以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
実施例1では、まず、本発明の液晶表示装置の概略構成の一例および原理について簡単に説明し、その後、各構成要素についての具体的な説明をする。
図1乃至図5は、本発明による実施例1の液晶表示装置の概略構成の一例および原理を説明するための模式図である。
図1は、実施例1の液晶表示装置の主要部の概略構成の一例を示す模式平面図である。図2は、図1のA−A’線から−x方向を見たときの液晶表示装置の構成の一例を示す模式側断面図である。図3は、光源が発した光が導光板の面発光部に導かれるまでの光路を示す模式側断面図である。図4は、導光板の段差部分を曲面状にすることの効果の一例を説明するための模式断面図である。図5は、導光板の側面の角度および段差部分の形状の条件の一例を説明するための模式断面図である。
実施例1の液晶表示装置は、導光板方式(エッジライト方式ということもある)のバックライトを有するものであり、たとえば、図1および図2に示すように、液晶表示パネル1、導光板2、複数の光源3、第1のプリズムシート4、および第2のプリズムシート5を有する。なお、図1では、液晶表示パネル1、導光板2、第1のプリズムシート4、および第2のプリズムシート5をxy平面内でずらして示している。実際の液晶表示装置における導光板2、第1のプリズムシート4、および第2のプリズムシート5は、それぞれ、領域AR2、領域AR4、領域AR5が液晶表示パネル1の表示領域AR1と重なるように積層される。
また、実施例1の液晶表示装置は、そのほかに、たとえば、液晶表示パネル1を駆動させるICチップ6、フレキシブル配線板7、および光源3をフレキシブル配線板7に実装するための傾斜台8などを有する。
液晶表示パネル1は、たとえば、アクティブマトリクス方式の透過型TFT液晶表示パネルであり、TFT基板9、対向基板10、液晶層11、第1の偏光板12、および第2の偏光板13などを有する。このとき、液晶表示パネル1は、導光板2と対向させる面の平面形状(図1のz方向から見た外形)が概略長方形である。液晶表示パネル1の構成に関する詳細な説明は、後述する。
導光板2は、光源3が発した光(以下、光源光という)を面状光線に変換して液晶表示パネル1に照射するための光学部品である。このとき、導光板2は、液晶表示パネル1と対向させる第1の主面2aの平面形状(図1のz方向から見た外形)が概略長方形である。このとき、導光板2と液晶表示パネル1とは、長手方向と短手方向との関係が一致するように積層される。またこのとき、複数の光源3は、それぞれ、光源光の出光面が導光板2の短手方向の側面2bと対向するように配置される。
また、導光板2は、光源光に対する機能により結合部と面発光部とに分類される。結合部は光源光を取り入れる部分であり、面発光部は取り入れた光源光を液晶表示パネル1に向けて出射させる部分である。導光板2は、取り入れた光源光を、主として、領域AR2から液晶表示パネル1に向けて出射させる。すなわち、面発光部は導光板2のうちの領域AR2およびその周辺の部分であり、結合部は導光板2のうちの光源3と面発光部との間に位置する部分である。
また、導光板2は、面発光部における厚さがほぼ均一であり、かつ、結合部が面発光部よりも厚くなるようにしている。またこのとき、結合部は、第1の主面2aとは反対側の第2の主面2cを概略平坦な面にし、第1の主面2aに曲面状の段差を設けることで面発光部よりも厚くしている。液晶表示パネル1と導光板2との間に配置する第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5は、後述するように、導光板2の面発光部と液晶表示パネル1との間に配置されていればよい。そのため、液晶表示パネル1と対向する第1の主面2aに段差を設けて結合部を面発光部よりも厚くすることで、光源光の結合効率(取り入れ効率)の向上と、液晶表示装置の厚さの低減とを両立できる。
また、導光板2は、光源光を取り入れる側面2bと、前記第1の主面2aとは反対側の第2の主面2cとのなす角αが鈍角になる方向に傾けている。
また、導光板2は、第1の主面2aの段差部分の上に反射型偏光板14、透明スペーサ15、および第1の反射板16がこの順で積層されている。また、導光板2は、第2の主面2cの結合部と面発光部の境界部分に四分の一波長板17および第2の反射板18がこの順で積層されている。またさらに、導光板2は、第2の主面2cのうちの面発光部に、光取り出し構造として、傾斜面を光源側に有する中空のプリズム状の突起2dが多数設けられている。これらの構成に関する詳細な説明は、後述する。
光源3は、たとえば、白色LEDなどの白色発光素子である。このとき、光源3の出光面3aを平坦な面にしておくと、出光面3aを導光板2の側面2bと密接させることができ、たとえば、出光面3aから出射した光源光が導光板2に入射する過程における光量の減少などを防ぐことができる。すなわち、図2および図3では光源3の出光面3aと導光板2の側面2bとが離れているが、実際にはこれらの面を密接させることが望ましい。また、出光面3aと側面2bとを密接させる代わりに、たとえば、出光面3aと側面2bとが平行になるように光源3を配置し、出光面3aと側面2bとの間に透明なスペーサを介在させてもよい。
第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5は、たとえば、面発光部から出射した光に対して、液晶表示パネル1への入射角の調整や面輝度の調整などを行う光学部品である。第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5の構成に関するの詳細な説明は、後述する。
さて、実施例1の液晶表示装置における光源3が白色LEDの場合、出光面3aから出射する光源光は、その強度分布に異方性(角度依存性)を有し、出光面3aの法線方向の強度が最も強くなり、法線方向からの傾きが大きくなるにつれて強度が急激に低下する。そのため、以下、光源光のうちの強度が最も強い成分、すなわち出光面3aの法線方向に出射した成分(以下、光源光の主要成分という)に着目し、実施例1の液晶表示装置の原理について説明する。
実施例1の液晶表示装置において、出光面3aから出射した光源光の主要成分は、たとえば、図3に示したように、導光板2の側面2bの法線方向に進行し、導光板2の第1の主面2aに設けられた反射型偏光板14に入射する。光源3が白色LEDの場合、光源光は、自然光または自然光に近い部分偏光である。そのため、第1の主面2a(反射型偏光板14)に入射する光源光の主要成分には、P偏光とS偏光とが存在する。なお、P偏光は、光源光が第1の主面2aなどの界面に入射する際に、光源光の入射方向と界面の法線方向とが作る平面内に振動方向を有する直線偏光であり、S偏光は、振動方向がP偏光に対して垂直な直線偏光である。
反射型偏光板14は、所定の振動方向を有する直線偏光を透過し、その振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光を反射するという機能を有する。実施例1の液晶表示装置では、この反射型偏光板14を、P偏光は透過し、S偏光は反射するように配置しておく。なお、反射型偏光板14を通過する光は、通常、P偏光を主成分とする部分偏光であり、P偏光とは振動方向が異なる成分の光が含まれている。同様に、反射型偏光板14を反射する光は、通常、S偏光を主成分とする部分偏光であり、S偏光とは振動方向が異なる成分の光が含まれている。しかしながら、光学的には、このような部分偏光を単に偏光と呼ぶことが多いので、本明細書では、P偏光を主成分とする部分偏光およびS偏光成分を主成分とする部分偏光を、それぞれ、P偏光およびS偏光と呼んでいる。
反射型偏光板14で反射したS偏光は、導光板2の第2の主面2cに設けた四分の一波長板17および第2の反射板18を用いてP偏光に変換する。四分の一波長板17に入射したS偏光は、当該四分の一波長板17を通過する過程で右回りの円偏光に変換され、第2の反射板18で反射する。また、第2の反射板18で反射して四分の一波長板17に入射した右回りの円偏光は、当該四分の一波長板17を通過する過程で直線偏光に変換され、導光板2に戻る。このとき、導光板2に戻った直線偏光の振動方向は、反射型偏光板14で反射したS偏光の振動方向に対して90度回転しているので、P偏光になる。
一方、反射型偏光板14を透過したP偏光は、透明スペーサ15を通過して第1の反射板16で反射した後、再び透明スペーサ15を通過して導光板2に戻り、第2の主面2cに入射する。このとき、第2の主面2cのうちの反射型偏光板14を通過したP偏光が入射する部分に四分の一波長板17および第2の反射板18があると、当該P偏光がS偏光に変換されてしまう。そのため、反射型偏光板14を通過したP偏光が入射する部分には四分の一波長板17および第2の反射板18を設けず、入射したP偏光を第2の主面2cで全反射させる。
また、詳細な説明は省略するが、出光面3aの法線方向とは異なる方向に出射した成分についても、反射型偏光板14を反射したS偏光は四分の一波長板17および第2の反射板18を用いてP偏光に変換してから面発光部に導き、反射型偏光板14を通過したP偏光はP偏光のまま面発光部に導く。
このように、実施例1の液晶表示装置では、光源光に含まれるP偏光はP偏光のまま面発光部に導き、S偏光はP偏光に変換して面発光部に導く。
また、光源3が発する光源光は、出光面3aの法線方向を中心として放射状に広がる光である。このとき、第1の主面2aに設ける段差を、光源3から見て凹面になる曲面状にしておくと、出光面3aの法線方向に出射する主要成分の光路OP2、法線方向よりも上方側に出射する成分の光路OP2u、および法線方向よりも下方側に出射する成分の光路OP2dは、それぞれ、図4に示したようになる。なお、図5に示した光路OP2、光路OP2u、および光路OP2dは、それぞれの方向に出射する光のうちの、S偏光からP偏光に変換されて面発光部に導かれる成分の光路を示している。
図4からわかるように、第1の主面2aに設ける段差(すなわち第1の主面2aと反射型偏光板14との界面)を、光源から見て凹面になる曲面状にしておくと、反射型偏光板14で反射したS偏光は、四分の一波長板17に向かう過程で収束し、第2の主面2cにおいて当該S偏光が入射する領域の広がりを抑えることができる。そのため、四分の一波長板17および第2の反射板18の設置面積を小さくすることができ、たとえば、反射型偏光板14を通過したP偏光が四分の一波長板17に入射してS偏光に変換されるのを防ぐことが容易になる。
また、図3および図4に示したように、第1の反射板16の反射面も光源3から見て凹面になる曲面状にしておけば、反射型偏光板14を通過したP偏光は、第1の反射板16で反射した後、導光板2の第2の主面2cに向かう過程で収束し、第2の主面2cにおいて当該P偏光が入射する領域の広がりを抑えることができる。そのため、反射型偏光板14を通過したP偏光が四分の一波長板17に入射してS偏光に変換されるのを防ぐことがさらに容易になる。
また、第1の主面2aに設ける段差を、光源から見て凹面になる曲面状にする場合、その曲率を調節することで、たとえば、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角度の範囲を狭くすることができる。四分の一波長板17は、後述するように、遅相軸方位角およびリタデーションに角度依存性があり、四分の一波長板として機能する角度範囲が限定されている。そのため、第1の主面2aに設ける段差を、光源から見て凹面になる曲面状にし、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角度の広がりを抑えることで、多くの入射成分をS偏光からP偏光に変換することが可能になる。また、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角度の広がりを抑えることで、四分の一波長板17および第2の反射板により変換されたP偏光の広がりを抑えることもできる。
ところで、面発光部に導いたP偏光は、第1の主面2aおよび第2の主面2cで全反射させながら導光板2の長手方向(y方向)に伝播させ、領域AR2から出射させる。このとき、導光板2の側面2bが、たとえば、図5に示すように、第2の主面2cの法線方向に対してφ1度だけ傾いており、かつ、光源3の出光面3aが側面2bに平行であるとすると、導光板2の側面2bから入射して反射型偏光板14に向かう光源光の主要成分の進行方向は、導光板2の第2の主面2cに対してφ1度だけ傾く。またこのとき、反射型偏光板14のうちの、光源光の主要成分が入射する位置における接線の方向が、第2の主面2cに対してφ2度だけ傾いているとすると、主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψMは、{90−(φ1+2φ2)}度になる。またこのとき、四分の一波長板17および第2の反射板18により変換されたP偏光が第2の主面2cから導光板2に戻るとき出射角は、ψM度になる。
また、導光板2の屈折率が透明な有機高分子の標準的な値である1.5だとすると、全反射条件を満たす入射角(臨界角)は約45度になるので、主要成分に含まれるS偏光を変換して得られるP偏光が全反射条件を満たすようにするには、当該S偏光の入射角ψMを45度以上にする必要がある。したがって、実施例1の液晶表示装置では、導光板2の側面2bの傾き角φ1と、反射型偏光板14のうちの光源光の主要成分が入射する位置における接線の傾き角φ2との関係が、たとえば、(φ1+2φ2)≦45度になるようにする。
なお、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角は、たとえば、図4に示したように、光源3の出光面3aからの出射方向でみた成分毎に異なり、四分の一波長板17への入射角ψが、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMよりも小さくなるS偏光も存在する。そのため、このような入射角ψが主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMよりも小さくなるS偏光もP偏光に変換できるようにするには、たとえば、傾き角φ1と傾き角φ2との関係が、20度≦(φ1+2φ2)≦40度になるようにし、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMが、50度≦ψM≦70度になるようにすることが望ましい。
また、詳細な説明は省略するが、反射型偏光板14を透過したP偏光についても同様に、第1の反射板16で反射して導光板2に戻り、第2の主面2cに入射するときの入射角を45度以上にする必要がある。そのため、第1の反射板16は、たとえば、光源光の主要成分に含まれるP偏光が入射する位置における接線と第2の主面2cのなす角φ2’度が、(φ1+2φ2’)≦45度になるようにする。
このようにして面発光部に導かれたP偏光は、第1の主面2aおよび第2の主面2cで全反射をしながら導光板2の長手方向に伝播する。しかしながら、このままでは面発光部を伝播するP偏光を液晶表示パネル1側に出射させることができない。そのため、実施例1の液晶表示装置では、たとえば、図2に示したように、面発光部の第2の主面2cに、傾斜面を光源側に有する中空のプリズム状の突起2d(光取り出し構造)を設けている。このとき、突起2dの傾斜面は、第2の主面2cからの傾き角を、当該傾斜面で反射したP偏光が第1の主面2aに入射するときの入射角が臨界角よりも小さくなるようににする。またこのとき、突起2dの傾斜面の傾き角は、当該傾斜面に入射したP偏光が全反射する値にすることが望ましい。したがって、実施例1の液晶表示装置に用いる導光板2は、このような観点からも、傾き角φ1と傾き角φ_2との関係が、20度≦(φ1+2φ2)≦40度になるようにし、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMが、50度≦ψM≦70度になるようにすることが望ましい。
また、面発光部を伝播するP偏光は、光源3から遠ざかるにつれて強度が徐々に低下する。そのため、突起2dは、強度が大きい光源3の近傍ではより疎に分布し、強度が小さくなる光源3からはなれた部分ではより密に分布するように配置して、領域AR2から液晶表示パネル1側に向けて出射する光の強度を均一化することが望ましい。
従来の一般的な液晶表示装置で用いる導光板のように、自然光である光源光をそのまま面発光部に導いた場合、光取り出し構造で反射した光源光が第1の主面2aに入射すると、当該光源光にはP偏光とS偏光とが存在する。このとき、第1の主面2aに入射したP偏光は、導光板と空気との界面における反射率が小さいので、当該導光板の外側に出射しやすい。一方、第1の主面2aに入射したS偏光は、導光板と空気との界面における反射率が大きいので、その大部分が導光板内に戻され、導光板の外側に出射しにくい。
そのため、実施例1の液晶表示装置では、上記のように、導光板に入射した光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換してから面発光部に導くことで、面発光部から液晶表示パネル1側に出射する光の量を多くしている。
こうして導光板2の面発光部から液晶表示パネル1側に出射させた光は、たとえば、図2に示したように、第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5を通過させた後、液晶表示パネル1に入射させる。このとき、液晶表示パネル1に入射した面状光線は、当該液晶表示パネル1において変調され、映像や画像として観察者に認識される。
第1のプリズムシート4は、たとえば、液晶表示パネル1に入射する光の入射方向のうちの、主に液晶表示パネル1の長手方向と平行な平面(yz面)で見た入射方向を調整するための光学部品である。このとき、第1のプリズムシート4は、たとえば、液晶表示パネル1と対向する面に、当該液晶表示パネル1の長手方向で見た断面が三角形状で平面分布がストライプ状の突起構造を有し、当該突起構造のストライプ方向が導光板2の短手方向(x方向)と平行になるように配置されている。また、第2のプリズムシート5は、たとえば、液晶表示パネル1に入射する光の入射方向のうちの、主に液晶表示パネル1の短手方向と平行な平面(xz面)で見た入射方向を調整するための光学部品である。第1のプリズムシート4は、たとえば、液晶表示パネル1と対向する面に、当該液晶表示パネル1の短手方向で見た断面が三角形状で平面分布がストライプ状の突起構造を有し、当該突起構造のストライプ方向が導光板2の長手方向(y方向)と平行になるように配置されている。
さて、導光板2の面発光部に導かれる光は、前述のようにP偏光であり、第1の主面2aおよび第2の主面2cで反射しながら導光板2の長手方向に伝播し、最後は第1の主面2aで屈折して導光板2の外に出射する。このとき、面発光部を伝播するP偏光は、たとえば、第1の主面2aおよび第2の主面2cで反射または屈折する際に、偏光状態が変化する可能性がある。しかしながら、伝播する光の進行方向が導光板2の長手方向と平行であり、かつ、導光板2の光軸が長手方向と平行であれば、第1の主面2aおよび第2の主面2cで反射または屈折した光には、P偏光成分のみが生じ、S偏光成分は発生しない。したがって、導光板2の面発光部から液晶表示パネル1側に出射する光は、図1に示したように、振動方向が導光板2の長手方向と平行な光である。なお、実際に面発光部から出射するのは、振動方向が導光板2の長手方向と平行な光を主成分とする光であるが、本明細書では、このような光を、振動方向が導光板2の長手方向と平行な光と呼んでいる。
また、第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5は、それぞれ、突起構造のストライプ方向が、導光板2の短手方向(x方向)および長手方向(y方向)と平行である。このとき、第1のプリズムシート4を通過する光および第2のプリズムシート5を通過する光は、それぞれ、プリズムシートと空気との界面で屈折する。このとき、通過する光の進行方向が導光板2の長手方向(y方向)と平行であり、かつ、プリズムシートの光軸が導光板2の長手方向と平行であると、第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5において屈折した光には、P偏光成分のみが生じ、S偏光成分は発生しない。したがって、第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5を通過して液晶表示パネル1の法線方向に向かう光の振動方向は、導光板2の長手方向、すなわち液晶表示パネル1の長手方向と平行のままである。すなわち、液晶表示パネル1に入射する光の大部分は、当該液晶表示パネル1の長手方向と平行な振動方向を有する光である。なお、実際に液晶表示パネル1に入射するのは、振動方向が液晶表示パネル1の長手方向と平行な光を主成分とする光であるが、本明細書では、このような光を、振動方向が液晶表示パネル1の長手方向と平行な光と呼んでいる。
液晶表示パネル1は、表示領域AR1が多数の画素で構成されており、それぞれの画素における光の透過光量を制御することで、バックライトからの面状光線を変調する。このとき、各画素における光の透過光量は、液晶層11を通過した光の偏光状態および光量と、第2の偏光板13の透過軸の方向との関係によって決まる。液晶層11を通過した光の偏光状態は第1の偏光板12の透過軸の方向と液晶層11の配向状態によって決まり、光量は第1の偏光板12に入射する光の振動方向と第1の偏光板12の透過軸の方向との関係によって決まる。
したがって、バックライト(導光板2)から出射した光の利用効率を高めるには、たとえば、図1に示したように、第1の偏光板12の透過軸12Tの方向を、導光板2(液晶表示パネル1)の長手方向であるy方向と平行にすればよい。なお、第1の偏光板12の透過軸12Tの方向は、液晶表示パネル1の長手方向と平行にすることが望ましいが、これに限らず、液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行になっていればよい。
また、実施例1の液晶表示装置における液晶表示パネル1は、第1の偏光板12の透過軸LT1の方向が導光板2および液晶表示パネル1の長手方向と平行または概ね平行になっていればよいので、たとえば、液晶層11への電界の印加方式や画素の構成などは、適宜変更可能である。そこで、実施例1では、液晶表示パネル1の一例として、IPS方式の液晶表示パネルを挙げる。
図6乃至図8は、実施例1の液晶表示装置における液晶表示パネルの概略構成の一例を説明するための模式図である。
図6は、液晶表示パネルの画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。図7は、図6のB−B’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。図8は、図6のC−C’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
なお、図6および図7におけるx方向、y方向、およびz方向は、それぞれ、図1におけるx方向、y方向、およびz方向と同じ方向である。
IPS方式の液晶表示パネル1の画素は、たとえば、図6乃至図8に示すような構成になっており、液晶層11に印加する電界の強さを制御するための画素電極19および共通電極20が、ともにTFT基板9に設けられている。
TFT基板9は、たとえば、ホウケイサンガラスなどでなる透明な第1の絶縁基板21を有する。また、TFT基板9は、第1の絶縁基板21の液晶層11と対向する面の上に形成された走査信号線22、第1の絶縁層23、TFT素子24、映像信号線25、第2の絶縁層26、共通電極20、第3の絶縁層27、画素電極19、および第1の配向膜28などを有する。
また、実施例1の液晶表示装置は、たとえば、携帯電話端末の液晶ディスプレイなどに用いられる小型のものであり、走査信号線22のうちの表示領域AR1を通る部分は液晶表示パネル1の短手方向(x方向)に延びており、映像信号線25のうちの表示領域AR1を通る部分は液晶表示パネル1の長手方向(y方向)に延びている。
また、画素電極19と共通電極20とは、第3の絶縁層27を介して積層されており、液晶層11に近いほうの画素電極19の平面形状は、液晶表示パネル1の長手方向に直線状に延びる細長い部分(以下、歯と呼ぶ)を複数有する櫛歯状になっている。このとき、画素電極19は、コンタクトホールCHによりTFT素子24のソース電極と接続している。
また、TFT素子24は、ゲート電極が走査信号線22と接続しており、ドレイン電極が映像信号線25と接続している。なお、TFT素子24のソース電極とドレイン電極は、バイアスの関係、すなわち当該TFT素子24がオンになったときの画素電極19の電位と映像信号線25の電位との高低の関係によって変わる。
一方、対向基板10は、たとえば、ホウケイサンガラスなどでなる透明な第2の絶縁基板29を有する。また、対向基板10は、第2の絶縁基板29の液晶層11と対向する面の上に形成されたブラックマトリクス30、カラーフィルタ31、平坦化膜32、第2の配向膜33などを有する。
また、液晶層11は、たとえば、室温を含む広い温度範囲でネマチック層を示し、かつ、誘電率異方性が正である液晶材料を用いる。このとき、液晶材料は、さらに、高抵抗であることが望ましい。
IPS方式の液晶表示パネル1では、電界無印加時、すなわち画素電極19と共通電極20との間に電位差が無いときの液晶層11の配向がホモジニアス配向になるようにするのが一般的である。このとき、液晶層11の配向方向は、第1の配向膜28および第2の配向膜33に施す配向処理によって決まる。画素電極19の平面形状が、図6に示したような櫛歯状である場合、電界無印加時の液晶層11の平面内での配向方向は、たとえば、液晶分子の分子軸方向11Mが映像信号線25および画素電極19の歯の延びている方向(y方向)に対して角度βだけ傾いた方向にする。この角度βは、たとえば、5度程度にする。
このようにすると、画素電極19と共通電極20との間に電位差が生じたときに液晶層11に印加される電界の方向(x方向)と、無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mとのなす角が約85度になり、電界を印加したときの液晶分子の回転角が大きくなる。
またこのとき、第1の偏光板12および第2の偏光板13は、第1の偏光板の吸収軸12Aと第2の偏光板の吸収軸13Aとが直交し、かつ、第2の偏光板13の吸収軸13Aが無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mと一致するように配置する。第1の偏光板12および第2の偏光板13は、たとえば、配向処理されたヨウ素系色素を含み、その2色性により自然光を偏光に変換する光学部品である。
第2の偏光板13の吸収軸13Aを無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mと平行にすると、第1の偏光板12の吸収軸12Aは、無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mと直交する。また、第1の偏光板12および第2の偏光板13は、それぞれ、入射した光の吸収率が最大となる方位(吸収軸)と最小となる方位(透過軸)とが直交している。そのため、第1の偏光板12の透過軸12Tは、無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mと平行になり、液晶表示パネル1の長手方向(y方向)と概ね平行になる。またこのとき、第2の偏光板13の透過軸13Tは、無電界印加時の液晶分子の分子軸方向11Mと直交し、液晶表示パネル1の短手方向(x方向)と概ね平行になる。
このような液晶表示パネル1において、無電界印加時に液晶層11を通過した光の偏光状態は、液晶層11を通過する前と概ね同じ状態であり、第1の偏光板12の透過軸12Tと平行な振動方向を有する直線偏光である。したがって、画素電極19と共通電極20との間に電位差が無い画素では、導光板2から出射し、第1の偏光板12および液晶層11を通過した光が第2の偏光板13で吸収され、黒表示になる。なお、第1の偏光板12を通過する光は、実際には、透過軸12Tと平行な振動方向を有する直線偏光を主成分とする完全偏光に近い部分偏光である。
一方、画素電極19と共通電極20との間に電位差が生じて液晶層11の配向が変化すると、第1の偏光板12および液晶層11を通過した光の偏光状態は、液晶層11を通過する前とは異なる状態になる。したがって、画素電極19と共通電極20との間に電位差がある画素では、当該電位差に応じて、導光板2側から第1の偏光板12および液晶層11を通過した光の一部または全部が第2の偏光板13を通過し、黒以外の所定の階調(輝度)の表示になる。このとき、液晶層11を通過して第2の偏光板13に入射する光の偏光状態が同じであれば、第1の偏光板12を通過した光の光量が多いほど、画素の輝度が高くなることはもちろんである。
実施例1の液晶表示装置は、前述のように、導光板2から出射して液晶表示パネル1(第1の偏光板12)に入射する光の振動方向が、液晶表示パネル1の長手方向と平行である。そのため、第1の偏光板12の透過軸12Tが液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行になるようにすると、第1の偏光板12を通過する光の光量が多くなる。したがって、実施例1の液晶表示装置は、たとえば、従来の液晶表示装置と同等の消費電力を保ちながらより明るい表示をすること、または従来の液晶表示装置と同等の明るさを保ちながら消費電力を抑えることができる。
ところで、図6乃至図8に示した液晶表示パネル1では、無電界印加時の液晶層11の配向方向を長手方向(y方向)に対して5度傾けており、第1の偏光板12の透過軸12Tも長手方向に対して5度傾いている。これに対し、バックライト(導光板2)からの光は、前述のように、振動方向が液晶表示パネル1の長手方向と平行である。そのため、第1の偏光板12の透過軸12Tと入射する光の振動方向とは平行にならず、5度だけずれることになる。
しかしながら、この程度のずれであれば、バックライトからの光は、第1の偏光板12を充分に高い効率で透過する。これは、バックライトからの光が液晶表示パネル1の長手方向を振動方向とする直線偏光のみでなる完全偏光であり、かつ、第1の偏光板12が完全偏光板であると仮定し、バックライトからの光の振動方向と第1の偏光板12の透過軸12Tとのなす角をβとすると、バックライトからの光が第1の偏光板12を透過する効率は、cos2βに比例するからである。β=0(度)の理想的な場合のcos2βが1であるのに対して、β=5(度)の場合のcos2βは約0.9924である。すなわち、β=5(度)のときの透過効率の低減率は約1%である。したがって、第1の偏光板12に入射する光の偏光状態がその透過軸12Tに対して完全に平行な直線偏光にならずに、5度程度のずれがあっても、光源光の利用効率を向上させる効果は十分に得られる。なお、ここでいう完全偏光板とは、入射する光に含まれる吸収成分の透過率が0%であり、透過成分の透過率が100%である理想的な偏光板のことである。
このように、実施例1の液晶表示装置では、液晶表示パネル1の第1の偏光板12の透過軸12Tの方向を、導光板2から出射する光の振動方向と概ね平行にすることで、導光板2から出射した光の利用効率、すなわち光源光の利用効率を高める。
さて、実施例1の液晶表示装置において、導光板2に入射した光源光のうちの反射型偏光板14で反射した光(S偏光)は、たとえば、図3に示したように、第2の主面2cに設けた四分の一波長板17および第2の反射板18を利用してP偏光に変換する。
四分の一波長板17は、光学異方性媒体の一種であり、一般に、その光学異方性は入射した光の進行方向、すなわち四分の一波長板に入射する光の入射角によって変化する。実施例1の液晶表示装置では、図3に示したように、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角が、当該四分の一波長板17の入光面(導光板2の第2の主面2cとの界面)の法線方向に対して所定の角度だけ傾いている。そのため、実施例1の液晶表示装置における四分の一波長板17は、このような傾いた光路のS偏光に対して、四分の一波長板として機能しなければならない。すなわち、実施例1の液晶表示装置における四分の一波長板17は、S偏光の入射方向から見たときの遅相軸が当該S偏光の振動方向と45度をなし、かつ、S偏光の入射方向から見たときのリタデーションが当該S偏光の四分の一波長でなければならない。
一方、四分の一波長板17のリタデーションは、通常、入光面の法線方向における値によって管理される。また、四分の一波長板17の遅相軸方位角を設定する際には、通常、入光面の法線方向から見たときの遅相軸方位角(以下、入光面での遅相軸方位角という)に着目して設定する。そのため、実施例1では、四分の一波長板17に要求されるリタデーションおよび遅相軸方位角として、法線方向のリタデーション、および入光面内での遅相軸方位角を導出する。
なお、光源3として白色LEDを用いた場合、当該白色LEDが発する光源光の強度は角度依存性を有し、光出射面の法線方向において最大になり、法線方向から離れる(傾きが大きくなる)につれて急激に低下する。そのため、実施例1では、光源光の主要成分に含まれるS偏光に着目し、当該S偏光をP偏光に変換するために要求される四分の一波長板17のリタデーションおよび遅相軸方位角を導出する。
光源光のうちの、出光面の法線方向に出射する主要成分に着目すると、当該主要成分に含まれるS偏光は、たとえば、図5に示したように、入射角ψM={90−(φ1+2φ2)}度で四分の一波長板17(導光板2の第2の主面)に入射する。すなわち、実施例1では、入光面に対して入射角ψMで四分の一波長板17に入射するS偏光をP偏光に変換するために要求される四分の一波長板17の法線方向のリタデーションおよび平面内での遅相軸方位角を導出する。
また、実施例1の液晶表示装置における四分の一波長板17は、たとえば、シクロオレフィン系有機高分子膜などの透明な有機高分子膜を延伸して作成した、正の一軸異方性を有するものとする。正の一軸異方性を有する四分の一波長板17は、作成が容易であり、薄い四分の一波長板を低コストで作成できるという利点がある。なお、正の一軸異方性を有する四分の一波長板というのは、延伸方向の屈折率がその垂直方向よりも大きく、かつ、いずれの垂直方向の屈折率も等しい四分の一波長板のことである。
図9乃至図14は、実施例1の液晶表示装置における四分の一波長板の構成を説明するための模式図である。
図9は、四分の一波長板に入射する光の振動方向と遅相軸方位角との関係を説明するための模式側断面図である。図10は、四分の一波長板の入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向での遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図11は、入光面内での遅相軸方位角の定義を示す模式図である。図12は、四分の一波長板の法線方向のリタデーションと、入射角方向でのリタデーションの入射角依存性との関係を示す模式図である。図13は、四分の一波長板のNz係数を1にしたときに入射角方向の遅相軸方位角が45度になる、入射角と入光面内での遅相軸方位角との関係を示す模式図である。図14は、入射角方向の遅相軸方位角が45度になる入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向のリタデーションが四分の一波長になる法線方向のリタデーションとの関係を示す模式図である。
四分の一波長板17のような光学異方性媒体の3次元の屈折率分布は、一般に、Nz係数で表される。Nz係数については、たとえば、非特許文献1に開示されており、下記数式1で定義される。
Nz=(ns−nz)/(ns−nf) ・・・(数式1)
なお、数式1において、nsおよびnfは、それぞれ、光が入射する平面内での遅相軸方向および進相軸方向の屈折率であり、nzは厚さ方向の屈折率である。また、実施例1で扱う一軸異方性が正の光学異方性媒体の場合、Nz係数は1である。
また、光学異方性媒体の遅相軸角度およびリタデーションの角度依存性は、ラグランジュの未定乗数法で求めることができる。この求め方は、たとえば、非特許文献2に詳細に記載されているので、実施例1ではその結果のみを記載する。
光学異方性媒体のx軸方向、y軸方向、およびz軸方向の屈折率を、それぞれ、nx、nyおよびnzとすると、光学異方性媒体のxy平面に入射角ψおよび方位角Θで入射する直線偏光に対する遅相軸方向の屈折率nsおよび進相軸方向の屈折率nfは、それぞれ、下記数式2乃至数式9で表される。なお、入射角ψは、z軸方向からの角度(いわゆる極角)であり、方位角Θは、xy平面内でのx軸からの角度である。
ns=2A/{−B+(B2−4AC)0.5}0.5 ・・・(数式2)
nf=2A/{−B+(B2+4AC)0.5}0.5 ・・・(数式3)
ただし、
A=nx 2ny 2nz 2 ・・・(数式4)
B=nx 2nz 2(ky 2−1)2+ny 2nz 2(kx 2−1)2
+nx 2ny 2(kz 2−1)2 ・・・(数式5)
C=nx 2+ny 2+nz 2−ky 2(nx 2+nz 2)−kx 2(ny 2+nz 2)
−kz 2(nx 2+ny 2) ・・・(数式6)
であり、かつ、
kx=sinψsinΘ ・・・(数式7)
ky=sinψcosΘ ・・・(数式8)
kz=cosψ ・・・(数式9)
また、遅相軸の向きを(ksx,ksy,ksz)とすると、ksx、ksy、およびkszは、それぞれ、下記数式10乃至数式12で表される。
ksx=kxnx 2(ny 2−ns 2)(nz 2−ns 2)/Nos ・・・(数式10)
ksy=kyny 2(nx 2−ns 2)(nz 2−ns 2)/Nos ・・・(数式11)
ksz=kznz 2(ny 2−ns 2)(nx 2−ns 2)/Nos ・・・(数式12)
なお、数式10乃至数式12におけるNosは、下記数式13乃至数式16で表される規格化係数である。
Nos={(ksx')2+(ksy')2+(ksz')2}0.5 ・・・(数式13)
ただし、
ksx'=kxnx 2(ny 2−ns 2)(nz 2−ns 2) ・・・(数式14)
ksy'=kyny 2(nx 2−ns 2)(nz 2−ns 2) ・・・(数式15)
ksz'=kznz 2(ny 2−ns 2)(nx 2−ns 2) ・・・(数式16)
ここで、x軸、y軸、およびz軸方向の屈折率が、それぞれ、nx、ny、およびnzである屈折率楕円体を考えると、図9に示すように、遅相軸17dの向き(ksx,ksy,ksz)は、屈折率楕円体34の中心Oを含み、かつ、入射角ψおよび方位角Θで表される方向に垂直な断面34a内にある。また、S偏光の振動方向SPOは常に水平方向(xy平面内)であり、導光板2の第2の主面2cと平行である。そのため、断面34aを直線偏光が入射する方向から見たときの遅相軸方位角θ(以下、入射角方向での遅相軸方位角θという)を、反時計回りの角度とし、かつ、遅相軸17dの方向が水平方向のときを0度と定義すると、入射角方向での遅相軸方位角θは、図9に示したように、入射角ψで光学異方性媒体(四分の一波長板17)に入射するS偏光の振動方向SPOと、当該S偏光に対する遅相軸17dとのなす角になる。
光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMは、前述のように、45度以上にするべきであり、特に、50度≦ψM≦70度であることが望ましい。そのため、本願発明者らが、入射角ψが45度≦ψ≦75度の範囲における、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性との関係を調べたところ、図10に示すような関係が得られた。なお、図10は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向での遅相軸方位角θ(単位は度)のグラフである。
また、図10の曲線F1、曲線F2、曲線F3、曲線F4、および曲線F5は、それぞれ、Nz係数を1にし、入光面内での遅相軸方位角Θを57.3度、60.2度、63.4度、67.1度、および71.1度にしたときの、入射角方向での遅相軸方位角θの極角依存性を示す曲線である。またこのとき、入光面内での遅相軸方位角Θは、たとえば、図11に示すように、当該入光面を法線方向から見たときの、光源光の主要成分に含まれるS偏光の振動方向SPOから反時計回りの角度とし、遅相軸17dの方向が振動方向SPOと一致するときを0度としている。
図10からわかるように、たとえば、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θを57.3度にすると、入射角方向での遅相軸方位角θが45度になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θを、それぞれ、60.2度、63.4度、67.1度、および71.1度にすると、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる。
これらの結果は、Nz係数が1の場合、入射角方向の遅相軸方位角θは斜めから観察するほど水平に近づくので、これを補正するためには入光面内での遅相軸方位角Θを45度よりも増大させなければならないことを意味している。
また、光学異方性媒体の厚さをdとすると、当該光学異方性媒体に入射角ψで入射して通過する光のリタデーションR(以下、入射角方向のリタデーションRという)は、下記数式17で表される。
R=(ns−nf)・d/cosψ ・・・(数式17)
図10に示した曲線F1、曲線F2、曲線F3、曲線F4、および曲線F5の分布は、Nz係数が1であれば、光学異方性媒体の法線方向のリタデーションの大きさによらず不変である。そのため、本願発明者らが、数式17を用いて、入光面内での遅相軸方位角Θを57.3度、60.2度、63.4度、67.1度、および71.1度にしたときの、法線方向のリタデーションRzと、入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性との関係を計算したところ、図12に示すような結果が得られた。なお、図12は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向でのリタデーションR(単位はnm)のグラフである。
また、図12の曲線F6、曲線F7、曲線F8、曲線F9、および曲線F10は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの組み合わせ(Θ,Rz)を(57.3度,157.5nm)、(60.2度,167.5nm)、(63.4度,182.3nm)、(67.1度,205.3nm)、および(71.1度,242.4 nm)にしたときの、入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性を示す曲線である。また、図12の曲線F6、曲線F7、曲線F8、曲線F9、および曲線F10は、可視波長の中でも視感度がほぼ最大となる波長550nmの光に対する入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性を示している。
図12からわかるように、たとえば、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzを、それぞれ、57.3度および157.5nmにすると、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長(137.5nm)になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの組み合わせ(Θ,Rz)を、それぞれ、(57.3度,157.5nm)、(60.2度,167.5nm)、(63.4度,182.3nm)、(67.1度,205.3nm)、および(71.1度,242.4 nm)にすると、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長(137.5nm)になる。
また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMは、上記の50度、55度、60度、65度、および70度に限らず、他の角度であってもよい。そのため、上記の角度以外の中間の入射角ψについて、Nz係数を1にし、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる、入光面内での遅相軸方位角Θを計算すると、たとえば、図13に示したような結果が得られる。なお、図13は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入光面内での遅相軸方位角Θ(単位は度)のグラフである。
図13からわかるように、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角Θとの関係を示す曲線F11は、ほぼ直線になる。このとき、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角Θとの関係は、下記数式18で近似される。
Θ=−3.78ψ+40.4 ・・・(数式18)
したがって、光源光の主要成分に含まれるS偏光の、四分の一波長板17への入射角ψMが決まれば、図12または数式18から、当該S偏光に対する入射角方向の遅相軸方位角θを45度にするために四分の一波長板17に要求される、入光面内での遅相軸方位角Θが得られる。
またさらに、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzとの間には、たとえば、図14に示すような関係がある。なお、図14は、横軸が入光面内での遅相軸方位角Θ(単位は度)、縦軸が法線方向のリタデーションRz(単位はnm)のグラフである。
また、図14に示した点P1、点P2、点P3、点P4、および点P5は、それぞれ、図12における入射角ψが50度、55度、60度、65度、および70度のときの、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの関係を示す点である。また、図14に示した曲線F12は、点P1、点P2、点P3、点P4、および点P5の値から求めた回帰曲線である。
主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMをある角度に設定した場合、当該S偏光に対する入射角方向での遅相軸方位角θを45度にするために、四分の一波長板17に要求される入光面内での遅相軸方位角Θは、図12または数式18から求めることができる。またこのとき、当該S偏光に対する入射角方向での遅相軸方位角θが45度になる入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzとの間には、図14に示した曲線F12のような関係がある。そのため、入射角ψMが決まり、図12または数式18から四分の一波長板17に要求される入光面内での遅相軸方位角Θが得られれば、図14の関係から四分の一波長板17に要求される法線方向のリタデーションRzも得られる。
このように、実施例1の液晶表示装置では、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMの設定に応じて、使用する四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzを変えることで、光源光に含まれるS偏光を効率よくP偏光に変換し、光源光の利用効率を高める。
なお、四分の一波長板17には、光源光の主要成分に含まれるS偏光だけでなく、当該主要成分以外の成分に含まれるS偏光も入射する。このとき、主要成分以外の成分に含まれるS偏光の入射角ψは、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMとは異なる角度になる。そのため、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMに基づいて四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzを決定した場合、主要成分以外の成分に含まれるS偏光をP偏光に変換する効率は、光源光の主要成分に含まれるS偏光よりも低下する。
しかしながら、光源3として白色LEDを用いた場合、主要成分以外の成分の光強度は、出光面3aの法線方向からの傾きが大きくなるにつれて急激に低下する。また、主要成分以外の成分のうちの、光強度が比較的強い成分、すなわち出光面3aの法線方向からの傾きが小さい成分に含まれるS偏光の入射角ψは、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMとの差が小さい。そのため、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMに基づいて四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzを決定した場合、主要成分以外の成分のうちの、光強度が比較的強い成分に含まれるS偏光については、完全ではないものの、比較的高い効率でS偏光をP偏光に変換することができる。
また、導光板2の第1の主面2aに設ける段差(反射型偏光板14の入光面)の曲率を調整し、主要成分以外の成分に含まれるS偏光の入射角ψが、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMと概ね等しくなるようにすれば、主要成分以外の成分に含まれるS偏光をP偏光に変換する効率も高くなる。
次に、実施例1の液晶表示装置における導光板の作製方法の一例について、簡単に説明する。
図15は、実施例1の液晶表示装置に用いる導光板の形成方法の一例を示す模式図である。
導光板2は、たとえば、アクリル樹脂などの透明樹脂を用いた射出成型により形成される。導光板2を射出成型により形成する場合は、たとえば、図15に示すように、キャビティ35a、複数の注入口35b、および排気口35cを有する金型35を用い、当該金型35の注入口35bから、加熱して軟化させた透明樹脂36または透明樹脂の前駆体をキャビティ35aに注入して形成する。このとき、キャビティ35aの空間形状は、たとえば、注入口35bの近傍の領域35dに導光板2の結合部が形成され、領域35dと排気口35cとの間の領域35eに面発光部が形成されるような形状にしておく。またこのとき、キャビティ35aの空間形状は、たとえば、図8に示した側面2bの傾き角φ1、および第1の主面2Aの段差部分において光源光の主要成分が入射する位置の傾き角φ2を、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψM{=90−(φ1+2φ2)}が所定の値、たとえば、50度から70度の間のいずれかの角度になるようにしておく。
このとき、キャビティ35aに注入された透明樹脂36は、注入口35bの付近では当該注入口35bを中心に放射状に流動し、流動時の配向状態を維持したまま固体化する。そのため、得られる導光板2は、通常、光学異方性を有する。透明樹脂36は、一般に有機高分子であり、射出成型により形成された導光板2における有機高分子の配向方向は、透明樹脂36の流動方向と概ね一致する。このとき、導光板2を微小な領域に分割してみると、それぞれの領域は、透明樹脂36の流動方向を遅相軸(光軸)とする正の一軸異方性媒体と見なすことができる。またこのとき、形成された導光板2においてP偏光が透明樹脂36の流動方向に対して角度を持って伝播すると、当該P偏光は、導光板2の光学異方性の影響を受けて偏光変換され、S偏光成分が生じることになる。
そこで、実施例1では、金型35の注入口35bを、図15に示したように、導光板2の短手方向に沿って多数設けることにより、少なくとも領域35e(面発光部になる部分)における透明樹脂36の流動方向36fが導光板2の長手方向と概ね平行になるようにする。注入口35bからキャビティ35aに流入した透明樹脂36のうちの、長手方向に対して斜めに流動する透明樹脂は、隣接する注入口35bから流入し長手方向に対して斜めに流動する透明樹脂とぶつかる。このようにキャビティ35a内で透明樹脂がぶつかると、その流動方向は両者のベクトル和の方向、すなわち導光板2の長手方向になる。したがって、注入口35bの数を増やして隣接する注入口35bの間隔を狭くすることで、形成される導光板2は、少なくとも面発光部における遅相軸方向を、当該面発光部を伝播するP偏光の伝播方向と概ね平行にすることができる。このとき、導光板2の面発光部は、見かけ上、等方性になるので、P偏光が導光板2の光学異方性(複屈折)によってS偏光に変換されることはない。これにより、形成された導光板2において面発光部に導かれたP偏光は、当該面発光部を伝播して導光板2の外側に出射するまで、P偏光の状態が維持される。
導光板2を形成したら、次に、たとえば、当該導光板2の第2の主面2cに、四分の一波長板17および第2の反射板18をこの順で貼り付ける。このとき、四分の一波長板17および第2の反射板18は、たとえば、光学接着剤を用いて貼り付ける。
四分の一波長板17は、前述のように、たとえば、シクロオレフィン系有機高分子を用い、入射角ψMで入射するS偏光、すなわち光源光の主要成分に含まれるS偏光に対して最適な法線方向のリタデーションRzが得られるように形成する。シクロオレフィン系有機高分子を用いて四分の一波長板17を形成するときには、当該有機高分子膜を延伸して一軸異方性を付与する。そのため、入射角ψMで入射するS偏光に対して最適な法線方向のリタデーションRzを得るには、たとえば、延伸前の厚さおよび延伸条件を調整すればよい。
また、導光板2に貼り付ける四分の一波長板17は、通常、大面積の四分の一波長板を複数の帯状の四分の一波長板に切り分けたものである。有機高分子膜を延伸して形成した四分の一波長板17は、遅相軸が延伸方向と一致する。そのため、図12または数式18から求めた入光面内での遅相軸方位角Θを得るには、たとえば、複数の帯状の四分の一波長板に切り分ける際に、切断方向と遅相軸(延伸方向)との関係を調整すればよい。
また、第2の反射板18は、たとえば、高分子フィルムを基材とし、その表面にアルミニウム膜などの光反射率が高い膜を成膜して形成する。
次に、導光板2の第1の主面2aに、反射型偏光板14、透明スペーサ15、および第1の反射板16をこの順で貼り付ける。
反射型偏光板14は、たとえば、内部を通過する可視光の波長の二分の一に厚さが等しい2種類の高分子膜を交互に積層して形成する。このとき、2種類の高分子膜のうちの一方は面内に屈折率異方性を有する高分子膜にし、他方は屈折率異方性を持たない高分子膜にする。また、屈折率異方性を有する高分子膜は、異常光屈折率neまたは常光屈折率noのいずれかを、屈折率異方性を持たない高分子膜の屈折率と等しくする。常光屈折率noが屈折率異方性を持たない高分子膜の屈折率と等しい場合、常光屈折率noの方向と振動方向が平行な偏光に対しては、反射型偏光板14の内部における屈折率が常に一定になるので、当該偏光は反射型偏光板14を通過する。一方このとき、異常光屈折率neの方向と振動方向が平行な偏光に対しては、反射型偏光板14の内部において波長と同周期で屈折率が変動するので、当該偏光は反射型偏光板14で反射する。なお、反射型偏光板14は、入射する振動方向が直交する2つの偏光成分のうちの一方(P偏光)が透過し、他方(S偏光)が反射すればよいので、上記の構成に限らず、他の構成であってもよい。したがって、反射型偏光板14は、たとえば、ワイヤーグリッド型偏光板であってもよい。
ワイヤーグリッド型偏光板は、ストライプ状にパターニングされた金属薄膜であり、ストライプ方向と平行な振動方向を有する偏光成分を反射し、垂直な振動方向を有する偏光成分を透過する性質を有する。ワイヤーグリッド型偏光板を実施例1の液晶表示装置の反射型偏光板14として用いる場合は、ストライプ構造が導光板平面(第2の主面2c)と平行になるように配置することで、光源光に含まれるP偏光を透過させ、S偏光を反射させることができる。また、ワイヤーグリッド型偏光板を実施例1の液晶表示装置の反射型偏光板14として用いる場合は、導光板2の第1の主面2aに直接形成してもよいし、透明樹脂膜上に形成したものを導光板2に貼り付けてもよい。
透明スペーサ15は、たとえば、導光板2と同じ屈折率を有する透明樹脂で形成し、反射型偏光板14を貼り付けた後、その上に接着する。
第1の反射板16は、第2の反射板18と同様に、たとえば、高分子フィルムを基材とし、その表面にアルミニウム膜などの光反射率が高い膜を成膜して形成する。
実施例1の液晶表示装置において、導光板2に、当該導光板2に入射した光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換する構成を付加するには、このように、結合部と面発光部とを一体形成した導光板2の第1の主面2aに反射型偏光板14、透明スペーサ15、および第1の反射板16を貼り付け、第2の主面2cに四分の一波長板17および第2の反射板18を貼り付けるだけでよい。そのため、たとえば、特許文献1のように導光板を結合部と面発光部とに分離し、その間に反射型偏光板を挟むような方法に比べて、S偏光をP偏光に変換するための構成を付加することが容易である。
以上説明したように、実施例1の液晶表示装置によれば、光源光に含まれるS偏光成分を効率よくP偏光に変換でき、光源光の利用効率を高めることができる。そのため、液晶表示装置の高輝度化、または低消費電力化が容易である。
また、実施例1の導光板の製造方法によれば、光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換するための構成を導光板2に付加することが容易であり、液晶表示装置の製造効率の低下や製造コストの上昇を抑えることができる。
また、実施例1では、液晶表示パネル1の一例として、図5乃至図7に示したように画素電極19と共通電極20とが積層されたIPS方式の液晶表示パネル1を例に挙げた。しかしながら、IPS方式の液晶表示パネル1を用いる場合、当該液晶表示パネル1は、これに限らず、たとえば、絶縁層の同一面に画素電極19と共通電極20とが配置されていてもよい。
また、実施例1の液晶表示装置に用いる液晶表示パネル1は、IPS方式に限らず、たとえば、VA(Vertically Aligned)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、あるいはOCB(Optically Compensated Birefringence)方式のように、液晶層11に厚さ方向(z方向)の電界を印加する液晶表示パネルであってもよい。
また、実施例1では、第1の偏光板12の透過軸12Tと第2の偏光板13の透過軸13Tを直交させた液晶表示パネル1を例に挙げたが、液晶表示パネル1は、第1の偏光板12の透過軸12Tが液晶表示パネル1(導光板2)の長手方向、すなわち導光板2から出射して第1の偏光板12に入射する光の振動方向と概ね平行であればよい。そのため、実施例1の液晶表示装置に用いる液晶表示パネル1は、たとえば、第2の偏光板13の透過軸13Tが第1の偏光板12の透過軸12Tと平行であり、かつ、液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行であってもよい。
また、実施例1では、図1および図2に示したように、導光板2と液晶表示パネル1との間に第1のプリズムシート4および第2のプリズムシート5を介在させた場合を挙げているが、これに限らず、導光板2と液晶表示パネル1との間に配置するプリズムシートは1枚であってもよい。また、導光板2と液晶表示パネル1との間には、プリズムシートだけでなく、たとえば、光拡散板などを介在させてもよい。
実施例2では、実施例1で挙げた構成(図1乃至図3に示した構成)の液晶表示装置に用いる導光板2の、より望ましい作製方法の一例について説明する。
図16は、実施例1の液晶表示装置における光源光の光路と導光板の異方性を有する部分との関係の一例を示す模式平面図である。
実施例1では、導光板2の形成方法の一例として、たとえば、多数の注入口35bを有する金型35を用いた射出成型による形成方法を挙げた。この方法は、導光板2の面発光部になる部分における透明樹脂36の流動方向36fを導光板2の長手方向にし、少なくとも面発光部を見かけ上等方性にできるので、光源光(P偏光)が面発光部を伝播する過程における偏光状態が維持される。
しかしながら、射出成型により形成した導光板2は、たとえば、図16に示すように、隣接する2つの注入口35bの間に相当する位置に、光学的な異方性を持つ部分2eが生じる。また、注入口35bの数を光源3の数よりも多くした場合、たとえば、図16に示すように、光源3の光出射面の位置と導光板2の入射側面のうちの注入口と対応する位置との間にずれが生じ、光源光の一部が異方性を持つ部分2eを通ることが考えられる。このとき、たとえば、面発光部に導かれたP偏光が異方性を持つ部分2eを通る光路OPでは、そのP偏光からS偏光成分が生じ、その分だけ光源光の利用効率が低下する。すなわち、実施例1の液晶表示装置では、たとえば、導光板2の結合部における偏光状態の変化による光源光の利用効率の低下が懸念される。以上のことから、導光板2は、結合部においても見かけ上等方性であることが望ましい。
導光板2を等方性にするためには、たとえば、キャスティング法で作成し、形成時に透明樹脂の流動が生じないようにすればよい。また、射出成型で作成する場合には、固有複屈折がゼロである透明樹脂を用いればよい。しかしながら、現状では、正の固有複屈折を有する透明樹脂を用いた射出成型法による導光板の形成が一般的であり、異方性を持つ部分2eを完全に無くすことは難しい。
そこで、実施例2では、従来と同様に正の固有複屈折を有する透明樹脂を用いた射出成型法で形成でき、かつ、結合部および面発光部を見かけ上等方性にすることが可能な導光板2の形成方法の一例について説明する。
図17および図18は、本発明による実施例2の導光板の作製方法の一例およびその効果を説明するための模式図である。
図17は、本発明による実施例2の導光板の形成方法で用いる金型の概略構成の一例を示す模式図である。図18は、実施例2の導光板における光源光の光路と導光板の異方性を有する部分との関係の一例を示す模式図である。
実施例2の導光板2は、実施例1と同様、正の固有複屈折を有する透明樹脂を用いた射出成型法で作製する。ただし、実施例2の作製方法で用いる金型35は、実施例1とは異なり、たとえば、図17に示すように、注入口35bの数を、組み合わせて使用する光源3の数と同数にし、かつ、その位置を、光源3の配置位置と一致させる。
こうして得られた実施例2の導光板2は、実施例1でも説明したように、隣接する注入口35bの間に相当する位置に、異方性を持つ部分2eが生じる。しかしながら、実施例2の導光板2において異方性を持つ部分2eと、光源光の光路OPとの関係は、たとえば、図18に示したような関係になる。
なお、図18に示したような異方性を持つ部分2eの分布は、たとえば、導光板2の上下に一対の偏光板を配置して、導光板2の複屈折性を観察することで容易に知ることができる。一対の偏光板を用いて導光板2の複屈折性を観察するには、たとえば、当該一対の偏光板を、吸収軸PLA1,PLA2が互いに直交し、かつ、吸収軸PLA1,PLA2の方位が導光板2の長手方向(y方向)に対して45度を成すように配置する。
このとき、透明樹脂の流動方向が導光板2の長手方向と概ね平行な部分は、遅相軸が偏光板の吸収軸PLA1,PLA2に対して概略45度をなすため、光が透過して明るく見える。一方、透明樹脂の流動方向が偏光板の吸収軸PLA1,PLA2と概ね平行な部分や複屈折が小さい部分では、光が透過しないので暗く見える。以上の結果として、実施例2の方法で形成された導光板2では、図18に示したような明暗の分布が観察され、結合部において明るく見える部分が注入口であることがわかる。なお、実際には、明暗の分布、すなわち異方性を持つ部分2eと持たない部分との境界の明るさが連続的に変化するが、図18ではこれを単純化して不連続な分布とし、比較的明るい部分は白で、比較的暗い部分は網掛けで示している。
このような導光板2を用い、射出成型時の注入口と対向する位置に光源3を配置すると、光源光の光路OPは、図18に示したように光源3の出光面3aの法線方向を中心にした放射状になり、結合部および面発光部の両方において、明るく見える部分、すなわち透明樹脂の流動方向(配向方向)が長手方向と概ね平行な部分を通る。そのため、実施例2の導光板2は、結合部およびその近傍においても光源光の伝播方向と導光板2の遅相軸がほぼ平行になり、見かけ上ほぼ等方性になる。したがって、実施例2の導光板2を用いた液晶表示装置は、たとえば、P偏光の偏光状態の変化による光源光の利用効率の低減を抑えることができる。
以上説明したように、実施例2の導光板2を有する液晶表示装置によれば、導光板2の作製方法に起因する光源光の利用効率の低減を抑えることができる。
実施例3では、実施例1で挙げた構成(図1乃至図3に示した構成)の液晶表示装置において、導光板2の第1の主面2Aの段差部分に、透明スペーサ15および第1の反射板16を設けるより簡便な方法について説明する。
図19は、本発明による実施例3の導光板の作製手順の一例を説明するための模式図である。
なお、図19には、導光板2に透明スペーサ15および第1の反射板16を貼り付ける手順を(a)、(b)、および(c)の3つの段階に分けて示している。
実施例3の導光板2は、実施例1または実施例2で説明した射出成型により形成する。また、形成した導光板2の第2の主面2cには、実施例1で説明したような手順で四分の一波長板17および第2の反射板18を貼り付ける。
次に、たとえば、図19の(a)に示したように、導光板2の第1の主面2Aの段差部分に反射型偏光板14を貼り付け、続けて、第1の反射板16が形成された透明なゲル状フィルム15’を貼り付ける。ゲル状フィルム15’は、たとえば、厚さが1mm程度で光学的に等方性のフィルムであり、表面に粘着性を有する。そのため、ゲル状フィルム15’は、導光板2に貼り付けると、図19の(b)に示すように、導光板2の段差に沿うように形状が変化して密着する。
このとき、図19の(b)に示したように、導光板2の第1の主面2aの段差の基部(面発光部と概ね同じ厚さになる端部)においてゲル状フィルム15’の端部と導光板2の第1の主面2aとの間に隙間37が生じると、第1の反射板16で反射したP偏光が導光板2の第2の主面2cに向かう途中で当該隙間37にある空気層を通ることになり、偏光状態が変化するおそれがある。そのため、ゲル状フィルム15’と導光板2との間に隙間37が生じる場合は、たとえば、図19の(c)に示すように、透明粘着層38を浸透させて当該隙間37を埋めることが望ましい。このとき、透明粘着層38は、たとえば、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂を用いて形成する。
またこのとき、ゲル状フィルム15’および透明粘着層38として、屈折率が導光板2と概ね等しい透明な材料を用いれば、ゲル状フィルム15’と透明粘着層38との界面および透明粘着層38と導光板2との界面において屈折や反射が起こらず、第1の反射板16で反射したP偏光を効率よく面発光部に導くことができる。
また、実施例3の導光板2の作製方法では、ゲル状フィルム15’の代わりに、たとえば、Bステージ樹脂と呼ばれる硬化反応の中間段階にある熱硬化性樹脂のフィルムを用い、貼り付けた後で完全硬化させてもよい。
実施例1の液晶表示装置では、光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換するために、前述のように、一軸異方性が正(Nz係数が1)の四分の一波長板17を用いている。
しかしながら、Nz係数が1の四分の一波長板17を用いた場合、たとえば、導光板2に貼り付けた状態における入光面内での遅相軸方位角Θや法線方向のリタデーションRzと、実施例1で説明した手順で算出したそれらの設計値との間にずれがあると、入射角方向での遅相軸方位角θやリタデーションRが大きく変化し、S偏光からP偏光への変換が不完全になり易いという問題がある。また、Nz係数が1の四分の一波長板17を用いた場合、たとえば、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψに広がり(分布)があると、四分の一波長板17への入射角ψが設計値(ψM)からずれているS偏光については、S偏光からP偏光への変換が不完全になり易いという問題がある。このような問題は、たとえば、図10や図12からもわかるように、入光面内での遅相軸方位角Θや法線方向のリタデーションRzの変化に対して、入射角方向での遅相軸方位角θやリタデーションRが急激に変化していること、すなわち入射角方向での遅相軸方位角θやリタデーションRの入射角依存性が大きいことにより生じる。
光源3として白色LEDを用いた場合、光源光(白色光)は、たとえば、図8および図18に示したように、出光面3aの法線方向を中心として放射状に出射するので、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψには広がり(分布)がある。このとき、出光面3aから出射する光の強度は、出射方向と当該出光面3aの法線方向とのなす角が大きくなるにつれて急激に減少する。そのため、実際に四分の一波長板17に入射する際の入射角ψと設計値(ψM)とのずれが大きいS偏光については、強度が十分に低いので、P偏光への変換効率が低くても、光源光の利用効率への寄与は小さいと考えられる。
しかしながら、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射する際の入射角が設計値(ψM)からずれた場合、主要成分に含まれるS偏光をP偏光に変換する効率が低下する。また、光源光の利用効率を高めるという観点では、上記のような、実際に四分の一波長板17に入射する際の入射角ψと設計値(ψM)とのずれが大きいS偏光もP偏光に変換して利用することが望まれる。
以上のようなことから、実施例4では、たとえば、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θや法線方向のリタデーションRzが設計値からずれたり、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψに広い角度分布があったりしても、S偏光からP偏光への変換がほぼ完全に実現されるようにする方法について説明する。
四分の一波長板17の入射角方向での遅相軸方位角θやリタデーションRの変化率は、屈折率の三次元分布によって決定される。そのため、実施例4では、これらの変化を緩やかにするNz係数を求め、当該Nz係数を持つ四分の一波長板17を用いることで、S偏光からP偏光への変換効率を向上させる。
図20乃至図24は、本発明による実施例4の液晶表示装置における四分の一波長板の概略構成を説明するための模式図である。
図20は、四分の一波長板のNz係数と、入射角方向での遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図21は、四分の一波長板のNz係数を0.50にしたときの入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向での遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図22は、四分の一波長板の法線方向のリタデーションと、入射角方向でのリタデーションの入射角依存性との関係を示す模式図である。図23は、四分の一波長板のNz係数を0.50にしたときに入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる、入射角と入光面内での遅相軸方位角との関係を示す模式図である。図24は、入射角方向の遅相軸方位角が45度になる入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向のリタデーションが四分の一波長になる法線方向のリタデーションとの関係を示す模式図である。
一般的な導光板2は、前述のように第1の主面2aおよび第2の主面2cにおける全反射角が45度程度であるため、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψMを45度以上にすることが望まれる。また、一般的な液晶表示装置では、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψの分布が50度から70度の範囲になると考えられる。このとき、使用する四分の一波長板17は、入射角ψがこの範囲にあるすべてのS偏光に対して、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になれば理想的である。そのため、本願発明者らが、45度≦ψ≦75度の範囲において、Nz係数を0.05ずつ変えながら、Nz係数と、入射角方向の遅相軸方位角θの入射角依存性との関係を調べたところ、図20に示すような関係が得られた。なお、図20は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向での遅相軸方位角θ(角度は度)のグラフである。
また、図20の曲線F14、曲線F15、曲線F16、曲線F17、曲線F18、曲線F19、および曲線F20は、それぞれ、Nz係数を0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、および0.65にしたときの、入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性を示す曲線である。
図20からわかるように、入射角方向の遅相軸方位角θの入射角依存性はNz係数の大きさによって変化し、Nz係数が0.50以下の場合は入射角ψの増大にともない遅相軸方位角θが増大し、Nz係数が0.55以上の場合は入射角ψの増大にともない遅相軸方位角θが減少する。また、本願発明者らが調べた結果では、入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲における遅相軸方位角θの入射角依存性が最も緩やかになり、かつ理想的な値(θ=45度)との差が小さくなったのは、Nz係数を0.50にしたときの曲線F17である。そのため、実施例4では、四分の一波長板17のNz係数を0.50とする。
四分の一波長板17のNz係数を0.50にした場合、入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性との関係は、たとえば、図21に示すような関係になる。なお、図21は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向の遅相軸方位角θ(単位は度)のグラフである。
また、図21の曲線F21、曲線F22、曲線F23、曲線F24、および曲線F25は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角Θを45.6度、45.7度、45.8度、46.0度、および46.1度にしたときの、入射各方向での遅相軸方位角θの入射角依存性を示す曲線である。
図21からわかるように、たとえば、光源光の主要成分に含まれるS偏光が四分の一波長板17に入射するときの入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θを45.6度にすると、入射角方向での遅相軸方位角θが45度になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θを、それぞれ、45.7度、45.8度、46.0度、および46.1度にすると、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる。
また、図21のグラフは、実施例1で挙げた図10のグラフに相当する。ただし、図21のグラフにおける縦軸の範囲は、図10のグラフにおける範囲の十分の一である。すなわち、曲線F21、曲線F22、曲線F23、曲線F24、および曲線F25で示される入射角方向の遅相軸方位角θの入射角依存性は、それぞれ、図10に示した曲線F1、曲線F2、曲線F3、曲線F4、および曲線F5で示される入射角依存性とくらべて非常に小さくなっている。
また、本願発明者らが、上記の結果および数式17に基づいて、入光面内での遅相軸方位角Θを45.6度、45.7度、45.8度、46.0度、および46.1度としたときの、法線方向のリタデーションRzと、入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性との関係を計算したところ、たとえば、図22に示すような結果が得られた。なお、図22は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向でのリタデーションR(単位はnm)のグラフである。
また、図22の曲線F26、曲線F27、曲線F28、曲線F29、および曲線F30は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの組み合わせ(Θ,Rz)を(45.6度,137.47nm)、(45.7度,137.46nm)、(45.8度,137.44nm)、(46.0度,137.42nm)、および(46.1度,137.41nm)にしたときの、入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性を示す曲線である。また、図22の曲線F26、曲線F27、曲線F28、曲線F29、および曲線F30は、可視波長の中でも視感度がほぼ最大となる波長550nmの光に対する入射角方向でのリタデーションRの入射角依存性を示している。
図22からわかるように、たとえば、四分の一波長板17のNz係数を0.50にし、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzを、それぞれ、45.6度および137.47nmにすると、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長(137.5nm)になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角Θと放線方向のリタデーションRzとの組み合わせ(Θ,Rz)を、それぞれ、(45.7度,137.46nm)、(45.8度,137.44nm)、(46.0度,137.42nm)、および(46.1度,137.41nm)にすると、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長(137.5nm)になる。
また、上記の角度以外の中間の入射角ψについて、Nz係数を0.50にし、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる、入光面内での遅相軸方位角Θを計算すると、たとえば、図23に示したような結果が得られる。なお、図23は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入光面内での遅相軸方位角Θ(単位は度)のグラフである。
図23からわかるように、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角Θとの関係を示す曲線F31は、ほぼ直線になる。このとき、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角Θとの関係は、下記数式19で近似される。
Θ=0.027ψ+44.215 ・・・(数式19)
したがって、光源光の主要成分に含まれるS偏光の、四分の一波長板17への入射角ψMが決まれば、図22または数式19から、当該S偏光に対する入射角方向の遅相軸方位角θを45度にするために四分の一波長板17に要求される、入光面内での遅相軸方位角Θが得られる。
またさらに、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzとの間には、たとえば、図24に示すような関係がある。なお、図24は、横軸が入光面内での遅相軸方位角Θ(単位は度)、縦軸が法線方向のリタデーションRz(単位はnm)のグラフである。
また、図24に示した点P6、点P7、点P8、点P9、および点P10は、それぞれ、図22における入射角ψが50度、55度、60度、65度、および70度のときの、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの関係を示す点である。また、図24に示した曲線F32は、点P6、点P7、点P8、点P9、および点P10の値から求めた回帰曲線である。
図24からわかるように、Nz係数を0.50にした場合、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzとの関係を示す曲線F32は、ほぼ直線になる。このとき、入光面内での遅相軸方位角Θと法線方向のリタデーションRzとの関係は、下記数式20で近似される。
Rz=−0.119Θ+142.87 ・・・(数式20)
実施例4のように、Nz係数を0.5にした場合、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMをある角度に設定すると、当該S偏光に対する入射角方向の遅相軸方位角θを45度にするために、四分の一波長板17に要求される入光面内での遅相軸方位角Θは、図22または数式19から求めることができる。またこのとき、入射角方向の遅相軸方位角θが45度になる入光面内での遅相軸方位角Θと、入射角方向のリタデーションRが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzとの間には、図24に示した曲線F32(数式20)のような関係がある。そのため、入射角ψMが決まり、図22または数式19から四分の一波長板17に要求される入光面内での遅相軸方位角Θが得られれば、図24または数式20から四分の一波長板17に要求される法線方向のリタデーションRzも得られる。
また、実施例4の四分の一波長板17は、図21および図23からわかるように、入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲における入光面内での遅相軸方位角Θの入射角依存性が、実施例1の四分の一波長板17に比べて非常に小さい。また、実施例4の四分の一波長板17は、図22および図24からわかるように、入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲における法線方向のリタデーションRzの入射角依存性も、実施例1の四分の一波長板17に比べて非常に小さい。これは、入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzの値を、ある入射角ψMに対して最適な値に設定すれば、その入射角ψMを含む広い角度範囲で、ほぼ完全なS偏光からP偏光への変換ができることを意味する。
すなわち、実施例4の液晶表示装置では、図5に示した側面2bの傾き角φ1および反射型偏光板14の傾き角φ2を、20度≦φ1+2φ2≦40度を満たすように設定し、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzの値を入射角ψM={90−(φ1+2φ2)}のとき最適値に設定すれば、入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲にあるS偏光を、ほぼ完全なP偏光に変換できる。たとえば、実施例4の液晶表示装置において、入射角ψMを60度(すなわちφ1+2φ2=30度)に設定する場合は、四分の一波長板17のNz係数、入光面内での遅相軸方位角Θ、および法線方向のリタデーションRzの値を、それぞれ0.5、45.8度、および137.4nmに設定すると、四分の一波長板17への入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲にあるS偏光を、ほぼ完全なP偏光に変換できる。
以上説明したように、実施例4の液晶表示装置によれば、導光板2に貼り付けた四分の一波長板17における入光面内での遅相軸方位角Θや法線方向のリタデーションRzが設計値からずれた場合でも、S偏光からP偏光への変換効率の低下による光源光の利用効率の低下を防ぐことができる。また、実施例4の液晶表示装置によれば、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψに分布が生じた場合や、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角が設計値(ψM)からずれた場合でも、S偏光からP偏光への変換効率の低下による光源光の利用効率の低下を防ぐことができる。したがって、実施例4の液晶表示装置は、実施例1の液晶表示装置よりも、光源光の利用効率を高めることができる。
また、四分の一波長板17のNz係数は、上記のように、当該四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψの範囲に基づいて、その範囲内における入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性が極力小さくなるようにすることが望ましい。しかしながら、図20からもわかるように、四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψの範囲によっては、たとえば、Nz係数が0.5以外でも、入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性が小さくなる。そのため、実施例4の液晶表示装置における四分の一波長板17のNz係数は、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψM={90−(φ1+2φ2)}の設定および四分の一波長板17に入射するS偏光の入射角ψの範囲に応じて適宜変更可能であることはもちろんである。
図25は、四分の一波長板に入射した光に対する遅相軸方位角と第1の偏光板における光の透過率との関係を示す模式図である。
なお、図25は、横軸が入射角方向での遅相軸方位角θ、縦軸が第1の偏光板12における光の透過率TPの相対値である。
四分の一波長板17を用いて光の振動方向を変換する場合、入射角方向での遅相軸方位角θが45度のときにS偏光の振動方向が90度回転してP偏光に変換される。すなわち、遅相軸方位角θが45度からずれると、S偏光の振動方向が90度回転せず、四分の一波長板17から出射する光にS偏光成分が残る。このとき、ある偏光の振動方向に対する遅相軸方位角をθ’とすると、四分の一波長板17を通過した光の振動方向は{90−2(45−θ’)}度になる。したがって、導光板2から出射して第1の偏光板12に入射する光には、このような振動方向を持つ成分が含まれる。
また、第1の偏光板12を完全偏光板とすると、その透過軸が四分の一波長板17を通過した光の振動方向と平行であれば、第1の偏光板12はこの光を完全に透過するが、前述のように、透過軸と光の振動方向とが角度βだけ傾いている場合、その透過率はcos2βにしたがい低減する。
そこで、実施例4の液晶表示装置において、四分の一波長板17に入射する光に対する遅相軸方位角θと、第1の偏光板12の透過率TPの相対値との関係を調べると、図25のような結果が得られる。なお、図25は、第1の偏光板12の透過軸を、遅相軸方位角θが45度になる光が第1の偏光板12を透過するときの透過率が最大になるようにした場合の関係である。
図25からわかるように、四分の一波長板17に入射する光に対する遅相軸方位角θが45度からずれると、第1の偏光板12の透過率TPは急速に減少する傾向にある。ただし、四分の一波長板17に入射する光に対する遅相軸方位角θが40度≦θ≦50度の範囲では、第1の偏光板12の透過率TPが飽和しており、かつ、95%以上という高い透過率を示す。
そのため、実施例4の液晶表示装置では、光源光の主要成分に含まれるS偏光の振動方向に対する四分の一波長板17の遅相軸方位角θが40度≦θ≦50度の範囲にあれば、第1の偏光板12を十分に高い透過率で透過し、光源光の利用効率を高めることができると言える。
さて、図20に示したグラフの中で、入射角ψが50度≦ψ≦70度の範囲の大部分において、入射角方向での遅相軸方位角θが40度≦θ≦50度の範囲になる曲線は、曲線F16,F17,F18,F19であり、これらの曲線に対応するNz係数の範囲は0.45以上0.60以下になる。したがって、実施例4の液晶表示装置では、四分の一波長板17のNz係数を0.45以上0.60以下のいずれかにすることで、光源光の利用効率を高めることができる。
また、実施例4では、四分の一波長板17のNz係数を0.5にしたが、図20を参照すると、Nz係数を0.50にした場合よりも、入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性がさらに緩やかになり、かつ、理想的な値(45度)との差がさらに小さい、より望ましいNz係数の値があることが予想される。そのため、たとえば、Nz係数が0.50から0.55までの範囲について入射角方向での遅相軸方位角θの入射角依存性を細かく調べ、より理想的なNz係数の値を求めることで、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角Θおよび法線方向のリタデーションRzの入射角依存性を小さくでき、光源光の利用効率をさらに高めることができると考えられる。
本発明の液晶表示装置では、前述のように、光源3として白色LEDなどの白色発光素子を用いる。そのため、光源光は、可視波長域全域にわたる波長分布を有する。
S偏光を円偏光に変換したり、円偏光をP偏光に変換したりするのに必要な四分の一波長板17のリタデーションは、S偏光の波長の四分の一波長であり、かつ、S偏光の波長に比例して増大する。しかしながら、四分の一波長板17のような光学異方性媒体のリタデーションは、一般に、波長とともに減少する性質を有する。そのため、S偏光からP偏光への変換を、実施例1および実施例4で説明した構成の四分の一波長板17のみで行おうとすると、S偏光を完全にP偏光に変換できる波長域が非常に狭く、光源光の利用効率を高めることが難しい。
そこで、実施例5では、光源光の全波長域にわたり、S偏光からP偏光への変換効率を高める方法の一例について説明する。具体的には、S偏光をP偏光に変換する四分の一波長板として、以下で説明するような広帯域四分の一波長板を用いる。
図26は、本発明による実施例5の液晶表示装置における導光板の結合部周辺の概略構成の一例を示す模式側断面図である。
実施例5の液晶表示装置では、導光板2に入射した光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換するための光学部品として、たとえば、図26に示すように、二分の一波長板39と四分の一波長板17から構成される広帯域四分の一波長板40を用いる。このとき、広帯域四分の一波長板40は、導光板2の第2の主面2cに近接する側より二分の一波長板39、四分の一波長板17の順で積層されるように配置する。
また、実施例5の液晶表示装置において、実施例1の液晶表示装置と異なる点は、導光板2の第2の主面2cと第2の反射板18との間に広帯域四分の一波長板40を配置した点のみである。そのため、実施例5の液晶表示装置における他の構成に関する説明は、省略する。
実施例5の液晶表示装置における二分の一波長板39および四分の一波長板17の遅相軸の設定方法は、広帯域四分の一波長板40の動作原理から求めることができる。そこで、まず、広帯域四分の一波長板40の動作原理を、ストークスパラメータ(S1,S2,S3)およびポアンカレ球表示を用いて以下に説明する。
なお、ストークスパラメータおよびポアンカレ球表示については、たとえば非特許文献3や非特許文献4に詳細に解説されている。そのため、以下の説明では、これらに関する説明は最小限にとどめる。
図27乃至図32は、広帯域四分の一波長板の動作原理を説明するための模式図である。
図27は、ストークスパラメータ、ポアンカレ球、および偏光状態の関係を示す模式図である。図28は、ポアンカレ球表示による波長が550nmの直線偏光の偏光状態の変化の一例を示す模式図である。図29は、ポアンカレ球表示による波長が550nmよりも長い直線偏光の偏光状態の変化の一例を示す模式図である。図30は、ポアンカレ球表示による波長が550nmよりも短い直線偏光の偏光状態の変化の一例を示す模式図である。図31は、ポアンカレ球表示による波長が550nmの直線偏光の偏光状態の変化の一例を平面で示した模式図である。図32は、ポアンカレ球表示による波長が550nmの直線偏光の偏光状態の変化の別の例を平面で示した模式図である。
図27に示すように、ストークスパラメータ(S1,S2,S3)を軸とする三次元直交座標系を考えると、ポアンカレ球41は、三次元直交座標系の原点Oを中心とする球で表される。以下の説明では、ポアンカレ球41を地球に見立て、S3軸とポアンカレ球41との交点を北極および南極と呼び、S1軸およびS2軸を含む平面とポアンカレ球41との交線を赤道と呼ぶことにする。
ポアンカレ球41の表面上の各点は、光の偏光状態と対応しており、北極および南極が円偏光を表し、赤道上の各点が直線偏光を表している。また、ポアンカレ球41の表面上のその他の点は、楕円偏光を表している。
また、S1、S2、およびS3は、それぞれ、偏光状態のストークスパラメータであり、それぞれ、強度を表すストークスパラメータS0で規格化された値である。
ポアンカレ球表示において、四分の一波長板17で行われる直線偏光を円偏光に変換するという動作は、ポアンカレ球41の赤道上の点を、北極または南極に移動させることに相当する。すなわち、ポアンカレ球表示における広帯域四分の一波長板40の動作は、赤道上にある可視波長域の各波長の直線偏光(S偏光)の偏光状態を表す点を、北極または南極の近傍に、より集中するように移動させることに相当する。
広帯域四分の一波長板40は、通常、視感度が最大になる波長550nmの光を基準にして設計される。このとき、波長550nmの光を基準にして設計された広帯域四分の一波長板40を波長550nmの直線偏光が通過する過程における偏光状態の変化は、ポアンカレ球表示を用いると、たとえば、図28に示すような変化で表される。
広帯域四分の一波長板40(二分の一波長板39)に入射する光の偏光状態を表す点PSが、S1軸と赤道との交点であるとすると、その点PSは、二分の一波長板39を通過する過程において、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の回りで二分の一回転し、S2軸と赤道との交点に移動する。また、二分の一波長板39から出射して四分の一波長板17に入射する光の偏光状態を表す点PSが、S2軸と赤道との交点にあるとすると、その点PSは、四分の一波長板17を通過する過程において、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸(S1軸)のまわりを四分の一回転し、北極に移動する。このように、波長500nmの光に基づいて設計された広帯域四分の一波長板40に、波長550nmの直線偏光が入射した場合、当該直線偏光は、完全な円偏光に変換されて当該四分の一波長板40から出射する。
なお、ポアンカレ球表示における二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の方位角θHW’と実際の二分の一波長板39における入射角方向での遅相軸方位角θHWとの関係、およびポアンカレ球表示における四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸43の方位角θQW’と実際の四分の一波長板17における入射角方向での遅相軸方位角θQWとの関係については、後述する。
また、波長550nmの光を基準にして設計された広帯域四分の一波長板40に、波長が550nmよりも長い直線偏光が入射した場合、当該直線偏光が広帯域四分の一波長板40を通過する過程における偏光状態の変化は、ポアンカレ球表示を用いると、たとえば、図29に示すような変化で表される。
二分の一波長板39および四分の一波長板17のリタデーションは、可視波長域において波長と共に単調減少する。そのため、広帯域四分の一波長板40(二分の一波長板39)に入射する光の波長が550nmよりも長い場合、その偏光状態を表す点PSが、S1軸と赤道との交点にあるとすると、その点PSは、二分の一波長板39を通過する過程における、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の回りでの回転が二分の一回転以下になり、北半球(赤道より北極側)の別の位置に移動する。また、二分の一波長板39から出射して四分の一波長板17に入射する光の偏光状態を表す点PSが、北半球にあるとすると、その点PSは、四分の一波長板17を通過する過程における、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸(S1軸)の回りでの回転が四分の一回転以下になり、北極の近傍に移動する。このように、波長550nmの光に基づいて設計された広帯域四分の一波長板40に、波長が550nmよりも長い直線偏光が入射した場合、当該直線偏光は、円偏光に近い楕円偏光に変換され、広帯域四分の一波長板40から出射する。
また、波長550nmの光を基準にして設計された広帯域四分の一波長板40に、波長が550nmよりも短い直線偏光が入射した場合、当該直線偏光が広帯域四分の一波長板40を通過する過程における偏光状態の変化は、ポアンカレ球表示を用いると、たとえば、図30に示すような変化で表される。
二分の一波長板39および四分の一波長板17のリタデーションは、可視波長域において波長と共に単調減少する。そのため、広帯域四分の一波長板40(二分の一波長板39)に入射する光の波長が550nmよりも短い場合、その偏光状態を表す点PSが、S1軸と赤道との交点にあるとすると、その点PSは、二分の一波長板39を通過する過程における、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の回りでの回転が二分の一回転以上になり、南半球(赤道より南極側)の別の位置に移動する。また、二分の一波長板39から出射して四分の一波長板17に入射する光の偏光状態を表す点PSが、南半球にあるとすると、その点PSは、四分の一波長板17を通過する過程における、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸(S1軸)の回りでの回転が四分の一回転以上になり、北極の近傍に移動する。このように、波長550nmの光に基づいて設計された広帯域四分の一波長板40に、波長が550nmよりも短い直線偏光が入射した場合も、当該直線偏光は、円偏光に近い楕円偏光に変換され、広帯域四分の一波長板40から出射する。
このように、広帯域四分の一波長板40は、リタデーションの波長依存性が同じ傾向である二分の一波長板39と四分の一波長板17を、ポアンカレ球41の表面上における偏光の回転方向が概略逆方向になるような角度関係で積層することにより、両者のリタデーションの波長依存性を相殺し、直線偏光が円偏光に変換される波長域を広帯域化している。
また、詳細な説明は省略するが、広帯域四分の一波長板40で円偏光または円偏光に近い楕円偏光に変換された光が第2の反射板18で反射し、再び広帯域四分の一波長板40を通過するときには、それぞれ、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸(S1軸)の回りでの回転および二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の回りでの回転により、最初に広帯域四分の一波長板40に入射したときの振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光に変換される。
さて、上記のような動作をさせる広帯域四分の一波長板40における二分の一波長板39および四分の一波長板17の法線方向の遅相軸方位角の設定方法については、図28より導かれるが、より明確にするため、これをS1-S2平面に投影した図31を用いて説明する。このとき、ポアンカレ球41は円で表され、その中心が北極または南極になり、円周が赤道になる。また、図31において、偏光状態の変換はポアンカレ球41の北半球を反時計回りに動いて北極に到達する動きとして表される。このとき、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の方位角θHW’を、S1軸を0度とする反時計回りの角度で定義すると、その値は150度になる。またこのとき、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸43の方位角θQW’を、S1軸を0度とする反時計回りの角度で定義すると、その値は0度になる。
また、広帯域四分の一波長板40の動作としては、この他にも、たとえば、図32に示したように、ポアンカレ球41の北半球を時計回りに動いて北極に到達する動き(図32の(a)の動き)、ポアンカレ球の南半球を反時計回りに動いて南極に到達する動き(図32の(b)の動き)、およびポアンカレ球の南半球を時計回りに動いて南極に到達する動き(図32の(c)の動き)がある。
広帯域四分の一波長板40の動作が、図32の(a)に示したような動きの場合、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の方位角θHW’は315度になり、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸43の方位角θQW’は90度になる。また、広帯域四分の一波長板40の動作が、図32の(b)に示したような動きの場合、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の方位角θHW’は45度になり、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸43の方位角θQW’は90度になる。また、広帯域四分の一波長板40の動作が、図32の(c)に示したような動きの場合、二分の一波長板39の遅相軸に相当する軸42の方位角θHW’は135度になり、四分の一波長板17の遅相軸に相当する軸43の方位角θQW’は0度になる。
これらのことから、二分の一波長板39および四分の一波長板17の入射角方向における遅相軸方位角をそれぞれθHW度およびθQW度とし、実施例1で説明したように導光板2の短手方向(x方向)を0度とする反時計回りの角度で定義すると、二分の一波長板39の遅相軸方位角θHW度と四分の一波長板17の遅相軸方位角θQW度との関係は、図31、および図32の(a)乃至(c)から、下記数式21で表される。
2θHW=±45+θQW ・・・(数式21)
なお、図31、および図32の(a)乃至(c)における方位角θHW'および方位角θQW'は、それぞれ、遅相軸方位角θHWおよび遅相軸方位角θQWと、θHW'=2θHW、θQW'=2θQWの関係にある。方位角がこのような関係になるのは、ポアンカレ球表示が実空間の半分の方位角範囲を含むことによる。すなわち、ポアンカレ球表示は、偏光状態とその変換の表記を目的としているが、偏光状態(電気ベクトルの振動状態)および遅相軸には頭尾の区別がないので、実空間の半分の方位角範囲があれば偏光状態とその変換を表すことができる。そのため、ポアンカレ球表示における方位角は、上記のように、実空間における方位角の2倍になる。
数式21を満たす、二分の一波長板39の入射角方向での遅相軸方位角θHWと四分の一波長板17の入射角方向での遅相軸方位角θQWとの組合せは、多数存在するが、各波長の光の北極への集中度は、その組合せによって異なる。同じ材質の二分の一波長板39と四分の一波長板17を用いる場合には、二分の一波長板39の入射角方向での遅相軸方位角θHWを15度とし、数式21の複号(±)よりマイナスを選択して四分の一波長板17の入射角方向での遅相軸方位角θQWを75度とした場合に、最も集中度が良好になり、可視波長の全域において円偏光に近い偏光状態が実現される。二分の一波長板39と四分の一波長板17が同じ材質の場合、リタデーションの波長分散も同じなので、二分の一波長板39と四分の一波長板17による偏光変換で、ポアンカレ球41の表面上に描かれる軌跡がほぼ同じ長さになるようにすることで、両者の波長分散が相殺される。すなわち、二分の一波長板39と四分の一波長板17が同じ材質の場合、入射各方向での遅相軸方位角の組合せ(θHW,θQW)を上記の値(15度,75度)にすると、両者の軌跡がほぼ同じ長さになり、可視波長の全域において円偏光に近い偏光状態が実現される。
ところで、実施例5の液晶表示装置では、上記の広帯域四分の一波長板40の機能を、二分の一波長板39に入射するときの入射角ψが、たとえば、50度≦ψ≦70度の範囲にあるS偏光に対して実現しなければならない。すなわち、実施例5の液晶表示装置のように広帯域四分の一波長板40を用いて光源光のS偏光をP偏光に変換する場合は、当該広帯域四分の一波長板40に入射するS偏光の入射角ψの分布に基づいて、二分の一波長板39および四分の一波長板17のそれぞれについて、入射角方向での遅相軸方位角θHW,θQWの入射角依存性が穏やかになるNz係数を選択するとともに、そのNz係数において最適な入光面内での遅相軸方位角ΘHW,ΘQWおよび法線方向のリタデーションRzHW,RzQWを決定する必要がある。
図33乃至図42は、実施例5の液晶表示装置における二分の一波長板および四分の一波長板の入光面内での遅相軸方位角と法線方向のリタデーションの設定方法の一例を説明するための模式図である。
図33は、二分の一波長板のNz係数と、入射角方向の遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図34は、四分の一波長板のNz係数と、入射角方向の遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図35は、二分の一波長板のNz係数を0.25にしたときの入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向の遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図36は、二分の一波長板の法線方向のリタデーションと、入射角方向のリタデーションの入射角依存性との関係を示す模式図である。図37は、二分の一波長板の入射角方向の遅相軸方位角が15度になる、入射角と入光面内での遅相軸方位角との関係を示す模式図である。図38は、二分の一波長板の入射角方向での遅相軸方位角が15度になる入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向のリタデーションが二分の一波長になる法線方向のリタデーションとの関係を示す模式図である。図39は、四分の一波長板のNz係数を0.80にしたときの入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向の遅相軸方位角の入射角依存性との関係を示す模式図である。図40は、四分の一波長板の法線方向のリタデーションと、入射角方向のリタデーションの入射角依存性との関係を示す模式図である。図41は、四分の一波長板の入射角方向の遅相軸方位角が75度になる、入射角と入光面内での遅相軸方位角との関係を示す模式図である。図42は、四分の一波長板の入射角方向での遅相軸方位角が75度になる入光面内での遅相軸方位角と、入射角方向のリタデーションが四分の一波長になる法線方向のリタデーションとの関係を示す模式図である。
まずはじめに、二分の一波長板39のNz係数を最適化する方法について説明する。二分の一波長板39に入射する光源光(S偏光)の入射角ψは、前述のように、50度≦ψ≦70度の範囲になると考えられる。また、二分の一波長板39の入射角方向の遅相軸方位角θHWは、前述のように15度が理想である。そのため、本願発明者らが、45度≦ψ≦75度の範囲において、Nz係数を0.05ずつ変えながら、Nz係数と、入射角方向の遅相軸方位角θHWの入射角依存性との関係を調べたところ、図33に示すような結果が得られた。なお、図33は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が二分の一波長板39の入射角方向の遅相軸方位角θHW(単位は度)のグラフである。
また、図33の曲線F33、曲線F34、曲線F35、曲線F36、曲線F37、曲線F38、および曲線F39は、それぞれ、Nz係数を0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、および0.40にしたときの、二分の一波長板39の入射角方向の遅相軸方位角θHWの入射角依存性を示す曲線である。
図33からわかるように、二分の一波長板39の入射角方向の遅相軸方位角θHWの入射角依存性はNz係数によって変化し、Nz係数が0.20、0.25、0.30のときに、S偏光の入射角ψの範囲内(50度≦ψ≦70度)に極大点を示し、かつ、その範囲における遅相軸方位角θHWの変化が緩やかになる。特に、Nz係数を0.25にすると、50度≦ψ≦70度の範囲内のほぼ中央に極大点が位置し、かつ、その範囲内における遅相軸方位角θHWの変動量が最も小さくなる。そのため、実施例5では、二分の一波長板のNz係数を0.25とする。
次に、四分の一波長板17のNz係数を最適化する方法について説明する。四分の一波長板17に入射する光は二分の一波長板39で変換された直線偏光であるが、このときも、入射角ψは、50度≦ψ≦70度の範囲になると考えられる。また、四分の一波長板17の遅相軸方位角θQWは、前述のように75度が理想である。そのため、本願発明者らが、45度≦ψ≦75度の範囲において、Nz係数を0.05ずつ変えながら、Nz係数と、入射角方向の遅相軸方位角θQWの入射角依存性との関係を調べたところ、図34に示すような結果が得られた。なお、図34は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が四分の一波長板17の入射角方向の遅相軸方位角θQW(単位は度)のグラフである。
また、図34の曲線F40、曲線F41、曲線F42、曲線F43、曲線F44、曲線F45、曲線F46、および曲線F47は、それぞれ、Nz係数を0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、および0.90にしたときの、四分の一波長板17の入射角方向の遅相軸方位角θQWの入射角依存性を示す曲線である。
図34からわかるように、四分の一波長板17の入射角方向の遅相軸方位角θQWの入射角依存性はNz係数によって変化し、Nz係数が0.75、0.80、0.85のときに、直線偏光の入射角ψの範囲内(50度≦ψ≦70度)に極小点を示し、かつ、その範囲における遅相軸方位角θQWの変化が緩やかになる。特に、Nz係数を0.80にすると、50度≦ψ≦70度の範囲内のほぼ中央に極大点が位置し、かつ、その範囲内における遅相軸方位角θQWの変動量が最も小さくなる。そのため、実施例5では、四分の一波長板17のNz係数を0.80とする。
次に、二分の一波長板39の入光面内での遅相軸方位角ΘHWおよび法線方向のリタデーションRzHWを最適化する方法について説明する。
二分の一波長板39のNz係数を0.25にした場合、入光面内での遅相軸方位角ΘHWと、入射角方向の遅相軸方位角θHWの入射角依存性との関係は、たとえば、図35に示すような関係になる。なお、図35は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向の遅相軸方位角θHW(単位は度)のグラフである。
また、図35の曲線F48、曲線F49、曲線F50、曲線F51、および曲線F52は、それぞれ、二分の一波長板39の入光面内での遅相軸方位角ΘHWを13.3度、13.2度、13.3度、13.6度、および14.4度にしたときの、入射角方向の遅相軸方位角θHWの入射角依存性を示す曲線である。
図35からわかるように、たとえば、二分の一波長板39のNz係数を0.25にし、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘHWを13.3度にすると、二分の一波長板39の入射角方向での遅相軸方位角θHWが15度になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘHWを、それぞれ、13.2度、13.3度、13.6度、および14.4度にすると、二分の一波長板39の入射角方向での遅相軸方位角θHWが15度になる。
なお、図35の曲線F48と曲線F50は、実際には、ともに、極角が55度の付近に極大点を有する曲線であり、入射角ψが45度から75度の範囲ではその分布が概ね一致する。しかしながら、曲線F48および曲線F50は、ともに入光面内での遅相軸方位角ΘHWを13.3度にして求めた曲線であるものの、その求め方および意味するところが異なる。そのため、図35では、入光面内での遅相軸方位角ΘHWを13.3度にしたときの曲線を曲線F48と曲線F50とに分け、かつ、意味がある部分のみを示している。
また、本願発明者らが、上記の結果に基づいて、二分の一波長板39の入光内での遅相軸方位角ΘHWを13.3度、13.2度、13.3度、13.6度、および14.4度にしたときの、法線方向のリタデーションRzHWと、入射角方向のリタデーションRHWの入射角依存性との関係を計算したところ、たとえば、図36に示すような結果が得られた。なお、図36は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向でのリタデーションRHW(単位はnm)のグラフである。
また、図36の曲線F53、曲線F54、曲線F55、曲線F56、および曲線F57は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角ΘHWと法線方向のリタデーションRzHWとの組み合わせ(ΘHW,RzHW)を(13.3度,320.8nm)、(13.2度,324.6nm)、(13.3度,324.5nm)、(13.6度,318.2nm)、および(14.4度,302.9nm)にしたときの、入射角方向でのリタデーションRHWの入射角依存性を示す曲線である。また、図36の曲線F53、曲線F54、曲線F55、曲線F56、および曲線F57は、可視波長の中でも視感度がほぼ最大となる波長550nmの光に対する入射角方向でのリタデーションRHWの入射角依存性を示している。
図36からわかるように、たとえば、二分の一波長板39のNz係数を0.25にし、光源光の主要成分に含まれるS偏光入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘHWおよび法線方向のリタデーションRzHWを、それぞれ、13.3度および320.8nmにすると、入射角方向のリタデーションRHWが二分の一波長(275nm)になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘHWと法線方向のリタデーションRzHWとの組み合わせ(ΘHW,RzHW)を、それぞれ、(13.2度,324.6nm)、(13.3度,324.5nm)、(13.6度,318.2nm)、および(14.4度,302.9nm)にすると、入射角方向のリタデーションRHWが二分の一波長(275nm)になる。
なお、図36の曲線F54と曲線F55は、実際には、ともに、入射角ψが55度から60度の間に極大点を有する曲線であり、入射角ψが45度から75度の範囲ではその分布が概ね一致する。しかしながら、曲線F54および曲線F55は、求める際に使用した数値および意味するところが異なる。そのため、図36では、曲線F54と曲線F55については、それぞれ、意味がある部分のみを示している。
また、上記の角度以外の中間の入射角ψにおいて、入射角方向の遅相軸方位角θHWが15度になる、入光面内での遅相軸方位角ΘHWを計算すると、たとえば、図37に示したような結果が得られる。なお、図37は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入光面内での遅相軸方位角ΘHW(単位は度)のグラフである。
図37からわかるように、入射角方向の遅相軸方位角θHWが15度になる、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角ΘHWとの関係は、折れ線F58のような関係になる。そのため、たとえば、光源光の主要成分、すなわち光源の光出射面の法線方向に出射した光に含まれるS偏光が二分の一波長板39に入射するときの入射角ψMを、上記の50度、55度、60度、65度、および70度以外の角度にする場合は、たとえば、図37に示した折れ線F58の関係から、二分の一波長板39の入光面内での遅相軸方位角ΘHWを決めればよい。
またさらに、入射角方向での遅相軸方位角θHWが15度になる入光面内での遅相軸方位角ΘHWと、入射角方向のリタデーションRHWが二分の一波長になる法線方向のリタデーションRzHWとの間には、たとえば、図38に示すような関係がある。なお、図38は、横軸が入光面内での遅相軸方位角ΘHW(単位は度)、縦軸が法線方向のリタデーションRzHW(単位はnm)のグラフである。
また、図38に示した点P11、点P12、点P13、点P14、および点P15は、それぞれ、入射角ψが50度、55度、60度、65度、および70度のときの入光面内での遅相軸方位角ΘHWと、法線方向のリタデーションRzHWとの関係を示す点である。
実施例5では、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMをある角度に設定した場合、当該S偏光に対する入射角方向の遅相軸方位角θHWを15度にするために、二分の一波長板39に要求される入光面内での遅相軸方位角ΘHWは、図37の折れ線F58から求めることができる。そして、入射角方向の遅相軸方位角θHWが15度になる入光面内での遅相軸方位角ΘHWと、入射角方向のリタデーションRHWが二分の一波長になる法線方向のリタデーションRzHWとの間には、図38に示したような関係がある。そのため、入射角ψMが決まれば、二分の一波長板39に要求される法線方向のリタデーションRzHWも得られる。
最後に、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角ΘQWおよび法線方向のリタデーションRzQWを最適化する方法について説明する。
四分の一波長板17のNz係数を0.80にした場合、入光面内での遅相軸方位角ΘQWと、入射角方向の遅相軸方位角θQWの入射角依存性との関係は、たとえば、図39に示すような関係になる。なお、図39は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向での遅相軸方位角θQW(単位は度)のグラフである。
また、図39の曲線F59、曲線F60、曲線F61、曲線F62、および曲線F63は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角ΘQWを77.2度、77.3度、77.5度、77.4度、および76.8度にしたときの、入射角方向の遅相軸方位角θQWの入射角依存性を示す曲線である。
二分の一波長板39を通過して四分の一波長板17に入射する直線偏光の入射角は、二分の一波長板39に入射するS偏光の入射角ψと概ね等しい。そのため、図39からわかるように、たとえば、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘQWを77.2度にすると、入射角方向での遅相軸方位角θQWが75度になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘQWを、それぞれ、77.3度、77.5度、77.4度、および76.8度にすると、入射角方向での遅相軸方位角θQWが75度になる。
また、本願発明者らが、上記の結果に基づいて、入光面内での遅相軸方位角ΘQWを77.2度、77.2度、77.5度、77.4度、および76.8度にしたときの、法線方向のリタデーションRzQWと、入射角方向のリタデーションRQWの入射角依存性との関係を計算したところ、たとえば、図40に示したような結果が得られた。なお、図40は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入射角方向のリタデーションRQW(単位はnm)のグラフである。
また、図40の曲線F64、曲線F65、曲線F66、曲線F67、および曲線F68は、それぞれ、入光面内での遅相軸方位角ΘQWと法線方向のリタデーションRzQWとの組み合わせ(ΘQW,RzQW)を(77.2度,153.2nm)、(77.3度,154.7nm)、(77.5度,154.7nm)、(77.4度,152.1nm)、および(76.8度,145.5nm)にしたときの、入射角方向でのリタデーションRQWの入射角依存性を示す曲線である。また、図40の曲線F53、曲線F54、曲線F55、曲線F56、および曲線F57は、可視波長の中でも視感度がほぼ最大となる波長550nmの光に対する入射角方向でのリタデーションRQWの入射角依存性を示している。
図40からわかるように、たとえば、四分の一波長板17のNz係数を0.80にし、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを50度に設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘQWおよび法線方向のリタデーションRzQWを、それぞれ、77.2度および153.2nmにすると、入射角方向のリタデーションRQWが四分の一波長(137.5nm)になる。また、主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMを55度、60度、65度、および70度のいずれかに設定する場合は、入光面内での遅相軸方位角ΘQWと法線方向のリタデーションRzQWとの組み合わせ(ΘQW,RzQW)を、それぞれ、(77.3度,154.7nm)、(77.5度,154.7nm)、(77.4度,152.1nm)、および(76.8度,145.5nm)にすると、入射角方向のリタデーションRQWが四分の一波長(137.5nm)になる。
なお、図40の曲線F65と曲線F66は、実際には、ともに、入射角ψが55度から60度の間に極小点を有する曲線であり、入射角ψが45度から75度の範囲ではその分布が概ね一致する。しかしながら、曲線F65および曲線F66は、求める際に使用した数値および意味するところが異なる。そのため、図40では、曲線F65と曲線F66については、それぞれ、意味がある部分のみを示している。
また、上記の角度以外の中間の入射角ψにおいて、入射角方向の遅相軸方位角θQWが75度になる、入光面内での遅相軸方位角ΘQWを計算すると、たとえば、図41に示したような結果が得られる。なお、図41は、横軸が入射角ψ(単位は度)、縦軸が入光面内での遅相軸方位角ΘQW(単位は度)のグラフである。
図41からわかるように、入射角方向の遅相軸方位角θQWが75度になる、入射角ψと入光面内での遅相軸方位角ΘQWとの関係は、折れ線F69のような関係になる。そのため、たとえば、光源光の主要成分、すなわち光源3の出光面3aの法線方向に出射した光に含まれるS偏光の入射角ψMを、上記の50度、55度、60度、65度、70度以外の角度に設定する場合は、たとえば、図41に示した折れ線F69の関係から、四分の一波長板17の入光面内での遅相軸方位角ΘQWを決めればよい。
またさらに、入射角方向での遅相軸方位角θQWが75度になる入光面内での遅相軸方位角ΘQWと、入射角方向のリタデーションRQWが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzQWとの関係は、たとえば、図42に示すような関係になる。なお、図42は、横軸が入光面内での遅相軸方位角ΘQW、縦軸が法線方向のリタデーションRzQWのグラフである。
また、図42に示した点P16、点P17、点P18、点P19、および点P20は、それぞれ、入射角ψが50度、55度、60度、65度、および70度のときの入光面内での遅相軸方位角ΘQWと、法線方向のリタデーションRzQWとの関係を示す点である。
実施例5では、光源光の主要成分に含まれるS偏光の入射角ψMをある角度に設定した場合、当該S偏光に対する入射角方向の遅相軸方位角θQWを75度にするために、四分の一波長板17に要求される入光面内での遅相軸方位角ΘQWは、図41の折れ線F69から求めることができる。そして、入射角方向の遅相軸方位角θQWが75度になる入光面内での遅相軸方位角ΘQWと、入射角方向のリタデーションRQWが四分の一波長になる法線方向のリタデーションRzQWとの間には、図42に示したような関係がある。そのため、入射角ψMが決まれば、四分の一波長板17に要求される法線方向のリタデーションRzQWも得られる。
以上の手順で二分の一波長板39および四分の一波長板17のNz係数、入光面内での遅相軸方位角ΘHW,ΘQW、および法線方向のリタデーションRzHW,RzQWを決めることで、当該二分の一波長板および四分の一波長板を有する広帯域四分の一波長板40は、反射型偏光板14で反射して入射角ψで入射する可視波長領域のS偏光に対し、四分の一波長板として機能する。
以上説明したように、実施例5の液晶表示装置では、広帯域四分の一波長板40を用いて、光源光に含まれるS偏光をP偏光に変換するので、可視波長領域の全波長域におけるS偏光からP偏光への変換効率を向上させることができる。そのため、実施例1乃至実施例4の液晶表示装置に比べ、光源光の利用効率がさらに高まる。
図43は、本発明による実施例6の液晶表示装置の主要部の第1の構成例を示す模式平面図である。
実施例1で挙げた液晶表示装置の構成は、たとえば、携帯電話端末などの液晶ディスプレイとして用いられる小型の液晶表示装置の構成の一例であり、液晶表示パネル1の平面形状は、映像信号線25の延びる方向(y方向)が長手方向になる概略長方形である。またこのとき、液晶表示パネル1は、導光板2から出射した光が最初に入射する第1の偏光板12の透過軸12Tが、当該液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行になっている。そのため、実施例1の液晶表示装置では、液晶表示パネル1の短手方向と一致する導光板2の短手方向の辺(側面2b)に沿って複数の光源3を配置している。
しかしながら、本発明の液晶表示装置で用いる導光板方式のバックライトは、たとえば、ノートブック型コンピュータやカーナビゲーションシステムの表示部に用いられるような液晶表示装置にも適用できる。
これらの液晶表示装置の液晶表示パネル1の平面形状は、実施例1の液晶表示パネルと同様に走査信号線22の延びる方向をx方向、映像信号線25の延びる方向をy方向とすると、通常、図43に示すように、x方向(走査信号線の延びる方向)を長手方向とする概略長方形になる。またこのとき、液晶表示パネル1の画素の構成が、たとえば、図5乃至図7に示したような構成であるとすると、第1の偏光板12の透過軸12Tは液晶表示パネル1の短手方向と概ね平行になり、第2の偏光板13の透過軸13Tは液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行になる。
また、このような液晶表示パネル1と組み合わせる導光板2の平面形状は、図43に示したように、走査信号線22の延びる方向(x方向)が長手方向の概略長方形になる。このとき、光源光の利用効率を高めるには、導光板2から液晶表示パネル1に向けて出射する光の振動方向が、液晶表示パネル1の短手方向(y方向)と平行になるようにすることが望ましい。
したがって、第1の偏光板12の透過軸12Tが液晶表示パネル1の短手方向と概ね平行な場合は、複数の光源3を導光板2の長手方向の辺に沿って配置し、導光板2の結合部、すなわち当該光源3が配置された辺と面発光部(領域AR2)との間に、反射型偏光板14、透明スペーサ15、第1の反射板16、四分の一波長板17、第2の反射板18などを配置する。このようにすると、導光板2に取り込まれた光源光に含まれるP偏光の振動方向が導光板2の短手方向と概ね平行になるので、導光板2から液晶表示パネル1に向けて出射する光の振動方向が第1の偏光板12の透過軸12Tと概ね平行になり、光源光の利用効率を高めることができる。
図44は、図43に示した液晶表示装置の応用例を示す模式平面図である。
実施例6の液晶表示装置の一例として、図43に示した構成では、導光板2の長手方向(y方向)の二辺のうちの一方の辺のみに光源3を配置している。この場合、液晶表示パネル1の表示領域AR1の寸法が大きくなり、導光板2の面発光部(領域AR2)の面積が広くなると、たとえば、光源3が配置されている辺とは反対側の辺の近傍における光量が低下するおそれがある。
そのため、液晶表示パネル1の表示領域AR1(導光板2の面発光部)の面積が広い場合は、たとえば、図44に示すように、導光板2の長手方向の二辺の両方に光源3を配置してもよい。このとき、一方の辺に配置する複数の光源3と、他方の辺に配置する複数の光源3は、たとえば、数や配置間隔を等しくすることが望ましい。
図45は、実施例6の液晶表示装置の主要部の第2の構成例を示す模式平面図である。
従来の液晶表示装置は、通常、走査信号線22の延びる方向が水平方向になるような向きで使用することが多い。すなわち、図1、図43、および図44に示した液晶表示装置は、走査信号線の延びるx方向が水平方向になるような向きで使用することが多い。このとき、第1の偏光板12と第2の偏光板13とを、互いの透過軸12T,13Tが直交するように配置していると、第2の偏光板13の透過軸13Tは水平方向と概ね平行になる。またこのとき、液晶表示パネル1で変調されて観察者に届く光の振動方向は、水平方向と概ね平行である。
さて、本発明に関わる導光板方式のバックライトを有する液晶表示装置を上記のような携帯型情報機器の液晶ディスプレイとして用いた場合、当該携帯型情報機器は、屋外で使用されることも多い。
屋外において人間の目に入る外部光源(太陽や照明装置など)からの光には、外部光源から直接照射される光の他に、たとえば、道路や水面などからの反射光がある。この反射光は、たとえば、自動車の運転や釣りの際の妨げになるが、いずれも水平な面からの反射光であり、振動方向が水平面内にある直線偏光である。そのため、これらの直線偏光を除くために、近年、吸収軸を水平方向に有する偏光板を備えた偏光サングラスが普及している。
しかしながら、偏光サングラスをかけた観察者が、第2の偏光板13の透過軸13Tが水平方向と概ね平行な状態で液晶表示装置を使用すると、当該液晶表示装置(液晶表示パネル1)から出射した光が偏光サングラスで吸収されてしまい、映像や画像を観察できない。
したがって、屋外での使用が想定される液晶表示装置に本発明を適用する場合、その液晶表示装置は、たとえば、偏光サングラスをかけた観察者も観察可能な構成にすることが望まれる。すなわち、屋外での使用が想定される液晶表示装置に本発明を適用する場合は、観察者(使用者)側に面する第2の偏光板13の透過軸13Tが、水平方向から充分に傾くようにすることが望ましく、水平方向に対して垂直であれば理想的である。
走査信号線22の延びる方向(x方向)が水平方向になるような状態で使用することを想定している液晶表示装置の場合、偏光サングラスをかけた観察者も観察可能にするには、たとえば、図45に示すように、第2の偏光板13の透過軸13Tを映像信号線25の延びる方向(y方向)と平行にすればよい。なお、図45の液晶表示パネル1は、図43および図44の液晶表示パネル1と同様に、x方向が走査信号線22の延びる方向であり、y方向が映像信号線25の延びる方向である。
このとき、第1の偏光板12と第2の偏光板13とを、互いの透過軸12T,13Tが直交するように配置するのであれば、第1の偏光板12の透過軸12Tは走査信号線22の延びる方向(x方向)と平行になる。したがって、液晶表示パネル1の平面形状が図45に示したように走査信号線の延びる方向を長手方向とする概略長方形の場合、導光板2からの光が最初に入射する第1の偏光板12の透過軸12Tは、液晶表示パネル1の長手方向と平行になる。
また、このような液晶表示パネル1と組み合わせる導光板2の平面形状は、図45に示したように、走査信号線22の延びる方向(x方向)が長手方向の概略長方形になる。
このとき、図45に示したように、複数の光源3を導光板2の短手方向の辺に沿って配置し、導光板2の結合部、すなわち当該光源3が配置された辺と面発光部(領域AR2)との間に、反射型偏光板14、透明スペーサ15、第1の反射板16、四分の一波長板17、第2の反射板18などを配置すると、導光板2から液晶表示パネル1に向けて出射する光の振動方向が第1の偏光板12の透過軸12Tと概ね平行になる。またこのとき、液晶表示パネル1で変調されて観察者に届く光の振動方向は、液晶表示パネル1の短手方向と平行である。
したがって、図45に示した構成の液晶表示装置を屋外で使用するときに、液晶表示パネル1(表示領域AR1)の長手方向が水平方向を向くようにして使用すれば、偏光サングラスをかけた観察者でも、表示された映像や画像を観察することができる。
なお、図45には、液晶表示パネル1の表示領域AR1が横長の場合の構成例を示しているので、導光板2の短手方向の辺に複数の光源3が配置されている。これに対し、たとえば、図1に示したように、液晶表示パネル1の表示領域AR1が縦長の場合に、偏光サングラスをかけた観察者も観察可能な構成にするには、たとえば、図1に示した導光板2の長手方向の辺に複数の光源3を配置し、第1の偏光板12の透過軸12Tが液晶表示パネル1の短手方向と概ね平行になり、第2の偏光板13の透過軸13Tが液晶表示パネル1の長手方向と概ね平行になるようにすればよいことはもちろんである。
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。