JP5167701B2 - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動力源と駆動輪との間に複数の係合要素を備え、その複数の係合要素の組合せにより駆動力源より出力される駆動力の回転速度を変更可能な機械式動力伝達部を備える車両用駆動装置に関し、特に、部品点数を追加することなく適宜前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することができる車両用駆動装置の制御装置に関するものである。
駆動力源と駆動輪との間に複数の係合要素を備え、その複数の係合要素の組合せにより駆動力源より出力される駆動力の回転速度を変更可能な機械式動力伝達部を備える車両用駆動装置がよく知られている。
たとえば、特許文献1に記載された車両用駆動装置もその1つである。この車両用駆動装置の制御装置では、機械式動力伝達部が有段式の自動変速機で構成され、無段変速機として機能させられる電気式差動部の変速比と機械式動力伝達部の各ギヤ段(変速段)に対応する変速比とで駆動装置全体の総合変速比(トータル変速比)が形成される。また、特許文献1には、車速に対応する機械式動力伝達部の出力軸の回転速度を検出するための回転速度センサが設けられている。
特開2005−264762号公報 特開2001−339805号公報 特開平8−183356号公報 特開2002−281607号公報 特開平9−37410号公報 特開平9−98516号公報 特開2000−238555号公報 特開2000−197208号公報
ところで、上述した特許文献1をはじめとする車両用駆動装置の制御装置において、出力軸の回転方向は、例えば第2電動機の回転速度および回転方向を検出可能なレゾルバから検出される回転方向信号に基づいて判断される。具体的には、第2電動機と機械式動力伝達部とが作動的に連動された状態すなわち動力伝達可能状態において、機械式動力伝達部の変速段が第1速ギヤ段などの前進変速段に選択されている場合は、第2電動機の回転方向と機械式動力伝達部の出力軸の回転方向とが同方向となり、機械式動力伝達部の変速段が後進変速段に選択されている場合は第2電動機の回転方向と出力軸の回転方向とが逆方向となる。これらに基づいて第2電動機の回転方向を検出することで機械式動力伝達部の出力軸の回転方向が判定される。ところが、たとえば第2電動機と機械式動力伝達部との動力伝達経路が遮断された状態すなわちニュートラル状態時においては、第2電動機と機械式動力伝達部の出力軸とが作動的に遮断されるため、出力軸の回転方向の判定が不可能となる。このように、出力軸の回転方向がわからなくなると、駆動レンジにシフトした際に必要となる駆動力が決定できなくなるため、この回転方向を判定する方法が求められている。同様に、駆動時、或いは動力伝達経路を動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態へ切り換える切換時などにおいても、精度よく出力軸の回転方向を判定する方法が求められている。
ここで、従来の出力軸上に設けられた単一の回転速度センサでは、回転速度は検出可能であるが、出力軸の回転方向までを検出することは不可能であった。従来の回転速度センサは、たとえば機械式動力伝達部の出力軸と一体的に回転する歯車の歯面のような凹凸面を有す部位に近づけて設置されており、回転速度センサと凹凸面との距離が回転によって変化することで回転速度センサ内のコイルに生じる信号電流を検出する。そして、この信号電流の変化を電圧に変換してパルスを形成し、このパルスの変化の速さを速度に換算して検出するものである。このように、パルスを形成することで回転速度を検出することができるが、回転方向までを検出することは不可能となっている。これに対して、複数の回転速度センサを設けることで回転方向を検出することもできるが、部品点数の増加によるコストアップ並びに回転速度センサ増設による駆動装置の大型化などを招く問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、駆動力源と駆動輪との間に複数の係合要素を備え、その複数の係合要素の組合せにより駆動力源より出力される駆動力の回転速度を変更可能な機械式動力伝達部を備える車両用駆動装置に関し、特に、部品点数を追加することなく適宜前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)駆動力源と、その駆動力源の後段に設けられ、差動機構の回転要素に動力伝達可能に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転速度と出力軸回転速度との差動状態が制御される電気式差動部と、その電気式差動部から駆動輪への動力伝達経路上に動力伝達可能に設けられ、その電気式差動部と駆動輪との間に複数の係合要素を備え、その複数の係合要素の組合せにより前記駆動力源より出力される駆動力の回転方向を変更可能な機械式動力伝達部と、前記電気式差動部の出力軸に動力伝達可能に連結された第2電動機と、前記第1電動機または前記第2電動機の回転方向を検出する回転方向検出手段とを、備える車両用駆動装置において、(b)前記回転方向検出手段の検出結果に基づいて判定される前記機械式動力伝達部より前方での回転方向と前記機械式動力伝達部の係合中である所定の係合要素とに基づき、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する回転方向判定手段を備え、(c)前記回転方向判定手段は、前記電気式差動部と機械式動力伝達部との間の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態で前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する際には、前記機械式動力伝達部の前記所定の係合要素を係合させて前記電気式差動部の出力軸と前記機械式動力伝達部とを連動状態とすると共に、前記回転方向検出手段による回転方向検出中には前記電気式差動部を動力遮断状態に制御することを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項の車両用駆動装置の制御装置において、前記回転方向判定手段は、前記第1電動機または第2電動機の回転速度より回転方向を検出し、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置において、前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路が動力伝達可能状態において、前記第1電動機または第2電動機の回転速度が、ゼロよりも大きな回転速度に設定された第1所定回転速度以上かまたはゼロよりも小さな回転速度に設定された第2所定回転速度以下である場合に、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置において、前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部のギヤ比、前記入力軸回転速度、および前記出力側回転速度に基づいて推定される前記第1電動機の推定回転速度が、ゼロよりも大きな回転速度に設定された第1所定回転速度以上かまたはゼロよりも小さな回転速度に設定された第2所定回転速度以下である場合に、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする。
また、請求項にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置において、前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路がニュートラル状態から動力伝達可能状態に切り換えられる切換時において、前記所定の係合要素の係合が開始された後に前記回転方向検出手段による回転方向の検出を開始することを特徴とする。
また、請求項にかかる発明の要旨とするところは、請求項の車両用駆動装置の制御装置において、前記所定の係合要素は、前進変速段および後進変速段の両方の変速段で係合される係合要素を含むことを特徴とする。
また、請求項にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至6のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより、無段変速機構として作動することを特徴とする。
また、請求項にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置において、前記機械式動力伝達部は、有段式の自動変速機であることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記機械式動力伝達部の係合中である所定の係合要素と前記回転方向検出手段の検出結果とに基づき、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する回転方向判定手段を備えるため、回転速度センサなどの部品点数を追加することなく適宜機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することができる。また、前記回転方向判定手段は、前記電気式差動部と機械式動力伝達部との間の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態で前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する際には、前記所定の係合要素を係合させて前記電気式差動部の出力軸と前記機械式動力伝達部とを連動状態とすると共に、前記回転方向検出手段による回転方向検出中には前記電気式差動部を動力遮断状態に制御するので、ニュートラル状態において従来は判定困難な機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することができる。なお、ニュートラル状態において電気式差動部が動力遮断状態に制御されることで、機械式動力伝達部の所定の係合要素を係合させても駆動装置全体としてはニュートラル状態に維持されるため、係合要素を係合させることによる車両の走行状態の変化が阻止される。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記回転方向判定手段は、前記第1電動機または第2電動機の回転速度より回転方向を検出し前記出力軸の回転方向を判定するので、回転方向センサなどの部品点数を追加することなく機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を検出することができる。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、さらに前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路が動力伝達可能状態において、前記第1電動機または第2電動機の回転速度が第1所定回転速度以上かまたは第2所定回転速度以下かにより前記出力軸の回転方向を判定するので、第1電動機または第2電動機の回転速度のふらつきによって回転方向が誤判定されることが回避される。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部のギヤ比、前記入力軸回転速度、および前記出力側回転速度に基づいて推定される前記第1電動機の推定回転速度が第1所定回転速度以上かまたは第2所定回転速度以下かにより、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定するので、第1電動機の推定回転速度のふらつきによって回転方向が誤判定されることが回避される。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路がニュートラル状態から動力伝達可能状態に切り換えられる切換時において、前記所定の係合要素の係合が開始された後に前記回転方向検出手段による回転方向の検出を開始するため、前記機械式動力伝達部の出力軸と電気式差動部とが動力伝達可能に連結された状態で出力軸の回転方向が判定される。これにより、切換時の出力軸の回転方向が正確に検出される。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記所定の係合要素に前進変速段および後進変速段の両方の変速段において係合される共通の係合要素を含むため、ニュートラル状態から第1変速段或いは後進変速段を成立させる際に係合される共通の係合要素を予め係合させることで、係合時に係合させる係合要素が少なくなり、変速作動を素早く実行することができる。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、たとえば電気的な無段変速機として機能させられる電気式差動部と有段式の自動変速機とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができるとともに、電気式差動部の変速比を一定となるように制御した状態においては電気式差動部と有段式の自動変速機とで有段変速機と同等の状態が構成され、車両用駆動装置の総合変速が段階的に変化させられて速やかに駆動トルクを得ることもできる。
また、請求項にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、電気式差動部と機械式動力伝達部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。なお、電気式差動部は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に、変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることもできる。
ここで、好適には、前記第1所定回転速度はゼロよりも大きな回転速度に設定され、前記第2所定回転速度はゼロよりも小さな回転速度に設定される。このようにすれば、第1電動機および第2電動機の回転速度のふらつきを考慮にいれて出力軸の回転方向を判定することができる。
また、好適には、判定の閾値となる前記第1所定回転速度および第2所定回転速度は、動力伝達経路の切換時や定常時など車両の状態に応じて適宜これらの所定回転速度が変更される。このようにすれば、例えば切換時のような第1および第2電動機の回転速度のふらつきの大きいときは第1所定回転速度を大きく設定すると共に、第2所定回転速度を小さく(負の方向に大きく)設定することで回転方向の誤検出が回避される。また、定常時のように第1および第2電動機の回転速度のふらつきが小さいときは第1所定回転速度を小さく設定すると共に、第2所定回転速度を大きく(ゼロに近づける)設定しても電動機の回転方向の誤検出が回避されるため、回転方向を判定可能な範囲を幅広くすることができる。このように、第1所定回転速度および第2所定回転速度を係合時および定常時などの車両の状態に応じてそれぞれ好適に設定することができる。
また、好適には、前記差動機構は、前記駆動力源に連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有する遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。これにより、前記差動機構の軸心方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成され得る。
また、好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型の遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸心方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型の遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また、好適には、前記機械式動力伝達部の変速比(ギヤ比)と前記電気式差動部の変速機とに基づいて前記車両用駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、機械式動力伝達部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになる。
また、好適には、前記第2電動機の回転方向を検出する回転方向検出手段は、レゾルバ式の回転速度センサを備えるものである。このようにすれば、レゾルバは回転軸の回転角を検出し、その回転角の一定時間内の変化量に基づいて回転速度を検出ものであるため、この回転角の変化に基づいて回転方向を検出することができる。また、レゾルバはノイズに影響されにくく、温度、振動などの耐環境性にも優れているため、変速機内に設置される回転速度センサとして好適なものとなる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての電気式差動部(以下、差動部という)11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20(変速部)と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
このように、本実施例の変速機構10においては、エンジン8の後段側に差動部11が設けられている。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。なお、差動部11が本発明の電気式差動部に対応しており、伝達部材18が本発明の差動機構の出力軸に対応している。
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。これより、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、入力軸14の回転速度と伝達部材18の回転速度とが制御される。
本発明の機械式動力伝達部に対応する自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。なお、本実施例の自動変速部20が本発明の機械式動力伝達部に対応している。
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の各ギヤ段(変速段)を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合要素として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
また、この自動変速部20は、解放側係合要素の解放と係合側係合要素の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。(但し、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされるので、少なくとも第1クラッチC1および第2クラッチC2を解放すればニュートラル「N」状態とされる)。
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合要素であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度Nを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2(第1サンギヤS1)が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。ここで、動力分配機構16(差動部11)に動力伝達可能に連結された第1電動機M1、第2電動機M2、およびエンジン8の運転状態が制御されることにより、入力軸14の回転速度と伝達部材18の回転速度の差動状態が制御される。
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度Nを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度Nと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Nと同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、エンジン回転速度Nよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、差動部11において出力回転部材である伝達部材18(第3回転要素RE3)の回転が第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線XGとの交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st)の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th)の出力軸22の回転速度が示される。
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPを表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度Nを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)および回転方向を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)および回転方向を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合要素の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧Pを調圧するための信号、そのライン油圧Pが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、油圧源例えば電動オイルポンプやエンジン8により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合要素が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合要素を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合要素を解放すると共に係合側係合要素を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合要素を解放すると共に係合側係合要素を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合要素の油圧アクチュエータを作動させる。
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NとエンジントルクTとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度Nと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度Nとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Tとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTとエンジン回転速度Nとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度Nを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度Nを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度Nを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度Nを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。例えば、ハイブリッド制御手段84は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクT域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域において、モータ走行を実行する。また、ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Nを零乃至略零に維持する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
ところで、本実施例の変速機構10において、自動変速部20の出力軸22の回転方向すなわち車両の進行方向の判定は、第2電動機M2に備えられている図7に示すレゾルバ72から検出される第2電動機M2の回転方向信号に基づいて判定される。一般によく知られているレゾルバ72は、機械的な角度変位を電気信号に変換するための角度検出用センサであり、この角度変位を検出することで回転方向が検出されるとともに角度変位の一定時間内の変化量を算出することで回転速度が検出される。これにより、レゾルバ72によって検出される第2電動機M2の回転速度NM2は、回転速度の符号すなわち第2電動機M2の正転および逆転までを含んだ回転速度が検出される。これにより、出力軸22の回転方向の判定が可能となる。
ここで、自動変速部20の変速段が前進変速段(1st〜4th)に変速されている状態では、第2電動機M2の回転軸(ロータ)と自動変速部20の出力軸22とが連動状態となり、具体的には、第2電動機M2の回転軸(ロータ)と出力軸22とが同方向に回転する。また、自動変速部20の変速段が後進ギヤ段(Rev)に変速されている状態では、第2電動機M2の回転軸(ロータ)と自動変速部20の出力軸22とが連動状態となり、具体的には、第2電動機M2の回転軸(ロータ)と自動変速部20の出力軸22とが逆方向に回転する。上記に基づいて、第2電動機M2のロータの回転方向を検出することで出力軸22の回転方向を判定することができる。なお、以後の第2電動機M2の回転とは、実質的に第2電動機M2のロータの回転を意味する。
ところが、差動部11と自動変速部20との動力伝達経路が遮断された状態すなわちニュートラル状態では、第2電動機M2と自動変速部20の出力軸22との連動が遮断された状態となるため、第2電動機M2の回転方向の検出では出力軸22の回転方向の判定が不可能となる。そこで、本実施例では、後述する回転方向判定手段86によって、ニュートラル状態であっても出力軸22の回転方向の判定を可能としている。
シフトポジション判定手段88は、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置を判断し、そのシフトレバー52の位置が変速機構10内の動力伝達経路が遮断される「N」ポジションであるか否かを判定する。
車速判定手段90は、出力軸22に設けられている図1に示す回転速度センサ74から検出される出力軸回転速度NOUTに基づいて算出される車速Vが所定速度V1以上か否かを判定する。この所定速度V1は、たとえば略零程度の低い値に設定されており、本制御の過度の実行を阻止するためのものである。なお、回転速度センサ74は、一般に回転速度のみが検出されるものであり、回転方向の検出は不可能となっている。
回転方向検出手段92は、前述したようなレゾルバ72によって検出された第2電動機M2の角度変位の変化に基づいて第2電動機M2の回転方向を検出する。そして、回転方向判定手段86は、車両の状態に応じて、自動変速部20の係合中の係合要素と回転方向検出手段92の検出結果に基づいて、自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定する。本実施例では、動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態での自動変速部20の出力軸22の回転方向判定について以下に説明する。
回転方向判定手段86は、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が「N」ポジションと判定されるとともに、前記車速判定手段90により車速Vが所定速度V1以上と判定されると、自動変速部20の変速段を例えば第1速ギヤ段、具体的には、本実施例の所定の係合要素に対応する第1クラッチC1および第3ブレーキB3を係合する指令を前記有段変速制御手段82へ出力する。これにより、第2電動機M2と自動変速部20の出力軸22とは連動状態となり、さらに、自動変速部20は前進変速段である第1速ギヤ段であることから、第2電動機M2と自動変速部20の出力軸22とは同方向に回転される。なお、本発明の所定の係合要素は、選択されたギヤ段を成立させる際に係合される係合要素であり、例えば後進ギヤ段を成立させる際には、図2に示すように第2クラッチC2および第3ブレーキB3が対応する。
ここで、第3ブレーキB3は、第1速ギヤ段および後進ギヤ段の両方の変速段で係合される共通の係合要素であり、ニュートラル時において、予め第3ブレーキB3を係合させると、「N」ポジションから第1速ギヤ段或いは後進ギヤ段の係合要素を係合させる際には、第1速ギヤ段の係合要素である第1クラッチC1或いは後進ギヤ段の係合要素である第2クラッチC2のみを係合させるだけでよい。さらに、第3ブレーキB3と並列に第4リングギヤR4の一方向の回転を規制するワンウェイクラッチが設けられていると、第1速ギヤ段を成立させる場合、ワンウェイクラッチによって第4リングギヤR4の回転が停止されるため、第3ブレーキB3の係合を省略することができる。
また、シフトレバー52の位置が「N」ポジションとされることに関連して、モータ走行の場合には、第2電動機M2のトルク(駆動力)を零にし、一方、エンジン走行の場合には、第1電動機M1の反力トルクおよび第2電動機M2の駆動力を零にする指令を前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。このような状態にすることで、差動部11が動力遮断状態に制御され、第2電動機M2は自由回転可能状態(空転状態)となる。
これらの制御が実行されると、第2電動機M2は、出力軸22の回転すなわち出力軸22と連動する駆動輪34の回転に基づいて回転させられる。言い換えれば、自動変速部20の出力軸22側から回転が入力され、第2電動機M2がその回転によって連動される回転軸となる。そして、この状態で回転方向検出手段92によって自動変速部20の前方に位置する第2電動機M2の回転方向を検出し、自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定する。具体的には、第1速ギヤ段を成立させる係合要素(第1クラッチC1および第3ブレーキB3)を係合させた場合、第2電動機M2の回転方向が正転方向(前進方向)と検出されると、出力軸22の回転方向が正転方向(前進方向)と判定される。一方、第2電動機M2の回転方向が逆転方向(後進方向)と検出されると、出力軸22の回転方向が逆転方向と判定される。
また、後進ギヤ段を成立させる係合要素(第2クラッチC2および第3ブレーキB3)を係合させた場合、第2電動機M2の回転方向が正転方向と検出されると、出力軸22の回転方向が逆転方向と判定される。一方、第2電動機M2の回転方向が逆転方向と検出されると、出力軸22の回転方向が正転方向と判定される。
図10は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち出力軸22の回転方向を判定するための制御作動を説明するフローチャートであり、たとえば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、本フローチャートにおいては、係合時において、第1速ギヤ段を成立させるため、第1クラッチC1および第3ブレーキB3が係合されるものとする。
図10において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S11において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3のいずれもが係合されない「N」ポジションであるか否かが判定される。なお、シフトレバー52のシフトポジションPSHが「N」ポジションに位置される間は、差動部11がトルク伝達不能なトルク伝達経路解放状態となる。
S11が否定される場合は、S18において変速制御等の他の制御が実行され、本ルーチンは終了させられる。
S11が肯定される場合は、前記車速判定手段90に対応するS12において、現在の車速Vが所定速度V1以上か否かが判定される。S12の判定が否定される場合は、S17において、図8に示す変速線図に従って自動変速部20の通常の自動変速が実行され、本ルーチンは終了させられる。
S12の判定が肯定される場合はS13に進み、自動変速部20において第1速ギヤ段「1st」を形成、すなわち第1クラッチC1および第3ブレーキB3を係合させる。そして回転方向検出手段92に対応するS14において、第2電動機M2が正転回転(前進回転)か否かを判定する。S14が肯定される場合、S15において自動変速部20の出力軸22の回転方向が正転方向(前進回転方向)と判定され、本ルーチンは終了させられる。一方、S14が否定される場合は、S16において自動変速機20の出力軸22の回転方向が逆転方向(後進回転方向)と判定され、本ルーチンは終了させられる。なお、S11乃至S16が本発明の要部でもある回転方向判定手段86に対応している。
上述のように、本実施例によれば、自動変速部20の係合中である所定の係合要素と回転方向検出手段92との検出結果に基づき自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定する回転方向判定手段86を備えるため、回転速度センサなどの部品点数を追加することなく自動変速部20の出力軸22の回転方向を適宜判定することができる。
また、本実施例によれば、回転方向判定手段86は、第2電動機M2の回転速度より回転方向を検出し出力軸22の回転方向を判定するので、回転速度センサなどの部品点数を追加することなく自動変速部20の出力軸22の回転方向を検出することができる。
また、本実施例によれば、差動部11と自動変速部20との間の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態時において、所定の係合要素を係合させると共に、回転方向検出中には差動部11を動力遮断状態に制御するため、ニュートラル状態において通常は検出不可能な自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定することができる。また、ニュートラル状態において差動部11が動力遮断状態に制御されることで、自動変速部20の所定の係合要素を係合させても変速機構10全体としてはニュートラル状態に維持されるため、係合要素を係合させることによる車両の走行状態の変化が阻止される。
また、本実施例によれば、所定の係合要素に第1速ギヤ段および後進ギヤ段の両方の変速段において係合される共通の係合要素(B3)を含むため、ニュートラル状態から前進ギヤ段或いは後進ギヤ段を成立させる際に係合される共通の摩擦係合要素(B3)を予め係合させることで、係合時に係合させる係合要素が少なくなり、変速作動を素早く実行することができる。
また、本実施例によれば、電気式差動部11と自動変速部20とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。なお、電気式差動部11は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に、変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることもできる。
また、本実施例によれば、たとえば電気的な無段変速機として機能させられる電気式差動部11と有段式の自動変速部20とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができるとともに、電気式差動部11の変速比を一定となるように制御した状態においては電気式差動部11と有段式の自動変速部20とで有段変速機と同等の状態が構成され、車両用駆動装置の総合変速が段階的に変化させられて速やかに駆動トルクを得ることもできる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
回転方向判定手段86は、動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態への切換時、所謂N→Dシフト時においても適用可能であり自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定することができる。回転方向判定手段86は、切換時においては、係合される係合要素の係合が開始された後に、回転方向検出手段92による回転方向の検出を開始する。図11は、N→Dシフト時の回転方向判定手段86による回転方向を判定する制御作動を説明するフローチャートである。また、図12は、N→Dシフト時において係合される所定の係合要素の係合圧と第2電動機M2の回転速度NM2の状態を示すタイムチャートの一例である。なお、図12は、N→Dシフト時において、第1速ギヤ段が成立させられて第1クラッチC1が係合される状態を示している。
図11のフローチャートについて説明すると、先ず、S20において、シフト操作装置50のシフトレバー位置が「N」レンジから「D」レンジまたは「R」レンジへシフト操作されたか否かが判定される。S20が否定されると、S33においてその他の制御が実行される。
S20が肯定されるとS21において、前進ギヤ段選択時に係合される第1クラッチC1が係合されたか否かが判定される。S21が肯定されると、S23において第2電動機M2の回転速度NM2が第2所定回転速度として設定された例えば−650rpmよりも小さいか否かが判定される。S23が肯定されると、第2電動機M2が逆転されると共に、前進ギヤ段選択時に係合される第1クラッチC1が係合されていることから、S27において自動変速部20の出力軸22が逆転回転させられている車両後進状態と判定される。
また、S23が否定されると、S24において第2電動機M2の回転速度NM2が第1所定回転速度として設定された例えば650rpmよりも大きいか否かが判定される。S24が肯定されると、第2電動機M2が正転されると共に、S21により前進ギヤ段の係合要素である第1クラッチC1が係合されていることから、S28において自動変速部20の出力軸22が正転回転させられている車両前進状態と判定される。
また、S24が否定されると第2電動機M2の回転速度NM2が−650rpmから650rpmの間の回転速度となる。このような第2電動機M2の回転速度NM2がゼロ回転近傍にある状態では、第2電動機M2のふらつきによって回転速度が変動しているとも考えられるため、S29において回転方向不定と判定される。なお、前記第1所定回転速度および第2所定回転速度の値は、予め実験的に求められており、第2電動機M2のふらつきを考慮した値に設定される。特にN→Dシフト時の係合直後は第2電動機M2のふらつきが大きいので、第1所定回転速度を比較的大きな値に設定すると共に、第2所定回転速度を比較的小さな値に設定することで、第2電動機M2のふらつきによる回転方向の誤検出を回避させている。
なお、第2電動機M2による出力軸22の回転方向判定において、閾値として機能する第1所定回転速度および第2所定回転速度は、例えば第1クラッチC1などの係合装置の係合中と非係合中(定常時)とでその値を変更することができる。例えば係合中であれば、第2電動機M2の回転速度NM2のふらつきが大きいため、第1所定回転速度を大きくすると共に、第2所定回転速度を小さく(負の方向に大きく)設定することで、第2電動機M2の回転方向の誤検出が回避される。一方、非係合時(定常時)であれば、第2電動機M2のふらつきも比較的小さいため、第1所定回転速度および第2所定回転速度をゼロ付近に設定する。
S21に戻り、S21が否定されると、S22において後進ギヤ段選択時に係合される第2クラッチC2が係合されているか否かが判定される。S22が肯定されると、S25において第2電動機M2の回転速度NM2が第2所定回転速度である−650rpmよりも小さいか否かが判定される。S25が肯定されると、第2電動機M2が逆転されると共に、後進ギヤ段選択時に係合される第2クラッチC2が係合されていることから、S30において自動変速部20の出力軸22が正転回転させられている車両前進状態と判定される。
また、S25が否定されると、S26において第2電動機M2の回転速度NM2が第1所定回転速度である650rpmよりも大きいか否かが判定される。S26が肯定されると、第2電動機M2が正転されると共に、後進ギヤ段選択時に係合される第2クラッチC2が係合されていることから、S31において自動変速部20の出力軸22が逆転回転させられている車両後進状態と判定される。
また、S26が否定されると、第2電動機M2の回転速度NM2が−650rpmから650rpmの間の回転速度となる。このとき、第2電動機M2のふらつきによって回転速度NM2が変動しているとも考えられるため、S32において回転方向不定と判定される。言い換えれば、第2電動機M2の回転速度NM2が第1所定回転速度である650rpm以上かまたは第2所定回転速度である−650rpm以下かによって自動変速部20の出力軸22の回転方向が判定される。
また、S22が否定されると、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されていないため、何らかの故障などにより差動部11から駆動輪34への動力伝達経路が遮断されている、すなわち第2電動機M2と駆動輪34とが動力伝達遮断状態となっていることからS32において、回転方向不定と判定される。
次に、N→Dシフト時の制御作動の一例を、図12のタイムチャートを用いて説明する。T1時点において、シフト操作装置50によって「N」ポジションから「D」ポジションに切り換えられる(図11のS20に対応)と、第1クラッチC1の係合圧が急激に立ち上げられた(クイックアプライ)後、スイープ制御によってT2時点において第1クラッチC1の係合が完了(S21に対応)する。そして、このT2時点において、第2電動機M2の回転速度NM2および回転方向が検出される。図12のタイムチャートにおいては、T2時点において、第2電動機M2の回転速度NM2が−650rpmを下回っており(S23に対応)、車両が後方に進んでいるものと判定される(S27に対応)。
上述のように、本実施例によれば、動力伝達経路がニュートラル状態から動力伝達可能状態に切り換えられる切換時において、所定の係合要素の係合が開始された後に出力軸22の回転方向を判定するため、自動変速部20の出力軸22と差動部11とが動力伝達可能に連結された状態で出力軸22の回転方向が判定される。これにより、切換時の出力軸22の回転方向が正確に検出される。
また、本実施例によれば、第2電動機M2の回転速度が第1所定回転速度以上かまたは第2所定回転速度以下かにより出力軸22の回転方向を判定するので、第2電動機M2の回転速度のふらつきによって誤検出されることが回避される。
回転方向判定手段86は、たとえば「D」ポジション(駆動ポジション)時などの動力伝達可能状態時においても実施することができる。図13は、例えば「D」ポジション時の係合されている所定の係合要素の係合圧と第2電動機M2の回転速度NM2の状態を示すタイムチャートの一例である。なお、本実施例においても、所定の係合要素として前進ギヤ段選択時に係合される第1クラッチC1が係合されている状態を一例にして説明する。
シフト操作装置50によって「D」ポジションが選択されているため、第1クラッチC1には、常時十分な係合圧が供給されている。このとき回転方向判定手段86は、例えば所定の時間間隔で図14に示すフローチャートに従って回転方向を判定する。図14のフローチャートは、前述した図11のフローチャートと略同様の制御となっているので、相違点についてのみ説明する。
S40においては、シフトポジション判定手段88によって現在の走行ポジションが「D」ポジション或いは「R」ポジションに位置されているか否かが判定される。S40が否定されると、S53において、その他の制御が実行される。また、S40が肯定されるとS41に進み、図11と同様のフローチャートに従って回転方向が判定される。
ここで、本実施例においては、図14に示すように、第1所定回転速度が200rpmに設定されていると共に、第2所定回転速度が−200rpmに設定されている(S43乃至S46に記載)。
このように「D」または「R」ポジション時においては、第2電動機M2のふらつきを考慮した回転方向が不定とされる回転速度範囲(−200rpm〜200rpm)が小さく設定されている。「D」ポジション或いは「R」ポジションなどの駆動ポジションに選択されている間は、自動変速部20の係合状態が変化しない定常状態となっており、このときは第2電動機M2のふらつきも小さくなる。これにより、回転速度範囲が小さく設定されても回転方向の判定が可能となる。
なお、図13においては、例えば車両が登坂道路を走行中であって、その道路の勾配によって車両が後退させられる状態を示している。図13に示すように第2電動機M2が逆転させられて、回転速度NM2が−200rpmを下回ると、車両の後進状態と判定される。
上述のように、本実施例によれば、「D」ポジションなどの駆動ポジション選択時においても回転方向判定手段86を実行することで自動変速部20の出力軸22の回転方向を検出することができる。また、駆動ポジション時においては、自動変速部20の係合状態が変化しない定常状態であるため第2電動機M2のふらつきが小さくなるので、第1所定回転速度を小さく設定すると共に、第2所定回転速度を大きく設定することができる。これにより、回転方向が検出可能な回転速度範囲を大きくすることができる。
また、回転方向検出手段92は、第2電動機M2に換えて第1電動機M1に設けられているレゾルバによる第1電動機M1の推定回転速度の検出結果に基づいて自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定することができる。なお、第1電動機M1のレゾルバによって検出される推定回転速度は、回転速度の符号、すなわち正転および逆転までを含んだ回転速度が検出される。これにより、出力軸22の回転方向の判定が可能となる。
図15は、差動部11の各回転要素の回転速度の相対関係を示す共線図であり、図3に対応するものである。なお、図15は、一例としてN→Rシフト時の状態を示しており、実線がシフト前すなわち「N」ポジション(ニュートラル状態)での回転状態を示しており、破線がシフト後すなわち「R」ポジションに切り換えられたときの回転状態を示している。
ここで、第1電動機M1の回転速度NM1および回転方向は、伝達部材18の回転速度N18、差動部11のギヤ比ρ(=0.418)、並びにエンジン8の回転速度Nに基づいて推定(算出)される。例えば、破線で示すシフト後において、伝達部材18が−650rpmで回転させられ、エンジン8が350rpm程度で回転させられていると、第1電動機M1の推定回転速度NM1は約2300rpm程度となる。このように、自動変速部20の出力軸22の回転方向を、エンジン8の回転速度Nおよび第1電動機M1の推定回転速度に基づいて判定することができる。
ここで、本実施例においても、第1電動機M1の推定回転速度が、第1所定回転速度以上かまたは第2所定回転速度以下かにより、自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定することができる。なお、本実施例の第1所定回転速度および第2所定回転速度は、実験或いは理論的に好適な値に設定される。
上述のように、本実施例によれば、回転方向判定手段86は、自動変速部20の出力軸22の回転方向を第1電動機M1の推定回転速度の検出結果に基づいて判定するすることができる。また、回転方向判定手段86は、第1電動機M1の推定回転速度が第1所定回転速度以上かまたは第2所定回転速度以下かにより、自動変速部20の出力軸22の回転方向を判定するので、第1電動機M1の推定回転速度のふらつきによって回転方向が誤判定されることが回避される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の各実施例では、それぞれの車両の状態に応じて回転方向判定手段86の制御作動について説明を行ったが、これらの各実施例を適宜組み合わせて実行しても構わない。
また、本実施例の第1所定回転速度および第2所定回転速度の具体的な数値は、第1電動機M1および第2電動機M2の性能、或いは車両の構成によっても変更されるものであるため、自由に変更することができる。
また、前述の実施例では、ニュートラル状態時、N→Dシフト時、および駆動時における自動変速部20の出力軸22の回転方向の検出について説明を行ったが、例えば走行中の変速時などにおいてもN→Dシフト時と同様の制御によって回転方向を判定することができる。
また、前述の実施例では、第2電動機M2と自動変速部20の出力軸22とを連動状態とするために、所定の係合要素として第1速ギヤ段を形成させる係合要素を係合させていたが、特に第1速ギヤ段に限定されず、第2速ギヤ段などの前進ギヤ段或いは後進ギヤ段を形成させる摩擦係合要素の係合であっても出力軸22の回転方向を判定することができる。但し、後進ギヤ段においては、第2電動機M2および出力軸22の回転方向が逆方向となる。
また、前述の実施例では、回転方向検出手段92としてレゾルバ72が用いられているが、レゾルバ72の替わりにたとえば磁気式エンコーダなど第2電動機M2の回転方向を検出するものであれば他の装置を用いて検出するものであっても構わない。
また、前述の実施例では、差動部11はそのギヤ比γ0が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、たとえば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用することができる。
また、前述の実施例において、差動部11は、動力分配機構16に設けられて差動作用を制限することにより少なくとも前進2段の有段変速機としても作動させられる差動制限装置を備えたものであってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、たとえばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、たとえばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合要素は、パウダー(磁紛)クラッチ、電磁クラッチ、噛合型のドグクラッチなどの磁紛式、電磁式、機械式係合要素から構成されていてもよい。たとえば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
また、前述の実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられてそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配列されていてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、たとえば伝達部材18としてカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
また、前述の実施例の差動機構としてお動力分配機構16は、たとえばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例のシフト操作装置50は、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えていたが、そのシフトレバー52に替えて、たとえば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションPSHを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションPSHが切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー52が「M」ポジションに操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが、ギヤ段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速ギヤ段がギヤ段として設定されてもよい。このばあい、自動変速部20ではギヤ段が切り換えられて変速が実行される。たとえば、シフトレバー52が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれかがシフトレバー52の操作に応じて設定される。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。 図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合要素の作動の組み合わせを説明する作動図表である。 図1の駆動装置における各ギヤ段の相対回転速度を説明する共線図である。 図1の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。 油圧制御装置のうちクラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。 シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。 図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例を示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。 破線はエンジンの最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。 図4の電子制御装置の制御作動すなわちニュートラル状態において自動変速部の出力軸の回転方向を判定する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図4の電子制御装置の制御作動すなわちニュートラル状態において自動変速部の出力軸の回転方向を判定する為の制御作動を説明する他のフローチャートである。 N→Dシフト時において係合される所定の係合要素の係合圧と第2電動機の回転速度の状態を示すタイムチャートの一例である。 「D」ポジション時に係合されている所定の係合要素の係合圧と第2電動機の回転速度の状態を示すタイムチャートの一例である。 図4の電子制御装置の制御作動すなわちニュートラル状態において自動変速部の出力軸の回転方向を判定する為の制御作動を説明する他のフローチャートである。 差動部の各回転要素の回転速度の相対関係を示す共線図であり、図3に対応するものである。
符号の説明
8:エンジン 10:変速機構(車両用駆動装置) 11:差動部(電気式差動部) 18:伝達部材(出力軸) 20:自動変速部(変速部) 22:出力軸 34:駆動輪 86:回転方向判定手段 92:回転方向検出手段 M1:第1電動機 M2:第2電動機 C1:第1クラッチ(所定の係合要素) B3:第3ブレーキ(所定の係合要素)

Claims (8)

  1. 駆動力源と、該駆動力源の後段に設けられ、差動機構の回転要素に動力伝達可能に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、入力軸回転速度と出力軸回転速度との差動状態が制御される電気式差動部と、該電気式差動部から駆動輪への動力伝達経路上に動力伝達可能に設けられ、該電気式差動部と駆動輪との間に複数の係合要素を備え、該複数の係合要素の組合せにより前記駆動力源より出力される駆動力の回転方向を変更可能な機械式動力伝達部と、前記電気式差動部の出力軸に動力伝達可能に連結された第2電動機と、前記第1電動機または前記第2電動機の回転方向を検出する回転方向検出手段とを、備える車両用駆動装置であって、
    前記回転方向検出手段の検出結果に基づいて判定される前記機械式動力伝達部より前方での回転方向と前記機械式動力伝達部の係合中である所定の係合要素とに基づき、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する回転方向判定手段を備え、
    前記回転方向判定手段は、前記電気式差動部と機械式動力伝達部との間の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態で前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定する際には、前記機械式動力伝達部の前記所定の係合要素を係合させて前記電気式差動部の出力軸と前記機械式動力伝達部とを連動状態とすると共に、前記回転方向検出手段による回転方向検出中には前記電気式差動部を動力遮断状態に制御することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
  2. 前記回転方向判定手段は、前記第1電動機または第2電動機の回転速度より回転方向を検出し、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
  3. 前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路が動力伝達可能状態において、前記第1電動機または第2電動機の回転速度が、ゼロよりも大きな回転速度に設定された第1所定回転速度以上かまたはゼロよりも小さな回転速度に設定された第2所定回転速度以下である場合に、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置。
  4. 前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部のギヤ比、前記入力軸回転速度、および前記出力側回転速度に基づいて推定される前記第1電動機の推定回転速度が、ゼロよりも大きな回転速度に設定された第1所定回転速度以上かまたはゼロよりも小さな回転速度に設定された第2所定回転速度以下である場合に、前記機械式動力伝達部の出力軸の回転方向を判定することを特徴とする請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置。
  5. 前記回転方向判定手段は、さらに前記電気式差動部から前記駆動輪の間の動力伝達経路がニュートラル状態から動力伝達可能状態に切り換えられる切換時において、前記所定の係合要素の係合が開始された後に前記回転方向検出手段による回転方向の検出を開始することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置。
  6. 前記所定の係合要素は、前進変速段および後進変速段の両方の変速段で係合される係合要素を含むことを特徴とする請求項5の車両用駆動装置の制御装置。
  7. 前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより、無段変速機構として作動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置。
  8. 前記機械式動力伝達部は、有段式の自動変速機であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置。
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