本発明の第1の発明に係る冷却装置は、発熱体が実装された電子基板に装着される冷却装置であって、冷却装置は、平板形状の熱拡散部を有し、熱拡散部は、内部に封止された冷媒の気化と凝縮によって発熱体からの熱を拡散し、電子基板は、第1回路実装面に発熱体を実装し、熱拡散部は、第1回路実装面に実装された発熱体と熱的に接触し、第1回路実装面は、電子基板において熱拡散部と対向する実装面であり、熱拡散部は、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数または複数の中間板を備え、上部板、下部板および中間板の接合によって形成される内部空間に冷媒を封止し、中間板は、蒸気拡散路と毛細管流路との少なくとも一部を形成すると共に切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は、蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は、毛細管流路を形成し、蒸気拡散路は、気化した冷媒を平面方向および垂直方向に拡散し、毛細管流路は、凝縮した冷媒を平面方向および垂直方向に還流させ、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成され、上部板および下部板のそれぞれは、毛細管流路および蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
この構成により、冷却装置は、電子基板に実装された発熱体を熱拡散部によって冷却すると共に、熱拡散部を電子基板と重ねて実装できる。加えて、重ねた実装により、熱拡散部は、発熱体と電子基板のそれぞれの熱を冷却できる。
本発明の第2の発明に係る冷却装置では、第1の発明に加えて、前記電子基板における前記第1回路実装面と逆側の逆側実装面が、発熱体を実装する。
この構成により、冷却装置は、熱拡散部が熱的に接触する第1回路実装面の発熱体のみでなく、逆側実装面の発熱体も合わせて冷却できる。
本発明の第3の発明に係る冷却装置では、第2の発明に加えて、前記第1回路実装面および前記逆側実装面の少なくとも一方は、複数の発熱体を実装する。
この構成により、冷却装置は、複雑な部品実装をしている電子基板にも対応できる。
本発明の第4の発明に係る冷却装置では、第3発明に加えて、前記熱拡散部は、前記第1回路実装面に実装される前記発熱体の少なくとも一部と熱的接合材を介して熱的に接触する。
この構成により、熱拡散部と発熱体との間の熱抵抗が減少する。
本発明の第5の発明に係る冷却装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記熱拡散部は、上部板と、前記上部板と対向する下部板と、前記上部板と前記下部板との間に積層される単数または複数の中間板を備え、前記上部板、前記下部板および前記中間板の接合によって形成される内部空間に冷媒を封止し、前記中間板は、蒸気拡散路と毛細管流路との少なくとも一部を形成すると共に切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は、前記蒸気拡散路を形成し、前記内部貫通孔は、前記毛細管流路を形成し、前記蒸気拡散路は、気化した冷媒を平面方向および垂直方向に拡散し、前記毛細管流路は、凝縮した冷媒を平面方向および垂直方向に還流させ、前記中間板は複数であって、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成され、前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路および前記蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
この構成により、熱拡散部は、平板形状を有するヒートパイプで構成される。熱拡散部が平板形状のヒートパイプであることで、熱拡散部は、熱的に接触する回路実装面から、容易に熱を奪うことができる。更には、熱拡散部は、奪い取った熱を平面および厚み方向に拡散でき、拡散した熱を外気に放散できる。更に、熱拡散部は、発熱体から奪った熱を、効率よく拡散できる。加えて、毛細管流路の毛細管力が高まり、熱拡散部は、凝縮した冷媒を効率的に還流できる。更には、熱拡散部は、気化した冷媒を平面方向および垂直方向に拡散でき、凝縮した冷媒を平面方向および垂直方向に還流できる。
本発明の第6の発明に係る冷却装置では、第2から第5のいずれかの発明に加えて、前記電子基板は、前記第1回路実装面と前記逆側実装面とを貫通するサーマルビアを更に備える。
この構成により、逆側実装面に実装される発熱体の熱を、熱拡散部は効率的に冷却できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。ヒートパイプには「パイプ」なる単語が含まれているが、いわゆる部材としてのパイプを必須要件とするのではなく、冷媒の気化・凝縮で発熱体を冷却できるデバイス全般の呼称である。
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
まず、図1〜図5を用いて、実施の形態1における冷却装置の概略について説明する。図1、図3は、本発明の実施の形態1における電子基板の側面図であり、図2、図4は、本発明の実施の形態1における電子基板の斜視図である。図5は、本発明の実施の形態1における電子基板の側面図である。
(全体概要)
冷却装置1は、発熱体7、8、9が実装された電子基板10に装着される。冷却装置1は、平板形状の熱拡散部2を有し、熱拡散部2の表面は、電子基板10の第1回路実装面5に熱的に接触し、熱拡散部2の裏面は、電子基板10の第2回路実装面6に熱的に接触する。また、熱拡散部2は、内部に封止された冷媒の気化と凝縮によって、発熱体7、8、9からの熱を受熱して拡散する。
このように、実施の形態1における冷却装置1は、電子基板に装着されることを前提としている。特に、冷却装置1は、平板形状の熱拡散部2を備えて、平板形状を有する電子基板10への装着に適している。
図1、図2は、電子基板10が、複数の回路基板3、4を含んでいる構成を示している。回路基板3は、第1回路実装面5を構成し、回路基板4は、第2回路実装面6を構成する。すなわち熱拡散部2の表面は、第1回路実装面5である回路基板3と熱的に接触し、熱拡散部2の裏面は、第2回路実装面6である回路基板4と熱的に接触する。すなわち、熱拡散部2は、回路基板3と回路基板4とに挟まれて装着される。言い換えると、熱拡散部2は、回路基板3と回路基板4とにサンドイッチされる。
熱拡散部2の表面は、回路基板3と熱的に接触するので、回路基板3に実装される発熱体7、8と熱的に接触する。この熱的な接触により、熱拡散部2は、回路基板3に実装される発熱体7、8から受熱し、受熱した熱を拡散する。同様に、熱拡散部2の裏面は、回路基板4と熱的に接触するので、回路基板4に実装される発熱体7、9と熱的に接触する。この熱的な接触により、熱拡散部2は、回路基板4に実装される発熱体7、9から受熱し、受熱した熱を拡散する。
このように、図1、図2に示される冷却装置1は、電子基板10が有する複数の回路基板3および回路基板4を同時に冷却できる。あるいは同時でなくとも、熱拡散部2が複数の回路基板3、4に挟まれて装着されることで、電子基板10の実装空間を増加させることなく、回路基板3および回路基板4の少なくとも一方を冷却できる。
特に、近年の電子機器や産業機器では、筐体内部に狭小間隔で複数の回路基板が実装されることが多く、これら複数の回路基板に挟まれるように熱拡散部2が装着されることで、このような電子基板のフレキシブルな冷却が可能となる。
なお、図1、図2では、複数の回路基板により熱拡散部2がサンドイッチされた構成が示されているが、熱拡散部2は、単数の回路基板(実装基板)と、第1回路実装面5に実装される発熱体と熱的に接触した状態で、装着される構成でもよい。また、第1回路実装面5と逆側の逆側実装面も、発熱体を実装してもよい。
熱拡散部2は、図3、図4に示されるように、多層基板11の内層に装着されてもよい。近年の電子基板は、複数の回路層を有する多層基板であることが多い。多層基板は、複数の回路層を積層しており、それぞれの回路層において電子部品や配線パターンなどの発熱体が実装されている。図3、図4における多層基板11は、4層の回路層12、13、14、15を有し、熱拡散部2は、回路層14と回路層15とに挟まれて装着されている。
熱拡散部2は、多層基板11の内層に配置される。この結果、熱拡散部2の表面は、第1回路実装面5である回路層14と熱的に接触し、熱拡散部2の裏面は、第2回路実装面6である回路層15と熱的に接触する。回路層14、回路層15のそれぞれは、上述の通り発熱体7を実装しており、熱拡散部2は、これら発熱体から受熱して、受熱した熱を拡散する。熱拡散部2が受熱した熱を拡散することで、発熱体7が冷却される。発熱体7が冷却されることで、多層基板11も冷却されることになる。
このように、図3、図4に示される冷却装置1は、多層基板11が有する複数の回路層14および回路層15を同時に冷却できる。あるいは同時でなくとも、熱拡散部2が複数の回路層14、15に挟まれて装着されることで、多層基板11の実装空間を増加させることなく、回路層14および回路層15の少なくとも一方を冷却できる。また、熱拡散部2が熱的に接触する回路層14と回路層15とからだけでなく、回路層12、13からも熱拡散部2は受熱可能であって、多層基板11全体を内部から冷却できる。
なお、図1、図2の電子基板10は、3以上の回路基板を備えており、複数の熱拡散部2が3以上の回路基板のそれぞれに挟まれて装着されてもよい。また、図3、図4の多層基板11は、4層の回路層を有しているが、2層、3層、5層などの回路層を有していてもよい。
また、熱拡散部2は、第1回路実装面5および第2回路実装面に実装された発熱体の少なくとも一部と熱的に接触して、発熱体からの熱を受熱する。この場合に、熱拡散部2は、第1回路実装面5および第2回路実装面に実装された発熱体の少なくとも一部と熱的接合材を介して熱的に接触してもよい。熱的接合材には、サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材が用いられる。このような熱的接合材が、発熱体と熱拡散部2との接触面に塗布されている。熱的接合材を介して熱拡散部2と発熱体が熱的に接触することで、熱的接合材を介さずに接触する場合よりも、表面の凸凹による悪影響が減少する。このため、発熱体から熱拡散部2へ移動する熱に対する熱抵抗が、減少する。
このように、熱的接合材を介さずに熱拡散部2と発熱体が接触する場合よりも、熱的接合材を介して熱拡散部2と発熱体が接触する場合は、熱拡散部2は、発熱体の熱を受熱しやすい。
なお、熱拡散部2が、多層基板の内層や複数の回路基板に挟まれる場合には、発熱体だけでなく、第1回路実装面および第2回路実装面そのものに塗布された熱的接合材を介して、熱拡散部2が、第1回路実装面および第2回路実装面に熱的に接触してもよい。
ここで、熱拡散部2は、図3、図4に示されるように、複数の回路層を有する多層基板11の1つの層として積層されていてもよいし(熱拡散部2が、多層基板11のある隣接する回路層同士に挟み込まれていてもよいし)、熱拡散部2は、図5に示されるように、多層基板11に完全に内蔵されていてもよい。熱拡散部2が、複数の回路層を有する多層基板11の1つの層として積層される場合には、回路層は、熱拡散部2の表面および裏面の一部もしくは全部と熱的に接触する。一方、熱拡散部2が、多層基板11に完全に内蔵される場合には、回路層は、熱拡散部2の表面、裏面および側面と熱的に接触する。
図5は、多層基板11の内部に熱拡散部2が内蔵されている状態を示す。図5を電子基板として見る場合には、図5は、熱拡散部2を内蔵する電子基板として把握される。図5を冷却装置としてみる場合には、図5は、多層基板11に熱拡散部2が内蔵される冷却装置1として把握される。
図5では、多層基板11が備える回路層12と13との間に、熱拡散部2が内蔵されている。熱拡散部2が多層基板11に内蔵されることで、冷却機能を予め有する電子基板が実現できる。
例えば、所定のサイズを有する多層基板であって、予め内部に熱拡散部を内蔵する多層基板が提供されるとする。このような多層基板は、内蔵する熱拡散部によって冷却能力を有するので、多層基板のユーザーは、冷却能力や内蔵される熱拡散部の位置、面積に応じて、多層基板における電子部品の配置を決定できる。例えば、発熱量の多い電子部品は、内蔵される熱拡散部に対向する位置に配置され、発熱量の少ない電子部品は、内蔵される熱拡散部と対向しない位置に配置される。更には、多層基板の厚み方向において、熱拡散部に近い側の面に発熱量の多い電子部品が配置される。
このように、予め熱拡散部が内蔵(図3に示されるような積層状態であってもよいし、図5に示されるように完全に内蔵される状態であってもよい)される多層基板(電子基板)が提供されることで、電気的な配置・配線パターンに、熱冷却を考慮した配置・配線パターンを、多層基板や電子基板上で実現しやすくなる。
図5では、熱拡散部2は、回路層12の表面に実装される発熱体7からの熱を、回路層12の厚み方向を介して受熱する。このとき、発熱体7と熱拡散部2との間は、回路層12によって埋まっていてもよいし、空気伝導によって熱を伝導する貫通孔であるサーマルビアが設けられてもよい。
熱拡散部2は、回路層12表面に実装されている発熱体7からの熱を、熱拡散部2の表面において受熱すると、内部において受熱した熱を拡散する。拡散された熱は、熱拡散部2の裏面に伝導する。熱拡散部2の裏面に伝導された熱は、回路層13、14、15を介して、多層基板11の裏面に伝導して、外気に放散される。すなわち、回路層12の表面(すなわち多層基板11の表面)に実装されている発熱体7の熱は、回路層15の表面(すなわち、多層基板11の裏面)から、外気に放散されて冷却される。
ここで、熱拡散部2の裏面からの熱は、回路層13、14、15を物理的に伝導して、多層基板11の裏面に伝導されてもよいが、図5に示されるように、空気によって熱を伝導する貫通孔であるサーマルビア17によって伝導されてもよい。なお、図5では、回路層12の表面と熱拡散部2との間には、電気伝導を目的とするビアホール16が示されており、熱伝導を目的とするサーマルビア17は示されていないが、回路層12の表面と熱拡散部2との間に、熱伝導を目的とするサーマルビアが設けられてもよい。
サーマルビア17は、熱拡散部2の裏面と回路層15の表面とを貫通しているので、熱拡散部2の裏面に拡散された熱を、伝導する。伝導された熱は、最終的にサーマルビア17を介して、多層基板11の裏面から外気へと伝導する。結果として、回路層12表面に実装された発熱体7の熱は、サーマルビア17を介して、多層基板11の外部に排熱される。
なお、熱拡散部2が回路層15表面に実装される発熱体7からの熱を受熱して、回路層12の表面から熱拡散部2が拡散する熱が、外気へ放散される熱移動ルートも実現される。あるいは、熱拡散部2の熱拡散方向を制御することで、熱拡散部2は、回路層12表面に実装される発熱体7の熱を受熱して回路層15から外気へ排熱すると共に、回路層15表面に実装される発熱体7の熱を受熱して回路層12から外気へ排熱してもよい。
ここで、サーマルビア17は、熱拡散部2から回路層に至るまで完全に貫通していることが必要ではなく、薄い保護膜などによってサーマルビア17の端面の一部もしくは全部が覆われていてもよい。この場合でも、サーマルビア17を伝導した熱は、外気へ排熱されるからである。
なお、熱拡散部2と回路層とは、熱的接合材を介して熱的に接触することも公的である。このとき、熱的接合材は、熱拡散部2および回路層の少なくとも一方に塗布されておけばよい。熱的接合材によって、熱拡散部2と回路層との接触面の凸凹が減少し、熱伝導における熱抵抗が小さくなる。
また、熱拡散部2が、銅、アルミニウムなど、電気導電性を有する素材で形成されている場合、電子基板において、熱拡散部2を1つの電気部材として応用することができる。例えば、図5に示されるように、回路層12表面に実装される発熱体7(電気信号を受けて動作する電子部品である)と熱拡散部2との間を電気的に導電するビアホール16が設けられる。ビアホール16は、発熱体7と熱拡散部2とを電気的に接続し、電気信号のやり取りを可能とする。例えば、熱拡散部2は、発熱体7からの電流の帰還路としての役割を果たしたり、電流の逃げ道としての働きを果たしたりできる。また、接地面(グランド面)としての役割も果たすことができる。
このように、熱拡散部2を内蔵あるいは積層する多層基板や電子基板は、電気的接続を可能とするビアホール、熱伝導を可能とするサーマルビアなどを備えることで、多層基板や電子基板の電気的性能が向上したり、排熱性が向上したりする。特にこの場合に、多層基板や電子基板そのものの大型化を抑制した上でこれらのメリットが享受できる。
回路基板3、4および多層基板11は、さまざまな電子機器や産業機器に組み込まれる電子基板の一例である。回路基板3、4および多層基板11は、電子部品、電子素子、配線パターンなどを有している。
また、熱拡散部2は、一方の面が受熱面(熱源から熱を奪う面)となり、他方の面が放熱面(拡散した熱を放散する面)となりやすい。このため、複数の回路基板3、4で熱拡散部2を挟む場合や、多層基板11の内層に熱拡散部2を挟む場合には、受熱面となりうる面に接触する回路基板や回路層は、多くの発熱体を実装し、放熱面となりうる面に接触する回路基板や回路層は、少数の発熱体を実装することも好適である。あるいは、受熱面となりうる面に接触する回路基板や回路層は、熱拡散部2の中央付近に対向する領域に発熱体を実装し、放熱面となりうる面に接触する回路基板や回路層は、熱拡散部2と対向しない領域に発熱体を実装することも好適である。
一例として、デジタルカメラやデジタルビデオカメラに実装される電子基板において、熱拡散部2の受熱面と接触する回路基板や回路層には、種々の電子部品が実装されており、熱拡散部2の放熱面と接触する回路基板や回路層には、受光素子のように発熱量の少ない電子部品が実装されることもよい。
このように、実施の形態1における冷却装置1は、熱拡散部2を複数の回路基板や回路層に挟むことで、複数の回路基板や回路層を同時かつフレキシブルに冷却できる。このとき、熱拡散部2の受熱と放熱の特性に合わせて、回路基板や回路層の実装パターンを決めることで、冷却装置1は、悪影響を抑えつつ、電子基板を効率的に冷却できる。
なお、後述のように熱拡散部2が、その側面から受熱した熱を放散する構成を有する場合には、熱拡散部を挟む複数の回路基板や回路層での実装パターンへの留意は少なくてよい。
(熱拡散部の詳細説明)
次に、熱拡散部2の詳細について説明する。
実施の形態1における冷却装置1は、電子基板の第1回路実装面および第2回路実装面に熱的に接触する熱拡散部2を備える。
一例として、熱拡散部2は、熱伝導率の高い金属、合金、樹脂などを用いた板部材で形成される。素材の例としては、銅、アルミニウム、タングステン、チタンなどの熱伝導性の高い金属や耐熱性に優れた樹脂が好適である。
このような素材で形成された板部材は、発熱体からの熱を受熱して、外縁に向けて熱を拡散する。このように、熱拡散部2が熱伝導率の高い素材で形成された板部材を有することで、熱拡散部2は、熱拡散部2が熱的に接触する回路基板や回路層からの熱を受熱して拡散できる。
また、熱拡散部2は、封止した冷媒の気化と凝縮によって、発熱体からの熱を拡散する平板形状のヒートパイプであることも好適である。
以下に、熱拡散部2がヒートパイプを有する場合について、図6〜図8を用いて説明する。
図6は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面分解図である。図7は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプに含まれる中間板の上面図である。図8は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの内部写真である。
(ヒートパイプの概念)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって受熱された発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
このような冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
ヒートパイプ18は、平板状の上部板20と、上部板20と対向する平板状の下部板21と、上部板20と下部板21との間に積層される単数又は複数の中間板22を備える。上部板20、下部板21および中間板22が接合されることで内部空間が形成され、この内部空間に封止された冷媒の気化と凝縮によって、発熱体から受熱した熱を拡散する。
また、中間板22は、切り欠き部29と内部貫通孔23を備えている。切り欠き部29は、気化した冷媒が拡散する蒸気拡散路25を形成し、内部貫通孔23は、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路26を形成する。
(上部板)
上部板について図6を用いて説明する。
上部板20は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
上部板20は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板20は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
上部板20は、その一方の面であって中間板22と対向する面に、蒸気拡散路25および毛細管流路26の少なくとも一方と連通する凹部24を有していることも好ましい。凹部24が毛細管流路26と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板20から毛細管流路26へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部24が蒸気拡散路25と連通することで、気化した冷媒が、放熱面に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。更には、凹部24が蒸気拡散路25と連通することで、蒸気拡散路25を拡散する気化した冷媒が凹部24も伝わるので、気化した冷媒は厚み方向にも拡散することになる。結果として、ヒートパイプ18は、受熱した熱を平面方向および垂直方向に拡散する。
なお、熱拡散部2が地表面に対して水平に設置される場合には、平面方向は地表面に対して水平方向であって、垂直方向は地表面に対して垂直方向である。熱拡散部2が地表面に対して斜めや垂直に設置された場合には、平面方向は平板形状の熱拡散部2の平板方向であって、垂直方向は平板形状の熱拡散部2の厚み方向である。
上部板20は、中間板22と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板20は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板21と特段に区別されるものでもない。また、上部板20が放熱面側となっても、受熱面側となっても特に問題はない。
また、上部板20は、冷媒の注入口27を備えている。上部板20、中間板22、下部板21が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板20などの接合後に注入口27から冷媒が封入される。注入口27は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
なお、冷媒は、積層後に注入口27から封入されても良く、上部板20、下部板21、中間板22が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
(下部板)
下部板21は、上部板20と対向して単数又は複数の中間板22を挟む。
下部板21は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板20と対向してヒートパイプ18を形成するので、上部板20と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
下部板21は、その一方の面であって中間板22と対向する面に、蒸気拡散路25と毛細管流路26に連通する凹部24を有していることも好適である。下部板21に凹部24が設けられることは、上部板20に凹部24が設けられることと同様の意味を有する。
下部板21は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板20と特段に区別されるものでもない。
下部板21は、中間板22と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
また、下部板21が放熱面側となっても、受熱面側となっても特に問題はない。
(中間板)
単数又は複数の中間板22は、上部板20と下部板21の間に積層される。
中間板22は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板20および下部板21に挟まれてヒートパイプ18を形成するので、上部板20および下部板21と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板20および下部板21に挟まれるので、中間板22の面積は、上部板20および下部板21と同一でも良く、若干小さくてもよい。
中間板22は、上部板20および下部板21と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板22は、微小な断面積を有する内部貫通孔23を有している。この内部貫通孔23は、毛細管流路26を形成する。
最終的には、上部板20と下部板21の間に中間板22が積層されて接合されることで、ヒートパイプ18が形成される。中間板22は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路26を形成するためには、中間板22は、複数であることが好ましい。
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、中間板22、蒸気拡散路25および毛細管流路26について、図7も参照しながら説明する。
まず、蒸気拡散路25について説明する。
中間板22は、切り欠き部29と内部貫通孔23を有している。
切り欠き部29は、ヒートパイプ18における蒸気拡散路25を形成する。上部板20と下部板21の間に中間板22が積層された場合に、切り欠き部29は空隙を形成することになる。この空隙が蒸気拡散路25を形成する。
ここで、切り欠き部29が、ヒートパイプ18の平面方向に向けて形成されることで、蒸気拡散路25も、ヒートパイプ18の平面方向に向けて形成される。このため、気化した冷媒は平面方向に拡散するようになる。加えて、切り欠き部29は、上部板20と下部板21とにつながっているので、蒸気拡散路25は、上部板20から下部板21にまでつながる。更には、上部板20および下部板21に設けられた凹部24と蒸気拡散路25とは連通する。この結果、蒸気拡散路25は、平面方向および垂直方向に気化した冷媒を拡散させる。
特に、図7に示されるように、切り欠き部29が中間板22の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路25もヒートパイプ18の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、ヒートパイプ18の略中央部に設置されることが多いので、冷媒はヒートパイプ18の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、ヒートパイプ18の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路25がヒートパイプ18の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に拡散しやすくなる。
このように、中間板22が切り欠き部29を有し、平面方向および垂直方向に広がる蒸気拡散路25が形成されることで、ヒートパイプ18の内部においては、気化した冷媒が平面方向および垂直方向に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、ヒートパイプ18内部を平面方向および垂直方向に拡散する。
なお、蒸気拡散路25は、図7にしめされるような放射状でなくとも別の形状であってもよい。
次に毛細管流路26について説明する。
中間板22は、内部貫通孔23を有している。内部貫通孔23は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路26を形成する。中間板22が図3に示されるように切り欠き部29を有する場合には、切り欠き部29以外の部分に内部貫通孔23が形成される。
ここで、中間板22が単数の場合には、中間板22に設けられている内部貫通孔23がそのまま毛細管流路になる。
一方、中間板22が複数である場合には、複数の中間板22のそれぞれに設けられた内部貫通孔23の一部のみが重なって、内部貫通孔23の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成される。このように、中間板22が複数である場合には、内部貫通孔23そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成されるので、毛細管流路26における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。毛細管流路26は、毛細管現象によって凝縮した冷媒を還流させるので、毛細管流路26の断面積が小さいことが冷媒の還流を促進させるからである。
なお、中間板22には、複数の内部貫通孔23が設けられる。毛細管流路26として機能するためには、内部貫通孔23が複数であることが好ましいからである。
内部貫通孔23は、中間板22の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔23の一部同士が重なって毛細管流路26を形成することから、内部貫通孔23は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
内部貫通孔23は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
中間板22が複数の場合には、内部貫通孔23は、複数の中間板22のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板22は、その内部貫通孔23の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔23の位置は、隣接する中間板22毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板22における内部貫通孔23の位置と、この中間板22と隣接する別の中間板22における内部貫通孔23の位置は、内部貫通孔23の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板22毎に内部貫通孔23の位置がずれていることで、複数の中間板22が積層された場合に、内部貫通孔23の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成される。
内部貫通孔23の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、ヒートパイプ18の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
なお、内部貫通孔23の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔23よりも小さな断面積を有する毛細管流路26が形成される場合には、毛細管流路26を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
なお、毛細管流路26は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもありえる。
また、毛細管流路26、凹部24の角部や切り欠き部29の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路26の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路26の断面形状は、内部貫通孔23の形状と、内部貫通孔23同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
(製造工程)
上部板20、下部板21、中間板22が積層されて接合されることでヒートパイプ18が製造される。
上部板20、下部板21および複数の中間板22(図6では中間板22は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板22は、複数の中間板22のそれぞれに設けられた内部貫通孔23のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
上部板20、下部板21および複数の中間板22の少なくとも一つは、接合突起を有している。
上部板20、下部板21、複数の中間板22は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
次に、上部板20や下部板21の一部に空けられた注入口27を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口27が封止されてヒートパイプ18が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、ヒートパイプ18の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
以上の工程で、熱拡散部2の一例である、平板状のヒートパイプ18が製造される。
このようにして製造されたヒートパイプ18の内部構造は、図8に示される。
冷却装置1は、熱拡散部2に上述のヒートパイプ18を用いることで、発熱体からの熱を効率よく拡散できる。このため、熱拡散部2を挟む複数の回路基板や回路層は、冷却装置1によって効率的に冷却される。特に、ヒートパイプ18の備える蒸気拡散路25および毛細管流路26の構造や形状によって、熱拡散部2は、受熱した熱の拡散方向を制御できる。結果として、熱拡散部2を挟む複数の回路基板や回路層における電子部品や配線パターンの実装形態への制約も減少する。例えば、熱拡散部2を挟む複数の回路基板の電子部品の実装形態に応じて、ヒートパイプ18の内部構造を変えればよい。例えば、ヒートパイプ18の中央付近に電子部品が多く集まる回路基板が冷却される場合には、図7に示されるように、中央から周辺に放射状となる蒸気拡散路25を有するヒートパイプ18が、熱拡散部2として用いられる。逆に、ヒートパイプ18の端部付近に電子部品が多く集まる回路基板が冷却される場合には、図9に示されるように、端部から端部への蒸気拡散路25を有するヒートパイプ18が熱拡散部2として用いられる。
図9は、本発明の実施の形態1における中間板の上面図である。図9は、端部から端部にかけて蒸気拡散路25と毛細管流路26とが形成されている中間板22(すなわちヒートパイプ18)を示している。図9に示される蒸気拡散路25と毛細管流路26とを備えるヒートパイプが、熱拡散部2として用いられることで、端部から端部に熱が拡散される。このため、熱拡散部2の端部付近に電子部品が多く集まる回路基板や回路層を有する電子基板の冷却に、図9のヒートパイプを有する冷却装置1は適している。
以上のように、実施の形態1における冷却装置は、電子基板の有する複数の回路基板や多層基板の有する複数の回路層を、同時あるいはフレキシブルに冷却できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、熱拡散部の側面に接続部材を備える冷却装置および熱拡散部が拡散した熱を放散する二次冷却部材を備える冷却装置について説明する。
まず、図10、図11を用いて、熱拡散部の側面の少なくとも一部と熱的に接触する接続部材を備える冷却装置について説明する。図10は、本発明の実施の形態2における冷却装置が装着された電子基板の斜視図であり、図11は、本発明の実施の形態2における冷却装置が装着された電子基板の側面図である。
冷却装置31は、熱拡散部32を備える。熱拡散部32は、実施の形態1で説明したように、金属や樹脂などで形成される板部材でもよく、平板形状のヒートパイプでもよい。また、電子基板40は、複数の回路基板41、42を備える。熱拡散部31は、回路基板41と回路基板42とに挟まれて装着される。すなわち、熱拡散部31は、回路基板41と回路基板42から同時あるいは個別に熱を受熱し、受熱した熱を拡散する。なお、電子基板40は、複数の回路基板41、42を備えても、複数の回路層を備える多層基板であってもよい。
冷却装置31は、熱拡散部32の側面の少なくとも一部と熱的に接触する接続部材33を更に備えている。接続部材33は、さらに放熱板34を接続している。
接続部材33は、熱拡散部32と別の部材(図10、図11では、放熱板34)とを接続する中間部材の役割を有する。接続部材33は、熱拡散部32の側面に装着するために、嵌合する爪や、挿入口などを有している。また、接続部材33は、コネクタであってもよい。接続部材33は、熱的接合材を介して、熱拡散部32と熱的に接触してもよい。
例えば、図11に示されるように熱拡散部32の側面をくわえるようにして、接続部材33が装着される。また、接続部材33は、他のさまざまな部材を接続可能である。例えば、図10、図11に示されるように、放熱板34を接続可能である。熱拡散部32の側面に接続部材33が装着されることで、放熱板34以外であっても、例えば熱輸送部材や二次冷却部材を接続することもできるし、電子基板40の外部に熱を輸送することもできる。
放熱板34は、熱拡散部31から接続部材33を介して伝導される熱を輸送および放散の少なくとも一方を行う。接続部材33は、熱拡散部31と放熱板34とを接続するだけでなく、熱拡散部31と放熱板34とを熱的に接続する役割も有する。熱拡散部31から伝導された熱は、放熱板34を移動する。更に、移動しながら熱は、外気に放散される。このように、放熱板34は、熱拡散部31から伝導される熱を輸送および放散する。
また、接続部材33は、熱拡散部31の側面に直接装着されるので、熱拡散部31の側面、表面および裏面の少なくとも一部から延伸する延長板に装着されてもよい。
図12、図13は、熱拡散部31の側面から延伸する延長板35に、接続部材33が装着される状態を示している。図12は、本発明の実施の形態2における冷却装置が装着された電子基板の斜視図であり、図13は、本発明の実施の形態2における冷却装置が装着された電子基板の側面図である。
熱拡散部31は、熱拡散部31の側面、表面および裏面の少なくとも一部から延伸する延長板35を更に備える。延長板35は、熱拡散部31に板部材が接着、溶接されて設けられてもよい。また熱拡散部31が実施の形態1で説明した平板形状のヒートパイプである場合には、ヒートパイプを構成する上部板、下部板および中間板のいずれかが、他の板部材よりもその面積が大きいことで、延長板35が形成されてもよい。この場合には、熱拡散部31と延長板35との間の熱抵抗が小さくなり、熱拡散部31が拡散する熱が、効率よく延長板35に伝導する。結果として、延長板35から接続部材33に効率的に熱が伝わる。
接続部材33は、延長板35の端部に装着されたり、延長板35の表面もしくは裏面に接続されたりする。いずれにしても、接続部材33は、延長板35と熱的に接触する。熱拡散部31の側面に、接続部材33が直接装着される場合と比較して、接続部材33が延長板35に装着される場合は、例えば、装着部分が薄い接続部材でも装着が容易となるメリットがある。あるいは、延長板35が熱拡散部31を構成する一部の部材(熱拡散部31が実施の形態1で説明したヒートパイプである場合の、上部板、下部板および中間板のいずれか)である場合には、熱拡散部31が拡散した熱は、延長板35に効率よく伝導される。このため、熱拡散部31が拡散した熱が、効率よく接続部材33に伝導するメリットがある。
以上のように、熱拡散部31に、直接あるいは延長板35を介して間接的に、接続部材33が接続されることで、熱拡散部31から拡散される熱の効率的な輸送や放散が行われる。
例えば、接続部材33を介して放熱板34が接続される場合には、放熱板34が電子基板40の外部に延伸して、電子基板40の外部で放熱板34が熱を捨てることも可能である。放散される熱によって電子基板40の電気的動作に影響が生じる場合でも、電子基板40の外部にまで延伸する放熱板34が、電子基板40への影響のない領域で、熱を放散できる。
特に、熱拡散部31が電子基板40を構成する回路基板41、42(あるいは多層基板の回路層)よりもその面積が小さい場合には、放熱板34は、電子基板40の外部に放散できる。
次に、延長板35が熱拡散部31から延伸して、熱の輸送および放散の少なくとも一方を行う場合について説明する。
図14は、本発明の実施の形態2における冷却装置が装着された電子基板の斜視図である。冷却装置30は、熱拡散部31を備える。熱拡散部31は、熱拡散部31の側面、表面および裏面の少なくとも一部から延伸する延長板35を備える。延長板35は、熱拡散部31を構成する部材と別部材が、接着や溶接されることで構成されてもよい。あるいは、熱拡散部31が実施の形態1で説明した平板形状のヒートパイプである場合には、ヒートパイプを構成する上部板、下部板および中間板のいずれかが、他の板部材よりもその面積が大きいことで、延長板35が形成されてもよい。この場合には、熱拡散部31と延長板35との間の熱抵抗が小さくなり、熱拡散部31が拡散する熱が、効率よく延長板35に伝導する。
延長板35は、板部材であるので、熱拡散部31から伝導される熱を輸送および放散の少なくとも一方を行う。特に、延長板35は、熱伝導率の高い素材であって表面積も大きいことで、熱の輸送や熱の放散を、効率よく行える。
また、延長板35は、電子基板40の外部にまで延伸することも好適である。例えば、図14に示されるように、熱拡散部31の面積が、回路基板41、42の面積よりも小さい場合には、延長板35が回路基板41、42の外部にまで延伸する。熱拡散部31は、熱を拡散する能力は高くても、回路基板41、42に挟まれているので、拡散した熱を捨てるのが難しい。このような場合でも、延長板35によって、熱拡散部31が拡散した熱が、放散される。
延長板35は、種々の形状を有していることが好適である。電子基板40を格納する筐体の形状や、内部構造に合わせて、延長板35の形状が定まればよい。
例えば、延長板35が、屈曲部や屈折部を有し、折り曲げられていてもよい。折り曲げられることで、延長板35の一部が筐体の内面に熱的に接触できるようになり、延長板35は、接触する筐体を経由して熱を捨てることができる。
冷却装置30は、延長板35が輸送した熱を放散する放熱部を更に備えることも好適である。放熱部は、延長板35を伝導した熱(もちろん、延長板35を伝導する間に熱が放散されてもよい)を、外気に放散したりあるいは冷却したりする。
放熱部は、延長板35が伝導した熱を放散させる機能を有する種々の部材を用いる。例えば、延長板35と熱的に接触する筐体であったり、延長板35から熱を奪って排熱する液冷ジャケットであったり、延長板35に熱的に接触する放熱板であったり、延長板35に風を送る冷却ファンであったり、ヒートシンクであったりする。これらのいずれかあるいは組み合わせが、放熱部として用いられればよい。
図14を用いて筐体を放熱部の一例として説明する。図14は、本発明の実施の形態2における冷却装置を装着した機器の内部透視図である。機器は、筐体50を有している。
冷却装置30は、熱拡散部31の側面から(図14においては、対抗する一組の側面のそれぞれから)延伸する延長板35を有している。延長板35は、2箇所の屈曲部によって折り曲げられ、略コの字状を有している。折り曲げられた延長板35は、筐体50の上面と熱的に接触する第1放熱面36と、筐体50の側面と熱的に接触する第2放熱面37とを有する。第1放熱面36および第2放熱面37は、必要に応じて熱的接合材60を介して、筐体50と熱的に接触する。筐体50は、機器の筐体となっており、電子基板40を格納する。
筐体50は、金属や合金などの熱伝率の高い素材で形成されていることが多い。このため筐体50は、延長板35に形成される第1放熱面36および第2放熱面37からの熱を受け取って外気に放散できる。特に、機器の小型化・薄型化に伴い、筐体50は、狭小空間しか有さない。このような狭小空間では、延長板35を筐体内部で遊ばせても、内部空間が狭小であるので、延長板35からの十分な放熱は困難である。これに対して、図14に示されるように、延長板35に第1放熱面36および第2放熱面37が設けられて筐体50と熱的に接触することで、冷却装置30は、筐体50を介して外部へ熱を放散できる。
このように、延長板35の少なくとも一部が、筐体50と熱的に接触することで、冷却装置30は、熱拡散部31からの熱を外気へ放散できる。なお、延長板35が第1放熱面36および第2放熱面37を設ける必要があるわけではなく、第1放熱面36と第2放熱面37とは一例である。
次に、図16を用いて、液冷ジャケットが放熱部の一例である場合について説明する。図16は、本発明の実施の形態2における冷却装置を装着した電子基板の側面図である。
冷却装置30は、熱拡散部31の側面の少なくとも一部から延伸する延長板35を有する。延長板35の先端において、液冷ジャケット52が延長板35の表面と熱的に接触する。液冷ジャケット52は、例えば内部を冷媒が循環して、熱を奪いつつ排熱する。液冷ジャケット52の一例としては、ウォーターポンプがある。液冷ジャケット52は、熱的接合材60を介して、延長板35と接触してもよい。
液冷ジャケット52が放熱部として用いられることで、冷却装置30は、熱拡散部31からの熱を効率的に放散できる。結果として、冷却装置30は、電子基板40を効率的に冷却できる。
次に、図17を用いて、放熱板が放熱部の一例として用いられる場合について説明する。図17は、本発明の実施の形態2における冷却装置を装着した電子基板の側面図である。
冷却装置30は、熱拡散部31の側面の少なくとも一部から延伸する延長板35を有する。延長板35の先端において、放熱板53が延長板35の表面と熱的に接触する。放熱板53の一例としては、金属製、樹脂製、合金製の板部材がある。放熱板53は、熱的接合材60を介して、延長板35と接触してもよい。放熱板53は、延長板35から受け取った熱を、外気に放散する。この結果、熱拡散部31が発熱体から受熱した熱は、外気に放散される。
放熱板53が放熱部として用いられることで、冷却装置30は、熱拡散部31からの熱を効率的に放散できる。結果として、冷却装置30は、電子基板40を効率的に冷却できる。
次に、図18を用いて、冷却ファンが放熱部の一例として用いられる場合について説明する。図18は、本発明の実施の形態2における冷却装置を装着した電子基板の側面図である。
冷却装置30は、熱拡散部31の側面の少なくとも一部から延伸する延長板35を有する。冷却装置30は、延長板35の表面に送風する冷却ファン55を備える。冷却ファン55は、延長板35の表面の少なくとも一部(もちろん、裏面の少なくとも一部であってもよい。要は、冷却ファン55は、延長板35に風を当てることができればよい)に風を当てる。冷却ファン55の送風によって、延長板35が伝導する熱が放散される。すなわち、冷却ファン55は、熱拡散部31から延長板35に伝導した熱を放散できる。結果として、電子基板40から熱拡散部31が受熱した熱が、外気へ放散されることになる。
このように、冷却装置30が、延長板35へ送風する冷却ファン55を有することで、冷却装置30は、電子基板40を効率的に冷却できる。
次に、図19を用いて、ヒートシンクが放熱部の一例として用いられる場合について説明する。図19は、本発明の実施の形態2における冷却装置を装着した電子基板の側面図である。
冷却装置30は、熱拡散部31の側面の少なくとも一部から延伸する延長板35を有する。冷却装置30は、延長板35の先端と熱的に接触するヒートシンク57を備える。ヒートシンク57は、基体と基体に立設するフィンとを有する。また、ヒートシンク57は、必要に応じて熱的接合材60を介して延長板35と熱的に接触する。ヒートシンク57は、延長板35から熱を奪い取って、フィンを通じて、外気に放熱する。
このように、冷却装置30が、延長板35と熱的に接触するヒートシンク57を備えることで、冷却装置30は、電子基板40を効率的に冷却できる。
なお、図15〜図19に示される延長板35は、熱拡散部31と一体であっても別体であってもよい。別体である場合には、延長板35が、熱拡散部31の側面に装着される。
このように、延長板35が熱拡散部31から電子基板40の外部へ延伸し、延伸した延長板35に種々の放熱部が取り付けられることで、熱拡散部31が電子基板40から奪った熱が、電子基板40の外部で効率的に放散される。
また、延長板35は、熱拡散部31の側面と別体で構成される場合には、延長板35は、熱拡散部31の側面の少なくとも一部に装着部を有する装着部を有する構造でもよい。
図20は、本発明の実施の形態2における延長板の側面図である。
延長板35は、装着部59を有して、この装着部59は熱拡散部31の側面に装着される。装着部59が熱拡散部31の側面に装着されることで、熱拡散部31の側面に、延長板35が取り付けられる。
以上のように、実施の形態2における冷却装置は、電子基板から奪い取った熱を、電子基板の外部に捨てることができる。結果として、冷却装置は、効率的に電子基板および電子基板に実装されている発熱体を冷却できる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
実施の形態3における冷却装置は、熱拡散部を挟む第1回路実装面と第2回路実装面とを、電気的に接続するビアホールを、熱拡散部が有する構成について説明する。
なお、熱拡散部は、第1回路実装面と第2回路実装面とに熱的に接触するが、電子基板が複数の回路基板を有する場合には、第1回路実装面および第2回路実装面は、複数の回路基板のそれぞれであり、電子基板が多層基板である場合には、第1回路実装面および第2回路実装面は、多層基板に含まれる回路層である。
このため、実施の形態3で説明するビアホールは、熱拡散部を挟む一組の回路基板同士を電気的に接続することでもよく、熱拡散部を挟む一組の回路層を電気的に接続することでもよい。また、熱拡散部を挟む回路基板同士や回路層同士が、電気的に接続されるということは、これらの回路基板や回路層と電気的に接続される他の回路基板や回路層も、電気的に接続されるということである。
図21は、本発明の実施の形態3における冷却装置を装着した電子基板の側面図である。
図21においては、第1回路実装面81と第2回路実装面82を有する電子基板80を示している。熱拡散部71は、第1回路実装面81と第2回路実装面82とに挟まれている。なお、電子基板80は、複数の回路基板を有していてもよいし、多層基板であってもよい。
熱拡散部71は、実施の形態1、2で説明したように、金属、合金、樹脂などで形成される板部材であったり、平板形状のヒートパイプであったりすればよい。平板形状のヒートパイプの場合には、上部板、下部板、中間板が積層されて形成されればよい。
熱拡散部71は、ビアホール72を有する。ビアホール72は、熱拡散部71の表面と裏面を貫通する。第1回路実装面81および第2回路実装面82のそれぞれは、電子部品85、電子部品86をそれぞれ実装している。電子部品85と電子部品86とは、電気的に接続される必要がある場合がある。電子部品85は第1回路実装面81に実装されており、電子部品86は、第2回路実装面82に実装されている(なお、第1回路実装面81と第2回路実装面82の面は、熱拡散部71と直接接する面およびその対向する面を含んでいる)。
第1回路実装面81と第2回路実装面82との間には、熱拡散部71があるので、このままでは電子部品85と電子部品86とは電気的に接続できない。電子部品85と電子部品86とで説明しているが、第1回路実装面81および第2回路実装面86のそれぞれも、電気信号によって動作するので、第1回路実装面81と第2回路実装面82との電気的接続も必要な場合がある。この場合にも、熱拡散部71が阻害要因となって、第1回路実装面81と第2回路実装面82とが電気接続できない。
このように、第1回路実装面と第2回路実装面とを同時あるいはフレキシブルに冷却できる冷却装置は、第1回路実装面と第2回路実装面との電気接続を阻害しうることがある。
図21に示される冷却装置70は、熱拡散部71にビアホール72が設けられることで、第1回路実装面81と第2回路実装面82とを電気的に接続できる。ビアホール72は、熱拡散部71の表面から裏面にかけて貫通しており、第1回路実装面81と第2回路実装面82とを電気的に接続できる。例えば、第1回路実装面81から伸びる導電線(リード線や銅線など)が、ビアホール72を経由して、第2回路実装面82に到達してもよい。この導電線が、第1回路実装面81の電子部品と第2回路実装面82の電子部品とを接続できる。
あるいは、第1回路実装面81および第2回路実装面82において、熱拡散部71と接触しない面に実装された電子部品同士が接続されてもよい。図21は、このような構成を示している。
第1回路実装面81は、熱拡散部71と接触しない面に電子部品85を実装する。同様に、第2回路実装面82は、熱拡散部71と接触しない面に電子部品86を実装する。電子部品85および電子部品86は、ボールグリッドアレイ(以下、「BGA」という)を有しており、このBGAによって回路基板や回路層に電気接続される。電子部品85は、第1回路実装面81である回路基板や回路層のビアホールを通じて導電線89を熱拡散部71に延ばせる。導電線89は、ビアホール72を経由して、第2回路実装面82に到達できる。第2回路実装面82である回路基板や回路層は、ビアホールを有しており、導電線89を電子部品86に接続できる。
以上のように、熱拡散部71と接触しない面に実装された電子部品85および電子部品86同士も、熱拡散部71のビアホール72によって電気的に接続される。
なお、ビアホール72は、導電線を通すだけでなく、内部が導電膜で覆われており、第1回路実装面81と第2回路実装面82とを、この導電膜によって電気接続してもよい。また、ビアホール72の内部が導電膜で覆われていることで、第1回路実装面81と第2回路実装面82のそれぞれに形成される配線パターン同士が電気的に接続されることも好適である。
また、図22に示されるように、熱拡散部71は、複数のビアホール72を備えていてもよい。図22は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの斜視図である。
なお、実施の形態1で説明した、熱拡散部71がヒートパイプである場合には、ヒートパイプを構成する各部材に予め貫通孔が設けられておき、各部材が積層されることで貫通孔がビアホールを形成することでもよい。この場合には、非常に微細なビアホールを形成できる。
図23にヒートパイプにビアホールを形成する一例を示す。図23は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの模式図である。図23(a)は、製造時に各部材が分割された状態を示しており、図23(b)は、各部材が封止されてヒートパイプ91が完成した状態を示している。
ヒートパイプ91は、平板状の上部板92と、平板状の下部板93と、平板状の複数の中間板100を備えている。
下部板93は、上部板92と対向しており、その形状、大きさはほぼ同一であることが適当である。勿論、異なっていても本発明の意図は逸脱しない。
複数の中間板100のそれぞれは、上部板92と下部板93の間に積層される。また、複数の中間板100のそれぞれは、内部貫通孔101を有している。複数の中間板100が積層される際には、内部貫通孔101同士の一部のみが重なって、内部貫通孔101そのものの断面積よりも小さな断面積を有する毛細管流路105が形成される。毛細管流路105は、凝縮した冷媒が還流する通路となる。
また、上部板92、下部板93および複数の中間板100のそれぞれは、外部貫通孔102を有している。これらの外部貫通孔102は、上部板92、下部板93および複数の中間板100の全てが積層される際には、同一位置において重なり合ってビアホール94を形成する。ビアホール94は、上部板92から下部板93までを貫通しており、ヒートパイプ91の上面と底面とを、電気的に接続できる。すなわち、第1回路実装面と第2回路実装面とを、ビアホール94は電気的に接続できる。また、当然ながら、ヒートパイプ91の上面や底面に実装された電子部品や配線パターン同士を、ビアホール94は、電気的に接続できる。
外部貫通孔102は、ヒートパイプ91が構成された後で形成されるのではなく、積層される部材(上部板92、下部板93、複数の中間板100のそれぞれ)毎に予め形成される。
板状の部材に貫通孔を形成する際には、形成される貫通孔周辺の変形やクラックなどを生じさせない加工限度がある。貫通孔の形成においては、板状の部材の厚みをt、貫通孔の直径をφdとすると、
(1/2)*t ≦ φd ・・ (数1)
との加工限度が成立する。すなわち、より小さな貫通孔を形成するためには、板状の部材の厚みを薄くする必要がある。部材の厚みが大きいと、(数1)で表されるとおり、貫通孔の直径を大きくする必要がある。貫通孔の直径を小さくするためには、加工時においてかなりの圧力を小さい領域に集中させる必要があり、貫通孔周辺への影響が大きくなりうるからである。
一方で、ヒートパイプ91にビアホール94を形成するに当たっては、使用上の便宜およびヒートパイプ91の性能劣化防止のために、ビアホール94の直径は小さい方が好ましい。
しかしながら、数1で表される加工限度があるために、ヒートパイプ91の構成後にビアホール94を形成すると、ビアホール94の直径がどうしても大きくなる。これは、どんなに薄型のヒートパイプ91であっても、ビアホール94の直径がヒートパイプ91の厚みに依存するからである。
これに対して、部材毎に外部貫通孔102が形成されることで、ビアホール94の直径を小さくできる。ヒートパイプ91自体は一定の厚みが不可避であるが、積層される部材のそれぞれは、ヒートパイプ91そのものの厚みよりもかなり薄くできる。このため、部材毎に設けられる外部貫通孔102の直径は小さくできる。
図23のヒートパイプ91は、上部板92、下部板93および複数の中間板100のそれぞれが積層されて構成される。このとき、上部板92、下部板93および複数の中間板100のそれぞれに設けられた外部貫通孔102同士が同一位置で重なることで、上部板92から下部板93までを貫通するビアホール94が形成される。この結果、ビアホール94は、ヒートパイプ91の厚みを基準にした加工限度(数1で示される加工限度)で定義される直径以下であって、部材毎の厚みを基準にした加工限度(数1で示される加工限度)で定義される直径以上を有する。
このような直径を有するビアホール94は、加工限度を超えることのない、小さな直径を有することになる。結果として、加工上、製造上の問題を生じさせること無く、使用上の便宜およびヒートパイプ91の性能劣化防止を実現するビアホール94が、ヒートパイプ1に形成できる。
例えば数1を考慮すると、ビアホール94の直径φdを2mmにするためには、ビアホール94を空ける部材の厚みを4mm以下にする必要がある。ビアホール94が、ヒートパイプ91に直接形成されるとすると、ヒートパイプ91を4mm以下の厚みにする必要がある。これはかなりの困難を伴う。
一方、部材毎に外部貫通孔102を形成する場合には、これらの部材を直径2mmのビアホールのために必要な4mm以下とするのは容易である。
ヒートパイプ91の厚みを4mmとすると、上部板92、下部板93、2枚の中間板100(複数の中間板100を2枚と仮定して)の厚みは、それぞれ約1mmずつになる。各部材の厚みが1mmである場合には、外部貫通孔102の直径φdは、0.5mmまで小さくできる。ビアホール94は、外部貫通孔102同士が重なったものである。このため、ビアホール94の直径は0.5mmとなる。
このように、図23に示されるヒートパイプ91のビアホール94の直径は、加工限度である2mmを大幅に改善し、0.5mmとなる。すなわち、ビアホール94は、非常に微小となる。
ビアホール94の直径が非常に微小となると、第1回路実装面と第2回路実装面との電気的な接続における電気抵抗も小さくなり、電子基板の動作精度が向上する。
以上のように、実施の形態3における冷却装置によって、熱拡散部を挟む回路基板や回路層同士を、導電線の引き回しに依ることなく、電気的に接続できる。結果として、電子基板や冷却装置の利用価値が高まる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
実施の形態4は、実施の形態1〜3で説明した冷却装置を装着した電子基板および電子基板を使用した電子機器について説明する。
図24は、本発明の実施の形態4における電子機器の内部透視図である。
電子機器130は、電子基板120とこれを格納する筐体125とを備える。電子機器130は、電子基板120が備える機能によって、種々の動作を提供する。また、冷却装置111は、電子基板120に装着される。電子基板120は、複数の回路基板121、122を有している。なお、電子基板120は、多層基板であって、複数の回路層を有していてもよい。
電子基板120が備える回路基板121と回路基板122は、その間に熱拡散部112を挟んでいる。熱拡散部112は、回路基板121および回路基板122から熱を受熱し、熱を拡散して延長板115に伝導する。延長板115は、折り曲げられており、第1放熱面116と第2放熱面117を備える。この第1放熱面116と第2放熱面117とは、筐体125と熱的に接触し、筐体125から外気へ熱を放散する。このとき、第1放熱面116および第2放熱面117は、熱的接合財127を介して筐体125と熱的に接触してもよい。
電子基板120は、このように、回路基板121および回路基板122を、冷却装置111によって冷却できる。このとき、冷却装置111によって、回路基板121および回路基板122を同時に冷却したり、個別に冷却したりできる。冷却装置111が回路基板121と回路基板122とに挟まれているので、回路基板121と回路基板122とは、冷却装置111によって、フレキシブルに冷却される。電子基板120が冷却されることで、発熱による誤動作や動作不良が生じにくくなる。
このように、冷却装置111を装着する電子基板120が実装された電子機器130は、電子部品や電子基板の過度な発熱や過度な発熱による不具合を防止できる。このような電子機器130は、多種多様な用途の機器に適用される。
例えば、電子機器130の例としては、ノートブックパソコン、デスクトップパソコン、サーバ機器、携帯端末、携帯電話機、車載電子端末などがある。
電子機器の一例を図25に示す。図25は、本発明の実施の形態4における電子機器の斜視図である。電子機器200は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
電子機器200は、ディスプレイ201、発光素子202、スピーカ203を備えている。この電子機器200の内部に冷却装置111を装着した電子基板120が格納されている。
冷却装置111は、電子基板120の内部に装着されるので、電子機器の小型化や薄型化を阻害せずに、電子基板や発熱体を冷却できる。結果として、電子機器200の動作不良や性能劣化が防止できる。
このように考えると、冷却装置111は、ノートブックパソコン、携帯端末、コンピュータ端末などに実装されている放熱フィンや液冷装置などに置き換えられたり、自動車や産業機器のライト、エンジン、制御コンピュータ部に実装されている放熱フレームや冷却装置などに、好適に置き換えられたりすることが可能である。結果として、冷却装置111や、冷却装置111を装着する電子基板120は、広い範囲(電子機器、産業機器、自動車、航空機、輸送機器など)に適用できる。
また、実施の形態1〜4で説明された冷却装置や電子基板は、多数の電子基板を備えるコンピュータやサーバ機器にも好適に適用できる。
図26は、本発明の実施の形態4におけるサーバ機器の内部透視図である。図26は、電子機器の一例としてのサーバ内部に、実施の形態1〜4で説明した冷却装置や電子基板を適用した例を示している。
サーバ機器300は、筐体301を備え、筐体301内部に電子基板を差し込むスロット302を備えている。スロット302には、複数の電子基板303、304が差し込まれている。
電子基板303は、回路基板305、306を備え、回路基板305と回路基板306との間に熱拡散部321を装着している。熱拡散部321は、冷却装置320に含まれる。
同様に、電子基板304は、回路基板307、308を備え、回路基板307と回路基板308との間に熱拡散部331を装着している。熱拡散部331は、冷却装置330に含まれる。ここで、電子基板が二つである場合が示されているが、回路基板のそれぞれを電子基板としてみなせば、4枚の電子基板がスロット302に差し込まれていると考えられる。
すなわち、スロット302に差し込まれている複数の電子基板の中で、2枚を一組とする電子基板セット毎に、冷却装置が実装されることでもよい。
また、図26では、2つの冷却装置320、330が示されているが、冷却装置としては全体で1つであって、1つの冷却装置が複数の熱拡散部を備える構成であってもよい。
筐体301は、上部に冷却ファン309を備え、冷却ファン309の送風方向に合わせて、筐体301は、排気口310を備える。
熱拡散部321、331のそれぞれは、延長板322、332を備え、延長板322、332のそれぞれは、折り曲げられて、冷却ファン309からの風を受ける位置にまで、延伸する。延長板322、332のそれぞれは、冷却ファン309からの風を受けて、熱を放散できる。放散された熱は、排気口310より筐体301の外部へ排出される。このような構成を有するサーバ機器300によって、サーバ機器300内部の発熱が、一定以下に抑えられる。
特に、サーバ機器300は、多数の電子基板を実装していることが多く、24時間体制で動作しているので、内部は非常に高温になりやすい。
図26で示すように、電子基板のそれぞれにおいて、冷却装置が装着されることで、サーバ機器300の発熱が抑えられて、動作不良や性能劣化が防止できる。
このように、実施の形態1〜4で説明した冷却装置は、複数の電子基板に挟まれて装着されるので、多数の電子基板が整然と格納されるサーバ機器やコンピュータ機器に好適に適用できる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。
実施の形態5では、電子基板に設けられた凹部に熱拡散部が装着される場合を説明する。
図27は、本発明の実施の形態5における冷却装置の側面図である。図27は、側面の途中における断面を示している。
冷却装置400は、凹部402を有する電子基板401と、凹部402に装着される熱拡散部403とを有し、熱拡散部403の表面、裏面および側面の少なくとも一部は、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触する。
電子基板401は、発熱体404を実装している。発熱体404は、電子基板401に実装された電子部品、半導体集積回路、電子素子などである。
電子基板401は、種々の電子機器に実装される基板であり、電子機器の形状や構造に依存した形状や大きさを有している。このような電子基板において、表面に凹部402が設けられることがある。多層基板の一部が取り除かれたり、電子機器の形状に対応したりすることによる。あるいは、電子基板401における発熱を冷却する必要があるが、電子基板401の外部に冷却装置がはみ出る状態を回避する必要がある場合がある。このような場合には、電子基板401の一部に凹部401が設けられ、この凹部401に熱拡散部403が挿入されることで、熱拡散部403(すなわち、冷却装置)が電子基板401の表面より突出せずに済む。
このような理由に基づき、電子基板401は、凹部402を備える。
電子基板401は、凹部402と対向する面において発熱体404を実装する。発熱体404が発する熱は、周囲の電子部品や電子基板401そのものに悪影響を与えたり、自らの動作に悪影響を与えたりすることがある。しかしながら、発熱体404の表面に熱拡散部403を設置すると電子基板401から突出することになり、電子基板401が電子機器内部で実装しにくくなる。一方で、発熱体404が発する熱は、電子基板401内部に伝導し、電子基板401を高温にしてしまうことも多い。
図27に示される冷却装置400は、熱拡散部403を凹部402に挿入している。熱拡散部403は、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触し、凹部402から電子基板401(ひいては発熱体404)の熱を奪う。熱拡散部403は、内部空間に冷媒を封入する。熱拡散部403は、凹部402から奪った熱によって気化した冷媒の拡散と、冷却されて凝縮した冷媒の還流とによって、凹部402からの熱を拡散して冷却する。
熱拡散部403は、凹部402に挿入されるので、電子基板401において熱拡散部403による突出は生じない。このため、電子基板401は、熱拡散部403によって冷却されると共に電子機器での実装における不具合をも生じさせない。
また、熱拡散部403が凹部402に設置されることは、電子基板401での突出を防止できるだけではなく、熱拡散部403が電子基板401からの熱を二次元あるいは三次元的に奪うことができるメリットを生じさせる。熱拡散部403は、その裏面および側面を、凹部402の表面および側面と熱的に接触させることができる。このため、熱拡散部403は、電子基板401の熱を、熱拡散部403の裏面および側面の両面から奪うことができる。
この結果、凹部402に熱拡散部403が設置されることで、電子基板401がより効率的に冷却される。熱拡散部403は、放射状あるいは直線状に熱を拡散する。
ここで、熱拡散部403は、一例として図6に示されるヒートパイプの構成を有する。すなわち、熱拡散部403は、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数又は複数の中間板を備える。上部板および下部板とによって内部空間が形成され、この内部空間に封止された冷媒の気化と凝縮によって、発熱体から受熱した熱を拡散する。また、中間板は切り欠き部と内部貫通孔を備えている。切り欠き部は、気化した冷媒が拡散する蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は、凝縮した冷媒が還流する毛細管を形成する。
図6は、このような構造を有するヒートパイプ18を示している。
(上部板)
上部板20は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
上部板20は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板20は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
上部板20は、その一方の面であって中間板22と対向する面に、蒸気拡散路25および毛細管流路26の少なくとも一方と連通する凹部24を有していることも好ましい。凹部24が毛細管流路26と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板20から毛細管流路26へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部24が蒸気拡散路25と連通することで、気化した冷媒が、放熱面に広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。更には、凹部24が蒸気拡散路25と連通することで、蒸気拡散路25を拡散する気化した冷媒が凹部24も伝わるので、気化した冷媒は厚み方向にも拡散することになる。結果として、ヒートパイプ18は、受熱した熱を平面方向および垂直方向に拡散する。
なお、熱拡散部2が地表面に対して水平に設置される場合には、平面方向は地表面に対して水平方向であって、垂直方向は地表面に対して垂直方向である。熱拡散部2が地表面に対して斜めや垂直に設置された場合には、平面方向は平板形状の熱拡散部2の平板方向であって、垂直方向は平板形状の熱拡散部2の厚み方向である。
上部板20は、中間板22と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板20は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板21と特段に区別されるものでもない。また、上部板20が放熱面側となっても、受熱面側となっても特に問題はない。
また、上部板20は、冷媒の注入口27を備えている。上部板20、中間板22、下部板21が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板20などの接合後に注入口27から冷媒が封入される。注入口27は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
なお、冷媒は、積層後に注入口27から封入されても良く、上部板20、下部板21、中間板22が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
(下部板)
下部板21は、上部板20と対向して単数又は複数の中間板22を挟む。
下部板21は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板20と対向してヒートパイプ18を形成するので、上部板20と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
下部板21は、その一方の面であって中間板22と対向する面に、蒸気拡散路25と毛細管流路26に連通する凹部24を有していることも好適である。下部板21に凹部24が設けられることは、上部板20に凹部24が設けられることと同様の意味を有する。
下部板21は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板20と特段に区別されるものでもない。
下部板21は、中間板22と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
また、下部板21が放熱面側となっても、受熱面側となっても特に問題はない。
(中間板)
単数又は複数の中間板22は、上部板20と下部板21の間に積層される。
中間板22は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板20および下部板21に挟まれてヒートパイプ18を形成するので、上部板20および下部板21と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板20および下部板21に挟まれるので、中間板22の面積は、上部板20および下部板21と同一でも良く、若干小さくてもよい。
中間板22は、上部板20および下部板21と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板22は、微小な断面積を有する内部貫通孔23を有している。この内部貫通孔23は、毛細管流路26を形成する。
最終的には、上部板20と下部板21の間に中間板22が積層されて接合されることで、ヒートパイプ18が形成される。中間板22は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路26を形成するためには、中間板22は、複数であることが好ましい。
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、中間板22、蒸気拡散路25および毛細管流路26について、図7も参照しながら説明する。
まず、蒸気拡散路25について説明する。
中間板22は、切り欠き部29と内部貫通孔23を有している。
切り欠き部29は、ヒートパイプ18における蒸気拡散路25を形成する。上部板20と下部板21の間に中間板22が積層された場合に、切り欠き部29は空隙を形成することになる。この空隙が蒸気拡散路25を形成する。
ここで、切り欠き部29が、ヒートパイプ18の平面方向に向けて形成されることで、蒸気拡散路25も、ヒートパイプ18の平面方向に向けて形成される。このため、気化した冷媒は平面方向に拡散するようになる。加えて、切り欠き部29は、上部板20と下部板21とにつながっているので、蒸気拡散路25は、上部板20から下部板21にまでつながる。更には、上部板20および下部板21に設けられた凹部24と蒸気拡散路25とは連通する。この結果、蒸気拡散路25は、平面方向および垂直方向に気化した冷媒を拡散させる。
特に、図7に示されるように、切り欠き部29が中間板22の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路25もヒートパイプ18の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、ヒートパイプ18の略中央部に設置されることが多いので、冷媒はヒートパイプ18の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、ヒートパイプ18の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路25がヒートパイプ18の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に拡散しやすくなる。
このように、中間板22が切り欠き部29を有し、平面方向および垂直方向に広がる蒸気拡散路25が形成されることで、ヒートパイプ18の内部においては、気化した冷媒が平面方向および垂直方向に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、ヒートパイプ18内部を平面方向および垂直方向に拡散する。
なお、蒸気拡散路25は、図7にしめされるような放射状でなくとも別の形状であってもよい。
次に毛細管流路26について説明する。
中間板22は、内部貫通孔23を有している。内部貫通孔23は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路26を形成する。中間板22が図3に示されるように切り欠き部29を有する場合には、切り欠き部29以外の部分に内部貫通孔23が形成される。
ここで、中間板22が単数の場合には、中間板22に設けられている内部貫通孔23がそのまま毛細管流路になる。
一方、中間板22が複数である場合には、複数の中間板22のそれぞれに設けられた内部貫通孔23の一部のみが重なって、内部貫通孔23の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成される。このように、中間板22が複数である場合には、内部貫通孔23そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成されるので、毛細管流路26における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。毛細管流路26は、毛細管現象によって凝縮した冷媒を還流させるので、毛細管流路26の断面積が小さいことが冷媒の還流を促進させるからである。
なお、中間板22には、複数の内部貫通孔23が設けられる。毛細管流路26として機能するためには、内部貫通孔23が複数であることが好ましいからである。
内部貫通孔23は、中間板22の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔23の一部同士が重なって毛細管流路26を形成することから、内部貫通孔23は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
内部貫通孔23は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
中間板22が複数の場合には、内部貫通孔23は、複数の中間板22のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板22は、その内部貫通孔23の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔23の位置は、隣接する中間板22毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板22における内部貫通孔23の位置と、この中間板22と隣接する別の中間板22における内部貫通孔23の位置は、内部貫通孔23の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板22毎に内部貫通孔23の位置がずれていることで、複数の中間板22が積層された場合に、内部貫通孔23の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路26が形成される。
内部貫通孔23の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、ヒートパイプ18の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
なお、内部貫通孔23の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔23よりも小さな断面積を有する毛細管流路26が形成される場合には、毛細管流路26を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
なお、毛細管流路26は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもありえる。
また、毛細管流路26、凹部24の角部や切り欠き部29の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路26の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路26の断面形状は、内部貫通孔23の形状と、内部貫通孔23同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
熱拡散部403は、以上のような構造を有し、凹部402から奪い取った熱を拡散する。
また、冷却装置400は、熱拡散部403が拡散した熱を放熱する放熱部を備えていることも好適である。
図28は、本発明の実施の形態5における冷却装置の側面図である。
図28に示される冷却装置400は、凹部402を有する電子基板401と、凹部402に装着または挿入される熱拡散部403と、を備え、熱拡散部の表面、裏面および側面の少なくとも一部は、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触し、更に、熱拡散部403が拡散した熱を放熱する放熱部405を備える。
冷却装置400は、熱拡散部403が拡散した熱を放熱する放熱部405を備える。放熱部405は、熱拡散部403と熱的に接触しており、熱拡散部403から熱が伝導する。放熱部405は、伝導された熱を外界に放散する。このとき、放熱部405は、効率的に放熱できる面積や形状を有する板材であり、外気と接触することで伝導された熱を放散する。あるいは、放熱部405は、電子機器の筐体と熱的に接触し、熱拡散部403から伝導された熱を電子機器の筐体に放散する。
このようにして、放熱部405は、熱拡散部403からの熱を外界へ放散する。
なお、放熱部405は、板材でもよいしヒートシンクであってもよい。
放熱部405は、熱拡散部403を構成する上部板、下部板、中間板の少なくとも1つが、他よりもその面積が大きいことで熱拡散部403の側面から突出する部位によって構成されてもよい。放熱部405が熱拡散部403を構成する部材と一体であることで、熱拡散部403から放熱部405へ熱が伝わる際の熱抵抗が小さくなる。熱抵抗が小さいことで、熱拡散部403から放熱部405への熱伝導での損失が少なく、放熱部405は熱拡散部403からの熱を効率的に放散できる。
なお、熱拡散部403は、熱的接合材(Thermal Interface Material)を介して凹部402と熱的に接触してもよい。
放熱部405は、電子基板401の外部にまで延伸して、電子基板401の外部に設けられた筐体と熱的に接触して熱を放散してもよい。また、放熱部405が外部に延伸した上で、放熱部405の先端にフィンが設けられたり、放熱部405に冷気を送風する冷却ファンが設けられたり、放熱部405を冷却する液冷ジャケットが設けられたりすることも好適である。
加えて、放熱部405は、電子機器の筐体の形状や大きさに適合するように、屈曲や屈折を有していたり、他の放熱板と接続可能な接続部材を有していたりすることも好適である。
次に、電子基板401は、サーマルビアを有し、熱拡散部403がサーマルビアを介して発熱体404からの熱を奪う場合について説明する。
図29は、本発明の実施の形態5における冷却装置の側面図である。図29は、電子基板401がサーマルビア410を有し、熱拡散部403は、発熱体404の熱を、サーマルビア410を介して奪う構成を示している。
図29に示される冷却装置400は、凹部402を有する電子基板401と、凹部402に装着される熱拡散部403とを有し、熱拡散部403の表面、裏面および側面の少なくとも一部は、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触し、電子基板401は、凹部402と対向する面において発熱体404を実装し、電子基板401は、発熱体404と凹部402とを熱的に接続するサーマルビア410を備える。
発熱体404となる電子部品は、電子基板401において凹部402と対向する回路面(逆の回路面)に実装されることが多い。特に、発光素子やパワーデバイスのように、発熱量は大きいが、小型の電子部品は、凹部402の対向する回路面に実装される。これらの発熱体404は、電子基板401を伝導して熱を凹部402に伝えるが、電子基板401の素材によっては、熱伝導が不十分であることもある。サーマルビア410は、発熱体404が生じさせる熱を効率よく凹部402に伝導させる。
サーマルビア410は、電子基板401に穿たれた貫通孔でもよいし、貫通孔の内周が熱伝導性の高い素材でコーティングされている場合でもよい。この場合には、発熱体404からの熱は、電子基板401から熱伝導性の高いコーティングを通って、凹部402に到達する。凹部402に到達した後で、発熱体404の熱は、熱拡散部403に伝わって、熱拡散部403は、熱を拡散する。
熱拡散部403は、ヒートパイプ構造を有しており、封入されている冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、奪った熱を拡散する。拡散された熱は、熱拡散部403の表面から外界に放散されたり、図28に示されるような放熱部によって外界に放散されたりする。このとき、熱拡散部403や放熱部が電子基板401を格納する電子機器の筐体と熱的に接触することで、熱拡散部403が拡散した発熱体404の熱を外界に放散できる。
また、図29に示される冷却装置400は、電子基板401に設けられた凹部402に挿入されるので、電子基板401の外形を損なうことがない。すなわち、冷却装置400は、不要な突出を生じさせない。このため、冷却装置400の電子機器への実装において不具合が生じない。加えて、凹部402に熱拡散部403が挿入されるので、熱拡散部403と発熱体404との距離が縮まる。この結果、熱拡散部403は、サーマルビア410を通じて、効率的に発熱体404からの熱を奪い取ることができる。
凹部402は、その表面に電子部品などの発熱体を実装していることもある。
図30は、本発明の実施の形態5における冷却装置の側面図である。図30は、凹部402の表面に発熱体が実装されており、熱拡散部403は、これらの発熱体の熱を奪う構成であることを示している。
図30に示される冷却装置400は、凹部402を有する電子基板401と、凹部402に装着または挿入される熱拡散部403と、を備え、熱拡散部の表面、裏面および側面の少なくとも一部は、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触し、凹部402の表面に発熱体412が実装され、熱拡散部403は、発熱体412と熱的に接触する。
例えば、大型のCPUなどは凹部402に熱拡散部403と共に実装されることもありえる。大型のCPUは、電子基板401の特定の面の特定の位置に実装されることが多く、大きな熱を生じさせる。
このため、冷却装置400は、熱拡散部403を発熱体412に熱的に接触させることが好ましい。更には、大型の電子部品と熱拡散部403とが、電子基板401の外部に突出することなく装着・実装されることが好ましい。
電子基板401は凹部402を有しており、凹部402に発熱体412が実装されている。熱拡散部403は、この発熱体412に熱的に接触するように凹部402に装着される。熱拡散部403は、発熱体412から熱を奪って拡散し、必要に応じて放熱部などを通じて奪った熱を外界に放散する。
CPUをはじめとする大型の発熱体412とこれを冷却する熱拡散部403とが、凹部402に装着されることで、電子基板401に不要な突出などがなくなり、電子基板の電子機器への格納が容易となる。また、全体としてすっきりとした外観であることによって、冷却装置400が装着された電子基板としての製造、流通が容易となって、電子部品や電子基板のサプライヤーにとっての、販売品の取り扱いが容易となる。
図31は、図27〜図30を用いて説明した冷却装置を上から見た図を示している。図31は、本発明の実施の形態5における冷却装置の上面図である。図31に示されるように、電子基板401は、凹部402を有し、凹部402に熱拡散部403が挿入あるいは装着される。
この熱拡散部403の表面、裏面および側面の少なくとも一部が、凹部402の表面および側面の少なくとも一部と熱的に接触する。この結果、熱拡散部403は、電子基板401あるいは電子基板401に実装されている発熱体からの熱を奪って拡散し、外界に放散する。
なお、凹部402は、図31に示されるように電子基板401の中央近辺に設けられてもよいし、端部に設けられてもよい。電子基板401の形状や電子部品の実装状態に合わせて凹部402の位置が決められればよい。
なお、図27〜図30は、電子基板401の側面から見た状態を示しているが、いずれも把握を容易とするために凹部402を基準とする断面にて示している。
以上のように、電子基板401が備える凹部402に熱拡散部403が装着されることで、冷却装置400は、電子基板の外形に不要な突出を生じさせず、電子機器への格納を容易とすることができる。
以上、実施の形態1〜4で説明された冷却装置、電子基板および電子機器は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。