(第1の実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、図1を参照して、本発明が適用されるエンジンの排気ガス浄化システムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンの排気ガス浄化システムのシステム構成を示す一部断面図である。
図1において、エンジンの排気ガス浄化システムは、電子制御ユニット(ECU)100、エンジン200及び主排気ガス浄化装置300を備える。ECUl00は,デジタルコンピュータからなり、双方向バスによって相互に接続されたROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、CPU(セントラルプロセッサユニット)、入力ポート、出力ポートなどを備え、エンジン200の動作を制御することが可能である。また、ECUl00は、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、後述する故障診断処理を実行することが可能に構成されており、主排気ガス浄化装置300と共に本発明に係る排気ガス浄化システムの故障診断装置の一例としても機能するように構成されている。
エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成された、本発明に係る内燃機関の一例である。以下に、エンジン200の要部構成を説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し,外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、不図示の燃料タンクから燃料(ガソリン)が供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料をECU100の制御に従って、吸気管206内に噴射することが可能に横成されている。
シリンダ201の内部と吸気管206とは、吸気バルブ208による吸気ポートの開閉によって連通状態が制御される。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して排気ポートを開閉する排気バルブ209を通過して排気管210に排気される。
吸気管206の上流には、エアクリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。エアクリーナ211のシリンダ側には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、例えば、ホットワイヤー式であり、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
吸気管206におけるエアフローメータ212のシリンダ側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルバルブモータ217とスロットルポジションセンサ215が配設されており、電子制御式スロットルバルブを構成している。なお、本実施の形態においては、該電子制御式スロットルバルブがアイドリング時の吸入空気量を調節するアイドル制御弁を兼用している。一方、アクセルペダル223の踏込み量は、アクセルポジションセンサ216を介してECU100に入力されており、アクセルポジションセンサ216の出力に対応するスロットルバルブ開度を示す信号がECUl00からスロットルバルブモータ217に出力され、吸入空気量が制御される。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転位置を検出することが可能に構成されたセンサであり、ECU100は、クランクポジションセンサ218の出力信号に基づいてピストン203の位置及びエンジン200の回転数などを取得することが可能に構成されている。このピストン203の位置は、前述した点火プラグ202における点火時期の制御などに使用される。点火プラグ202における点火時期は、例えば、ピストン203の位置に対応付けられて予め設定される基本値に対し遅角又は進角制御される。
また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定することが可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
排気管210の集合部には、比較的小容量のスタートアップ触媒222が設置されている。スタートアップ触媒222は、例えば、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な三元触媒である。排気管210におけるスタートアップ触媒222の上流側には,空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200に供給された混合気の空燃比を検出することが可能に構成されている。
主排気ガス浄化装置300は、排気管210における,スタートアップ触媒222の下流側に設置された触媒装置であり、ECUl00と共に、本発明に係る排気ガス浄化システムの故障診断装置の一例として機能することが可能に構成されている。主排気ガス浄化装置300とECU100とは、制御用のバスラインを介して電気的に接綾されている。
なお、ECUl00には不図示の車両の走行速度を検出可能な車速センサから車速VSを表す信号、及びシフト位置センサから選択されているレンジ信号RSが入力されるように構成されている。
次に、図2を参照して、主排気ガス浄化装置300の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、主排気ガス浄化装置300の模式断面図である。なお、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
主排気ガス浄化装置300の外筒310の内部には内筒320がその端部に一体に形成された鍔部322を介して、外筒310と同心に且つ互いに径方向に隙間を有して設けられている。内筒320は、その上流側が外筒310の対応する端部近くまで延在され、主排気ガス浄化装置300内において開放した状態にして設置されている。また、内筒320の下流側端部は、外筒310に配置されたアンダーフロア触媒330の端面に所定の空間を介して対峙しつつ開放した状態に設置されている。また、内筒320の鍔部322には複数の通気孔324が形成されている。そして、主排気ガス浄化装置300の外筒310と内筒320との間に形成された環状空間、すなわち、後述するバイパス流路350には環状のHC吸着材340が設けられている。なお、主排気ガス浄化装置300の外筒310の上流側及び下流側端部には排気管210が連結されている。
さらに、図2において、本実施形態の主排気ガス浄化装置300は、上述のアンダーフロア触媒330、HC吸着材340に加えて、切り替え制御弁370、HC吸着材340の上流の温度変化を検出可能な温度検出手段としての温度センサ380及び断熱層395を備えている。
アンダーフロア触媒330は、車両の床下に設置される、例えば、三元触媒であり、前段のスタートアップ触媒222((図2では不図示)を通過し、矢印A方向へ流れる排気ガスを浄化する。
バイパス流路350は、本発明に係る「第2排気ガス通路」の一例であり、内筒320の内側に形成される本発明に係る「第1排気ガス通路」(以下、被バイパス流路ないしは通常流路360と称す)をバイパスして排気ガスをアンダーフロア触媒330に導くための流路である。
HC吸着材340は、例えば、ゼオライトで形成されたフィルタであり、低温(概ね100℃未満)でHC分子を吸着(或いはトラップ)する網目状のフィルタであり、トラップされたHC分子は、高温(概ね100℃以上)では熱による運動エネルギーの増加に伴って自然に脱離を開始する。
切り替え制御弁370は、スタートアップ触媒222を通過した排気ガスの流路を、被バイパス流路360とバイパス流路350との問で選択的に切り替えることが可能に構成されている。切り替え制御弁370は、回動可能に支持された軸部372がロッド374の紙面左右方向への直線運動に伴って矢印B方向へ回動することによって、排気ガスの流路を切り替えることが可能に構成されている。このロッド374は、アクチュエータ376によって動作が制御されており、アクチュエータ376は、前述した制御用のバスラインを介してECUl00と電気的に接続されている。すなわち、主排気ガス浄化装置300は、ECUl00からの制御信号に応じて,切り替え制御弁370の開閉状熊が変化するように構成されている。
本実施の形態の温度センサ380は、サーミスタ素子で構成されており、バイパス流路350におけるHC吸着材340の上流側の温度Tを検出することが可能に構成されている。なお、温度センサ380は、かかる温度を、温度に応じた電圧値として検出すると共にECU100に出力しており、ECUl00によって温度Tが特定される。
断熱層395は、バイパス流路350と被バイパス流路360との間に形成された断熱体であり、バイパス流路350と被バイパス流路360との間の熱交換が抑制されている。
次に、図3及び図4を参照して、切り替え制御弁370の動作に伴い形成される排気ガス流路について説明する。ここに、図3は、主排気ガス浄化装置300において切り替え制御弁370が閉じている場合の排気ガス流れの模式図であり、図4は、主排気ガス浄化装置300において切り替え制御弁370が開いている場合の排気ガス流れの模式図である。なお、これらの図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
図3において、矢印A方向に流入する排気ガスは、切り替え制御弁370が閉じているために被バイパス流路360には流れず、バイパス流路350に導かれる。そして、HC吸着材340によってHCの吸着が行われた後、HC吸着材340の下流側に形成された通気孔324から矢印C方向へ流出し、アンダーフロア触媒330に流入する。
また、図4において、矢印A方向から流入する排気ガスは、切り替え制御弁370が開いているために、排気抵抗の差から被バイパス流路360に導かれる。その一方で、被バイパス流路360を通過する排気ガスの一部は、被バイパス流路360の終端部付近で図示矢印D方向に方向を変え、バイパス流路350の終端の鍔部322に形成された通気孔324を介して下流側からバイパス流路350に流入する。そしてバイパス流路350の上流側の端部において排気ガスの流れ方向(矢印A方向)へ再び向きを変えて被バイパス流路360に導かれる。すなわち、排気ガスの一部は、主排気ガス浄化装置300の内部を還流する。主排気ガス浄化装置300では,被バイパス流路360とバイパス流路350との断面積比率、バイパス流路350の終端部分を規定する鍔部322の曲率、並びに通気孔324の形状及び大きさなどが、予めこのような還流現象を生じさせるように決定されている。なお、このような還流現象を生じさせることは、本発明との関連においては必須ではない。
ECUl00は、排気ガス浄化システム10の動作中に、ROMに格納されるプログラムに従って故障診断処理を実行することによって、切り替え制御弁370の故障を診断することが可能に構成されている。
ここで、図5のフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態における故障診断処理の手順の一例について説明する。ここに、図5のフローチャートで行われる故障診断処理ルーチンは、外気が氷点下ないしはエンジン200の冷却水温が凍結の可能性がある所定温度より低い冷間時に行なわれる始動の際に所定の周期で実行される。なお、凍結の可能性がない始動の際には、通常の故障診断処理が行なわれる。
ここで、本実施の形態における排気ガス浄化システム10では,始動時において、エンジン200は全体的に温まっていないため,スタートアップ三元触媒222及びアンダーフロア触媒330は、通常、触媒活性温度に達していない。このために、排気ガスに含まれる炭化水素HCを浄化することが難しく、ECU100は、エンジン200の冷間始動時には切り替え制御弁370を閉状態に制御し、排気ガスをバイパス流路350へ導くことによって、排気ガス中の炭化水素HCをHC吸着材340に吸着させている。そして、スタートアップ三元触媒222及びアンダーフロア触媒330が触媒活性温度に達したと見なし得る所定の触媒暖機期間が経過した後、切り替え制御弁370を開き、排気ガスを被バイパス流路360に導いて、排気浄化能力の低下を防ぐと共に、HC吸着材340にトラップされたHCを脱離させ浄化するようにしている。
そこで制御がスタートすると、ECU100は、エンジン200の始動が開始されたときの冷却水温が上記所定温度Tref(例えば、5℃)より低い否かを判別する(ステップS501)。エンジン200の冷却水温が所定温度Trefより高い場合には(ステップS501:NO)、凍結の可能性がないとして本故障診断処理を終了する。冷却水温が所定温度Trefより低い場合(ステップS501:YES)、ステップS502に進み後述する「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされていない、すなわち、OFFのとき(ステップS502:NO)は、故障診断処理は既に完了しているとして、本故障診断処理を終了する。そして、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているときはステップS503に進み、エアフローメータ212の出力電圧から、吸入空気量GAを取得し、積算する。さらに、ステップS504に進み排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであるか否かを判定する。
この排気系暖機完了か否かの判定は、ステップS503で取得、積算された吸入空気量GAの積算値に基づき行われ、所定の積算値に達したときに排気系暖機完了と判定される。すなわち、吸入空気量GAは排出される排気ガス量と密接に関係するので、吸入空気量GAの積算値を求めることによりこのエンジン200の始動からの運転によって排出された熱エネルギーを推定することで、排気系暖機完了か否かが判定される。そして、この排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cでないとき(ステップS504:NO)は、本故障診断処理を一旦終了する。なお、排気系暖機完了か否かの判定は、エンジン200の始動が開始されたときからの経過時間すなわち切り替え制御弁370ないしはその操作系が凍結していた場合などにこの解凍に要する時間(一般に、上記触媒暖機期間よりも長い)として、予め実験などで求められROMなどに格納された固定値に基づいて行なわれる。又は、この固定値に始動開始時の冷却水温に応じて補正係数を乗じた変動値に基づいて行ってもよい。
ステップS504で排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであると判定されたときはステップS505に進み、このフュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。これは、ルーチンサイクル毎に温度センサ380により検出される温度を前ルーチンサイクルで検出された温度と比較することにより、今回の温度が高い場合にのみその温度データを更新することで、取得することができる。
そして、次のステップS506に進み「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされていないとき(ステップS506:NO)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とはみなされないときはステップS507に進み、切り替え制御弁370を閉じて、排気ガスの流路を被バイパス流路360からバイパス流路350に切り替える閉指示を行う。そして、次のステップS508において、上述のフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間(例えば、A秒)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Taを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS509において、上述のステップS505において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとステップS508において取得した第1の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Taとの差が第1の所定値α1よりも大きいか否かが判定される。
このステップS509における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも大きいときはステップS510に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をONにセットすると共に本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS509における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも大きくないときはステップS511に進み、上記の差(Ts−Ta)が第2の所定値α2(ここで、α1>α2)よりも大きいか否かが再度判定される。そして、このステップS511における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも小さいが第2の所定値α2よりも大きいときは最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS511における判定で上記の差(Ts−Ta)が第2の所定値α2よりも大きくないときはステップS512に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
他方、上述の「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているとき(ステップS506:YES)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とみなされるときはステップS513に進み、切り替え制御弁370を開いて、排気ガスの流路をバイパス流路350から被バイパス流路360に切り替える開指示を行う。そして、次のステップS514において、上述のフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間(例えばB秒、なお、これは上述のA秒と等しくてもよい)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tbを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS515において、上述のステップS505において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとステップS514において取得した第2の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbとの差が第3の所定値β1よりも大きいか否かが判定される。
このステップS515における判定で上記の差(Ts−Tb)が第3の所定値β1よりも小さいときはステップS516に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をOFFにリセットし、「切り替え制御弁の開弁正常フラグ」をONにセットする。そしてさらにステップS517に進み、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」をONからOFFにリセットして本故障診断処理ルーチンを終了する。一方、ステップS515における判定で上記の差(Ts−Tb)が第3の所定値β1よりも小さくないときはステップS518に進み、上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2(ここで、β1<β2)よりも小さいか否かが再度判定される。そして、このステップS518における判定で上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2よりも小さいときは最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS518における判定で上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2よりも小さくないときはステップS512に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
ここで、図6のタイムチャートを参照して、上述の本実施形態に係るフュエルカットF/C時におけるHC吸着材340の上流側の温度Tの検出値に基づいて、切り替え制御弁370が正常に作動する状態にあるか否かの診断が可能となるメカニズムについて説明する。ここに、図6(A)はフュエルカットF/CのON及びOFFの切り替えタイミングを示し、図6(B)はその切換えタイミング後における切り替え制御弁370の逆の状態からの閉作動又は開作動によるHC吸着材340の上流側の時間経過に伴う温度変化を示している。すなわち、図6(B)における実線aは切り替え制御弁370が開状態から閉作動されたとき、一点鎖線bは切り替え制御弁370が閉状態から開作動されたときの温度変化を示している。
そこで、エンジン200の運転条件に対応して時刻tのタイミングでフュエルカットF/CがOFF状態からON状態に切り替えられると、エンジン200での燃焼が停止され、温度の低い吸入空気のみが排気ガスとして排気系に排出されることになる。このフュエルカットF/C開始時ないしはその直後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsが上述のように温度センサ380により検出される。ここで、フュエルカットF/C開始時のみならずその直後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを検出するようにしたのは、エンジン200から温度センサ380に至るまでの排気ガス流のタイムラグを考慮したためである。そして、フュエルカットF/CのONの状態が継続すると、益々温度の低い排気ガスの流入が継続する。
したがって、図6(B)に実線aで示すように、切り替え制御弁370が開状態から正常に閉作動されたとき、排気ガスはバイパス流路350側に流れ、温度センサ380により検出される温度Tはかなりの勾配で低下することになる。すなわち、上述の時刻tでのフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間A秒経過後においては、温度センサ380により検出されるHC吸着材340の上流側の温度はTaとなる。
一方、図6(B)に一点鎖線bで示すように、切り替え制御弁370が閉状態から正常に開作動されたとき、排気ガスは被バイパス流路360側に流れ、温度センサ380により検出される温度は低温の排気ガスの影響を余り受けず、さほど低下しない。すなわち、上述の時刻tでのフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間B秒経過後においても、温度センサ380により検出されるHC吸着材340の上流側の温度はTaよりも高いTbとなる。
上述のメカニズムから明らかなように、図5のフローチャートにおけるステップS509の判定で、フュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間A秒経過後のHC吸着材340の上流側の温度Taとの差(Ts−Ta)が、図6(B)に例示する第1の所定値α1よりも大きいということは、図5のフローチャートのステップS506における切り替え制御弁370への閉指示に従って、切り替え制御弁370が開状態から閉状態に正常に切り替え作動されたことを意味するので、切り替え制御弁370が正常であると判定するのである。なお、図5のフローチャートにおけるステップS511の判定で、上述の差(Ts−Ta)が、図6(B)に例示する第1の所定値α1よりも小さいが第2の所定値α2よりも大きいということは、閉指示があっても切り替え制御弁370が開状態から閉状態に正常に切り替え作動されていない可能性があるので、最終診断が保留される。
一方、図5のフローチャートにおけるステップS515の判定で、フュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間B秒経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbとの差(Ts−Tb)が、図6(B)に例示する第3の所定値β1よりも小さいということは、図5のフローチャートのステップS513における切り替え制御弁370の開指示に従って、切り替え制御弁370が閉状態から開状態に正常に切り替え作動されたことを意味するので、切り替え制御弁370が正常であると判定するのである。なお、図5のフローチャートにおけるステップS515の判定で、上述の差(Ts−Ta)が、図6(B)に例示する第3の所定値β1よりも大きいが第4の所定値β2よりも小さいということは、開指示があっても切り替え制御弁370が閉状態から開状態に正常に切り替え作動されていない可能性があるので、最終診断が保留される。
また、上述と逆に、上述の差(Ts−Ta)が第2の所定値α2よりも小さいとき、及び、第4の所定値β2よりも大きいときには、閉指示や開指示にも拘らず切り替え制御弁370が正常に切り替え作動されていないとして、切り替え制御弁370が異常であると判定される。このような切り替え制御弁370の異常状態は、切り替え制御弁370が何らかの原因で閉状態に維持され開作動できなくなった閉固着、切り替え制御弁370が何らかの原因で開状態に維持され閉作動できなくなった開固着や閉位置と開位置の中間位置での固着状態を含む。
本第1の実施形態では、排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであるときの、切り替え制御弁370が凍結していた場合でもその解凍が完了している状態で故障診断が行なわれるので、凍結による固着を切り替え制御弁370の故障と誤診断することなく、切り替え制御弁370の故障を精度良く診断することができる。しかも、フュエルカット時であるので排気ガス温度が上昇することなく安定しており、この点からも精度良く診断することができる。
なお、切り替え制御弁370が異常で故障していると判別された場合(ステップS512)、図5のフローチャートには示さなかったが、ECU100は,車両の運転者などに、診断の結果として所定のインジケータなどを介して故障を告知することが好ましい。
(第2の実施形態)
次に、本発明における故障診断処理手順の第2の実施形態について、図7のフローチャートを参照して説明する。通常、フュエルカットF/C開始時におけるHC吸着材340の上流側の温度Tが高い程、フュエルカットF/C中における温度Tの低下代が大きくなるので、この第2の実施形態では、この上流側の温度Tに応じて、第1の実施形態で故障診断の判定基準に用いた上述の第1ないし第4の所定値α1、α2、β1、β2に乗ずる補正係数ka1、ka2、kb1、kb2をそれぞれ設定するようにし、診断精度を高めるようにしている。すなわち、これらの補正係数(図8にはka1、kb1のみを例示するが、ka2、kb2もほぼ同様である)は、フュエルカットF/C開始時におけるHC吸着材340の上流側の温度Tが低いときは「1.0」であるのに対し、その温度Tが高くなるに連れ、徐々に増大するように設定されている。
なお、図7のフローチャートに従って行われるこの第2の実施形態における故障診断処理ルーチンは、図5のフローチャートに従って行われる第1の実施形態に対して、その一部のステップにおける処理が異なるのみであるので、その異なるステップのみを説明し重複説明を避けることとする。より具体的に述べると、図5のフローチャートはステップS501ないしステップS518を含むのに対し、図7のフローチャートはそれぞれに対応するステップS701ないしステップS718を含み、百位の数字が異なるのみで十位以下の数字が同一であるステップは以下に説明するステップを除きそれぞれ同様の処理内容であるので、それらについては上述の図5のフローチャートに関しての説明を援用する。
そこで、ステップS505に対応するステップS705においては、フュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得すると共に、この取得した最高温度値Tsに対応する、第1ないし第4の所定値α1、α2、β1、β2の補正係数ka1、ka2、kb1、kb2をそれぞれ求める。
そして、ステップS509及びステップS511に対応するステップS709及びステップS711において、第1及び第2の所定値α1及びα2にそれぞれ補正係数ka1及びka2が乗じられ、ステップS705において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとステップS708において取得した第1の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Taとの差が、比較されて故障診断が行なわれる。同様に、ステップS515及びステップS518に対応するステップS715及びステップS718において、第3及び第4の所定値β1及びβ2にそれぞれ補正係数kb1及びkb2が乗じられ、ステップS705において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとステップS714において取得した第2の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbとの差が、比較されて故障診断が行なわれる。
(第3の実施形態)
さらに、上述した故障診断処理の第3の実施形態について、図9のフローチャートを参照して説明する。この第3の実施形態では、フュエルカットF/Cの開始に合わせて吸入空気量GAを増大させてエンジン200からの排気ガスの温度を低下させる排気ガス温度低下手段を備え、より大きな温度低下代を得ることにより診断精度を高めると共に、温度検出時間の短縮を図るようにしている。すなわち、前述の図6のタイムチャートに対応する図10のタイムチャートに示すように、時刻tのタイミングでフュエルカットF/CがOFF状態からON状態に切り替えられ切り替え制御弁370が開状態から正常に閉作動された場合であって、吸入空気量GAが小(図10(B)に実線で示す)のときは、図6(B)にも実線aで示したように、温度センサ380により検出される温度Tはかなりの勾配で低下し、フュエルカットF/C開始後から第1の所定期間A秒経過後においては、温度センサ380により検出されるHC吸着材340の上流側の温度はTaとなる。ところで、フュエルカットF/Cの開始に合わせて吸入空気量GAを増大させる(図10(B)に破線で示す)と、排気ガスはバイパス流路350側に流れ、図10(C)に破線cで示すように、温度センサ380により検出される温度Tはさらに急勾配で低下し、上述の時刻tでのフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間A秒経過後においては、温度センサ380により検出されるHC吸着材340の上流側の温度は前実施形態におけるTaよりも低いTagaとなるのである。そこで、第3の実施形態においては吸入空気量GAの増大によりこの温度低下代がさらに大きくなるという特性を利用して、上述の診断精度を高めると共に、温度検出時間の短縮を図るようにしているものであり、基本的な故障診断処理手順は図5のフローチャートと同様であるから、その異なるステップを主に説明し重複説明を避けることとする。
ここに制御がスタートすると、ECU100は、エンジン200の始動が開始されたときの冷却水温が所定温度Tref(例えば、5℃)より低い否かを判別する(ステップS901)。エンジン200の冷却水温が所定温度Trefより高い場合には(ステップS901:NO)、凍結の可能性がないとしてステップS914に進んで後述する「吸入空気量GAの増大制御」を中止した後に本故障診断処理を終了する。冷却水温が所定温度Trefより低い場合(ステップS901:YES)、ステップS902に進み「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされていない、すなわち、OFFのとき(ステップS902:NO)は、故障診断処理は既に完了しているとして、ステップS914に進んで「吸入空気量GAの増大制御」を中止した後に本故障診断処理を終了する。そして、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているときはステップS903に進み、エアフローメータ212の出力電圧から、吸入空気量GAを取得し、積算する。さらに、ステップS904に進み排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであるか否かを判定する。
そして、この排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cでないとき(ステップS904:NO)は、ステップS914に進んで「吸入空気量GAの増大制御」を中止した後に本故障診断処理を一旦終了する。ステップS904で排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであると判定されたときはステップS905に進み、上述の吸入空気量GAの増大制御を実行する。この吸入空気量GAの増大制御はスロットルバルブ214をそのアイドル開度位置から所定角度開くべく、ECU100から信号を送ることにより行われる。そして、次のステップS906に進み、このフュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。
そして、次のステップS907に進み「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされていないとき(ステップS907:NO)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とはみなされないときはステップS908に進み、切り替え制御弁370を閉じて、排気ガスの流路を被バイパス流路360からバイパス流路350に切り替える閉指示を行う。そして、次のステップS909において、上述のフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間(例えば、A秒)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tagaを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS910において、上述のステップS906において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsと、ステップS910において取得した吸入空気量GAの増大制御が行なわれた第1の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tagaとの差が増大制御時の第1の所定値α1gaよりも大きいか否かが判定される。
このステップS910における判定で上記の差(Ts−Taga)が増大制御時の第1の所定値α1gaよりも大きいときはステップS911に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をONにセットすると共に本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS910における判定で上記の差(Ts−Taga)が増大制御時の第1の所定値α1gaよりも大きくないときはステップS912に進み、上記の差(Ts−Taga)が増大制御時の第2の所定値α2ga(ここで、α1ga >α2ga)よりも大きいか否かが再度判定される。そして、このステップS912における判定で上記の差(Ts−Taga)が増大制御時の第1の所定値α1gaよりも小さいが第2の所定値α2gaよりも大きいときは最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS912における判定で上記の差(Ts−Taga)が増大制御時の第2の所定値α2gaよりも大きくないときはステップS913に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
他方、上述の「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているとき(ステップS907:YES)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とみなされるときはステップS915に進み、切り替え制御弁370を開いて、排気ガスの流路をバイパス流路350から被バイパス流路360に切り替える開指示を行う。そして、次のステップS916において、上述のフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間(例えばB秒、なお、これは上述のA秒と等しくてもよい)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tbgaを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS917において、上述のステップS906において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値TsとステップS916において取得した第2の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbgaとの差が増大制御時の第3の所定値β1gaよりも小さいか否かが判定される。
このステップS917における判定で上記の差(Ts−Tbga)が増大制御時の第3の所定値β1gaよりも小さいときはステップS918に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をOFFにリセットし、「切り替え制御弁の開弁正常フラグ」をONにセットする。そしてさらにステップS919に進み、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」をONからOFFにリセットして本故障診断処理ルーチンを終了する。一方、ステップS917における判定で上記の差(Ts−Tbga)が増大制御時の第3の所定値β1gaよりも小さくないときはステップS920に進み、上記の差(Ts−Tbga)が第4の所定値β2ga(ここで、β1ga<β2ga)よりも小さいか否かが再度判定される。そして、このステップS920における判定で上記の差(Ts−Tbga)が第4の所定値β2gaよりも小さいときは最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS920における判定で上記の差(Ts−Tbga)が第4の所定値β2gaよりも小さくないときはステップS913に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
このように、本第3の実施形態においては、フュエルカットF/Cの開始に合わせて吸入空気量GAを増大させてエンジン200からの排気ガスの温度を低下させ、より大きな温度低下代を得ることにより診断精度を高めると共に、温度検出時間の短縮を図るようにしたが、この吸入空気量GAの増大制御による排気ガス温度の低下に代えて、図11に簡易的に示すように、スタートアップ触媒222をバイパスする通路224を設けると共に、このバイパス通路224にバイパス通路開閉弁226を設けて、このバイパス通路開閉弁226を開閉制御するようにした触媒バイパス機構付の排気系の場合には、バイパス通路開閉弁226を開いてバイパス通路224側に排気ガス流路を切替えるようにしてもよい。なお、この図11において、前述の図1及び図2につき説明したのと同一機能部位には同一符号を用いて重複説明を避ける。
(第4の実施形態)
そこで、この図11に示す触媒バイパス機構付の排気系を備える排気ガス浄化システムに本発明を適用した場合の故障診断処理手順の一例を第4の実施形態として、図12のフローチャートを参照して説明する。
ここに制御がスタートすると、ECU100は、エンジン200の始動が開始されたときの冷却水温が所定温度Tref(例えば、5℃)より低い否かを判別する(ステップS1201)。エンジン200の冷却水温が所定温度Trefより高い場合には(ステップS1201:NO)、凍結の可能性がないとしてステップS1214に進んでバイパス通路開閉弁226の閉弁を実行した後に本故障診断処理を終了する。冷却水温が所定温度Trefより低い場合(ステップS1201:YES)、ステップS1202に進み「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされていない、すなわち、OFFのとき(ステップS1202:NO)は、故障診断処理は既に完了しているとして、ステップS1214に進んでバイパス通路開閉弁226の閉弁を実行した後に本故障診断処理を終了する。そして、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」がONにセットされているときはステップS1203に進み、エアフローメータ212の出力電圧から、吸入空気量GAを取得し、積算する。さらに、ステップS1204に進み排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであるか否かを判定する。
そして、この排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cでないとき(ステップS1204:NO)は、ステップS1214に進んでバイパス通路開閉弁226の閉弁を実行した後に本故障診断処理を一旦終了する。ステップS1204で排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであると判定されたときはステップS1205に進み、ECU100から信号を送ることによりバイパス通路開閉弁226の開弁を実行する。このバイパス通路開閉弁226の開弁が実行されるとエンジン200から排出された排気ガスは流路抵抗の差に基づき、スタートアップ触媒222をバイパスする通路224側に流れ、スタートアップ触媒222によって昇温されるのが抑制される。そして、次のステップS1206に進み、このフュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。
そして、次のステップS1207に進み「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているか否かを判定する。「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされていないとき(ステップS1207:NO)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とはみなされないときはステップS1208に進み、切り替え制御弁370を閉じて、排気ガスの流路を被バイパス流路360からバイパス流路350に切り替える閉指示を行う。そして、次のステップS1209において、上述のフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間(例えば、A秒)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tabを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS1210において、上述のステップS1206において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsと、ステップS1210において取得した第1の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tabとの差がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第1の所定値α1bよりも大きいか否かが判定される。
このステップS1210における判定で上記の差(Ts−Tab)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第1の所定値α1bよりも大きいときはステップS1211に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をONにセットすると共に本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS1210における判定で上記の差(Ts−Tab)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第1の所定値α1bよりも大きくないときはステップS1212に進み、上記の差(Ts−Tab)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第2の所定値α2b(ここで、α1b>α2b)よりも大きいか否かが再度判定される。そして、このステップS1212における判定で上記の差(Ts−Tab)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第1の所定値α1bよりも小さいが第2の所定値α2bよりも大きいときは、最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS1212における判定で上記の差(Ts−Tab)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第2の所定値α2bよりも大きくないときはステップS1213に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
他方、上述の「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」がONにセットされているとき(ステップS1207:YES)、換言すると、切り替え制御弁370が閉状態とみなされるときはステップS1215に進み、切り替え制御弁370を開いて、排気ガスの流路をバイパス流路350から被バイパス流路360に切り替える開指示を行う。そして、次のステップS1216において、上述のフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間(例えばB秒、なお、これは上述のA秒と等しくてもよい)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tbbを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS1217において、上述のステップS1206において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsと、ステップS1216において取得した第2の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbとの差がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第3の所定値β1bよりも小さいか否かが判定される。
このステップS1217における判定で上記の差(Ts−Tbb)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第3の所定値β1bよりも小さいときはステップS1218に進み、「切り替え制御弁の閉弁正常フラグ」をOFFにリセットし、「切り替え制御弁の開弁正常フラグ」をONにセットする。そしてさらにステップS1219に進み、「切り替え制御弁開閉仮異常フラグ」をONからOFFにリセットして本故障診断処理ルーチンを終了する。一方、ステップS1217における判定で上記の差(Ts−Tbb)がバイパス通路開閉弁226の開弁実行時の第3の所定値β1bよりも小さくないときはステップS1220に進み、上記の差(Ts−Tbb)が第4の所定値β2b(ここで、β1b<β2b)よりも小さいか否かが再度判定される。そして、このステップS1220における判定で上記の差(Ts−Tbb)が第4の所定値β2bよりも小さいときは最終診断を保留して、本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS1220における判定で上記の差(Ts−Tbb)が第4の所定値β2bよりも小さくないときはステップS1213に進み、切り替え制御弁370が異常であると判定する。
なお、本第4の実施形態では、バイパス通路開閉弁226が上流側触媒としてのスタートアップ触媒222及びこれをバイパスするバイパス通路224のいずれかに流路を切替える第2の排気ガス流路切替え手段に対応し、バイパス通路開閉弁226を開いてバイパス通路224側流路に切替えるものが排気ガス温度低下手段に対応する。
次に、上述した触媒バイパス機構付の排気系を備える排気ガス浄化システムに用いられているバイパス通路開閉弁226の故障診断処理手順を、第4の実施形態の変形態様として、図13のフローチャートを参照して説明する。この変形態様では、切り替え制御弁370の故障診断に用いられる温度センサ380を利用することができるので、その分、コストダウンを図ることが可能である。なお、このバイパス通路開閉弁226の故障診断処理ルーチンは、切り替え制御弁370の故障診断の結果、切り替え制御弁370が正常に作動することが確認された後に実行されるのが好ましい。
そこで、バイパス通路開閉弁226の故障診断処理ルーチンにおいては、まず、ステップS1301において、排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであるか否かを判定する。排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cでないとき(ステップS1301:NO)は、本故障診断処理を一旦終了する。ステップS1301で排気系暖機完了時におけるフュエルカットF/Cであると判定されたときはステップS1302に進み、ECU100から閉指示信号を送ることにより切り替え制御弁370を閉じる。そしてステップS1303に進み「バイパス通路開閉弁の開弁正常判定フラグ」がOFFか否かを判定する。
そこで、「バイパス通路開閉弁の開弁正常判定フラグ」がOFFのとき(ステップS1303:YES)はステップS1304に進み、フュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。そして、次のステップS1305において、バイパス通路開閉弁226の開弁実行を指示する。そして、次のステップS1306に進み、上述のフュエルカットF/C開始後から第1の所定期間(例えば、A秒)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Taを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS1307において、上述のステップS1304において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsと、ステップS1306において取得した第1の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Taとの差が第1の所定値α1よりも大きいか否かが判定される。
このステップS1307における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも大きいときは、ステップS1305における開弁実行指示の通りバイパス通路開閉弁226が開弁された結果と判定されるので、ステップS1308に進み、「バイパス通路開閉弁の開弁正常判定フラグ」をONにセットすると共に本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS1307における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも大きくないときはステップS1309に進み、上記の差(Ts−Ta)が第2の所定値α2(ここで、α1>α2)よりも大きいか否かが再度判定される。そして、このステップS1309における判定で上記の差(Ts−Ta)が第1の所定値α1よりも小さいが第2の所定値α2よりも大きいときは、最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS1309における判定で上記の差(Ts−Ta)が第2の所定値α2よりも大きくないときはステップS1310に進み、バイパス通路開閉弁226が開弁異常であると判定し、本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS1303の判定で「バイパス通路開閉弁の開弁正常判定フラグ」が既にONのとき(ステップS1303:NO)はステップS1311に進み、フュエルカットF/C開始後におけるHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。そして、次のステップS1312において、バイパス通路開閉弁226の閉弁実行を指示する。そして、次のステップS1313に進み、上述のフュエルカットF/C開始後から第2の所定期間(例えば、B秒、なお、AはBと等しくてもよい)経過後におけるHC吸着材340の上流側の温度Tbを温度センサ380の検出値に基づいて取得する。さらに、次のステップS1314において、上述のステップS1311において取得したHC吸着材340の上流側の温度の最高値Tsと、ステップS1313において取得した第2の所定期間経過後のHC吸着材340の上流側の温度Tbとの差が第3の所定値β1よりも小さいか否かが判定される。
このステップS1314における判定で上記の差(Ts−Tb)が第3の所定値β1よりも小さいときは、ステップS1312における閉弁実行指示の通りバイパス通路開閉弁226が閉弁された結果と判定されるので、ステップS1315に進み、「バイパス通路開閉弁の閉弁正常判定フラグ」をONにセットすると共に本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS1314における判定で上記の差(Ts−Tb)が第3の所定値β1よりも小さくないときはステップS1315に進み、上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2(ここで、β1<β2)よりも小さいか否かが再度判定される。そして、このステップS1316における判定で上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2よりも小さいときは最終診断を保留して本故障診断処理ルーチンを一旦終了する。また、上記ステップS1316における判定で上記の差(Ts−Tb)が第4の所定値β2よりも大きいときはステップS1317に進み、バイパス通路開閉弁226が閉弁異常であると判定し、本故障診断処理ルーチンを終了する。
かくて、この第4の実施形態の変形態様によれば、切り替え制御弁370の故障診断に用いられる温度センサ380を利用して、バイパス通路開閉弁226の故障診断を行うことができるので、その分、コストダウンを図ることが可能である。
なお、本発明は、上述した実施形態例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシステムの故障診断装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。