JP5167684B2 - ドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法 - Google Patents

ドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法 Download PDF

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Description

この発明は、電力変換器によって運転されるモータにより、例えば鉄道車両用のドアを所定の速度で駆動するためのドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法に関するものである。
従来、同期モータを用いてドアを駆動する場合、同期モータの磁極位置を位置検出器により検出し、検出した磁極位置から速度を算出して同期モータを速度制御する方法が知られている。
この方法によると、実際の磁極位置と制御に用いる磁極位置情報とが何らかの理由によってずれた場合(磁極位置ズレという)、ドアの速度指令値に対する推力の不足、ドアの停止、更には速度指令値が指令する移動方向とは逆方向へのドアの暴走(逆転暴走という)などの異常事態が発生することがある。
このような異常事態への対応策として、特許文献1に記載されたドア開閉装置が知られている。
特許文献1に記載されたドア開閉装置では、同期モータの速度検出値が、速度指令値とは逆極性の第1の設定値を超えた場合を逆転暴走と判定している。
そして、同期モータの電機子巻線をスイッチにより短絡してドアを制動し、または、同期モータを駆動する電力変換器の上アームまたは下アームのスイッチング素子をすべてオンさせて出力電圧をゼロにすること(ゼロ電圧出力)によりモータの電機子巻線を短絡し、ドアを制動することが記載されている。また、ドアの制動動作は、ドアの速度が第2の設定値以下に低下するまで行うことも併せて記載されている。
上記の対策により、磁極位置ズレによってドアが逆転暴走状態になったとしてもこれを直ちに検出してドアを安全に停止させている。
特開2006−158009号公報(段落[0020]〜[0025],[0028]〜[0033]、図1〜図4等)
通常、鉄道車両用のドア駆動制御装置では、閉動作時にドアに乗客や障害物が挟まれた場合、ドアに挟まったものを解放するためにドアを再開閉動作させている。
図9は、ドアの閉動作時にドアに障害物が接触したためドアを再び開動作させた場合(いわゆる再開閉動作)における速度指令値と速度検出値との関係を示している。
この再開閉動作においては、ドアの速度指令値を閉方向から開方向に切り替えてドアを開き、その後、開方向から閉方向に切り替えてドアを閉じるため、図9に示すように速度指令値の極性が変化することになる。この時、ドアは速度指令値に対して若干の時間遅れを持って動作するので、図9にcとして示した如く、速度指令値の極性と速度検出値の極性とが逆になる状態が発生する。
特許文献1の従来技術では、安全のために暴走判定速度(前記の第1の設定値)を低く設定してあると、再開閉動作時に速度指令値の極性と速度検出値の極性とが逆になる状態を逆転暴走状態と誤認してしまう。その結果、正常動作であるにも関わらず、逆転暴走時の制御動作を行ってドアを制動し、停止させてしまう場合がある。
また、駆け込み乗車する乗客が、閉まりかけたドアに手を掛けたような場合には、速度指令値の極性がドアを閉める極性であるのに対して、速度検出値の極性はドアを開く極性となる。従って、この場合も、正常動作であるにも関わらず制御装置は逆転暴走と誤認するので、ドアを制動し、停止させてしまう。
このようにしてドアが停止し、閉まらなくなった場合には、乗務員が該当ドアを調査し、ドアを施錠してから発車するため、安全面では問題はないが、列車の定時運行に支障をきたすという問題があった。
また、特許文献1の従来技術には、前述した如く、磁極位置ズレなどによってドアが実際に逆転暴走した場合にゼロ電圧出力によってドアを制動する技術も開示されている。
しかし、ドアが開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返る場合、速度検出値は、ドアが全開位置で跳ね返る瞬間にゼロとなる。このとき、制御装置は電力変換器のゼロ電圧出力を解除するので、電力変換器はゲートオフされ、モータはフリーラン状態となる。従って、モータの制動に遅れが生じ、乗客がドアに挟まれて怪我をするおそれがある。
更に、磁極位置検出器の故障により誤った位置検出値が制御装置に取り込まれ、その結果として逆転暴走状態を誤認した場合は、次のような問題を生じる。
すなわち、この場合はドアが実際に暴走しているわけではないので、電力変換器がゼロ電圧を出力しても制御装置は逆転暴走状態と誤認し続ける。その結果、電力変換器はいつまでもゼロ電圧を出力し続けることとなるので、特定のスイッチング素子がオン状態またはオフ状態で固定されることになり、機器の劣化を進行させるという問題もあった。
そこで、本発明の解決課題は、逆転暴走状態を誤認することなく正確に検出可能なドア駆動制御装置を提供することにある。また、機器の劣化を防止するようにした駆動制御装置を提供することにある。
更に、本発明の別の解決課題は、従来よりも安全性を向上させると共に、列車等の定時運行に支障をきたすことのないドア駆動制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係るドア駆動制御装置は、ドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により運転される電力変換器と、この電力変換器から電力が供給されるドア駆動用のリニアモータ等のモータと、を備えている。そして、上記電力変換器を制御することにより、モータを介してドアの速度を制御するように構成されている。
より詳細に述べると、請求項1に係るドア駆動制御装置は、ドアの速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、速度検出値が速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、逆転暴走状態と判断してドアの速度異常信号を出力する異常判定手段を備えている。なお、上記速度検出値は、ドアの位置検出値から演算することが可能である。
また、上記の速度異常信号は、例えば電力変換器の出力電圧をゼロに制御してモータを制動するために用いることができる。
請求項1に記載したドア駆動制御装置の具体的構成としては、請求項2に記載するように、ドアの速度検出値が速度指令値に一致するように電流指令値を演算する速度制御手段と、上記電流指令値、電力変換器の出力電流検出値、及びドアの位置検出値を用いて電力変換器の電圧指令値を生成する電流制御手段と、を備えている。
更に、請求項3に記載するように、速度異常信号を電流制御手段に入力することにより、モータを制動させるための電力変換器の電圧指令値を生成することができる。
次に、請求項4に係るドア駆動制御方法は、請求項1〜3のドア駆動制御装置によって実行される駆動制御方法であり、ドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により電力変換器を運転し、リニアモータ等のモータによって駆動されるドアの速度を制御する方法に関する。
このドア駆動制御方法は、具体的には、ドアの速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、速度検出値が速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、ドアが逆転暴走状態にあると判断してドアの速度異常信号を出力する異常検出動作を行い、前記速度異常信号を用いて電力変換器の運転を制御する。
このドア駆動制御方法によれば、ドアの速度指令値が第1の設定速度を超えない場合には異常検出動作を行わないことになり、ドアの逆転暴走を誤認するおそれを低減することができる。
請求項係るドア駆動制御方法は、請求項4における速度異常信号が出力された時に、前記電力変換器の出力電圧を一定期間ゼロになるように制御して前記モータの電機子巻線を短絡させ、いわゆる発電制動によってドアを制動させるものである。
このため、ドアが開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返る場合にも、電力変換器のゼロ電圧出力→ゲートオフによるフリーラン状態となる事象が発生しない。従って、モータの制動の遅れによって乗客が怪我をするおそれをなくすことができる。
求項に係るドア駆動制御方法は、ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は上記異常検出動作を実行しないことを特徴とする。
このため、ドアの位置検出器の交換等によって検出値による磁極検出位置にズレが生じたままの状態であるばあいには、ドアは動作開始直後から暴走することとなり、この暴走を上記一定時間内に検出して制動、停止等の措置を講じることが可能になる。
請求項に係るドア駆動制御方法は、ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は、前記速度指令値と前記速度検出値との差が閾値以内であれば、請求項4記載の異常検出動作を実行しないことを特徴とする。
すなわち、磁極位置ズレが小さく、上記一定時間内に暴走と判断できるまでには速度検出値が増加しない場合には、その後に速度指令値と速度検出値との差が閾値以内に収まっていないことにより速度検出値が速度指令値に追従できていなければ、暴走の予兆をとらえることができ、暴走を確実に検出することができる。
本発明によれば、磁極位置ズレの発生時において、逆転暴走状態を誤認することなく正確に検出することができる。
また、利用者に対する安全性を高め、機器を損傷したり運行に支障をきたすことのないドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1はドア駆動制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。
図1において、1はドアであり、連結部3を介してドア駆動用のリニアモータ2に連結されている。リニアモータ2は、ドア駆動制御装置10Aに接続されている。
ドア1の位置は、位置検出器5により検出される。また、ドア駆動制御装置10A内に設けられた後述の電力変換器14の二相(例えばU相,W相)の出力電流は、出力電流検出器4により検出される。
ドア駆動制御装置10Aは、速度演算器11、速度制御器12、電流制御器13、電力変換器14、ドア速度異常判定器15を備えている。
速度演算器11は、位置検出器5から出力される位置検出値を用いてドア1の速度を演算し、速度検出値として出力する。速度制御器12では、速度指令値と速度検出値とを用いて速度をフィードバック制御し、電流指令値を演算して出力する。
なお、速度指令値及び速度検出値は、ドア速度異常判定器15にも入力されている。このドア速度異常判定器15は、速度指令値及び速度検出値に基づいてドア逆方向速度異常信号aを生成して電流制御器13に送出する。ドア速度異常判定器15の詳細な動作については後述する。
電流制御器13は、電流指令値、電流検出値及び位置検出値を用いて電流のフィードバック制御を行い、電圧指令値を演算して出力する。この電圧指令値は、電力変換器14に与えられている。
電力変換器14は、内部のスイッチング素子のオン・オフにより電力変換動作を行って電圧指令値通りの電圧をリニアモータ2に供給し、リニアモータ2を駆動する。なお、電力変換器14は、非常ハンドル21の操作により電源20から遮断され、非常停止するように構成されている。
次に、図1のドア駆動制御装置10Aを用いたドア駆動制御方法の第1実施形態を、図2のフローチャートを用いて説明する。この第1実施形態は、ドア1の逆転暴走状態の検出動作を特徴としており、図1におけるドア速度異常判定器15により実行される。
ここでは、ドア1を開ける方向の速度の極性を正、ドア1を閉める方向の速度の極性を負とし、図2における設定速度1(第1の設定速度)、設定速度2(第2の設定速度)は、予め設定された絶対値によって表される速度とする。
図2において、速度指令値が正の設定速度1を超えると、ステップS202に移行する(S201,YES)。ステップS202では、速度検出値が、速度指令値とは逆極性である負の設定速度2未満であるか否かを判断し、速度検出値が負の設定速度2未満であれば(S202,YES)、逆転暴走状態と判断してドア逆方向速度異常信号aをセットする(S203)。速度検出値が負の設定速度2未満でなければ、処理を終了する(S202,NO)。
すなわち、速度指令値がドア1を開ける極性で与えられているにもかかわらず、速度検出値がドア1を閉める極性であって設定速度2未満であるときに、ドア逆方向速度異常信号aがセットされる。
また、速度指令値が正の設定速度1を超えていない場合、ステップS204に移行する(S201,NO)。ステップS204では、速度指令値が負の設定速度1未満であるか否かを判断し、速度指令値が負の設定速度1未満であれば(S204,YES)、ステップS205に移行する。
また、速度指令値が負の設定速度1未満でない場合には(S204,NO)、処理を終了する。つまり、速度指令値が開方向へも閉方向へも設定速度1を超えていない場合は、速度検出値及び設定速度を用いた異常検出動作(逆転暴走状態の検出動作)を行わない。
ステップS205では、速度検出値が正の設定速度2を超えているか否かを判断し、速度検出値が正の設定速度2を超えていれば(S205,YES)、逆転暴走状態と判断してドア逆方向速度異常信号aをセットする(S206)。速度検出値が正の設定速度2を超えていなければ、処理を終了する(S205,NO)。
図1のドア速度異常判定器15から出力されたドア逆方向速度異常信号aは、電流制御器13に送られている。電流制御器13では、ドア逆方向速度異常信号aが入力されると、例えば、電力変換器14の出力電圧をゼロとするような電圧指令値を出力する。
以上のような動作により、この実施形態によれば、図9に示したような速度指令値と速度検出値との極性の相違に起因して逆転暴走状態を誤認するおそれがない。
すなわち、図2の動作では、速度指令値が正または負の設定速度1を超えないときには異常検動作を行っていない。言い換えれば、速度指令値が正または負の設定速度1を超えた場合に限って異常検出動作を行っている。
つまり、設定速度1を適切な値に設定すれば、速度指令値と速度検出値との極性が相違する領域(図9に示したように速度指令値が比較的小さい領域c)におけるドア逆方向速度異常の判断を回避することができ、逆転暴走状態の誤認を避けることができる。
次に、ドア駆動制御装置の参考形態を図3のブロック図を用いて説明する。
図3において、図1と同一の構成要素には同一の番号を付してあり、以下では図1と異なる部分を中心に説明する。
図3のドア駆動制御装置10Bでは、速度検出値から加速度を演算する加速度演算器16と、加速度検出値及び速度検出値を用いてドア予測速度異常信号bを検出し出力するドア予測速度異常判定器17とが設けられている。そして、ドア予測速度異常信号bが電流制御器13に入力されている。その他の構成は、図1においてドア速度異常判定器15を除いた部分と同一である。
次いで、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法の参考形態を、図4のフローチャートを用いて説明する。このドア駆動制御方法は、ドア1の暴走を予測する検出動作を特徴としており、図3におけるドア予測速度異常判定器17により実行されるものである。
ここで、図4における設定速度3は、予め設定された絶対値で表される速度であり、ドア1を開ける方向の速度の極性を正、ドア1を閉める方向の速度の極性を負とする。また、予測時間は予め設定された時間(例えば数秒)とする。
まず、数式1により、現在から予測時間が経過した時点の予測速度を算出する(S401)。
[数式1]
予測速度=速度検出値+加速度検出値×予測時間
ここで、速度検出値は図3の速度演算器11により演算され、加速度検出値は加速度演算器16により演算される。
次に、予測速度が正の設定速度3を超えているか否かを判断し、超えていれば(S402,YES)、ドア予測速度異常信号bをセットする(S403)。
また、予測速度が正の設定速度3を超えていないときは(S402,NO)、予測速度が負の設定速度3未満であるか否かを判断する(S404)。そして、予測速度が負の設定速度3未満であれば(S404,YES)、ドア予測速度異常信号bをセットする(S405)。予測速度が負の設定速度3未満でない場合には(S404,NO)、処理を終了する。
すなわち、図4では、予測速度が正または負の設定速度3を超えた場合に、ドア予測速度異常信号bをセットするようになっている。このドア予測速度異常信号bは、図3に示すように電流制御器13に送られる。電流制御器13では、ドア予測速度異常信号bが入力されると、例えば、電力変換器14の出力電圧をゼロとするような電圧指令値を出力する。
前述した図2の動作では、閉まりかけたドア1に乗客が手を掛けてドア1を開き、その結果、速度指令値の極性と速度検出値との極性が異なった場合に、このような正常動作を真の逆転暴走状態と判別することは難しい。その理由は、閉まりかけたドア1に乗客が手を掛けてドア1を開く場合、図2のステップS205における速度検出値が設定速度2を超えて判断結果がYESとなり、逆転暴走状態と誤認してドア逆方向速度異常信号aがセットされるからである。
この場合に逆転暴走状態と誤認するのを防ぐには、設定速度2を高くすれば良いが、そうすると、実際に逆転暴走した場合にも設定速度2を超えるまで暴走を止められない、というトレードオフの問題を生じる。
これに対し、図4の動作によれば、第1実施形態と異なって速度指令値及び速度検出値の極性を考慮に入れていないため、上記の問題は起こらない。
また、例えば数秒先の予測速度を用いることにより、速度検出値が設定速度を超えたか否かの単純な速度超過検出方法と異なり、暴走したドアが危険速度に達する前の段階で暴走状態を検出できるという利点がある。
次に、図1のドア駆動制御装置10Aを用いたドア駆動制御方法の第実施形態を、図5のフローチャートを用いて説明する。この第実施形態は、ドア1の逆転暴走状態を検出した時に、図1の電流制御器13によって電力変換器14にゼロ電圧出力を行わせるためのものである。
なお、この第実施形態は、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法としても実現可能である。その場合には、図5におけるドア逆方向速度異常信号aをドア逆方向予測速度異常信号bに置き換えれば良い。
図5において、まず、図1の電流制御器13がドア逆方向速度異常信号aの有無を判断する(S501)。ドア逆方向速度異常信号aがあることを検出すると(S501,YES)、電流制御器13はタイマによる時間の計測を開始し、その計測時間(以下、タイマ値という)が、設定時間1以内であるか否かを判断する(S502)。ドア逆方向速度異常信号aが出力されていなければ(S501,NO)、処理を終了する。
タイマ値が設定時間1に達するまでの間(S502,YES)、電流制御器13は、電力変換器14の出力電圧をゼロとするような電圧指令値を出力してゼロ電圧出力を実施する(S503)。このゼロ電圧出力は、電力変換器14を構成する上アームまたは下アームのすべてのスイッチング素子をオンすることにより実現可能である。その後、タイマ値を加算、つまり計時動作を継続する(S504)。
また、タイマ値が設定時間1を経過していれば(S502,NO)、ゼロ電圧出力を停止し(S505)、電力変換器14をゲートオフさせるような指令値を出力する(S506)。
このようにドア駆動制御方法の第実施形態では、電流制御器13がドア逆方向速度異常信号aによりドア1の逆転暴走を検出した場合に、ドア1の速度に関わらず、設定時間1の間、ゼロ電圧出力を実施してドア1を制動する。
このため、ドア1が開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返った場合にも、ゼロ電圧出力の停止→ゲートオフによるフリーラン状態となるおそれがない。すなわち、ドア1を確実に制動できるため、乗客が挟まれて怪我をする可能性を少なくすることができる。
また、モータ2の位置検出器の故障により誤った位置検出値に基づいて逆転暴走状態を誤認した場合でも、設定時間1の経過後にゼロ電圧出力が停止される。これにより、電力変換器14を構成するスイッチング素子がオンまたはオフ状態で固定されるのを防止し、機器の劣化を防ぐことができる。
次いで、図1のドア駆動制御装置10Aを用いたドア駆動制御方法の第実施形態を、図6のフローチャートを用いて説明する。この実施形態は、図2のフローチャート全体に示した第1実施形態の処理(図6においてステップS603として示す)に、更に他の処理ステップを加えたものである。
なお、この第実施形態は、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法としても実現可能である。その場合には、図6におけるステップS603を、図4のフローチャート全体に示した処理に置き換えれば良い。
まず、図1における電力変換器14は、ドア1の動作中はゲートオンされ、ドア1が全開位置に到達するか、または全開位置で施錠されるとゲートオフされる。
このため、図6では、始めにゲートオンの有無を判断する(S601)。ゲートオンされている場合(S601,YES)は、タイマにより時間の計測を開始する。つまり、ドア1が動作を開始してからの経過時間を計測する。
タイマ値が予め設定した設定時間2に達するまでの期間(S602,YES)は、図2に示した第1実施形態の処理を実行し(S603)、タイマ値を加算する(S604)。
タイマ値が設定時間2を超過したら(S602,NO)、第1実施形態の処理(S603)は実行せずに終了する。また、ステップS601でゲートオンされていない場合(S601,NO)は、タイマ値をクリアして終了する(S605)。
このように第実施形態では、ゲートオンによる動作開始後の設定時間2の間だけ第1実施形態により逆転暴走の検出動作を行い、設定時間2の経過後は逆転暴走の検出動作を行わない。
例えば、図1における位置検出器5の交換などで、位置検出器5によるリニアモータ2の磁極検出位置にズレが発生し、これによって磁極位置が正しく再設定されなかったような場合、ドア1は動作開始直後から逆転暴走するおそれがある。このような場合に、第実施形態では設定時間2内に逆転暴走を検出することができ、リニアモータ2を安全に停止させることができる。
また、設定時間2内に逆転暴走を検出せず、設定時間2の経過後に乗客のドア操作により、速度指令値と逆方向の速度検出値を得たときには、磁極位置ズレではなく、乗客のドア操作による正常動作として、ドア1を停止させることなく動作を継続することができる。つまり、逆転暴走状態と誤認するのを未然に防ぐことが可能である。
次に、図1のドア駆動制御装置10Aを用いたドア駆動制御方法の第実施形態を、図7のフローチャートを用いて説明する。この実施形態は、図2のフローチャート全体に示した第1実施形態の処理(図7においてステップS706として示す)に、更に他の処理ステップを加えたものである。
なお、この第実施形態についても、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法として実現可能である。その場合には、図7におけるステップS706を、図4のフローチャート全体に示した処理に置き換えれば良い。
図7において、第実施形態と同様に、始めにゲートオンの有無を判断し(S701)、ゲートオンされている場合には(S701,YES)、タイマによる時間の計測を開始する。つまり、ドア1が動作を開始してからの経過時間を計測する。
そして、タイマ値が予め設定した設定時間3に達するまでの期間(S702,YES)は、異常検出実施フラグをセットし(S703)、タイマ値を加算する(S704)。
タイマ値が設定時間3に達したら(S702,NO及びS707,YES)、数式2が成立するか否かを判断する(S708)。
[数式2]
|(速度指令値)−(速度検出値)|>(速度検出閾値)
ここで、速度検出閾値は予め設定された値である。
数式2が成立したときには(S708,YES)、異常検出実施フラグをセットし(S709)、タイマ値を加算する(S704)。
数式2の条件が成立しない場合には(S708,NO)、異常検出実施フラグをリセットし(S710)、タイマ値を加算する(S704)。
更に、異常検出実施フラグの有無を判断し(S705)、異常検出実施フラグがセットされていれば(S705,YES)、図2に示した第1実施形態の処理を実行する(S706)。異常検出実施フラグがセットされていなければ(S705,NO)、第1実施形態の処理を実行しないで終了する。
なお、ステップS701でゲートオン中でないと判断された場合(S701,NO)は、タイマ値をクリアして終了する(S711)。
このように、前述した第実施形態では設定時間2の間だけドア逆方向速度異常検出動作(S603)を行うのに対し、第実施形態では、動作開始後の設定時間3の間、ドア逆方向速度異常検出動作(S706)を行うだけでなく、以下の処理も行っている。すなわち、その処理とは、設定時間3が経過した時に、速度検出値が速度指令値に追従できているかを速度検出閾値を用いて判断し、その結果に応じて、設定時間3の経過後における異常検出動作の実施有無を判断することである(S707〜S710)。
このため、磁極位置のズレが小さく、設定時間3内に逆転暴走と判断するまでには速度検出値が増加しない場合でも、逆転暴走の予兆をとらえることができる。そして、その後に設定時間3を経過しても継続的に逆転暴走を検出するため、逆転暴走状態の検出漏れを防ぐことができる。
最後に、図1のドア駆動制御装置10A及び図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法の参考形態を、図8のフローチャートを用いて説明する。
ドア1の取付や保守などの作業(以下、点検整備作業という)において位置検出器5を交換した場合には、その後に磁極位置を正しく再設定することを忘れやすい。このため、磁極位置ズレによる逆転暴走の発生確率が高い。また、これらの作業時には、営業運転中のように、ドア1が停止することによる運行の遅延などの問題は生じない。従って、ドアの整備作業を行い、その作業結果を検証する場合には、特に安全性を重視して低速度においても逆転暴走を検出できることが望ましい。
以下に述べる参考形態は、上記の点を考慮したものである。
例えば鉄道車両において、ドアの点検整備作業を行うときには、リニアモータ2への通電を停止するのが一般的である。
リニアモータ2への通電を停止する方法としては、電力変換器14に供給される電源20自体を遮断する方法と、図1や図3における非常ハンドル21を操作して電源20と電力変換器14とを遮断する方法とがある。これらの遮断方法のどちらが実行されたかは、電源20や非常ハンドル21の操作状態信号を把握することによって容易に判別可能である。
そこで、この参考形態では、図8において、電源20自体が遮断されてその遮断が解除された直後(以下、電源投入直後という)であるか否かを判断する(S801)。電源投入直後であると判断した場合には(S801,YES)、点検整備作業時にその作業結果を検証するために電源が投入されたと判断し、前述したドア駆動制御方法の第1実施形態(図2)、第〜第実施形態(図5〜図7)の何れかを実行する(S802)。つまり、ドア逆方向速度異常検出信号aを用いる異常検出動作を実行する。
また、電源投入直後でないと判断した場合には(S801,NO)、非常ハンドル21の操作(非常ハンドル21を操作して電源20と電力変換器14とを遮断し、その後、電源20を再び電力変換器14に接続する操作)の直後であるか否かを判断する(S803)。
非常ハンドル21の操作直後であると判断した場合には(S803,YES)、前記同様に、点検整備作業時にその作業結果を検証するために電源が投入されたと判断し、ドア駆動制御方法の第1実施形態(図2)、第実施形態〜第実施形態(図5〜図7)の何れかを実行する(S804)。すなわち、ドア逆方向速度異常検出信号aを用いる異常検出動作を実行する。
ステップS803において、非常ハンドル21の操作直後であると判断されない場合には(S803,NO)、点検整備作業時ではなく通常運転時であると判断し、前述した図4のドア駆動制御方法を実行する(S802)。すなわち、ドア予測速度異常検出信号bを用いる異常検出動作を実行する。
このように図8では、点検整備作業時にはドア逆方向速度異常検出信号aを用いる異常検出動作を実行し、通常運転時にはドア予測速度異常検出信号bを用いる異常検出動作を実行するものである。
このように異常検出動作を切り替えることにより、点検整備作業時には、逆転暴走と誤認する可能性は高いものの、低速度で真の逆転暴走を確実に検出することができる。また、通常運転時には、安全性を確保しつつ、暴走状態を誤認するおそれを少なくして真の暴走状態を適切に検出することができる。
本発明のドア駆動制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。 本発明のドア駆動制御方法の第1実施形態を示すフローチャートである。 本発明のドア駆動制御装置の参考形態を示すブロック図である。 図3によるドア駆動制御方法を示すフローチャートである。 本発明のドア駆動制御方法の第実施形態を示すフローチャートである。 本発明のドア駆動制御方法の第実施形態を示すフローチャートである。 本発明のドア駆動制御方法の第実施形態を示すフローチャートである。 本発明のドア駆動制御方法の参考形態を示すフローチャートである。 ドアの再開閉動作時における速度指令値と速度検出値との関係を示す図である。
符号の説明
1:ドア
2:リニアモータ
3:連結部
4:出力電流検出器
5:位置検出器
10A,10B:ドア駆動制御装置
11:速度演算器
12:速度制御器
13:電流制御器
14:電力変換器
15:ドア速度異常判定器
16:加速度演算器
17:ドア予測速度異常判定器

Claims (7)

  1. ドア駆動用のモータに電力を供給する電力変換器を備え、ドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により前記電力変換器を運転し、前記モータによって駆動されるドアの速度を制御するドア駆動制御装置において、
    前記速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、前記速度検出値が前記速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、速度異常信号を出力する異常判定手段を備えたことを特徴とするドア駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載したドア駆動制御装置において、
    前記速度検出値が速度指令値に一致するように電流指令値を演算する速度制御手段と、
    前記電流指令値と、前記電力変換器の出力電流検出値と、前記ドアの位置検出値と、を用いて前記電力変換器の電圧指令値を生成する電流制御手段と、
    を備えたことを特徴とするドア駆動制御装置。
  3. 請求項2に記載したドア駆動制御装置において、
    前記速度異常信号を前記電流制御手段に入力したことを特徴とするドア駆動制御装置。
  4. ドア駆動用のモータに電力を供給する電力変換器をドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により運転し、前記モータによって駆動されるドアの速度を制御するドア駆動制御方法において、
    前記速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、前記速度検出値が前記速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、ドアが前記速度指令値による移動方向とは逆方向に移動していると判断して速度異常信号を出力する異常検出動作を行い、前記速度異常信号を用いて前記電力変換器の運転を制御することを特徴とするドア駆動制御方法
  5. 請求項4における速度異常信号が出力された時に、
    前記電力変換器の出力電圧を一定期間ゼロとして前記モータを発電制動させることを特徴とするドア駆動制御方法
  6. ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は上記異常検出動作を実行しないことを特徴とするドア駆動制御方法
  7. ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は、前記速度指令値と前記速度検出値との差が閾値以内であれば、請求項4記載の異常検出動作を実行しないことを特徴とするドア駆動制御方法。
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