以下に、この発明における燃料供給方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態においては、アルコールとしてエタノールを用いた場合を例に挙げて説明する。
図1〜図6を用いてこの発明の実施形態を説明する。図1は、この発明における燃料供給方法が適用される内燃機関の燃料供給システム1の構成を概略的に示す図である。図1において、燃料供給システム1は、ガソリンとエタノールとの混合燃料を収容するメインタンク2と、メインタンク2に収容された混合燃料のガソリンとエタノールとを上下に分離させた状態で収容する分離タンク3とを備え、分離タンク3からガソリンとエタノールとを各別に内燃機関4に供給する。なお、メインタンク2は、本発明における混合燃料収容タンクに相当する。
内燃機関4は、本実施形態では、図示を省略する複数の気筒(例えば4気筒)を有する火花点火方式の内燃機関であり、その各気筒毎に、ガソリン用の燃料噴射弁5とエタノール用の燃料噴射弁6とを備えている。図1では、1気筒分の燃料噴射弁5,6を代表的に図示している。これらの燃料噴射弁5,6は、本実施形態では、ポート噴射方式による燃料噴射を行う燃料噴射弁である。
なお、内燃機関4は、圧縮着火方式や予混合圧縮着火方式などの自己着火方式の内燃機関であってもよい。また、内燃機関4は、単気筒の内燃機関であってもよい。また、内燃機関4の各気筒に対する2種類の燃料の燃料噴射方式は、ポート噴射方式に限らず、いずれか一方の種類の燃料の燃料噴射方式が筒内噴射方式であってもよい。
メインタンク2には、メインタンク2内の混合燃料に水を混合してなる混合液を攪拌・加圧して分離タンク3に供給するフィードポンプ7が付設されている。この場合、フィードポンプ7の吸入口が、メインタンク2内の混合燃料の液中に連通されているとともに、水を収容するタンクとしてメインタンク2および分離タンク3と別に設けられた水タンク8に水供給路9を介して接続されている。また、フィードポンプ7の吐出口が、分離タンク3の下部に混合燃料供給路10を介して接続されている。そして、このフィードポンプ7は、その吸入口からメインタンク2内の混合燃料と、水タンク8内の水とを吸入して混合するとともに、その混合液(混合燃料と水との混合液)を攪拌しつつ所定の圧力に加圧し、その攪拌・加圧した混合液を吐出口から混合燃料供給路10を介して分離タンク3に供給するようにしている。
なお、水供給路10には、流量制御弁11が介装され、この流量制御弁11の開度を制御することで、混合燃料に混合する水の量を調整することが可能となっている。
分離タンク3は、その内部空間の上部側にガソリンを収容するとともに、下部側にエタノールと水との混合液(エタノール水溶液)を収容するタンクである。
ここで、本実施形態では、フィードポンプ7により分離タンク3に供給される混合液は、ガソリンとエタノールとの混合燃料に水を混合したものである。そして、この混合液のうちのエタノールはガソリンよりも親水性が高い。また、ガソリンの比重は、エタノールおよび水の比重よりも小さい。このため、分離タンク3に供給される混合液のうち、その供給過程で混じり合うエタノールと水とから成るエタノール水溶液と、ガソリンとが、分離タンク3内で自然に分離し、分離タンク3の内部空間の上部側と下部側とにそれぞれガソリン、エタノール水溶液が溜まることとなる。この場合、ガソリンとエタノール水溶液とは、エタノール水溶液の上端面を界面として互いに接した状態で分離タンク4内に収容される。これにより、分離タンク3内でのガソリンとエタノール水溶液との分離および収容がなされることとなる。そして、本実施形態では、分離タンク3の内部空間が、分離したガソリンおよびエタノール水溶液によって常時、満杯になるとともに、これらの液体が所定の圧力に加圧されるように、メインタンク2内の混合燃料と水との混合液がフィードポンプ7によって分離タンク3に供給される。
このように、ガソリンとエタノール水溶液とを分離させて収容する分離タンク3の内部空間のうち、ガソリンが溜まる上部側の空間は、分離タンク3の上部から導出されたガソリン供給路12を介して燃料噴射弁5に接続されている。これにより、分離タンク3内の加圧されたガソリンがガソリン供給路12を介して燃料噴射弁5に供給される。そして、燃料噴射弁5を開弁することにより、燃料噴射弁5から加圧されたガソリンが噴射され、内燃機関4の気筒に供給されるようになっている。
また、分離タンク3の内部空間のうち、エタノール水溶液が溜まる下部側の空間は、分離タンク3の下部から導出されたエタノール供給路13を介してエタノール用の燃料噴射弁6に接続されている。これにより、分離タンク3内の加圧されたエタノール水溶液がエタノール供給路13を介して燃料噴射弁6に供給される。そして、燃料噴射弁6を開弁することにより、燃料噴射弁6から加圧されたエタノール水溶液が噴射され、内燃機関4の気筒に供給されるようになっている。
本実施形態の燃料供給システム1は、上述した構成のほかに、メインタンク2内の混合燃料におけるエタノールの含有割合に応じた出力を発生する割合センサ14と、メインタンク2内の混合燃料の残量に応じた出力を発生するメイン燃料残量センサ15と、エタノール用の燃料噴射弁6に供給されるエタノール水溶液中のエタノール濃度を検出するエタノール濃度センサ16と、燃料噴射弁5,6や内燃機関4の点火装置(図示しない)などの動作制御を行う制御ユニット17(以下、ECU17という)とを備えている。
割合センサ14は、メインタンク2内に配置されており、例えば、メインタンク2内の混合燃料中のエタノールの含有割合(濃度)を検出する濃度センサにより構成される。割合センサ14は、メインタンク2内の混合燃料におけるエタノールの含有割合に応じた出力を発生する。以後、割合センサ14の出力により示される混合燃料中のエタノールの含有割合を混合燃料エタノール割合という。混合燃料エタノール割合は、パーセンテージで表すものとする。
なお、割合センサ14は、混合燃料中のガソリンの含有割合(濃度)を検出する濃度センサにより構成してもよい。この場合、割合センサ14の混合燃料中のガソリンの含有割合をGa_r[%]としたとき、エタノールの含有割合は100−Ga_r[%]となる。割合センサ14は、このようにして混合燃料エタノール割合を求めてもよい。
メイン燃料残量センサ15は、メインタンク2内に配置されており、メインタンク2内に収容されている混合燃料の量(混合燃料残量)を計測する。
エタノール濃度センサ16は、本実施形態では、エタノール供給路16に付設され、エタノール供給路16内を流通するエタノール水溶液中のエタノールの濃度に応じた出力を発生する。以降、エタノール濃度センサ16の出力が示すエタノールの濃度をエタノール水溶液濃度という。なお、エタノール濃度センサ16は、分離タンク3内の下部に配置するようにしてもよい。
ECU17は、図示しないCPU、RAM、ROMを含む電子回路ユニットであり、割合センサ14、メイン燃料残量センサ15、およびエタノール濃度センサ16の出力が入力されるとともに、図示しない各種のセンサから、内燃機関4の回転数(内燃機関4の出力軸の回転速度)などの運転状態を示す検出データが入力される。そして、ECU17は、これらの入力データや、あらかじめ記憶保持したマップデータなどを基に、所定の制御処理を実行することで、内燃機関4の各気筒毎の燃料噴射弁5,6や図示しない点火装置などの動作を制御する。
図2は、図1に示したECU17のより具体的な制御処理機能を示すブロック図である。図2において、ECU17は、燃料供給制御部170と、点火時期制御部181とを備えている。
燃料供給制御部170は、内燃機関4の各気筒の燃焼サイクル毎に、燃料噴射弁5によるガソリンの噴射量と燃料噴射弁6によるエタノール水溶液の噴射量とをそれぞれ規定する操作量(制御入力)としてのガソリン用燃料噴射時間およびエタノール用燃料噴射時間を決定する。燃料供給制御部170は、決定したガソリン用燃料噴射時間およびエタノール用燃料噴射時間に応じてそれぞれ燃料噴射弁5,6の動作を制御する。
点火時期制御部181は、内燃機関4の各気筒の燃焼サイクル毎に、内燃機関4の各気筒における点火時期を決定し、決定した点火時期に応じて図示しない点火装置を制御する。
なお、図示は省略するが、ECU17は、水供給路9の流量制御弁11を制御する制御部も有する。この制御部は、本実施形態では、分離タンク3内のエタノール水溶液のエタノールの濃度が一定の濃度に保たれるように、エタノール濃度センサ16の出力や割合センサ14の出力に応じて流量制御弁11の開度を制御する。
燃料供給制御部170は、残量算出部171、エタノール領域マップ172、エタノール残量判定部173、エタノール噴射比率(噴射割合)マップ群174、エタノール噴射比率設定部175、エタノール要求噴射量決定部176、ガソリン要求噴射量決定部177、演算部178、および流量・時間変換部179,180を備えている。
残量算出部171は、メイン燃料残量センサ15から入力される混合燃料残量と、割合センサ14から入力される混合燃料エタノール割合とに基づいて、メインタンク2内の混合燃料に含まれるエタノール残量を算出する。
なお、割合センサ14、メイン燃料残量センサ15、および残量算出部171で実現する機能が、本発明のアルコール計測ステップの機能に相当する。
エタノール領域マップ172は、メインタンク2内の混合燃料残量に対するエタノール残量の大きさの程度を複数の領域に区分して判定するためのマップであり、メインタンク2内の混合燃料残量に対するエタノール残量の程度が設定される。エタノール領域マップ172は、図示しない記憶部(たとえば、ECU17内のRAMやROMなど)に記憶される。
図3は、エタノール領域マップ172の一例を示す図である。図3に示したエタノール領域マップ172では、エタノール残量を縦軸とし、混合燃料残量を横軸として、混合燃料残量に対するエタノール残量の大きさの程度をあらかじめ定められたそれぞれの閾値によって領域a1〜a4,b1,c1〜c4の9つの領域に分けて設定している。より詳しくは、この例では、混合燃料残量に対するエタノール残量の比率に応じて、エタノールの残量の大きさの程度が、領域a1〜a4,b1,c1〜c4の9つの領域に区分けされる。この場合、各領域a1〜a4,b1,c1〜c4における混合燃料残量に対するエタノール残量の比率は、領域a1〜a4,b1,c1〜c4の順番で小さくなる。領域a1は、混合燃料残量に対して最もエタノール残量が多いと判定される領域を示しており、領域a2〜a4、領域b1、領域c1〜c3順に混合燃料に対するエタノール残量が少ないと判定される領域を示し、領域c4は混合燃料残量に対して最もエタノール残量が少ないと判定される領域を示している。従って、混合燃料残量に対するエタノール残量の比率が小さいほど、エタノールの残量が少ないと判定されることとなる。
また、図3においては、領域a1〜a4を混合燃料残量に対してエタノール残量が多いエタノール過剰領域とし、領域b1を混合燃料残量に対してエタノール残量が適量であるエタノール通常領域とし、領域c1〜c4を混合燃料残量に対してエタノール残量が少ないエタノール不足領域としている。
なお、図3においては、エタノール通常領域の領域b1と、エタノール不足領域の中で混合燃料残量に対してエタノール残量が最も多い領域を示す領域c1とを区分する閾値Th1が、本発明における多量側残量と少量側残量との間の閾値に相当する。従って、混合燃料残量に対するエタノール残量が、エタノール過剰領域(領域a1〜a4)の範囲内、またはエタノール通常領域(領域b1)の範囲内となるエタノール残量が多量側残量であり、混合燃料残量に対するエタノール残量が、エタノール不足領域(領域c1〜c4)の範囲内となるエタノール残量が少量側残量である。
図2に戻って、エタノール残量判定部173は、残量算出部171によって算出されたエタノール残量、メイン燃料残量センサ15から入力される混合燃料残量、およびエタノール領域マップ172に基づいて、混合燃料残量に対するエタノール残量がエタノール領域マップ172のどの領域の範囲内であるのかを求め、混合燃料残量に対するエタノール残量を判定する。
エタノール噴射比率マップ群174は、内燃機関4の要求負荷とエタノール噴射比率(内燃機関4の各気筒に供給する燃料全体に対するエタノールの供給割合)の関係をエタノール領域マップ172に示した領域a1〜a4,b1,c1〜c4毎に設定したエタノール噴射比率マップが少なくとも1つ登録される。エタノール噴射比率マップ群174は、図示しない記憶部(たとえば、ECU17内のRAMやROMなど)に記憶される。
図4〜図6は、エタノール噴射比率マップ群174に登録されるエタノール噴射比率マップの一例を示す図である。図4は、内燃機関4の回転数の検出値(以下、回転数NEという)が低回転状態のときのエタノール噴射比率マップであり、図5は、回転数NEが中回転状態のときのエタノール噴射比率マップを示しており、図6は、回転数が高回転状態のときのエタノール噴射比率マップを示している。すなわち、エタノール噴射比率マップ群174には、回転数NEに応じた3つのエタノール噴射比率マップが登録されている。
ここで、低回転状態とは、回転数NEがあらかじめ定められた閾値Th2以下の場合であり、中回転状態とは、回転数NEが閾値Th2より大きく、かつあらかじめ定められた閾値Th3以下の場合であり、高回転状態とは、回転数NEが閾値Th3より大きい場合である。なお、閾値Th2,Th3は、「閾値Th2<閾値Th3」が成り立つものとする。
図4〜図6に示したエタノール噴射比率マップでは、例えば、内燃機関4の各気筒の図示平均有効圧力(IMEP)の目標値である目標IMEPを要求負荷を示す指標値として用いている。目標IMEPは、たとえば、内燃機関4を推進力発生源として搭載した車両のアクセルの操縦量(踏み込み量)や車速などに応じて設定される。
なお、要求負荷を示す指標値としては、目標IMEPの代わりに、目標正味平均有効圧力、目標トルク等を使用してもよい。
エタノール噴射比率マップは、横軸を要求負荷とし、縦軸をエタノール噴射比率として、先の図3に示したエタノール領域マップ172の領域a1〜a4,b1,c1〜c4それぞれに対応した要求負荷に対するエタノール噴射比率R_alcが設定されている。ここでは、線d1〜d4がエタノール領域マップ172の領域a1〜a4に対応し、線e1がエタノール領域マップ172の領域b1に対応し、線f1〜f4がエタノール領域マップ172の領域c1〜c4に対応している。すなわち、線d1が、混合燃料残量に対するエタノール残量が最も多い場合の要求負荷に対するエタノール噴射比率R_alcの関係を示し、線d2、線d3、線d4、線e1、線f1、線f2、線f3の順に混合燃料残量に対するエタノール残量が少ない場合の要求負荷に対するエタノール噴射比率R_alcの関係を示しており、線d4が、混合燃料残量に対するエタノール残量が最も少ない場合の要求負荷に対するエタノール噴射比率R_alcの関係を示している。以下、要求負荷に対するエタノール噴射比率R_alcの関係を要求負荷噴射比率関係とよび、線d1〜d4,e1,f1〜f4を、要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,f1〜f4ということがある。
エタノール噴射比率マップの要求負荷噴射比率関係は、基本的には、下記の条件1〜5が成り立つように設定される。
(条件1)要求負荷が高いほど、エタノール噴射比率が大きくなる。
(条件2)要求負荷が全負荷FA(最大の要求負荷)である場合には、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量(図3における領域c1〜c4)である場合におけるエタノール噴射比率R_alcが、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量である場合(より詳しくは、本実施形態では、エタノール残量が多量側残量の領域a1〜a4,b1のうちの最も少量側残量に近いエタノール通常領域b1に存在する場合)におけるエタノール噴射比率R_alcと同等となる。
(条件3)混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量であって、かつ要求負荷が全負荷FAより低い場合には、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量おけるエタノール噴射比率R_alcよりも低くなる。
(条件4)混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量であって、要求負荷が全負荷FAより低い場合には、負荷要求が一定である場合のエタノール噴射比率R_alcが、混合燃料残量に対するエタノール残量が少ないほど小さくなる。
(条件5)混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量あって、かつ要求負荷が全負荷寄りの高負荷側領域である場合、要求負荷の増加に対するエタノール噴射比率R_alcの増加度合いが、要求負荷が高負荷側領域よりも低い低負荷側領域である場合の増加度合いよりも大きくなる。
図4〜図6に示した要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,f1〜f4では、あらかじめ設定された最大比率R_alc1を上限値として要求負荷が高いほどエタノール噴射比率R_alcが大きく設定されており、上記(条件1)を満たしている。なお、図4〜図6では、要求負荷噴射比率関係d1において、要求負荷の全域にわたってエタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alc1が設定されているように図示されているが、実際には、エタノール噴射比率R_alcは、最低の要求負荷の近傍で、最大比率R_alc1よりも小さい比率から急激に立ち上がるように設定されている。
図4に示した低回転状態のエタノール噴射比率マップでは、いずれの要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,f1〜f4でも、要求負荷が全負荷FAの場合、エタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alc1が設定されている。
図5に示した中回転状態のエタノール噴射比率マップでは、混合燃料残量に対するエタノール残量が領域a1に対応する要求負荷噴射比率関係d1では、要求負荷が全負荷FAの場合、エタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alc1が設定され、エタノール残量が領域b1に対応する要求負荷噴射比率関係e1では、要求負荷が全負荷FAの場合、エタノール噴射比率R_alcとして中回転状態で必要な必要エタノール噴射比率R_alc2(<最大比率R_alc1、詳細は後述する)が設定され、混合燃料残量に対するエタノール残量が領域a2〜a4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係d2〜d4では、エタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alc1と中回転状態での必要エタノール噴射比率R_alc2との間の値が設定されている。この場合、混合燃料残量に対するエタノール残量が多いほど全負荷FA時のエタノール噴射比率R_alcが大きくなるように設定されている。混合燃料残量に対するエタノール残量が領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜dfでは、エタノール噴射比率R_alcとして必要エタノール噴射比率R_alc2が設定されている。
また、図6に示した高回転状態のエタノール噴射比率マップは、図先の図5に示した中回転状態のエタノール噴射比率マップと同じ傾向のマップである。ただし、このマップでは、必要エタノール噴射比率R_alc2の代わりに、必要エタノール噴射比率R_alc3が用いられている。
ここで、最大比率R_alc1、必要エタノール噴射比率R_alc2,R_alc3は、それぞれ内燃機関4の回転数NEが低回転状態、中回転状態、高回転状態である場合において、要求負荷が全負荷FAである場合に、それぞれの回転状態に対応した所要の最大トルクを、内燃機関4のノッキングを発生させることなく高効率で発生させる(ノッキングを発生させずに、所謂MBTでの運転を行う)上で必要十分な(概ね必要最低限の)エタノール噴射比率(これを、例えば、全負荷最適エタノール噴射比率と称する)に設定された値である。したがって、低回転状態の全負荷最適エタノール噴射比率は最大比率R_alc1であり、中回転状態の全負荷最適エタノール噴射比率は必要エタノール噴射比率R_alc2であり、高回転状態の全負荷最適エタノール噴射比率は必要エタノール噴射比率R_alc3である。
また、内燃機関4の回転数NEが低いほどノッキングが発生しやすいので、最大比率R_alc1、必要エタノール噴射比率R_alc2,R_alc3は、「最大比率R_alc1>必要エタノール噴射比率R_alc2>必要エタノール噴射比率R_alc3」が成り立つように設定される。
なお、図5および図6では、エタノール残量過剰領域a1〜a4に対応する要求負荷噴射比率関係d1〜d4のエタノール噴射比率R_alcの最大値を全負荷最適エタノール噴射比率より大きく設定しているが、最大値を回転状態に対応する全負荷最適エタノール噴射比率(図5では必要エタノール噴射比率R_alc2であり、図6では必要エタノール噴射比率R_alc3)としてもよい。
上述したように、図4に示した低回転状態のエタノール噴射比率マップでは、いずれの要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,f1〜f4でも、要求負荷が全負荷FAの場合、エタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alc1が設定されている。
また、図5に示した中回転状態のエタノール噴射比率マップでは、要求負荷が全負荷FAの場合に、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4のエタノール噴射比率R_alcは、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量となる領域a1〜a4,b1の範囲内の中で最も混合燃料残量に対するエタノール残量が少ない領域b1の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係e1のエタノール噴射比率R_alcと等しい必要エタノール噴射比率R_alc2に設定されている。
また、上述したように、図6に示した高回転状態のエタノール噴射比率マップでは、要求負荷が全負荷FAの場合に、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4のエタノール噴射比率R_alcは、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量となる領域a1〜a4,b1の範囲内の中で最も混合燃料残量に対するエタノール残量が少ない領域b1の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係e1のエタノール噴射比率R_alcと等しい必要エタノール噴射比率R_alc3に設定されている。
すなわち、図4〜図6に示した低回転状態、中回転状態、および高回転状態のエタノール噴射比率マップでは、要求負荷が全負荷FAの場合に、混合燃料残量に対するエタノール残量側残量である領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4のエタノール噴射比率R_alcは、回転状態に対応する全負荷最適エタノール噴射比率と同じ値に設定されているので、上記(条件2)を満たしている。
図4〜図6に示したエタノール噴射比率マップでは、混合燃料残量に対するエタノール残量が領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4には、要求負荷が全負荷FAより低い場合、エタノール噴射比率R_alcとして、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量となる領域a1〜a4,b1の範囲内の中で最もエタノール残量が少ない領域b1の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係e1のエタノール噴射比率R_alcよりも低い値で、かつ混合燃料残量に対するエタノール残量が少なくなるほど(この場合は要求負荷噴射比率関係f1、要求負荷噴射比率関係f2、要求負荷噴射比率関係f3、要求負荷噴射比率関係f4の順に)低い値を設定している。よって、上記(条件3)を満たしている。
また、図4〜図6に示したエタノール噴射比率マップでは、混合燃料残量に対するエタノール残量が領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4では、要求負荷が一定の値の場合のエタノール噴射比率R_alc1は、たとえば、要求負荷が要求負荷F10の場合のエタノール噴射比率R_alcに見られるごとく、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である領域c1〜c4の範囲内の中で混合燃料残量に対するエタノール残量が小さくなる領域c1、領域c2、領域c3、領域c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1、要求負荷噴射比率関係f2、要求負荷噴射比率関係f3、要求負荷噴射比率関係f4の順に小さくなるように設定されている。よって、上記(条件4)を満たしている。
さらに、図4〜図6に示したエタノール噴射比率マップでは、混合燃料残量に対するエタノール残量が領域c1〜c4の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係f1〜f4には、要求負荷があらかじめ定められた閾値F6〜F9と全負荷FAとの間の値(高負荷側領域の範囲内の値)である場合の要求負荷の増加に対するエタノール噴射比率R_alcの増加度合いを、要求負荷が閾値F6〜F9以下の値(低負荷側領域の範囲内の値)である場合の要求負荷の増加に対するエタノール噴射比率R_alcの増加度合いよりも大きくなるように設定されている。よって、上記(条件5)を満たしている。なお、閾値F6〜F9は、F6<F7<F8<F9が成り立つものとする。すなわち、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量の中で混合燃料残量に対するエタノール残量が少ないほど(この場合は、領域c4、領域c3、領域c2、領域c1の順)エタノール噴射比率R_alcの増加割合が小さいものとなる低負荷側領域が全負荷FA寄りに近づいて、その領域が拡大する。換言すれば、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量の中で混合燃料残量に対するエタノール残量が少ないほど、要求負荷が高負荷側領域の範囲内の場合の要求負荷の増加に対するエタノール噴射比率R_alcの増加度合いよりも要求負荷の増加に対するエタノール噴射比率R_alcの増加度合いが小さい低負荷側領域が全負荷FA寄りに拡大する。
さらにまた、図4〜図6に示したエタノール噴射比率マップでは、混合燃料残量に対するエタノール残量が最も多い領域a1の範囲内に対応する要求負荷噴射比率関係d1では、要求負荷が全負荷FAより低い場合、エタノール噴射比率R_alcとして最大比率R_alcが設定されるとともに、混合燃料残量に対するエタノール残量が少なくなるほど(この場合は要求負荷噴射比率関係d2、要求負荷噴射比率関係d3、要求負荷噴射比率関係d4、要求負荷噴射比率関係e1の順)エタノール噴射比率R_alcが低い値に設定されている。
図2に戻って、エタノール噴射比率設定部175は、エタノール残量判定部173の判定結果、目標IMEP、回転数NE、およびエタノール噴射比率マップ群174に基づいて、エタノール噴射比率を設定する。なお、エタノール噴射比率設定部175が実現する機能が、本発明の燃料噴射割合設定ステップの機能に相当する。
エタノール要求噴射量決定部176は、エタノール噴射比率設定部175によって設定されたエタノール噴射比率、目標IMEP、回転数NE、およびあらかじめ定められたマップ(図示省略)に基づいて、エタノールの要求噴射量を決定する。
演算部178は、エタノール濃度センサ16の出力であるエタノール水溶液濃度に基づいて、エタノール要求噴射量決定部176によって決定されたエタノール要求噴射量をエタノール水溶液要求噴射量に変換する。
流量・時間変換部180は、あらかじめ定められたデータテーブルまたは所定の演算式に基づいて、演算部178によって変換されたエタノール水溶液要求噴射量をエタノール用燃料噴射時間に変換する。
ガソリン要求噴射量決定部177は、エタノール要求噴射量決定部176によって決定されたエタノール要求噴射量と後述のエタノール要求総量とに基づいて、燃料噴射弁5によるガソリンの要求噴射量を決定する。
流量・時間変換部179は、あらかじめ定められたデータテーブルまたは所定の演算式に基づいて、ガソリン要求噴射量決定部177によって決定されたガソリン要求噴射量をガソリン用燃料噴射時間に変換する。
つぎに、図2〜図6を用いて、ECU17の動作を説明する。本発明にかかわるECU17の動作は、燃料供給制御部170によって行われる燃料噴射弁5,6を制御して内燃機関4に供給するガソリンとエタノール水溶液の量を制御する燃料供給制御処理と、点火時期制御部181によって行われる点火時期を制御する点火時期制御処理とがある。まず、燃料供給制御部170によって行われる燃料供給制御処理の動作を説明する。
残量算出部171は、メイン燃料残量センサ15から入力される混合燃料残量と、割合センサ14から入力される混合燃料エタノール割合とに基づいて、メインタンク2内の混合燃料に含まれるエタノール残量を算出する。具体的には、混合燃料残量に混合燃料エタノール割合を乗算して100で除算してエタノール残量を算出する。残量算出部171は、算出したエタノール残量をエタノール残量判定部173に出力する。
エタノール残量判定部173は、エタノール残量判定部173から入力されるエタノール残量、メイン燃料残量センサ15から入力される混合燃料残量、およびエタノール領域マップ172に基づいて、メインタンク2内の混合燃料残量に対するエタノール残量がエタノール領域マップ172のどの領域の範囲内であるのかを判定する。エタノール残量判定部173は、判定結果を領域情報(図3に示したエタノール領域マップ172の領域a1〜a4、領域b1、領域c1〜c4のいずれかを示す情報)をエタノール噴射比率設定部175と点火時期制御部181に出力する。
エタノール噴射比率設定部175は、領域情報、目標IMEP、回転数NE、およびエタノール噴射比率マップ群174に基づいて、エタノール噴射比率を設定する。具体的には、まず、エタノール噴射比率設定部175は、回転数NEから回転状態を判定し、判定した回転状態に対応するエタノール噴射比率マップをエタノール噴射比率マップ群174から選択する。より具体的には、エタノール噴射比率設定部175は、回転数NEと閾値Th2,Th3とを比較して、回転数NEが閾値Th2以下の場合には低回転状態に対応するエタノール噴射比率マップを選択し、回転数NEが閾値Th2より大きく、かつあらかじめ定められた閾値Th3以下の場合には中回転状態に対応するエタノール噴射比率マップを選択し、回転数NEが閾値T3より大きい場合には高回転状態に対応するエタノール噴射比率マップを選択する。
エタノール噴射比率設定部175は、選択したエタノール噴射比率マップの要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,c1〜c4の中から、領域情報が示す領域a1〜a4,b1,c1〜c4に対応する要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,c1〜c4を選択する。エタノール噴射比率設定部175は、選択した要求負荷噴射比率関係d1〜d4,e1,c1〜c4から目標IMEPに対応するエタノール噴射比率R_alcを求め、求めた値をエタノール噴射比率設定値とする。
エタノール噴射比率設定部175は、エタノール噴射比率設定値をエタノール要求噴射量決定部176と点火時期制御部181とに出力する。また、エタノール噴射比率設定部175は、回転数NEによって選択したエタノール噴射比率マップの情報(低回転状態、中回転状態、高回転状態の何れかを示す情報。以下、回転状態情報という)を点火時期制御部181に出力する。
エタノール要求噴射量決定部176は、エタノール噴射比率設定部175から入力されたエタノール要求噴射率設定値、目標IMEP、回転数NE、およびあらかじめ定められたマップ(図示省略)に基づいて、エタノールの要求噴射量を決定する。
具体的には、エタノール要求噴射量決定部176は、回転数NEおよび目標IMEPから、あらかじめ定められたマップ(図示省略)により、目標IMEPを実現するために内燃機関4に供給すべき燃料全体の総発熱量を要求総発熱量として求める。エタノール要求噴射量決定部176は、求めた要求総発熱量をエタノールの低位発熱量で除算して、求めた要求総発熱量を発生するために必要なエタノールの量であるエタノール要求総量を求める。エタノール要求噴射量決定部26は、求めたエタノール要求総量にエタノール噴射比率を乗算してエタノール要求噴射量を算出する。エタノール要求噴射量決定部176は、エタノール要求総量をエタノール要求噴射量決定部176に出力し、エタノール要求噴射量をガソリン要求噴射量決定部177と演算部178とに出力する。
ガソリン要求噴射量決定部177は、入力されたエタノール要求噴射量とエタノール要求総量とを用いてガソリン要求噴射量を算出する。ガソリン要求噴射量Ga_injは、エタノール要求噴射量をEt_injとし、エタノール要求総量をInj_allとすると、下記の式(1)によって求めることができる。
Ga_inj=((Inj_all−Et_inj)×エタノールの低位発熱量)/ガソリンの低位発熱量
……式(1)
上記の式(1)の分子は、エタノール要求総量に相当する要求総発熱量から、エタノール要求噴射量に相当する発熱量を差し引いた残余の発熱量を意味している。したがって、その残余の発熱量を発生するために必要なガソリンの量が、ガソリン要求噴射量として算出される。ガソリン要求噴射量決定部177は、求めたガソリン要求噴射量を流量・時間変換部179に出力する。
演算部178は、エタノール濃度センサ16から入力されるエタノール水溶液濃度の検出値と、エタノール要求噴射量決定部176から入力されるエタノール要求噴射量とを用いて、エタノール水溶液要求噴射量を算出する。具体的には、演算部178は、エタノール要求噴射量をエタノール水溶液濃度で除算することによって、エタノール水溶液要求噴射量を求める。演算部178は、算出したエタノール水溶液要求噴射量を流量・時間変換部180に出力する。
なお、ガソリン要求噴射量は、次のようにして決定してもよい。すなわち、前記要求総発熱量を発生するために必要なガソリンの量としてのガソリン要求総量を求め(要求総発熱量をガソリンの低位発熱量で除算する)、そのガソリン要求総量に、エタノール噴射比率設定値に対応するガソリンの供給割合(=100−エタノール噴射比率設定値[%])を乗じることによって、ガソリン要求噴射量を決定する。この場合には、ガソリン要求噴射量をエタノール要求噴射量よりも先に決定するようにしてもよい。
以上のようにして、ガソリン要求噴射量とエタノール水溶液要求噴射量とを算出した後、燃料噴射制御部21は、前記流量・時間変換部29,30の処理を実行する。
流量・時間変換部179は、ガソリン要求噴射量決定部177から入力されたガソリン要求噴射量から、あらかじめ定められたデータテーブルまたは所定の演算式に基づいて、ガソリン用燃料噴射時間を求める。
一方、流量・時間変換部180は、演算部178から入力されたエタノール水溶液要求噴射量から、あらかじめ定められたデータテーブルまたは所定の演算式に基づいて、エタノール用燃料噴射時間を求める。
燃料噴射制御部21は、流量・時間変換部179,180が求めたガソリン用燃料噴射時間およびエタノール用燃料噴射時間に応じて、それぞれ燃料噴射弁5,6の動作を制御する。すなわち、燃料噴射弁5の開弁時間をガソリン用燃料噴射時間に制御すると共に、燃料噴射弁6の開弁時間をエタノール用燃料噴射時間に制御する。なお、この場合、各燃料噴射弁5,6の開弁開始タイミングは、内燃機関4の回転数NEや目標IMEPなどの運転状態に応じて決定される。
以上説明した燃料噴射制御部21の燃料供給制御処理によって、エタノール噴射比率により規定される供給割合で、エタノールおよびガソリンの燃料噴射が各燃料噴射弁5,6から行われることとなる。
つぎに、点火時期制御部181によって行われる点火時期制御処理の動作を説明する。まず、点火時期制御部181は、回転数NEと、目標IMEPとに基づいて基本点火時期を決定する。たとえば、点火時期制御部181は、回転数NEと、目標IMEPと、基本点火時期との関係を規定するマップを用いて基本点火時期を決定する。
点火時期制御部181は、エタノール残量判定部173から入力される領域情報に基づいて、決定した基本点火時期を遅角させるか否かを判定する。具体的には、点火時期制御部181は、領域情報が混合燃料残量に対するエタノール残量が図3に示したエタノール領域マップ172の領域a1〜a4,b1(混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量)を示す場合には、基本点火時期を遅角させないと判定し、領域情報が混合燃料残量に対するエタノール残量が図3に示したエタノール領域マップ172の領域c1〜c4(混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量)を示す場合には、基本点火時期を遅角させると判定する。
基本点火時期を遅角させないと判定した場合には、点火時期制御部181は、基本点火時期の値を点火時期として決定する。
基本点火時期を遅角させると判定した場合には、点火時期制御部181は、エタノール噴射比率設定部175から入力されたエタノール噴射比率設定値と、目標IMEPと回転数NEとがエタノール噴射比率設定値を設定したときと同じ値の場合におけるエタノール通常領域b1のエタノール噴射比率との差に応じて、基本点火時期を遅角する。
具体的には、点火時期制御部181は、エタノール噴射比率設定部175から入力される回転状態情報に基づいて、エタノール噴射比率マップ群174に登録されたエタノール噴射比率マップを選択する。点火時期制御部181は、選択したエタノール噴射比率マップのエタノール通常領域b1に対応する要求負荷噴射比率関係e1から目標IMEPに対応するエタノール噴射比率R_alcを求める。点火時期制御部181は、求めたエタノール噴射比率R_alcとエタノール噴射比率設定部175から入力されたエタノール噴射比率設定値との差を求める。点火時期制御部181は、求めたエタノール噴射比率R_alcとエタノール噴射比率設定部175から入力されたエタノール噴射比率設定値との差に応じて基準点火時期を遅角する。
点火時期制御部181は、このように決定した点火時期に応じて内燃機関4の各気筒毎に図示しない点火装置の放電タイミングを制御する。
上述した燃料供給制御部170が実行する燃料供給制御処理では、要求負荷が全負荷FAより低い場合には、エタノール残量が少なくなるほどエタノール噴射比率を低く設定して、内燃機関4に供給するエタノール水溶液の量を少なくするように制御した。そのため、ノッキングが発生しやすくなる。このノッキングを抑制するために、点火時期制御部181が実行する点火時期制御処理において、エタノール残量が少なくなったためにエタノール水溶液の量を少なくした場合に点火時期を基本点火時期よりも遅角させるようにしている。
なお、点火時期を基本点火時期よりも遅角させる代わりに、エタノール残量が少なくなった場合に回転数を高く制御する、各気筒の実行圧縮率比を低下させるように制御する、EGR比率を高くするように制御するなどの制御するようにしてもよい。
このように、この実施形態では、割合センサ14がメインタンク2に収容された混合燃料のエタノールの含有割合を検出し、メイン燃料残量センサ15がメインタンク2に収容された混合燃料の残量を検出し、残量算出部171が、割合センサ14が検出した混合燃料の含有割合と、メイン燃料残量センサ15が検出した混合燃料残量から混合燃料残量内のエタノール残量を求める。エタノール残量判定部173は、残量算出部171によって求められたエタノール残量と、メインタンク2内の混合燃料残量に対するエタノール残量の関係を設定したエタノール領域マップ172とに基づいて、混合燃料残量に対するエタノール残量がどの領域a1〜a4,b1,c1〜c4の範囲内であるのかを判定し、判定結果と、目標IMEPと、回転数NEと、エタノール噴射比率マップ群174に登録された、エタノール領域マップ172に示した領域a1〜a4,b1,c1〜c4に対応する内燃機関4の要求負荷とエタノール噴射比率R_alcの関係を示したエタノール噴射比率マップとに基づいて、回転数NEと目標IMEPとに応じたエタノール噴射比率を設定する。
エタノール噴射比率マップには、基本的には上記(条件1)〜(条件5)を満たすように目標IMEPと混合燃料残量に対するエタノール残量に応じたエタノール噴射比率との関係が設定されている。よって、エタノール噴射比率設定部175は、内燃機関4の要求負荷が全負荷FAである場合には、混合燃料残量に対するエタノール残量が閾値Th1よりも少ない少量側残量である場合におけるエタノールの噴射割合が混合燃料残量に対するエタノール残量が閾値Th1以上の多量側残量である場合におけるエタノール噴射割合と同等になり、かつ、要求負荷が全負荷FAよりも低い負荷領域である場合に、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である場合におけるエタノールの噴射割合が、混合燃料残量に対するエタノール残量が多量側残量である場合におけるエタノールの噴射割合よりも低くなるように、エタノールの噴射割合を設定する。
これにより、混合燃料残量に対してエタノール残量が少なくなった場合でも、要求負荷が全負荷FAの場合の内燃機関4の出力トルクを最大トルク、もしくはそれに近いトルクに維持することが可能となり、混合燃料残量に対してエタノール残量が少なくなった場合でも内燃機関の出力トルクの低下を抑制することができる。
また、エタノール噴射比率設定部175は、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である場合において、要求負荷が全負荷FAよりも低い負荷領域である場合には、要求負荷が一定である場合のエタノールの噴射割合が、混合燃料残量に対するエタノール残量が少ないほど小さくなるように、混合燃料残量に対するエタノール残量に応じてエタノールの噴射割合を設定する。
これにより、混合燃料残量に対するエタノール残量が少なくなるほどエタノールの消費量を少なくして混合燃料に対するエタノール残量の低下を抑制し、要求負荷が全負荷のときのエタノールの噴射量を維持することが可能となり、混合燃料残量に対するエタノール残量が少なくなった場合でも、内燃機関の出力トルクの低下を抑制することができる。
また、エタノール噴射比率設定部175は、混合燃料残量に対するエタノール残量が少量側残量である場合において、要求負荷が全負荷FA寄りの高負荷側領域である場合における、要求負荷の増加に対するエタノールの噴射割合の増加度合いが、要求負荷が高負荷側領域よりも低い低負荷側領域である場合の増加度合いよりも大きくなるようにエタノールの噴射割合を設定する。
これにより、混合燃料残量に対するエタノール残量が閾値Th1より少ない場合のエタノールの消費量を少なくして混合燃料残量に対するエタノール残量の低下を抑制し、要求負荷が全負荷FAに近づくほど必要量に近いエタノール量を内燃機関4に供給することが可能となり、エタノール残量が閾値Th1より少なくなった場合でも、内燃機関4の出力トルクの低下を抑制することができる。
なお、この実施形態では、アルコールとしてエタノールを用いた場合を例に挙げて説明したが、エタノール以外のアルコール(たとえば、メタノールなど)であってもよい。