JP5176021B6 - ガス拡散基材 - Google Patents
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Description
本発明はガス拡散基材に関し、特にポリマー電解質膜燃料電池などの燃料電池で使用されるガス拡散基材に関する。本発明は更に、ガス拡散基材を製造する方法に関する。
燃料電池は、電解質によって分離されている2つの電極を含む電気化学電池である。水素又はメタノールなどの燃料がアノードへ供給され、酸素又は空気などの酸化物がカソードへ供給される。電気化学反応が電極で生じ、燃料及び酸化物の化学エネルギーが電気エネルギー及び熱へ変換される。燃料電池は、クリーンで効率的な電力源であり、固定用途及び動力用途の両方において、内燃機関のような伝統的動力源に代わり得るものである。プロトン交換膜(PEM)燃料電池において、電解質は、電子絶縁性であるが、イオン伝導性である固体のポリマー膜である。
ポリマー電解質燃料電池の主要成分は、膜電極アセンブリ(MEA)として知られており、本質的には5つの層からなる。中央の層はポリマー膜である。この膜のいずれの側にも電極触媒層があり、典型的にはプラチナベースの電極触媒を含んでいる。電極触媒は、電気化学反応率を促進する触媒である。最後に、各電極触媒層に隣接して、ガス拡散基材がある。ガス拡散基材は、反応物を電極触媒層に到達させなければならず、且つ電気化学反応により生成される電流を導通させなければならない。故に、基材は多孔性且つ導電性でなければならない。
MEAは、幾つかの方法により構成することができる。電極触媒層をガス拡散基材に付与してガス拡散電極を形成してもよい。2つのガス拡散電極は、膜のいずれの側にも配置され、共に積層されて5層MEAを形成することができる。あるいは、電極触媒層を膜の両面に付与して触媒コーティング膜を形成してもよい。その後、ガス拡散基材が触媒コーティング膜の両面に付与される。最終的に、一方の側に電極触媒層がコーティングされた膜と、電極触媒層に接したガス拡散基材と、この膜の他方の側にあるガス拡散電極とからMEAを形成することができる。
典型的なガス拡散基材としては、カーボン紙(例えば、Toray Industries(日本)から入手可能なToray「商品名」紙)、炭素織布(例えば、Zoltek Corporation(米国)から入手可能なZoltek「商品名」)又は不織布炭素繊維ウェブ(例えば、Technical Fibre Products(英国)から入手可能なOptimat 203)が挙げられる。炭素基材は、典型的には、基材に埋め込まれているか若しくは平面上にコーティングされている粒状物質、又はそれら両方の組み合わせで改質されている。粒状物質は、典型的には、カーボングラックと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーとの混合物である。
米国特許第6,511,768号は、黒鉛化繊維ウェブ構造を含むガス拡散基材を開示している。このウェブは、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維から形成されたウェブ構造を採用し、且つ、このウェブを酸化及び黒鉛化することにより製造される。黒鉛化工程は、1500〜2500℃の温度で行われる。この種の高温処理にはかなりのエネルギー入力が必要となり、これは製造プロセスの費用を増大させる。
欧州特許第791974号は、高温黒鉛化工程を用いない、ガス拡散基材を調製するための連続的な製造方法を開示している。カーボンブラックをPTFEと混合し、炭素繊維にPTFEをコーティングする。カーボングラック/PTFE混合物及びコーティングされた炭素繊維を混合してスラリーを形成し、これを可動メッシュベッド上に付着させる。付着させた層を乾燥させ、ガス拡散基材を形成する。
本発明者らは、欧州特許第791974号に開示された基材と比較して伝導性が向上したガス拡散基材材料を提供しようと試み、且つ、繊維ウェブの高温黒鉛化を必要としない方法によって前記材料を達成しようと試みてきた。この基材は、燃料電池における使用に適した伝導性、空気透過性及び水処理特性を有していなければならない。基材は、電極及び/又は膜電極アセンブリへの更なる処理に耐えうる程十分に強靭且つ柔軟であるべきである。
従って、本発明は、
炭素繊維の不織布網状組織と、及び
前記炭素繊維が黒鉛化されてなるが、前記不織布網状組織は黒鉛化処理されていないものであり、
前記不織布網状組織内に配置されたグラファイト粒子と疎水性ポリマーの混合物とを備えなり、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満である、ガス拡散基材を提供する。
炭素繊維の不織布網状組織と、及び
前記炭素繊維が黒鉛化されてなるが、前記不織布網状組織は黒鉛化処理されていないものであり、
前記不織布網状組織内に配置されたグラファイト粒子と疎水性ポリマーの混合物とを備えなり、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満である、ガス拡散基材を提供する。
黒鉛化は、炭素が少なくとも1500℃まで加熱されて、炭素の結晶構造が、純グラファイトの構造により類似している「グラファイト状」形態へと変化するプロセスである。炭素繊維は黒鉛化しているが、不織布網状組織は黒鉛化処理されていない炭素繊維の不織布網状組織は、黒鉛化した網状組織とは物理的に異なる。黒鉛化した網状組織は、黒鉛化炭素繊維で作製された非黒鉛化網状組織と比較してより高い伝導性及びより高い剛性を有するようである。
米国特許第6,511,768号は、繊維の剛性が高いと、黒鉛化繊維からのウェブ構造の形成が妨げられることを記載しているが、本発明者らは、本発明のガス拡散基材において繊維の不織布網状組織を形成するために黒鉛化繊維を使用することが有利であることを見出した。個々の繊維を処理する方が容易且つ経済的であることから、繊維網状組織を黒鉛化するよりも、個々の黒鉛化繊維を用いる方が好ましい。また、繊維網状組織の黒鉛化は、黒鉛化処理中に生じる異方性の寸法変化のため、望ましくない非平坦構造を生じる可能性がある。
米国特許6,511,768号は、黒鉛化したウェブ構造は、それらが高い面通過(through−plane)伝導性を有するため、ガス拡散基材を形成するのに使用されるべきであることを開示している。本発明者らは、黒鉛化ウェブ構造を用いることなく、伝導性が高いガス拡散基材を達成可能であることを見出した。本発明において、高い伝導性は、黒鉛化炭素繊維の不織布網状組織内に微細なグラファイト粒子を配置することによって達成される。微細なグラファイト粒子(グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法は100μm未満である)は、代替の平行な導通路を繊維に与え、隣接する繊維同士をつなぐ助けとなり、故に繊維間の伝導性を向上させる。
黒鉛化炭素繊維は、好適にはポリアクリロニトリル(PAN)繊維を酸化及び黒鉛化することにより形成された炭素繊維である。好適には、炭素繊維の平均直径は0.1〜20μmであり、好ましくは1〜10μmである。炭素繊維の平均長は好適には1〜20mmであり、好ましくは3〜12mmである。不織布網状組織の坪量(面積重量)は、好適には10〜50g/m2であり、好ましくは20〜40g/m2である(これは、炭素繊維のみの重量であり、グラファイト粒子又は疎水性ポリマーの重量を含まない)。繊維網状組織がこれより低い坪量を有する場合、基材の伝導性が低下することがある。
不織布網状組織において、炭素繊維は好適にはx方向及びy方向(面内)にランダムに配向され、二次元的な等方性構造を形成する。しかしながら、x方向及びy方向の配向は、繊維網状組織を形成するのに使用される方法に応じて導入することができる。従来の抄紙又はウェットレイド不織布技術を使用して繊維網状組織を形成した場合、z方向(面貫通)にランダムな配向があるようである。
本発明で使用するグラファイト粒子は、黒鉛化したカーボンブラックであってもよいが、好適にはフレーク状グラファイト又は球状グラファイトである。グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法は100μm未満であり、好適には20〜0.1μmであり、好ましくは5〜0.1μmである。微細なグラファイト粒子及び非常に微細なグラファイト粒子が好ましい。粒子が大きくなると、繊維網状組織内に保持しておくのが困難な場合がある。好ましくは、グラファイト粒子は、グラファイト粒子のコロイド状懸濁液として供給され、グラファイト粒子はコロイド状懸濁液内に保持されるのに十分な程小さい。小さい粒子は凝集しないため、グラファイト粒子のコロイド状懸濁液が有利である。
疎水性ポリマーは、好適には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレン−プロピレン(FEP)などのフルオロポリマーであり、好ましくはPTFEである。疎水性ポリマーに対するグラファイト粒子の重量比は、好適には50:1〜2:1であり、好ましくは10:1〜4:1である。炭素繊維に対するグラファイト粒子の重量比は、好適には1:2〜10:1であり、好ましくは3:5〜5:1である。グラファイト粒子、疎水性ポリマー及び炭素繊維の相対量は、基材の特性を決定する上で極めて重要である。疎水性ポリマーの割合を高くすると基材の疎水性が大きくなり、強度が増すが、炭素繊維及びグラファイト粒子の割合を高くすると伝導性が高くなる。グラファイト粒子は非常に低い抵抗性を有するため、グラファイト粒子の相対量は伝導性に最も大きな影響を与える。
本発明の一の態様によれば、繊維網状組織の厚さ全体にわたって、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度勾配がある。「濃度勾配」という表現は、濃度が網状組織の第1面から第2面にかけて漸次的に(しかし必ずしも直線的ではなく)変化することを意味する。好適には、第1面でのグラファイト粒子及び疎水性ポリマーの量は、第2面でのグラファイト粒子及び疎水性ポリマーの量の少なくとも2倍であり、好ましくは少なくとも4倍である。
本発明の別の態様において、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーは繊維網状組織内に均質に配置されている。即ち、繊維網状組織の厚さ全体にわたって濃度勾配はない。
グラファイト粒子及び疎水性ポリマーに加え、ガス拡散基材は更に、フェノール樹脂の迅速な低温炭化により形成された結合剤を更に含んでよい。この結合剤は、ウェブ構造のノードを固定し、グラファイト粒子同士をより密接に結合するため、x−y平面における基材の強度を増大させる。更に、結合剤は材料の圧縮性も低下させる。炭化フェノール樹脂結合剤の量は、好適には基材の重量を基準として2〜50重量%である。約1500℃よりも高い温度で行われる黒鉛化とは対照的に、炭化は約800℃の温度で達成することができる。より低い温度も使用できるが、付随して伝導性の増加率も低下する。
本発明の好ましい態様によれば、ガス拡散基材は燃料電池での使用に適するものであり、故に400μm未満の「正味:ex−situ」厚さ、好ましくは100〜250μmの厚さを有する。基材の厚さは、例えば燃料電池スタック中に集合させた場合に発生するような、圧縮に伴って実質的に可変し得るものである。
好適には、基材を燃料電池で使用する場合、カーボンブラック及び疎水性ポリマーの基層が基材の少なくとも1つの面に存在する。粒状カーボンブラック材料は、例えば、Vulcan「商品名」XC72R(Cabot Chemicals(米国)製)などのオイルファーネスブラック、若しくはShawinigan(Chevron Chemicals(米国)製)又はDenka FX−35(Denka(日本)製)などのアセチレンブラックである。疎水性ポリマーは、好適にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。基層は、触媒層が付与される連続的な表面を提供する。ガス拡散基材が、基材の厚さ全体にわたってグラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度勾配を有する場合、基層は、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度がより高いガス拡散基材の面上に存在するのが好適である。
本発明は更に、本発明によるガス拡散基材と、電極触媒層とを含むガス拡散電極を提供する。
電極触媒層は電極触媒を含み、この電極触媒は、細断された金属粉末(メタルブラック)であっても、導電性の粒状炭素支持体上に小さい金属粒子が分散している支持された触媒であってもよい。好適には、電極触媒金属は、
(i)白金族金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウム)、
(ii)金又は銀、
(iii)卑金属、
又はこれら金属の1つ以上を含む合金若しくは混合物、又はそれらの酸化物から選択される。好ましい電極触媒金属はプラチナであり、これは、ルテニウムなどの貴金属、又はモリブデンやタングステンなどの卑金属と共に合金化されていてもよい。電極触媒が担持触媒の場合、炭素支持体材料上の金属粒子の担持量は10〜90重量%、好ましくは15〜75重量%の範囲内である。
(i)白金族金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウム)、
(ii)金又は銀、
(iii)卑金属、
又はこれら金属の1つ以上を含む合金若しくは混合物、又はそれらの酸化物から選択される。好ましい電極触媒金属はプラチナであり、これは、ルテニウムなどの貴金属、又はモリブデンやタングステンなどの卑金属と共に合金化されていてもよい。電極触媒が担持触媒の場合、炭素支持体材料上の金属粒子の担持量は10〜90重量%、好ましくは15〜75重量%の範囲内である。
電極触媒層は、好適には、イオン伝導ポリマーを更に含んでなり、このポリマーは層内でのイオン伝導性を向上させるべく包含されている。
好ましい実施形態によれば、ガス拡散電極が燃料電池のカソードであり、繊維網状組織の厚さ全体にわたってグラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度勾配があり、この電極触媒層が、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度がより高いガス拡散基材の面に接している。最も疎水性である基材表面を触媒層に隣接して配置することにより、燃料電池作動中に触媒層が水で閉塞されることを防止する。
本発明は、本発明によるガス拡散基材を含む膜電極アセンブリを更に提供する。膜電極アセンブリは、2つの電極触媒層の間に介在するポリマー電解質膜を備えてなる。ガス拡散基材は、その少なくとも1つが本発明によるガス拡散基材であり、電極触媒層に隣接している。
ポリマー電解質膜は、当業者に既知のいかなるタイプのイオン伝導膜であってもよい。好適には、膜はプロトン伝導性である。最新技術の膜電極アセンブリでは、膜は、Nafion「商品名」(Dupont)、Flemion「商品名」(Asahi Glass)及びAciplex「商品名」(Asahi Kasei)などの過フッ素化スルホン酸材料をベースとすることが多い。膜は複合膜であってもよく、プロトン伝導材料と、機械的強度などの特性を付与する他の材料とを含有する。例えば、膜は、欧州特許第875524号に記載されるように、プロトン伝導膜と、シリカ繊維のマトリックスとを含んでもよい。膜は、好適には200μm厚であり、好ましくは50μm厚未満である。
好ましい態様によれば、繊維網状組織の厚さ全体にわたって、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度勾配を有し、膜電極アセンブリにおける電極触媒層は、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度がより高いガス拡散基材の面に接している。
本発明は、本発明によるガス拡散基材を形成する方法であって、
a)多孔質ベッド上に黒鉛化炭素繊維のスラリーを付着させ、湿った繊維網状組織を形成し、
b)グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの懸濁液を調製し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
c)前記湿った繊維網状組織上に前記懸濁液を付与し、
d)前記懸濁液を前記湿った繊維網状組織内へ入れ、及び
e)1000℃を超えない温度で前記湿った繊維網状組織を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなるものを更に提供する。
a)多孔質ベッド上に黒鉛化炭素繊維のスラリーを付着させ、湿った繊維網状組織を形成し、
b)グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの懸濁液を調製し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
c)前記湿った繊維網状組織上に前記懸濁液を付与し、
d)前記懸濁液を前記湿った繊維網状組織内へ入れ、及び
e)1000℃を超えない温度で前記湿った繊維網状組織を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなるものを更に提供する。
この方法は、乾燥繊維ウェブが事前形成される別個の工程を必要とせず、高温黒鉛化処理も必要としない、即ち、1500℃よりも高い温度で加熱する必要がない。
繊維のスラリーは、好適には、水などの液体中に黒鉛化炭素繊維を含む。スラリーは、機械的又は手による攪拌によって繊維と水とを混合することにより調製可能である。スラリーは、抄紙ワイヤ又は形成用布帛のような多孔質ベッド上に付着される。スラリーは、ウェットレイド不織布ウェブを形成するのに適する多数の技法を用いて、例えばカーテンコーター又はウェアコーターを用いて付着させ、平坦で薄いスラリー層を提供してもよい。
繊維スラリーは、好適にはポリビニルアルコール(PVA)などの結合剤材料を、典型的にはスラリーの総乾燥質量の5〜15%の範囲で含有する。繊維スラリーは、好適には、Texipol「商品名」などの粘度調整剤を、典型的にはスラリーの総容量の0.5〜1%含有する。1つの実施形態では、繊維スラリーは更にフェノール樹脂を含有する。
スラリーが多孔質ベッド上に付着されると、湿った繊維網状組織が形成される。湿った繊維網状組織はベッドに支持されており、ベッドから取り外されると崩壊する。
グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法は100μm未満であり、好ましくは、グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法は0.1〜5μmの範囲である。微細なグラファイト粒子(0.1〜100μm)は、ろ過プロセスを通じて繊維網状組織に添加できるので好ましい。より大きい粒子は構造を貫通しない。好ましくは、グラファイト粒子は、グラファイト粒子のコロイド状懸濁液、例えば、グラファイト粒子のコロイド溶液として供給される。
グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの懸濁液は、好適には水中に1〜10重量%の固体分を含む。懸濁液は、機械的又は手による攪拌により、グラファイト粒子の懸濁液、疎水性ポリマーの懸濁液及び水を混合することによって調製してもよい。
懸濁液は、ウェアコーター又はカーテンコーターを介して湿った繊維網状組織に付与される。
懸濁液は、好適には吸引装置を用いて湿った繊維網状組織内に入れられる。本発明の好ましい実施形態では、懸濁液は湿った繊維網状組織の1つの面にのみ付与され、吸引は湿った繊維網状組織の他面に施される。懸濁液は繊維網状組織内に吸引されるが、一般には、吸引が施される基材面に達するよりも、懸濁液が付与される基材面の近くに残存する懸濁液の方が多い。故に、この方法を用いて、基材の厚さ全体にわたって多孔率の勾配があるガス拡散基材を製造することができる。
湿った繊維網状組織は、1000℃を超えない、好適には400℃を超えない温度で乾燥及び焼成される。これは、高温黒鉛化工程が必要とされる多くの従来技術方法にとって好ましい。好ましくは、焼成温度は、疎水性ポリマーを焼結し、繊維網状組織内に結合剤を固定する程十分なものであり、少なくとも270℃である。フェノール結合剤が繊維スラリーに添加された場合、結合剤を完全に炭化することが望ましいのであれば、750〜950℃で焼成を行わなければならない。
本発明は更に、本発明によるガス拡散基材を調製するための代替方法を提供し、この方法は、
a)グラファイト粒子を疎水性ポリマーの懸濁液と混合して第1スラリーを形成し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
b)黒鉛化した炭素繊維と、液体と、及び必要に応じて結合剤とを混合して第2スラリーを形成し、
c)前記第1スラリーと前記第2スラリーとを混合して第3スラリーを形成し、
d)前記第3スラリーを多孔質ベッド上に付着させて繊維含有層を形成し、及び
e)1000℃を超えない温度で前記繊維含有層を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなるものである。
a)グラファイト粒子を疎水性ポリマーの懸濁液と混合して第1スラリーを形成し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
b)黒鉛化した炭素繊維と、液体と、及び必要に応じて結合剤とを混合して第2スラリーを形成し、
c)前記第1スラリーと前記第2スラリーとを混合して第3スラリーを形成し、
d)前記第3スラリーを多孔質ベッド上に付着させて繊維含有層を形成し、及び
e)1000℃を超えない温度で前記繊維含有層を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなるものである。
この方法において、グラファイト粒子は、完全に炭素繊維ウェブ内に包含され、高温黒鉛化処理を必要とすることなく、単純な「ワンポット」プロセスにおいて高い伝導性のガス拡散基材を提供する。グラファイト粒子を疎水性ポリマー懸濁液と事前に混合することにより、グラファイト粒子は確実にガス拡散基材内に保持される。
疎水性ポリマーの懸濁液は、水性であるのが好適であり、界面活性剤のような追加の成分を含んでもよい。懸濁液の固体分は、好適には0.01重量%〜1重量%である。グラファイト粒子は、高剪断ミキサーなどのミキサーを用いて疎水性ポリマー懸濁液と混合される。疎水性ポリマーに対するグラファイト粒子の重量比は、好適には50:1〜2:1であり、好ましくは10:1〜4:1である。本発明者らは、疎水性ポリマーに対するグラファイト粒子の比が、ガス拡散基材におけるグラファイト粒子の保持レベルに影響を及ぼすことを見出した。
第2スラリーにとって好ましい結合剤はポリビニルアルコール(PVA)である。液体は好ましくは水である。繊維に対する結合剤の比は好適には1:1〜1:20であり、第2スラリーの固体分は好適には1重量%未満である。繊維と、必要に応じて結合剤と、及び液体とが、高剪断ミキサーなどのミキサーを用いて混合される。一の実施態様によれば、フェノール樹脂が第2スラリーに添加されてもよい。
第1スラリー及び第2スラリーは、好適には高剪断ミキサーを用いて共に混合される。グラファイト粒子、疎水性ポリマー及び黒鉛化炭素繊維を単一の工程で混合することは不可能であり、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーを事前に混合することが必要である。さもなければ、グラファイト粒子はガス拡散基材内に保持されない。
第3スラリーは、好ましくは抄紙ワイヤ又は形成用布帛である多孔質ベッド上に付着される。第3スラリーは、多数の技法を用いて付着されてもよいが、好適にはウェアコーターを用いて付着される。第3スラリーがベッド上に付着されると、繊維含有層が形成される。繊維は層内で網状組織を形成し、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーは繊維網状組織内に埋め込まれる。グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度は、繊維含有層の厚さ全体にわたって実質的に均一である。
繊維含有層は、400℃を超えない、好適には350℃を超えない温度で乾燥及び焼成される。これは、高温黒鉛化工程が必要とされる多くの従来技術方法にとって好ましい。好ましくは、焼成温度は、疎水性ポリマーを焼結し、繊維網状組織内に結合剤を固定するのに十分な程度であり、少なくとも270℃である。フェノール樹脂が第2スラリーに添加された場合、結合剤を炭化するには、750〜950℃で焼成を行わなければならない。
本発明の方法は、カーボンブラックと、疎水性ポリマーとを含む層を繊維含有層の少なくとも1つの面に付与する工程を更に含んでもよい。
本発明は、ガス拡散電極を製造する方法であって、ガス拡散基材が本発明の方法に従って製造され、電極触媒層がガス拡散基材上に付着される方法を更に提供する。電極触媒層は、印刷法、噴霧法又はドクターブレード法などの、当業者に既知のコーティング方法を用いて載置される。
ここで、実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は、本発明を例証するものであって、制限するものではない。
実施例1:ガス拡散基材
繊維を水に添加して攪拌することにより、SGL C30 6mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)75重量%(固体成分の重量を基準として)と、SGL C30 3mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)25重量%とを含有する繊維スラリーを調製した。PVA結合剤(Solvron NL2003)(スラリー乾燥重量により10%)及びTexipol「商品名」63−002粘度調整剤(スラリー容量により0.8%)を添加した。ウェアコーターを用いて繊維スラリーを抄紙ワイヤ上に付着させ、湿った不織布繊維網状組織を形成した。
繊維を水に添加して攪拌することにより、SGL C30 6mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)75重量%(固体成分の重量を基準として)と、SGL C30 3mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)25重量%とを含有する繊維スラリーを調製した。PVA結合剤(Solvron NL2003)(スラリー乾燥重量により10%)及びTexipol「商品名」63−002粘度調整剤(スラリー容量により0.8%)を添加した。ウェアコーターを用いて繊維スラリーを抄紙ワイヤ上に付着させ、湿った不織布繊維網状組織を形成した。
グラファイト懸濁液(AquaDag18%、Acheson)及びPTFE懸濁液(Fluon GP1溶液、Asahi Glass)を4:1の比で混合することによって、グラファイト/PTFEスラリーを調製した。カーテンコーターを用いてスラリーを湿った繊維網状組織に付与し、吸引装置を用いて繊維網状組織内に入れた。湿った基材を385℃で15分間乾燥及び焼成させた。
実施例2:ガス拡散基材
繊維を水に添加して攪拌することにより、SGL C30 6mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)を含有する繊維スラリーを調製した。PVA結合剤(Solvron NL2003)(スラリー乾燥重量により15%)及びTexipol「商品名」63−002粘度調整剤(スラリー容量により0.6%)を添加した。
繊維を水に添加して攪拌することにより、SGL C30 6mm炭素繊維(黒鉛化されたPAN)を含有する繊維スラリーを調製した。PVA結合剤(Solvron NL2003)(スラリー乾燥重量により15%)及びTexipol「商品名」63−002粘度調整剤(スラリー容量により0.6%)を添加した。
Timcalグラファイトフレーク(T44)と、PTFE懸濁液(Fluon GP1溶液、Asahi Glass)(乾燥重量により6%)とを水に混合することによって、グラファイト粒子及びPTFEを含有する第2スラリーを調製した。
次いで、2つのスラリーを形成用タンク内で共に混合し、ウェアコーターを用いて繊維スラリーを抄紙ワイヤ上に付着させ、グラファイト粒子が点在する湿った不織布繊維網状組織を形成した。
湿った基材を385℃で15分間乾燥及び焼成させた。
実施例3:膜電極アセンブリ
実施例1に従って製造された2つのガス拡散基材を用いて、実施例MEA1を調製した。炭素/PTFE基層を各ガス拡散基材の1つの面に付与した。基層が膜に面した状態で、触媒された過フッ素化スルホン酸膜のいずれの側にもガス拡散基材を配置し、アセンブリを共に積層した。ガス拡散基材が、実施例1によるガス拡散基材とほぼ同じ厚さを有するToray「商品名」TGP−H−060紙であることを除き、全く同じ方法で比較例MEA1を調製した。
実施例1に従って製造された2つのガス拡散基材を用いて、実施例MEA1を調製した。炭素/PTFE基層を各ガス拡散基材の1つの面に付与した。基層が膜に面した状態で、触媒された過フッ素化スルホン酸膜のいずれの側にもガス拡散基材を配置し、アセンブリを共に積層した。ガス拡散基材が、実施例1によるガス拡散基材とほぼ同じ厚さを有するToray「商品名」TGP−H−060紙であることを除き、全く同じ方法で比較例MEA1を調製した。
両方のMEAを、水素圧14.9kPa及び空気圧14.9kPaを用いて燃料電池内にて65℃で試験した。図1は、実施例MEA1の性能が比較例MEA1の性能に匹敵していたことを示している。
Claims (21)
- 炭素繊維の不織布網状組織と、及び
前記炭素繊維が黒鉛化されてなるが、前記不織布網状組織は黒鉛化処理されていないものであり、
前記不織布網状組織内に配置されたグラファイト粒子と疎水性ポリマーの混合物とを備えてなり、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満である、ガス拡散基材。 - 前記不織布網状組織の坪量が10〜50g/m2である、請求項1に記載のガス拡散基材。
- 前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が20〜0.1μmである、請求項1又は2に記載のガス拡散基材。
- 前記グラファイト粒子が、コロイド状懸濁液中に保持されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 疎水性ポリマーに対するグラファイト粒子の重量比が50:1〜2:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 炭素繊維に対する前記グラファイト粒子の重量比が1:2〜10:1である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 前記ガス拡散基材が、前記不織布網状組織の厚さ全体にわたって、前記グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度勾配を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 前記グラファイト粒子及び疎水性ポリマーが前記繊維網状組織内に均質に配置されてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 炭化フェノール樹脂結合剤を備えてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- カーボンブラック及び疎水性ポリマーの基層が、前記ガス拡散基材の少なくとも1つの面上に存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス拡散基材。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス拡散基材と、電極触媒層とを備えてなるガス拡散電極。
- 前記電極触媒層が、グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの濃度がより高い前記ガス拡散基材の面に接している、請求項11に記載のガス拡散電極。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス拡散基材を備えてなる、膜電極アセンブリ。
- 請求項11又は12に記載のガス拡散電極を備えてなる、膜電極アセンブリ。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス拡散基材を製造するための方法であって、
a)多孔質ベッド上に黒鉛化炭素繊維のスラリーを付着させ、湿った繊維網状組織を形成し、
b)グラファイト粒子及び疎水性ポリマーの懸濁液を調製し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
c)前記湿った繊維網状組織上に前記懸濁液を付与し、
d)前記懸濁液を前記湿った繊維網状組織内へ入れ、及び
e)1000℃を超えない温度で前記湿った繊維網状組織を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなる、製造方法。 - 工程(d)において、吸引装置を用いて前記懸濁液が前記湿った繊維網状組織内へ入れられてなる、請求項15に記載の製造方法。
- 前記懸濁液が前記湿った繊維網状組織の一の面に付与されてなり、且つ、前記吸引が前記湿った繊維網状組織の他の面に付与されてなる、請求項16に記載の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス拡散基材を製造する方法であって、
a)グラファイト粒子を疎水性ポリマーの懸濁液と混合して第1スラリーを形成し、
前記グラファイト粒子の少なくとも90%の最長寸法が100μm未満であり、
b)黒鉛化した炭素繊維と、液体と、及び必要に応じて結合剤とを混合して第2スラリーを形成し、
c)前記第1スラリーと前記第2スラリーとを混合して第3スラリーを形成し、
d)前記第3スラリーを多孔質ベッド上に付着させて繊維含有層を形成し、及び
e)1000℃を超えない温度で前記繊維含有層を乾燥及び焼成させる、各工程を含んでなる、製造方法。 - カーボンブラック及び疎水性ポリマーを含んでなる層を、前記繊維含有層の少なくとも一つの面に付与する工程を更に含んでなる、請求項18に記載の製造方法。
- カーボンブラック及び疎水性ポリマーを含んでなる層を、前記繊維網状組織の少なくとも一つの面に付与する工程を更に含んでなる、請求項15〜17の何れか一項に記載の製造方法。
- ガス拡散基材が、請求項15〜20のいずれか一項に記載の製造方法により製造されてなり、且つ、電極触媒層が前記ガス拡散基材上に付着されてなる、ガス拡散電極を製造する方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
GBGB0413324.5A GB0413324D0 (en) | 2004-06-15 | 2004-06-15 | Gas diffusion substrate |
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PCT/GB2005/002371 WO2005124902A1 (en) | 2004-06-15 | 2005-06-15 | Gas diffusion substrate |
Publications (3)
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JP2008503043A JP2008503043A (ja) | 2008-01-31 |
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