本発明の第1の発明に係るヒートパイプは、電子機器の筐体の内部に格納され、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、ヒートパイプは、冷媒を封入可能な平板状の本体部と、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する延長板を備え、本体部は、平板状の上部板と、上部板と対向する平板状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路との少なくとも一部を形成する単数又は複数の中間板を有し、延長板は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成され、延長板は、Rを有する屈折部で折り曲げられて形成される第1放熱面および第2放熱面を有し、第1放熱面および第2放熱面の面における少なくとも一部が、電子機器の筐体の内面の少なくとも一部に、面的に接触することで、熱的に接触可能であり、本体部が拡散する熱が第1放熱面および第2放熱面に伝導され、第1放熱面および第2放熱面に面状に移動する熱が、筐体の内面に面的に伝導される。
この構成により、本体部と延長板との間での熱抵抗が小さくなり、本体部は、冷媒の気化によって拡散した熱を、高い効率で延長板に伝導できる。さらに延長板は、放熱面を有しているので、放熱面から筐体へ高い効率で熱を伝導できる。結果として、冷却ファンや液冷ジャケットなどを必要とせず、本体部が発熱体から奪った熱を、外部環境に放散できる。このため、ヒートパイプは、狭小空間においても発熱体を効率的に放散・冷却できる。
本発明の第2の発明に係るヒートパイプでは、第1の発明に加えて、延長板は、第2屈折部で折り曲げられて形成される第3放熱面を更に有し、第1放熱面、第2放熱面および第3放熱面の少なくとも一部が、電子機器の筐体に熱的に接触可能である。
この構成により、ヒートパイプは、本体部から延長板に伝導した熱を、更に効率的に筐体および外部環境に放散できる。
本発明の第3の発明に係るヒートパイプでは、第2の発明に加えて、第2放熱面は、筐体の側面に熱的に接触し、第3放熱面は、筐体の上面に熱的に接触する。
この構成により、放熱面が、筐体の内部構造に最適に形成される。結果として、筐体の内部構造を最大限に活用して、ヒートパイプは熱を放散できる。
本発明の第4の発明に係るヒートパイプでは、第2から第3のいずれかの発明に加えて、第3放熱面は、本体部に対して外向きもしくは内向きのいずれかに折り曲げられる。
この構成により、放熱面は、筐体の内部構造と冷却度合いとのバランスをとることができる。
本発明の第5の発明に係るヒートパイプでは、第2から第4のいずれかの発明に加えて、第1放熱面、第2放熱面および第3放熱面は、全体として略S字状を有する。
この構成により、放熱面は、高い耐たわみ性を有する。結果として、ヒートパイプの耐久性が高まる。
本発明の第6の発明に係るヒートパイプでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、本体部の同一側面から、延長板が複数枚突出する。
この構成により、ヒートパイプは、その冷却能力を更に高める。
本発明の第7の発明に係るヒートパイプでは、第6の発明に加えて、複数の延長板の一つが有する第1放熱面、第2放熱面および第3放熱面の少なくとも一つは、複数の延長板の他が有する第1放熱面、第2放熱面および第3放熱面の少なくとも一つと異なる折り曲げ形状を有する。
この構成により、放熱面は、筐体の構造に合わせて形成される。特に、放熱面は、筐体との接触面積を広くとることができる。
本発明の第8の発明に係るヒートパイプでは、複数の延長板のそれぞれは、側面での突出部分においては相互に離隔し、先端においては相互に接する。
この構成により、本体部から延長板への伝熱経路は複線化でき、放熱面から筐体への伝熱は集約できる。結果として、放熱面は、高い効率で本体部からの熱を筐体に伝導できる。
本発明の第9の発明に係るヒートパイプでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、本体部は複数の側面を有し、複数の側面の内、蒸気拡散路の拡散方向につながる側面から突出する延長板の面積が、他の側面より突出する延長板の面積よりも大きい。
この構成により、本体部の熱拡散の方向に合わせて、放熱面は熱を放散できる。
本発明の第10の発明に係るヒートパイプでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、複数の側面の内、発熱体が設置される位置に最も近い側面から突出する延長板の面積が、他の側面より突出する延長板の面積よりも大きい。
この構成により、発熱体と本体部との位置関係に合わせて、放熱面は、効率よく熱を放散できる。
本発明の第11の発明に係るヒートパイプでは、第2から第10のいずれかの発明に加えて、第2屈折部は、Rを有する。
この構成により、放熱面は、高い耐たわみ性を有する。
本発明の第12の発明に係るヒートパイプでは、第1から第11のいずれかの発明に加えて、延長板が側面から突出する突出部位において、補強部を更に備える。
本発明の第13の発明に係るヒートパイプでは、第12の発明に加えて、補強部は、突出部位において延長板の根元を覆うモールド、突出部位において延長板に貼り付けられた補強板および延長板の突出部位での厚みが他の部位での厚みよりも厚い肉厚部の少なくとも一つを有する。
これらの構成により、延長板と本体部との間での損傷を低減できる。
本発明の第14の発明に係るヒートパイプでは、第1から第13のいずれかの発明に加えて、本体部の表面および裏面のそれぞれの少なくとも一部が、断熱されている。
この構成により、本体部は、発熱体から奪い取った熱の大半を放熱面に伝導できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。ヒートパイプには「パイプ」なる単語が含まれているが、いわゆる部材としてのパイプを必須要件とするのではなく、冷媒の気化・凝縮で発熱体を冷却できるデバイス全般の呼称より、本明細書において「ヒートパイプ」との用語が使用される。
(実施の形態1)
(ヒートパイプの概念説明)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
このような冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
ヒートパイプには、筒状の形状を有して垂直方向に気化した冷媒を拡散させると共に垂直方向に凝縮した冷媒を還流させる構造を有するものや、発熱体と接する受熱部と冷媒を冷却する冷却部とが別体であってパイプで接続される構造を有するものなどがある。
これらの構造を有するヒートパイプは、その体積が大きく(特に垂直方向に体積が大きくなりやすい)、実装する空間が狭小である場合には不適である。このため、平板状で薄型のヒートパイプが望まれることも多い。
しかし、平板状で薄型のヒートパイプは、冷媒の移動空間に限りがあり、ヒートパイプ内部での、気化した冷媒の拡散および凝縮した冷媒の還流が効率的でない。効率的でないとは、ヒートパイプの一部のみにおいて、気化した冷媒の拡散や凝縮した冷媒の還流が行われる状態である。平板状のヒートパイプは、狭小空間しか有さない電子機器への実装では優位であるが、冷却性能が不十分となりやすい。
しかしながら、本発明のヒートパイプは、筐体への放熱の前段階となる、発熱体から受熱した熱の拡散において高い性能を有する。このような熱拡散で高い性能を有するヒートパイプ本体によって、本発明のヒートパイプは、狭小空間において二次冷却部材を要さずに、発熱体を冷却できる。
(熱拡散性能の高いヒートパイプ)
まず、熱拡散性能の高いヒートパイプの基礎となる本体部について説明する。本体部は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する蒸気拡散路(もちろん、蒸気拡散路の形状によって、気化した冷媒は平面方向および厚み方向の両方に向かって三次元的に拡散する)と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路とを備え、封入した冷媒の気化および凝縮により、発熱体を冷却する。ここでは、図1〜図3を用いて、本体部を説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における本体部の内部写真である。
本体部2は、金属製の部材であり、平板状を有している。本体部2の外部は、平板状の金属部材で形成される。図1から明らかな通り、本体部2は、内部に蒸気拡散路3と毛細管流路4を備える。図1の写真を模式化した図面が、図2である。図2は、本発明の実施の形態1における本体部の内部模式図である。
図1、2より明らかな通り、本体部2は、平板状であって薄型である。このように平板状で薄型の本体部2を有するヒートパイプは、狭小空間しか有さない電子機器の筐体内部に、容易に実装できる。このような平板状で薄型の本体部2は、図3に示されるように、上部板、下部板、中間板の積層によって形成できる。図3は、本発明の実施の形態1における本体部の分解側面図である。図3は、本体部2を側面から分解した状態を示している。
図2、図3を用いて、本体部2の内部について説明する。
本体部2は、平板状の上部板10、上部板10と対向する平板状の下部板11、上部板10と下部板11との間に積層される単数または複数の中間板12を有している。これらの上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで、冷媒を封入できる内部空間を有する本体部2が形成される。図3に示されるように、上部板10、下部板11、中間板12(図3では複数の中間板12が示されているが、単数でもかまわない)が積層されて、本体部2が形成される。
ここで、中間板12は、切り欠き部13と内部貫通孔14を有する。切り欠き部13は、中間板12の切り取られている一部を指し(製造において、中間板12から切り取られるだけでなく、予め切り取られたような形状で製造されることも含む)、切り欠き部13は、上述の蒸気拡散路3を形成する。このため、蒸気拡散路3の大体の形状は、切り欠き部13によって定まる。中間板12は、切り欠き部13以外の部分に、複数の内部貫通孔14を有し、この内部貫通孔14が、毛細管流路4を形成する。
また、上部板10および下部板11の少なくとも一方は、蒸気拡散路3および毛細管流路4の少なくとも一方と連通する凹部15を有している。この凹部15により、凝縮した冷媒が、毛細管流路14へ還流しやすくなる。
ここで、上部板10、下部板11、中間板12は、それぞれが非常に薄い板部材であり、中間板12が、平面方向および厚み方向の少なくとも一方(当然ながら、平面方向と厚み方向の両方でもよい)に気化冷媒が拡散しやすい切り欠き部13と、垂直方向もしくは垂直・平面方向に凝縮冷媒を還流させやすい内部貫通孔14を有することで、薄型でありながら、平面方向への熱拡散(および冷却による繰り返しの熱拡散)を容易にできる。
図1、2より明らかな通り、蒸気拡散路3は、本体部2の内部を中央から外縁に向けて放射状に形成される。蒸気拡散路3が放射状に形成されることで、ヒートパイプは、本体部2の中央付近に配置された発熱体の熱を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散できる(気化した冷媒が、平面方向および厚み方向の少なくとも一方に容易に拡散するからである)。加えて、蒸気拡散路3と並ぶようにして毛細管流路4が設けられることで、薄型で平板状の本体部であっても、凝縮した冷媒が垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流しやすくなる。すなわち、図1,2に示される本体部を有するヒートパイプであれば薄型であっても、本体部2の全体を効率的に利用して、発熱体からの熱を容易に拡散できる。
このように、平面方向の熱拡散性能にすぐれた本体部2を有することで、本発明のヒートパイプは、二次冷却に必要な部材(冷却ファンや液冷ジャケット)を要さず、狭小空間しか有さない電子機器の筐体内部に実装されて、発熱体を冷却できる。
(全体概要)
次に、実施の形態1におけるヒートパイプの全体概要について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図である。図4は、ヒートパイプ1の全体構成を示している。
ヒートパイプ1は、電子機器の内部に格納されて、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。発熱体とは、電子機器に実装される、電子部品、電子素子、電子回路、回路基板、実装基板、ICやLSIなどの半導体集積回路である。
ヒートパイプ1は、本体部2と延長板20を備える。本体部2は、上述の通りであるが、冷媒を封入して発熱体から熱を奪い、気化した冷媒が拡散する蒸気拡散路3(図1に示される)と凝縮した冷媒が還流する毛細管流路4(図1に示される)を有する。本体部2は、発熱体からの熱を奪って拡散し、気化した冷媒が冷却されることで、再び発熱体からの熱を奪いつつ、発熱体を冷却する(発熱体の発熱を抑える)。
本体部2は、薄型で平板状を有している。ここで、平板状とは、一見して平板状であればよく、製造や流通において生じる凹み、凸部、傷などを排除する意味ではない。また、使用者が使用において湾曲させたり折り曲げて使用することを排除したりするものでもない。これは、上部板10、下部板11、中間板12においても同様である。また、図4では、本体部2は、四辺形を有しているが、円形、楕円形、多角形など、種々の形状を有していてかまわない。本体部2は、平板状の上部板10、上部板10に対向する平板状の下部板11および上部板10と下部板11との間に積層される単数または複数の中間板12を備える。上部板10、下部板11および中間板12とは、積層されて相互に接合されることで、冷媒を封入できる内部空間を有する本体部2を形成する。中間板12は、蒸気拡散路3と毛細管流路4を形成する。
ヒートパイプ1は、本体部2に加えて、本体部2の側面の一部もしくは全部から突出する延長板20を更に備える。延長板20は、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが、他の板材よりもその面積が大きいことで形成される。すなわち、延長板20は、本体部2の側面に取り付けられるのではなく、本体部2を積層して形成する板材の一部であるので、本体部2と延長板20との間の接続部分がない。このため、本体部2と延長板20との間の熱抵抗が大きくなることがない。図4では、中間板12が上部板10や下部板11よりもその面積が大きいことで突出し、中間板12の突出した部分が、延長板20を形成している。図4では、延長板20は、方形を有する本体部2の4つの側面の全てから突出しているが、4つの側面のうち、いずれか1つ、2つあるいは3つの側面から、延長板20が突出していてもよい。
延長板20は、屈折部21で折り曲げられて、第1放熱面22および第2放熱面23を有する。屈折部21は、図4に示されるように角度を有して折り曲げられてもよく、湾曲的に折り曲げられてもよい。延長板20が、屈折部21で折り曲げられることで、全体として体積を有さずに、第1放熱面22と第2放熱面23を有することができる。以上が、実施の形態1におけるヒートパイプ1の一例の構成概要である。
(ヒートパイプ1の動作概要)
次に、ヒートパイプ1の動作について説明する。
本体部2は、発熱体からの奪った熱を、気化した冷媒の平面的な拡散により第1放熱面22および第2放熱面23に伝導する。このとき、第1放熱面22および第2放熱面23は、本体部2を形成する上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つと一体で形成されるので、本体部2から第1放熱面22への熱抵抗は小さい。このため、本体部2は、効率よく第1放熱面22および第2放熱面23に熱を伝導する。
ヒートパイプ1が電子機器の筐体内部に実装されると、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一方が、筐体に熱的に接触可能である。第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一方は、筐体と接している部分から熱を筐体に伝導する。筐体は、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一方から受け取った熱を、外部に放熱する。この結果、冷却ファンや液冷ジャケットなどを要さずに、ヒートパイプ1は、発熱体から奪った熱を放散でき、発熱体を冷却できる。特に、筐体は金属で形成されていることが多く、第1放熱面22および第2放熱面23からの熱が伝導しやすい。更には、筐体に伝導した熱は、筐体外部に放熱されやすい。このため、延長板20に形成される第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一方が筐体に接することで、冷却ファンや液冷ジャケットを有さずに、ヒートパイプ1は、発熱体の熱を放散できる。
また第1放熱面22と第2放熱面23とは、延長板20の折り曲げによって形成されるので狭小空間において実装体積を消費しない。また、第1放熱面22および第2放熱面23は、延長板20の一部であるので、十分な面積を有する。このため、第1放熱面22および第2放熱面23は、効率よく放熱できる。
以上のように、図4に示されるヒートパイプ1は、狭小空間においても実装が可能であり、冷却ファンや液冷ジャケットのような二次冷却部材(あるいは放熱に特化された放熱部材)を必要とせずに、発熱体を効率的に冷却できる。
次に、各部の詳細について説明する。
(本体部)
まず、本体部2について説明する。
本体部2は、冷媒の気化と凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプの機能を有する部分である。本体部2は、気化した冷媒を平面方向に拡散する蒸気拡散路3と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路4とを備える。図1より明らかな通り、本体部2は、薄型で平板状を有する。図1、図4では、本体部2は、方形を有しているが、円形、楕円形、多角形など種々の形状を有してよい。
本体部2は、平板状の上部板10、上部板10と対向する下部板11および上部板10と下部板11との間に積層される単数又は複数の中間板12を備える。上部板10、下部板11および中間板12が積層されて接合されることで、冷媒を封入できる内部空間を有する本体部2が形成される。中間板12は、蒸気拡散路3と毛細管流路4を形成する。
また、本体部2は、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
一例として、本体部2は、20mm角以上100mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや回路基板への実装上の容易性などから導入される。本体部2がここで例として挙げたサイズを有することで、実装と冷却のバランスが適切に図られるからである。
勿論、本体部2のサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
(上部板)
上部板10について、図3を用いて説明する。
上部板10は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
上部板10は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板10は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよい。
なお、延長板20を形成するために、上部板10の形状、面積が、下部板11や中間板12と異なっていてもよい。例えば、上部板10は、下部板11や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、延長板20を形成する。すなわち、上部板10が延長板20を形成する場合には、上部板10の面積は、他の板の面積よりも大きい。
上部板10は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路3および毛細管流路4の少なくとも一方と連通する凹部15を有していることも好ましい。凹部15が毛細管流路4と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板10から毛細管流路4へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部15が蒸気拡散路3と連通することで、気化した冷媒が、上部板10の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
上部板10は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板10は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板11と特段に区別されるものでもない。また、上部板10が発熱体と接する面となっても、発熱体と対向する面となってもかまわない。
また、上部板10は、冷媒の注入口16を備えている。上部板10、中間板12、下部板11が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板10などの接合後に注入口16から冷媒が封入される。注入口16は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
なお、冷媒は、積層後に注入口16から封入されても良く、上部板10、下部板11、中間板12が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
(下部板)
下部板11は、上部板10と対向して単数又は複数の中間板12を挟む。
下部板11は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10と対向して本体部2を形成するので、上部板10と同一の形状、面積であることが好ましい。
但し、延長板20を形成するために、下部板11の形状、面積が、上部板10や中間板12と異なっていてもよい。例えば、下部板11は、上部板10や中間板12と同じ形状に対して、はみ出した部分を有していてもよい。このはみ出した部分が、延長板20を形成する。すなわち、下部板11が延長板20を形成する場合には、下部板11の面積は、他の板の面積よりも大きい。
下部板11は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路3と毛細管流路4に連通する凹部15を有していることも好適である。凹部15は、毛細管流路4と連通することで凝縮した冷媒が、下部板11から毛細管流路4へ伝わりやすくなる。また、凹部15が蒸気拡散路3と連通することで、気化した冷媒が、下部板11の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板10に凹部15が設けられることと同様の意義を有する。
下部板11は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板10と特段に区別されるものでもない。
下部板11は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
また、下部板11が、発熱体と接しても接しなくてもよい。
(中間板)
中間板12は、単数又は複数の板材である。図3では、本体部2は、4枚の中間板12を有している。中間板12は、上部板10と下部板11の間に積層される。
中間板12は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10および下部板11に挟まれて本体部2を形成するので、上部板10および下部板11と同一の形状であることが好ましい。なお、上部板10および下部板11に挟まれるので、中間板12の面積は、上部板10および下部板11と同一でも良く、若干小さくてもよい。
但し、延長板20を形成するために、中間板12の形状、面積が、上部板10や下部板11と異なっていてもよい。例えば、ある特定の中間板12(中間板12が複数ある場合には、そのいずれか1枚か複数枚)は、上部板10や下部板11および他の中間板12に対して、はみ出した部分を有していても良い。このはみ出した部分が、積層されて本体部2が形成された場合に、延長板20を形成する。例えば、上部板10、下部板11、他の中間板12が所定角の方形を有している場合に、特定の中間板12は、所定角の方形のある辺からはみ出した領域を有しているとする。上部板10、下部板11、中間板12の全てが積層された際には、このはみ出した領域は、本体部2の側面からはみ出すことになる。この側面からはみ出した領域が、延長板20を形成する。すなわち、ある特定の中間板12が延長板20を形成する場合には、この特定の中間板12の面積は、他の板の面積よりも大きい。
なお、延長板20は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれのはみ出しにより形成されてもかまわない。
また、中間板12は、上部板10および下部板11と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板12は、微小な断面積を有する内部貫通孔14を有している。この内部貫通孔14は、毛細管流路4を形成する。
最終的には、上部板10と下部板11の間に中間板12が積層されて接合されることで、本体部2が形成される。中間板12は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路4を形成するためには、中間板12は、複数であることが好ましい。
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、蒸気拡散路3および毛細管流路4について、図2も参照しながら説明する。中間板12は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する蒸気拡散路3と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路4を形成する。
まず、蒸気拡散路3について説明する。
中間板12は、切り欠き部13と内部貫通孔14を有している。
切り欠き部13は、本体部2における蒸気拡散路3を形成する。上部板10と下部板11の間に中間板12が積層された場合に、切り欠き部13は空隙を形成する。この空隙が蒸気拡散路3となる。
ここで、切り欠き部13が、本体部2の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成されることで、蒸気拡散路3も、本体部2の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成される。このため、気化した冷媒は平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。勿論、切り欠き部13によって、下部板11と上部板10とがつながる場合には、下部板11で受熱して気化した冷媒は、平面方向および厚み方向に移動して、気化した冷媒(および熱)が下部板11から上部板10にまで達する。すなわち、蒸気拡散路3は、平面方向および厚み方向の両方に(もちろん、蒸気拡散路3の形状によっていずれか一方の場合もありえる)かけて、気化した冷媒を移動させる。
特に、図2に示されるように、切り欠き部13が中間板12の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路3も本体部2の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、本体部2の略中央部に設置されることが多いので、冷媒は本体部2の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、本体部2の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路3が本体部2の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する。結果として、気化冷媒(発熱体から奪われた熱)は、発熱体と反対側の放熱面に到達する。なお、蒸気拡散路3が平面方向および厚み方向の両方に渡って形成されていれば、気化冷媒は、平面方向および厚み方向の両方に渡って拡散する。
このように、中間板12が切り欠き部13を有し、平面方向および厚み方向の少なくとも一方に広がる蒸気拡散路3が形成されることで、本体部2の内部においては、気化した冷媒が平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、中央から周辺に向けて本体部2内部を平面方向に拡散する。結果として、薄型で平板状のヒートパイプ1であっても、発熱体の熱を効率よく移動できる。
なお、図2にしめされるように、切り欠き部13(すなわち蒸気拡散路3)は、放射状でなくとも別の形状であってもよい。なお、蒸気拡散路3が放射状であることで、気化した冷媒が平面方向に拡散するとしても、拡散した後冷却されて凝縮した冷媒が高速に還流しなければ、発熱体の冷却能力は十分でない。本体部2は、拡散した後で凝縮した冷媒を、本体部2の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路4を有していることにより、高い平面方向および厚み方向の少なくとも一方の拡散(および還流)性能を実現している。更に、毛細管流路4と連通する凹部15によって、凝縮した冷媒は更なる効率で還流できる。凹部15は、凝縮した冷媒の還流を促進させる役割も有する。
次に毛細管流路4について説明する。
中間板12は、内部貫通孔14を有している。内部貫通孔14は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路4を形成する。中間板12が図2に示されるように切り欠き部13を有する場合には、切り欠き部13以外の部分に内部貫通孔14が形成される。
ここで、中間板12が単数の場合には、中間板12に設けられている内部貫通孔14がそのまま毛細管流路4になる。
これに対して、中間板12が複数である場合には、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔14の一部のみが重なって、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成される。このように、中間板12が複数である場合には、内部貫通孔14そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成されるので、毛細管流路4における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。毛細管の断面積が小さいことで、毛細管現象による液体の移動が促進されるからである。
なお、ここで、中間板12のそれぞれには、複数の内部貫通孔14が設けられる。複数の内部貫通孔14が、複数の流路を有する毛細管流路を形成できるからである。
内部貫通孔14は、中間板12の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。但し、内部貫通孔14の一部同士が重なって毛細管流路4を形成することから、内部貫通孔14は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
内部貫通孔14は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良い。
中間板12が複数の場合には、内部貫通孔14は、複数の中間板12のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板12は、その内部貫通孔14の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔14の位置は、隣接する中間板12毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板12における内部貫通孔14の位置と、この中間板12と隣接する別の中間板12における内部貫通孔14の位置は、内部貫通孔14の断面の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板12毎に内部貫通孔14の位置がずれていることで、複数の中間板12が積層された場合に、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路4が形成される。
毛細管流路4は、複数の中間板12が積層される際に、内部貫通孔14の一部同士が重なり合って、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔14の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、本体部2の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
なお、内部貫通孔14の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔14よりも小さな断面積を有する毛細管流路4が形成される場合には、毛細管流路4を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
なお、毛細管流路4は、凝縮した冷媒を還流するが、気化した冷媒を通すこともありえる。
また、毛細管流路4、凹部15の角部や切り欠き部13の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路4の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路4の断面形状は、内部貫通孔14の形状と、内部貫通孔14同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
(製造工程)
ここで、ヒートパイプ1の製造工程について説明する。
上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで本体部2が製造される。
製造工程について図3を用いて説明する。
上部板10、下部板11および複数の中間板12(図3では中間板12は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板12は、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔14のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
上部板10、下部板11および複数の中間板12の少なくとも一つは、接合突起を有している。
上部板10、下部板11、複数の中間板12は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
次に、上部板10や下部板11の一部に空けられた注入口16を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口16が封止されて本体部2が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、本体部2の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
以上の工程で本体部2が製造されるが、このとき上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが、他よりも面積が大きいことで延長板20も形成される。
その後、延長板20が、適宜折り曲げられて、第1放熱面22および第2放熱面23が形成されて、ヒートパイプ1が製造される。
(延長板と放熱面)
次に、延長板20と放熱面について説明する。なお、本明細書において、第1放熱面、第2放熱面、第3放熱面の一部もしくは全部を、放熱面として総称する。
延長板20は、上部板10、下部板11、および中間板12の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことにより、本体部2の側面の少なくとも一部から外部に突出して形成される。突出するとは、本体部2の側面からはみ出す領域を有しているということであり、このはみ出した領域が延長板20となる。
図4においては、中間板12の一枚が、本体部2の4つの側面の全てから突出して、延長板20を形成している。すなわち、延長板20は、方形の本体部20の全ての側面から突出している。
なお延長板20は、上部板10、下部板11、中間板12のいずれにより形成されても良い。あるいは、中間板12と上部板10との組み合わせ、中間板12と下部板11との組み合わせのいずれかで形成されても良い。また、複数の中間板12のはみ出しで形成されても良い。上部板10、下部板11、中間板12のいずれで形成されても、延長板20は、これらの板の素材と形状に基づく強度や耐久性を有することができる。
延長板20は、上部板10、下部板11、中間板12が積層される際に、いずれかの板部材の一部がはみ出しており、このはみ出し部分がそのまま延長板20となる。
はみ出し部分は、上部板10、下部板11、中間板12と一体である。図4においては、中間板12が延長板20を形成するので、延長板20は、中間板12と一体である。このため、延長板20の素材は中間板12と同じである。中間板12が、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されていれば、延長板20もこれらの金属で形成される。また、延長板20は、中間板12と一体であるから、本体部2の側面において分断や分離されていない。このため、本体部2の側面において急激に強度が落ちるものでもない。加えて、本体部2の側面において、中間板12から延長板20にかけて、熱抵抗が増加することもない。このため、延長板20は、中間板12と同じ特性で、熱を伝導する。
なお、延長板20となるはみ出し部分は、中間板12と一体であるが、はみ出し部分だけ圧延されて薄くされたり、逆に厚くされたりしてもよい。
延長板20は、屈折部21で折り曲げられて、第1放熱面22と第2放熱面23を有する。第1放熱面22と第2放熱面23は、第1と第2が便宜上付けられているだけで、延長板20において屈折部21を基準にして呼び分けられている。
第1放熱面22は、本体部2に略平行な平面を有し、第2放熱面23は、第1放熱面22に対して上向きの面を有している。ヒートパイプ1が狭小空間の筐体に実装される場合に、例えば第1放熱面22は、筐体の裏面に接し、第2放熱面23は、筐体の側面に接することができる。接するとは、熱的に接触することをいう。熱的に接触するとは、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部が、筐体に対して熱を伝導できる状態で、筐体に接することである。
筐体の裏面や側面に、第1放熱面22や第2放熱面23が接することで、本体部2から伝導された熱が、第1放熱面22や第2放熱面23を介して、筐体に伝導し、外部環境に放熱される。
なお、第1放熱面22と第2放熱面23の形状は、図4に示されるものに限定されず、種々の形状、折り曲げられ方をしていてよい。また、屈折部21は、延長板20のいずれの位置に存在しても良く、RやS字状の湾曲を有していてもよいし、直角を有していてもよい。また、図4では、延長板20は、本体部2の4つの側面の全てから突出しているが、4つの側面の一部から突出してもよい。また、第1放熱面22と第2放熱面23の形状は、側面ごとに突出する延長板20のそれぞれにおいて異なる形状や形態を有していてもよい。これは、ヒートパイプ1が実装される電子機器の筐体の構造や形状に適宜合わされればよい。延長板20が、屈折部21を起点に様々に折り曲げられることで、様々な形状、形態、面積を有する第1放熱面22および第2放熱面23が形成される。また、屈折部21が複数となって、第3放熱面や第4放熱面が形成されてもよい。
また、第1放熱面22および第2放熱面23は、筐体に接触する際に、熱的接合剤を介して接触してもよい。また、第1放熱面22および第2放熱面23の表面が、種々の化学処理、物理処理がなされていてもよい。
なお図4では、中間板12が、延長板20すなわち第1放熱面22と第2放熱面23を形成している。中間板12が、第1放熱面22と第2放熱面23を形成する場合には、冷媒からの熱伝導がよく(本体部2の内部空間からの熱の伝導がよい)、冷媒が吸収した発熱体の熱が、効率よく第1放熱面22および第2放熱面23に伝導する。加えて、本体部2において積層されている途中の板材が利用されるので、第1放熱面22や第2放熱面23に加重が掛かっても、延長板20が本体部2から剥離しにくい。
あるいは、上部板10もしくは下部板11が、第1放熱面22および第2放熱面23を形成する場合には、冷媒が凝縮する位置での熱(ここがもっとも放熱に適しているとも考えられる)が、第1放熱面22および第2放熱面23に伝導する。このため、本体部2が、高い効率で第1放熱面22および第2放熱面23へ、熱を伝導するとも考えられる。加えて、第1放熱面22と本体部2の表面もしくは裏面との間に距離が生じないので、第1放熱面22を、筐体内部に接触させやすくなる。
このように、使用される電子機器の構造や実装上の要請に対応して、延長板20(第1放熱面22および第2放熱面23)を形成するのが、上部板10、下部板11および中間板12のいずれであるかが決められればよい。
第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部は、ヒートパイプ1が実装される筐体の内面に熱的に接触可能である。このとき、熱的接合剤(サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材)により、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部が、筐体の内面に接触することも好適である。放熱面から筐体への熱伝導がスムーズとなるメリットがあるからである。勿論、熱抵抗を下げる種々の素材によって、放熱面と筐体とが接触できることが好適である。
なお、屈折部21においては、S字やRなどのように湾曲を有して折り曲げられても、直角に折り曲げられても、鋭角に折り曲げられてもよい。要は、延長板20が折り曲げられて、筐体に熱的に接触可能な放熱面が形成されればよい。
(発熱体の冷却メカニズム)
次に、上述の構成を有するヒートパイプ1が、発熱体を冷却するメカニズムについて説明する。本体部2が、発熱体から熱を奪うメカニズムについては、本体部2の動作説明で説明した通りである。すなわち、本体2の内部空間に封入されている冷媒は、発熱体の熱により気化して、気化の際に発熱体から熱を奪う。気化した冷媒は、蒸気拡散路3を介して平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する。すなわち熱も拡散する。この拡散した熱の一部は、本体部2の表面で冷却されて、気化した冷媒が凝縮する。凝縮した冷媒は、毛細管流路4および凹部15を介して、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流する。本体部2だけでは、ここまでが発熱体の冷却処理である。
拡散した熱の一部は、第1放熱面22および第2放熱面23に伝導する。本体部2を形成する部材の一部によって一体に形成される第1放熱面22と第2放熱面23には、発熱体から奪った熱の一部が伝導する。
ここで、第1放熱面22と第2放熱面23は、電子機器の筐体に熱的に接触可能であって、この接触により第1放熱面22と第2放熱面23とは、筐体へ熱を伝導できる。第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部から筐体に伝導された熱は、筐体から外部環境へ放散される。この結果、気化した冷媒から熱が奪われることにつながり、気化した冷媒は凝縮して、凝縮した冷媒は、毛細管流路4を解して還流する。このように、本体部2が奪った熱を、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部が、外部環境へ放散できる。このとき、ヒートパイプ1の一部である第1放熱面22および第2放熱面23が筐体と熱的に接触して放熱するので、冷却ファンや液冷ジャケットを要さずに、本体部2が奪った熱を放散できる。
第1放熱面22と第2放熱面23とは、本体部2を形成する上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つと一体に形成されているので、本体部2からの熱の伝導において余分な熱抵抗の増加がない。加えて、第1放熱面22と第2放熱面23から筐体にかけても熱的接合剤(サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材)により接触されれば、第1放熱面22および第2放熱面23は、高い効率で筐体に熱を伝導できる。この観点によれば、上部板10、下部板11、中間板12、延長板20は、金属で形成されていることが好ましい。
ここで、第1放熱面22および第2放熱面23は、図4からも明らかな通り、一定の面積を有する平面である。このため、第1放熱面22および第2放熱面23は、筐体に対して広い面積で接触可能である。このため、第1放熱面22および第2放熱面23は、高い効率で、筐体に対して熱を伝導できる。一方、本体部2と第1放熱面22との接続部分は、板の突出であるから、その面積が非常に小さい。このため、本体部2と第1放熱面22との接続部分の熱抵抗が高いと、本体部2から第1放熱面22への熱伝導効率が悪くなる。しかしながら、実施の形態1におけるヒートパイプ1では、本体部2と第1放熱面22とは、一体で形成されているので熱抵抗も小さい。
すなわち、実施の形態1におけるヒートパイプ1は、接続面積が小さくなりがちな本体部2と第1放熱面22との接続部分の熱抵抗を下げ、筐体に熱伝導する部分では、接触面積を広くして熱抵抗を下げるシステムを組み合わせている。
更に、本体部2で発熱体から奪った熱は、第1放熱面22および第2放熱面23の少なくとも一部が、筐体と接する部分から外部環境に放散できる。このため、冷却ファンや液冷ジャケットなどの、二次冷却や放熱に必要な部材が不要である。このため、狭小空間しか有さない電子機器においても、ヒートパイプ1は、発熱体を効率よく冷却できる。また、図4からも明らかな通り、延長板20が折り曲げられて第1放熱面22および第2放熱面23が形成されるので、余分な実装空間を必要としない。
なお、実施の形態1におけるヒートパイプ1の実装に適した電子機器としては、カーナビゲーションシステム、カーオーディオ、車載テレビ、航空機のパーソナルモニター、携帯端末、ノートブックパソコンなどが挙げられる。
以上のように、実施の形態1におけるヒートパイプ1は、狭小空間しか有さない電子機器においても実装が容易であって、冷却ファンや液冷ジャケットなどの余分な部材を要せずに、発熱体を高い効率で冷却できる。
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、実施の形態1で説明したヒートパイプ1の変形例、特に延長板20および放熱面の変形例について説明する。
(変形例1)
図5を用いて変形例1について説明する。図5は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの斜視図である。図5は、第1放熱面〜第3放熱面を有するヒートパイプを示している。
ヒートパイプ1は、本体部2と延長板20を有している。本体部2は、実施の形態1で説明した本体部2と同様の構成および機能を有している。なお、図5では、方形の本体部2が示されているが、本体部2は、方形に限られるわけではなく、円形、楕円形、三角形、多角形などを有していてもよい。また、延長板20は、4つの側面の全てから突出しているが、4つの側面の一部から突出していてもよい。
図5では、延長板20が2つの屈折部20、30を備えており、結果として延長板20は、第1放熱面22、第2放熱面23、第3放熱面24を有する。なお、図5では、延長板20は、中間板12と一体に形成されているが、上部板10、下部板11と一体に形成されていてもよい。屈折部20は、延長板20において第1放熱面22と第2放熱面23を形成し、屈折部30は、延長板20において第2放熱面23と第2放熱面24を形成する。
第1放熱面22は、本体部2の側面から突出した形態であり、本体部2の表面に略平行な平面を形成する。第2放熱面23は、第1放熱面22に対して上向きに形成される。第3放熱面24は、第2放熱面23の先端から第1放熱面22と同様に、本体部2の表面に略平行な平面を形成する。なお、略平行であることは必須要件ではない。
このような形態を有することで第3放熱面24は、本体部2よりも上位の位置において本体部2の表面に対向する平面を形成する。このため、ヒートパイプ1が電子機器の筐体内部に実装される場合に、第3放熱面は筐体の上面(ヒートパイプ1から見て上面)側の内面に接しやすくなる。特に、延長板20が中間板12により形成される場合には、第1放熱面22は、本体部2の側面の途中から突出する。第1放熱面22が本体部2の側面の途中から突出する場合には、第1放熱面22は、本体部2が邪魔となって筐体に接触しにくい。これに対して、第3放熱面24は、本体部2の上方において折れ曲がった後で平面を形成するので、筐体に接触しやすくなる。
特に第3放熱面24は、本体部2の延伸方向である平面方向に広がるので、筐体の平面方向に広がることになる。狭小空間しか有さない電子機器も、厚み方向の余裕度は低いが(薄型であるので)平面方向は一定の余裕度を有する(例えば、カーナビゲーションシステムであれば、使用者の便宜上一定の画像サイズを有する必要があり、厚み方向に比べて平面方向は余裕度を有しやすい。このため、第3放熱面24は、大きな面積を持ちやすくなる。第3放熱面24の面積が大きいことで、第3放熱面24は、高い効率で筐体へ熱を伝導できる。図5に示されるように、第3放熱面24が、本体部2の外側に向かって延伸することで、筐体の有する平面方向の余裕度を最大限活用して、第3放熱面24の大きさが決められる。
逆に、図5と異なり、第3放熱面24が、本体部2の内側に向けて延伸してもよい(折り曲げられてもよい)。この場合には、第3放熱面24の面積は限られるが(少なくとも本体部2と同等程度の面積に限られる)、ヒートパイプ1全体が小型化できる。また、第3放熱面24が、本体部2の内側に向けて折り曲げられて延伸する場合には、第2放熱面23が外部に露出するので、第2放熱面23も筐体の内面に接触できる。例えば、第2放熱面23は、筐体の側面に熱的に接触し、第3放熱面24は、筐体の上面に熱的に接触する。このように、第2放熱面23および第3放熱面24のそれぞれが、筐体の異なる部分に接触できることで、ヒートパイプ1は、外部環境へ効率よく熱を放散できる。また、延長板20と本体部2とは一体で形成されているので、熱抵抗も小さく、本体部2が奪った発熱体の熱は、効率よく放熱面を伝導し、外部環境に放散される。このため、ヒートパイプ1は、冷却ファンや液冷ジャケットなどの二次冷却部材を要しない。結果として、狭小空間しか有さない電子機器の筐体に、ヒートパイプ1は最適に実装されると共に、発熱体を効率よく冷却できる。
第3放熱面24が、本体部2の外側に向けて延伸するか、内側に向けて延伸するようにヒートパイプ1が形成されるかは、実装される筐体の内部構造や体積に合わされればよい。
図6に、第3放熱面24が本体部2の外側に向けて延伸する形態を有するヒートパイプ1と、第3放熱面24が本体部2の内側に向けて延伸する形態を有するヒートパイプ1を示す。図6は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの写真である。
図6(a)は、第3放熱面24が本体部2の内側に向けて延伸するヒートパイプ1を示し、図6(b)は、第3放熱面24が本体部2の外側に向けて延伸するヒートパイプ1を示す。
図6(a)に示されるヒートパイプ1では、第2放熱面23が外部に露出した上で、第3放熱面24が本体部2の内側に延伸する。このため、第2放熱面23は、ヒートパイプ1が実装される筐体の側面に熱的に接触でき、第3放熱面24は、同じ筐体の上面に熱的に接触できる。このため、ヒートパイプ1は、冷媒の気化によって拡散した熱を、筐体の側面および上面から放散できる。加えて、第3放熱面24が本体部2の内側に延伸するので、ヒートパイプ1は、その実装空間を小さくできる。
なお、図6(a)では、方形の本体部2が有する4つの側面の全てから延長板20が突出し、4つの第2の放熱面23と第3放熱面24とが形成されている。このため、第3放熱面24は、面積を有効活用するために略三角形を有しているが、第3放熱面24は、この形状や構造に限られない。
図6(b)に示されるヒートパイプ1では、第2放熱面23に対して、本体部2の外側に向くように第3放熱面24が形成されている。このような形態により、第3放熱面24は、形状や面積の点で、高い自由度を有する。第3放熱面24は、本体部2の上方において延伸するので、筐体の上面に熱的に接触できる。このため、ヒートパイプ1は、第3放熱面24から筐体の上面に熱を放散できる。このとき第3放熱面24は、面積や形状の点で、高い自由度を有するので、高い効率で筐体へ熱を伝導しやすい。
例えば、筐体内部においてヒートパイプ1がある方向に偏って実装される場合には、偏った側に位置する第3放熱面24は、面積が小さく形成され、逆側に位置する第3放熱面24は、面積が大きく形成される。あるいは、筐体の厚み方向における高さが相違する場合には、側面毎に第1放熱面22からの異なる高さを有する第3放熱面24が形成されてもよい。
このように、第3放熱面24が、本体部2の外側に向けて延伸する場合には、筐体の形状や冷却効率に最適に合わせた様々な第3放熱面24が形成される。
なお、図6に示される形態は、その形状、大きさ、構造等の面において、一例に過ぎない。また、変形例1では、第1放熱面22から第3放熱面24までの3つの放熱面が延長板20に形成される形態を示したが、延長板20は自在に折り曲げられて、4以上の放熱面を有していてもよい。要は、筐体の形状や構造に最適に対応して延長板20が折り曲げられて、放熱面が形成されればよい。
(変形例2)
次に変形例2について説明する。
変形例2では、本体部2の同一側面から複数の延長板20が突出して放熱面を形成するヒートパイプについて説明する。
図7は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側面図であり、同一側面から複数の延長板20が突出しているヒートパイプ1を示している。同一側面から、複数の延長板20が突出することで、放熱面の形成の自由度が更に高まり、放熱面を活用した発熱体の冷却のパターンが更に増える。
図7(a)は、二つの屈折部20、30によって、第1放熱面22、第2放熱面23、第3放熱面24を有するヒートパイプを示している。ここで、同一側面から2つの延長板20a、20bが突出しており、第1放熱面〜第3放熱面のそれぞれも、2つずつ形成されている。このように、同一側面から複数の延長板20a、20bが突出することで、多様な放熱面が形成されるので、ヒートパイプ1は、筐体の形状や構造に最適化された放熱構造を有することができる。
図7(a)では、2枚の延長板20a、20bが同一側面から突出しているが、延長板20aと延長板20bとは、異なる折り曲げられ方をしている。第1放熱面22a、22bおよび第2放熱面23a、23bとは、それぞれ同様の折り曲げられ方をしているが、第3放熱面24aと第3放熱面24bとは、互いに異なる方向に折り曲げられている。図7(a)では、延長板20aにおける第3放熱面24aは、本体部2に対して外向きに延伸しており、延長板20bにおける第3放熱面24bは、本体部2に対して内向きに延伸している。すなわち、図7(a)に示されるヒートパイプ1は、図6(a)で示される第3放熱面と図6(b)で示される第3放熱面の両方を兼ね備えている。
第3放熱面24aが、本体部2に対して外向きに延伸することで、第3放熱面24aは、筐体の上面であって本体部2の周囲に存在する面に、熱的に接触可能である。また、第3放熱面24aは、筐体の構造やサイズの限界において、その面積を拡張できるので、第3放熱面24aは、筐体との接触面積を拡張しやすい。一方で、第3放熱面24aのみの場合には、ヒートパイプ1は、本体部2の上部空間を使って、放熱しにくい。これに対して、図7(a)のように、第3放熱面24bが第3放熱面24aと対になるように、本体部2の内側に向けて延伸することで、第3放熱面24bが、本体部2の上部にある筐体と熱的に接触可能となる。この結果、ヒートパイプ1は、本体部2の位置に関係なく、筐体に対して広い面積で、第3放熱面24a、24bを接触できる。結果として、ヒートパイプ1は、効率よく、熱を外部環境に放散できる。筐体に接触できる放熱面が広くなるからである。
また、図7(b)のヒートパイプ1では、2枚の延長板20a、20bが同一側面から突出しており、ヒートパイプ1は、2つの第1放熱面22a、22bおよび2つの第2放熱面23a、23bを有している。2つの第1放熱面22a、22bの折り曲げられ方と2つの第2放熱面23a、23bの折り曲げられ方は、同様であるが、第2放熱面23aと第2放熱面23bとは、その折り曲げられる位置が相違する。このため、側面からみると櫛の歯のようである。
例えば、ヒートパイプ1が実装される筐体がスロット形状を有している場合には、第2放熱面23aと第2放熱面23bとは、異なるスロットに接触可能である。すなわち、第2放熱面23aと第2放熱面23bのそれぞれは、筐体において異なる部位に熱的に接触できる。この場合には、筐体に対する放熱面の接触面積が拡大し、ヒートパイプ1は、効率よく、熱を外部環境に放散できる。
あるいは、第2放熱面23aは、その外側の面を筐体と接し、第2放熱面23bは、その内側の面を筐体と接してもよい。
なお、図7に示されるヒートパイプ1では、同一側面から2枚の延長板20a、20bが突出している形態を説明したが、3枚以上の延長板が突出していてもよい。また、延長板20a、20bの折り曲げられ方は、図7に示される形態以外であってもよい。
また、図7は、本体部2の両方の側面からそれぞれ延長板20a、20bが突出している状態を示しているが、複数の側面のうち、どの側面から突出していてもよい。勿論、ある側面から突出する延長板の折り曲げられ方と、他の側面から突出する延長板の折り曲げられ方のそれぞれが異なっていてもよい。
このように、本体部2の同一側面から複数の延長板が突出することで、筐体の形状や構造に合わせた最適な放熱面が形成できる。加えて、筐体と放熱面との接触面積が拡大しやすくなって、ヒートパイプ1は、高い効率で熱を放散できる。
また、同一側面から複数の延長板が突出することで、本体部2に封入されている冷媒が発熱体から奪った熱は、複数の延長板20に伝導する。同一側面から突出する延長板が複数であるので、熱の伝わる面積が広い。また、熱の伝導経路も複数となるので、本体部2から延長板にかけての熱伝導の効率は非常に高くなる。延長板は、そのまま放熱面を形成するので、図7に示されるヒートパイプ1は、本体部2から伝導する熱の放散効率が非常に高いメリットを生む。
次に、同一側面から複数の延長板が突出する別の態様について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側面図である。
図8では、同一側面から複数の延長板20が突出し、側面における突出部分においては、複数の延長板20同士は離隔し、先端40においては、複数の延長板20同士は接する。また、先端40において複数の延長板20同士は接しているので、複数の延長板20全体で、第3放熱面24が形成されている。なお図8では、複数の延長板20は略S字状を有しているが、この形態に限定されない。
複数の延長板20が同一側面から突出することで、本体部2に封入されている冷媒が発熱体から奪った熱は、複数の延長板20に伝導する。同一側面から突出する延長板が複数であるので、熱の伝わる面積が広い。また、熱の伝導経路も複数となるので、本体部2から延長板にかけての熱伝導の効率は非常に高くなる。更に、複数の延長板20のそれぞれが、先端40において接触して一体化された第3放熱面24(第3放熱面24である必要はなく、要は一体化された放熱面であればよい)を形成する。
複数の延長板20は、突出部分においては複数の熱伝導経路を形成し、先端40においては熱伝導を集約する。第3放熱面24は、集約された熱を筐体に伝導し、外部環境に放散する。このように、本体部2からの熱伝導は、複数の経路を利用し、筐体への熱伝導においては一体的に行うことで、ヒートパイプ1は、効率的に熱を放散できる。特に、第3放熱面24が筐体と接する場所に限りがある場合には、放熱面を形成する延長板20が複数であっても、延長板20それぞれが形成する放熱面の全てが、筐体と接触できない。しかし、同一側面から突出する延長板20が複数であることで、本体部2からの熱伝導経路が複線化できることは放熱で高いメリットを有する。
このように、放熱面と筐体との接触においては、構造的な限界がある場合もある。しかし、本体部2からの熱伝導を複線化のメリットを活用したい場合がある。図8に示されるヒートパイプ1のように、同一側面から突出する複数の延長板20のそれぞれが、その先端40において接し、一体的に第3放熱面24を形成することで、この活用が実現できる。筐体と放熱面との接触に自由度がある場合には、図7に示されるように、同一側面から突出する複数の延長板を自在に折り曲げて、独立した放熱面を形成できる。しかし、筐体の形状や構造によっては、複数の延長板のそれぞれが、独立した放熱面を持てない場合もある。このような場合には、図8に示されるように、同一側面から突出した複数の延長板20が先端40において相互に接する形態により、ヒートパイプ1は、熱伝導経路の複線化と筐体への放熱とを両立できる。
なお、先端40において、複数の延長板20のそれぞれが接しているが、複数の延長板20のいずれかが離れていたりすることを除外するものではない。また、接するとは製造状の範囲内で接していることを意味し、物理的・化学的に厳密に接していることを要するものではない。なお、先端40において、複数の延長板20が半田やめっきなどで接続されていてもよい。また、第3放熱面24は、複数の延長板20によって形成されれば良く、厳密に複数の延長板20によって一体化されていることを要するものではない。
図8に示されるヒートパイプ1は、同一側面から突出する複数の延長板20が、その先端40において接しているので、複数の延長板20同士がたわみを吸収する。このため、図8のヒートパイプ1は、高い耐たわみ性を有する。
このように、図8に示されるヒートパイプ1の延長板20は、熱伝導経路の複数化と放熱の効率化を両立させつつ、延長板20の耐たわみ性を向上させる。
(変形例3)
次に、図9を用いて変形例3を説明する。図9は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側面図である。
図9に示されるヒートパイプは、略S字状の延長板20を有する。図9では、延長板20のそれぞれは、2つの屈折部21、30を有し、全体としてS字カーブを描いている。
このようにS字カーブを有する延長板20は、角部を有しないので、高い耐たわみ性を有する。また、S字カーブを有していても、延長板20の先端には第3放熱面24が形成されるので、筐体への熱伝導は容易に行われる。
延長板20は、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも1つで形成されるので、その厚みが薄いことが多い。厚みが薄い場合に、屈折部21、30で角形に折り曲げられると、延長板20全体ではたわみに弱くなりがちである。このように延長板20の厚みが薄い場合であっても、延長板20がS字カーブを有することで、たわみに強くなる。
(変形例4)
次に、図10、図11を用いて変形例4を説明する。
図10、図11は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側面図である。図10は、本体部2のある側面から突出する延長板の面積が、他の側面から突出する延長板の面積よりも大きいヒートパイプ1を示している。
図10では、本体部2の左側面(図10における左側面であり、実際に実施されるヒートパイプでの左側面を限定するものではない)から延長板20aが突出し、本体部2の右側面から延長板20bが突出する。ここで、本体部2は、その内部に蒸気拡散路3と毛細管流路4を備えているが、蒸気拡散路3は、本体部2の左側50から右側51にむけて熱を拡散する。すなわち、蒸気拡散路3は、左側50から右側51にかけての拡散方向を有している。このため、本体部2が発熱体から奪った熱は、左側50から右側51にかけて拡散される。
図10のヒートパイプ1では、本体部2の左側面から突出する延長板20aの面積よりも、本体部2の右側面から突出する延長板20bの面積が小さい。延長板20aの面積が、延長板20bの面積よりも小さいことは、第1放熱面22aおよび第2放熱面23aの合算された面積が、第1放熱面22bおよび第2放熱面23bの合算された面積よりも小さいことを示す。すなわち、本体部2の右側面から突出する延長板20bは、延長板20aよりも高い熱伝導能力および放熱能力を有する。
図10での本体部2は、左側50から右側51にかけての熱の拡散方向を有している。このため、本体部2は、発熱体から奪った熱の多くを右側51に拡散する。言い換えると、本体部2は、発熱体から奪った熱の多くを、延長板20bに伝導する。このため、延長板20aよりも延長板20bは、高い熱伝導能力と放熱能力を有している必要がある。
ここで、延長板20bは、延長板20aよりもその面積が大きい。このため、延長板20bは、延長板20aよりも高い熱伝導能力と放熱能力を有する。
本体部2の熱拡散方向が左側50から右側51を向いている場合には、例えば発熱体から奪った熱の70%が延長板20bに到達する。残りの30%の熱が、延長板20aに到達する。延長板20bの面積は、延長板20aの面積よりも大きいので、到達した70%の熱を筐体に伝導できる。一方、延長板20aの面積は延長板20bの面積よりも小さいが、到達する熱は30%と少ないので、延長板20aは筐体に熱を伝導できる。ここで、本体部2の有する蒸気拡散路3の拡散方向や拡散割合に応じて、延長板20aと延長板20bとの面積の比率が決められればよい。
また図10では、延長板の面積を不均一としたが、例えば第2放熱面や第3放熱面などが筐体と接して筐体に熱を伝導する場合には、延長板ではなく、実際に筐体に接する放熱面の面積を不均一としてもよい。例えば、第3放熱面が筐体に接する場合に、蒸気拡散路3の熱拡散方向につながる側面で形成される第3放熱面の面積が、対向する側面で形成される第3放熱面の面積よりも大きい。このように、熱の移動量が多い側面における放熱効率が高いように、放熱面の形状、面積が決定されるヒートパイプでもよい。あるいは、熱拡散方向につながる側面からは複数の延長板20が突出して、より広く複雑な放熱面が形成されてもよい。
このように、熱拡散方向に適合させた放熱面を有することで、ヒートパイプの冷却能力は更に向上する。
また、図11に示されるように、発熱体と接する位置を基準に、延長板や放熱面の面積や形状が工夫されてもよい。図11は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側面図である。図11は、発熱体60に、本体部2が接している状態を示している。
本体部2は、右側に偏った位置で、発熱体60と接している。このため、本体部2の右側の方が、多くの熱を受けやすい。そこで、図11に示されるように、本体部2の右側面から突出する延長板20bの面積は、本体部2の左側面から突出する延長板20aの面積よりも大きく構成されている。延長板20bの面積が延長板20aの面積よりも大きいことで、延長板20bは、延長板20aよりも高い熱伝導能力と放熱能力を有する。これは、図10の場合と同様である。
図11においては、本体部2の右の側面(図における右の側面)から伝導する熱量が、左の側面から伝導する熱量よりも大きい。右の側面から突出する延長板20bは、左の側面から突出する延長板20aよりもその熱伝導能力と放熱能力が高いので、本体部2から伝わる熱量が大きくても、延長板20bは伝導しつつ放熱できる。
このように、本体部2に対する発熱体60の接触位置が偏る場合には、発熱体60の位置にもっとも近い位置にある側面から突出する延長板の面積が、他の側面より突出する延長板の面積よりも大きいことで、ヒートパイプ1は、高い冷却能力を有する。勿論、予め各側面から突出する延長板の面積を不均一にしておき、発熱体との接触位置と延長板とのバランスをとるように、本体部2の設置位置を決めることも好適である。なお、延長板の面積ではなく、筐体に接する放熱面の面積を、発熱体の位置に合わせたバランスとすることもよい。
なお、複数の側面から延長板20が突出する場合には、ある側面から突出する延長板20は、図8に示されるような形状を有し、他の側面から突出する延長板20は、図7に示されるような形状を有してもよい。また、ある側面からは、1枚の延長板20が突出して放熱面を形成し、他の側面からは、複数の延長板20が突出して放熱面を形成してもよい。
本体部2の側面からは、種々の形態や構造を有する延長板20が突出し、筐体の形状や構造に合わせた放熱面が延長板20のそれぞれに個別に形成されればよい。図4〜図11で説明された種々の形態を有する放熱面が、一つのヒートパイプの中に混合して設けられることで、高い冷却能力を有するヒートパイプを実現できる。
以上、実施の形態2におけるヒートパイプは、放熱面が本体部2からの熱を効率的に伝導すると共に筐体へも効率的に熱を伝導できる。また、筐体の形状、構造に最適にあわせることで実装体積を消費せず、高い熱伝導効率によって、実施の形態2におけるヒートパイプは、熱を放散できる。この際に、冷却ファンや液冷ジャケットなどの二次冷却部材は不要である。このため、狭小空間しか有さない電子機器においても、ヒートパイプ1は容易に実装できて、発熱体を効率的に冷却する。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
実施の形態3では、本体部2の側面から突出する延長板20の突出部分の保護、強化について説明する。
図12は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの側面図である。図12は、延長板20が突出する突出部位70において、補強部71を有しているヒートパイプを示している。
本体部2の側面から延長板20が突出する。ここで、延長板20は、上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つにより形成される。本体部2は、狭小空間しか有さない電子機器の筐体に実装されるので、上部板10、下部板11および中間板12のそれぞれは薄くならざるを得ない。このため、延長板20も薄くならざるを得ない。このように延長板20は薄くなることが多いので、延長板20の強度が不十分となりうることもある。
薄い延長板20は、容易に折れ曲がるので、曲げ圧力に対して損傷を生じることもありうる。特に、延長板20が本体部2の側面から突出する突出部位70における強度確保が重要である。突出部位70において延長板20が折れたり損傷したりすると、本体部2からの熱が効率よく放熱面に伝導しなくなり、ヒートパイプ1の冷却能力が損なわれるからである。
補強部71は、この突出部位70における延長板20の強度を向上する。補強部71は、種々の形態によって実現される。
例えば、図12に示されるように、突出部位70において延長板20の根元を覆うモールドが一例である。モールドは、樹脂、金属、合金などで形成され、突出部位70において延長板20の根元を覆う。モールドが延長板20の根元を覆うことで、延長板20は、突出部位70における外部圧力に対する強度を生じさせる。このため、延長板20に圧力が加わったとしても、その根元において折れたり損傷したりすることが少なくなる。
また、補強部71は、モールド以外で、例えば突出部位70において延長板20に貼り付けられた補強板でもよい。突出部位70においてのみ、金属や樹脂で形成された補強板が、延長板20に貼り付けられると、延長板20は、加わる外部圧力に抵抗できる。このため、延長板20に圧力が加わったとしても、その根元において折れたり損傷したりすることが少なくなる。なお、補強板は、突出部位70において本体部2の内側から外側にかけて貼り付けられることが好ましい。本体部2の側面の内外に渡って補強板が延長板20に貼り付けられることで、延長板20は、側面を基点とした損傷に対しての強度を有するからである。
また、突出部位70における延長板20の厚みが、他の部分における厚みよりも厚いことで、補強部71が構成されてもよい。すなわち、延長板20は、突出部位70において他の部位での厚みよりも厚い肉厚部を有する。このような肉厚部により、延長板20は、当然ながら突出部位70において、他よりも高い強度を有する。この結果、延長板20に圧力が加わったとしても、その根元において折れたり損傷したりすることが少なくなる。
このように、ヒートパイプ1は、二次冷却部材を必要とせずに、筐体と接触可能な放熱面を形成する延長板20を有する。この場合に延長板20は、その突出部位70において外部圧力に対して弱くなりがちであるが、実施の形態3で説明したような補強部71が設けられることで、この問題を解決できる。
なお、モールド、補強板、肉厚部は、いずれも補強部71の一例であり、補強部71は、突出部位70における延長板20の強度を向上させるための他の構造や態様による実現手段を幅広く含む。
なお図12は、形態を分かりやすくするために、ヒートパイプ1を側面から見た図面としており、左右の側面から延長板20が突出しているが、延長板20は、他の側面から突出していても良く、その場合には、それぞれの突出部位70の少なくとも一部に補強部71が設けられればよい。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、本体部2の少なくとも一部が断熱されているヒートパイプについて説明する。図13は、本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの側面図である。
実施の形態1〜3で説明したとおり、本発明のヒートパイプ1は、本体部2が発熱体から奪った熱を、延長板20を介して筐体に放熱する。ここで、本体部2は、封入している冷媒の気化によって熱を奪い取って拡散する役割を有し、延長板20は、奪い取った熱を放散(と冷却)する役割を有する。延長板20は、筐体と熱的に接触可能な放熱面を形成するからである。
本体部2の表面は、実装の状態によっては筐体のいずれとも接触しないことがありうる。むしろ、筐体内部での固定のために、本体部2の上面と筐体との空間には樹脂やゴムがクッションとして挟まれることもありうる。本体部2の下面には、発熱体が配置されることが多く、気化した冷媒は、本体部2の上面において冷却されて凝縮される必要がある。しかしながら、本体部2の上面は、熱伝導のよい筐体ではなく、熱伝導の悪い樹脂やゴムと接していることも多くある。この場合には、本体部2の上面では、冷却効果があまり期待できない。一方で、放熱面は、熱伝導のよい筐体と接触可能なので、放熱面での冷却効果は期待できる。これは、二次冷却部材を実装できない狭小空間しか有さない電子機器に実装されるヒートパイプ1の特徴である。
このため、延長板20において放熱面が形成されるヒートパイプ1では、放熱面(延長板20)の方が、本体部2よりも、発熱体から奪い取った熱の冷却に対する高い役割を有することも多い。このような場合に、気化した冷媒の拡散により奪い取った熱は、本体部2よりも放熱面に伝導するほうが適当である。言い換えると、発熱体から奪い取った熱は、本体部2に留まるよりも、その大部分が放熱面に伝導する方がよい。放熱面がより多くの熱を受け取ることで、高い効率で、外部環境に熱を放散できるからである。すなわち、放熱面での熱の放散(冷却)能力は、本体部2での熱の放散(冷却)能力よりも高い場合があるので、発熱体から奪い取った熱の多くが本体部2ではなく放熱面に伝導することが好ましい。
図13に示されるヒートパイプ1では、本体部2の少なくとも一部が断熱材80で覆われている。断熱材80は、樹脂、ゴム、シリコン、シリコン樹脂などの熱伝導性の低い素材で形成されている。本体部2の少なくとも一部が断熱材80で覆われていることで(あるいは予め断熱されている)、冷媒の気化により発熱体から奪われた熱は、本体部2よりも延長板20に形成されている放熱面に伝導しやすくなる。放熱面での熱抵抗が、本体部2での熱抵抗(特に、本体部2の表面での熱抵抗)よりも小さいからである。
放熱面は、実施の形態1〜3で説明したとおり、筐体と熱的に接触可能である。このため放熱面は、伝導されて受け取った熱を、高い効率で筐体に伝導して外部環境に放散できる。ここで、本体部2は断熱材80で覆われており、発熱体から奪われた熱の大半は、放熱面に伝導しているので、熱の大半は、放熱面から放散される。この結果、熱の放散(冷却)能力の高い放熱面において大半の熱が放散されるので、ヒートパイプ1全体としては、高い効率で熱の放散および冷却をできる。
このように、本体部2の少なくとも一部を敢えて断熱することで、放熱(冷却)能力の高い放熱面からの集中的な放熱が可能となり、ヒートパイプ1の冷却能力を向上させることができる。
なお、本体部2の少なくとも一部を断熱することは、発熱体から奪い取った熱を効率的に放熱面に伝導させることが目的であるので、同様の目的を達成できる他の手段によってもよい。また、断熱は、本体部2に断熱材80が付与されても良く、予め本体部2の一部が断熱性の高い素材で形成されてもよい。また、断熱とは、熱を遮断することに限定する意味ではなく、本体部2よりも放熱面(延長板20)への熱伝導効率を高めるとの意味である。このため、本体部2の上面における熱抵抗が、本体部2から延長板20への熱抵抗よりも大きければよい。
以上のように、実施の形態4におけるヒートパイプ1は、発熱体から奪った熱を、本体部2よりも放熱面に対して効率的に伝導して外部環境へ放散できる。結果として、冷媒の気化および凝縮のサイクルが早くなり、ヒートパイプ1は、発熱体を高い効率で冷却できる。加えて、二次冷却部材を更に必要としなくなるので、狭小空間しか有さない電子機器への実装が更に容易となる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について、図14を用いて説明する。図14は、本発明の実施の形態5における電子機器の内部分解図である。
電子機器90は、電子基板92を格納する筐体91を有する電子機器である。電子機器90は、カーテレビ、航空機のパーソナルモニター、カーナビゲーションシステム、携帯電話、携帯端末、ノートブックパソコン、PDA、電子手帳などの薄型、小型が要求される電子機器である。このため、筐体91は、厚み方向において薄型となっている。筐体91は、その内部に電子部品が実装された電子基板92を格納しており、内部空間に余裕は少ない。すなわち、筐体91は、狭小空間しか有さない。これは電子機器90の小型化、薄型化の要請に対応するものである。
電子基板92は、種々の電子回路、電子部品、電子素子、LSI、ICなどを搭載しており、それらのうちの少なくとも一つがヒートパイプ1による冷却対象となる発熱体93である。発熱体93は、電子基板92に実装されており、電子機器90の中でかなりの発熱が見込まれる。
このため、筐体91は狭小空間しか有することができないが、電子機器90の性能維持や使用者の便宜のために(電子機器90が高温になりすぎれば、当然に使用者にとってデメリットである)、発熱体93の冷却が必要である。このため、電子機器90は、その内部であって発熱体93に接触するように、ヒートパイプ1を配置する。しかし、筐体91は狭小空間しか有さないので、ヒートパイプ1が発熱体93から奪った熱を放散・冷却する二次冷却部材を、筐体91は実装するのが困難である。
このため、実施の形態1〜4で説明したように、筐体91は、放熱面を形成する延長板20を有するヒートパイプ1を実装する。
ヒートパイプ1は、本体部2と放熱面を形成する延長板20を備える。本体部2は、内部に冷媒を封入し、発熱体93からの熱を冷媒の気化によって受熱および拡散する。本体部2は、拡散した熱を延長板20に伝導する。ヒートパイプ1は、本体部2を形成する部材と一体的に形成される延長板20において、筐体91の内面と熱的に接触可能な放熱面を有する。筐体91は、金属、合金などの熱伝導性のよい素材で形成されていることが多く、筐体91は、筐体91の内面に接触する放熱面から、本体部2が奪い取った熱を受け取る。筐体91は、外部環境に存在するので、放熱面から受け取った熱を、外部環境にそのまま放散できる。すなわち、本体部2が発熱体93から奪った熱は、本体部2、延長板20、放熱面、筐体91内面、筐体91外面、外部環境の順で、伝導して放散される。
この結果、冷却ファンや液冷ジャケットなどの、ヒートパイプが発熱体から奪い取った熱を、放熱・冷却する二次冷却部材を必要としない。狭小空間しか有さない電子機器90にとって、ヒートパイプ1は好適な冷却装置である。
図14に従って説明する。
ヒートパイプ1は、本体部2の側面の少なくとも一部から突出する延長板20を有する。図14は、本体部2の左右の側面から延長板20が突出する状態を示している。勿論、本体部2の形状や延長板20の突出は、この形態や構造に限られない。延長板20は、2箇所の屈折部で折り曲げられている。このため、延長板20は、第1放熱面22、第2放熱面23および第3放熱面24を有する。第3放熱面24は、第2放熱面23の先端から、本体部2の内側に向けて折り曲げられている。すなわち、延長板20全体では、略コの字状を有している。なお、屈折部は湾曲して折り曲げられても良く、一つの側面から複数の延長板20が突出していてもよい。また、左右の側面のそれぞれから突出する延長板20の形状が相違していてもよい。
本体部2は、発熱体93と接している。このとき、本体部2は、熱的接合剤(サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材)を介して、発熱体93と接していてもよい。本体部2は、発熱体93からの熱を受ける。この熱により、本体部2に封入されている冷媒は気化する。蒸気拡散路3(本体部2の内部に形成されている)は、気化した冷媒を、その拡散路の拡散方向に拡散する。この拡散によって、発熱体から奪われた熱は、本体部2を拡散して延長板20に到達する。
延長板20は、図14においては、中間板12の少なくとも一つと一体で形成されている。このため、延長板20は、本体部2が拡散した熱を容易に受け取れる。特に、延長板20は、中間板12と一体で形成されているので、本体部2と延長板20の突出部分において(本体部2の側面において)の熱抵抗は小さい。このため、本体部2は、効率よく拡散した熱を延長板20に伝導する。
延長板20は、本体部2に近い側から、第1放熱面22、第2放熱面23、第3放熱面24を有する。延長板20に伝導した熱は、延長板20に形成されている、これらの第1放熱面22、第2放熱面23および第3放熱面24に伝導する。
ここで、第2放熱面23は、筐体91の側面95に熱的に接触する。第2放熱面23は、側面95に直接的に接触しても良く、熱的接合剤を介して接触してもよい。いずれにしても、第2放熱面23は、筐体91の側面95に熱的に接触する。この熱的な接触により、第2放熱面23は、本体部2から伝導された熱を、側面95に伝導する。
同様に、第3放熱面24は、筐体91の上面94に熱的に接触する。第3放熱面24は、上面94に直接的に接触しても良く、熱的接合剤を介して接触してもよい。いずれにしても、第3放熱面24は、筐体91の上面94に熱的に接触する。この熱的な接触により、第3放熱面24は、本体部2から伝導された熱を、上面94に伝導する。
第2放熱面23の面積は、筐体91の厚みによってかなり制限されるので、小さくなりがちである。しかしながら、筐体91の側面95は、表示部や操作部などを有していないので、外部環境に熱を放散しやすい。一方、第3放熱面24の面積は、筐体91の平面方向に依存するので、相当の大きさとしやすい。このため、第3放熱面24は、かなりの熱を上面94に伝導できる。上面94は、そのまま外部環境へ、熱を放散できる。
このように、筐体91の側面95や上面94の特徴に合致した第2放熱面23、第3放熱面24によって、ヒートパイプ1は、発熱体93からの熱を効率よく放散できる。
勿論、図14に示されるヒートパイプ1と電子機器への実装は一例であり、この態様や構造に限定されるものではない。筐体91の構造や形状に応じて、放熱面の形状、構造、大きさが決定されればよい。
図15は、このような電子機器の一例を示す。図15は、本発明の実施の形態5における電子機器の模式図である。
電子機器100は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
電子機器100は、ディスプレイ101、発光素子102、スピーカ103を備えている。この電子機器100の内部にヒートパイプ1が格納されており、発熱体の冷却を実現する。このようなヒートパイプ1が使用されることにより、電子機器の小型化や薄型化を阻害せずに、発熱体の冷却が実現できる。
実施の形態1〜4で説明された、薄型であるにもかかわらず熱拡散性能の高い本体部2と、本体部2と一体で形成された放熱面を有するヒートパイプ1は、図15に示されるような小型、薄型が要求される電子機器100において、容易に実装されるとともに効率的に発熱体を冷却できる。
なお、延長板20において、本体部2や外部の電子基板との間で電気信号をやり取りする、電子回路が形成されてもよい。
以上、実施の形態1〜5で説明されたヒートパイプは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。