JP5172864B2 - 抗腫瘍ワクチン、抗腫瘍ワクチンの調製方法及び抗腫瘍免疫療法の実行方法 - Google Patents

抗腫瘍ワクチン、抗腫瘍ワクチンの調製方法及び抗腫瘍免疫療法の実行方法 Download PDF

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Description

本発明群は、医療技術、すなわち腫瘍を患った患者に行う免疫療法に属し、腫瘍学的な疾患の治療及びその再発防止を目的として、医療分野において用いることができる。
外科的な方法、化学療法及び放射線療法による腫瘍学的な疾患の治療には限界があることから、腫瘍を患っている患者のための新しい治療方法を見つけることが最も求められている。特に、免疫療法の手法の開発の展望は良いと信じられており、免疫療法の原理は、ヒトの免疫に生来備わっている抗腫瘍防御力の強化である。
免疫療法の効果的な手法の1つは、ワクチン接種と考えられており、その有効性は、ワクチン組成物中に存在する又はワクチン製造の様々な段階において必要とされる(例えば、抗イディオタイプ抗体、樹状細胞等を基礎として調製したワクチン)腫瘍抗原によって引き起こされる免疫応答の強度によって決まる。このため、腫瘍抗原の単離が、抗腫瘍ワクチン開発のための必要前提条件となる。
様々な抗腫瘍ワクチンの調製方法がよく知られている。
一部のワクチンは、腫瘍細胞(TC)の特定の抗原、すなわちペプチド、熱ショックタンパク質、多糖類及びその他の物質を用いて調製される。特に、合成により腫瘍ペプチド抗原を製造する方法がよく知られている。このようにして、9個のアミノ酸長さの合成ペプチドから成るワクチンは、骨髄性白血病の患者に行った臨床試験中に良好な結果を示した(Williams R., "Harnessing the Immune System: The Promise and Potential of Cancer Vaccines", Oncolog., 2005, v. 50, No.4)。その他のペプチドの結果にはばらつきがあった。例えば、予備試験での結果が良好であったgp100タンパク質のペプチドは、患者における腫瘍発現を阻むに十分な免疫応答を引き起こさなかった(Yu Z., Restifo N.P., "Cancer Vaccines: Progress Reveals New Complexities",J.Clin. Invest., 2002, v.110, 289-294)。
免疫応答を刺激する抗原として腫瘍の糖鎖を用いる方法がよく知られている。しかしながら、同様の抗原の有効性は、単一の腫瘍細胞及び早期転移の場合でしか実証されていない(Franco A., "CTL-Based cancer Preventive/Therapeutic Vaccines for Carcinomas: Role of Tumour-Associated Carbohydrate Antigens", Scand. J.Immunol., 2005, v.
61, 391-397)。
特定の抗原を基礎としたワクチンには根本的な欠点があることに留意する必要がある。腫瘍細胞は複数の抗原によって特徴づけられるだけでなく、その高い変異率及び生体において絶え間なく作用している細胞選択メカニズムは、新しい抗原の出現と、既に存在している腫瘍細胞の抗原の変化をもたらす。このため、自家ワクチン(患者自身の腫瘍細胞を基礎としたワクチン)を使用する利点は明らかであり、自家ワクチンはその患者の腫瘍の発現を識別する、個別かつ疾患の段階に特異的な抗原を含む、免疫応答を誘発する全ての抗原を含有する。
エキソソームを用いた腫瘍抗原の調製方法がよく知られている。エキソソームは、直径数ナノメートルの膜小胞であり、腫瘍細胞(例えば、論文Wolfers J. et al., "Tumor-derived exosomes are a source of shared tumor rejection antigens for CTL cross-priming",Nat.Med.,2001, v. 7, 297-303を参照のこと)、T−及びB−リンパ球(Raposo G. et al.,"B lymphocytes secrete antigenpresenting vesicles",J.Exp.Med.,1996,
v.183,1161-1172)及び樹状細胞(Zitvogel L.et al.,"Eradication of established murine tumors using a novel cell-free vaccine:dendritic ell-derived exosomes",Nature Med.,1998, v.4,594-600)を含む多くの種類の細胞によって分泌される。
この方法の欠点は、免疫療法を行うにあたっての抗原候補である表面タンパク質でのエキソソームの富化レベルが低いことである。エキソソームは、主に、サイトゾルタンパク質及びエンドソームコンパートメントのタンパク質を含有していることが知られている(例えば、論文Thery C.et al.,“Exosomes:composition,biogenesis and function”Reviews Immunology,2002,v.2,569-579を参照のこと)。この方法のよく知られている第2の欠点はエキソソームの蓄積に長時間を要することであり、成長培地中に腫瘍細胞の存在を必要とし、また成長培地成分から抗原を精製する必要がある。
抗原それ自体の代わりに抗原をコードするDNAを生体に導入する抗腫瘍ワクチン調製方法がよく知られている。抗原提示細胞はDNAを吸収し、腫瘍抗原を産生し、その腫瘍抗原を主要組織適合性複合体と結合させて細胞表面で提示すると、細胞障害性Tリンパ球を活性化させることができる。このため、ウィルスベクターを基礎としたワクチンを用いて、動物モデルでは良好な結果が得られた(例えば、論文Yu Z., Restifo N.Р., "Cancer Vaccines:Progress Reveals New Complexities",J.Clin. Invest, 2002, v. 110, 289-294を参照のこと)。
この方法の欠点は、ウィルスベクターそれ自体によって誘発される免疫系の反応であり、ヒトへの抗腫瘍ワクチン接種の明白なプラス効果が現れない。
患者自身の腫瘍(自家ワクチンの場合)及び他の患者の腫瘍(同種異系ワクチンの場合)から得た全腫瘍細胞の抗原としての使用を前提とした抗腫瘍ワクチンの調製方法がよく知られている。細胞は、電離放射線で事前に不活性化される。このようなワクチンの利点は、特定の抗原の同定及び単離の必要性がないことである。このため、アジュバントとしてのBCGワクチンと混合した細胞が、結腸直腸がん、メラノーマ、腎癌に用いられた(Armstrong А.С., Eaton D.,EwingJ.C.,"Cellular Immunotherapy for Cancer",Brit.Med.J.,2001,v.3323,1289-1293を参照のこと)。
この方法の欠点は、腫瘍細胞の不活性化が必要なこと並びに全腫瘍細胞表面上にある抗原の、抗原提示細胞による貪食及びプロセシングに対する適性が低いことである。
米国特許第6039941号明細書により、免疫刺激活性を有する表面タンパク質をコードする遺伝子の遺伝子操作による導入を通して得られた腫瘍細胞から、高免疫原性の抗腫瘍ワクチンを調製する方法がよく知られている。
この方法の欠点は、第1に、腫瘍細胞の不活性化が必要なことであり、第2に、腫瘍細胞表面上の抗原が、抗原提示細胞による貪食及びプロセシングにほとんど適していないことである。
国際出願第WO02053176号パンフレットにより、培養した腫瘍細胞の溶解物を基礎とした抗腫瘍ワクチンの調製方法がよく知られている。これらのワクチンの利点は、電離放射線による不活性化を必要とせず、無傷の腫瘍細胞とは異なり、脱凝集細胞抗原が抗原提示細胞による貪食及びプロセシングに適しており、より顕著な免疫応答が得られることである。
この方法の欠点は、腫瘍細胞溶解物の大部分が細胞内タンパク質から成ること及びこれらのタンパク質によって引き起こされる免疫応答が抗腫瘍活性を有していないことであり、これは腫瘍細胞の細胞内タンパク質が、免疫系に関してアクセス不可能だからである。
この方法に最も近いものが(特許出願)、米国特許第5993829号明細書に記載の抗腫瘍ワクチンの調製方法である。腫瘍細胞の培養及びその表面抗原の単離を含む類似の方法は、米国特許第6338853号明細書、米国特許第5030621号明細書、米国特許第5635188号明細書にも記載されている。
周知の方法では、腫瘍細胞を血清を含有していない成長培地中で培養し、腫瘍細胞が培養過程において失うところの細胞表面抗原を成長培地から単離することを前提としている。精製後、回収した抗原を抗腫瘍ワクチンの抗原として使用する。このようなワクチンの利点は、細胞表面から得た腫瘍抗原の含有量が高いことであり、これらの腫瘍抗原は、(細胞内に隠れていないため)免疫系の作用に関してアクセス可能である。
・外部の影響に関係なく、培養腫瘍細胞により抗原が自然に失われるため、抗原の出力が低い;
・抗原を蓄積する工程は、成長培地での長時間にわたる腫瘍細胞のインキュベーションを前提としており(例えば、米国特許第6338853号明細書ではRPMI−1640培地での3時間のインキュベーション)、40種類を越える物質(アミノ酸、塩、緩衝剤、ビタミン、グルコース等)を含有し、また培養過程において腫瘍細胞が分泌する代謝産物及びその他の物質も含有する成長培地中での抗原の蓄積を想定していることから、所望の産物(抗原)の含有量が低く、不純物の量が多い材料が得られる;
・抗原混合物の組成分析が、成長培地の成分及び細胞代謝産物からの調製物の事前の精製を必要とする;
・ワクチン接種に必要な用量の抗原の単離は、長時間にわたる培養による腫瘍細胞の増殖を想定しており、これは抗原混合物の組成のゆがみにつながり、ワクチン接種の効果が低くなる;
・この方法では、ワクチン接種に必要な量の抗原を、腫瘍細胞の培養工程を通してしか得ることができず、つまり、この方法では単離した(培養していない)細胞からの抗原の抽出が不可能である;
・腫瘍細胞の培養に時間がかかり、かつ腫瘍表面抗原を精製する必要性があるため、ワクチンが高価である;
が、この方法の欠点である。
基本組成物、異なる抗原の混合物又は抗原と異なる免疫刺激物質との混合物である抗腫瘍ワクチンもよく知られている。
国際出願第2004012685号パンフレットからは、培養過程で細胞により「失われる」腫瘍表面抗原を基礎とした抗腫瘍ワクチンが知られている。このワクチンの調製は、様々な影響を受けた後に、成長培地中への細胞による抗原の分泌工程が促進され、これによりワクチンの有効性が若干上昇することを想定している。しかしながら、このワクチンもまた、血清非含有培地での腫瘍細胞の培養を通して得られたその他のワクチンにつきものの欠点を有している。
ここに記載の特許出願に最も近いものは、米国特許第5993829号明細書に開示の、腫瘍表面抗原を基礎としたワクチンである。類似のワクチンも、米国特許第6338853号明細書、米国特許第5030621号明細書、米国特許第5635188号明細書に記載されている。よく知られたこのワクチンの欠点は、前述したように、腫瘍細胞の培養時間及び精製段階の存在に負うところのそのコストの高さである。
抗腫瘍治療を実行するための様々な方法もよく知られている。
単味ワクチンを用いた抗腫瘍免疫療法の実行方法もよく知られており、特定の腫瘍抗原を生体に導入することを含む。このようなワクチンは、例えば、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、多糖類及びその他の物質を基礎としたワクチンに属する。これらの方法は、特に国際公開第2005083074号パンフレット及び露国特許第2271831号明細書に開示されている。
これらの方法の欠点は、一部の抗原はその患者の腫瘍に特異的でないため、誘発される抗腫瘍免疫の特異性が低いことであり、これはこれらの抗原が、統計学的に腫瘍の種類に共通した抗原であると判明したからである。
不活性化した全腫瘍細胞及び免疫原性を強化した全腫瘍細胞を生体に注射することを含む、抗腫瘍治療の実行方法がよく知られている(例えば、米国特許第6039941号明細書を参照のこと)。
この手法の免疫療法の欠点は、腫瘍細胞の表面上の抗原が抗原提示細胞による貪食及び続くプロセシングにほとんど適さないため、誘発される抗腫瘍応答の特異性が低いことである。この方法も、ワクチン接種に十分な用量の抗原を得るために必要な、インビトロでの細胞の増殖を前提としており、これもまた抗原組成の変化及び免疫療法の有効性の低下につながる。
国際出願第02053176号パンフレットにより、腫瘍細胞溶解物を生体に導入することを含む、抗腫瘍免疫療法の実行方法がよく知られている。
このワクチン接種法の欠点は、誘発される抗腫瘍免疫の特異性が低いことである。この場合、免疫応答に関与する腫瘍表面抗原に加えて、ワクチンは、溶解物の大部分を構成する細胞内タンパク質も含有している。このため、雑多なタンパク質塊に対する免疫付与が起こり、また免疫応答の腫瘍特異性の「不明瞭化(blurring)」が起きる。この方法も、ワクチン接種に十分な用量の抗原を得るのに必要な、インビトロでの細胞増殖を前提にしており、これは腫瘍細胞の抗原組成の変化と、この結果としての抗腫瘍治療の有効性の低下につながる。
特定の腫瘍抗原の組み合わせ及び異なる抗原と様々な種類の免疫刺激物質との組み合わせに基づいた方法が知られている。
ここに記載の抗腫瘍治療の実行方法に最も近いものが、米国特許第5993829号明細書に開示の方法である。類似の方法が、米国特許第6338853号明細書、米国特許第5030621号明細書、米国特許第5635188号明細書及び国際公開第2004012685号パンフレットにも記載されている。この方法は、血清非含有培地での培養中に細胞によって自然に失われる、腫瘍細胞の表面抗原のフラグメントである抗原の混合物から得られるワクチンを患者の生体に注射することを含む。
この方法の欠点の1つは、誘発される免疫応答の特異性が低いことである。この方法は、長時間にわたって培養された腫瘍細胞の使用を前提としており、これはその抗原組成の変化とワクチンの有効性の低下につながる。別の欠点は、細胞の培養時間及び成長培地の成分から単離した抗原を精製する必要性があることから、この方法が比較的高コストなことである。
米国特許第6039941号明細書 国際公開第02053176号パンフレット 米国特許第5993829号明細書 米国特許第6338853号明細書 米国特許第5030621号明細書 米国特許第5635188号明細書 国際公開第2004012685号パンフレット 国際公開第2005083074号パンフレット 露国特許第2271831号明細書
Williams R., "Harnessing the Immune System: The Promise andPotential of Cancer Vaccines", Oncolog., 2005, v. 50, No.4 Yu Z., Restifo N.P., "Cancer Vaccines: Progress Reveals NewComplexities", J. Clin. Invest., 2002, v. 110, 289-294 Franco A., "CTL-Based cancer Preventive/Therapeutic Vaccines forCarcinomas: Role of Tumour-Associated Carbohydrate Antigens", Scand.J.Immunol., 2005, v. 61, 391-397 Wolfers J. et al., "Tumor-derived exosomes are a source of sharedtumor rejection antigens for CTL cross-priming", Nat. Med., 2001,v. 7,297-303 Raposo G. et al., "B lymphocytes secrete antigenpresenting vesicles", J.Exp.Med., 1996, v. 183, 1161-1172 Zitvogel L. et al., "Eradication of established murine tumors using a novel cell-free vaccine: dendritic cell-derivedexosomes", Nature Med., 1998, v. 4, 594-600 Thery C. et al.,"Exosomes: composition,biogenesis and function"Reviews Immunology, 2002, v. 2,569-579 Yu Z., Restifo N.Р., "Cancer Vaccines: ProgressReveals New Complexities", J. Clin. Invest, 2002, v. 110, 289-294 Armstrong А.С.,Eaton D., Ewing J.C., "Cellular Immunotherapy forCancer", Brit. Med. J., 2001, v. 3323, 1289-1293
本特許発明群の使用によって得られる技術的成果は、抗腫瘍免疫応答の強化による、腫瘍学的な疾患の治療の有効性の強化から成る。
この技術的果は、腫瘍表面抗原を基礎とした抗腫瘍ワクチンの使用によって得られる。本発明において、ワクチンは腫瘍表面抗原の混合物を含有しており、これらの抗原は生きた腫瘍細胞の表面タンパク質から蓄積したペプチドであり、生きた腫瘍細胞の初代培養物にプロテアーゼを周期的に、非致死的に作用させることで得たものである。
本発明の好ましい実現態様において、抗腫瘍ワクチンは、プロテアーゼとして選択したトリプシンの使用を通して得ることができる。
上記の技術的成果は、腫瘍細胞の培養及び腫瘍表面抗原の単離を含む、抗腫瘍ワクチンの調製方法を実現することによっても得られる。本発明では、成長培地を事前に洗い流した生きた腫瘍細胞の初代培養物を、細胞を殺さないプロテアーゼの作用に供し、放出された腫瘍表面抗原を回収し、加えて、細胞による腫瘍表面抗原の回復に必要な時間が経ってから、プロテアーゼによる生きた腫瘍細胞の初代培養物の処理を繰り返し、ワクチン接種に十分な用量に達するまで腫瘍表面抗原を蓄積し、得られる腫瘍表面抗原の組成を管理する。
更に、本発明群を、特定の実現例及び以下の添付図面により説明する。
抗腫瘍ワクチンの調製方法の実現スキームである。 初代腫瘍細胞培養物から本発明の第2の実現態様に従って得られた表面抗原の質量スペクトル(A);表面抗原の完全回復及びプロテアーゼにより細胞を繰り返し処理した後に同じ細胞培養物から得られた表面抗原の質量スペクトル(B);プロテアーゼでの細胞の処理に続く部分的な回復後に同じ細胞培養物から得られた表面抗原の質量スペクトル(C)である。 抗原の糖鎖部分のCIDフラグメンテーションのスペクトルである。 抗原の糖鎖部分のCIDフラグメンテーションのスペクトルである。 b/yイオンを同定した抗原のペプチド配列のCIDフラグメンテーションのスペクトルである。 b/yイオンを同定した抗原のペプチド配列のCIDフラグメンテーションのスペクトルである。 ペプチド混合物をワクチン接種した、腫瘍細胞株H22を播種したマウスの生存曲線である。
本発明の好ましい実現態様において、プロテアーゼとしてトリプシンを使用する。
上記の技術的成果は、腫瘍細胞の表面タンパク質から得られるペプチドである腫瘍表面抗原の混合物から得られるワクチンを患者の生体に注射することを含む、抗腫瘍免疫療法の実行方法を実現することによっても得られる。
本発明においては、腫瘍表面抗原の混合物を使用し、これらの抗原は、生きた腫瘍細胞の表面タンパク質から蓄積したペプチドであり、抗原は、生きた腫瘍細胞の初代培養物にプロテアーゼを周期的に、非致死的に作用させることで得られる。
好ましい実現態様において、プロテアーゼとしてトリプシンを用いる。
より特異的な免疫応答を得るために、患者自身の腫瘍細胞の腫瘍表面抗原を用いる。
本発明のその他の実現態様において、別の患者の細胞から得た腫瘍表面抗原を用いる。
本方法の好ましい実現態様において、アジュバントをワクチン組成物の一部として使用する。
図1は、抗腫瘍ワクチンの一般的な調製スキームを図示している。更に、マウスに播種したヒト肝細胞癌H22に対する抗腫瘍ワクチンの調製方法の第1の実現例を挙げる。H22細胞の同じ培養物を、ワクチン調製に用いる。
1.H22細胞培養物を入れたフラスコから成長培地を除去し、成長培地の体積の半分以上の体積の滅菌生理溶液を用いて、細胞の単層を洗浄する。洗浄は、成長培地の残留分を完全に除去するために、3回以上行うべきである。
次の重要な工程は、非致死的なプロテアーゼ濃度での通常はトリプシン(活性〜3000U/mg)による細胞の処理である。
2.トリプシンの0.0001%溶液を、フラスコ表面25cmあたり溶液1mlの割合で細胞の単層に添加する。
3.フラスコを37℃でインキュベートする。5〜7分のインキュベーションの間に、細胞表面から分離した抗原を含有するトリプシン溶液を回収する。
4.細胞に血清を含有する(通常、10%)新しい成長培地を添加し、培養を継続する。
5.必要量の抗原を得るために、工程2〜4を24時間間隔で繰り返す。
6.抗原の有用性を評価するために、質量スペクトル分析を行う。
7.蓄積した抗原を、ワクチンの調製に使用する。
質量スペクトル分析は以下のようにして行われる。140μlの抗原溶液を、140μlのエタノール及び720μlのブタノールと混合し、15μlのSepharose CL4Bを添加する。混合物をゆっくりと攪拌しながら45分の間、インキュベートする。インキュベーションの後、Sepharoseを同じエタノール・ブタノール溶液で2回洗浄し、50%エタノール溶液中で30分間にわたってインキュベートする。エタノール溶液を回収し、ローター蒸発装置(rotor−evaporating device)で乾燥させる。得られた乾燥材料を10μlの水に溶解させ、MALDI−TOF質量分析を用いて分析する。分析対象である溶液2μlを、質量分析計のターゲット上で、50%のアセトニトリルと0.5%のトリフルオロ酢酸とを含有する2,5−ジヒドロキシ安息香酸の飽和溶液と1:1の比で混合する。ターゲット上に準備した液滴を風乾させ、質量範囲600〜4000Daのペプチドの質量スペクトル分析を行う。
ワクチン開発にとって非常に重要な腫瘍抗原の大部分が、細胞表面上に見られることがよく知られている(例えば、総説Bocchia M. et al., "Antitumor vaccination: where we
stand", Hematologica, 2000, v. 85, 1172-1206を参照のこと)。初代細胞培養物をトリプシンで非致死的に処理すると、細胞表面からタンパク質フラグメントが分離する(Lokhov P.G., Archakov A.I.,“Proteomic footprinting:a method for cells profiling by direct mass spectrometry”,HUPO theses, 5-th Annual World Congress,2006,abstract No 1201を参照のこと)。このため、本発明において、トリプシン及びその他のプロテアーゼによる作用は、腫瘍表面タンパク質のフラグメントの溶液中への放出につながる。トリプシンの作用により放出された腫瘍表面抗原(表面タンパク質のフラグメント)は、主に、腫瘍を患っている患者のワクチン接種に使用する免疫療法用の抗原に適したものである。
細胞から分離したペプチドを含有するトリプシン溶液の回収を、望ましくはフラスコ底部から細胞が剥がれる前に行うべきであることに留意する必要があり、これにより細胞の試料中への移動を回避することができ、追加の精製工程が不要となる。
プロテアーゼでの細胞の処理の条件は、腫瘍細胞の種類ごと及び使用するプロテアーゼの活性の度合いごとに実験的に規定され、プロテアーゼ濃度については0.0001%〜0.05%、処理時間については30秒〜10分と大幅に異なり得る。異なる活性度のトリプシンを使用する場合、その濃度は、酵素活性の上昇又は低下に正比例して変化する。
非致死的なプロテアーゼ濃度での処理後、細胞は死なず、初代細胞培養物のトリプシンでの処理工程を繰り返すことが可能となる。ワクチン接種に必要な用量の腫瘍表面抗原を得るために、生細胞培養物のトリプシン処理工程を、最高24時間に達する間隔を置いて何度も繰り返す。次のトリプシン処理までの間に、細胞を、その細胞についてのインキュベーションプロトコルに従ってインキュベートする(すなわち、COインキュベータ内で37℃、血清及び必要な追加補助栄養素を含有する成長培地中でのインキュベーション)。
蓄積した腫瘍表面抗原を、所定のワクチンの調製技法に従って処理する。すなわち、抗原を、精製、濃縮、その組成分析に供することができる。また、免疫原性を上げるために変性又はアジュバントと混合することができる。
本発明のその他の実現態様においては、プロテアーゼ処理を、細胞の継代工程と組み合わせることができる。
トリプシン溶液は、滅菌生理溶液又はその他の適当な生理食塩水を用いて調製することができる。
トリプシンの代わりにその他のプロテアーゼ、例えばキモトリプシン等を用いることができる。
細胞懸濁液を使用する場合、抗原を蓄積する前に、遠心分離又はその他の適当な方法の使用により、細胞を収穫する必要がある。
第1の実現態様に従って得られた抗原の前述の組成分析は、グリコシル化ペプチドについて質量分析のプロトコルを用いて行う(M. Tajiri et al., "Differential analysis of site-specific glycans on plasma and cellular fibronectins: application of a
hydrophilic affinity method for glycopeptides enrichment", Glycobiology, 2005, v. 15,1332-1340)。これは、一方ではタンパク質フラグメントが通常、グリコシル化されるからであり、他方では、すなわち、グリコシル化ペプチドが最も免疫原性が高く、ワクチン抗原として明白な効果を示すからである(例えば、Franco A., "CTL-Based cancer Preventive/Therapeutic Vaccines for Carcinomas: Role of Tumour-Associated Carbohydrate Antigens",Scand.J.Immunol.,2005,v.61,391-397を参照のこと)。
グリコシル化抗原の脱塩及び濃縮は、いずれの適当な手段、特に液体クロマトグラフィ(HPLC)でも行うことができる。
その他の実現態様においては、腫瘍細胞を、血液、尿、体液、リンパ液、腹水、胸水等の生体液から単離することができる。
抗腫瘍ワクチンのこの調製方法は、どんなタイプの細胞培養物、すなわち接着培養物、懸濁培養物、マトリックス及びその他の基質を用いた細胞培養物、全ての態様の細胞共培養物、器官型培養物、細胞凝集塊(顆粒、球状)並びに新しく単離した腫瘍細胞及び腫瘍組織フラグメントにも応用することができる。
更に、本発明を、抗腫瘍ワクチンの第2の調製例により説明する。この調製方法では、ヒト結腸癌細胞の初代接着培養物を用いる。
1.腫瘍を外科的に切除した結果得られる結腸腫瘍組織のフラグメントを、抗生物質を含有するRPMI1640培地を入れた滅菌試験管に移し、ラボに運ぶ。
2.滅菌環境下にて、腫瘍組織をペトリ皿に移し、壊死、凝血した部位、残留脂肪分及び結合組織を機械的に除去する。
3.組織をハサミで小さなフラグメントに正確に切断する。
4.腫瘍組織のフラグメントを、力強いピペット操作により小さい細胞凝集塊に解離させ、この工程中、フラグメントは10mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に懸濁させてある。
5.残留している大きな組織フラグメントを、試験管の底面に沈殿させる。
6.液体中に依然として浮遊している細胞凝集塊を注意深くピペットで回収し、新しい試験管に移す。
7.試験管を400gで5分間にわたって遠心分離し、上清を廃棄する。細胞凝集塊を含有するペレットを以下の補助栄養素:インシュリン(20μg/ml)、トランスフェリン(10μg/ml)、ヒドロコルチゾン(50nM)、上皮増殖因子(1ng/ml)、エタノールアミン(10μM)、ホスホエタノールアミン(10μM)、トリヨードチロニン(100pM)、ウシ血清アルブミン(2mg/ml)、グルタミン(2mM)、ピルビン酸ナトリウム(0.5mM)、ウシ胎仔血清(5%)と共にRPMI1640培地中に懸濁させ、次に細胞培養のために25cmのフラスコに移す。
8.培養を、37℃、5%COで行う。
9.ストロマ細胞から腫瘍細胞を単離するために、培養フラスコを数秒の間、振動攪拌装置に押し付ける。接着力が弱いため、腫瘍細胞が剥がれ、成長培地中に移動する。
10.浮遊細胞を含む培地をピペットで回収し、次に、続く37℃、5%COでの培養のために新しい培養フラスコに移す。
11.腫瘍細胞が、培養密度80%に達したら、成長培地をフラスコから除去し、細胞を、0.9%のNaCl又はリン酸緩衝生理食塩水で3回すすぐ。すすぎ溶液の体積は、成長培地の体積の半分以上であるべきである。すすぎの結果、成長培地に含まれていた微量の血清が除去される。
12.トリプシンの0.0001%溶液(活性〜3000U/mg)を、培養フラスコ表面25cmあたり溶液1mlの割合で細胞に添加する。
13.フラスコを37℃でインキュベートする。インキュベーションから5分〜7分後、細胞から分離した表面抗原を含有する溶液を回収する。溶液を回収する間、腫瘍細胞は、培養フラスコの底部に付着したままであるべきである。トリプシンの作用により細胞の一部が剥がれ、自由に浮遊し始めた場合、5分の間、400gで遠心分離を行い、細胞を含有していない上清を使用する。
14.培養フラスコ中のトリプシンの残分を不活性化させるため、ウシ胎仔血清を含有する、新しく調製した成長培地をフラスコに添加し、細胞のインキュベーションを37℃、5%COで継続することが必要である。
15.工程13に従って得られた溶液を、真空濃縮装置で45℃にて濃縮する。事前に、溶液を適当な手段、例えば逆相クロマトグラフィ、ゲル濾過等により脱塩することができる。トリプシンの残分を除去するために、溶液を事前に、4kDa未満の分子量のペプチドが通過可能なフィルタを通して濾過することができる。
16.必要な量の抗原を蓄積するために、工程11〜15を、24時間間隔で繰り返す。これらの抗原のワクチン接種についての有用性を、質量分析により評価する。
細胞をプロテアーゼで処理する回数及び処理と処理との間隔は、蓄積した抗原混合物の組成分析により制御する。抗原組成が変化しはじめ、細胞のプロテアーゼ処理と処理との間の時間を延長しても新しく単離した腫瘍細胞に対応する最初の抗原組成が得られなくなったら、細胞はワクチン製造に不適と見なされる。
蓄積する抗原混合物の組成の管理は、本方法の第1の実現例において示したように、質量分析により行う。
腫瘍組織からの細胞の単離には、いずれの適した方法が用いられる。腫瘍細胞の放出を目的として腫瘍組織の解離にプロテアーゼを使用する場合、初代腫瘍培養の開始から24時間以降に、表面構造の質量スペクトル分析を行う必要がある。
本発明により得られる腫瘍表面抗原は、細胞ドナーの腫瘍に特異的であるべきである。しかしながら、ドナーの生体内で腫瘍細胞が成長する場合と同じ環境をインビトロで人工的に再現するのは不可能であることから、細胞の培養により初代培養物の表現型に著しい歪みが生じる。このため、蓄積する抗源の組成を、強制的な管理に供する。更に挙げるのは、本発明の第2の態様に従って得られる抗原の質の評価例である。
抗原混合物を繰り返し質量スペクトル分析した後に得られたデータによると、グリコシル化ペプチド塊の95%以上が再生され、比較する2つの抗原混合物の同一性の判断基準と見なすことができる。ワクチン接種用に蓄積した抗原がこの目的に適しているかを、新しく単離した腫瘍細胞に共通するグリコシル化ペプチド塊が90%以上存在するかによって評価することが提案される。
得られた実験データから、直腸腫瘍細胞の培養により、3〜4日で継代を実行する条件下での第1及び第2継代細胞を用いてのみ、ワクチン接種に適した抗原が調製できることが判明している。細胞の表現型を保つ成分を成長培地に添加すると、ワクチン用抗原の蓄積に適用可能な継代数を増やせる可能性も除外できない。
腫瘍組織から十分な量の細胞を得ることが不可能と判明した場合は、必要な量に達するまで培養による増殖を行う必要があり、細胞培養中の表面抗原の変異性の制御は依然として必須である。本発明において、培養過程での抗原組成の管理は、追加の細胞増殖なく行われる。例えば、非致死的なプロテアーゼ処理及び質量スペクトル分析を、培養工程中、週に1又は2回実行する。
腫瘍の抗原とワクチンの抗原との同一性により、ワクチンによって誘発される抗腫瘍免疫応答の特異性が得られる。元の腫瘍の抗原の質量スペクトルと、本発明に従って蓄積した抗原の質量スペクトルとを比較することにより、このような同一性を管理することができる。図2Aは、元の腫瘍細胞の表面抗原の質量スペクトルを表す。図2Bは、本発明に従って得られた、ワクチン接種に適した抗原の質量スペクトルを表す(図2Aと2Bの質量スペクトルは同じである)。図2Cも、本発明に従って得られたもののワクチン接種には適していない抗原の質量スペクトルを示す(図2Aと2Cのスペクトルは著しく異なる)。矢印は、消失した(図2B)及び新しく出現した(図2C)抗原に対応する質量を指し示す。このようにしてペプチド組成を管理することにより、特異的な抗腫瘍免疫応答を誘発するワクチン接種に必要な量の抗原を蓄積することが可能である。
抗原が腫瘍細胞の表面タンパク質に由来することを裏付けるために、(本発明の実現に不要ではあるが)そのフラグメンテーションスペクトルを得た。この例を図3に示す。
これを目的として、トリプシンとの細胞のインキュベーション過程において得られた試料を、逆相ZipTipc18(Millipore社、米国)を自動ピペットのチップに用いて製造者のプロトコルに従って脱塩し、上述したように、マトリックスと共に質量分析計ターゲットの上に適用した。質量スペクトルを、イオンフラグメンテーションの型で記録した。タンパク質の同定を、検索システムMascot(MatrixScience社、米国)を用いて、タンパク質配列のデータベースNCBI(米国)の分類群ホモサピエンスについてイオン質量b、y(シークエンスタグ法)を用いて及び/又は確立されたアミノ酸配列を用いて行った(de novo法)。
図3A及び3Bは、質量1640及び1480Daのグリコシル化ペプチドの糖鎖の解離の例を示し、質量162、203及び291Daのフラグメントが分離し、これはそれぞれヘキソース(マンノース、グルコース又はガラクトース)、アセチルグルコサミン及びシアル酸に対応する。ペプチドのフラグメンテーションによりそのアミノ酸配列の同定が可能となり、抗原混合物における、免疫グロブリン(CD抗原、組織適合性複合体、T細胞受容体及び細胞接着分子の殆どを含む)、低密度リポタンパク質受容体、インターロイキンIR−2の受容体、Gタンパク質結合受容体、主要組織適合性複合体I及びIIの重鎖の可変及び定常ドメインのペプチドが判明する。図3Cは、解離したフラグメントの例を示し、857.4Daの2電荷ペプチドについてb−yイオンが示され、Gタンパク質結合受容体のフラグメントに対応する確立されたアミノ酸配列は
Figure 0005172864
である。
図3Dは、質量573.3Daの1電荷ペプチドの解離フラグメントの別の例を示し、b−yイオンが示されており、主要組織適合性複合体IIのフラグメントに対応する確立されたアミノ酸配列は
Figure 0005172864
である。
従って、本発明に従って得られる抗原は、以下によって特徴付けられる。
1)質量1.2〜4kDaを有する、水溶性の、主にグリコシル化されたタンパク質分解ペプチドから構成される(トリプシンをプロテアーゼとして使用する場合、その配列は、通常、リジン又はアルギニンで終了する)。
2)1つの供給源に由来する。すなわち、腫瘍細胞の外部細胞膜のタンパク質の細胞外フラグメントである。
3)生細胞を非致死的な濃度のプロテアーゼで処理することにより得られる。
本発明によって得られる腫瘍抗原の混合物の実用的な使用は、アミノ酸配列の種類及び細胞表面上に提示されたタンパク質フラグメントによる混合物のペプチドの修飾(グリコシル化)によって決定される。腫瘍学的な疾患の発生は、生体に生じる腫瘍細胞を破壊する免疫系の不能の結果であることがよく知られている。免疫応答を強化するアジュバントと混合した、精製及び蓄積した抗原を、人体又は動物の体に注射する。生体による、注射したペプチドを無効にする細胞及び液性免疫応答の結果、既に存在している又は新しく出現した腫瘍細胞が互いに破壊され、これにより抗腫瘍ワクチン接種の治癒及び予防効果が得られる。完全な免疫応答を得るために、抗原を繰り返し注射する。
本発明に従って得られたワクチンの抗腫瘍活性の裏づけをとるため、同じ年及び体重の20匹のオスのBALB/cマウスを用いて、モデル実験を行った(対照群に10匹、試験群に10匹)。
本発明の第1の実現態様に従って、腫瘍抗原を、肝細胞癌H22細胞培養物から得た。回収した抗原を、Sephadex G−10でのゲル濾過により脱塩し、真空濃縮装置SpeedVacで濃縮した。
事前に完全フロイントアジュバントと1:1(v/v)の比で混合した150μgの抗原を、皮下注射した。不完全フロイントアジュバントを用いて、3週間の間(注射1回/週)、免疫付与を繰り返した。同じスキームに従って、生理溶液と混合したフロイントアジュバントを対照群のマウスに注射した。4回目の免疫付与後、100万個の細胞を皮下注射することにより、マウスに肝細胞癌H22を播種した。3ヶ月の間、対照群及び試験群のマウスの生存率をチェックした。得られた生存曲線(図4)は、本発明によって得られる抗原の抗腫瘍活性の存在を裏付けている。
抗腫瘍免疫の機序は動物でもヒトでも同じことから、モデル実験の結果は、動物での本発明の使用の成功を限定しないことに留意する必要がある。抗原の投与方法及び体重1kgあたりで計算した抗原用量は、ヒトの免疫療法の場合でも変わらないが、治療スキームは、疾患の重篤度、疾患の段階、腫瘍細胞の変異性、生体が抗原に対してはっきりとした免疫応答を示す力等に応じて各患者に合わせて個別化することができる。
更に挙げるのは、ヒトに抗腫瘍治療を施すための、本発明の第2の実現態様に従って調製された腫瘍表面抗原を基礎とした抗腫瘍ワクチン及び抗腫瘍治療の実行方法の例である。
ワクチンは、0.5mlのリン酸緩衝生理食塩水中に溶解させ、1mlのアジュバント(Montanid ISA−51、スクアレン、Plunoric L121、Tween80を含有する水・油エマルションを基礎としたSyntex社のアジュバント)と混合した1mgの腫瘍抗原混合物(本発明の第2の実現態様に従って調製)から成る。
1用量のワクチンを3週間の間(毎週)及び5ヶ月の間(毎月)、患者に皮下注射する。
ワクチン接種の有効性を、導入した腫瘍抗原に対する免疫の強度により評価する。注射から2〜3日後に、注射した抗原に対する過敏性反応を、注射部位の紅斑の寸法を判断して評価する。基準値として、初回の注射の後に出現した紅斑の寸法を採用する。ワクチン接種を繰り返した後の過敏性反応の明らかな強化は、抗腫瘍免疫応答の発現を示している。
抗腫瘍免疫療法の実行方法のその他の実現態様において、ワクチンの静脈内又は筋肉内注射も可能であり、アジュバントなしのワクチン注射も可能である。
本発明の使用による免疫応答の発現は、腫瘍抗原の混合物の適用により得られる。ワクチン中に存在する複数のペプチドにより、その表面に同じアミノ酸配列のタンパク質を有する細胞全てに対する免疫応答が可能になる。
従って、本方法により、単味ワクチンを使用する周知の方法と比較して、抗腫瘍免疫療法の有効性を何倍も上げることができる。
本発明群の採用により、腫瘍細胞の表面抗原である腫瘍特異的な抗原で富化したワクチンを用いて、抗腫瘍免疫療法の実行が可能になる。
これは細胞を殺さない濃度のプロテアーゼでの腫瘍細胞のプロテアーゼ処理により可能になる。非致死的な濃度のプロテアーゼの使用により、腫瘍細胞の表面抗原だけを分離し、その細胞質膜の破壊を伴う細胞死(細胞質内容物のワクチンへの混入、特にワクチン接種に無用な細胞内タンパク質塊のワクチンへの混入につながる)を回避することができる。ワクチンへの混入は、周知のワクチンにおける腫瘍特異的な抗原の一部の弱体化、免疫応答の「不明瞭化」及び、その結果としての腫瘍抗原に特異的な免疫応答の低下につながる。
このため、本発明に従って調製した腫瘍抗原で富化したワクチンの使用により、抗腫瘍免疫療法の有効性を上げることができる。
更に、免疫療法の有効性の上昇は、初代腫瘍細胞培養物からの蓄積によって得られる抗原の使用によって達成される。抗腫瘍ワクチンのこの調製方法では、毎回のプロテアーゼ処理の後、実質的に変わらない組成を有する抗原を得ること及び、初代細胞培養物を用いて、ワクチン接種に必要な量の抗原を蓄積することが可能になる。蓄積する抗原の組成を管理することができるため、ワクチン組成物において、所定の腫瘍に対してだけ特異的な腫瘍抗原を使用することができる。
また、所定の腫瘍に対して特異的でない抗原のワクチン内への混入の可能性が排除できる。このような抗原は、増殖細胞を使用して調製した周知のワクチンの組成に存在することがあるが、これはインビトロでの増殖中に初代培養物がその抗原組成を変えてしまうことが知られているからである。このため、増殖細胞から回収した抗原混合物の組成は、単離した(培養していない)腫瘍細胞から得られる抗原の組成とは大きく異なる場合がある。
本発明に従って調製したワクチンは自家ワクチン(患者自身の細胞から得られる)又は同種異系(別の患者の細胞を基礎としている)であってよい。
本発明に従って実行する免疫療法はどちらの場合でも効果的であるが、これは別々の患者の腫瘍細胞が、その表面に同じアミノ酸配列のペプチドを有しているからである。
また、本発明に従って調製する自家ワクチンの使用はより効果的であるが、これは後者の場合、ワクチンがその患者の腫瘍の発現を識別する、個別かつ段階特異的な抗原を含有しているからである。
従って、本発明により、細胞表面抗原を基礎とした腫瘍抗原を得ることができ、またこの表面抗原を基礎として、腫瘍学的な疾患の治療、すなわちワクチン接種の実行が可能になる。

Claims (4)

  1. 腫瘍表面抗原を基礎とした抗腫瘍ワクチンであって、前記ワクチンが腫瘍表面抗原の混合物を含有しており、前記抗原は生きた腫瘍細胞の表面タンパク質から蓄積したペプチドであり、前記生きた腫瘍細胞の初代培養物をプロテアーゼで周期的に、前記細胞が死なないように処理することで得たものであることを特徴とするワクチン。
  2. プロテアーゼとして選択したトリプシンの使用により得られる、請求項1に記載の抗腫瘍ワクチン。
  3. 腫瘍細胞の培養及び腫瘍表面抗原の単離を含む抗腫瘍ワクチンの調製方法であって、成長培地を事前に洗い流した生きた腫瘍細胞の初代培養物を、細胞を殺さないプロテアーゼ処理に供し、放出された腫瘍表面抗原を回収し、細胞による腫瘍表面抗原の回復に必要な時間が経ってから、前記生きた腫瘍細胞の初代培養物の処理を繰り返し、ワクチン接種に十分な用量に達するまで前記腫瘍表面抗原を蓄積し、蓄積する腫瘍表面抗原の組成を管理することを特徴とする方法。
  4. 前記プロテアーゼとしてトリプシンを使用する、請求項3に記載の方法。
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