VIII因子の分解反応は、促進される。
【0005】
血液凝固反応を抑制する働きを持つプロテインC及びプロテインSの活性の低下又は欠損は、生体内において血栓症を引き起こす原因となりうる。
実際、プロテインC又はプロテインSの先天性欠損症者は、高い頻度で深部静脈血栓症、表在性静脈炎若しくは肺梗塞などの静脈性血栓症、又は心不全の原因となる冠状動脈血栓症などの動脈性血栓症等を発症することになる。
また、播種性血管内凝固症候群(DIC)、ビタミンK欠乏症又は肝機能低下症等においても、プロテインC及びプロテインSの活性の低下又は欠損が認められる。
即ち、血漿等の試料中のプロテインCの活性又はプロテインSの活性を測定することにより、プロテインC又はプロテインSの活性の低下又は欠損を把握することができ、引いては血栓症等の疾患の発症の予測、早期発見及び治療効果の判定等に重要な役割を果たすものである。
【0006】
試料中のプロテインCの活性又はプロテインSの活性を測定する方法として、試料を蛇毒からのプロテインC−活性化剤と共に、活性化プロテインC又はプロテインSの形成下にインキュベートし、血液凝固第XII因子、血液凝固第VII因子又は血液凝固第II因子(プロトロンビン)の活性化剤を添加し、かつ血液凝固因子及びその活性剤により媒介される、プロトロンビンからのトロンビンの形成の減少を、色素原トロンビン基質を使用して測光測定する方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0007】
別の試料中のプロテインSの活性を測定する方法として、血漿試料にプロテインCを活性化するプロテインC活性化物質又は活性化プロテインCを添加し、次に活性化血液凝固第IX因子を加えインキュベートし、生成するトロンビンの量を知られた方法で測定し、これをプロテインS活性が既知の標品を測定して得た値と比較して、試料中のプロテインSの活性を測定する方法が開示されている(特許文献2参照。)。
【0008】
また、他の試料中のプロテインCの活性を測定する方法として、血漿試料にプロテインCを活性化するプロテインC活性化物質又はプロテインSを添加し、次に活性化血液凝固第IX因子を加えインキュベートし、生成するトロンビンの量を知られた方法で測定し、これをプロテインC活性が既知の標品を測定して得た値と比較して、試料中のプロテインCの活性を測定する方法が開示されている(特許文献2参照。)。
【0009】
更に、別の試料中のプロテインSの活性を測定する方法として、試料を、活性化プロテインC、血液凝固第VIII因子、リン脂質及びカルシウムイオンとインキュベートし、次にこの混合物を、活性化血液凝固第II因子(トロンビン)、活性化血液凝固第IX因子及び活性化血液凝固第X因子とインキュベートし、次にこのインキュベーション混合物へ活性化血液凝固第X因子特異性基質を添加し、この基質の開裂によって生成したシグナルの量を測定することよりなる、試料中のプロテインSの活性を測定する方法が開示されている(特許文献3参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開昭62−212569号公報
【特許文献2】
特表平4−506603号公報
【特許文献3】
特表平6−504682号公報
【0011】
これら従来の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬、並びにプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬においては、その測定反応に使用する血液凝固反応の成分(因子)の少なくとも一つは、試料に含まれている成分(因子)をそのまま用いている。すなわち、試料に含まれている成分に依存している。
【0012】
しかしながら、この試料に含まれている成分(因子)を測定反応に用いる場合、その成分(因子)〔例えば、活性化血液凝固第X因子〕がその試料提供者において欠損又は低下しているときには、前記測定反応の反応成分(因子)の少なくとも一つが十分量存在しない訳であるから、測定反応は十分に進行せず、得られる測定値(プロテインC活性値又はプロテインS活性値)は、場合により本来の値よりかい離し、誤差を含むものになる。
即ち、測定値が、血液凝固反応に係わる成分(因子)の試料中の存在量(濃度)又はその変異により、影響を受けてしまうことが起こるのである。
これは、プロテインC活性又はプロテインS活性を測定しようとする患者は、血液凝固・線溶系に異常が生じている可能性が高く、それ故、前記反応成分(因子)が欠損又は低下している可能性が大きいので、前記のような問題は決して稀なことではないのである。
【0013】
また、従来の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬、並びにプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬は、その測定反応が数多くの反応を経るものであり、測定に必要な成分も多く、複雑なものであった。このためこの測定反応は様々な因子や種々の条件による影響を受け易いものであった。
【0014】
更に、従来の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬、並びにプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬は、測定の感度が十分高いとは言えないものであった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血液凝固反応に係わる成分(因子)の試料中の存在量(濃度)又はその変異により、測定値が影響を受けてしまうことがなく、測定反応に用いる反応の数及び測定に必要な成分の数が多くなく、よりシンプルなものであって、様々な因子や種々の条件による影響を受け難いものであり、かつ高い測定感度が得られる、試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬、並びに試料中のプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
1.試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬
本発明は、試料中のプロテインSの活性値を測定する方法であって、
(a) 試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を試料と接触させ、
(b) 前記(a)の各成分による反応の結果トロンビンの基質から生成されるシグナル量を測定し、
(c) 試料に含まれるプロテインSの活性に応じて生成が抑制されたシグナル量を求める、
ことにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得る試料中のプロテインSの活性測定方法である。
【0017】
また、本発明は、試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインSの活性値を測定する方法であって、
【0018】
【化4】
Figure 0005176085
【0019】
(1) 試料と少なくとも活性化プロテインC及びリン脂質を接触させることにより、試料にプロテインSが含まれる場合にはリン脂質の存在下に活性化プロテインCが更に活性化され、
(2) 活性化プロテインCの前記(1)における更なる活性化により、活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に触媒する活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進され、
(3) 活性化血液凝固第V因子により促進される、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応が、前記(2)における活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進されることにより抑制されて、トロンビンの生成が低減し、
(4) 前記(3)におけるトロンビンの生成の低減により、トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制され、
(5) 前記(4)における反応の抑制により生成が抑制されたシグナル量を測定する、
ことにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得る試料中のプロテインSの活性測定方法である。
【0020】
更に、本発明は、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を含有する試料中のプロテインSの活性測定試薬である。
【0021】
2.試料中のプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬
本発明は、試料中のプロテインCの活性値を測定する方法であって、
(a) 試料に由来しない、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を試料と接触させ、
(b) 前記(a)の各成分による反応の結果トロンビンの基質から生成されるシグナル量を測定し、
(c) 試料に含まれるプロテインCの活性に応じて生成が抑制されたシグナル量を求める、
ことにより、試料中に含まれていたプロテインCの活性値を得る試料中のプロテインCの活性測定方法である。
【0022】
また、本発明は、試料に由来しない、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインCの活性値を測定する方法であって、
【0023】
【化5】
Figure 0005176085
【0024】
(1) 試料と少なくともプロテインC活性化物質を接触させることにより、試料にプロテインCが含まれる場合には、プロテインCより活性化プロテインCが生成し、
(2) これにより生成した活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に触媒する活性化血液凝固第V因子の分解反応が進行し、
(3) 活性化血液凝固第V因子により促進される、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応が、前記(2)における活性化血液凝固第V因子の分解反応が進行することにより抑制されて、トロンビンの生成が低減し、
(4) 前記(3)におけるトロンビンの生成の低減により、トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制され、
(5) 前記(4)における反応の抑制により生成が抑制されたシグナル量を測定する、
ことにより、試料中に含まれていたプロテインCの活性値を得る試料中のプロテインCの活性測定方法である。
【0025】
更に、本発明は、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を含有する試料中のプロテインCの活性測定試薬である。
【0026】
【発明の実施の形態】
I.試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬
1.総論
本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法は、試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインSの活性値を測定する方法である。
【0027】
【化6】
Figure 0005176085
【0028】
ここで、「試料に由来しない」とは、試料に含まれていたもの以外の、という意味であり、本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法においては、測定反応に必要な各成分(因子)〔活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質〕は、試料に含まれていたものに依存し用いるのではなく、試料に含まれていたもの以外のものを別に添加するなどして、測定反応系に充分な量の各成分(因子)を存在させて用いる。
【0029】
これにより、例え、前記の各成分(因子)のいずれかが欠損又は低下しているような患者の試料においても、その成分(因子)の欠損又は低下による影響を受けることなく測定反応が進行し、正確なプロテインSの活性値を求めることができるのである。
【0030】
但し、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、試料に含まれていた前記成分が測定反応において働いたとしても、それは本発明において問題ないものであり、本発明の趣旨から外れるものではない。
【0031】
本発明においては、測定反応に必要な各成分(因子)を測定反応を進行させるのに十分な量存在させて、試料に含まれる成分(因子)の量に依存せず影響を受けないようにしているものであって、試料に含まれていた成分(因子)が更に働いたとしても、測定反応において支障はなく、本発明の趣旨に相違するものではない。
【0032】
本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬について、以下、より具体的に説明を行う。
(a) 前述の通りの試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質を試料と接触させる。
なお、これらの成分と試料との接触は、1回に全ての成分との接触を行わせて、下記の反応系の全ての反応を1段階に行ってもよく(1ステップ法)、また、前記成分を分け、接触を複数段階に分けて行うことにより下記の反応系の反応を複数段階に分けて行ってもよい(多ステップ法)。
【0033】
(b) 前記(a)における接触により、前記の各成分による下記の反応が進行する。
そして、この一連の反応によりトロンビンの基質から生成されるシグナル量を測定する。
即ち、前記の一連の反応により、トロンビンの基質がトロンビンにより分解等の作用を受け、この結果生じるシグナルの量(例えば、吸光度等)を測定する。
【0034】
(c) 試料にプロテインSが含まれている場合には、前記の反応における活性化プロテインCがリン脂質の存在下に更に活性化され、これにより活性化血液凝固第V因子の分解が促進されるので、その結果トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制されて、シグナルの生成が抑制される。
このシグナル生成の抑制度は、試料に含まれていたプロテインSの活性値に応じて大きくなる。
従って、前記(b)においてシグナル量を測定することにより、生成が抑制されたシグナル量を測定することになり、これにより試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得ることができる。
【0035】
【化7】
Figure 0005176085
【0036】
また、本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法は、以下のものでもある。
試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインSの活性値を測定する方法であって、
【0037】
(1) 試料と少なくとも活性化プロテインC及びリン脂質を接触させる。
これにより、試料にプロテインSが含まれる場合にはリン脂質の存在下に活性化プロテインCが更に活性化される。
【0038】
(2) 活性化プロテインCの前記(1)における更なる活性化により、活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に触媒する活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進される。
【0039】
(3) 活性化血液凝固第V因子により促進される、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応が、前記(2)における活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進されることにより抑制されて、トロンビンの生成が低減する。
【0040】
(4) 前記(3)におけるトロンビンの生成の低減により、トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制される。
なお、このシグナル生成の抑制度は、試料に含まれていたプロテインSの活性に応じて大きくなる。
【0041】
(5) 前記(4)における反応の抑制により生成が抑制されたシグナル量を測定する。
以上の通り前記の反応により生成したシグナル量を測定し、すなわち生成が抑制されたシグナル量を測定することにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得る。
【0042】
【化8】
Figure 0005176085
【0043】
本発明の試料中のプロテインSの活性測定試薬は、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を含有するものである。
必要に応じて前記成分以外の成分を含んでいても構わない。
なお、本発明の活性測定試薬は、含有させる前記成分を分け、複数の測定試薬より構成されるようにしてもよい。
【0044】
2.試料
本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬において、試料とは、プロテインSを含有する可能性がある物質である。
【0045】
この試料として、例えば、生体試料(ヒト又は動物などに由来する試料)を挙げることができる。
【0046】
生体試料としては、例えば、血液、血漿、唾液、汗、尿、涙、髄液、腹水、羊水などの生体の液体;肝臓、心臓、脳、骨、毛髪、皮膚、爪、筋肉、神経組織などの臓器、組織、細胞などの抽出液等を挙げることができる。
【0047】
3.活性化プロテインC
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いる活性化プロテインCは、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの等を挙げることができる。また、血漿等の体液若しくは臓器などから精製し調製したものや、又は遺伝子工学操作、細胞工学操作若しくは細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
また、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬における測定反応中に、プロテインC活性化物質等によりプロテインCより活性化プロテインCを生成させて、これを本発明における活性化プロテインCとして用いてもよい。
【0048】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、活性化プロテインCは、試料と接触することにより、試料中にプロテインSが含まれている場合には、リン脂質の存在下、その活性が更に活性化される。
そして、活性化プロテインCは、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、活性化血液凝固第V因子を分解する反応の触媒となる。
よって、プロテインSが存在することにより、活性化プロテインCが活性化血液凝固第V因子を分解する反応は促進される。
【0049】
前記の活性化プロテインC等と試料を接触させることと、活性化プロテインCを活性化血液凝固第V因子等と接触させることは、同時に行ってもよい。
しかしながら、活性化プロテインCをリン脂質とともに試料と接触させ、少なくとも1分間以上、好ましくは5分間以上、室温又は37℃等においてインキュベートした後に、活性化血液凝固第V因子及びカルシウムイオンと接触させ、インキュベートして、活性化血液凝固第V因子の分解反応を行わせることが好ましい。
【0050】
この活性化プロテインCを用いる際の濃度は、活性化血液凝固第V因子と接触させリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第V因子を分解させる際には、通常、1pM〜100nMにあることが好ましい。
しかしながら、測定の感度を高く得るには、活性化プロテインC濃度が高い方が好ましいので、前記の活性化プロテインC濃度としては、10pM〜10nMにあることがより好ましく、100pM〜1nMにあることが特に好ましい。
【0051】
また、本発明の活性測定試薬においては、前記の分解反応時に活性化プロテインCが前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、活性化プロテインCを、1pM〜200nM含有させることが好ましく、10pM〜20nM含有させることがより好ましく、100pM〜2nM含有させることが特に好ましい。
【0052】
4.活性化プロテインCによる触媒反応に用いるリン脂質
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、試料中に含まれていたプロテインSによる活性化プロテインCの更なる活性化時、及びこの活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応時には、その活性化及び分解反応に必要なリン脂質を存在させる。
【0053】
このリン脂質は、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの、その他の動物由来のもの、植物由来のもの、微生物由来のもの又は人工的に合成したもの等を挙げることができる。
このリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール若しくはジホスファチジルグリセロールなどのグリセロリン脂質や、又はスフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質等を挙げることができる。
【0054】
前記の活性化プロテインCの更なる活性化時、及び活性化血液凝固第V因子の分解反応時に用いるリン脂質としては、ホスファチジルコリンのみを単独で用いるか、又はホスファチジルコリンとホスファチジルセリンの混合物を用いることが、前記活性化及び分解反応促進の効果が高くなるため好ましい。
ホスファチジルコリンの組成比が85%〜70%であり、かつホスファチジルセリンの組成比が15%〜30%であることがより好ましい。
特に、ホスファチジルコリンの組成比が85%〜80%であり、かつホスファチジルセリンの組成比が15%〜20%であることが好ましい。
【0055】
このリン脂質を用いる際の濃度は、活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応の際には、通常、0.1μM〜100μMにあることが好ましく、0.5μM〜10μMにあることが特に好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、前記の活性化時及び分解反応時にリン脂質が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、リン脂質を0.1μM〜200μM含有させることが好ましく、0.5μM〜20μM含有させることが特に好ましい。
【0056】
5.カルシウムイオン
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応時、及び活性化血液凝固第X因子及び活性化血液凝固第V因子によるプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応時には、カルシウムイオンを存在させる。
【0057】
このカルシウムイオンとしては、カルシウムイオン自体はもちろんのこと、又はカルシウムの塩等のカルシウムイオンを含む化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
【0058】
このカルシウムイオンを含む化合物としては、例えば、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム又はシアン化カルシウム等を挙げることができる。
【0059】
このカルシウムイオンを用いる際の濃度は、活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応の際、そして活性化血液凝固第X因子及び活性化血液凝固第V因子によるプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際には、通常、0.1mM〜100mMにあることが好ましく、1mM〜10mMにあることが特に好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、前記の分解反応時及びトロンビン生成反応時にカルシウムイオンが前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、カルシウムイオン又はカルシウムイオンを含む化合物を、0.1mM〜200mM含有させることが好ましく、1mM〜20mM含有させることが特に好ましい。
【0060】
6.活性化血液凝固第V因子
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いる活性化血液凝固第V因子は、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの等を挙げることができる。また、血漿等の体液若しくは臓器などから精製し調製したものや、又は遺伝子工学操作、細胞工学操作若しくは細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
【0061】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、活性化血液凝固第V因子は、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、活性化プロテインCにより分解される。
そして、試料中にプロテインSが含まれている場合そのプロテインSの存在により、活性化プロテインCが更に活性化されて、この分解反応は促進される。
【0062】
また、活性化血液凝固第V因子は、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒する、プロトロンビンよりトロンビンを生成させる3反応を促進するものである。
【0063】
よって、試料中にプロテインSが含まれていると、活性化プロテインCが更に活性化されて、活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進されて、活性化血液凝固第V因子の存在量(濃度)は少なくなる。そうすると、活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応に対する活性化血液凝固第V因子の促進効果が小さくなるので、前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応は抑制される。
【0064】
前記の活性化血液凝固第V因子と活性化プロテインC等とを接触させることと、活性化血液凝固第V因子と活性化血液凝固第X因子及びプロトロンビン等とを接触させることは、同時に行ってもよい。
しかしながら、活性化血液凝固第V因子をリン脂質及びカルシウムイオンとともに活性化プロテインCと接触させ、少なくとも1分間以上、好ましくは5分間以上、室温又は37℃等においてインキュベートした後に、活性化血液凝固第X因子、リン脂質及びプロトロンビン等と接触させ、インキュベートして、プロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応を行わせることが好ましい。
【0065】
この活性化血液凝固第V因子を用いる際の濃度は、活性化プロテインCと接触させリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第V因子を分解させる際には、通常、0.5pM〜5nMにあることが好ましい。
しかしながら、この活性化血液凝固第V因子の濃度が高いと、試料に由来する成分(因子)等による血液凝固反応が進行してしまい、フィブリンが析出したり多大な発色が生じて正確な測定が行えなくなるので、前記の活性化血液凝固第V因子濃度としては、5pM〜500pMにあることがより好ましく、20pM〜200pMにあることが特に好ましい。
【0066】
また、本発明の活性測定試薬においては、前記の分解反応時に活性化血液凝固第V因子が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、活性化血液凝固第V因子を、0.5pM〜10nM含有させることが好ましく、5pM〜1nM含有させることがより好ましく、20pM〜400pM含有させることが特に好ましい。
【0067】
7.活性化血液凝固第X因子
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いる活性化血液凝固第X因子は、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの等を挙げることができる。また、血漿等の体液若しくは臓器などから精製し調製したものや、又は遺伝子工学操作、細胞工学操作若しくは細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
【0068】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、活性化血液凝固第X因子は、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、プロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応を触媒する。
この活性化血液凝固第X因子によるプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応は、活性化血液凝固第V因子の存在により促進される。
【0069】
よって、先に述べたように、試料中にプロテインSが含まれていると、活性化プロテインCが更に活性化され、これにより活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進され、このため活性化血液凝固第X因子が触媒するトロンビンを生成させる反応に対する活性化血液凝固第V因子の促進効果が小さくなるので、前記のトロンビンを生成させる反応は抑制される。
【0070】
この活性化血液凝固第X因子を用いる際の濃度は、活性化血液凝固第V因子及びプロトロンビン等と接触させ、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、プロトロンビンよりトロンビンを生成させる際には、通常、0.1pM〜300pMにあることが好ましい。
しかしながら、この活性化血液凝固第X因子の濃度が高いと、先の活性化血液凝固第V因子の場合と同様、試料に由来する成分(因子)等による血液凝固反応が進行してしまい、フィブリンが析出したり多大な発色が生じて正確な測定が行えなくなるので、前記の活性化血液凝固第X因子濃度としては、1pM〜100pMにあることがより好ましく、10pM〜50pMにあることが特に好ましい。
【0071】
また、本発明の活性測定試薬においては、前記のトロンビン生成反応時に活性化血液凝固第X因子が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、活性化血液凝固第X因子を、0.1pM〜600pM含有させることが好ましく、1pM〜200pM含有させることがより好ましく、10pM〜100pM含有させることが特に好ましい。
【0072】
8.活性化血液凝固第X因子による触媒反応に用いるリン脂質
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際に、その反応に必要なリン脂質を存在させる。
【0073】
このリン脂質は、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの、その他の動物由来のもの、植物由来のもの、微生物由来のもの又は人工的に合成したもの等を挙げることができる。
このリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール若しくはジホスファチジルグリセロールなどのグリセロリン脂質や、又はスフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質等を挙げることができる。
【0074】
前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際に存在させるリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルセリンとホスファチジルコリンとの混合物を用いることが、前記反応の促進の効果が高くなるため好ましい。
ホスファチジルエタノールアミンの組成比が40%以上であり、かつホスファチジルセリンの組成比が25%以上であることがより好ましい。
特に、ホスファチジルエタノールアミンの組成比が50%以上であり、かつホスファチジルセリンの組成比が30%以上であることが好ましい。
【0075】
このリン脂質を用いる際の濃度は、前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際には、通常、0.1μM〜100μMにあることが好ましく、0.5μM〜10μMにあることが特に好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際にリン脂質が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、リン脂質を0.1μM〜200μM含有させることが好ましく、0.5μM〜20μM含有させることが特に好ましい。
【0076】
なお、このプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際のリン脂質としては、前記の活性化プロテインCの更なる活性化時及び活性化血液凝固第V因子の分解反応時に用いたリン脂質をそのまま用いることができる。
しかしながら、先に述べたとおり、適したリン脂質の組成がそれぞれの反応により異なるので、各々の反応に適した組成のリン脂質をその反応時に存在させて用いることが好ましい。
なお、このプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応の際に、先に加えた前記の活性化プロテインCの更なる活性化及び活性化血液凝固第V因子の分解反応に適した組成のリン脂質が、このプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応に適した組成のリン脂質と共存したとしても、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては全く支障はない。
【0077】
9.プロトロンビン
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いるプロトロンビンは、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの等を挙げることができる。また、血漿等の体液若しくは臓器などから精製し調製したものや、又は遺伝子工学操作、細胞工学操作若しくは細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
【0078】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、プロトロンビンは、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、活性化血液凝固第X因子が触媒する反応の基質となり、トロンビンになる。
この活性化血液凝固第X因子によるプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応は、活性化血液凝固第V因子の存在により促進される。
【0079】
よって、先に述べたように、試料中にプロテインSが含まれていると、活性化プロテインCが更に活性化され、これにより活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進され、このため活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応に対する活性化血液凝固第V因子の促進効果が小さくなるので、前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応は抑制され、生成されるトロンビンの量(濃度)は低減される。
【0080】
このプロトロンビンを用いる際の濃度は、活性化血液凝固第V因子と接触させ、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、プロトロンビンよりトロンビンを生成させる際には、通常、1nM〜50μMにあることが好ましく、50nM〜5μMにあることがより好ましく、そして100nM〜1μMにあることが特に好ましい。
【0081】
また、本発明の活性測定試薬においては、前記のトロンビン生成反応時にプロトロンビンが前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、プロトロンビンを、1nM〜100μM含有させることが好ましく、50nM〜10μM含有させることがより好ましく、100nM〜2μM含有させることが特に好ましい。
【0082】
10.トロンビンの基質
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いるトロンビンの基質は、トロンビンのプロテアーゼとしての触媒作用を(トロンビンの基質として)受けることにより何らかのシグナルを生じるもの、又はトロンビンによる触媒反応に加え更に他の反応を続けることにより何らかのシグナルが生じるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0083】
この何らかのシグナルが生じるということであるが、これはトロンビンの触媒作用を受けることにより光学的、電気的、磁気的若しくは他のエネルギー等におけるシグナル(信号)の生成又は変化を検出することができるということを意味する。
【0084】
例えば、トロンビンの触媒作用を受けることにより、吸光度、透過率若しくは蛍光強度が変化するもの、又は光の吸収曲線が変化するもの等を挙げることができる。
【0085】
この一例としては、遊離したときに吸光度、透過率若しくは蛍光強度又は光の吸収曲線が変化するような化合物を結合したペプチド又はタンパク質であって、トロンビンの触媒作用により前記の化合物が前記のペプチド又はタンパク質より遊離するような物質を挙げることができる。
このような物質においては、トロンビンの触媒作用を受け、前記化合物が遊離することにより、吸光度、透過率若しくは蛍光強度又は光の吸収曲線の変化として検出できるので、トロンビンの触媒作用すなわちトロンビンの酵素活性を、生成したシグナル(吸光度、透過率若しくは蛍光強度又は光の吸収曲線の変化)の量を測定することにより求めることができる。
【0086】
このような物質としては、例えば、「H−D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二塩酸塩」〔テストチーム(登録商標)発色基質S−2238〕(CHROMOGENIX社・第一化学薬品社)、「H−D−ヘキサハイドロチロシル−L−アラニル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二酢酸塩」〔SPECTROZYME(登録商標)TH〕(AMERICAN DIAGNOSTICA社・コスモバイオ社)、「ベンゾイル−フェニルアラニル−バリニル−アルギニル−p−ニトロアニリド・塩酸塩」〔Thrombin Substrate I,Colorimetric〕(CALBIOCHEM社・コスモバイオ社)、「トシル−グリシル−プロリル−アルギニル−p−ニトロアニリド」〔CHROMOZYME TH〕(PENTAPHARM社)、「H−D−フェニルアラニル−プロリル−アルギニル−3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−アニリン」(三共社)、「ベンゾイル−フェニルアラニル−バリニル−アルギニル−AMC・塩酸塩」〔Thrombin Substrate III,Fluorogenic〕(CALBIOCHEM社・コスモバイオ社)、「t−ブトキシカルボニル−アスパラギル(O−ベンジル)−プロリル−アルギニル−MCA」(ペプチド研究所)、又は「t−ブトキシカルボニル−バリニル−プロリル−アルギニル−MCA」(ペプチド研究所)等を挙げることができる。なお、特に「H−D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二塩酸塩」が好ましい。
【0087】
前記の活性化血液凝固第V因子と活性化血液凝固第X因子とプロトロンビン等とを接触させることと、生成したトロンビンとこのトロンビンの基質とを接触させることは、同時に行ってもよいし、別々の段階として分けて行ってもよい。
【0088】
なお、いずれにしても、生成したトロンビンにトロンビンの基質を接触させ、少なくとも1分間以上、好ましくは5分間以上、室温又は37℃等においてインキュベートして、トロンビンの基質からシグナルを生じさせる。
【0089】
このトロンビンの基質を用いる際の濃度は、このトロンビンの基質がトロンビンの触媒作用を受ける際に、通常、5μM〜100mMにあることが好ましく、50μM〜10mMにあることが特に好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、トロンビンの触媒作用を受ける際にこのトロンビンの基質が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、このトロンビンの基質を、5μM〜200mM含有させることが好ましく、50μM〜20mM含有させることが特に好ましい。
【0090】
11.シグナル量の測定
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬におけるトロンビンの基質は、プロトロンビンより生成したトロンビンの触媒作用を受けることによりシグナルを生じる。
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、このトロンビンの基質より生成したシグナルの量を測定する。
なお、試料中にプロテインSが含まれている場合、このシグナルの量は、試料中のプロテインSの活性値に応じて生成が抑制されたシグナルの量である。
【0091】
この生成したシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)の測定は、そのシグナルに応じて適宜行えばよい。
例えば、シグナルが、吸光度、透過率若しくは蛍光強度又は光の吸収曲線の変化である場合には、吸光度、透過率又は蛍光強度を測定する等により行う。
より具体的には、トロンビンの基質が、前記の「H−D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二塩酸塩」、「H−D−ヘキサハイドロチロシル−L−アラニル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二酢酸塩」、「ベンゾイル−フェニルアラニル−バリニル−アルギニル−p−ニトロアニリド・塩酸塩」、又は「トシル−グリシル−プロリル−アルギニル−p−ニトロアニリド」等の、ペプチドにp−ニトロアニリンを結合させた物質である場合には、トロンビンの触媒作用により遊離したp−ニトロアニリンが波長405nm近辺に有する光の吸収を、波長405nm又はその近辺の波長において吸光度を測定することにより行う。
この場合、吸光度の測定は、主波長のみの一波長測定でもよいし、又は主波長と副波長において測定する二波長測定でもよい。
そして、この吸光度の測定は、エンドポイント法でもよいし、又はレート法でもよい。
【0092】
12.試料中に含まれていたプロテインSの活性値
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、試料中にプロテインSが含まれていると、活性化プロテインCが更に活性化されて、活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進されて、活性化血液凝固第V因子の存在量(濃度)は少なくなる。
そうすると、活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応に対する活性化血液凝固第V因子の促進効果が小さくなるので、前記のプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応は抑制される。
これにより、トロンビンの生成が低減するので、このトロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応も抑制されて、生成するシグナルの量は抑制される。
すなわち、試料中に含まれるプロテインSの活性値に応じて、このシグナル生成の抑制度は大きくなる。
従って、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、試料と活性化プロテインC等とを接触させ前記の通りの反応を行わせることによって生成したシグナル量を測定して、すなわち生成が抑制されたシグナル量を測定することにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得る。
【0093】
この生成が抑制されたシグナル量を測定した後、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得ることは、適宜行えばよいが、例えば以下のようにして行うことができる。
【0094】
プロテインSの活性値が分かっている試料の少なくとも一つと、プロテインSの活性値が「ゼロ」であることが分かっている試料(生理食塩水又は純水等)について、前記の通り測定操作を行い、生成したシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)を求める。
そして、この生成したシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)と試料中に含まれるプロテインSの活性値との関係を、数式又はグラフ等に表して、検量線を作成する。
この検量線は、すなわち、シグナル生成の抑制度と試料中に含まれるプロテインSの活性値との関係を表したものである。
次に、プロテインSの活性値が未知の試料について、前記の通り同様に測定操作を行い、生成したシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)を求める。
このシグナル量を前記の検量線に当てはめ、相当するプロテインSの活性値を求める。
これにより、プロテインSの活性値が未知の試料における生成したシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)より、その試料のプロテインSの活性値を得ることができる。
【0095】
なお、前記の検量線は、シグナル量(生成が抑制されたシグナル量)すなわちシグナル生成の抑制度と、試料中に含まれるプロテインSの活性値との関係を表したものであるが、この検量線におけるシグナル量(生成が抑制されたシグナル量)は、測定されたシグナル量そのものでもよいが、そのシグナル量の値を基に算出した数値であってもよい。
【0096】
つまり、前記の検量線は、測定されたシグナル量の値を基に算出した数値と、試料中に含まれるプロテインSの活性値との関係を表したものであってもよい。この場合であっても、測定されたシグナル量の値を基に算出した数値は、生成が抑制されたシグナル量に対応したものである。
【0097】
この測定されたシグナル量の値を基に算出した数値としては、例えば、測定されたシグナル量の単位時間当たりの変化量の数値、又は測定されたシグナル量の値を時間に対して一次微分して算出した数値、若しくは二次微分して算出した数値等を挙げることができる。
【0098】
例として、測定により得られた吸光度の1分間当たりの変化量、又は測定により得られた吸光度を時間に対して一次微分して得た吸光度変化の速度、若しくは測定により得られた吸光度を時間に対して二次微分して得た吸光度変化の加速度等を挙げることができる。
【0099】
13.タンパク質
本発明の活性測定方法及び活性測定方法においては、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)若しくは卵白アルブミンなどのアルブミン、カゼイン、又はゼラチン等のタンパク質を前記の活性測定反応時に存在させることが好ましく、又は活性測定試薬に含有させることが好ましい。
【0100】
このタンパク質を存在させる濃度は、通常、0.1μM〜1mMにあることが好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、このタンパク質が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、このタンパク質を、0.1μM〜2mM含有させることが好ましい。
【0101】
13.塩
本発明の活性測定方法及び活性測定方法においては、ハロゲン元素とアルカリ金属の塩又はハロゲン元素とアルカリ土類金属の塩等の塩を前記の活性測定反応時に存在させることが好ましく、又は活性測定試薬に含有させることが好ましい。
【0102】
ハロゲン元素とアルカリ金属の塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、臭化ナトリウム又は臭化カリウム等を挙げることができる。
また、ハロゲン元素とアルカリ土類金属の塩としては、例えば、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム又は臭化マグネシウム等を挙げることができる。
【0103】
この塩を存在させる濃度は、通常、5mM〜1Mにあることが好ましく、50mM〜250mMにあることが特に好ましい。
そして、本発明の活性測定試薬においては、この塩が前記の濃度となるように、活性測定試薬に含有させることが好ましい。
例えば、この塩を、5mM〜2M含有させることが好ましく、50mM〜500mM含有させることが特に好ましい。
【0104】
14.pH
本発明の活性測定方法においては、この活性測定反応を、pH6.0〜pH10.0(20℃)の範囲で行うことが好ましく、pH6.5〜pH8.5(20℃)の範囲で行うことが特に好ましい。
また、本発明の活性測定試薬は、活性測定反応が前記のpH範囲で行われるようなpHであることが好ましい。
例えば、本発明の活性測定試薬のpHが、pH6.0〜pH10.0(20℃)の範囲にあることが好ましく、pH6.5〜pH8.5(20℃)の範囲にあることが特に好ましい。
【0105】
なお、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、活性測定反応におけるpH又は活性測定試薬のpHを前記のpH範囲に保つため、前記のpH範囲に緩衝能を有する緩衝剤を適宜存在させ又は含有させることが好ましい。
【0106】
15.他の成分
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、必要に応じて適宜、防腐剤、安定化剤、活性化剤、糖類又は界面活性剤等の前記記載した成分以外の成分を前記の活性測定反応時に存在させ、又は活性測定試薬に含有させることができる。
【0107】
16.測定手法
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬における、試料中のプロテインSの活性の測定は、用手法により行ってもよく、又は自動分析装置等の装置を使用して行ってもよい。
【0108】
17.測定段階
本発明の活性測定方法おいて、前記詳述した活性測定反応は、1回に全ての成分と試料との接触を行わせて、全ての反応を1段階に行ってもよく(1ステップ法)、また、成分を分け、接触を複数段階に分けて行うことにより活性測定反応を複数段階に分けて行ってもよい(多ステップ法)。
複数段階に分ける場合、特に制限はないが、例えば次のように行うことができる。
【0109】
・ 2ステップ法−1
▲1▼ 試料、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン及び活性化血液凝固第V因子を接触させる。
▲2▼ 次に、前記▲1▼のものに、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質を接触させる。
【0110】
・ 2ステップ法−2
▲1▼ 試料、活性化プロテインC及びリン脂質を接触させる。
▲2▼ 次に、前記▲1▼のものに、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質を接触させる。
【0111】
・ 3ステップ法
▲1▼ 試料、活性化プロテインC及びリン脂質を接触させる。
▲2▼ 次に、前記▲1▼のものに、カルシウムイオン及び活性化血液凝固第V因子を接触させる。
▲3▼ 更に、前記▲2▼のものに、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質を接触させる。
【0112】
18.活性測定試薬の構成
本発明の活性測定試薬おいて、前記詳述した活性測定反応の各成分は、全て一つの試薬中に含有させてもよく(1試薬系)、また、各成分を複数の試薬に分けて含有させてもよい(複数試薬系)。
各成分を複数の試薬に分けて含有させる場合、特に制限はないが、例えば次のように含有させることができる。
【0113】
・ 2試薬系−1
▲1▼ 活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン及び活性化血液凝固第V因子。
▲2▼ 活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質。
【0114】
・ 2試薬系−2
▲1▼ 活性化プロテインC及びリン脂質。
▲2▼ カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質。
【0115】
・ 3試薬系
▲1▼ 活性化プロテインC及びリン脂質。
▲2▼ カルシウムイオン及び活性化血液凝固第V因子。
▲3▼ 活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン、トロンビンの基質及びリン脂質。
【0116】
・ 4試薬系
▲1▼ 活性化プロテインC及びリン脂質。
▲2▼ カルシウムイオン及び活性化血液凝固第V因子。
▲3▼ 活性化血液凝固第X因子及びリン脂質。
▲4▼ プロトロンビン及びトロンビンの基質。
【0117】
II.試料中のプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬
1.総論
本発明の試料中のプロテインCの活性測定方法は、試料に由来しない、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインCの活性値を測定する方法である。
【0118】
【化9】
Figure 0005176085
【0119】
この「試料に由来しない」については、先の「I.試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬」の項において述べた通りである。
【0120】
本発明の試料中のプロテインCの活性測定方法について、以下、より具体的に説明を行う。
(a) 前述の通りの試料に由来しない、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質を試料と接触させる。
なお、これらの成分と試料との接触は、1回に全ての成分との接触を行わせて、下記の反応系の全ての反応を1段階に行ってもよく(1ステップ法)、また、前記成分を分け、接触を複数段階に分けて行うことにより下記の反応系の反応を複数段階に分けて行ってもよい(多ステップ法)。
【0121】
(b) 前記(a)における接触により、前記の各成分による下記の反応が進行する。
そして、この一連の反応によりトロンビンの基質から生成されるシグナル量を測定する。
即ち、前記の一連の反応により、トロンビンの基質がトロンビンにより分解等の作用を受け、この結果生じるシグナルの量(例えば、吸光度等)を測定する。
【0122】
(c) 試料にプロテインCが含まれている場合には、前記の反応におけるプロテインCがプロテインC活性化物質により活性化されて活性化プロテインCとなり、これにより活性化血液凝固第V因子の分解が促進されるので、その結果トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制されて、シグナルの生成が抑制される。
このシグナル生成の抑制度は、試料に含まれていたプロテインCの活性値に応じて大きくなる。
【0123】
従って、前記(b)においてシグナル量を測定することにより、生成が抑制されたシグナル量を測定することになり、これにより試料中に含まれていたプロテインCの活性値を得ることができる。
【0124】
【化10】
Figure 0005176085
【0125】
また、本発明の試料中のプロテインCの活性測定方法は、以下のものでもある。
試料に由来しない、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子(Va)、活性化血液凝固第X因子(Xa)、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される下記の反応系を用いて試料中のプロテインCの活性値を測定する方法であって、
【0126】
(1) 試料と少なくともプロテインC活性化物質を接触させる。これにより、試料にプロテインCが含まれる場合には、プロテインCが活性化されて活性化プロテインCが生成する。
【0127】
(2) 前記(1)において生成した活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に触媒する活性化血液凝固第V因子の分解反応が進行する。
【0128】
(3) 活性化血液凝固第V因子により促進される、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応が、前記(2)における活性化血液凝固第V因子の分解反応が進行することにより抑制されて、トロンビンの生成が低減する。
【0129】
(4) 前記(3)におけるトロンビンの生成の低減により、トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制される。
なお、このシグナル生成の抑制度は、試料に含まれていたプロテインCの活性に応じて大きくなる。
【0130】
(5) 前記(4)における反応の抑制により生成が抑制されたシグナル量を測定する。
以上の通り前記の反応により生成したシグナル量を測定し、すなわち生成が抑制されたシグナル量を測定することにより、試料中に含まれていたプロテインCの活性値を得る。
【0131】
【化11】
Figure 0005176085
【0132】
本発明の試料中のプロテインCの活性測定試薬は、プロテインC活性化物質、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を含有するものである。
必要に応じて前記成分以外の成分を含んでいても構わない。
なお、本発明の活性測定試薬は、含有させる前記成分を分け、複数の測定試薬より構成されるようにしてもよい。
【0133】
2.プロテインC活性化物質
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において用いるプロテインC活性化物質は、プロテインCより活性化プロテインCを生成させることができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
このプロテインC活性化物質としては、例えば、Southern copperhead snake、Moccasin snake等由来の蛇毒酵素等を挙げることができる。また、遺伝子工学操作、細胞工学操作又は細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
【0134】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、プロテインC活性化物質は、試料と接触することにより、試料中にプロテインCが含まれている場合には、プロテインCを活性化し活性化プロテインCを生成させる。
そして、活性化プロテインCは、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下、活性化血液凝固第V因子を分解する反応の触媒となる。
よって、試料中にプロテインCが存在することにより、活性化プロテインCが活性化血液凝固第V因子を分解する反応が起こり進行する。
【0135】
前記のプロテインC活性化物質と試料とを接触させることと、これに活性化血液凝固第V因子等とを接触させることは、同時に行ってもよい。
しかしながら、プロテインC活性化物質を試料と接触させ、少なくとも1分間以上、好ましくは5分間以上、室温又は37℃等においてインキュベートした後に、活性化血液凝固第V因子、リン脂質及びカルシウムイオンと接触させ、インキュベートして、活性化血液凝固第V因子の分解反応を行わせることが好ましい。
【0136】
3.プロテインS
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬においては、生成した活性化プロテインCにプロテインSをリン脂質の存在下に接触させること、又は活性測定試薬にプロテインSを含有させてもよい。
【0137】
ここで用いるプロテインSは、その由来(起源)や調製方法によらず、特に制限なく用いることができる。
例えば、ヒト、ウシ又はブタ等の哺乳動物由来のもの等を挙げることができる。また、血漿等の体液若しくは臓器などから精製し調製したものや、又は遺伝子工学操作、細胞工学操作若しくは細胞培養操作などにより調製したもの等を挙げることができる。
【0138】
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、プロテインSは、生成した活性化プロテインCとリン脂質の存在下に接触させることにより、活性化プロテインCを更に活性化する。
よって、生成した活性化プロテインCとプロテインSとをリン脂質の存在下に接触させることにより、活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第V因子を分解する反応は更に促進される。
【0139】
なお、活性化プロテインCとプロテインSとをリン脂質の存在下に接触させることと、活性化プロテインCを活性化血液凝固第V因子等と接触させることは、同時に行ってもよい。
しかしながら、活性化プロテインCをリン脂質とともにプロテインSと接触させ、少なくとも1分間以上、好ましくは5分間以上、室温又は37℃等においてインキュベートした後に、活性化血液凝固第V因子及びカルシウムイオンと接触させ、インキュベートして、活性化血液凝固第V因子の分解反応を行わせることが好ましい。
【0140】
4.試料
本発明の試料中のプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬において、試料とは、プロテインCを含有する可能性がある物質である。
【0141】
この試料として、例えば、生体試料(ヒト又は動物などに由来する試料)を挙げることができる。
【0142】
生体試料としては、例えば、血液、血漿、唾液、汗、尿、涙、髄液、腹水、羊水などの生体の液体;肝臓、心臓、脳、骨、毛髪、皮膚、爪、筋肉、神経組織などの臓器、組織、細胞などの抽出液等を挙げることができる。
【0143】
5.他の事項
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬における他の事項は、先の「I.試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬」の項に記載した事項の通りである。
【0144】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に説明する。なお、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0145】
〔実施例1〕(試料中のプロテインS活性測定の検量線の作成)
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬により試料中のプロテインS活性値を測定する際の検量線を作成した。
【0146】
(1)プロテインS活性測定試薬
▲1▼第1試薬
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)の試薬を調製した。
【0147】
活性化プロテインC 344pM
リン脂質(ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20%)
10μM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
【0148】
▲2▼第2試薬
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)の試薬を調製した。
【0149】
活性化血液凝固第V因子 331pM
リン脂質(ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20%)
10μM
塩化カルシウム 5mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
【0150】
▲3▼第3試薬
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)の試薬を調製した。
【0151】
活性化血液凝固第X因子 44pM
リン脂質(ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン30%,ホスファチジルコリン20%) 7.5μM
H−D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二塩酸塩(トロンビンの基質) 750μM
プロトロンビン 695nM
塩化カルシウム 5mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
【0152】
(2)試料
精製したプロテインS(純度99%以上)を、各々下記の活性値となるようにプロテインSを含まないヒト血漿に添加し、プロテインSの活性値が分かっている下記の3種類の試料を調製した。
なお、プロテインSを含まないヒト血漿は、抗プロテインS抗体を固定化したカラムにヒト血漿を通し、このカラムを素通りしたものを分取することにより得た。
【0153】
▲1▼ 15μg/mL相当
▲2▼ 10μg/mL相当
▲3▼ 5μg/mL相当
【0154】
また、このプロテインSを含まないヒト血漿を、プロテインS活性値が「ゼロ」の試料とした。
▲4▼ 0μg/mL相当
【0155】
なお、本明細書及び図面においては、ヒト血漿より精製して得たプロテインS精製品(純度99%以上)1μg/mLが有するプロテインS活性値を、プロテインS活性値1μg/mL相当と定義した。
よって、本明細書及び図面においては、プロテインSの活性値は、プロテインS濃度(μg/mL)相当の値で表している。
【0156】
(3)試料中のプロテインSの活性値の測定
▲1▼ 前記(2)の4種類の試料の各々について、その4μLと前記の第1試薬の96μLを混合し、37℃で10分間インキュベートした。
▲2▼ その後、これに前記の第2試薬の100μLを添加混合し、37℃で10分間インキュベートした。
▲3▼ 次に、前記▲2▼の混合液の180μLを分取し、これに37℃で5分間インキュベートしておいた前記の第3試薬の360μLを添加混合して、37℃でインキュベートした。
【0157】
▲4▼ 前記▲3▼における添加混合の後、波長405nmにおける吸光度を測定した。
この吸光度の変化を表したグラフを図1に示した。
この図において、横軸は前記▲3▼における添加混合の後の時間(分)を表し、縦軸は波長405nmにおける吸光度(Abs.)を表す。
また、この図において、「●」はプロテインS活性が0μg/mL相当の試料の吸光度を示し、「▲」はプロテインS活性が5μg/mL相当の試料の吸光度を示し、「▲黒四角▼」はプロテインS活性が10μg/mL相当の試料の吸光度を示し、そして「◆」はプロテインS活性が15μg/mL相当の試料の吸光度を示す。
【0158】
▲5▼ 前記▲3▼における添加混合後17分目から23分目迄の、前記図1のグラフにおける1分間当たりの吸光度変化量すなわち吸光度変化の傾きの値を縦軸に取り、前記の添加混合後の時間を横軸にとってグラフを作成した。この縦軸の吸光度変化の傾きの値は、すなわち吸光度の一次微分値であり、吸光度変化の速度を表している。
このグラフを図2に示した。
この図において、「●」はプロテインS活性が0μg/mL相当の試料における値を示し、「▲」はプロテインS活性が5μg/mL相当の試料における値を示し、「▲黒四角▼」はプロテインS活性が10μg/mL相当の試料における値を示し、そして「◆」はプロテインS活性が15μg/mL相当の試料における値を示す。
なお、例えば、横軸の18分の目盛りにおける値は、前記▲3▼における添加混合の後の18分目から19分目までの1分間当たりの吸光度変化量すなわち吸光度変化の傾きの値(吸光度の一次微分値)を表している。
【0159】
▲6▼ 次に、前記▲5▼におけるグラフ(図2)の各ラインの傾きの値を縦軸に取り、前記の各試料のプロテインS活性値(μg/mL相当)を横軸にとってグラフを作成した。この縦軸の値は、すなわち吸光度の二次微分値であり、吸光度変化の加速度を表している。
このグラフを図3に示した。
この図3のグラフが、試料中のプロテインS活性値の測定における検量線を示したグラフである。
【0160】
プロテインS活性値が分からない試料については、前記の通りの活性測定操作を行い、測定により得られた吸光度(生成が抑制されたシグナル量)より吸光度変化の加速度(吸光度の二次微分値)を求め、この値を前記の図3のグラフに当てはめることにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得ることができる。
【0161】
〔実施例2〕(試料中のプロテインS活性値の測定)
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬によりヒト血漿試料中のプロテインSの活性値を測定した。
【0162】
(1)本発明のプロテインS活性測定試薬
前記実施例1において調製した、第1試薬、第2試薬及び第3試薬をそれぞれ用いた。
【0163】
(2)凝固時間法によるプロテインS活性測定試薬
従来の試料中のプロテインSの活性測定試薬として、市販の凝固時間法による血漿中プロテインS活性測定試薬「スタクロット プロテインS」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いた。
【0164】
(3)試料
下記の6種類のヒト血漿を試料とした。
▲1▼ 試料−1(健常者の血漿)
▲2▼ 試料−2(周産期の女性の血漿)
▲3▼ 試料−3(周産期の女性の血漿)
▲4▼ 試料−4(周産期の女性の血漿)
▲5▼ 試料−5(周産期の女性の血漿)
▲6▼ 試料−6(周産期の女性の血漿)
【0165】
(4)試料中のプロテインSの活性値の測定
▲1▼本発明のプロテインS活性測定試薬による測定
前記(3)の6種類の試料の各々について、前記実施例1の(3)の▲1▼〜▲6▼の記載の通りに測定操作を行い、吸光度変化の加速度の値(吸光度の二次微分値)を求めた。
この吸光度変化の加速度の値(吸光度の二次微分値)を、前記実施例1で作成した検量線のグラフ(図3)に当てはめて、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を各々得た。
この測定により得たプロテインS活性値を表1に示した。
【0166】
▲2▼凝固時間法によるプロテインS活性測定試薬
前記(3)の6種類の試料の各々について、前記の「スタクロット プロテインS」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用い、この添付文書の操作法の記載の通りに測定を行い、凝固時間法によるプロテインSの活性値を各々得た。
なお、前記実施例1の(2)において用いた、精製したプロテインS(純度99%以上)を試料として作成した検量線により、プロテインS活性値を得た。
そして、凝固時間の測定は、血液凝固測定装置「ベーリング フィブリンタイマ II」(ヘキストジャパン社)を用いて行った。
この測定により得たプロテインS活性値も表1に示した。
【0167】
【表1】
Figure 0005176085
【0168】
(5)まとめ
表1より分かるように、本発明のプロテインS活性測定試薬により測定した血漿試料のプロテインS活性値と、凝固時間法によるプロテインS活性測定試薬により測定した血漿試料のプロテインS活性値とは、いずれの試料においても一致した。
このことより、本発明の活性測定方法及び活性測定試薬により求めた試料中に含まれるプロテインSの活性値は、正確なものであることが確かめられた。
【0169】
〔実施例3〕(活性化プロテインCによる触媒反応に用いるリン脂質の検討)
本発明の活性測定方法及び活性測定試薬において、活性化プロテインCによる触媒反応に用いるリン脂質の組成について検討を行った。
【0170】
(1)プロテインS活性測定試薬
▲1▼第1試薬
リン脂質の組成が異なる6種類の第1試薬を以下のようにして調製した。
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)に調整した。
【0171】
活性化プロテインC 344pM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
リン脂質 10μM
(a)ホスファチジルコリン100%,ホスファチジルセリン0%
(b)ホスファチジルコリン95%,ホスファチジルセリン5%
(c)ホスファチジルコリン90%,ホスファチジルセリン10%
(d)ホスファチジルコリン85%,ホスファチジルセリン15%
(e)ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20% 又は、
(d)ホスファチジルコリン75%,ホスファチジルセリン25%
【0172】
▲2▼第2試薬
リン脂質の組成が異なる6種類の第2試薬を以下のようにして調製した。
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)に調整した。
【0173】
活性化血液凝固第V因子 331pM
塩化カルシウム 5mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
リン脂質 10μM
(a)ホスファチジルコリン100%,ホスファチジルセリン0%
(b)ホスファチジルコリン95%,ホスファチジルセリン5%
(c)ホスファチジルコリン90%,ホスファチジルセリン10%
(d)ホスファチジルコリン85%,ホスファチジルセリン15%
(e)ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20% 又は、
(f)ホスファチジルコリン75%,ホスファチジルセリン25%
【0174】
▲3▼第3試薬
前記実施例1の(1)の▲3▼において調製した第3試薬を用いた。
【0175】
(2)試料
▲1▼ プロテインSの活性値が0.2μg/mL相当となるように、プロテインSを、前記実施例1の(2)で調製したプロテインSを含まないヒト血漿に添加し、プロテインS活性値が0.2μg/mL相当の試料を調製した。
【0176】
▲2▼ 前記のプロテインSを含まないヒト血漿を、プロテインS活性値が0μg/mL相当の試料とした。
【0177】
(3)試料中のプロテインSの活性値の測定
前記(2)の2種類の試料の各々について、前記(1)の▲1▼で調製した6種類の第1試薬のそれぞれ、及び前記(1)の▲2▼で調製した6種類の第2試薬のそれぞれ、並びに前記(1)の▲3▼で調製した第3試薬を用いて、前記実施例1の(3)の▲1▼〜▲6▼の記載の通りに測定操作を行い、吸光度変化の加速度の値(吸光度の二次微分値)を求めた。
なお、この測定において、第1試薬と第2試薬は、各々リン脂質の組成が同一なもの同士を組み合わせて用いた。
【0178】
(4)リン脂質の組成による効果の検討
プロテインS活性値が0.2μg/mL相当であるヒト血漿試料の吸光度変化の加速度の値(吸光度の二次微分値)を、プロテインS活性値が0μg/mL相当であるヒト血漿試料の吸光度変化の加速度の値(吸光度の二次微分値)で除して比(α0.2/α0)を求めた。
これを表2に示した。
この比の値が低い程、プロテインS活性値が0.2μg/mL相当であるヒト血漿試料とプロテインS活性値が0μg/mL相当であるヒト血漿試料とで、得られたシグナル量に差が生じていることになり、測定の感度がより高いことになるので、プロテインS活性値の測定においては好ましい。
【0179】
【表2】
Figure 0005176085
【0180】
この表より、活性化プロテインCによる触媒反応時に存在させるリン脂質の組成が、「ホスファチジルコリン85%,ホスファチジルセリン15%」、「ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20%」、及び「ホスファチジルコリン75%,ホスファチジルセリン25%」のときが、他の組成の時よりも前記の比の値が低く、すなわち測定反応が促進されて、測定の感度がより高くなっていることが分かる。
【0181】
このことより、試料中に含まれていたプロテインSによる活性化プロテインCの更なる活性化時、及びこの活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応時に存在させるリン脂質の組成としては、ホスファチジルコリンの組成比を85%〜75%として、かつホスファチジルセリンの組成比を15%〜25%とすることにより、前記反応が促進されて、測定の感度がより高くなることが確かめられた。
【0182】
〔実施例4〕(活性化血液凝固第X因子による触媒反応に用いるリン脂質の検討)
活性化血液凝固第X因子によるトロンビンを生成させる触媒反応に用いるリン脂質の組成について検討を行った。
なお、本検討においては、活性化血液凝固第X因子の触媒反応におけるリン脂質の組成の効果を見るのが目的であるので、活性化血液凝固第X因子より始まる反応系において検討を行った。
【0183】
(1)リン脂質組成検討試薬
▲1▼第1試薬
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pH7.5(20℃)の試薬を調製した。
【0184】
活性化血液凝固第V因子 331pM
リン脂質(ホスファチジルコリン80%,ホスファチジルセリン20%)
10μM
塩化カルシウム 5mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
【0185】
▲2▼第2試薬
リン脂質の組成が異なる4種類の第2試薬を以下のようにして調製した。
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHをpH7.5(20℃)に調整した。
【0186】
活性化血液凝固第X因子 44pM
H−D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・二塩酸塩(トロンビンの基質) 750μM
プロトロンビン 695nM
塩化カルシウム 5mM
ウシ血清アルブミン(BSA) 15μM
塩化ナトリウム 150mM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50mM
リン脂質 7.5μM
(a)ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン40%,ホスファチジルコリン10%
(b)ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン30%,ホスファチジルコリン20%
(c)ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン20%,ホスファチジルコリン30% 又は、
(d)ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン10%,ホスファチジルコリン40%
【0187】
(2)リン脂質の組成による効果の測定
▲1▼ 37℃で5分間インキュベートしておいた前記(1)の第1試薬の180μLと、37℃で5分間インキュベートしておいた前記(1)の第2試薬の360μLとを混合して、37℃でインキュベートした。
【0188】
▲2▼ 前記▲1▼における添加混合の後、波長405nmにおける吸光度を測定した。
この吸光度の変化を表したグラフを図4に示した。
この図において、横軸は前記▲1▼における添加混合の後の時間(分)を表し、縦軸は波長405nmにおける吸光度(Abs.)を表す。
【0189】
また、この図において、「●」は第2試薬におけるリン脂質の組成が「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン40%,ホスファチジルコリン10%」のときの吸光度を示し、「◆」は第2試薬におけるリン脂質の組成が「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン30%,ホスファチジルコリン20%」のときの吸光度を示し、「▲」は第2試薬におけるリン脂質の組成が「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン20%,ホスファチジルコリン30%」のときの吸光度を示し、そして、「▲黒四角▼」は第2試薬におけるリン脂質の組成が「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン10%,ホスファチジルコリン40%」のときの吸光度を示す。
【0190】
(3)リン脂質の組成による効果の検討
この図4においては、吸光度増加の立ち上がりが早く、より短時間の内に吸光度がプラトーに達するものほど、活性化血液凝固第X因子の触媒作用によるトロンビンの生成反応が促進されて、測定の感度がより高くなるものである。
【0191】
この図より、活性化血液凝固第X因子による触媒反応時に存在させるリン脂質の組成が、「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン40%,ホスファチジルコリン10%」、及び「ホスファチジルエタノールアミン50%,ホスファチジルセリン30%,ホスファチジルコリン20%」のときが、他の組成の時よりも吸光度増加の立ち上がりが早く、より短時間の内に吸光度がプラトーに達している。すなわち、活性化血液凝固第X因子によるトロンビンの生成反応が促進されて、測定の感度がより高くなっていることが分かる。
【0192】
このことより、活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応時に存在させるリン脂質の組成としては、ホスファチジルエタノールアミンの組成比を50%以上として、かつホスファチジルセリンの組成比を30%以上とすることにより、前記反応が促進されて、測定の感度がより高くなることが確かめられた。
【0193】
【発明の効果】
本発明の試料中のプロテインSの活性測定方法及び活性測定試薬、並びに本発明の試料中のプロテインCの活性測定方法及び活性測定試薬は、血液凝固反応に係わる成分(因子)の試料中の存在量(濃度)により又はその変異によって、測定により得られるプロテインS活性値又はプロテインC活性値が影響を受けてしまうことがないものである。そして、測定反応に用いる反応の数及び測定に必要な成分の数が多くなく、よりシンプルなものであって、様々な因子や種々の条件による影響を受け難いものである。また、試料中のプロテインS活性値及びプロテインC活性値の測定反応の至適条件を見出したことにより、前記測定反応を促進することができ、高い測定感度が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】プロテインS活性値が分かっている3種類の試料を測定したときの波長405nmにおける吸光度の時間による変化を示した図である。
【図2】プロテインS活性値が分かっている3種類の試料の吸光度変化の傾きと時間との関係を示した図である。
【図3】試料中のプロテインS活性の測定における検量線を示した図である。
【図4】活性化血液凝固第X因子の触媒反応におけるリン脂質の組成の効果を示した図である。

Claims (5)

  1. 試料に由来しない、活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質より構成される反応系であって、活性化血液凝固第VIII因子により促進される活性化血液凝固第IX因子による血液凝固第X因子の活性化反応を含まない下記の反応系を用いて、試料に含まれるプロテインSにより促進される活性化プロテインCによる活性化血液凝固第V因子の分解反応に基づいて、試料中のプロテインSの活性値を測定する方法であって、
    Figure 0005176085
    (1) 試料と少なくとも活性化プロテインC及びリン脂質を接触させることにより、試料にプロテインSが含まれる場合にはリン脂質の存在下に活性化プロテインCが更に活性化され、
    (2) 活性化プロテインCの前記(1)における更なる活性化により、活性化プロテインCがリン脂質及びカルシウムイオンの存在下に触媒する活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進され、
    (3) 活性化血液凝固第V因子により促進される、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下に活性化血液凝固第X因子が触媒するプロトロンビンよりトロンビンを生成させる反応が、前記(2)における活性化血液凝固第V因子の分解反応が促進されることにより抑制されて、トロンビンの生成が低減し、
    (4) 前記(3)におけるトロンビンの生成の低減により、トロンビンが触媒するトロンビンの基質からシグナルを生じさせる反応が抑制され、
    (5) 前記(4)における反応の抑制により生成が抑制されたシグナル量を試料に含まれていたプロテインSの活性値に応じたものとして測定する、
    ことにより、試料中に含まれていたプロテインSの活性値を得るものであって、プロテインS−欠乏血漿を測定に使用しない、試料中のプロテインSの活性測定方法。
  2. シグナル量の測定が、吸光度、透過率又は蛍光強度を測定することにより行うものである、請求項1記載の試料中のプロテインSの活性測定方法。
  3. 測定されたシグナル量の単位時間当たりの変化量の数値、又は測定されたシグナル量の値を時間に対して一次微分して算出した数値、若しくは二次微分して算出した数値と、試料中のプロテインSの活性値との関係を表した検量線を用いて、試料中に含まれるプロテインSの活性値を得る、請求項1又は請求項2記載の試料中のプロテインSの活性測定方法。
  4. 測定により得られた吸光度の1分間当たりの変化量、又は測定により得られた吸光度を時間に対して一次微分して得た吸光度変化の速度、若しくは測定により得られた吸光度を時間に対して二次微分して得た吸光度変化の加速度と、試料中のプロテインSの活性値との関係を表した検量線を用いて、試料中に含まれるプロテインSの活性値を得る、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の試料中のプロテインSの活性測定方法。
  5. 活性化プロテインC、リン脂質、カルシウムイオン、活性化血液凝固第V因子、活性化血液凝固第X因子、プロトロンビン及びトロンビンの基質を含有し、プロテインS−欠乏血漿を含有しないものである、請求項1記載の試料中のプロテインSの活性測定方法に使用する試料中のプロテインSの活性測定試薬。
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