JP5167684B2 - ドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法 - Google Patents
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Description
この方法によると、実際の磁極位置と制御に用いる磁極位置情報とが何らかの理由によってずれた場合(磁極位置ズレという)、ドアの速度指令値に対する推力の不足、ドアの停止、更には速度指令値が指令する移動方向とは逆方向へのドアの暴走(逆転暴走という)などの異常事態が発生することがある。
このような異常事態への対応策として、特許文献1に記載されたドア開閉装置が知られている。
そして、同期モータの電機子巻線をスイッチにより短絡してドアを制動し、または、同期モータを駆動する電力変換器の上アームまたは下アームのスイッチング素子をすべてオンさせて出力電圧をゼロにすること(ゼロ電圧出力)によりモータの電機子巻線を短絡し、ドアを制動することが記載されている。また、ドアの制動動作は、ドアの速度が第2の設定値以下に低下するまで行うことも併せて記載されている。
上記の対策により、磁極位置ズレによってドアが逆転暴走状態になったとしてもこれを直ちに検出してドアを安全に停止させている。
図9は、ドアの閉動作時にドアに障害物が接触したためドアを再び開動作させた場合(いわゆる再開閉動作)における速度指令値と速度検出値との関係を示している。
この再開閉動作においては、ドアの速度指令値を閉方向から開方向に切り替えてドアを開き、その後、開方向から閉方向に切り替えてドアを閉じるため、図9に示すように速度指令値の極性が変化することになる。この時、ドアは速度指令値に対して若干の時間遅れを持って動作するので、図9にcとして示した如く、速度指令値の極性と速度検出値の極性とが逆になる状態が発生する。
しかし、ドアが開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返る場合、速度検出値は、ドアが全開位置で跳ね返る瞬間にゼロとなる。このとき、制御装置は電力変換器のゼロ電圧出力を解除するので、電力変換器はゲートオフされ、モータはフリーラン状態となる。従って、モータの制動に遅れが生じ、乗客がドアに挟まれて怪我をするおそれがある。
すなわち、この場合はドアが実際に暴走しているわけではないので、電力変換器がゼロ電圧を出力しても制御装置は逆転暴走状態と誤認し続ける。その結果、電力変換器はいつまでもゼロ電圧を出力し続けることとなるので、特定のスイッチング素子がオン状態またはオフ状態で固定されることになり、機器の劣化を進行させるという問題もあった。
更に、本発明の別の解決課題は、従来よりも安全性を向上させると共に、列車等の定時運行に支障をきたすことのないドア駆動制御方法を提供することにある。
より詳細に述べると、請求項1に係るドア駆動制御装置は、ドアの速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、速度検出値が速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、逆転暴走状態と判断してドアの速度異常信号を出力する異常判定手段を備えている。なお、上記速度検出値は、ドアの位置検出値から演算することが可能である。
また、上記の速度異常信号は、例えば電力変換器の出力電圧をゼロに制御してモータを制動するために用いることができる。
更に、請求項3に記載するように、速度異常信号を電流制御手段に入力することにより、モータを制動させるための電力変換器の電圧指令値を生成することができる。
このドア駆動制御方法は、具体的には、ドアの速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、速度検出値が速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、ドアが逆転暴走状態にあると判断してドアの速度異常信号を出力する異常検出動作を行い、前記速度異常信号を用いて電力変換器の運転を制御する。
このドア駆動制御方法によれば、ドアの速度指令値が第1の設定速度を超えない場合には異常検出動作を行わないことになり、ドアの逆転暴走を誤認するおそれを低減することができる。
このため、ドアが開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返る場合にも、電力変換器のゼロ電圧出力→ゲートオフによるフリーラン状態となる事象が発生しない。従って、モータの制動の遅れによって乗客が怪我をするおそれをなくすことができる。
このため、ドアの位置検出器の交換等によって検出値による磁極検出位置にズレが生じたままの状態であるばあいには、ドアは動作開始直後から暴走することとなり、この暴走を上記一定時間内に検出して制動、停止等の措置を講じることが可能になる。
すなわち、磁極位置ズレが小さく、上記一定時間内に暴走と判断できるまでには速度検出値が増加しない場合には、その後に速度指令値と速度検出値との差が閾値以内に収まっていないことにより速度検出値が速度指令値に追従できていなければ、暴走の予兆をとらえることができ、暴走を確実に検出することができる。
また、利用者に対する安全性を高め、機器を損傷したり運行に支障をきたすことのないドア駆動制御装置及びドア駆動制御方法を提供することができる。
まず、図1はドア駆動制御装置の第1実施形態を示すブロック図である。
ドア1の位置は、位置検出器5により検出される。また、ドア駆動制御装置10A内に設けられた後述の電力変換器14の二相(例えばU相,W相)の出力電流は、出力電流検出器4により検出される。
速度演算器11は、位置検出器5から出力される位置検出値を用いてドア1の速度を演算し、速度検出値として出力する。速度制御器12では、速度指令値と速度検出値とを用いて速度をフィードバック制御し、電流指令値を演算して出力する。
電力変換器14は、内部のスイッチング素子のオン・オフにより電力変換動作を行って電圧指令値通りの電圧をリニアモータ2に供給し、リニアモータ2を駆動する。なお、電力変換器14は、非常ハンドル21の操作により電源20から遮断され、非常停止するように構成されている。
ここでは、ドア1を開ける方向の速度の極性を正、ドア1を閉める方向の速度の極性を負とし、図2における設定速度1(第1の設定速度)、設定速度2(第2の設定速度)は、予め設定された絶対値によって表される速度とする。
すなわち、速度指令値がドア1を開ける極性で与えられているにもかかわらず、速度検出値がドア1を閉める極性であって設定速度2未満であるときに、ドア逆方向速度異常信号aがセットされる。
また、速度指令値が負の設定速度1未満でない場合には(S204,NO)、処理を終了する。つまり、速度指令値が開方向へも閉方向へも設定速度1を超えていない場合は、速度検出値及び設定速度を用いた異常検出動作(逆転暴走状態の検出動作)を行わない。
すなわち、図2の動作では、速度指令値が正または負の設定速度1を超えないときには異常検動作を行っていない。言い換えれば、速度指令値が正または負の設定速度1を超えた場合に限って異常検出動作を行っている。
つまり、設定速度1を適切な値に設定すれば、速度指令値と速度検出値との極性が相違する領域(図9に示したように速度指令値が比較的小さい領域c)におけるドア逆方向速度異常の判断を回避することができ、逆転暴走状態の誤認を避けることができる。
図3において、図1と同一の構成要素には同一の番号を付してあり、以下では図1と異なる部分を中心に説明する。
ここで、図4における設定速度3は、予め設定された絶対値で表される速度であり、ドア1を開ける方向の速度の極性を正、ドア1を閉める方向の速度の極性を負とする。また、予測時間は予め設定された時間(例えば数秒)とする。
[数式1]
予測速度=速度検出値+加速度検出値×予測時間
ここで、速度検出値は図3の速度演算器11により演算され、加速度検出値は加速度演算器16により演算される。
また、予測速度が正の設定速度3を超えていないときは(S402,NO)、予測速度が負の設定速度3未満であるか否かを判断する(S404)。そして、予測速度が負の設定速度3未満であれば(S404,YES)、ドア予測速度異常信号bをセットする(S405)。予測速度が負の設定速度3未満でない場合には(S404,NO)、処理を終了する。
この場合に逆転暴走状態と誤認するのを防ぐには、設定速度2を高くすれば良いが、そうすると、実際に逆転暴走した場合にも設定速度2を超えるまで暴走を止められない、というトレードオフの問題を生じる。
また、例えば数秒先の予測速度を用いることにより、速度検出値が設定速度を超えたか否かの単純な速度超過検出方法と異なり、暴走したドアが危険速度に達する前の段階で暴走状態を検出できるという利点がある。
なお、この第2実施形態は、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法としても実現可能である。その場合には、図5におけるドア逆方向速度異常信号aをドア逆方向予測速度異常信号bに置き換えれば良い。
また、タイマ値が設定時間1を経過していれば(S502,NO)、ゼロ電圧出力を停止し(S505)、電力変換器14をゲートオフさせるような指令値を出力する(S506)。
このため、ドア1が開方向へ暴走して全開位置までに止まれずに全開位置で跳ね返った場合にも、ゼロ電圧出力の停止→ゲートオフによるフリーラン状態となるおそれがない。すなわち、ドア1を確実に制動できるため、乗客が挟まれて怪我をする可能性を少なくすることができる。
なお、この第3実施形態は、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法としても実現可能である。その場合には、図6におけるステップS603を、図4のフローチャート全体に示した処理に置き換えれば良い。
このため、図6では、始めにゲートオンの有無を判断する(S601)。ゲートオンされている場合(S601,YES)は、タイマにより時間の計測を開始する。つまり、ドア1が動作を開始してからの経過時間を計測する。
タイマ値が予め設定した設定時間2に達するまでの期間(S602,YES)は、図2に示した第1実施形態の処理を実行し(S603)、タイマ値を加算する(S604)。
タイマ値が設定時間2を超過したら(S602,NO)、第1実施形態の処理(S603)は実行せずに終了する。また、ステップS601でゲートオンされていない場合(S601,NO)は、タイマ値をクリアして終了する(S605)。
例えば、図1における位置検出器5の交換などで、位置検出器5によるリニアモータ2の磁極検出位置にズレが発生し、これによって磁極位置が正しく再設定されなかったような場合、ドア1は動作開始直後から逆転暴走するおそれがある。このような場合に、第3実施形態では設定時間2内に逆転暴走を検出することができ、リニアモータ2を安全に停止させることができる。
なお、この第4実施形態についても、図3のドア駆動制御装置10Bを用いたドア駆動制御方法として実現可能である。その場合には、図7におけるステップS706を、図4のフローチャート全体に示した処理に置き換えれば良い。
そして、タイマ値が予め設定した設定時間3に達するまでの期間(S702,YES)は、異常検出実施フラグをセットし(S703)、タイマ値を加算する(S704)。
[数式2]
|(速度指令値)−(速度検出値)|>(速度検出閾値)
ここで、速度検出閾値は予め設定された値である。
数式2の条件が成立しない場合には(S708,NO)、異常検出実施フラグをリセットし(S710)、タイマ値を加算する(S704)。
なお、ステップS701でゲートオン中でないと判断された場合(S701,NO)は、タイマ値をクリアして終了する(S711)。
このため、磁極位置のズレが小さく、設定時間3内に逆転暴走と判断するまでには速度検出値が増加しない場合でも、逆転暴走の予兆をとらえることができる。そして、その後に設定時間3を経過しても継続的に逆転暴走を検出するため、逆転暴走状態の検出漏れを防ぐことができる。
ドア1の取付や保守などの作業(以下、点検整備作業という)において位置検出器5を交換した場合には、その後に磁極位置を正しく再設定することを忘れやすい。このため、磁極位置ズレによる逆転暴走の発生確率が高い。また、これらの作業時には、営業運転中のように、ドア1が停止することによる運行の遅延などの問題は生じない。従って、ドアの整備作業を行い、その作業結果を検証する場合には、特に安全性を重視して低速度においても逆転暴走を検出できることが望ましい。
以下に述べる参考形態は、上記の点を考慮したものである。
リニアモータ2への通電を停止する方法としては、電力変換器14に供給される電源20自体を遮断する方法と、図1や図3における非常ハンドル21を操作して電源20と電力変換器14とを遮断する方法とがある。これらの遮断方法のどちらが実行されたかは、電源20や非常ハンドル21の操作状態信号を把握することによって容易に判別可能である。
非常ハンドル21の操作直後であると判断した場合には(S803,YES)、前記同様に、点検整備作業時にその作業結果を検証するために電源が投入されたと判断し、ドア駆動制御方法の第1実施形態(図2)、第2実施形態〜第4実施形態(図5〜図7)の何れかを実行する(S804)。すなわち、ドア逆方向速度異常検出信号aを用いる異常検出動作を実行する。
このように異常検出動作を切り替えることにより、点検整備作業時には、逆転暴走と誤認する可能性は高いものの、低速度で真の逆転暴走を確実に検出することができる。また、通常運転時には、安全性を確保しつつ、暴走状態を誤認するおそれを少なくして真の暴走状態を適切に検出することができる。
2:リニアモータ
3:連結部
4:出力電流検出器
5:位置検出器
10A,10B:ドア駆動制御装置
11:速度演算器
12:速度制御器
13:電流制御器
14:電力変換器
15:ドア速度異常判定器
16:加速度演算器
17:ドア予測速度異常判定器
Claims (7)
- ドア駆動用のモータに電力を供給する電力変換器を備え、ドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により前記電力変換器を運転し、前記モータによって駆動されるドアの速度を制御するドア駆動制御装置において、
前記速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、前記速度検出値が前記速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、速度異常信号を出力する異常判定手段を備えたことを特徴とするドア駆動制御装置。 - 請求項1に記載したドア駆動制御装置において、
前記速度検出値が速度指令値に一致するように電流指令値を演算する速度制御手段と、
前記電流指令値と、前記電力変換器の出力電流検出値と、前記ドアの位置検出値と、を用いて前記電力変換器の電圧指令値を生成する電流制御手段と、
を備えたことを特徴とするドア駆動制御装置。 - 請求項2に記載したドア駆動制御装置において、
前記速度異常信号を前記電流制御手段に入力したことを特徴とするドア駆動制御装置。 - ドア駆動用のモータに電力を供給する電力変換器を、ドアの速度検出値と速度指令値とを用いたフィードバック制御により運転し、前記モータによって駆動されるドアの速度を制御するドア駆動制御方法において、
前記速度指令値が正または負の第1の設定速度を超え、かつ、前記速度検出値が前記速度指令値とは逆極性の第2の設定速度を超えた場合に、ドアが前記速度指令値による移動方向とは逆方向に移動していると判断して速度異常信号を出力する異常検出動作を行い、前記速度異常信号を用いて前記電力変換器の運転を制御することを特徴とするドア駆動制御方法。 - 請求項4における速度異常信号が出力された時に、
前記電力変換器の出力電圧を一定期間ゼロとして前記モータを発電制動させることを特徴とするドア駆動制御方法。 - ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は上記異常検出動作を実行しないことを特徴とするドア駆動制御方法。
- ドアが動作を開始してから一定時間のみ、請求項4記載の異常検出動作を実行し、上記一定時間を経過した後は、前記速度指令値と前記速度検出値との差が閾値以内であれば、請求項4記載の異常検出動作を実行しないことを特徴とするドア駆動制御方法。
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